説明

向上した塗装性、堅牢性および溶融加工性のための熱可塑性配合物

本開示は、少なくとも1種の熱可塑性レジン、少なくとも1種の不透明性改質剤、少なくとも1種の光沢改質剤および少なくとも1種の衝撃改質剤を含むポリマーコーティング組成物、ポリマーコーティング組成物で少なくとも部分的にコートされた物品、塗装可能なポリマーコートされた物品、ならびにポリマーコートおよび塗装された、ポリマーコートされた物品の製造方法に関する。これらの組成物は、向上した塗装性(水系塗料での塗装性等)、および加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための機械特性を示す一方、許容可能な視覚的外観,例えば不透明性、光沢、表面外観および表面粗さを維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、米国仮出願整理番号61/081,201(2008年7月16日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、種々の基材(例えば、木材、中質繊維板(MDF)、および合成基材等)の上の押出コーティングとして有用な熱可塑性組成物、熱可塑性組成物でコートされた基材を含む物品、ならびに該物品の製造方法に関する。該組成物は、向上した塗装性(水系塗料での塗装性等)および加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための機械特性の1つ以上を示す一方、許容可能な視覚的外観(例えば不透明性、光沢、表面外観および表面粗さ)を維持する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
一般的に、溶媒系塗料は、組成物中の1種または複数種のフィラーの選択に関わらず、熱可塑性レジン系組成物に対する許容可能な接着を示す。しかし、溶媒系塗料の使用は、確実に、環境に配慮した製造元の増加によって低減されており、そしてより厳しい規則が取り組まれている。従って、水系ラテックス塗料が種々の用途に対する標準となった。
【0004】
水系塗料を使用してポリマー系物品を着色または被覆する能力は、少なくとも高極性水性塗料溶液と比較的非極性のポリマー物質との間の相互作用によって制限される。炭素−対−炭素の結合(これは、一次使用または半一次使用の熱可塑性レジンに使用する殆どのポリマー骨格の特徴である)は比較的非極性なレジンをもたらす。ポリマーの極性を増大させる2つの方法としては、官能化およびコンパウンドまたはブレンドが挙げられる。
【0005】
官能化は、極性官能基,例えばカルボニル、アミン、ヒドロキシルの、主ポリマー鎖中へのおよび/または側鎖としての組込みを含む。しかし、このような基の付加は、しばしば、レジンの機械特性において明白かつ不利益な変化をもたらす。コンパウンドまたはブレンドは、ポリマー鎖の官能化に対する代替である。しかし、コンパウンドまたはブレンドは、その成分のいずれとも極めて異なる化学特性を有する、ブレンドされたポリマーをもたらす場合がある。
【0006】
従って、製造元は長く苦心して、種々の基材をコーティング可能な、向上した塗装性(例えば、水系塗料での塗装性)および加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための機械特性を示す一方で許容可能な視覚的外観(不透明性、光沢、表面外観、および表面粗さ)を維持するコーティング組成物を開発してきた。
【0007】
例えば、MDF内装の成形およびトリム(北米市場で入手可能なもの)のための最も一般的なコーティングの1つは、ジェッソ(Gesso)コーティングとして知られている。フェッソ(典型的には南米またはアジアの製造元によって使用される)は、ワイプオン/ワイプオフ型のプロセスを用いて適用される高粘度ペーストである。コーティング後の乾燥は必要であり、そして第2のコーティングをしばしば適用して所望の外見を有する表面を作製し;第2のコーティングはまた乾燥およびバフ研磨しなければならない。よってジェッソコーティングは比較的労働集約的である。更に、ジェッソコーティングは、下地基材の表面における少なくとも軽微な欠陥は隠すことができる平滑な魅力ある仕上げ表面を与えることができるが、これは脆い可能性がある。コーティングの脆さは、許容できない取り扱い性能および加工性能をもたらす場合がある(例えば成形またはトリムをのこぎり切りし、留め継ぎ(miter)し、繰形継ぎ(cope)し、釘固定(nail)し、および/またはルーティング(route)する際)。
【0008】
北米市場において可能な別の一般的なコーティングは、水系ラテックス塗料のコーティングである。塗料は、典型的には、基材上に減圧コートまたはスプレーコートする。この種のコーティングは、典型的には北米の製造元によって使用される。基本的に、高体積の水系ラテックス塗料は、減圧コートまたはスプレーコートして成形またはトリムの表面を下塗りする。そのコーティングは、ジェッソコーティングでと同じように乾燥しなければならないだけでなく、サンド掛けまたはバフ研磨しなければならない。第2のコーティングおよび乾燥もまた必要である。更に、ジェッソプロセスと異なり、減圧コーティングおよびスプレーコーティングは、下地基材表面を、観測できる塗料表面に直接伝えて下地基材の構造的な特徴を露呈する可能性がある。従って、コートされた表面の平滑性は、成形またはトリムのミル粉砕の品質に左右される。
【0009】
従って、コーティング組成物の分野において、下地基材に適用する際(例えば、成形、トリム等)には、押出法を用いることが、ジェッソコーティングの平滑仕上を有するが増大した塗装性および堅牢性を有し、そしてまた許容可能な視覚的外観を有する、下塗りされた基材をもたらすことができることが依然必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
本発明の特定の態様は、熱可塑性レジン系組成物、ならびに塗装性(例えば、その表面に対する水性塗料の接着)および/または機械特性(例えばモジュラスおよび堅牢性)を改善する一方で、許容可能な視覚的外観(不透明性、光沢、表面外観、または表面粗さの少なくとも1つが挙げられる)を維持するように設計された添加剤を含むコーティングを提供する。
【0011】
本開示の1つの態様は、少なくとも1種の熱可塑性レジン、少なくとも1種の不透明性改質剤、任意の少なくとも1種の光沢改質剤および任意に少なくとも1種の衝撃改質剤を含むコーティング組成物を提供する。これらの組成物は、向上した塗装性または加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための機械特性の少なくとも1つを示す一方、許容可能な視覚的外観を維持する。
【0012】
本発明に係る一態様は、熱可塑性レジンを含むレジンコーティングを含み、ここで該コーティングが押出コーティングであり、熱可塑性レジンが溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有し、そして熱可塑性レジンがTg約70℃超および約150℃未満を有する。
【0013】
一側面においては、レジンコーティングが熱可塑性レジンを含み、該熱可塑性レジンが、ポリエステル(コポリエステルを含む)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)(ASA)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、セルロースエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
一側面において、レジンコーティングは、テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびこれらの混合物による少なくとも80モル%の酸残基、エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールによる少なくとも80モル%のグリコール残基を含むコポリエステルを含み、該酸残基は100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基は100モル%のグリコール残基基準である。
【0015】
一側面において、レジンコーティングは、テレフタル酸による70〜100モル%の酸残基、0〜30モル%の、20個以下の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸残基、および0〜10モル%の、16個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸残基を含むポリエステルを含み、該酸残基は100モル%の酸残基基準である。一側面において、レジンコーティングは、テレフタル酸による80〜100モル%の酸残基、0〜20モル%の、20個以下の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸残基、および0〜10モル%の、16個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸残基を含むポリエステルを含み、該酸残基は100モル%の酸残基基準である。一側面において、レジンコーティングは、テレフタル酸による90〜100モル%の酸残基、0〜10モル%の、20個以下の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸残基、および0〜10モル%の、16個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸残基を含むポリエステルを含み、該酸残基は100モル%の酸残基基準である。
【0016】
別の側面において、本発明は、(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも80モル%の酸残基、(b)エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールによる少なくとも80モル%のグリコール残基、を含み、酸残基が100モル%酸残基基準であり、そしてグリコール残基が100モル%グリコール残基基準である、ポリエステルを含む物品を提供する。
【0017】
別の側面において、本発明は、(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;を含む酸成分;ならびに(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜70モル%のグリコール残基;(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;を含むグリコール成分;を含むポリエステルを含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、物品を提供する。
【0018】
別の側面において、本発明は、(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;を含む酸成分;(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜81モル%のグリコール残基;(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;を含むグリコール成分;を含むポリエステルを含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、物品を提供する。
【0019】
一側面において、本発明において有用な特定のポリエステルは、非晶性または半結晶性である。一側面において、本発明において有用な特定のポリエステルは比較的低い結晶性を有することができる。
【0020】
本発明の一側面において、半結晶化時間は170℃で5分超、または170℃で1000分超、または170℃で10000分超である。
【0021】
一側面において、レジンコーティング組成物は、溶解パラメータが約10.5〜約14.0(cal/cm30.5である熱可塑性レジンを含む。
【0022】
一側面において、レジンコーティング組成物は、不透明性改質剤を更に含む。
【0023】
一側面において、レジンコーティング組成物は、衝撃改質剤を更に含む。
【0024】
一側面において、レジンコーティング組成物は、光沢改質剤を更に含む。
【0025】
