説明

吐出ヘッドの保存方法、及び吐出ヘッド保存ユニット

【課題】吐出ヘッドの内部及び吐出ノズルの部分に保存液が充填されて、乾燥が発生し難い保存状態を維持できる、吐出ヘッドの保存方法、及び吐出ヘッド保存ユニットを提供する。
【解決手段】吐出ヘッドの保存方法は、液状体が吐出される吐出ノズルと、吐出ノズルに連通する液状体の流路と、流路に連通する液導入孔と、を有する吐出ヘッドの保存方法であって、液溜部を有する液溜器を、液溜部が液導入孔に連通する状態で吐出ヘッドに接続する工程と、吐出ノズルと、流路と、液導入孔と、液溜部とに、保管液を充填する工程と、を有する。吐出ヘッド保存ユニットは、液状体を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルに連通する液状体の流路と、流路に連通する液導入孔とを備える吐出ヘッドと、液導入孔に連通する液溜部を有する液溜器と、吐出ノズルと、流路と、液導入孔と、液溜部とに充填された保管液と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドの保存方法、及び吐出ヘッドを保存するための吐出ヘッド保存ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラー液晶装置のカラーフィルタ膜などの機能膜を形成する技術として、液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを有する描画装置を用いて、機能膜の材料を含む液状体の液滴を吐出して基板上の任意の位置に着弾させることで、当該位置に液状体を配置(描画)し、配置した液状体を乾燥させて機能膜を形成する技術が知られている。このような膜形成に用いられる液滴吐出ヘッドは、その吐出ノズルから微小な液滴を選択的に吐出して位置精度良く着弾させることができるため、精密な平面形状及び膜厚を有する膜を形成することができる。
【0003】
精密な吐出を可能にする液滴吐出ヘッドは、精密な部品を、清浄な環境で、精密に組立てることが必要である。精密に組立てられた液滴吐出ヘッドは、組立検査などで用いられる液状体が液滴吐出ヘッドの内部や吐出ノズルの部分において乾燥して、乾燥後に残留した残留物が固着することによって特性が損なわれることを防止する必要がある。このため、組立てられた液滴吐出ヘッドは、内部に液状体を充填しておくことが好ましい。液滴吐出ヘッドを保管したり輸送したりする場合に、液滴吐出ヘッドの特性を維持するために、特許文献1には、記録ヘッドに保存用インクを充填して保存する方法が開示されている。特許文献2には、液滴を吐出するノズルが形成された面にシール液体を供給する供給装置を備え、ノズルの乾燥を防止するインク乾燥防止装置が開示されている。特許文献3には、ノズルが形成された面に貼ることによって保存用インクの流出を防止する粘着テープが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−160356号公報
【特許文献2】特開2002−160378号公報
【特許文献3】特開平5−84925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたような方法では、保存用のインクが蒸発したり流出したりすることによって、保存用インクが液滴吐出ヘッドの内部及び吐出ノズルの部分に充填された適切な保存状態を、必ずしも維持できないという課題があった。特許文献3に開示されたような粘着テープを用いることで、乾燥防止や流出防止を図ることができるが、完全に蒸発や流出を防止することは困難である。さらに、粘着テープの粘着剤などがノズル面などに付着することで、ヘッド特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、粘着剤などの洗浄のような処理が新たに必要となるという別の課題が発生した。特許文献2に開示されたような装置は、吐出ノズルの部分の乾燥防止には寄与するが、液滴吐出ヘッドの内部の乾燥防止には寄与しないため、液滴吐出ヘッドの内部の流路などが乾燥することに起因して、液滴吐出ヘッドの特性が損なわれる可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法は、液状体が吐出される吐出ノズルと、前記吐出ノズルに連通する前記液状体の流路と、前記流路に連通する液導入孔と、を有する吐出ヘッドの保存方法であって、液溜部を有する液溜器を、前記液溜部が前記液導入孔に連通する状態で、前記吐出ヘッドに接続する工程と、前記吐出ノズルと、前記流路と、前記液導入孔と、前記液溜部とに、保管液を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、吐出ヘッドの吐出ノズルと、流路と、液導入孔とに保管液が充填される。これにより、吐出ノズル、流路、及び液導入孔が乾燥することを抑制することができる。また、液溜器は、液溜部が液導入孔に連通する状態で吐出ヘッドに接続されており、液溜部には保管液が充填されている。このため、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が液導入孔から流出したり蒸発したりすることを防止することができる。また、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が流出などによって失われた場合でも、液溜部に充填された保管液が液導入孔を介して流入することによって、吐出ノズルと、流路と、液導入孔とに保管液が充填された状態を維持することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記液溜部は、負圧形成構造を有することが好ましい。
【0010】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、液溜部が有する負圧形成構造によって、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液が充填された状態では、液溜部から液導入孔に保管液が流入しないように、液溜部内の保管液の圧力を調整することができる。液溜部内の保管液が吐出ノズル、流路、及び液導入孔に流入し難いため、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が吐出ノズルから流出することを抑制することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記負圧形成構造は、前記液溜部を、前記液溜部における前記保管液で満たされた前記液導入孔に連通する部分以外の部分において外部と隔絶させることによって構成されていることが好ましい。
【0012】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、液溜部は液導入孔に連通する部分以外の部分において外部と隔絶されており、液導入孔にむけて保管液が流出しても外部から流入することはない。このことにより、液導入孔にむけて保管液が流出すると液溜部の内部の圧力が低下するため、保管液が液溜部から液導入孔に流出することを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記負圧形成構造は、前記液溜部内に配設された多孔質部材によって構成されていることが好ましい。
【0014】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、多孔質部材の孔においては、毛細管現象によって、保管液が孔の内部に保持される。これにより、保管液が液溜部から流出し難くすることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットであって、前記液溜部は、前記圧力調整バルブユニットにおける前記液状体の流路であることが好ましい。
【0016】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットの流路が液導入孔に連結される。圧力調整バルブユニットは、流入側の圧力室(流路)と、流出側の圧力室(流路)と、流入側の圧力室と流出側の圧力室との間を開閉するバルブとを有する装置である。流出側の圧力室の圧力が所定の値より小さくなることで、バルブが開かれる。バルブが開かれることによって、流入側の圧力室から流出側の圧力室に液状体が流入する。液状体が流入することによって、流出側の圧力室の圧力が所定の値より大きくなることで、バルブが閉じられる。流出側の圧力室を液導入孔に接続することによって、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液が充分に充填された状態では、液溜部から液導入孔に保管液が流入することを抑制して、保管液が吐出ノズルから流出することを抑制することができる。吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が減少した場合には、バルブが開いて流入側の圧力室から流出側の圧力室に保管液が供給されることによって、流出側の圧力室から液導入孔に保管液が流入することで、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液を補充することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための給液装置において前記液状体を一時的に貯留するための貯留部を有する中継タンクであり、前記液溜部は、前記貯留部であることが好ましい。
