説明

同軸セラミック点火器及び製造方法

導電性のコア部分が加熱素子の遠位端にある抵抗性の高温領域内まで延在し、それによって導電性のコア部分と抵抗性の高温領域との間の境界面が加熱素子の遠位先端から離れた、新規の同軸セラミック加熱素子及び製造方法。方法は、予成形するか、又は固化させた材料の領域を、1つ又は複数の流動性を有する材料の領域と一体に合わせるステップと、流動性を有する材料を硬化させるか、ゲル化させるか、乾燥させるか、又はその他の方法で凝固若しくは固化させるステップと、焼結することによって一体化した同軸加熱素子を形成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照により全体として本明細書に援用される2007年12月29日出願の米国仮特許出願第61/009,507号明細書の利益を主張する。
【0002】
1.分野
本発明は、新規の同軸セラミック加熱素子を提供する。本発明は、さらに、同軸セラミック加熱素子の新規の製造方法を提供し、この方法は、(1)予成形するか、又は固化させた材料の領域を、1つ又は複数の流動性を有する材料の領域と一体に合わせるステップと、(2)流動性を有する材料を硬化させるか、ゲル化させるか、乾燥させるか、又はその他の方法で凝固若しくは固化させるステップとを含む。好ましくは、素子は続いて焼結され、それによって一体化した同軸加熱素子が形成される。点火器及びグロープラグなどの、本発明の製造方法から得られる同軸加熱素子もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
2.背景
セラミック材料は、例えば、ガス燃焼炉、ストーブ及び衣類乾燥機における点火器として、著しい成功を収めている。セラミック点火器の作製には、セラミック部品を通じた電気回路の組立てが含まれる。セラミック部品の一部は抵抗が高く、ワイヤリード線によって電流が流れると温度が上昇する。例えば、米国特許出願公開第2006/0131295号明細書及び米国特許第6,028,292号明細書;同第5,801,361号明細書;同第5,405,237号明細書;及び同第5,191,508号明細書を参照のこと。
【0004】
典型的な点火器はほぼ矩形形状の素子であり、点火器の先端に抵抗が高い「高温領域」を有し、点火器の反対側の端部から高温領域にかけて1つ又は複数の導電性の「低温領域」が設けられている。現在利用可能な点火器の一つ、Milford,N.H.のNorton Igniter Productsから入手可能なMini−Igniterは、12ボルト〜120ボルトの適用で設計され、窒化アルミニウム(「AlN」)、二珪化モリブデン(「MoSi」)、及び炭化ケイ素(「SiC」)を含む組成物を有する。
【0005】
セラミック点火器システムには、温度到達時間(time−to−temperature)(すなわち、室温から設計点火温度までの加熱にかかる時間)の高速性、すなわち短さ、及び交換することなく長期間動作するのに十分なロバスト性を含め、様々な性能特性が求められる。しかしながら、従来の点火器の多くは、かかる要件を一貫して満たすことはない。さらに、現行のセラミック点火器は、特に、ガス調理台等に用いられる点火器などの、衝撃が持続し得る環境において、使用中の破損が欠点となっている。
【0006】
火花点火システムは、セラミック点火器に代わるものとして提案されている手法である。例えば、ガス調理バーナーの点火に有用と言われている特定の火花点火器について、米国特許第5,911,572号明細書を参照のこと。一般に火花点火が呈する有利な性能特性の一つは、迅速な点火である。すなわち、火花点火器は、作動され次第、極めて迅速にガス又は他の燃料源を点火することができる。
【0007】
特定の適用では、迅速な点火は決定的に重要であり得る。例えば、いわゆる「瞬間」湯沸かし器が、ますます好評を博している。概して、米国特許第6,167,845号明細書;同第5,322,216号明細書;及び同第5,438,642号明細書を参照のこと。こうしたシステムは、一定量の温水を保管するのではなく、給水管が開栓され次第、例えば、使用者が給水栓を開放位置にひねり次第、本質的に直ちに水を加熱する。従って、水が開放され次第、本質的に即時加熱することにより、栓が開けられ水が「出る」のと実質的に同時に温水を送給することが求められる。かかる瞬間湯沸かしシステムは、一般に火花点火器を利用している。少なくとも現行の多くのセラミック点火器が提供している性能では、瞬間湯沸かし器で求められるような、極めて迅速な点火用途において商業的に利用するには、温度到達時間がかかり過ぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
迅速な点火の必要性に応えて、同軸セラミック点火器が提供されている。しかしながら、現行の同軸点火器設計は、ジュール加熱の大部分が点火器の表面又はその近傍で発生する結果となっている。結果として、点火器は外部冷却及び時効効果を一層受け易くなる。さらに、全ての層をスリップキャスト成形するなどの現行の同軸点火器の製造方法は、再現性及び一貫性の問題を被る。全ての層をスリップキャスト成形すると、日によって、及び金型によって寸法に違いが生じ得ることになり、違いがあれば、そのように形成された点火器の性能及び一貫性に影響が出る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、新規の同軸セラミック加熱素子及び同軸セラミック加熱素子の作製方法が提供される。本発明の同軸加熱素子は導電性のコア部分を備え、これは、加熱素子の遠位端にある抵抗性の高温領域内まで延在し、従って導電性のコア部分と抵抗性の高温領域との間の境界面が、加熱素子の遠位先端から離れている。換言すれば、高温領域を形成する抵抗領域が、中心コア内まで延在する。結果として、加熱素子の性能が向上する。例えば、本同軸加熱素子の設計は中心加熱を作動させ、外部冷却及び時効効果に対する抵抗性の向上など、多くの利益を提供し得る。さらに、抵抗経路長が長くなると、それによって、より低い抵抗率(より高いPTC)の材料を使用することが可能となり、点火器の昇温時間が短縮されるなど、さらなる利益が提供される。本同軸加熱素子設計は、経路長が長いことにより、動作電圧をより高くすることも可能となり得る。経路長が短くなると、最終的には材料の抵抗率を非常に高くしなければならず、加熱素子を一貫して作製することは困難となる。従って、本発明によって提供される経路長の長くなった設計により、さらには、より一貫した加熱素子の製造が可能となる。
【0010】
本方法はまた、コア部分と外側部分と(例えば、コア導電性部分と外側導電性部分と)を、互いに同じレベル又は高さで形成することが可能など、さらなる利点も提供する。
【0011】
本方法及び加熱素子は、さらに、迅速な温度到達時間値(例えば、約3秒以下、又はさらに約2秒以下)を提供する。本発明の方法は、さらに、特定の所望の特性を有する加熱素子を、一貫して、且つ高い信頼性で作製することを可能にする。
【0012】
一態様において、本発明は、概して、同軸セラミック加熱素子であって、導電性のコア部分を含み、この導電性のコア部分が素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合し、次にこの高温の抵抗領域が、外側部分を形成する第2の導電性領域と接合する、同軸セラミック加熱素子に関し、ここで、導電性のコア部分と外側の導電性部分とは、絶縁体部分によって隔離される。