本発明に係る一態様において、コーティング組成物は、約40質量%〜約100質量%の熱可塑性レジンであってポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)(ASA)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)およびこれらの混合物からなる群から選択されるもの:約0質量%〜約15質量%の不透明性改質剤;約0質量%〜約50質量%の衝撃改質剤;および約0質量%〜約40質量%の光沢改質剤;を含み、不透明性改質剤、衝撃改質剤または光沢改質剤の少なくとも1種が0質量%超であり、そして質量パーセントはコーティング組成物の総質量基準である。
【0026】
本開示はまた:
30質量%〜95質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー;
1質量%〜15質量%の少なくとも1種の不透明性改質剤;
0質量%〜50質量%の少なくとも1種の光沢改質剤;および
0質量%〜20質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤;
を含むコーティング組成物を提供する。
【0027】
本開示は更に:
30質量%〜70質量%の少なくとも1種のコポリエステル;
1質量%〜10質量%の二酸化チタン;
10質量%〜40質量%の炭酸カルシウム;および
5質量%〜20質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤であってポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレートおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種のポリマーを含む衝撃改質剤;
を含み、該質量パーセントが組成物の総質量基準である、コーティング組成物を提供する。ある態様において、少なくとも1種のポリマーはホモポリマーではない。
【0028】
別の態様において、本発明は、少なくとも1種の熱可塑性レジン、少なくとも1種の不透明性改質剤、任意に少なくとも1種の光沢改質剤、および任意に少なくとも1種の衝撃改質剤を含むコーティング組成物、ならびに該コーティング組成物で少なくとも部分的にコートされた基材、を含む物品を提供する。
【0029】
本発明に係る一態様は、(a)熱可塑性レジンコーティングで少なくとも部分的に覆われた木材または木材コンポジット基材;(b)溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有する、熱可塑性レジン;ならびに(c)レジンコーティングの少なくとも一部を覆う塗料;を含み、該コーティングが押出コーティングであり;該熱可塑性レジンが、Tg約70℃超および約150℃未満を有し;そして該塗料がパフォーマンススコア少なくとも6を有する、物品を含む。
【0030】
一側面において、物品は、溶解パラメータが約10.4〜約11.5(cal/cm30.5であるポリエステルを含む熱可塑性レジンコーティングを含む。
【0031】
一側面において、物品上の非処理のポリマーコーティングの上の塗料のパフォーマンススコアが、テープ剥離値少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5を含む。
【0032】
一側面において、物品上の非処理のポリマーコーティングの上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5を含む。
【0033】
一側面において、物品上の非処理のポリマーコーティングの上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値およびテープ剥離値の各々少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5を含む。
【0034】
一側面において、物品上の処理されたポリマーコーティングの上の塗料のパフォーマンススコアは、組合せのテープ剥離値およびクロスハッチ値少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10を含む。
【0035】
一側面において、物品上の処理されたポリマーコーティングの上の塗料のパフォーマンススコアは、組合せのテープ剥離値およびクロスハッチ値少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10、およびスクラッチ接着値少なくとも50%、または少なくとも100%(非処理ポリマーコーティングのスクラッチ接着値よりも大きい)を含む。
【0036】
一側面において、本発明は、ポリエステルを含む熱可塑性レジンコーティングで少なくとも部分的に覆われた木材または木材コンポジット基材を含む物品の製造方法であって;(a)ポリエステルが溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有するものであるポリエステルコーティングを、木材または木材基材の上に押出すこと;および(b)ポリエステルコーティングの少なくとも一部を覆う水系塗料を適用して塗料コーティングを形成すること;を含み、熱可塑性レジンがTg約70℃超および約150℃未満を有し;そして、ポリエステルコーティング上の塗料コーティングが、6〜10の、テープ剥離値およびクロスハッチ値を含むパフォーマンススコアを有する、方法を提供する。
【0037】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって;塗料コーティングを適用する前にポリエステルコーティングをブラストメディアによって研磨して、研磨されたポリエステルレジン表面を形成する、方法を提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は、物品の製造方法であって、ポリエステルが:(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも80モル%の酸残基、(b)エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールによる少なくとも80モル%のグリコール残基、を含み、酸残基が100モル%酸残基基準であり、そしてグリコール残基が100モル%グリコール残基基準である、方法を提供する。
【0039】
別の側面において、本発明は物品の製造方法に関し、該ポリエステルが:(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;を含む酸成分;ならびに(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜70モル%のグリコール残基;(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;を含むグリコール成分;を含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、方法を提供する。
【0040】
別の側面において、本発明は、ポリエステルが非晶である物品の製造方法を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、物品の製造方法であって、該ポリエステルが:(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基、(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分、(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜81モル%のグリコール残基;(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;を含むグリコール成分;を含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、方法を提供する。
【0042】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、研磨されたポリエステルレジン表面が表面粗さ10〜370マイクロインチを有する、方法を提供する。
【0043】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、ブラストメディアが顆粒状である、方法を提供する。
【0044】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、ブラストメディアが、酸化アルミニウム、破砕ガラス、シリコンカーバイド、スチールグリット、クルミ殻、砂、ジェットマグ、および炭酸カルシウムの群から選択される、方法を提供する。
【0045】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、クロスハッチ値少なくとも3を有する、方法を提供する。
【0046】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、テープ剥離値少なくとも3を有する、方法を提供する。
【0047】
一側面において、本発明は、物品の製造方法であって、研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、非処理表面の上のスクラッチ接着値よりも少なくとも50%高いスクラッチ接着値を有する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1a】図1aは、メディアブラスト処理前のポリエステルの対照サンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図1b】図1bは、GNPガラスビーズでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図1c】図1cは、Eastmanガラスビーズでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図1d】図1dは、酸化アルミニウムでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図1e】図1eは、破砕ガラスでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図1f】図1fは、クルミ殻でのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2a】図2aは、酸化アルミナブラスト処理前のポリエステルの対照サンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2b】図2bは、60グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2c】図2cは、70グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2d】図2dは、80グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2e】図2eは、150グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2f】図2fは、220グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【図2g】図2gは、320グリット酸化アルミナでのメディアブラスト処理後のポリエステルのサンプルの光学顕微鏡およびSEMの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の特定の態様の以下の詳細な説明および実施例を参照することによってより容易に理解できる。
【0050】
本発明の1つまたは複数の目的に従い、本発明の特定の態様を、発明の要約において説明し、そして以下で更に説明する。また、本発明の他の態様を本明細書で説明する。
【0051】
特記がない限り、明細書および特許請求の範囲で用いる含有成分、特性(例えば分子量、反応条件等)の量を表す全ての数は、全ての場合で用語「約」によって修飾されることを理解すべきである。よって、特記がない限り、以下の明細書および特許請求の範囲に記載されるような数値パラメータは、本発明による実現が求められる所望の特性に応じて変動し得る近似である。最低でも、各数値パラメータは、少なくとも記載される有効数字の数を考慮し通常の四捨五入法を適用して解釈すべきである。更に、この開示および特許請求の範囲で記載される範囲は全範囲を具体的に含みかつ1つまたは複数の端点のみではないことが意図される。例えば、0から10と記載される範囲は、例えば1、2、3、4等のような0から10の間の全ての整数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113等のような0から10の間の全ての端数、ならびに端点0および10を開示することが意図される。また、例えば「C1〜C5の炭化水素」等の化学置換基に関連する範囲は、C1およびC5の炭化水素およびC2、C3およびC4の炭化水素を具体的に含みかつ開示することが意図される。
