説明

同調増幅回路

【課題】周波数が高くなってもノイズ除去性能を安定させることができる同調増幅回路を提供する。
【解決手段】本発明の同調増幅回路1は、直列接続されたインダクタ31およびコンデンサ32からなる直列共振器3と、直列共振器3の直近の前段に配置されているエミッタフォロア回路2と、直列共振器3の直近の後段に配置されているベース接地増幅回路4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同調増幅回路に係り、特に、(同調増幅回路の具体例を記載)に好適に利用できる同調増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同調増幅回路101においては、図4に示すように、前段および後段のエミッタ接地増幅回路102、104の段間に、ノイズ除去のための並列共振器103が配置されている。並列共振器103は、並列に接続された可変コンデンサ132およびインダクタ131ならびに寄生抵抗133からなる周波数可変タイプのものである。また、前段および後段のエミッタ接地増幅回路102、104は、カスコード増幅回路の一部となっている(特許文献1を参照)。
【0003】
【数1】

【0004】
【数2】

【0005】
【数3】

【0006】
ここで、よく知られた数式1〜数式3が示すように、同調増幅回路101のノイズ除去性能を左右する3dB帯域幅BW101は、並列共振器103の寄生抵抗133、前段のエミッタ接地増幅回路102の出力インピーダンスRsおよび後段のエミッタ接地増幅回路104の入力インピーダンスRLに依存する。したがって、同調増幅回路101の3dB帯域幅BW101が広がるのを防止するためには、並列共振器103の寄生抵抗133の抵抗値を小さく設定、かつ、前段の増幅回路の出力インピーダンスRsおよび後段の増幅回路の入力インピーダンスRLをそれぞれ大きく設定することが好ましい。
【0007】
【特許文献1】特開平4−249413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示すように、前段のエミッタ接地増幅回路102および後段のエミッタ接地増幅回路104については、周波数が高くなるほどその入力インピーダンスRLおよび出力インピーダンスRsがともに小さくなる傾向にある。特に、後段のエミッタ接地増幅回路104における周波数変化に対する入力インピーダンスRLの変化については、その傾向が顕著に現われる。そのため、図6に示すように、周波数が高くなるにつれて3dB帯域幅BW101が広がってしまい、ノイズ除去性能が低下してしまうという問題があった。
【0009】
従来であれば、3dB帯域幅BW101が拡大する問題が生じたとしても、並列共振器103のインダクタ131、可変コンデンサ132および寄生抵抗133を適宜変更調整することにより、そのような問題を解消することができた。しかしながら、従来の同調増幅回路101を集積化すると、回路形成後にそのような調整が事実上不可能になるため、上記の問題点を解消することができない。
【0010】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、周波数が高くなってもノイズ除去性能を安定させることができる同調増幅回路を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明の同調増幅回路は、その第1の態様として、直列接続されたインダクタおよびコンデンサからなる直列共振器と、直列共振器の直近の前段に配置されているエミッタフォロア回路と、直列共振器の直近の後段に配置されているベース接地増幅回路とを備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の態様の同調増幅回路によれば、直列共振器を用いているので、同調増幅回路の3dB帯域幅を狭めるためには周波数が高くなったときに前段の増幅回路の出力インピーダンスおよび後段の増幅回路の入力インピーダンスがともに小さくなることが要求される。ここで、周波数が高くなると、後段のベース接地増幅回路の入力インピーダンスが大幅に小さくなり、前段のエミッタフォロア回路の出力インピーダンスはほぼ変化しない。そのため、周波数が高くなるにつれて3dB帯域幅が広がることを防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様の同調増幅回路は、第1の態様の同調増幅回路において、直列共振器のコンデンサは、可変コンデンサであることを特徴としている。
