説明

吐水装置

【課題】 ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を交互に切替えることができ、さらに湯水の流量調節を素早く行なうことができる吐水装置を提供する。
【解決手段】 ボタン13のプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を第1通水孔14からの吐水と第2通水孔15からの吐水とに交互に切替えるための切替部材Aを設けた吐水装置において、前記切替部材Aは各通水孔14,15から吐水される湯水の流量を調節する流量調節部材Bを設け、この流量調節部材Bを前記ボタン13と連繋させ、ボタン13の操作により湯水の吐水形態の切替えと流量調節とを行なうようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キッチン、洗面化粧台、浴室等で使用される吐水装置に係り、特に、ボタンのプッシュ操作により吐水される湯水の吐水形態を第1通水孔又は第2通水孔等、複数の吐水形態のうちの何れかに切替えられるようにした吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吐水装置としては例えば特許文献1があり、この特許文献1の吐水装置では、切替部材と連繋したボタンのプッシュ操作により、湯水の吐水形態を直流吐水又はシャワー散水の何れかに交互に切替えられるようにしていた。このように吐水装置が単一のボタンのプッシュ操作により湯水の吐水形態を切替えることができると、例えば吐水装置に直流吐水用のボタンとシャワー散水用のボタンとを別々に設けたものと比較してコンパクトとすることができるうえ、単一のボタンのみをプッシュすることで湯水の吐水形態を切替えることができ、操作するボタンを間違えることがなく、操作性が良好となるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−16032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の吐水装置においては、湯水の吐水形態の切替えはボタンをプッシュする操作で行なうことができるが、吐水される湯水の流量調節はこのボタンで行なうことができず、流量調節を行なうには湯水混合水栓の操作レバーを操作する必要がある。この場合、吐水装置のボタンと湯水混合水栓の操作レバーとは離れた位置に設けられているため、吐水形態の切替えと吐水流量の調節とを素早く行なうことができず、吐水装置の利用者にとっては煩わしいものであった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を交互に切替えることができ、さらに湯水の流量調節を素早く行なうことができる吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために請求項1に記載の発明では、ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を第1通水孔からの吐水と第2通水孔からの吐水とに交互に切替えるための切替部材を設けた吐水装置において、前記切替部材は各通水孔から吐水される湯水の流量を調節する流量調節部材を設け、この流量調節部材を前記ボタンと連繋させ、ボタンの操作により湯水の吐水形態の切替えと流量調節とを行なうようにしたものである。
【0007】
請求項2では請求項1記載の発明による吐水装置において、前記切替部材はボタンをプッシュ操作するごとに湯水が吐水される流路を第1通水孔又は第2通水孔の何れかに交互に切替え、ボタンを回転させることで各通水孔から吐水される湯水の流量が調節されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明による吐水装置では、ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を交互に切替えることができ、さらに湯水の流量調節をこのボタンの操作により行なうことができ、単一のボタンで湯水の吐水形態の切替えと流量調節とを行なえるため、従来の吐水装置と比較して操作性を著しく向上させることができる。また、吐水装置のボタンの操作で流量調節を行ない、水栓の操作レバーの操作により止水状態とした後に再び操作レバーを吐水方向へ操作すると、操作レバーを全開位置まで操作をしても止水前と同一の流量が吐水されるので、吐水操作を行なうたびに使用に適した流量に調節する手間を省くことができる。
【0009】
請求項2記載の発明による吐水装置では、吐水流路の切替えと吐水流量の調節とはボタンによる異なる操作により行なうため、湯水の吐水時の誤操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施例を図に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1に示すように、本発明の吐水装置10を備えた水栓2は、例えばキッチンのカウンター1の上部に装着され、その胴体部3の上端には操作レバー4が取付けられている。そして、この操作レバー4を垂直軸線の周りで左右方向に回動操作することにより、吐水される湯水の混合比が変更されて温度が調節される。また、操作レバー4を水平軸線の周りで上下方向に回動操作することにより、吐水される湯水の流路開閉及び流量調節が行なわれるようになっている。