【0018】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、中継タンクを液溜器として用いることによって、新たな液溜器を製造することなく、液溜器を構成することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記保管液は、揮発性の物質で構成されていることが好ましい。
【0020】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、吐出ヘッドに充填される保管液は、揮発性の物質で構成されている。したがって、保管液には不揮発性成分が含まれない。これにより、吐出ヘッドの内部で保管液が蒸発した場合に、不揮発性成分が吐出ヘッドの内部に残留して付着などすることを抑制することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記保管液は、前記液状体の溶媒で構成されていることが好ましい。
【0022】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、液状体の溶媒が保管液として使用される。液状体の溶媒は、吐出ヘッドで扱われる液状体の溶質などを溶解するものであるため、吐出ヘッドの内部の残留物を洗浄することができる。液状体の溶媒は、吐出ヘッドが稼働する際に吐出ヘッドによって扱われるものであるため、保管液としての液状体の溶媒が吐出ヘッドの内部に残っても、吐出ヘッドや吐出状態に悪影響をあたえる可能性を実質的になくすることができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる吐出ヘッドの保存方法において、前記吐出ノズルを封止するノズル封止部材を前記吐出ヘッドに装着する工程をさらに有することが好ましい。
【0024】
この吐出ヘッドの保存方法によれば、吐出ノズルがノズル封止部材によって封止される。これにより、吐出ノズルから保管液が蒸発したり流出したりすることを抑制することができる。
【0025】
[適用例10]本適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットは、液状体を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに連通する前記液状体の流路と、前記流路に連通する液導入孔とを備える吐出ヘッドと、前記液導入孔に連通する液溜部を有する液溜器と、前記吐出ノズルと、前記流路と、前記液導入孔と、前記液溜部とに充填された保管液と、を備えることを特徴とする。
【0026】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、吐出ヘッドの吐出ノズルと、流路と、液導入孔とに保管液が充填されている。これにより、吐出ノズル、流路、及び液導入孔が乾燥することを抑制することができる。また、液溜器は、液溜部が液導入孔に連通する状態で吐出ヘッドに接続されており、液溜部には保管液が充填されている。このため、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が液導入孔から流出したり蒸発したりすることを防止することができる。また、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が流出などによって失われた場合でも、液溜部に充填された保管液が液導入孔を介して流入することによって、吐出ノズルと、流路と、液導入孔とに保管液が充填された状態を維持することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットにおいて、前記液溜部は、負圧形成構造を有することが好ましい。
【0028】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、液溜部が有する負圧形成構造によって、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液が充填された状態では、液溜部から液導入孔に保管液が流入しないように、液溜部内の保管液の圧力を調整することができる。液溜部内の保管液が吐出ノズル、流路、及び液導入孔に流入し難いため、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が吐出ノズルから流出することを抑制することができる。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットにおいて、前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットであって、前記液溜部は、前記圧力調整バルブユニットにおける前記液状体の流路であることが好ましい。
【0030】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットの流路が液導入孔に連結される。圧力調整バルブユニットは、流入側の圧力室(流路)と、流出側の圧力室(流路)と、流入側の圧力室と流出側の圧力室との間を開閉するバルブとを有する装置である。流出側の圧力室の圧力が所定の値より小さくなることで、バルブが開かれる。バルブが開かれることによって、流入側の圧力室から流出側の圧力室に液状体が流入する。液状体が流入することによって、流出側の圧力室の圧力が所定の値より大きくなることで、バルブが閉じられる。流出側の圧力室を液導入孔に接続することによって、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液が充分に充填された状態では、液溜部から液導入孔に保管液が流入することを抑制して、保管液が吐出ノズルから流出することを抑制することができる。吐出ノズル、流路、及び液導入孔に充填された保管液が減少した場合には、バルブが開いて流入側の圧力室から流出側の圧力室に保管液が供給されることによって、流出側の圧力室から液導入孔に保管液が流入することで、吐出ノズル、流路、及び液導入孔に保管液を補充することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットにおいて、前記保管液は、揮発性の物質で構成されていることが好ましい。
【0032】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、吐出ヘッドに充填される保管液は、揮発性の物質で構成されている。したがって、保管液には不揮発性成分が含まれない。これにより、吐出ヘッドの内部で保管液が蒸発した場合に、不揮発性成分が吐出ヘッドの内部に残留して付着などすることを抑制することができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットにおいて、前記保管液は、前記液状体の溶媒で構成されていることが好ましい。
【0034】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、液状体の溶媒が保管液として使用される。液状体の溶媒は、吐出ヘッドで扱われる液状体の溶質などを溶解するものであるため、吐出ヘッドの内部の残留物を洗浄することができる。液状体の溶媒は、吐出ヘッドが稼働する際に吐出ヘッドによって扱われるものであるため、保管液としての液状体の溶媒が吐出ヘッドの内部に残っても、吐出ヘッドや吐出状態に悪影響をあたえる可能性を実質的になくすることができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる吐出ヘッド保存ユニットは、前記吐出ノズルを封止するノズル封止部材をさらに備えることが好ましい。
【0036】
この吐出ヘッド保存ユニットによれば、吐出ノズルがノズル封止部材によって封止される。これにより、吐出ノズルから保管液が蒸発したり流出したりすることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、吐出ヘッドの保存方法、及び吐出ヘッド保存ユニットの好適な実施の形態について、吐出ヘッドの一実施形態としてのインクジェット方式の液滴吐出ヘッドを例に、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0038】
<液滴吐出装置>
最初に、液滴吐出ヘッド10を備える液滴吐出装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は液滴吐出装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【0039】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、機能液供給部4と、メンテナンス装置部5と、を備えている。ヘッド機構部2は、液状体としての機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド10を有する。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド10から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台33を有する。機能液供給部4は、中継タンク23と、給液チューブ24とを有し、当該給液チューブ24が、後述する圧力調整弁97(図5及び図6参照)及び配液管94(図6参照)を介して液滴吐出ヘッド10に接続されている。中継タンク23、給液チューブ24、圧力調整弁97、及び配液管94を介して機能液が液滴吐出ヘッド10に供給される。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド10の検査及び保守を行う装置を備えている。液滴吐出装置1は、また、これら各機構部などを総括的に制御する吐出装置制御部6を備えている。
【0040】