【0014】
本発明の第2の態様の同調増幅回路によれば、コンデンサの容量を変化させることによって、所望する任意の周波数を自由に選択することができる。
【0015】
本発明の第3の態様の同調増幅回路は、第1または第2の態様の同調増幅回路において、少なくとも直列共振器のコンデンサ、エミッタフォロア回路およびベース接地増幅回路は、集積回路要素を用いて形成されていることを特徴としている。
【0016】
本発明の第3の態様の同調増幅回路によれば、集積化したTVチューナ回路のパッケージ内にその一部品として組み込むことができる。
【0017】
本発明の第4の態様の同調増幅回路は、第3の態様の同調増幅回路において、直列共振器のインダクタは、空芯コイル、チップインダクタまたは集積インダクタであることを特徴としている。
【0018】
本発明の第4の態様の同調増幅回路によれば、所望するQ値とそのサイズとのバランスを他のパッケージの性能およびサイズと比較しながら選択することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の同調増幅回路によれば、周波数が高くなっても3dB帯域幅が広がらないので、同調増幅回路のノイズ除去性能が安定化するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1を用いて、本発明の同調増幅回路1をその一実施形態により説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の同調増幅回路1の等価回路図を示している。本実施形態の同調増幅回路1は、携帯電話機などの小型携帯機器に搭載されるテレビジョン放送信号受信用同調増幅回路であり、小型携帯機器に搭載するために集積化されている。このような本実施形態の同調増幅回路1は、図1に示すように、エミッタフォロア回路2、直列共振器3およびベース接地増幅回路4を備えている。
【0022】
エミッタフォロア回路2は、直列共振器3に最も近い前段に配置されている。このエミッタフォロア回路2はNPN型回路なので、トランジスタ20のベースに定電圧源21、そのコレクタに共通線22、そのエミッタに定電流源23を接続する。トランジスタ20のベースは入力端子となり、そのエミッタは出力端子となる。エミッタフォロア回路2を形成する各要素としては、集積回路に内蔵する回路要素、すなわち集積回路要素が用いられている。
【0023】
直列共振器3は、直列接続されたインダクタ31およびコンデンサ32からなる。また、直列共振器3は、コンデンサ32によって生じた寄生抵抗33を有している。インダクタ31はエミッタフォロア回路2のエミッタ側に接続されている。インダクタ31としては、空芯コイル、チップインダクタまたは集積インダクタが選択可能であるが、本実施形態においてはチップインダクタが選択されている。コンデンサ32は、集積化された可変コンデンサであり、図示しない制御回路によりその容量値が自由に変更可能になっている。寄生抵抗33は、コンデンサ32によって生じるため、コンデンサ32と直列に接続された表記となっている。
【0024】
ベース接地増幅回路4は、直列共振器3に最も近い後段に配置されている。このベース接地増幅回路4はNPN型回路なので、トランジスタ40のエミッタに寄生抵抗33を介した直列共振器3のコンデンサ32、そのコレクタに抵抗器41を接続するとともに、トランジスタ40のコレクタに接続された抵抗器41およびそのベースを接地する。トランジスタ40のエミッタは入力端子となり、そのコレクタは出力端子となる。ベース接地増幅回路4を形成する各要素としては、集積回路要素が用いられている。
【0025】
次に、図1〜図3を用いて、本実施形態の同調増幅回路1の作用を説明する。ここで、図2は、本実施形態の直列共振器3における周波数の変化に対するエミッタフォロア回路2の出力インピーダンスRsの変化およびベース接地増幅回路4の入力インピーダンスRLの変化を示している。また、図3は、本実施形態の同調増幅回路1における周波数の変化に対する3dB帯域幅BW1の変化を示している。
【0026】
本実施形態の同調増幅回路1においては、図1に示すように、前述の直列共振器3を段間として、その直近の前段にエミッタフォロア回路2が、また、その直近の後段にベース接地増幅回路4がそれぞれ配置されている。ここで、本実施形態は従来とは異なり、直列共振器3を用いているので、本実施形態の同調増幅回路1における3dB帯域幅BW1およびQ値は、以下の数式4および数式5によって表される。
【0027】
【数4】