【0012】
前記水栓2の胴体部3先端には本発明の吐水装置10が取付けられ、図2乃至図5に示すように、吐水装置10はその本体11の下部には吐水口12が突設されるとともに、先端前面にはプッシュ操作と回転操作とが可能なボタン13が設けられている。そして、このボタン13をプッシュ操作するごとに、吐水口12から吐水される湯水が第1通水孔14からの吐水と第2通水孔15からの吐水とに交互に切替えられ、ボタン13を回転させることで、各通水孔14,15から吐水される湯水の吐水流量を調節できるようにしている。
【0013】
次に、前記吐水装置10の構成について詳細に説明する。
図2乃至図5に示すように、吐水装置10は略円筒形に形成された本体11の外周にカバー16が嵌着されるとともに、本体11の下部には前記吐水口12が突設されている。本体11は内部に湯水が通過する通水路17が形成され、この通水路17の基端には接続部材18が装着されており、この接続部材18にはホース19が接続され、ホース19の他端は前記水栓2の図示しない湯水混合機構に接続されている。そして、水栓2の湯水混合機構にて調節された所定温度の湯水が、このホース19の内部に形成された流路19aを通過して本体11の通水路17に供給されるようになっている。また、吐水装置10はホース19と共に水栓2の胴体部3から引き出すことができるようになっている。
【0014】
吐水装置10の本体11は、ホース19が接続される基端からボタン13が取付けられる先端に向けて軸方向に前記通水路17が形成され、この通水路17に切替部材Aが設けられ、切替部材Aにより吐水口12から吐水される湯水の吐水形態が、第1通水孔14からの吐水と第2通水孔15からの吐水とに交互に切替えられるようになっている。切換部材Aは操作ロッド20と仕切板21とを備え、操作ロッド20は本体11の略中央に装着された仕切板21の挿通孔21a、及び本体11の先端に装着された蓋22の挿通孔22aを前後へ移動可能に挿通支持され、その先端には前記ボタン13が取付けられている。蓋22の先端には保持機構23が装着され、この保持機構23と、前記接続部材18と切替部材Aとの間に収容されたスプリング24とにより、ボタン13を本体11に向けてプッシュ操作するごとに、ボタン13及び操作ロッド20は本体11に対し、露出位置又は引込位置に保持されるようにしている。
【0015】
図6に示すように、前記操作ロッド20はその外周面に第1通水溝20aと第2通水溝20bとが形成されている。この通水溝20a,20bは操作ロッド20の軸方向に沿って横長に形成され、前記蓋22と通水溝20a,20bとの間にはパッキン25が装着されている。操作ロッド20において、通水溝20a,20bの外周面には前記仕切板21が装着され、この仕切板21は外周面に雄ねじ部21bが形成され、この雄ねじ部21bが本体11の通水路17内周面に形成された雌ねじ部11aに螺着して固定されている。仕切板21は略円盤型で、その軸方向には略円弧状の通水孔21cが複数個、本実施例では2個が貫通して形成されている。また、前記操作ロッド20の基端にはこの仕切板21と向かい合うようにして流量調節部材Bが設けられている。
【0016】
前記流量調節部材Bは操作ロッド20の基端でその外周面に設けられ、固定板26と可動板27とを備えている。固定板26は略円盤型で、その外周面に突起26aが形成され、この突起26aが本体11の通水路17に形成された溝17aに係合することで回転不能に配置されている。また、図6に示すように、固定板26は可動板27と向かい合う摺接面に前記ホース19の流路19aと連通する第1入口孔26bと第2入口孔26cとが穿設されている。前記可動板27は固定板26と略同一形状の略円盤型で、操作ロッド20の基端外周面に一体に形成されており、固定板26と向かい合う摺接面に固定板26の入口孔26b,26cと連通する第1出口孔27aと第2出口孔27bとが穿設されている。
【0017】
吐水装置10の通水路17は前記操作ロッド20と仕切板21とにより、第1吐水室28と第2吐水室29とに仕切られており、通水路17と第1吐水室28とは固定板26の入口孔26b,26c、可動板27の出口孔27a,27b及び操作ロッド20の通水溝20a,20bを介して連通し、通水路17と第2吐水室29とは、固定板26の入口孔26b,26c、可動板27の出口孔27a,27b及び仕切板21の各通水孔21cを介して連通する。
【0018】
前記吐水口12はその底面に装着された散水板30に、直流孔が穿設された第1通水孔14とシャワー孔が多数穿設された第2通水孔15とが形成され、第1通水孔14は散水板30の中央部に穿設され、第2通水孔15は第1通水孔14の外周側に環状に穿設されている。なお、本実施例では第1通水孔を直流孔とし、第2通水孔をシャワー孔としているが、通水孔は他の吐水形態により吐水される孔形状としてもよく、例えばマッサージ孔、ミスト孔、泡沫孔としてもよい。
【0019】
上記の構成において、吐水装置10の切替部材Aは図2及び図7に示すように、可動板27の摺接面が固定板26の第1入口孔26bを閉塞し、固定板26の他方の第2入口孔26cと可動板27の第2出口孔27bとが連通した状態では、通水路17と操作ロッド20の第1通水溝20aとは連通しておらず、通水路17と操作ロッド20の第2通水溝20bとのみが連通し、吐水口12の第1通水孔14から吐水される湯水は全開とはならず、第1通水孔14から直流状に吐水される湯水の流量を少量とすることができる。なお、この場合、仕切板21の両通水孔21cは可動板27の摺接面により閉鎖されているため、通水路17から第2吐水室29及び第2通水孔15へは湯水は供給されない。