さらに、液滴吐出装置1は、床上に設置された複数の支持脚8と、支持脚8の上側に設置された定盤9とを備えている。定盤9の上側には、ワーク機構部3が定盤9の長手方向(X軸方向)に延在するように配設されている。ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱で支持されているヘッド機構部2が、ワーク機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在するように配設されている。また、定盤9の傍らには、ヘッド機構部2の液滴吐出ヘッド10に連通する供給管を有する機能液供給部4の機能液タンクなどが配置されている。ヘッド機構部2の一方の支持柱の近傍には、メンテナンス装置部5がワーク機構部3と並んでX軸方向に配設されている。さらに、定盤9の下側に、吐出装置制御部6が収容されている。
【0041】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド10を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を有するヘッドキャリッジ25と、ヘッドキャリッジ25が吊設された移動枠22とを備えている。中継タンク23を収納した中継タンク箱23Aが、移動枠22の上に固定されている。移動枠22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド10をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0042】
このように、液滴吐出ヘッド10は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調して、機能液を液滴として吐出する。X軸方向に移動するワークWと、Y軸方向に移動する液滴吐出ヘッド10とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する平面形状の描画を行うことが可能である。
【0043】
<液滴吐出ヘッド>
次に、図2及び図3を参照して、液滴吐出ヘッド10の構成について説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概要を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドをノズルプレート側から見た外観を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの接続針周りの概構造を示す部分断面図である。図3は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図である。図3(a)は、液滴吐出ヘッドの圧力室周りの構造を示す斜視断面図であり、図3(b)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の構造を示す断面図である。液滴吐出ヘッド10が、吐出ヘッドに相当する。
【0044】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド10は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針46,46を有する液体導入部45と、液体導入部45の側方に連なるヘッド基板47と、液体導入部45に連なるポンプ部48と、ポンプ部48に連なるノズルプレート41とを備えている。ポンプ部48とノズルプレート41とにより、方形のヘッド本体40が構成されている。
接続針46の先端の脇には、ポンプ部48の液供給孔53(図3(a)参照)に連通する流路の端の導入口46aが開口している。ヘッド基板47には、一対のヘッドコネクタ47A,47Aが実装されており、当該ヘッドコネクタ47Aを介してフレキシブルフラットケーブル98(以降、「FFCケーブル98」と表記する。)(図6参照)が接続される。このFFCケーブル98によって、吐出装置制御部6と接続されている中継基板に液滴吐出ヘッド10が接続されることで、液滴吐出ヘッド10は、吐出装置制御部6と接続される。
【0045】
ポンプ部48の基部側、すなわちヘッド本体40の基部側は、液体導入部45を受けるべく方形フランジ状にフランジ部44が形成されている。このフランジ部44には、液滴吐出ヘッド10をヘッド保持部材に固定する小ねじ用のねじ孔(雌ねじ)49が一対形成されている。ヘッド保持部材を貫通してねじ孔49に螺合したヘッド止めねじにより、液滴吐出ヘッド10が副ヘッド固定部材38(図6参照)に固定される。
【0046】
ノズルプレート41のノズル形成面41aには、ノズルプレート41に形成されており液滴を吐出する吐出ノズル42から成るノズル列43が、2本形成されている。2本のノズル列43は相互に平行に列設されており、各ノズル列43は、等ピッチで並べた180個(図示では模式的に表している)の吐出ノズル42で構成されている。すなわち、ヘッド本体40のノズル形成面41aには、その中心線を挟んで2本のノズル列43が対称に配設されている。
【0047】
液滴吐出ヘッド10が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、ノズル列43はY軸方向に延在する。2列のノズル列43をそれぞれ構成する吐出ノズル42同士は、Y軸方向において、相互に半ノズルピッチずつ位置ずれている。1ノズルピッチは、例えば140μmである。X軸方向の同じ位置において、それぞれのノズル列43を構成する吐出ノズル42から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。吐出ノズル42のノズルピッチが140μmの場合、着弾位置の中心間距離は、設計上では、70μmである。
【0048】
図2(b)に示すように、液体導入部45の2連の接続針46,46には、それぞれ圧力調整弁97(図5及び図6参照)を介して給液チューブ24(図1参照)に連通する配液管94(図6参照)の端に接続された配管接続部材26が接続される。接続針46に配管接続部材26が接続された状態では、接続針46の先端側が、配管接続部材26の端に形成された封止部を貫通して、配管接続部材26の機能液の流路に達している。上述したように、接続針46の先端の脇には、ポンプ部48の液供給孔53(図3(a)参照)に連通する流路の端の導入口46aが開口しており、配管接続部材26の機能液の流路に満たされた機能液が、導入口46aから液滴吐出ヘッド10の液体導入部45に流入する。導入口46aが、液導入孔に相当する。
【0049】
図3(a)及び(b)に示すように、液滴吐出ヘッド10は、ノズルプレート41にポンプ部48を構成する圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液体導入部45から振動板52の液供給孔53を介して供給される機能液が常に充填される液たまり55が形成されている。液供給孔53は、接続針46に形成された導入口46aに連通している。液たまり55は、振動板52と、ノズルプレート41と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。圧力室58には、隣り合う2つのヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給される。振動板52と、ノズルプレート41と、2つのヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
液滴吐出ヘッド10における液体導入部45の内部の機能液の流路と、液供給孔53と、液たまり55と、供給口56と、圧力室58とが、吐出ヘッドにおける液状体の流路に相当する。
【0050】
圧力室58は吐出ノズル42のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル42の数とは同じである。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル42と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル42がノズル列43を形成している。図3(a)では図示省略したが、図示した吐出ノズル42を含むノズル列43に対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んだ吐出ノズル42がもうひとつのノズル列43を形成しており、対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0051】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド10全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は電極層と圧電材料とを積層した活性部を有し、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図3(b)では振動板52の厚さ方向)に縮む。活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、機能液が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル42から機能液が液滴となって吐出される。
【0052】