【0013】
本発明のこの態様に係る実施形態は、以下の特徴を含み得る。加熱素子は、電気抵抗率が異なる複数の部分、例えば、全て電気の通る順序で、第1の導電性領域と、抵抗性の高温領域と、第2の導電性領域とを含み得る。加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分(例えば、電気リード線が加熱素子に固定されるところから、抵抗性の高温領域まで延在する長さ)に沿って丸い断面形状を有し得る。加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分、例えば、加熱素子長さの少なくとも約10パーセント、40パーセント、60パーセント、80パーセント、90パーセント、又は加熱素子の全長について、実質的に楕円形、円形又は他の丸い断面形状を有し得る。加熱素子は、実質的に円形の断面長さを有してもよく、それによりロッド形状の加熱素子がもたらされる。加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分について、丸くない、又は非円形の断面長さを有し得る。抵抗性の高温領域は、外側部分における抵抗性の高温領域のレベルと同等なレベルまでコア部分内に延在し得る。導電性領域と抵抗性の高温領域との間の境界面は、従来の同軸設計と比べ、装置の遠位先端からより大きい距離だけ離れたところに設けられる。同軸加熱素子は、中心コアを通り、加熱素子の外側部分に沿って戻る電流の流れを提供し得る。加熱素子は軸対称であり得る。間置される空隙(空気)部分が、1つ又は複数の部分の間、例えば、コア部分と絶縁体部分との間に設けられ得る。導電性のコア部分は、外側の導電性部分内に囲い込まれるか、又はその他の方法で嵌装されてもよく、例えば、導電性のコア部分の約10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100パーセント以下の断面が、外側の導電性部分と重なる。
【0014】
別の態様において、本発明は、概して、加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、絶縁体部分によって導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分とを含む同軸セラミック加熱素子に関し、ここで、加熱素子のジュール加熱の少なくとも約5%が、中心コアで発生する。いくつかの実施形態において、加熱素子のジュール加熱の少なくとも約6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、及びさらには100%が、中心コアで発生する。いくつかの実施形態において、加熱素子のジュール加熱の約10%〜約100%が、中心コアで発生する。
【0015】
別の態様において、本発明は、概して、加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、絶縁体部分によって導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分とを含む同軸セラミック加熱素子に関し、ここで導電性のコア部分は、加熱素子の全長の少なくとも約10%である距離「a」だけ加熱素子の遠位先端から離れて高温の抵抗領域と接合する。いくつかの実施形態において、コア部分は、加熱素子の全長の少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、及びさらには50%の距離「a」で高温領域と接合する。いくつかの実施形態において、コア部分は、加熱素子の全長の約10%〜約50%の範囲の距離「a」で高温領域と接合する。
【0016】
別の態様において、本発明は、概して、加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、絶縁体部分によって導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分とを含む同軸セラミック加熱素子に関する。高温の抵抗領域は、「コア部分」の内側に距離「d」だけ延在する(例えば、図11Aに図示されるとおり)。換言すれば、高温の抵抗領域は、絶縁体部分の最遠位端から装置の近位端に向かって距離「d」だけ延在する。これは、高温の抵抗領域が絶縁体部分の最遠位端と面一か、又はさらには遠位にある従来の同軸加熱素子(例えば、図11Bによって図示されるとおり)とは対照的である。高温の抵抗領域は、外側部分において「コア部分」と同じレベルであってもよく(例えば、図10及び図11Aの線204及び208によって示されるとおり)、又は異なってもよい(例えば、図10及び図11Aの破線によって示されるとおり)。
【0017】
別の態様において、本発明は、概して、加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、絶縁体部分によって導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分とを含む同軸セラミック加熱素子に関し、ここで、高温の抵抗領域は絶縁体部分の間及び絶縁体部分の外表面上に延在し、且つ、絶縁体部分に沿って高温の抵抗領域が延在する距離は、絶縁体部分の間と絶縁体部分の外表面上とで同じである。
【0018】
加熱素子は、6、8、10、12、24、120、220、230、及び240ボルトの公称電圧を含め、幅広い公称電圧で用いることができる。
【0019】
加熱素子は、様々な装置及び加熱システムにおいて点火するための点火器として有用である。特定の加熱システムとしては、ガス調理ユニット、商業用及び住居用建物の加熱ユニット、並びに瞬間湯沸かし器のように極めて速い点火が求められる様々な加熱ユニットが挙げられる。加熱素子はまた、点火器/グロープラグ用途にも用いることができる。
【0020】
別の態様において、本発明は、概して、同軸セラミック加熱素子の作製方法に関し、これは、(a)予成形するか、又は固化させた絶縁体部分と、1つ又は複数の流動性を有する材料の部分とを結合するステップと、(b)流動性を有する部分を硬化させるか、ゲル化させるか、乾燥させるか、又はその他の方法で凝固若しくは固化させるステップと、(c)焼結により、内側コア部分と外側部分とが絶縁体部分によって分離された同軸加熱素子を形成するステップとを含む。
【0021】