【0020】
次に操作ロッド20と連繋したボタン13を回転方向に操作すると、図3及び図8に示すように可動板27が回転し、固定板26の第1入口孔26bと可動板27の第1出口孔27a、及び固定板26の第2入口孔26cと可動板27の第2出口孔27bがそれぞれ連通した状態となり、図2と比較してさらに可動板27の第1出口孔27a及び操作ロッド20の第1通水溝20aを湯水が通過するため、吐水口12の第1通水孔14から吐水される湯水が増加して全開となり、第1通水孔14から直流状に吐水される湯水の流量を全開とすることができる。なお、図2に示す少量吐水の状態と図3に示す全開吐水の状態との間でボタン13の位置をさらに調節することにより、吐水口12から吐水される湯水の流量をさらに調節することができる。上記のように吐水装置10のボタン13の操作で流量調節を行ない、水栓2の操作レバー4の操作により止水状態とした後に再び操作レバー4を吐水方向へ操作すると、操作レバー4を全開位置まで操作をしても止水前と同一の流量が吐水されるので、吐水操作を行なうたびに使用に適した流量に調節する手間を省くことができる。
【0021】
そして、ボタン13のプッシュ操作により操作ロッド20が図3から図4のように移動すると、操作ロッド20に設けられた可動板27は図面中左方向へ移動するため仕切板21から離れ、通水路17と第2吐水室29とが仕切板21の各通水孔21cにより連通し、第2通水孔15からシャワー状の湯水が全開吐水される。また、操作ロッド20の外周面に装着されているパッキン25が仕切板21の内周面に密着し、操作ロッド20の各通水溝20a,20bから第1吐水室28への通水路がこのパッキン25により遮断されるため、第1通水孔14からは湯水は供給されない。

【0022】
次に図4の状態からボタン13を回転方向に操作して操作ロッド20に設けられた可動板27が回転すると、図5に示すようにこの可動板27の摺接面が固定板26の第1入口孔26bを閉塞し、固定板26の第2入口孔26cと可動板27の第2出口孔27bとが連通した状態となる。この状態では吐水口12の第2通水孔15から吐水される湯水は全開とはならず、第2通水孔15からシャワー状に吐水される湯水の流量を少量とすることができる。
【0023】
以上のように本発明による吐水装置では、ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を交互に切替えることができ、さらに湯水の流量調節をこのボタンの操作により行なうことができ、単一のボタンで湯水の吐水形態の切替えと流量調節とを行なえるため、従来の吐水装置と比較して操作性を著しく向上させることができる。また、吐水装置のボタンの操作で流量調節を行ない、水栓の操作レバーの操作により止水状態とした後に再び操作レバーを吐水方向へ操作すると、操作レバーを全開位置まで操作をしても止水前と同一の流量が吐水されるので、吐水操作を行なうたびに使用に適した流量に調節する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の吐水装置が取付けられた水栓を示す側面図。
【図2】吐水装置の第1通水孔から少量吐水する状態を示す拡大縦断面図。
【図3】吐水装置の第1通水孔から大量吐水する状態を示す拡大縦断面図。
【図4】吐水装置の第2通水孔から大量吐水する状態を示す拡大縦断面図。
【図5】吐水装置の第2通水孔から小量吐水する状態を示す拡大縦断面図。
【図6】切替部材の拡大斜視図。
【図7】流量調節部材の少量吐水時の説明図。
【図8】流量調節部材の大量吐水時の説明図。
【符号の説明】
【0025】
10 吐水装置
13 ボタン
14 第1通水孔
15 第2通水孔
A 切替部材
B 流量調節部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンのプッシュ操作で吐水される湯水の吐水形態を第1通水孔からの吐水と第2通水孔からの吐水とに交互に切替えるための切替部材を設けた吐水装置において、前記切替部材は各通水孔から吐水される湯水の流量を調節する流量調節部材を設け、この流量調節部材を前記ボタンと連繋させ、ボタンの操作により湯水の吐水形態の切替えと流量調節とを行なうようにしたことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記切替部材はボタンをプッシュ操作するごとに湯水が吐水される流路を第1通水孔又は第2通水孔の何れかに交互に切替え、ボタンを回転させることで各通水孔から吐水される湯水の流量が調節されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−274634(P2008−274634A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118994(P2007−118994)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】