吐出装置制御部6は、圧電素子59への印加電圧の制御、すなわち駆動信号を制御することにより、複数の吐出ノズル42のそれぞれに対して、機能液の吐出制御を行う。より詳細には、吐出ノズル42から吐出される液滴の体積や、単位時間あたりに吐出する液滴の数、基板上に着弾した液滴同士の距離などを変化させることができる。例えば、ノズル列43に並ぶ複数の吐出ノズル42の中から、液滴を吐出させる吐出ノズル42を選択的に使用することにより、ノズル列43の方向では、ノズル列43の長さの範囲であって吐出ノズル42のピッチ間隔で、複数の液滴を同時に吐出することができる。ノズル列43の方向と略直交する方向では、基板と吐出ノズル42とを相対移動させて、当該相対移動方向において、当該吐出ノズル42が対向可能な、基板の任意の位置に吐出ノズル42から吐出される液滴を配置することができる。なお、吐出ノズル42のそれぞれから吐出される液滴の体積は、1pl〜300pl(ピコリットル)の間で可変である。
【0053】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2のヘッドユニット21の概略構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図4に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0054】
図4に示すように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート61と、ユニットプレート61に搭載された12個の液滴吐出ヘッド10と、を有している。液滴吐出ヘッド10は、主ヘッド固定部材37(図6参照)及び副ヘッド固定部材38(図6参照)を介してユニットプレート61に固定されており、ヘッド本体40がユニットプレート61に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル形成面41aが、ユニットプレート61の面より突出している。図4は、ノズル形成面41a側から見た図である。12個の液滴吐出ヘッド10は、Y軸方向に分かれて、それぞれ6個ずつの液滴吐出ヘッド10を有するヘッド群65を2群形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド10のノズル列43はY軸方向に延在している。
【0055】
一つのヘッド群65が有する6個の液滴吐出ヘッド10は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド10の、一方の液滴吐出ヘッド10の端の吐出ノズル42に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド10の端の吐出ノズル42が半ノズルピッチずれて位置するように、位置決めされている。仮に、ヘッド群65が有する6個の液滴吐出ヘッド10において、全ての吐出ノズル42のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル42は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド10が有するそれぞれのノズル列43を構成する吐出ノズル42から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。液滴吐出ヘッド10は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド群65を構成している。
なお、ユニットプレート61には、後述する圧力調整弁97(図5参照)を取り付ける領域や、キャリッジ枠92(図6参照)にユニットプレート61を取り付けるための取付孔や位置決め孔などが形成されているが、図4では図示省略した。
【0056】
<圧力調整弁の構成>
次に、圧力調整弁97の構成及び動作について、図5を参照して説明する。圧力調整弁97は、液滴吐出ヘッド10に供給する機能液を貯留する機能液タンクから液滴吐出ヘッド10に至る機能液の流路の一部を構成するように配設されている。圧力調整弁97を設けることによって、液滴吐出ヘッド10に供給される機能液の圧力を略一定の圧力に維持する。図5は、圧力調整弁の構成及び動作を示す模式断面図である。図5(a)は、弁が閉じた状態を示す模式断面図であり、図5(b)は、弁が開いた状態を示す模式断面図である。
【0057】
図5に示すように、圧力調整弁97は、流路ケース101と、ダイヤフラム109と、弁ユニット106と、を備えている。流路ケース101は、略円板状の外形形状を有し、中が中空になっている。中空部分は、ケース隔壁102によって分離されて、略円板形状の圧力室103及び流入室104が形成されている。ケース隔壁102には弁孔102aが形成されており、圧力室103と流入室104とは、弁孔102aを介して連通している。
【0058】
流入室104は、流路ケース101の壁と、ケース隔壁102とで囲まれて形成された円板形状の空間である。流入室104から流路ケース101の半径方向に形成された流入口流路107が、流路ケース101の外周に突出する状態に形成された流入口端子107Aを貫通している。流入室104は、流入口流路107を介して流路ケース101の外部と連通している。
圧力室103は、流路ケース101の壁と、ケース隔壁102とで形成されたケース隔壁102の反対側が開放された空間の開放口にダイヤフラム109が配設されて形成された円板形状の空間である。流路ケース101の壁に流路ケース101の半径方向に形成された流出口流路108aの一端が、流路ケース101の外周に突出する状態に形成された流出口端子108Aを貫通しており、流出口流路108aの他の一端は、流出口流路108bに連通しており、流出口流路108bは、圧力室103に開口している。圧力室103は、流出口流路108aと流出口流路108bとから成る流出口流路108を介して流路ケース101の外部と連通している。
【0059】
ダイヤフラム109は、円形状のフィルムであり、外周の全周が流路ケース101の壁に固定されて、圧力室103と外部とを隔絶している。ダイヤフラム109の中央側は、圧力室103の容積を増減させる方向に変形可能である。ダイヤフラム109の中央には、剛性が高い受圧板111が固定されている。
【0060】
弁ユニット106は、弁ロッド112と、弁ばね117と、圧力保持ばね118と、シールパッキン116とを有している。
圧力保持ばね118は、圧縮コイルばねであり、受圧板111とケース隔壁102とに挟持される位置に配設されている。圧力保持ばね118は、受圧板111を押圧しており、受圧板111に、圧力室103を広げる方向にダイヤフラム109を変形させる方向の力を作用させている。
弁ロッド112は、弁孔102aを封止可能な大きさを有する円板形状のロッド板112bと、ロッド板112bの円板面に立設されたロッド部112aと、から成り、ロッド板112bが流入室104の中に在り、ロッド部112aが弁孔102aに遊嵌する状態に配設されている。ロッド板112bのロッド部112aが立設された面は、ケース隔壁102及び弁孔102aに臨んでおり、ロッド部112aの先端は、受圧板111に臨んでいる。シールパッキン116は、ゴム状弾性体を用いて、Oリング状の形状に形成されている。ロッド板112bのケース隔壁102及び弁孔102aに臨む面の中の、ケース隔壁102に対向する部分に、シールパッキン116が固定されている。
弁ばね117は、圧縮コイルばねであり、ロッド板112bにおけるロッド部112aが立設された面とは反対側の面と、流入室104を構成する流路ケース101の壁と、に挟持される位置に配設されている。弁ばね117は、ロッド板112bをケース隔壁102に押付ける方向の力を、ロッド板112bに加えている。
【0061】
ダイヤフラム109には、圧力室103側からは、圧力保持ばね118の押圧力と、圧力室103内に充填された機能液による圧力が作用する。外側からは、大気圧が作用する。ダイヤフラム109は、圧力保持ばね118の押圧力と、圧力室103内に充填された機能液による圧力と、大気圧と、ダイヤフラム109の変形に対する抗力と、がつり合う形状になる。
圧力室103内に充填された機能液による圧力によって、圧力室103を経由して液滴吐出ヘッド10に供給される機能液の圧力が定まる。圧力保持ばね118の押圧力は、液滴吐出ヘッド10に供給される機能液の圧力を、機能液が吐出ノズル42から流出することがないと共に、液滴吐出ヘッド10によって機能液を吐出できることを可能ならしめる圧力とする押圧力に設定する。
【0062】
図5(a)に示した圧力調整弁97は、機能液が圧力室103内に充分充填されており、ダイヤフラム109が外側に膨らんで、圧力室103が大きくなっている。図5(a)に示したように、ロッド部112aの先端と受圧板111とは離れている。ロッド板112bは、弁ばね117によって、弁孔102aを覆う状態で、ケース隔壁102に押付けられている。弁ばね117の押圧力によって、弁孔102aの外周を囲む位置において、シールパッキン116が、ケース隔壁102とロッド板112bの間で押圧されて弾性変形している。弁孔102aは、シールパッキン116とロッド板112bとによって封止されており、圧力室103と流入室104とは、隔絶されている。
【0063】
図5(b)に示した圧力調整弁97は、圧力室103内の機能液が減ることによって、ダイヤフラム109が、ケース隔壁102側に膨らんで、圧力室103の容積が小さくなっている。圧力室103内の機能液は、液滴吐出ヘッド10から吐出される機能液を、液滴吐出ヘッド10に補充することによって減少する。図5(b)に示したように、受圧板111がロッド部112aの先端に当接して、弁ばね117の押圧力に抗する力を弁ロッド112に加えている。弁ロッド112は、図5(a)に示した位置から移動して、ロッド板112bがケース隔壁102から離れる位置にある。ロッド板112bがケース隔壁102から離れることによって、シールパッキン116とロッド板112bとによる弁孔102aの封止が解除されているため、流入室104と圧力室103とが、弁孔102aを介して連通している。機能液タンクから供給されて流入室104に充填されている機能液が、弁孔102aを通って圧力室103に流入する。