本発明のこの態様に係る実施形態は、以下の特徴を含み得る。絶縁体部分は管の形態であり得る。1つ又は複数の流動性を有する材料は、1つ又は複数のスラリーの形態であり得る。1つ又は複数の流動性を有する材料は、1つ又は複数の粉末の形態であり得る。予成形するか、又は固化させた絶縁体部分と、1つ又は複数の流動性を有する材料の部分とを結合する方法ステップは、所望の加熱素子形状の金型内に、1つ又は複数の流動性を有する材料を提供し、金型内の材料中に、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分を挿入することを含み得る。予成形するか、又は固化させた絶縁体部分と1つ又は複数の流動性を有する材料の部分とを結合する方法ステップは、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分を空の金型に挿入し、金型の絶縁体部分の周囲を、1つ又は複数の流動性を有する材料で少なくとも部分的に充填することを含み得る。予成形するか、又は固化させた絶縁体部分と、1つ又は複数の流動性を有する材料の部分とを結合する方法ステップは、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分を空の金型内に部分的に挿入し、金型の絶縁体部分の周囲を、1つ又は複数の流動性を有する材料で少なくとも部分的に充填し、続いて、絶縁体部分をさらに金型内に所望の位置まで挿入することを含み得る。
【0022】
加熱素子は、外側層の1つ又は複数の箇所を浸漬被覆し、及び/又は除去することにより、絶縁部分及び/又はコア部分の1つ又は複数の箇所を露出させるなど、本方法の任意の段階においてさらなる加工ステップに供され得る。
【0023】
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図1B】本発明の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図1C】本発明の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図1D】本発明の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図2A】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図2B】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図3A】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図3B】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図4A】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図4B】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図4C】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子を示す。
【図5】例示的加熱素子を示す。
【図6】例示的加熱素子を示す。
【図7A】例示的加熱素子を示す。
【図7B】例示的加熱素子を示す。
【図8A】例示的加熱素子を示す。
【図8B】例示的加熱素子を示す。
【図9A】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子、並びにその製造手順によって形成された例示的加熱素子を示す。
【図9B】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子、並びにその製造手順によって形成された例示的加熱素子を示す。
【図9C】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子、並びにその製造手順によって形成された例示的加熱素子を示す。
【図9D】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子、並びにその製造手順によって形成された例示的加熱素子を示す。
【図9E】本発明の別の好ましい製造手順及び加熱素子、並びにその製造手順によって形成された例示的加熱素子を示す。
【図10】加熱素子の長さ及び絶縁体領域に対する高温領域と導電性のコア部分との間の境界面の実施形態を図示する。
【図11A】加熱素子の長さ及び絶縁体領域に対する高温領域と導電性のコア部分との間の境界面の実施形態を図示する。
【図11B】加熱素子の長さ及び絶縁体領域に対する高温領域と導電性のコア部分との間の境界面の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記に考察されるとおり、新規の同軸セラミック加熱素子及び製造方法が提供される。加熱素子は、同軸構造であって、コア部分を含み、このコア部分が素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合し、次にこの高温の抵抗領域が、外側部分を形成する第2の導電性領域と接合する、同軸構造を有する。導電性のコア部分と外側の導電性部分とは、絶縁体部分によって分離される。
【0026】
本明細書において参照されるとき、用語「絶縁体」又は「電気絶縁材料」は、少なくとも約1010オームcmの室温抵抗率を有する材料を指す。本発明の加熱素子の電気絶縁材料成分は、1つ又は複数の金属窒化物及び/又は金属酸化物のみから、又は主としてそれから構成されてもよく、或いは、絶縁性の成分は、1つ若しくは複数の金属酸化物又は1つ若しくは複数の金属窒化物に加えて材料を含んでもよい。例えば、絶縁材料成分は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素、SiALON、又は窒化ホウ素などの窒化物;希土類酸化物(例えばイットリア);又は希土類オキシ窒化物をさらに含有してもよい。
【0027】
本明細書において参照されるとき、半導体セラミック(又は「半導体」)は、約10〜10オームcmの室温抵抗率を有するセラミックである。半導体成分が高温領域の組成物の約45v/oより多く存在する場合(導電性セラミックが約6〜10v/oの範囲のときに)、得られる組成物の導電性は、高電圧用途には高過ぎる(絶縁体が不足しているため)。逆に、半導体材料が約5v/o未満しか存在しない場合(導電性セラミックが約6〜10v/oの範囲のときに)、得られる組成物の抵抗は低過ぎる(絶縁体が多過ぎるため)。ここでも、導体のレベルが高いほど、より抵抗の高い絶縁体と半導体との混合割合が、所望の電圧を実現するために必要となる。典型的には、半導体は、炭化ケイ素(ドープ型及び非ドープ型)、及び炭化ホウ素からなる群からの炭化物である。
【0028】
本明細書において参照されるとき、「導電性材料」は、約10−2オームcm未満の室温抵抗率を有する材料である。導電性成分が高温領域の組成物の35v/oより多い量で存在する場合、得られるセラミックの導電性は、高過ぎることになり得る。典型的には、二珪化モリブデン、二珪化タングステン、及び窒化チタンなどの窒化物、及び炭化チタンなどの炭化物からなる群から選択される導体である。二珪化モリブデンが一般には好ましい。
【0029】
セラミック組成物(例えば、絶縁体、導電性材料、半導体材料、抵抗材料)のいずれについても、セラミック組成物は、1つ又は複数の異なるセラミック材料(例えば、SiC、Alなどの金属酸化物、AlNなどの窒化物、MoSi及び他のMo含有材料、SiAlON、Ba含有材料など)を含み得る。或いは、互いに異なるセラミック組成物(すなわち、単一の加熱素子において、絶縁体領域、導体領域及び抵抗(点火)領域として機能する、互いに異なる組成物)が、同じセラミック材料配合物(例えば、互いに異なるセラミック材料の二元、三元又はそれ以上の次元の配合物)を含んでもよく、但し、ここでこれらの配合物要素の相対量は異なり、例えば、1つ又は複数の配合物要素が、互いに異なるセラミック組成物のそれぞれの間で、少なくとも5、10、20、25又は30体積百分率だけ異なる。