【0028】
【数5】

【0029】
つまり、同調増幅回路1の3dB帯域幅BW1を狭めてノイズ除去特性を向上させるためには、周波数が高くなったときに、前段の増幅回路の出力インピーダンスRsおよび後段の増幅回路の入力インピーダンスRLがともに小さくなることが要求される。ここで、図2に示すように、後段のベース接地増幅回路4の入力インピーダンスRLは、周波数が高くなるにつれて大幅に小さくなる。また、前段のエミッタフォロア回路2の出力インピーダンスRsは、低周波数側において小さく、また、高周波数側に変化しても若干の上昇が見られるものの、その値はほとんど変化しない。そのため、図3に示すように、3dB帯域幅BW1は周波数が高くなるにつれてわずかに低下し、その後はほとんど変化せずに一定になる。すなわち、従来の3dB帯域幅BW101の変化と比較して、本実施形態の同調増幅回路1においては周波数が高くなるにつれて3dB帯域幅BW1が広がることを防止しすることができるので、良好なノイズ除去特性を得ることができる。
【0030】
また、このような直列共振器3のコンデンサ32、エミッタフォロア回路2およびベース接地増幅回路4は、集積回路要素を用いて形成されている。前述の通り、本実施形態においては、周波数が高くなっても3dB帯域幅BW1が広がらないので、3dB帯域幅BW1の狭小化のために各回路要素を調整することが完全に不要になる。つまり、各回路要素の変更調整が困難な集積化したTVチューナ回路のパッケージ内にその一部品として組み込むことができる。
【0031】
なお、本実施形態における直列共振器3のコンデンサ32としては、可変コンデンサが選択されている。可変コンデンサであればコンデンサ32の容量を容易に変化させることができるので、所望する任意の周波数を自由に選択することができる。
【0032】
また、直列共振器3のインダクタ31としては、空芯コイル、チップインダクタまたは集積インダクタ(集積可能な小型インダクタ)が選択されている。これは、所望するQ値とそのサイズとのバランスを他のパッケージの性能およびサイズと比較しながら選択することができる。例えば、空芯コイルを選択すれば最も高いQ値を得ることが容易となり、チップインダクタを選択すれば高いQ値を得つつ、空芯コイルよりもサイズダウンし、集積インダクタを選択すれば前述のコンデンサ32などとともに集積化したTVチューナ回路のパッケージ内にその一部品として組み込むことができる。現状においては、チップインダクタを選択することにより、所望するQ値とそのサイズとのバランスを最もうまく調整することができる。
【0033】
すなわち、本実施形態の同調増幅回路1によれば、周波数が高くなっても3dB帯域幅BW1が広がらないので、同調増幅回路1のノイズ除去性能が安定するという作用を生じる。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の同調増幅回路を示す等価回路図
【図2】本実施形態の直列共振器における周波数の変化に対するエミッタフォロア回路の出力インピーダンスの変化およびベース接地増幅回路の入力インピーダンスの変化を示すグラフ
【図3】本実施形態の同調増幅回路における周波数の変化に対する3dB帯域幅の変化を示すグラフ
【図4】従来の同調増幅回路の一例を示す等価回路図
【図5】従来の並列共振器における周波数の変化に対するエミッタ接地増幅回路の出力インピーダンスの変化およびエミッタ接地増幅回路の入力インピーダンスの変化を示すグラフ
【図6】従来の同調増幅回路における周波数の変化に対する3dB帯域幅の変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0036】
1 同調増幅回路
2 エミッタフォロア回路
3 直列共振器
4 ベース接地増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続されたインダクタおよびコンデンサからなる直列共振器と、
前記直列共振器の直近の前段に配置されているエミッタフォロア回路と、
前記直列共振器の直近の後段に配置されているベース接地増幅回路と
を備えていることを特徴とする同調増幅回路。
【請求項2】
前記直列共振器のコンデンサは、可変コンデンサである
ことを特徴とする請求項1に記載の同調増幅回路。
【請求項3】
少なくとも前記直列共振器のコンデンサ、前記エミッタフォロア回路および前記ベース接地増幅回路は、集積回路要素を用いて形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の同調増幅回路。
【請求項4】
前記直列共振器のインダクタは、空芯コイル、チップインダクタまたは集積インダクタである
ことを特徴とする請求項3に記載の同調増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−273002(P2009−273002A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123301(P2008−123301)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】