圧力室103に機能液が流入することで、圧力室103内の機能液の圧力が高まり、ダイヤフラム109が外側に膨らんで、圧力調整弁97は、図5(a)に示した状態となり、圧力室103と流入室104とは、隔絶される。このようにして、圧力室103内の機能液の圧力が略一定に維持され、圧力室103内の機能液の圧力が略一定に維持されことにより、液滴吐出ヘッド10に供給される機能液の圧力が略一定に維持される。
圧力調整弁97が、圧力調整バルブユニットに相当する。
【0064】
<ヘッドキャリッジ>
次に、ヘッドキャリッジ25の全体構成について、図6を参照して説明する。図6は、ヘッドキャリッジの側面図である。図6は、主要な構成要素を図示するために構成要素の一部を省略している。図6に示したように、2個のキャリッジ体92Aと、キャリッジ支持体92Bと、で略直方体形状のキャリッジ枠92を構成している。キャリッジ枠92は、キャリッジ支持体92Bの両端に2個のキャリッジ体92Aが吊着されて、キャリッジ支持体92Bの反対側(図6の下側)が開放した略コの字形状をしている。
【0065】
キャリッジ枠92の略コの字形状の開放した側には、図4を参照して説明したヘッドユニット21が、ヘッドユニット21のユニットプレート61が2個所のキャリッジ体92Aに差し渡されるようにして、固定ネジ(図示省略)で固定されている。液滴吐出ヘッド10は、主ヘッド固定部材37及び副ヘッド固定部材38を介してユニットプレート61に固定されている。液滴吐出ヘッド10は、ヘッド本体40がユニットプレート61に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル形成面41aが、ユニットプレート61の、キャリッジ枠92に対向する面とは反対側の面より突出している。上述したように、1基のヘッドユニット21は、12個の液滴吐出ヘッド10を備えているが、全て表示すると図が煩雑になるため、図6では一部のみ示してある。
【0066】
キャリッジ支持体92Bには、基板支持枠(図示省略)が固定されており、基板支持枠には、インタフェース基板と駆動回路基板とが隙間を隔てて重なるように固定されている。インタフェース基板には、12基のコネクタが固定されている。一端がヘッド用電装ユニットに接続されたケーブルの他端に接続されたコネクタ96がインタフェース基板のコネクタと結合されており、ヘッド用電装ユニットからインタフェース基板に液滴吐出ヘッド10を駆動するための電気信号が供給される。当該電気信号は、接続手段を介して駆動回路基板に伝達される。伝達された電気信号に従って、駆動回路基板上に構成されている駆動回路が液滴吐出ヘッド10を駆動する駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、一端が液滴吐出ヘッド10の一対のヘッドコネクタ47A,47Aにそれぞれ結合されたFFCケーブル98を介して液滴吐出ヘッド10に印加されて、液滴吐出ヘッド10を駆動させる。なお、FFCケーブル98は、1個の液滴吐出ヘッド10に2本接続されているが、全て表示すると煩雑になるため、図6では一部のみ示してある。
【0067】
ユニットプレート61には、上述した圧力調整弁97が、ユニットプレート61に立設した調整弁支持枠97aを介して固定されている。1個のユニットプレート61には、12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれに対応して、12個の圧力調整弁97が固定されている。それぞれの圧力調整弁97には、その流入口端子107Aにおいて、流入口流路107に、機能液供給部4の給液チューブ24が接続されており、機能液供給部4から圧力調整弁97に、中継タンク23及び給液チューブ24を介して機能液が送られる。それぞれの圧力調整弁97には、また、流出口端子108Aにおいて、流出口流路108aに接続された配管接続部材67を介して、液滴吐出ヘッド10の接続針46に接続する配液管94が接続されている。12個の圧力調整弁97のそれぞれは、ヘッドユニット21の12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれと配液管94で接続されている。配液管94の液滴吐出ヘッド10に接続される側は二股に分岐しており、一つの液滴吐出ヘッド10に形成された2連の接続針46,46にそれぞれ接続されている。上述したように、圧力調整弁97は、給液チューブ24から流入する機能液を、適切な圧力で、配液管94を介して液滴吐出ヘッド10に供給する。なお、配液管94は、12個の圧力調整弁97のそれぞれと、それぞれの液滴吐出ヘッド10とに接続されているが、12個の配液管94や12個の圧力調整弁97を全て表示すると煩雑になるため、図6では一部のみ示してある。
【0068】
これらの各構成部材を囲うように、角筒状のキャリッジカバー91が設けられており、図示省略した止めねじで、キャリッジ体92Aに固定されている。キャリッジカバー91の一端(図6では下端)は、ユニットプレート61の外周に略密着しており、キャリッジカバー91とユニットプレート61とで、升状の形状を形成している。
【0069】
<保存ユニット>
次に、液滴吐出ヘッド10を、保管したり輸送したりするための保存ユニット120の構成について、図7を参照して説明する。図7は、保存ユニットの側面図である。
図7に示したように、保存ユニット120は、ヘッドユニット21と圧力調整弁97と配液管94とを備えている。上述したように、1基のヘッドユニット21は、12個の液滴吐出ヘッド10を備えており、保存ユニット120は、12本の配液管94と、12個の圧力調整弁97とを備えている。12本の配液管94のそれぞれは、12個の圧力調整弁97のそれぞれと、それぞれの液滴吐出ヘッド10とに接続されている。
なお、12個の液滴吐出ヘッド10や12個の配液管94や12個の圧力調整弁97を全て表示すると煩雑になるため、図7では一部のみ示してある。
【0070】
ヘッドユニット21のユニットプレート61に、圧力調整弁97が、ユニットプレート61に立設した調整弁支持枠97aを介して固定されている。それぞれの圧力調整弁97には、流出口端子108Aにおいて、流出口流路108aに接続された配管接続部材67を介して、液滴吐出ヘッド10の接続針46に接続する配液管94が接続されている。12個の圧力調整弁97のそれぞれは、ヘッドユニット21の12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれと、配液管94で接続されている。
圧力調整弁97、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部には、保管液が充填されている。保管液としては、例えば、機能液の溶媒を用いる。
【0071】
保管液の充填は、以下の手順で実施する。最初に、上記した構成に組み上げた保存ユニット120を、吐出ノズル42から液滴吐出ヘッド10の流路内の液体を吸引する吸引装置にセットする。吸引装置は、液滴吐出装置1などにおいて液滴吐出ヘッド10を保守するために用いるものを利用できる。次に、保管液が入ったタンクを、保管液を流入口流路107に供給できる状態に、流入口端子107Aに接続する。吸引装置によって、吐出ノズル42から液滴吐出ヘッド10の流路内の液体を吸引することで、液滴吐出ヘッド10の流路が負圧状態となり、配液管94を介して連通する圧力調整弁97の圧力室103から流入室104も負圧状態となる。これにより、保管液が、タンクから圧力調整弁97の流入室104、圧力室103、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10に流入して充填される。
【0072】
上述したように、圧力室103に充分に保管液が充填された状態では、圧力調整弁97の弁孔102aは、シールパッキン116とロッド板112bとによって封止されており、圧力室103と流入室104とは、隔絶されている。圧力室103が流入室104と隔絶されることで、圧力室103、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部は、吐出ノズル42のみで外部と連通する空間となり、小径の吐出ノズル42からは大気が侵入し難いため、圧力室103、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液は、殆ど流出することなく保持される。
圧力調整弁97が、液溜器に相当し、圧力室103が、液溜部に相当する。弁孔102aを封止するシールパッキン116とロッド板112bを含む、弁ロッド112と、弁ばね117と、圧力保持ばね118と、シールパッキン116とを有する弁ユニット106が負圧形成構造に相当する。
吐出ノズル42からの蒸発や流出によって、圧力室103、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液が減少すると、圧力室103内の圧力が減少するため、弁孔102aのシールパッキン116及びロッド板112bによる封止が解除される。これにより、圧力室103と流入室104とが、弁孔102aを介して連通するため、流入室104の保管液が圧力室103に流入して、減少した保管液を補うように、保管液が補充される。
【0073】
<保存ユニットの他の構成1>
次に、液滴吐出ヘッド10を保管したり、輸送したりするための保存ユニットであって、上述した保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニットについて説明する。最初に、保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニット140について、図8を参照して説明する。図8は、保存ユニットの他の構成例を示す側面図である。