【0030】
様々な組成物を用いて本発明の加熱素子が形成され得る。一般に好ましい高温領域の組成物は、1)導電性材料と;2)半導体材料と;3)絶縁材料との少なくとも3つの成分を含む。導電性(低温)部分と絶縁(ヒートシンク)部分とは、同じ成分から構成されてもよく、但し、上述されるとおり、それらの成分は異なる比率で存在する。典型的な導電性材料としては、例えば、二珪化モリブデン、二珪化タングステン、窒化チタンなどの窒化物、及び炭化チタンなどの炭化物が挙げられる。典型的な半導体としては、炭化ケイ素(ドープ型及び非ドープ型)及び炭化ホウ素などの炭化物が挙げられる。典型的な絶縁材料としては、アルミナなどの金属酸化物又はAlN及び/又はSiなどの窒化物が挙げられる。
【0031】
一般に、好ましい高温(抵抗)領域の組成物は、(a)少なくとも約1010オームcmの抵抗率を有する電気絶縁材料を約50〜約80v/oと;(b)約10〜約10オームcmの抵抗率を有する半導体材料を約5〜約45v/oと;(c)約10−2オームcmの抵抗率を有する金属導体を約5〜約35v/oとを含む。好ましくは、高温領域は、50〜70v/oの電気絶縁性セラミックと、10〜45v/oの半導体セラミックと、6〜16v/oの導電性材料とを含む。本発明の加熱素子での使用に特に好ましい高温領域の組成物は、10v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りの割合のAlN又はAlとを含む。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「予成形された」は、例えば領域又は1つ若しくは複数の材料を参照するとき、流動性を有さず、且つ流動性を有する材料の領域と結合されても形状が変化しない領域又は1つ若しくは複数の材料を指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「流動性」を有する材料又は領域は、予成形された領域又は1つ若しくは複数の材料と結合されると、予成形された領域又は1つ若しくは複数の材料に適合するように動く領域又は1つ若しくは複数の材料を指す。こうした材料としては、例えば、スラリー及び粉末が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「温度到達時間」又は同様の用語は、点火器の高温領域が室温(約25℃)から燃料(例えばガス)点火温度の約1000℃まで昇温するのにかかる時間を指す。特定の点火器についての温度到達時間値は、好適には、二色の赤外高温計を使用して測定される。
【0035】
ここで図面を参照すると、図1A〜Dは、同軸加熱素子10の形成方法の一実施形態を示す。任意の所望の加熱素子形状を有する金型11に、流動性を有する第1の材料12が提供される。金型11を使用して、例えば、図に示されるとおりの、丸い断面、特に円形の断面を有するロッド状の加熱素子が提供される。当然ながら、任意の金型形状が同様に用いられ得る。金型11には、流動性を有する第2の材料14もまた提供される。
【0036】
第1の材料12と第2の材料14とは、例えば図1Aに示されるとおり、金型11に加えたときに互いに大幅に混ざり合ってはならない。
【0037】
材料12、14のかかる分離は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、材料12、14を十分に高い粘度で金型11内に導入することにより、実質的に互いに混ざり合うことを回避し得る。この手法では、材料12、14は、粉末として、又は実質的に互いに混ざり合うことのない粘性組成物(例えば、1つ又は複数の高分子結合剤を含む組成物)として導入され得る。
【0038】
材料12、14はまた、より低い粘度の、互いに混ざり合うことは回避される組成物、例えば、ある材料を水性組成物として導入し、第2の材料を有機溶媒担体で導入するなど、異なる極性の担体溶媒を有する組成物で、金型11内に導入され得る。
【0039】
さらなる手法では、異なる密度を有する第1の材料12及び第2の材料14が利用されてもよく、第1の材料12は第2の材料14より密度が高いため、第1の材料は金型の底部に定着し、及び第2の材料は金型の上部に定着して二相となる。
【0040】
金型に添加される材料12又は14の典型的な組成物としては、それぞれ、適切なスラリーとなるよう、水及び/又は1つ若しくは複数の有機溶媒、1つ若しくは複数の結合剤、分散剤及びpH調整と組み合わされたセラミック粉末(例えば、Al、SiC、MoSi、AlN、Si)が挙げられる。ある結合剤組成物は、約6〜8wt%の植物性ショートニング、2〜4wt%のポリスチレン及び2〜4wt%のポリエチレンを含み得る。
【0041】
当然ながら、相間、例えば、相間の界面の部分に沿っていくらかの量の混合はあってもよく、それにより、各相が凝固又は固化したときの強度及び相間の結合の促進がもたらされ得る。
【0042】
材料12、14は、金型に同時に、又は任意の順序で導入することができ、定着すると、記載のとおり二相を形成し得る。作製を容易にして時間を短縮するため、第1の材料12がまず初めに添加され、次に第2の材料14が添加される。第2の材料は、第1の材料12と第2の材料14とが過度に混合しないよう漸増させる形で添加され得る。過度に混合すれば、材料12、14が各相に定着するまでに、さらに時間を要し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の材料12と第2の材料14とは、抵抗率が異なる。例えば、例示的実施形態において、第1の材料12は、加熱素子の遠位端12aを形成する抵抗材料である一方、第2の材料14は導電性材料であり、従って、結果としてその遠位端12aに「高温領域」を有する加熱素子(例えば、図1Dに示されるとおり)が得られる。必要であれば、第1の材料12及び第2の材料14と異なる抵抗率を有する1つ又は複数のさらなる材料がさらに提供され、抵抗率の異なるさらなる領域を有する加熱素子が形成され得る(例えば、図2B及び図3Bに示されるとおり、第1の材料12と第2の材料14との間に、「ブースター領域」を形成するよう第3の材料13が位置する)。図1Bに示されるとおり、次に、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分16が、金型内の第1の材料12及び第2の材料14の中に挿入される。材料12、14は流動性を有するため、絶縁体部分16が金型内のその所望の位置に押し込まれると、絶縁体部分16によって動かされる。絶縁体部分16は、いくつかの実施形態において、挿入を促進するよう先の尖った、又は鋭い遠位端を備え得る。いくつかの実施形態において、絶縁体部分16は、絶縁体部分16を金型内に適切に置くための1つ又は複数の突出部15を、近位端に備える(例えば、図1C及び図3A〜図3Bに示されるとおり)。