【0052】
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメータが近似であることに関わらず、具体例において説明される数値は可能な限り厳密に記載される。しかしいずれの数値も、これらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差に起因して本質的にある程度の誤差を必然的に含む。
【0053】
ここに使用される冠詞"a" "an"および"the"は、他を指す明確な記載がない限りこれらの複数の指示対象を含む。例えば、a "plasticizer"またはa "cellulose ester"の記載は、複数の可塑剤またはセルロースエステルを加工または形成することを含むことが意図される。"an" plasticizerまたは"a" cellulose esterを含有しまたは含む組成物の記載は、名前の挙がったものに加えて他の可塑剤または他のセルロースエステルをそれぞれ含むことが意図される。
【0054】
"comprising(含む)"または"containing(含有する)"または"including(包含する)"によれば、少なくとも名前の挙がった化合物、要素、粒子、または方法ステップ等が組成物または物品または方法に存在するが、他の化合物、触媒、材料、粒子、方法ステップ等の存在は、他のこのような化合物、材料、粒子、方法ステップ等が名前の挙がったものと同じ機能を有しても、特許請求の範囲において明確に排除していない限りは排除されないことが意味される。
【0055】
また、1以上の方法ステップの記載は、組み合わされた列挙されるステップの前もしくは後の追加の方法ステップ、または明確に規定されるこれらのステップの間の途中の方法ステップの存在を排除しないことを理解すべきである。さらに、プロセスステップまたは含有成分の表記は別々の働きまたは含有成分を規定するための便宜的な手段であり、そして列挙された表記は他の記載がない限り任意の配列に並べることができる。
【0056】
本開示の特定の態様は、コーティング組成物の塗装性および機械特性を増大させるための方法を提供し、該方法は、少なくとも1種の熱可塑性レジンを、1)少なくとも1種の不透明性改質剤;2)任意の少なくとも1種の光沢改質剤;および3)任意に少なくとも1種の衝撃改質剤、と組合せることを含む。
【0057】
本発明に係るコーティング組成物は、直線プロファイル(現に塗装、ラップ、またはジェッソ処理(Gesso)されている)を有する任意の物質(例えば、これらに限定するものではないが、ドア枠、窓枠、他のドアまたは窓の部品、フラットパネル棚、引出し(pull-trusion)物品、内装および外装の成形品およびトリム、ならびに外装および内装の羽目板(siding))のコーティングにおいて有用である。コートされることになる基材物質は、コーティングプロセス中に接着させる配合の能力によってのみ限定され、そして例えば、MDF、パーティクルボード、配向ストランドボード、繊維ガラス、天然木材、コンポジット木材製品、および合成基材から選択できる。
【0058】
加えて、本発明のコーティング組成物は、商業用途において現在使用されているものよりも精密さが大幅に小さい基材表面の使用を可能にすることができる。ミル粉砕プロセスによる欠陥を、下塗りした表面内を通して伝えないことができるからである。これらのコーティングは、コートされた基材のサンド掛けまたはバフ掛けおよびコートされた基材の乾燥の少なくとも1つの必要性を排除できる。これらの両者は現在のコーティング技術によって必要である。
【0059】
本明細書で開示する熱可塑性レジン系コーティング組成物は、向上した塗装性および/または加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための機械特性を示す一方、許容可能な視覚的外観,例えば不透明性、光沢、表面外観および/または表面粗さを維持する。
【0060】
本明細書で用いる「向上した塗装性」は、コーティング組成物に対する塗料の優れた接着を意味し、クロスハッチ試験、スクラッチ試験(メディアブラストされたサンプルについて)、およびテープライン試験(本明細書で定義する通り)の少なくとも1つを用いて評価されるものである。
【0061】
本明細書で用いる「向上した機械特性」は、ジェッソおよび減圧コーティング(北米市場において現在入手可能なもの)と比べた優れた堅牢性を意味する(本明細書で記載する試験を用いて評価される通り)。
【0062】
本明細書で用いる「視覚的外観」は、少なくとも不透明性、光沢、表面外観、および表面粗さを意味する。本明細書で用いる「不透明性」は、光がブロックされる程度を意味する。不透明性は本明細書で記載する方法を用いて評価する。本明細書で用いる「光沢」は、表面の輝きの程度を意味し、以下に記載するASTM試験法D2457を用いて評価する。本明細書で用いる「表面外観」は、コーティング組成物の表面における視覚的な欠点(例えば表面の伝わり(下地基材の構造的特徴の露出)および製造および/またはコーティングの方法に起因する表面における欠点(例えば、ローラーに起因するバンプ(段差)等))を意味する。本明細書で用いる「表面粗さ」は、表面上の不均等、畝、または突起の度合いを意味し、本明細書で記載する方法によって評価する。本明細書で用いる「許容可能な」視覚的外観は、北米市場において現在得ることが可能なジェッソおよび減圧コーティングと少なくとも同じ程度に良好であることを意味する。
【0063】
前記の特性において許容可能な性能を同時に与える能力は、予期しないものである。各性能特性は、種々に作用し、そして組成物の種々の成分の各々による予測できない様式でのものであるからである。更に、各々の成分は、組成物の2つ以上の性能特性に影響する場合があり、そして一般的にはそうである。従って、向上した塗装性および加工(切断、釘固定、ルーティング等)のための向上した機械特性を有する熱可塑性レジン系組成物を調製するために得なければならない性能特性に対する各成分の1つまたは複数の効果と、許容可能な視覚的外観との間のバランスは、極めて予測不能なものである。
【0064】
例えば、熱可塑性レジン系組成物の塗装性は、主として2つの因子:1)組成物を湿潤させるための塗料の能力、2)熱可塑性レジン系組成物の表面、特に乾燥塗料のための機械的な連結を与えるための組成物上の幾つかの表面質感の可用性、に左右される。
【0065】
同時に、組成物の表面を湿潤させる能力は、塗料の溶解パラメータと組成物の表面の溶解パラメータとの不整合に強く左右され、これは同時に、ベースレジンの性質に影響される。組成物の溶解パラメータの主要な因子は、ベースレジンの性質である。一般的に、レジンがより極性であると、水系塗料がより良好にレジン上に浸潤し、そしてビードアップしない。レジン(例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリウレタン、およびポリアミド)は一般的により極性の熱可塑性物質の幾つかと考えられ、一方、ポリオレフィン(例えばポリプロピレンおよびポリエチレン)は極性がより小さいと考えられる。
【0066】
塗料の表面の溶解パラメータおよび組成物の溶解パラメータが同様である場合、界面表面エネルギーはより低く、そして塗料が組成物の表面と密に接触できることになる。塗料が乾燥および融合するに従い、組成物の多孔質表面によって、塗料が表面と機械的連結を形成できる。塗料中のラテックス粒子のサイズは、ナノメートルオーダーである。従って、微小孔性の表面構造は、サブミクロンスケールで設計でき、これはマクロスケールの外観または感触に作用しない。
【0067】
金属塩の添加は、コーティング組成物の多孔性を増大させる場合があり、これは塗装中に生じる湿潤を改善できる場合がある。しかし、金属塩のサイズ、形状、および濃度は、基材表面上で露出している表面積の量に作用することになる。一方、衝撃改質剤の添加は、しばしば、全体の溶解パラメータを低下させる。最も有効な衝撃改質剤は、ポリエチレンを基にする一方、これは溶解パラメータ約8.0(cal/cm31/2を有するからである。衝撃改質剤およびベースレジンの相分離は、潜在的に表面上のブルーミングを招来し、これは更に基材表面上の溶解パラメータを、非極性ポリマーセグメントの増大した濃度に起因して低下させる。反応性衝撃改質剤は、ブルーミング効果を低減する見込みのルートを与えることができる。加えて、より極性のゴムセグメント(例えば、アクリル(ブチルアクリレート等);およびポリエーテルおよびポリブタジエン)を基にした衝撃改質剤もまた潜在的な候補である。
【0068】
コーティング上への塗料の接着に加え、コーティングは、基材物質に対する十分な接着を示さなければならない。コーティングの接着が低いことは、製造および取付けの間の広範囲の剥離を招来する可能性がある。基材へのコーティングの接着は、2つの因子:1)コーティングが基材の表面を湿潤させる能力(これは溶解パラメータの相互作用に関係する)、および2)コーティングが基材表面上で流動し、そして基材表面と機械的に連結する能力、の結果である。塗料接着とは異なり、粘度が極めて低くそして溶解パラメータ相互作用が限定的な因子である場合、コーティングの基材への接着は溶融加工中のコーティングの粘度に依存する。コーティングがダイを出た後に冷却されるに従って、その流動の能力は低下し、そして基材への接着の能力もまた低下する。コーティングが、基材への接着が防止されるある温度および粘度まで冷却されるまでの時間は、1)コーティングの粘度の加工温度に対する関係、および2)基材の温度、に左右される。これは溶融コートによる顕著な量の熱を潜在的に吸収する可能性があるからである。
【0069】
熱可塑性レジン系コーティング組成物における別の所望の特徴は、加工(例えば切断、釘固定、ルーティング等)に耐えるのに十分な機械的堅牢性である。
【0070】
しかし、熱可塑性レジン系コーティングに対する特定の可能な添加剤は、組成物の機械的堅牢性を増大させる場合があり、一方他のものはこれを低下させる場合がある。例えば、金属塩および他の無機フィラーは組成物をより脆くする(粒子の化学的性質および形状に応じて種々の程度に)傾向がある。粒子サイズおよび濃度を増大させることは、組成物の全体の堅牢性を低下させる傾向がある。一方、衝撃改質剤は、堅牢性を改善することができる。
【0071】
衝撃改質剤は一般的にはレジンである。組成物の堅牢性に対する衝撃改質剤の有効性は、1)ベースレジンの堅牢性、2)衝撃改質剤とベースレジンとの混和性、および3)衝撃改質剤の化学的組成、に左右される。
【0072】
熱可塑性レジン系コーティング組成物の不透明性は、1)有機または無機の染料の存在または不存在、2)有機または無機の染料の1つまたは複数の濃度、および3)コーティング組成物の厚み、によって影響される場合がある。
【0073】
熱可塑性レジン系コーティング組成物の表面光沢は、1)組成物の表面を壊す(顕微鏡スケールであっても)剤の存在によって、および2)組成物の表面からの光の反射を妨げる剤の存在によって、影響される場合があり、そして一般的にはそうである。小さい無機粒子(例えばタルクおよび炭酸カルシウム)を用いて熱可塑性レジン系コーティング組成物の表面光沢を改質できる。しかし、このような粒子はまた、組成物の表面の極性、組成物の表面の視覚的外観および感触、ならびに組成物の堅牢性に影響する場合がある。例えば、一般的に、粒子のサイズがより大きくなると、より大きい視覚的な表面粗さが観察される。一方、組成物の堅牢性は、一般的には、粒子サイズが増大するに従って低下する。
【0074】
熱可塑性レジン系コーティング組成物の表面平滑性は、組成物のあり得る成分の殆ど全て、更には加工条件,例えばダイまたは型の設計および押出機/射出成形機の成形機条件、によって影響される複雑なパラメータである。例えば、光沢または不透明性の改質剤の粒子であって加工中に溶融しないものは、粗い表面をもたらす場合がある(加工条件が適切に設定されない場合)。更に例えば、組成物の反応性成分もまた、得られる表面に影響する(これらが極端な加工条件,例えば高熱および長滞留時間に曝される場合)。ダイまたは射出成形型の性質もまた、得られる表面仕上げを制御する場合がある。一般的には、添加剤または加工条件(流体の平滑な溶融を生じさせるもの)は、平滑な「魅力ある表面」を生じさせる。加工温度を増大させることは、より平滑で低粘度の溶融物をもたらすことができるが、組成物の分解または反応性成分の過剰反応を回避するための制限を理解すべきである。