【0074】
図8に示したように、保存ユニット140は、上述したヘッドキャリッジ25から電装部材などを取り除いた構成を有している。保存ユニット140は、2個のキャリッジ体92Aと、キャリッジ支持体92Bと、で略直方体形状に構成されたキャリッジ枠92と、キャリッジ枠92の略コの字形状の開放した側に固定されたヘッドユニット21と、12個の圧力調整弁97と、12本の配液管94と、を備えている。
上述したように、1基のヘッドユニット21は、12個の液滴吐出ヘッド10を備えており、配液管94は、12個の圧力調整弁97のそれぞれと、それぞれの液滴吐出ヘッド10とに接続されているが、12個の液滴吐出ヘッド10や配液管94や圧力調整弁97を全て表示すると煩雑になるため、図8ではそれぞれ一部のみ示してある。
【0075】
圧力調整弁97は、ヘッドユニット21のユニットプレート61に、ユニットプレート61に立設した調整弁支持枠97aを介して固定されている。それぞれの圧力調整弁97には、流出口端子108Aにおいて、流出口流路108aに接続された配管接続部材67を介して、液滴吐出ヘッド10の接続針46に接続する配液管94が接続されている。12個の圧力調整弁97のそれぞれは、ヘッドユニット21の12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれと配液管94で接続されている。
圧力調整弁97、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部には、保管液が充填されている。保管液としては、例えば、機能液の溶媒を用いる。
【0076】
保管液の充填は、上述した保存ユニット120に保管液を充填させる場合と同様に、保管液が入ったタンクと、吸引装置を用いて、同様の手順で実施する。
【0077】
<保存ユニットの他の構成2>
次に、保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニット160について、図9を参照して説明する。図9は、保存ユニットの他の構成例を示す側面図である。
図9に示したように、保存ユニット160は、2個のキャリッジ体92Aと、キャリッジ支持体92Bと、で略直方体形状に構成されたキャリッジ枠92と、キャリッジ枠92の略コの字形状の開放した側に固定されたヘッドユニット21と、12個の中継タンク23と、12本の配液管94と、を備えている。
上述したように、1基のヘッドユニット21は、12個の液滴吐出ヘッド10を備えており、配液管94は、12個の中継タンク23のそれぞれと、それぞれの液滴吐出ヘッド10とに接続されているが、12個の液滴吐出ヘッド10や配液管94や中継タンク23を全て表示すると煩雑になるため、図9ではそれぞれ一部のみ示してある。
【0078】
中継タンク23は、キャリッジ支持体92Bの上部に固定されている。それぞれの中継タンク23には、流出口端子232において、中継タンク23内の流出口に接続された配管接続部材67を介して、液滴吐出ヘッド10の接続針46に接続する配液管94が接続されている。12個の中継タンク23のそれぞれは、ヘッドユニット21の12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれと配液管94で接続されている。中継タンク23の流入口が形成された流入口端子231には封止蓋161が被せてあり、流入口を封止している。
中継タンク23、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部には、保管液が充填されている。保管液としては、例えば、機能液の溶媒を用いる。
【0079】
保管液の充填は、以下の手順で実施する。最初に、上記した構成に組み上げた保存ユニット160を、中継タンク23が液滴吐出ヘッド10より高い位置になるようにセットする。次に、封止蓋161を取外して、中継タンク23に保管液を注入する。保管液は、重力によって、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10に流入して充填される。吐出ノズル42から保管液が流出する状態になったところで、流入口端子231に封止蓋161を被せて、流入口を封止する。中継タンク23の流入口を封止することで、中継タンク23、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部は、吐出ノズル42のみで外部と連通する空間となる。小径の吐出ノズル42からは大気が侵入し難いため、中継タンク23、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液は、殆ど流出することなく保持される。
中継タンク23が、液溜器に相当し、中継タンク23の内部が、液溜部に相当する。流入口端子231に封止蓋161を被せて、流入口を封止する構成が、負圧形成構造に相当する。
また、保管液を充填させるために、上述した保存ユニット120に保管液を充填させる場合と同様に、吸引装置を用いることもできる。吸引装置を用いることで、重力によって自然に充填させる場合より、確実に液滴吐出ヘッド10の流路に保管液を充填することができる。
【0080】
なお、中継タンク23の内部は微小な減圧状態となるため、保管液が気化し易くなり、気化した保管液の蒸気圧によって、吐出ノズル42から保管液が流出する可能性がある。気化した保管液の蒸気圧と、中継タンク23が液滴吐出ヘッド10より高い位置に在ることによる重力の作用とが、吐出ノズル42から保管液が流出するように作用し、吐出ノズル42における保管液の表面張力が、流出を抑制するように作用する。例えば、これらの力がバランスして、吐出ノズル42の開口の周囲から蒸発する保管液を補う程度に、吐出ノズル42から保管液が流出するように、中継タンク23と液滴吐出ヘッド10との高さ方向の相対位置を調整する。
【0081】
<保存ユニットの他の構成3>
次に、保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニット180について、図10を参照して説明する。図10は、保存ユニットの他の構成例を示す側面図である。
図10に示したように、保存ユニット180は、2個のキャリッジ体92Aと、キャリッジ支持体92Bと、で略直方体形状に構成されたキャリッジ枠92と、キャリッジ枠92の略コの字形状の開放した側に固定されたヘッドユニット21と、12個の保管液タンク181と、12本の配液管94と、を備えている。
上述したように、1基のヘッドユニット21は、12個の液滴吐出ヘッド10を備えており、配液管94は、12個の保管液タンク181のそれぞれと、それぞれの液滴吐出ヘッド10とに接続されているが、12個の液滴吐出ヘッド10や配液管94や保管液タンク181を全て表示すると煩雑になるため、図10ではそれぞれ一部のみ示してある。
【0082】
保管液タンク181は、ユニットプレート61に固定されている。それぞれの保管液タンク181には、流出口端子183において、保管液タンク181の流出口に接続された配管接続部材67を介して、液滴吐出ヘッド10の接続針46に接続する配液管94が接続されている。12個の保管液タンク181のそれぞれは、ヘッドユニット21の12個の液滴吐出ヘッド10のそれぞれと配液管94で接続されている。保管液タンク181の内部には、多孔質体182が配設されている。保管液タンク181には、多孔質体182が配設された内部と保管液タンク181の外部とを連通させる圧力開放孔184が形成されている。
保管液タンク181、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部には、保管液が充填されている。保管液としては、例えば、機能液の溶媒を用いる。
【0083】
保管液の充填は、以下の手順で実施する。最初に、圧力開放孔184を封止した保管液タンク181に保管液を充填して、多孔質体182に保管液を浸透させる。次に、上記した構成に組み上げた保存ユニット180を、保管液タンク181が液滴吐出ヘッド10より高い位置になるようにセットする。次に、圧力開放孔184の封止を解除して、保管液タンク181の内部を外部と連通させる。保管液タンク181の内部の大気圧が外部と略同一になるため、保管液タンク181の内部に充填されていた保管液は、重力によって、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10に流入して充填される。毛細管現象によって、保管液が多孔質体182に保持されるため、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液は、大量に流出することなく保持される。
保管液タンク181が、液溜器に相当し、保管液タンク181の内部が、液溜部に相当する。多孔質体182が、負圧形成構造に相当する。
また、保管液を充填させるために、上述した保存ユニット120に保管液を充填させる場合と同様に、吸引装置を用いることもできる。吸引装置を用いることで、重力によって自然に充填させる場合より、確実且つ迅速に液滴吐出ヘッド10の流路に保管液を充填することができる。多孔質体182に保持されている保管液を、迅速に液滴吐出ヘッド10の流路に引き込むためには、吸引装置を用いることが有効である。
【0084】
<保存ユニットの他の構成4>
次に、保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニット125について、図11を参照して説明する。図11は、保存ユニットの他の構成例を示す側面図である。
【0085】