例えば、管の形態が実質的に円形の断面形状を有するとき、絶縁体部分16の近位端は、例えば、その周囲に沿ってリップを有してもよく、このリップは、金型の上面に載置され、それにより製造中に絶縁体部分16をその適切な位置に位置決めして保持するように構成される。同様に絶縁体部分16の位置決めを促進するための、任意の他の好適な1つ又は複数の突出部(例えば、絶縁体部分16の近位端から延在する対向するタブ)が提供され得る。突出部は、典型的には絶縁体材料で形成され、好ましくは絶縁体部分16と同じ材料で形成される。しかしながら、必要であれば、突出部15には異なる材料を使用してもよい。こうした突出部は、場合により加熱素子の製造後に取り除かれてもよく(例えば、材料12、14の固化/凝固後又は焼結後)、例えば、容易な取外し機構が提供され得るか、又は必要であれば機械で切り取るか、若しくは同様に取り除き得る。絶縁体部分16を適切に位置決めし、所望のとおり/必要に応じて材料12、14を各相に定着させると、材料12、14は、材料12、14を固化又は凝固させるための要件に従い条件に曝露され、及び/又は処理される(例えば、硬化、ゲル化、乾燥、及び/又は他の好適な手段による)。次に、このように形成された加熱素子が金型から取り出され、必要であれば好適なさらなる加工ステップに供される。特に、加熱素子を高温(例えば、1600℃、1700℃又は1800℃より高温)で焼結すると、緻密な加熱素子が形成される。
【0044】
このように形成された加熱素子1が図2A及び図2Bに示され、これは導電性のコア部分22を備え、この導電性のコア部分22は素子の遠位端にある高温の抵抗領域20と接合し、次にこの高温の抵抗領域20は、第2の導電性の外側部分26と接合する。導電性のコア部分22と外側の導電性部分26とは、絶縁体部分24によって分離される。この実施形態に従えば、高温領域20は第1の材料10で形成される。コア部分22と外側部分26とは同じ材料で形成され、これは、図1A〜図1Dに示される第2の材料14である。図2Bの実施形態に示されるとおり、第3の材料13が金型に提供されるときも、コア部分22と外側部分26とは同じ材料で形成され、これは、第2の材料14と第3の材料13との組み合わせである。
【0045】
加熱素子は、いくつかの実施形態において、例えば、外側層の1つ又は複数の箇所を浸漬被覆し、除去するなど、従来技術に従う1つ又は複数の追加的な加工ステップに供され、さらなる所望の特性が付与され得る。
【0046】
図3A及び図3Bは、同軸加熱素子の形成方法の別の実施形態を示す。図3Aに示されるとおり、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分16は、金型11内においてその所望の端部位置に(例えば、適切な位置決めを促進し得るための、絶縁体部分16の近位端にある1つ又は複数の突出部を使用して)挿入される。次に、流動性を有する第1の材料12及び第2の材料14(及び、いくつかの実施形態において、第3の材料13などの1つ又は複数のさらなる材料)が、同時に、又は任意の順序で順番に金型に提供され、これらはその流れ特性によって金型11の絶縁体部分16の周りの空間を完全に充填する。本明細書において考察されるとおり、第1の材料12と第2の材料14とは実質的に互いに混じり合わない。必要であれば、絶縁体部分16がさらに動かされ、材料12、14内に位置決めされ得る。次に、材料12、14は、材料12、14を固化又は凝固させるための要件に従い条件に曝露され、及び/又は処理される(例えば、硬化、ゲル化、乾燥、及び/又は他の好適な手段による)。次に、このように形成された加熱素子が金型から取り出され、必要であれば、本明細書に記載される好適なさらなる加工ステップに供される。このように形成された加熱素子18は、図1A〜図1Dの方法に従い提供されるものと同じであり得るとともに、図2A〜図2Bに示される。
【0047】
図4A〜図4Cは、同軸加熱素子の形成方法の別の実施形態を示す。この方法は、図1A〜図1Dに示される方法と、図3A〜図3Bに示される方法との組み合わせである。図4Aに示されるとおり、予成形するか、又は固化させた絶縁体部分16が、金型11に部分的に挿入される。次に、流動性を有する第1の材料12及び第2の材料14(及び、いくつかの実施形態において、第3の材料13などの1つ又は複数のさらなる材料)が、同時に、又は任意の順序で順番に金型に提供され、これらはその流れ特性によって金型11の絶縁体部分16の周りの空間を完全に充填する。次に、絶縁体部分16が、金型内のその所望の端部位置まで材料12、14中にさらに挿入されるか、又は押し込まれ、本明細書に記載されるとおり、それによって材料12、14が動かされる。絶縁体部分16が適切に位置決めされると、材料12、14は、材料12、14を固化又は凝固させるための要件に従い条件に曝露され、及び/又は処理される(例えば、硬化、ゲル化、乾燥、及び/又は他の好適な手段による)。次に、このように形成された加熱素子が金型11から取り出され、必要であれば、好適なさらなる加工ステップに供される。このように形成された加熱素子18は、図1A〜図1D及び図3A〜図3Bの方法に従い提供されるものと同じであり得るとともに、図2A〜図2Bに示される。
【0048】
概して図5に示されるとおり、本発明の好ましい加熱素子100は、概して、導電性のコア部分22を含み、この導電性のコア部分22は素子の遠位端にある高温の抵抗領域20と接合し、次にこの高温の抵抗領域20は、第2の導電性の外側部分26と接合し得る。導電性のコア部分22と外側の導電性部分26とは、絶縁体部分24によって分離される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態に従えば、絶縁体部分16が金型に提供される前、又は提供された後に、金型は抵抗材料12で部分的に充填され、一方、金型の残りの部分は、所望のレベルまで導電性材料14で充填される。抵抗材料及び導電性材料は、特定の実施形態において、セラミックスラリーの形態であってもよく、及びゲルキャスト成形又はスリップキャスト成形技法が用いられ得る。抵抗材料及び導電性材料は、特定の他の実施形態において、セラミック粉末の形態であり得る。予成形するか、又は固化させた/固体の絶縁体部分16は、金型への挿入前に、例えば、ゲルキャスト成形、スリップキャスト成形、押出し、射出成形、加圧成形、CIP等の、絶縁体を形成するための任意の好適な方法によってその所望の形状に形成され得る。ゲル化及び/又は乾燥は、スラリーを固化させるのに好適な加工ステップの例であり得る一方、加圧成形又はCIP加工は、粉末材料に好適な加工ステップであり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、例えば図2Bに示されるとおり、ブースター領域が提供され、ここではコア部分22が、比較的抵抗の低い第1の導電性領域22a(導電性材料14で形成される)と、中程度の抵抗の第2の導電性領域22b(導電性材料13で形成される)とを含み、且つ外側部分26もまた、比較的抵抗の低い第1の導電性領域26a(導電性材料12で形成される)と、中程度の抵抗の第2の導電性領域26b(材料13で形成される)とを含む。そのため、得られる加熱素子は、その電気経路に沿って順番に、比較的抵抗の低い第1の導電性領域と、中程度の抵抗のブースター領域(ときに増強領域とも称される)と、抵抗の高い高温領域(ときに点火領域とも称される)とを含む、電気抵抗の異なる少なくとも3つの領域を備える。ブースター領域は、概して正の抵抗温度係数(PTCR)を有し、高温領域により効果的な電流の流れを提供することができる。Willkensに対する米国特許出願公開第2002/0150851号明細書を参照のこと。