【0075】
本発明に従った特定の態様において、本開示のコーティング組成物は、少なくとも1種の熱可塑性レジン、少なくとも1種の不透明性改質剤、任意に少なくとも1種の光沢改質剤、および任意に少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。これらの組成物は、向上した塗装性および機械的特性(加工(切断、釘固定、ルーティング等)のためのもの)を示す一方、許容可能な視覚的外観(不透明性、光沢、表面外観、および表面粗さが挙げられる)を維持できる。ある態様において、コーティング組成物は、粉末コーティング組成物ではない。
【0076】
一側面において、熱可塑性レジンはポリカーボネートを含み、そして物品上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、および/またはテープ剥離値少なくとも3を含む。
【0077】
一側面において、熱可塑性レジンは、ポリメチルメタクリレートを含み、そして物品上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、および/またはテープ剥離値少なくとも3を含む。
【0078】
一側面において、熱可塑性レジンは、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)を含み、そして物品上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、および/またはテープ剥離値少なくとも3を含む。
【0079】
一側面において、熱可塑性レジンは、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)を含み、そして物品上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、および/またはテープ剥離値少なくとも3を含む。
【0080】
一側面において、熱可塑性レジンは、セルロースエステルを含み、そして物品上の塗料のパフォーマンススコアは、クロスハッチ値少なくとも3、および/またはテープ剥離値少なくとも3を含む。
【0081】
本発明に係る一態様において、本開示はまた、(1)総組成物の質量に対して30質量%〜95質量%の、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(例えば、コポリエステルまたはABSまたはSAN)、(2)総組成物の質量に対して1質量%〜15質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤(例えば、二酸化チタン)、(3)総組成物の質量に対して0質量%〜50質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤(例えば、炭酸カルシウム)、および(4)総組成物の質量に対して0質量%〜20質量%の、少なくとも1種の衝撃改質剤(例えば、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイソプレン、ポリブタジエンまたはポリエチレンメチルアクリレート)を含むコーティング組成物に関する。ある態様において、少なくとも1種の衝撃改質剤はホモポリマーではない。
【0082】
熱可塑性レジン
少なくとも1種の熱可塑性レジンは、溶融加工が可能な任意の熱可塑性レジンであることができる。例えば、少なくとも1種の熱可塑性レジンは、直鎖熱可塑性レジン、分岐鎖熱可塑性レジン、超分岐熱可塑性レジン、および星型熱可塑性レジンから選択できる。好適な熱可塑性レジンの非限定例としては、ポリエステル、コポリエステル、アクリル、ポリカーボネートが挙げられる。追加の非限定例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、PETGコポリエステル、およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)(ASA)、およびポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)が挙げられる。熱可塑性レジンの例としては、これらに限定するものではないが、Eastar copolyester 6763(PETGであり、Eastman Chemical Companyから入手可能);Luran HD(SANであり、BASFから入手可能);Terluran GP−22(ABSであり、BASFから入手可能);Modified Acrylate(PMMAであり、Degussaから入手可能);およびCentrex 833(ASAであり、Lanxessから入手可能)が挙げられる。
【0083】
本明細書で用いる用語「ポリエステル」は、「コポリエステル」を包含することが意図され、そして、1種以上の二官能カルボン酸および/または多官能カルボン酸と、1種以上の二官能ヒドロキシル化合物および/または多官能ヒドロキシル化合物とを反応させることによって製造される合成ポリマーを意味することが理解される。典型的には、二官能カルボン酸は、ジカルボン酸であることができ、そして二官能ヒドロキル化合物は、二価アルコール,例えばグリコールおよびジオール等であることができる。本明細書で用いる用語「グリコール」としては、これらに限定するものではないが、ジオール、グリコール、および/または多官能ヒドロキシル化合物が挙げられる。これに代えて、二官能カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸,例えばp−ヒドロキシ安息香酸等であることができ、そして二官能ヒドロキシル化合物は、2つのヒドロキシル置換基を有する芳香核,例えばハイドロキノン等であることができる。本明細書で用いる用語「残基」は、対応するモノマーからの重縮合および/またはエステル化反応を通じてポリマー中に組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書で用いる用語「繰り返し単位」は、カルボニルオキシ基を介して結合するジカルボン酸残基およびジオール残基を有する有機構造を意味する。よって、例えば、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマーまたはその関連の酸ハライド、エステル、塩、無水物、またはこれらの混合物に由来することができる。さらに、本明細書で用いる用語「二塩基酸」は、多官能酸,例えば分岐剤を包含する。従って、本明細書で用いる用語「ジカルボン酸」は、ジカルボン酸およびジカルボン酸の任意の誘導体,例えばその関連の酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、またはこれらの混合物の、ジオールと反応してポリエステルを形成するプロセスにおいて有用なものを包含することが意図される。本明細書で用いる用語「テレフタル酸」は、テレフタル酸自体およびその残基、さらにテレフタル酸の任意の誘導体、例えばその関連の酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物もしくはそれらの混合物またはそれらの残基の、ジオールと反応してポリエステルを形成するプロセスにおいて有用なものを包含することが意図される。
【0084】
本発明に係る特定の態様において、PETGは、本明細書において、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)およびエチレングリコールおよび1種以上の他のグリコール(例えば、エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール)の残基を含むポリエステルと定義される。本発明の特定の態様において、PETGは、80〜100モル%のテレフタル酸、10〜60モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび80〜40モル%のエチレングリコール(合計100モル%である酸成分のモルパーセント、および合計100モル%であるヒドロキシル成分のモルパーセントをそれぞれ基準として)を含む。追加の非限定例としては、80〜100モル%のテレフタル酸、15〜50モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび70〜50モル%のエチレングリコール(合計100モル%である酸成分のモルパーセント、および合計100モル%であるヒドロキシル成分のモルパーセントをそれぞれ基準として)を含むPETGが挙げられる。
【0085】
特定の態様において、少なくとも1種の熱可塑性レジンは、
(a)少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも92モル%、少なくとも93モル%、または少なくとも96モルパーセントの、テレフタル酸もしくはテレフタル酸の誘導体またはこれらの混合物の残基、を含むカルボン酸成分、
(b)少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも92モル%、少なくとも93モル%、または少なくとも96モルパーセントの、エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基、を含むヒドロキシル成分、
を含むポリエステル(ポリエステルポリマー中の100モル%のカルボン酸成分残基基準および100モル%のヒドロキシル成分残基基準である)を含む。
【0086】
特定の態様において、少なくとも1種の熱可塑性レジンは、
(a)少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも92モル%、少なくとも93モル%、または少なくとも96モル%の、テレフタル酸もしくはテレフタル酸の誘導体またはその混合物の残基、を含むカルボン酸成分、および
(b)25〜70モル%の、シクロヘキサンジメタノールの残基、30〜75モル%の、エチレングリコールの残基を含むヒドロキシル成分、
を含むポリエステル(ポリエステルポリマー中の100モル%のカルボン酸成分残基基準および100モル%のヒドロキシル成分残基基準である)を含む。
【0087】
別の側面において、本発明は、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分;ならびに
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜70モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;および
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含むポリエステルを含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、物品を提供する。
【0088】
別の側面において、本発明は、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基、
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分、
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜81モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含むポリエステルを含み、該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、物品を提供する。
【0089】
本発明において有用なコポリエステルの他の例としては、EastarTMコポリエステルレジン、CadenceTMコポリエステルレジン、ProvistaTMコポリエステルレジン、DurastarTMコポリエステルレジンおよびEmbraceTMコポリエステルレジン(全てEastman Chemical Company,Kingsport,Tennessee,USAから入手可能)が挙げられる。
【0090】
本発明において有用な特定のポリエステルは、従って、実質的に非晶のモルホロジーを有する(これはポリエステルが実質的に無秩序の領域を含むことを意味する)ことができる。本発明において有用な特定のポリエステルによって示される長い半結晶化時間(例えば5分超)(170℃にて)により、本発明の熱可塑性コーティング組成物およびコートされた物品を製造することが可能である。本発明において有用な特定のポリエステルは「非晶」(本明細書において、170℃にて半結晶化時間5分超を有するものと定義する)である。