図11に示したように、保存ユニット125は、上述した保存ユニット120に加えて、ヘッドキャップ126を備えている。ヘッドキャップ126は、箱状の形状を有し、ユニットプレート61に固定された液滴吐出ヘッド10のノズルプレート41を覆う状態で、ユニットプレート61に固定されている。箱状の形状を有するヘッドキャップ126の周縁部分がユニットプレート61に当接している。
ヘッドキャップ126がノズルプレート41を覆うことによって、吐出ノズル42から液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液が蒸発することを抑制することができる。また、ノズルプレート41が他の物に衝突することによって損なわれることを抑制することができる。ヘッドキャップ126が、ノズル封止部材に相当する。ヘッドキャップ126をユニットプレート61に固定することが、ノズル封止部材を吐出ヘッドに装着する工程に相当する。
【0086】
<保存ユニットの他の構成5>
次に、保存ユニット120とは異なる構成を有する保存ユニット145について、図12を参照して説明する。図12は、保存ユニットの他の構成例を示す側面図である。
【0087】
図12に示したように、保存ユニット145は、上述した保存ユニット140に加えて、ヘッドキャップ146及びキャップ布147を備えている。ヘッドキャップ146は、箱状の形状を有し、ユニットプレート61に固定された液滴吐出ヘッド10のノズルプレート41を覆う状態で、ユニットプレート61に固定されている。キャップ布147は、弱い力で弾性変形可能な多孔質体で形成されており、箱状のヘッドキャップ146に入れられている。キャップ布147には、保管液が浸透されている。キャップ布147は、ヘッドキャップ146がユニットプレート61に固定されることによって、ノズルプレート41に当接して変形している。キャップ布147が変形するようにノズルプレート41に当接することによって、キャップ布147に浸透されている保管液によって、ノズルプレート41のノズル形成面41aは常に保管液で濡れた状態になっている。
ノズル形成面41aにキャップ布147が接触していることによって、吐出ノズル42から液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液が蒸発することを抑制することができる。また、キャップ布147に保管液が浸透されており、ノズル形成面41aが常に保管液で濡れた状態になっているため、吐出ノズル42から保管液が蒸発することを、より確実に抑制することができる。ヘッドキャップ146及びキャップ布147が、ノズル封止部材に相当する。ヘッドキャップ146をユニットプレート61に固定することが、ノズル封止部材を吐出ヘッドに装着する工程に相当する。
【0088】
以下、実施形態の効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)保存ユニット120又は保存ユニット140においては、圧力調整弁97、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に、保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の、吐出ノズル42、及び液たまり55や供給口56や圧力室58などの流路が乾燥することを抑制することができる。
【0089】
(2)保存ユニット120及び保存ユニット140は、液滴吐出ヘッド10の内部に連通する圧力調整弁97を備えており、内部に保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の内部の保管液が減少した場合には、弁孔102aの封止が解除されることによって、保管液が流動して、液滴吐出ヘッド10の内部に保管液を補充することができる。また、弁孔102aが封止された状態では、吐出ノズル42から保管液が流出することを抑制することができる。
【0090】
(3)保管液として機能液の溶媒を用いることにより、保管液は不揮発成分を含まないため、液滴吐出ヘッド10の内部において、保管液が蒸発した後に残留物が残ることを実質的になくすことができる。
【0091】
(4)保存ユニット160においては、中継タンク23、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に、保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の、吐出ノズル42、及び液たまり55や供給口56や圧力室58などの流路が乾燥することを抑制することができる。
【0092】
(5)保存ユニット160は、液滴吐出ヘッド10の内部に連通する中継タンク23を備えており、内部に保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の内部の保管液が減少した場合には、中継タンク23から供給される保管液によって、液滴吐出ヘッド10の内部に保管液を補充することができる。また、中継タンク23の流入口を封止することによって、吐出ノズル42から保管液が流出することを抑制することができる。
【0093】
(6)保存ユニット180においては、保管液タンク181、配液管94、及び液滴吐出ヘッド10の内部に、保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の、吐出ノズル42、及び液たまり55や供給口56や圧力室58などの流路が乾燥することを抑制することができる。
【0094】
(7)保存ユニット180は、液滴吐出ヘッド10の内部に連通する保管液タンク181を備えており、内部に保管液が充填されている。これにより、液滴吐出ヘッド10の内部の保管液が減少した場合には、保管液タンク181から供給される保管液によって、液滴吐出ヘッド10の内部に保管液を補充することができる。また、保管液タンク181は、内部に多孔質体182を有しており、保管液が多孔質体182に保持されるため、吐出ノズル42から保管液が流出することを抑制することができる。
【0095】
(8)保存ユニット125又は保存ユニット145においては、ヘッドキャップ126又はヘッドキャップ146が、液滴吐出ヘッド10のノズルプレート41を覆っている。これにより、吐出ノズル42から液滴吐出ヘッド10の内部に充填された保管液が蒸発することを抑制することができる。また、ノズルプレート41が他の物に衝突することによって損なわれることを抑制することができる。
【0096】
(9)保管液として機能液の溶媒を用いることにより、液滴吐出ヘッド10の検査などのために液滴吐出ヘッド10に充填された機能液の溶質が、液滴吐出ヘッド10の内部において、流路の壁や吐出ノズル42などに付着した場合には、当該付着物を溶解することによって、液滴吐出ヘッド10の内部を洗浄することができる。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0098】
(変形例1)前記実施形態においては、保存ユニット120などの保存ユニットにおいて、液滴吐出ヘッド10がヘッドユニット21の状態に組み込まれていたが、液滴吐出ヘッドがヘッドユニットの状態であることは必須ではない。保存ユニットは、個別の吐出ヘッドに液溜部を有する液溜器を組み合わせた構成であってもよい。
【0099】
(変形例2)前記実施形態においては、保存ユニット120などの保存ユニットは、圧力調整弁97や中継タンク23や保管液タンク181などと液滴吐出ヘッド10とを結合する配液管94を有していたが、配液管94のような結合用の流路を備えることは必須ではない。液滴吐出ヘッドに、保管液を貯留する液溜部を有する液溜器を、直接接続する構成であってもよい。
【0100】
(変形例3)前記実施形態においては、圧力調整弁97や中継タンク23とは異なる保管液用の貯留器として保管液タンク181を例に説明したが、保管液の貯留器として保管液タンク181のようなタンクを用いることは必須ではない。可撓性を有する袋状の容器に保管液を充填した保管液パックを用いてもよい。
【0101】
(変形例4)前記実施形態においては、保存ユニット120などの保存ユニットは、負圧構成構造として、圧力調整弁97を用いることや、中継タンク23の流入口を封止することや、保管液タンク181が多孔質体182を有することなど、液溜部を有する液溜器が負圧構成構造を備えていた。しかし、液溜器が負圧構成構造を備えることは必須ではない。液溜部と液滴吐出ヘッドの吐出ノズルとの相対高さ(重力加速度の方向における位置の差)が、大量の流出が発生することなく、微量の供給が継続されるような相対高さになる位置に、液溜部及び液滴吐出ヘッドを配置してもよい。この場合、液溜部と液滴吐出ヘッドの吐出ノズルとを適切な相対高さ配置することが、負圧構成構造に相当する。
【0102】
(変形例5)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、圧力調整弁97を備えていたが、液滴吐出装置が圧力調整弁を備えることは必須ではない。液滴吐出ヘッドの吐出ノズルと、液状体を貯留して液滴吐出ヘッドに供給するための貯留タンクと、を適切な相対高さ配置する構成であってもよい。
このような液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドを保管又は輸送するための保存ユニットとしては、圧力調整弁97を用いない、例えば保存ユニット160や保存ユニット180のような保存ユニットが好ましい。
【0103】
(変形例6)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、中継タンク23を備えていたが、液滴吐出装置が中継タンクを備えることは必須ではない。液滴吐出ヘッドの吐出ノズルと、液状体を貯留して液滴吐出ヘッドに供給するための貯留タンクと、を適切な相対高さ配置する構成であってもよい。