【0051】
いくつかの実施形態において、加熱素子の幅又は断面は、遠位範囲において減少又は縮径する。例えば、加熱素子は、その長さの一部分に沿った導電性の範囲で形成されてもよく、さらに、抵抗の増加をもたらすテーパ状の遠位部を備え得る。例えば、点火器の第1の導電性範囲62(例えばコアの近位端にある)が、高温領域64の最小の断面積又は幅(図6における幅g)より少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍大きい最大の断面積又は幅(図6における幅f)を有し得る。いくつかの実施形態において、導電性範囲62と高温領域64とは同じ材料で形成され、縮径することによってのみ、高温領域64における抵抗の増加がもたらされる。いくつかの実施形態において、高温領域64は、導電性範囲62より大きい抵抗を有する材料で形成され、高温領域64が縮径していることで、高温領域64における抵抗の増加がさらに亢進される。高温領域の範囲において、このように幅又は断面積が減少することにより、導電性領域及び高温領域を形成するために用いられる組成物の違いを最小限に抑えることができるため、互いに異なる領域の組成物の熱膨張係数が良好に一致し、それにより、点火器に亀裂が入ったり、又はその他の形で劣化したりする可能性を回避できることを含め、互いに異なる領域の接合が促進されるという利点が提供され得る。より詳細には、高温領域の範囲の幅又は断面積をこのように減少させることで、高温領域の範囲において、比較的導電性が高く、且つ導電性領域に用いられるセラミック材料に少なくとも近いセラミック組成物を使用することが可能となり得る。これらのシステムでは、セラミック材料それ自体ではなく(又はセラミック材料に加えて)、高温領域の幅の減少が、抵抗加熱をもたらす。
【0052】
本明細書において考察されるとおり、コア62と外側部分66との間には、示されるとおり絶縁体領域68が間置される。図6は、断面の幅又は寸法がその長さに沿って徐々に縮径する加熱素子を示すが、加熱素子は異なるテーパ構成を備えてもよいことが注記される。例えば、加熱素子は、導電性の近位部に沿った断面の幅又は寸法が実質的に一定であってもよく、且つ遠位の高温領域の範囲でのみ縮径してもよい。
【0053】
多くの用途に丸い断面形状が用いられるが、本発明の加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分について、丸くない、又は非円形の断面形状を有してもよく、例えば、加熱素子長さの最大又は少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80又は90パーセントが、丸くない、又は非円形の断面形状を有するか、又は加熱素子の全長が、丸くない、又は非円形の断面形状を有する。
【0054】
例えば、加熱素子は、図7A及び図7Bに図示される加熱素子70によって例示されるとおり、実質的に正方形の外形で提供され得る。加熱素子70は、角状の断面形状(より詳細には、図7Bに明確に図示されるとおり、実質的に正方形の断面形状)を有する矩形状又はスティルト状のコア導電性領域72と、同様に角状の外側導電性領域74と、それらの間に間置された絶縁体部分76とを含む。本明細書に記載されるような高温領域が、さらに提供され得る。
【0055】
図8A及び図8Bに示されるとおりの加熱素子80によって例示されるような、不規則な丸い形状の外形を有する加熱素子もまた、提供され得る。加熱素子80は、各々が不規則な丸い断面形状を有するコア導電性領域82及び外側導電性領域84と、それらの間に間置される不規則な形状の絶縁体部分86とを含む。本明細書に記載されるような高温領域が、さらに提供され得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、同軸加熱素子に1つ又は複数のさらなる層を加えることが望ましいことがある。例えば、図9A〜図9Eに示されるとおり、さらなる外側層23が提供され得る。特定の実施形態において、この外側層23は、絶縁体層である。この加熱素子の形成には、上記の一般的な方法を用いることができ、金型の表面の少なくとも一部分に沿って金型の内側を覆うようにして、予成形されたさらなる絶縁体部分43を金型11に挿入する追加のステップを伴う。第1のステップとして、絶縁体部分43が、概して、例えば図9Aに示されるとおり挿入され、続いて、上記のとおり任意の順序でさらなる加工ステップ(例えば、任意の順序による第1の材料12/第2の材料14及び絶縁体部分46の導入、材料12、14の固化又は凝固、及び焼結)が行われることにより、1つ又は複数のさらなる層を有する加熱素子が提供される。例えば、図9Eに示されるとおり、加熱素子は導電性のコア部分22を備えてもよく、この導電性のコア部分22は素子の遠位端にある高温の抵抗領域20と接合し、次にこの高温の抵抗領域20は、第2の導電性の外側部分26と接合する。導電性のコア部分22と外側の導電性部分26とは、絶縁体部分24によって分離され、装置の外表面は、その長さの少なくとも一部分に沿って、外側の絶縁体部分23によって被覆される。
【0057】
別の実施形態において、加熱素子は、1つ又は複数のさらなる「内側」層を備え得る。例えば、加熱素子は、本明細書で考察される方法のいずれかに従い、絶縁体部分16の内側及び/又は周囲に挿入された1つ又は複数の追加的な予成形された絶縁体部分(例えば同軸の絶縁体管)を備えることができる。1つ又は複数の追加的な絶縁体部分は、材料12、14を固化又は凝固させる前のいずれの段階でも挿入することができる。任意の形状、数、及び構成の絶縁体部分を提供することができる(例えば、加熱素子に沿って長手方向に延在する細長い絶縁体部分が、例えば概して示されるが、絶縁体部分はそれに限定されず、例えば、加熱素子本体に沿って異なる方向に延びてもよい。必要であれば、図9A〜図9Eに関連して考察されたとおりの外側の絶縁体コーティングなど、さらなる層を提供してもよい。
【0058】
本発明の加熱素子の寸法は幅広く異なり得るとともに、その意図する用途に基づき選択され得る。例えば、加熱素子の長さは、好適には、約0.5〜約5cm、いくつかの実施形態においては約1〜約3cmであり得る。加熱素子の断面の幅は、好適には約0.2〜約3cmであり得る。同様に、導電性部分、絶縁体部分、及び高温領域部分の長さも好適に異なり得る。導電性のコア部分の例示的長さは、約0.2cm〜約2cm、〜約3cm、〜約4cm、〜約5cm、又はそれ以上であり得る。コア導電性領域の典型的な長さは、約0.5〜約5cmであり得る。高温領域の高さは、約0.1cm〜約2cm、〜約3cm、〜約4cm、又は〜約5cmで、高温領域の電気経路の全長が約0.2〜約2cm又はそれ以上であり得る。高温領域の電気経路の典型的な長さは、約1.5cm〜約2cmの範囲である。
【0059】