【0091】
本明細書で用いるポリエステルの半結晶化時間は、当業者によく知られた方法を用いて測定できる。ポリエステルの半結晶化時間t1/2は、温度制御された高温ステージ上でレーザーおよび光検知器によってサンプルの光透過率を時間の関数として測定することよって算出した。この測定は、ポリマーを温度Tmaxに暴露し、次いでそれを所望の温度まで冷却することによって行った。次に、サンプルを、高温ステージによって所望の温度に保持し、その間に透過率測定を時間の関数として行った。最初はサンプルは目視によって明澄であって高い光透過率を有し、サンプルが結晶化するにつれて不透明になった。半結晶化時間は、光透過率が初期透過率と最終透過率との中間であった時間である。Tmaxはサンプルの結晶性ドメインを溶融させる(結晶性ドメインが存在するならば)のに必要な温度と定義する。半結晶化時間の測定前にサンプルを状態調整するために、サンプルをTmaxまで加熱する。絶対Tmax温度は各組成毎に異なる。例えば、PCTは、結晶性ドメインを溶融させるために、290℃より若干高い温度まで加熱することが必要となる。
【0092】
本発明において有用なポリカーボネートは、カーボネート結合を介して結合する2価フェノールの2価残基を含み、そして構造式IIおよびIIIで表される。
【0093】
【化1】

【0094】
【化2】

【0095】
(式中:Aは、1〜8個の炭素原子を有するアルキレン基;2〜8個の炭素原子を有するアルキリデン基;5〜15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;5〜15個の炭素原子を有するシクロアルキリデン基;カルボニル基;酸素原子;硫黄原子;−SO−またはSO2−;または共に0〜1の数を表すeおよびgと適合する基を表し;Zは、F、Cl、BrまたはC1-C4アルキルを表し;そして複数のZ基が1つのアリール基における置換基である場合、これらは互いに同一または異なることができ;dは0〜4の整数を表し;そしてfは0〜3の整数を表す。)
【0096】
用語「アルキレン」は、2の価数が異なる炭素原子上にある二価の飽和脂肪族基、例えば、エチレン;1,3−プロピレン;1,2−プロピレン;1,4−ブチレン;1,3−ブチレン;1,2−ブチレン、アミレン、イソアミレン等を意味する。用語「アルキリデン」は、2の価数が同一炭素原子上にある二価の基、例えば、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン、アミリデン、イソアミリデン、3,5,5−トリメチルヘキシリデンが挙げられる。「シクロアルキレン」の例は、シクロプロピレン、シクロブチレン、およびシクロヘキシレンである。「シクロアルキリデン」の例は、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、およびシクロヘキシリデンである。C1-C4アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルである。
【0097】
採用される二価フェノールは公知であり、そして反応性基はフェノール性水酸基であると考えられる。採用される二価フェノールの幾つかの典型的なものは、ビスフェノール、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、3,3,5−トリメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、アルファ,アルファ’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、アルファ,アルファ’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンおよび4,4’−スルホニルジフェノールである。他の二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、およびアルファ,アルファ−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびにこれらの核アルキル化化合物を挙げることができる。これらのおよびさらなる適切な二価フェノールは、例えば、米国特許第2,991,273号;第2,999,835号;第2,999,846号;第3,028,365号;第3,148,172号;第3,153,008号;第3,271,367号;第4,982,014号;第5,010,162号(全て参照により本明細書に組入れる)に記載されている。本発明のポリカーボネートは、これらの構造において、適切なビスフェノールの1種以上に由来するユニットを伴うことができる。最も好ましい二価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0098】
カーボネート前駆体は、典型的にはハロゲン化カルボニル、ジアリールカーボネート、またはビスハロホルメートである。ハロゲン化カルボニルとしては、例えば、臭化カルボニル、塩化カルボニル、およびこれらの混合物が挙げられる。ビスハロホルメートとしては、二価フェノールのビスハロホルメート、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ハイドロキノン等のビスクロロホルメート、またはグリコール等のビスハロホルメートが挙げられる。以上のカーボネート前駆体の全てが有用であるが、ホスゲンとしても知られる塩化カルボニル、およびジフェニルカーボネートは好ましい。
【0099】
芳香族ポリカーボネートは、任意の方法、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体、例えばホスゲン、ハロホルメートまたはカーボネートエステルとを、メルトまたは溶液において反応させることにより製造できる。適切な方法は、米国特許第2,991,273号;第2,999,846号;第3,028,365号;第3,153,008号;第4,123,436号に開示されており、これらの全てを参照により本明細書に組入れる。本発明において有用なポリカーボネートは、他の公知の手順、例えば、ジヒドロキシ芳香族化合物と、ホスゲン、ハロホルメートまたはカーボネートエステル等のカーボネート前駆体と、分子量調節剤と、受酸剤と、触媒との反応によって調製できる。ポリカーボネートを調製するための方法は、当業界においてよく知られており、そして例えば米国特許第4,452,933号に記載されており、従ってポリカーボネートの調製に関するその開示は参照により本明細書に組入れる。
【0100】
好適なカーボネート前駆体の例としては、これらに限定するものではないが、臭化カルボニル、塩化カルボニルまたはこれらの混合物;炭酸ジフェニル;ジ(ハロフェニル)カーボネート、例えばジ(トリクロロフェニル)カーボネート、ジ(トリブロモフェニル)カーボネート等;ジ(アルキルフェニル)カーボネート、例えばジ(トリル)カーボネート;ジ(ナフチル)カーボネート;ジ(クロロナフチル)カーボネートまたはそれらの混合物;および二価フェノールのビス−ハロホルメートが挙げられる。
【0101】
好適な分子量調節剤の例としては、これらに限定するものではないが、フェノール、シクロヘキサノール、メタノール、アルキル化フェノール、例えばオクチルフェノール、パラ−tert−ブチル−フェノール等が挙げられる。一態様において、分子量調節剤はフェノールまたはアルキル化フェノールである。
【0102】
受酸剤は有機または無機の受酸剤のいずれであることもできる。好適な有機受酸剤は3級アミンであり、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、トリブチルアミン等のような物質が挙げられる。無機受酸剤はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩またはリン酸塩のいずれであることもできる。
【0103】
使用できる触媒は、モノマーとホスゲンとの重合を典型的に助けるものである。好適な触媒としては、これらに限定するものではないが:3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、4級アンモニウム化合物、例えばテトラエチルアンモニウムブロミド、セチルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムヨージド、テトラ−n−プロピルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラ−メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドおよび4級ホスホニウム化合物、例えばn−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよびメチルトリフェニルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
【0104】
本発明において有用なポリエステル組成物において有用なポリカーボネートはまた、コポリエステルカーボネート、例えば米国特許第3,169,121号;第3,207,814号;第4,194,038号;第4,156,069号;第4,430,484号、第4,465,820号および第4,981,898号に記載されたものであることができる。これらのそれぞれからのコポリエステルカーボネートに関する開示を参照により本明細書中に組み入れる。
【0105】
本発明において有用なコポリエステルカーボネートは商業的に入手可能であり、または当業界で公知の方法によって調製できる。例えば、これらは典型的には、少なくとも1種のジヒドロキシ芳香族化合物と、ホスゲンと少なくとも1種のジカルボン酸塩化物、特に塩化イソフタロイル、塩化テレフタロイルまたは両者との混合物との反応によって得ることができる。
【0106】
典型的には、ポリエステルおよびコポリエステル,例えばポリエチレンテレフタレートは、ジオール(例えばエチレングリコール)とジカルボン酸(遊離酸として)またはそのC1−C4ジアルキルエステルとを反応させてエステルのモノマーおよび/またはオリゴマーを生成し、次いでこれを重縮合させて、対応する残基を組み入れているポリエステルを生成することによって、形成する。1つもしくは複数のカルボン酸基を含有する2つ以上の化合物または1つもしくは複数のその誘導体をプロセスの間に反応させることができる。1つもしくは複数のカルボン酸基またはその1つもしくは複数の誘導体を含有するプロセスに入る全ての化合物(これは該ポリエステル生成物の一部となる)は、「カルボン酸成分」を含む。1つもしくは複数のカルボン酸基またはその1つもしくは複数の誘導体を含有する全ての化合物であって生成物中にあるもののモル%は、合計100となる。1つもしくは複数のカルボン酸基またはその1つもしくは複数の誘導体を含有する1種または複数種の化合物の「残基」であって該ポリエステル生成物中にあるものは、該1種または複数種の化合物の部分であって、該1種または複数種の化合物が1つまたは複数の水酸基を含有する1種または複数種の化合物と重縮合した後に該ポリエステル生成物中に残り、更に重縮合して種々の長さのポリエステルポリマー鎖を形成するものを意味する。本発明のポリエステルは、従って、実質的に等モルの比率の酸残基(100モル%)およびジオール(および/または多官能ヒドロキシル化合物)残基(100モル%)を含有して、繰返し単位の総モルが100モル%となるようにできる。本開示において与えるモルパーセントは、従って、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または繰返し単位の総モルを基準とすることができる。例えば、総酸残基基準で30モル%のイソフタル酸を含有するポリエステルは、ポリエステルが、合計100モル%の酸残基のうちイソフタル酸残基を30モル%含有することを意味する。よって、酸残基100モル当たり30モルのイソフタル酸残基が存在する。別の例において、総ジオール残基基準で25モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールを含有するポリエステルは、ポリエステルが、合計100モル%のジオール残基のうち25モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含有することを意味する。よって、ジオール残基100モル当たり25モルの2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基が存在する。