このような液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドを保管又は輸送するための保存ユニットとしては、中継タンク23を用いない、例えば保存ユニット180のような保存ユニットが好ましい。
【0104】
(変形例7)前記実施形態においては、保存ユニット125又は保存ユニット145におけるノズル封止部材としてのヘッドキャップ126又はヘッドキャップ146は、保存ユニット125又は保存ユニット145が有する液滴吐出ヘッド10の全てを一括して覆う構成であった。しかし、ノズル封止部材が多数の吐出ヘッドの吐出ノズルを一括して封止することは必須ではない。例えば、個別の吐出ヘッドごとに、それぞれノズル封止部材を設ける構成であってもよい。
【0105】
(変形例8)前記実施形態においては、液滴吐出装置1のヘッドユニット21は12個の液滴吐出ヘッド10を備えていたが、ヘッドユニットが備える液滴吐出ヘッドの数は、12個に限らない。ヘッドユニットは、何個の液滴吐出ヘッドを備えていてもよい。
【0106】
(変形例9)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は1組のヘッドユニット21を備えていたが、液滴吐出装置が備えるヘッドユニットは1組に限らない。液滴吐出装置は、何組のヘッドユニットを備えていてもよい。
【0107】
(変形例10)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド10は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであったが、吐出ヘッドがインクジェット方式の液滴吐出ヘッドであることは必須ではない。上述した吐出ヘッドの保存方法又は吐出ヘッド保存ユニットを用いて保管又は輸送する吐出ヘッドは、インクジェット方式とは異なる方式の液滴吐出ヘッドであってもよいし、液滴吐出ヘッドとは異なる、他の方式の吐出ヘッドであってもよい。例えば、ディスペンサなどであってもよい。
【0108】
(変形例11)前記実施形態においては、保存ユニット120などの保存ユニットにおける液滴吐出ヘッド10に充填する保管液として、機能液の溶媒を用いていたが、保管液として吐出ヘッドが吐出する液状体の溶媒を用いることは必須ではない。保管液は、揮発性であって、保存ユニットに充填した状態が長時間継続しても保存ユニットの吐出ヘッドなどが損なわれることがないものであれば、どのようなものであってもよい。ただし、吐出ヘッドが吐出する液状体の溶質が溶解可能なものであることが、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドをノズルプレート側から見た外観を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの接続針周りの概構造を示す部分断面図。
【図3】(a)は、液滴吐出ヘッドの圧力室周りの構造を示す斜視断面図。(b)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の構造を示す断面図。
【図4】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図5】圧力調整弁の構成及び動作を示す模式断面図。
【図6】ヘッドキャリッジの側面図。
【図7】保存ユニットの側面図。
【図8】保存ユニットの他の構成例を示す側面図。
【図9】保存ユニットの他の構成例を示す側面図。
【図10】保存ユニットの他の構成例を示す側面図。
【図11】保存ユニットの他の構成例を示す側面図。
【図12】保存ユニットの他の構成例を示す側面図。
【符号の説明】
【0110】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、10…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、23…中継タンク、24…給液チューブ、25…ヘッドキャリッジ、41…ノズルプレート、41a…ノズル形成面、42…吐出ノズル、45…液体導入部、46…接続針、46a…導入口、53…液供給孔、56…供給口、58…圧力室、59…圧電素子、61…ユニットプレート、65…ヘッド群、92…キャリッジ枠、94…配液管、97…圧力調整弁、101…流路ケース、102…ケース隔壁、102a…弁孔、103…圧力室、104…流入室、106…弁ユニット、107…流入口流路、107A…流入口端子、108…流出口流路、108A…流出口端子、108a…流出口流路、108b…流出口流路、109…ダイヤフラム、111…受圧板、112…弁ロッド、112a…ロッド部、112b…ロッド板、116…シールパッキン、117…弁ばね、118…圧力保持ばね、120,125,140,145,160,180…保存ユニット、126,146…ヘッドキャップ、147…キャップ布、161…封止蓋、181…保管液タンク、182…多孔質体、183…流出口端子、184…圧力開放孔、231…流入口端子、232…流出口端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体が吐出される吐出ノズルと、前記吐出ノズルに連通する前記液状体の流路と、前記流路に連通する液導入孔と、を有する吐出ヘッドの保存方法であって、
液溜部を有する液溜器を、前記液溜部が前記液導入孔に連通する状態で、前記吐出ヘッドに接続する工程と、
前記吐出ノズルと、前記流路と、前記液導入孔と、前記液溜部とに、保管液を充填する工程と、を有することを特徴とする吐出ヘッドの保存方法。
【請求項2】
前記液溜部は、負圧形成構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項3】
前記負圧形成構造は、前記液溜部を、前記液溜部における前記保管液で満たされた前記液導入孔に連通する部分以外の部分において外部と隔絶させることによって構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項4】
前記負圧形成構造は、前記液溜部内に配設された多孔質部材によって構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項5】
前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットであって、前記液溜部は、前記圧力調整バルブユニットにおける前記液状体の流路であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項6】
前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための給液装置において前記液状体を一時的に貯留するための貯留部を有する中継タンクであり、前記液溜部は、前記貯留部であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項7】
前記保管液は、揮発性の物質で構成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項8】
前記保管液は、前記液状体の溶媒で構成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項9】
前記吐出ノズルを封止するノズル封止部材を前記吐出ヘッドに装着する工程をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の吐出ヘッドの保存方法。
【請求項10】
液状体を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに連通する前記液状体の流路と、前記流路に連通する液導入孔とを備える吐出ヘッドと、
前記液導入孔に連通する液溜部を有する液溜器と、
前記吐出ノズルと、前記流路と、前記液導入孔と、前記液溜部とに充填された保管液と、を備えることを特徴とする吐出ヘッド保存ユニット。
【請求項11】
前記液溜部は、負圧形成構造を有することを特徴とする、請求項10に記載の吐出ヘッド保存ユニット。
【請求項12】
前記液溜器は、前記吐出ヘッドに前記液状体を供給するための圧力を調整する圧力調整バルブユニットであって、前記液溜部は、前記圧力調整バルブユニットにおける前記液状体の流路であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の吐出ヘッド保存ユニット。
【請求項13】
前記保管液は、揮発性の物質で構成されていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の吐出ヘッド保存ユニット。
【請求項14】
前記保管液は、前記液状体の溶媒で構成されていることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の吐出ヘッド保存ユニット。
【請求項15】
前記吐出ノズルを封止するノズル封止部材をさらに備えることを特徴とする、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の吐出ヘッド保存ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−198856(P2009−198856A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41071(P2008−41071)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】