本発明に従い形成される同軸加熱素子は、加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域20と接合又は当接する導電性のコア部分22と、絶縁体部分24によって導電性のコア部分22と隔離される外側の導電性部分26とを提供し、ここで導電性のコア部分22は、高温の抵抗領域20と接合する(例えば、図10及び図11Aの境界線204及び208によって示されるとおり)。この境界面は、従来の同軸加熱素子と比べて加熱素子の遠位先端200からより大きい距離「a」だけ離れたところに設けられる。特に、同軸加熱素子は、例えば、図11Bの線210及び破線によって示されるとおり、コア部分内にある(絶縁体部分26の間又はその内側の)絶縁体部分24の最遠位端と面一か、又はそれより遠位にある高温の抵抗領域20を提供する。例えば、本加熱素子及び方法は、遠位先端200から離れて、加熱素子の全長「b」の少なくとも約10%である距離「a」を提供し得る。いくつかの実施形態において、コア部分22は、加熱素子の全長「b」の少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、及びさらには50%の距離「a」にある境界面204で高温領域20と接合する。いくつかの実施形態において、コア部分22は、加熱素子の全長「b」の約10%〜約50%の範囲の距離「a」において高温領域20と接合する。外側の導電性部分26と高温の抵抗領域20との間の境界面は、コア部分22における境界面と同等であってもよく(例えば、図10及び図11Aの線204及び208によって示されるとおり)、又は境界面は、コア部分22における境界面より「高い」又は「低い」レベルにあってもよい(例えば、図10及び図11Aの破線によって示されるとおり)。外側部分26における抵抗性の高温領域20と導電性領域との間の境界面のレベルは、概して同一であるが、必要であれば、異なってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、図11Aに図示されるとおり、高温の抵抗領域20は、「コア部分」内に(すなわち、絶縁体部分24の間又はその内側に)距離「d」だけ延在する。換言すれば、高温の抵抗領域は、絶縁体部分24の最遠位端から装置の近位端に向かって距離「d」だけ延在する。これは、高温の抵抗領域が絶縁体部分の最遠位端と面一であるか、又はそれより遠位にさえある従来の同軸加熱素子(例えば、図11Bによって図示されるとおり)とは対照的である。いくつかの実施形態において、距離「d」は、絶縁体部分の全長(図11Aにおいて「e」によって示されるとおり)の少なくとも1%である。いくつかの実施形態において、距離「d」は、距離「e」の少なくとも2%、少なくとも4%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、及びさらには50%である。いくつかの実施形態において、距離「d」は、距離「e」の約1%〜約50%である。
【0061】
例示的実施形態において、本発明の加熱素子の高温領域又は抵抗領域は、公称電圧で約1450℃未満の最高温度まで;及び公称電圧の約110パーセントである上限線間電圧で、約1550℃未満の最高温度まで;及び公称電圧の約85パーセントである下限線間電圧で、約1350℃未満の最高温度まで加熱され得る。
【0062】
本加熱素子及び方法は、内側の導電性のコア部分22が絶縁体部分24によって外側の導電性部分26と隔離される場合について記載されているが、コア部分22及び/又は外側部分26が1つ又は複数の絶縁体材料で形成されてもよく、一方、コア部分と外側部分との間に間置される部分24が1つ又は複数の導電性材料で形成されてもよいことは理解されるべきである。さらに、本明細書に記載される実施形態は、抵抗率の高い組成物によって提供される高温領域20を備えるが、いくつかの実施形態においては、異なる抵抗率の組成物によって形成されたかかる高温領域はなくてもよい。いくつかの実施形態では、異なる抵抗率の組成物による高温領域20はなく、加熱素子はテーパ状の遠位端を備えることで、遠位端に高い抵抗を提供する。
【実施例】
【0063】
以下の非限定的な例は、本発明の例示である。ここで言及される文献は全て、全体として参照により本明細書に援用される。
【0064】
実施例1:加熱素子の製造
抵抗性組成物(20vol%のMoSi、5vol%のSiC、74vol%のAl及び1vol%のGd)の粉末、導電性組成物(28vol%のMoSi、7vol%のSiC、64vol%のAl及び1vol%のGd)の粉末を、10〜16wt%の有機結合剤(約6〜8wt%の植物性ショートニング、2〜4wt%のポリスチレン及び2〜4wt%のポリエチレン)と混合し、約62〜64vol%固体の装入物である2つのペーストを形成する。
【0065】
抵抗性組成物のペーストを、概して図1A〜図1Dに図示されるとおりのU字型金型に装入し、続いて抵抗性組成物の上に導電性のペースト組成物を装入することにより、概して図1Aに示されるとおりの分離したセラミック組成物層を提供する。
【0066】
次に、2本の予成形された絶縁体管を金型に挿入し、それによって絶縁体管を、導電性組成物層を通じて抵抗性組成物層の中まで延在させる。絶縁体管は、絶縁性組成物10vol%のMoSi、89vol%のAl及び1vol%のGdの組成物によって形成される。
【0067】
このように充填された金型は、次に1000℃超の熱で1時間処理し、3つの領域の加熱素子を固化させる。次に加熱素子を金型から取り出し、1atmの圧力下にアルゴン中1750℃で、理論値95〜97%まで緻密化させる。
【0068】
実施例2:加熱素子の製造
以下の構成要素、すなわち、水、Al、MoSi、SiC、Kelcogel(ゲル化剤)、Darvan 811(分散剤)、WB4101及びM040(結合剤)、及びCaClを使用して、抵抗性スラリー及び導電性スラリー(双方とも約50vol%固体)を形成する。特に、50〜95wt%のAlと、10〜45wt%のMoSiと、0〜5wt%のSiCとの固体混合物を調製する。90〜95wt%の水と、1〜4wt%のKelcogelと、1〜4wt%のDarvan 811と、0.5〜2.0wt%の結合剤(WB4104及びM040)と、0.25〜1.0wt%のCaClとの液体混合物もまた調製する。次に、固体混合物と液体混合物とを加え合わせて、40〜60vol%固体を含むスラリーを提供する。
【0069】
概して図1A〜図1Dに図示されるとおりのU字型金型に抵抗性スラリーを装入し、続いて抵抗性組成物の上に導電性スラリーを装入することにより、概して図1Aに示されるとおりの分離したセラミック組成物層を提供する。
【0070】
次に、予成形された絶縁体管を金型に挿入し、それによって絶縁体管を、導電性組成物層を通じて抵抗性組成物層の中まで延在させる。
【0071】
このように充填された金型は、次に乾燥させて金型から取り出す。その後、素子をゲル状にし、焼結によって緻密化したうえ、加圧成形する(熱間等静圧圧縮成形)。次に、さらなる機械加工及びろう付けステップを行い、所望の特性を有する加熱素子を提供する。
【0072】
本発明は、その特定の実施形態を参照して詳細に記載されている。しかしながら、当業者が、本開示を考察することで、本発明の趣旨及び範囲内において修正及び改良を行い得ることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック抵抗加熱素子の作製方法であって、