【0107】
1つもしくは複数の水酸基を含有する2種以上の化合物またはその誘導体は、1種または複数種のポリエステルポリマーの一部となることができる。1つもしくは複数の水酸基を含有するプロセスに入る全ての化合物またはその誘導体(これは1種または複数種の該ポリエステル生成物の一部となる)は、ヒドロキシル成分を含む。1つもしくは複数の水酸基を含有する全ての化合物またはその誘導体(これは1種または複数種の該生成物の一部となる)のモル%は合計100となる。1種もしくは複数種のヒドロキシル官能性化合物またはその誘導体の「残基」(これは該ポリエステル生成物の一部となる)は、該1種または複数種の化合物の部分であって、該1種または複数種の化合物が1つもしくは複数のカルボン酸基を含有する1種もしくは複数種の化合物またはその1種もしくは複数種の誘導体と重縮合した後に該ポリエステル生成物中に残り、更に重縮合して種々の長さのポリエステルポリマー鎖を形成するものを意味する。
【0108】
1種または複数種の生成物中のヒドロキシル残基およびカルボン酸残基のモル%は、プロトンNMRによって評価できる。本発明において有用なポリエステル組成物のポリエステル部分は、文献により公知の方法により,例えば、均一溶液中の方法により、溶融物中のトランスエステル化法により、および2相界面法により、形成できる。好適な方法としては、これらに限定するものではないが、1種以上のジカルボン酸を1種以上のグリコールと温度100℃〜315℃にて圧力0.1〜760mmHgで、ポリエステルを形成するのに十分な時間反応させるステップが挙げられる。ポリエステルの製造方法については米国特許第3,772,405号を参照のこと。このような方法に関する開示は参照により本明細書に組入れる。
【0109】
ジカルボン酸
テレフタル酸のエステルならびに他の改質用ジカルボン酸またはその対応するエステルおよび/または塩を、ジカルボン酸に代えて使用できる。ジカルボン酸エステルの好適な例としては、これらに限定するものではないが、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジイソプロピルエステル、ジブチルエステル、およびジフェニルエステルが挙げられる。一態様において、エステルは、以下の、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、およびフェニルエステルの少なくとも1つから選択される。テレフタル酸の誘導体としては、C1−C4ジアルキルテレフタレートが挙げられる。
【0110】
特定の態様において、テレフタル酸、そのエステル,例えばジメチルテレフタレート、またはテレフタル酸およびそのエステルの混合物、は、本発明において有用なポリエステルを形成するのに用いるジカルボン酸成分の殆どまたは全てを構成する。特定の態様において、テレフタル酸残基は、本発明のポリエステルを形成するのに用いるジカルボン酸成分の一部または全てを、濃度少なくとも70モル%,例えば少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%または100モル%で構成できる。特定の態様において、より高衝撃強度のポリエステルを製造するためにより高量のテレフタル酸を使用できる。本開示の目的のために、用語「テレフタル酸」および「ジメチルテレフタレート」は本明細書で互換的に用いる。一態様において、ジメチルテレフタレートは、本発明において有用なポリエステルを形成するために用いるジカルボン酸成分の一部または全部である。全態様において、70〜100モル%、または80〜100モル%、または90〜100モル%、または99〜100モル%、または100モル%の範囲のテレフタル酸および/もしくはジメチルテレフタレートならびに/またはその混合物を使用できる。
【0111】
テレフタル酸の二塩基酸成分に加え、テレフタル酸の誘導体、またはその混合物、1種または複数種のカルボン酸成分(本発明のポリエステルのもの)としては、1種以上の追加の改質剤カルボン酸化合物を挙げることができる。このような追加の改質剤カルボン酸化合物としては、ジカルボン酸化合物、およびより多くのカルボン酸基を有する化合物が挙げられる。例としては、芳香族ジカルボン酸(好ましくは8〜14個の炭素原子を有するもの)、脂肪族ジカルボン酸(好ましくは4〜12個の炭素原子を有するもの)、または脂環式ジカルボン酸(好ましくは8〜12個の炭素原子を有するもの)が挙げられる。1種または複数種の酸成分として有用な改質剤ジカルボン酸のより具体的な例は、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサンアセト酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等であり、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸が最も好ましい。これらの酸の対応する酸無水物、エステル、および酸クロリドの使用は用語「カルボン酸」に包含されることを理解すべきである。トリカルボキシル化合物および化合物(より多くのカルボン酸基を有するもの)を用いてポリエステルを改質することもまた可能である。
【0112】
テレフタル酸残基に加え、本発明の特定の態様において有用なポリエステルのジカルボン酸成分は30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、または1モル%以下の改質用芳香族ジカルボン酸を含むことができる。更に別の態様は、0モル%の改質用芳香族ジカルボン酸を含有する。よって、存在する場合、1種以上の改質用芳香族ジカルボン酸の量は、これらの前述の端点値からのいずれかの範囲であることができることが意図され、例えば、0.01〜30モル%、0.01〜20モル%、0.01〜10モル%、0.01〜5モル%および0.01〜1モル%が挙げられる。一態様において、本発明において使用できる改質用芳香族ジカルボン酸としては、これらに限定するものではないが、20個以下の炭素原子を有するものが挙げられ、そしてこれは直鎖、パラ配向、または対称性であることができる。本発明において使用できる改質用芳香族ジカルボン酸の例としては、これらに限定するものではないが、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−ナフタレンジカルボン酸およびトランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸ならびにそれらのエステルが挙げられる。一態様において、改質用芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸である。
【0113】
本発明において有用なポリエステルのカルボン酸成分は、更に、10モル%以下、5モル%以下または1モル%以下の、2〜16個の炭素原子を含有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸,例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびドデカン二酸のジカルボン酸等で改質することができる。特定の態様はまた、0.01モル%以上、0.1モル%以上、1モル%以上、5モル%以上、または10モル%以上の1種以上の改質用脂肪族ジカルボン酸を含むことができる。更に別の態様は、0モル%の改質用脂肪族ジカルボン酸を含む。従って、存在する場合には、1種以上の改質用脂肪族ジカルボン酸の量は、これらの前述の端点値のいずれかからの範囲であることができることが意図され、例えば0.01〜10モル%および0.1〜10モル%の範囲が挙げられる。ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%である。
【0114】
別の側面において、本発明は:
(I)本発明における任意のポリエステルにおいて有用なモノマーを含む混合物を、触媒の存在下で、約240℃までの温度にて、初期ポリエステルを生成するのに十分な時間加熱すること;
(II)ステップ(I)の初期ポリエステルを温度240〜320℃にて約1〜4時間加熱すること;および
(III)任意の未反応グリコールを除去すること;
を含む方法によって製造されるポリエステルを含む熱可塑性物品に関する。
【0115】
この方法で使用するための好適な触媒としては、有機−亜鉛または錫化合物が挙げられる。この型の触媒の使用は当業界で周知である。本発明において有用な触媒の例としては、これらに限定するものではないが、酢酸亜鉛、ブチル錫トリス−2−エチルヘキサノエート、ジブチル錫ジアセテートおよびジブチル錫オキシドが挙げられる。他の触媒としては、チタン、亜鉛、マンガン、リチウム、ゲルマニウムおよびコバルトをベースとするものを挙げることができる。触媒量は、典型的には、触媒金属基準で約10ppm〜約500ppmの範囲であることができる。この方法は、バッチ法または連続法で実施することができる。
【0116】
典型的には、ステップ(I)は、グリコールの約50質量%以上が反応するまで実施する。ステップ(I)は、大気圧〜100psigの範囲の加圧下で、実施することができる。本発明において有用な任意の触媒に関連して用いる用語「反応生成物」は、ポリエステルの形成において使用する触媒および任意のモノマーを用いた重縮合および/またはエステル化反応の任意の生成物、ならびに触媒と任意の他の型の添加剤との重縮合またはエステル化反応の生成物を意味する。
【0117】
グリコール
エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、またはその混合物を含むヒドロキシル成分に加え、本発明のポリエステルのヒドロキシル成分としては、追加の改質剤ジオールまたは化合物(より多くの水酸基を有するもの)を挙げることができる。改質剤ヒドロキシル化合物の例としては、脂環式ジオール(好ましくは6〜20個の炭素原子を有するもの)および/または脂肪族ジオール(好ましくは3〜20個の炭素原子を有するもの)が挙げられる。このようなジオールのより具体的な例としては、これらに限定するものではないが、ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;プロパン−1,3−ジオール;ブタン−1,4−ジオール;ペンタン−1,5−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;3−メチルペンタン−2,4−ジオール;2−メチルペンタン−1,4−ジオール;2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール;2,5−エチルヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジエチルプロパン−ジオール−(1,3);ヘキサン−1,3−ジオール;1,4−ジ−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン;2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール;2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン;および2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、シス、トランス、またはその混合物であることができ、例えば、シス/トランス比が60:40〜40:60であることができる。別の態様において、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールは、60〜80モル%の量で存在できる。
【0118】
本発明において有用なポリエステル組成物のポリエステル部分のグリコール成分は、25モル%以下の1種以上の改質用グリコール(エチレングリコールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールではない)を含有でき;一態様において、本発明において有用なポリエステルは、15モル%以下の1種以上の改質用グリコールを含有できる。別の態様において、本発明において有用なポリエステルは、10モル%以下の1種以上の改質用グリコールを含有できる。別の態様において、本発明において有用なポリエステルは、5モル%以下の1種以上の改質用グリコールを含有できる。別の態様において、本発明において有用なポリエステルは、3モル%以下の1種以上の改質用グリコールを含有できる。別の態様において、本発明において有用なポリエステルは、0モル%の改質用グリコールを含有できる。よって、存在する場合、1種以上の改質用グリコールの量は、これらの前述の端点値のいずれかからの範囲であることができることが意図され、例えば、0.01〜15モル%、および0.1〜10モル%が挙げられる。
【0119】
改質剤として、ポリエステルポリマーは、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびジエチレングリコールのようなコモノマーを含有できる。
【0120】
本発明のコーティング組成物において有用なポリエステルおよび/またはポリカーボネートは、0〜10モル%、例えば0.01〜5モル%、0.01〜1モル%、0.05〜5モル%、0.05〜1モル%、または0.1〜0.7モル%、または0.1〜0.5モル%(それぞれジオールまたは二塩基酸の残基のいずれかの総モル%基準)の、分岐モノマー(本明細書で分岐剤ともいう)の1つ以上の残基(3つ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基、またはその組合せを有する)を含むことができる。特定の態様において、分岐モノマーまたは分岐剤は、ポリエステルの重合前および/または重合中および/または重合後に添加できる。よって、本発明において有用な1種または複数種のポリエステルは直鎖または分岐であることができる。ポリカーボネートはまた、直鎖または分岐鎖であることができる。特定の態様において、分岐モノマーまたは分岐剤は、ポリカーボネートの重合前および/または重合中および/または重合後に添加できる。
【0121】
分岐モノマーの例としては、これらに限定するものではないが、多官能酸または多官能アルコール,例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸等が挙げられる。一態様において、分岐モノマー残基は、0.1〜0.7モル%の、以下の、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、グリセロール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、および/またはトリメシン酸の少なくとも1種から選択される1種以上の残基を含むことができる。分岐モノマーは、ポリエステル反応混合物に添加でき、または濃縮物の形でポリエステルとブレンドできる。これは例えば米国特許第5,654,347号および第5,696,176号に記載されており、分岐モノマーに関するその開示は参照により本明細書に組入れる。
【0122】
インヘレント粘度
本発明の特定の態様において、熱可塑性レジン,特にポリエステルは、60/40(質量/質量)フェノール/テトラクロロエタン中25℃にて測定したときに、インヘレント粘度(I.V.)値の範囲0.5dL/g〜1.4dL/gを有する。本発明の別の態様において、熱可塑性レジンは、IV範囲0.65dL/g〜1.0dL/gまたは0.65dL/g〜0.85dL/gまたは0.69dL/g〜0.82dL/gを有する。本発明の他の態様について、本発明において有用なポリエステルは、60/40(質量/質量)フェノール/テトラクロロエタン中、濃度0.5g/100mlで25℃にて測定したときに、以下のインヘレント粘度:0.50から1.2dL/g;0.50から1.1dL/g;0.50から1dL/g;0.50dL/gから1dL/g未満;0.50から0.98dL/g;0.50から0.95dL/g;0.50から0.90dL/g;0.50から0.85dL/g;0.50から0.80dL/g;0.50から0.75dL/g;0.50dL/gから0.75dL/g未満;0.50から0.72dL/g;0.50から0.70dL/g;0.50dL/gから0.70dL/g未満;0.50から0.68dL/g;0.50dL/gから0.68dL/g未満;0.50から0.65dL/g;0.55から1.2dL/g;0.55から1.1dL/g;0.55から1dL/g;0.55dL/gから1dL/g未満;0.55から0.98dL/g;0.55から0.95dL/g;0.55から0.90dL/g;0.55から0.85dL/g;0.55から0.80dL/g;0.55から0.75dL/g;0.55dL/gから0.75dL/g未満;0.55から0.72dL/g;0.55から0.70dL/g;0.55dL/gから0.70dL/g未満;0.55から0.68dL/g;0.55dL/gから0.68dL/g未満;0.55から0.65dL/g;0.58から1.2dL/g;0.58から1.1dL/g;0.58から1dL/g;0.58dL/gから1dL/g未満;0.58から0.98dL/g;0.58から0.95dL/g;0.58から0.90dL/g;0.58から0.85dL/g;0.58から0.80dL/g;0.58から0.75dL/g;0.58dL/gから0.75dL/g未満;0.58から0.72dL/g;0.58から0.70dL/g;0.58dL/gから0.70dL/g未満;0.58から0.68dL/g;0.58dL/gから0.68dL/g未満;0.58から0.65dL/g;0.60から1.2dL/g;0.60から1.1dL/g;0.60から1dL/g;0.60dL/gから1dL/g未満;0.60から0.98dL/g;0.60から0.95dL/g;0.60から0.90dL/g;0.60から0.85dL/g;0.60から0.80dL/g;0.60から0.75dL/g;0.60dL/gから0.75dL/g未満;0.60から0.72dL/g;0.60から0.70dL/g;0.60dL/gから0.70dL/g未満;0.60から0.68dL/g;0.60dL/gから0.68dL/g未満;0.60から0.65dL/g;0.65から1.2dL/g;0.65から1.1dL/g;0.65から1dL/g;0.65dL/gから1dL/g未満;0.65から0.98dL/g;0.65から0.95dL/g;0.65から0.90dL/g;0.65から0.85dL/g;0.65から0.80dL/g;0.65から0.75dL/g;0.65dL/gから0.75dL/g未満;0.65から0.72dL/g;0.65から0.70dL/g;0.65dL/gから0.70dL/g未満;0.68から1.2dL/g;0.68から1.1dL/g;0.68から1dL/g;0.68dL/gから1dL/g未満;0.68から0.98dL/g;0.68から0.95dL/g;0.68から0.90dL/g;0.68から0.85dL/g;0.68から0.80dL/g;0.68から0.75dL/g;0.68から0.75dL/g未満;0.68から0.72dL/g;0.76dL/g超から1.2dL/g;0.76dL/g超から1.1dL/g;0.76dL/g超から1dL/g;0.76dL/g超から1dL/g未満;0.76dL/g超から0.98dL/g;0.76dL/g超から0.95dL/g;0.76dL/g超から0.90dL/g;0.80dL/g超から1.2dL/g;0.80dL/g超から1.1dL/g;0.80dL/g超から1dL/g;0.80dL/g超から1dL/g未満;0.80dL/g超から1.2dL/g;0.80dL/g超から0.98dL/g;0.80dL/g超から0.95dL/g;0.80dL/g超から0.90dL/gの少なくとも1つを示すことができる。
【0123】
溶解パラメータ
一態様において、少なくとも1種の熱可塑性レジン,特にポリエステルは、溶解パラメータの範囲10.4〜11.5(cal/cm30.5を有する。本発明の他の態様において、溶解パラメータは、約9.4〜約14.0(cal/cm30.5または約10.0〜13.6(cal/cm30.5または約10.0〜約12.5(cal/cm30.5または約10.4〜約11.2(cal/cm30.5の範囲である。特定の態様はまた、優れた堅牢性および比較的低い加工温度を示す。ベースレジンの選択は、使用条件,例えば温度耐性、堅牢性、耐候性(weathering)によって決定する。
【0124】
ガラス転移温度(Tg)
特定の態様において、熱可塑性レジン,特にポリエステルは、ガラス転移温度60℃〜約150℃または約70℃〜約130℃または約75℃〜約115℃の範囲を有する。他の態様において、熱可塑性レジンは、ガラス転移温度70〜約150℃または80〜約150℃または90〜約150℃または100〜約150℃または110〜約150℃または120〜約150℃または130〜約150℃または140〜約150℃または70〜約140℃ 80〜約140℃または90〜約140℃または100〜約140℃または110〜約140℃または120〜約140℃または130〜約140℃または70〜約130℃または80〜約130℃または90〜約130℃または100〜約130℃または110〜約130℃または120〜約130℃または110〜約120℃または70〜約120℃または80〜約120℃または90〜約120℃または100〜約120℃または70〜約110℃または80〜約110℃または90〜約110℃または100〜約110℃または70〜約100℃または80〜約100℃または90〜約100℃または70〜約90℃または80〜約90℃の範囲を有する。他の態様において、ポリエステルレジンは、Tg60〜150℃または70〜130℃または75〜115℃の範囲を有する。特記がない限り、本発明の熱可塑性物品において有用な組成物は、本明細書に記載するインヘレント粘度範囲の少なくとも1つおよび本明細書に記載する組成物のためのモノマー範囲の少なくとも1つを有することができることが意図される。特記がない限り、本発明の熱可塑性物品において有用な組成物は、本明細書に記載するTg範囲の少なくとも1つおよび本明細書に記載する組成物のためのモノマー範囲の少なくとも1つを有することができることも意図される。特記がない限り、本発明の熱可塑性物品において有用な組成物は、本明細書に記載する溶解性範囲の少なくとも1つおよび本明細書に記載する組成物のためのモノマー範囲の少なくとも1つを有することができることも意図される。特記がない限り、本発明の熱可塑性物品において有用な組成物は、本明細書に記載するインヘレント粘度範囲の少なくとも1つ、本明細書に記載するTg範囲の少なくとも1つ、溶解パラメータ範囲の少なくとも1つ、および本明細書に記載する組成物のためのモノマー範囲の少なくとも1つを有することができることも意図される。
【0125】
熱可塑性レジンの質量パーセント
コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜99質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜95質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜90質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜80質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜70質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜60質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜50質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。
【0126】
特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して40質量%〜95質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して40質量%〜90質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して40質量%〜80質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して40質量%〜70質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して50質量%〜95質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して50質量%〜90質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して50質量%〜80質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して50質量%〜70質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して60質量%〜80質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して60質量%〜70質量%の、少なくとも1種の熱可塑性レジンを含むことができる。