a)予成形された材料の領域を、1つ又は複数の流動性を有する材料の領域と一体に合わせるステップと、
b)前記流動性を有する材料を固化させて加熱素子を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱素子が焼結され、それによって一体化した同軸加熱素子が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予成形された絶縁体材料が導電性領域と接触する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
予成形された絶縁体材料が、導電性領域及び抵抗領域と接触する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
予成形された絶縁体材料が、導電性領域の組成物中に挿入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱素子が、固化後に金型から取り出される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
導電性組成物を金型に加え、その後、前記予成形された要素と前記導電性組成物とを一体に合わせるステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抵抗性組成物及び前記抵抗性組成物と異なる導電性組成物を金型に加え、その後、前記予成形された要素と前記導電性組成物とを一体に合わせるステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られる同軸セラミック加熱素子。
【請求項10】
加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、
絶縁体部分によって前記導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分と、
を含む同軸セラミック加熱素子であって、
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約5%が前記中心コアで発生する、同軸セラミック加熱素子。
【請求項11】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約6%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項12】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約8%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項13】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約10%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項14】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約20%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項15】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約30%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項16】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約40%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項17】
前記加熱素子のジュール加熱の少なくとも約50%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項18】
前記加熱素子のジュール加熱の約10%〜約100%が前記中心コアで発生する、請求項10に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項19】
加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、
絶縁体部分によって前記導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分と、
を含む同軸セラミック加熱素子であって、
前記導電性のコア部分が、前記加熱素子の全長の少なくとも約10%である距離「a」だけ前記加熱素子の前記遠位先端から離れたところで前記高温の抵抗領域と接合する、同軸セラミック加熱素子。
【請求項20】
距離「a」が前記加熱素子の全長の約50%以下である、請求項19に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項21】
距離「a」が前記加熱素子の全長の約20%以下である、請求項19に記載の同軸セラミック加熱素子。
【請求項22】
加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、
絶縁体部分によって前記導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分と、
を含む同軸セラミック加熱素子であって、
前記高温の抵抗領域が、前記絶縁体部分の間において前記絶縁体部分の前記遠位端から距離「x」だけ延在し、且つ前記高温の抵抗領域が、前記絶縁体部分の前記外表面に沿って前記絶縁体部分の前記遠位端から距離「y」だけ延在し、距離「x」は距離「y」とほぼ等しい、同軸セラミック加熱素子。
【請求項23】
加熱素子の遠位端にある高温の抵抗領域と接合する導電性のコア部分と、
絶縁体部分によって前記導電性のコア部分と隔離された外側の導電性部分と、
を含む同軸セラミック加熱素子であって、
前記高温の抵抗領域が、前記絶縁体部分の間において、前記絶縁体部分の最遠位端から前記装置の近位端に向かって距離「d」だけ延在する、同軸セラミック加熱素子。
【請求項24】
輸送機関のグロープラグである、請求項9〜23のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項25】
家庭用電気器具の点火器である、請求項9〜23のいずれか一項に記載の加熱素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2011−523160(P2011−523160A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540678(P2010−540678)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/014127
【国際公開番号】WO2009/085319
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】