【0127】
不透明性改質剤
少なくとも1種の不透明性改質剤は、有機染料および無機染料から選択できる。このような不透明性改質剤は、コーティング配合物に対する不透明性および色の少なくとも1つに影響することができる。好適な不透明性改質剤の非限定例としては、金属酸化物および金属塩,例えば酸化亜鉛(ZnO)、マイカ、鉛白、硫酸バリウム(BaSO4)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アンチモンおよび二酸化チタン(TiO2)が挙げられる。本開示に従った組成物は、組成物の総質量に対して1質量%〜15質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。ある態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して2質量%〜12質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。ある態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して3質量%〜10質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。ある態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して4質量%〜7質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。ある側面において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜7質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。ある態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜6質量%の、少なくとも1種の不透明性改質剤を含むことができる。
【0128】
光沢改質剤
少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、無機フィラーおよび高分子フィラーから選択できる。好適な無機フィラーの非限定例としては、タルク(マグネシウムシリケート)、シリカ、カオリンクレイ、アルミナおよび炭酸カルシウム(CaCO3)が挙げられる。高分子フィラーの例としては、これらに限定するものではないが、BMAT(Chemtura, Ecdel elastomers,Eastman Chemical Companyから入手可能、およびKM−377,Rohm and Haasから入手可能)が挙げられる。少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、配合物のグレー着色(graying)または黄変には殆どまたは全く影響しない。少なくとも1種の任意の光沢改質剤のメジアン粒子サイズは、1ミクロン未満〜50ミクロン,例えば3ミクロン〜20ミクロンの範囲である。特定の態様において、少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、メジアン粒子サイズ5ミクロン〜50ミクロンの範囲を有する。特定の態様において、少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、メジアン粒子サイズ1ミクロン〜50ミクロン,例えば1ミクロン〜40ミクロン、1ミクロン〜30ミクロン、または1ミクロン〜20ミクロンの範囲を有する。特定の態様において、少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、メジアン粒子サイズ3ミクロン〜50ミクロン,例えば3ミクロン〜40ミクロン、3ミクロン〜30ミクロン、または3ミクロン〜20ミクロンの範囲を有する。特定の態様において、少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、メジアン粒子サイズ5ミクロン〜50ミクロン,例えば5ミクロン〜40ミクロン、5ミクロン〜30ミクロン、または5ミクロン〜20ミクロンの範囲を有する。特定の態様において、少なくとも1種の任意の光沢改質剤は、メジアン粒子サイズ10ミクロン〜50ミクロン,例えば10ミクロン〜40ミクロン、10ミクロン〜30ミクロン、または10ミクロン〜20ミクロンの範囲を有する。
【0129】
光沢改質剤の形状および質量パーセント
少なくとも1種の任意の光沢改質剤の粒子は、種々の形状,例えば、針、球、円板、または立方体の形状であることができる。コーティング組成物は、組成物の総質量に対して0質量%〜70質量%の、少なくとも1種の任意の光沢改質剤を含むことができる。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して0質量%〜50質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して10質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して15質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して20質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して25質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して30質量%〜40質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。
【0130】
別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜35質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜30質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜25質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜20質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜15質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、組成物の総質量に対して5質量%〜10質量%の、少なくとも1種の光沢改質剤を含む。
【0131】
一態様において、少なくとも1種の光沢改質剤は炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムはまた、組成物の得られる表面の極性の性質を改善でき、これは水系ラテックス塗料の改善された接着によって証明される。炭酸カルシウムの濃度および粒子サイズを操作して所望の光沢レベルを得ることができるが、マクロスケールの表面粗さおよび全体的なポリマー系の堅牢性に対する独特の効果もまた観察される。炭酸カルシウムの濃度を増大させることはまた、ポリマー物質を脆化させる場合がある。炭酸カルシウムのレベルの増大では視覚的効果が示されなかったが、極端な高量は、微細に粉砕された粒子のクランピング(より大きい見掛けの粒子サイズをもたらす)をもたらすことが予測される。
【0132】
衝撃改質剤
少なくとも1種の任意の衝撃改質剤は、i)ポリマーの総質量に対して20質量%〜99質量%の量の少なくとも1種のゴム状セグメント;およびii)該少なくとも1種のゴム状セグメントよりも高い極性を有する少なくとも1種のセグメント;を含むポリマーから選択できる。衝撃改質剤の組合せを用いて、所望の堅牢性および所望の溶解パラメータの少なくとも1つを実現できる。加えて、少なくとも1種の任意の衝撃改質剤は、熱可塑性レジンと反応してもしなくてもよい。「ゴム状セグメント」は、非晶のポリマーセグメントであってTg<0℃を有し、そして架橋の存在下で極めて大きい伸長(>500%)を最小限のヒステリシスで生じるものを意味する。ゴム状セグメントとしては、ポリオレフィン(ここでエチレンおよび/またはイソブチレンは、オレフィン系ゴム状セグメント(例えば、Lotader 8900(Arkemaより)、EMAC(Chevron Chemicalより))またはイソプレンまたはブタジエンを基にするゴム状セグメント(例えば、Blendex 362(Chemturaより)およびKane Ace B564(Kanekaより))である)、ポリエーテル(ここでポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイドは、エーテル系ゴム状セグメント(例えば、Elastollan 1154D(BASFより)またはTexin DP7−1198(Bayerより))である)、ポリエチレンプロピレンジエン(ここでジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンは、ポリエチレンプロピレンジエンのジエン系部分である)(例えば、Royaltuf 970E(Chemturaより)およびNordel(Dow Chemicalより))、そしてポリアクリレート(ここでn−ブチルアクリレートおよびオクチルアクリレートは、アクリル系ゴム状セグメント(例えば、Kane Ace FMグレード(Kanekaより)およびRoyaltuf 960A(Chemturaより))である)が挙げられる。
【0133】
少なくとも1種の衝撃改質剤の非限定例としては、ポリオレフィンゴム状セグメント(これはゴム相ともいう)を基にするポリマー、ポリエーテルゴム相を基にするポリマー、アクリルゴム相を基にするポリマー、ならびにブタジエンおよび/またはイソプレンのゴム相を基にするポリマーが挙げられる。ある態様において、少なくとも1種の衝撃改質剤は、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)(ABS)ポリマーから選択される。ある態様において、少なくとも1種の衝撃改質剤は、幾らかかのレベルのより極性の官能基を含むポリエチレンコポリマーから選択され、すなわち、コポリマーの幾らかかの部分はポリエチレンよりも極性である。
【0134】
本発明に係る特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して0質量%〜30質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜30質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜25質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜20質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。別の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜15質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して7質量%〜15質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜10質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。
【0135】
特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して5質量%〜30質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して10質量%〜30質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して15質量%〜30質量%の少なくとも1種の衝撃改質剤を含む。
【0136】
特定の態様において、コーティング組成物は、総組成物の質量に対して0%〜15%の不透明性改質剤、0〜50%の衝撃改質剤、および0〜40%の光沢改質剤を含み、ここで不透明性改質剤、衝撃改質剤および光沢改質剤の少なくとも1つは0%ではなく、そして質量パーセントは、コーティング組成物の総質量基準である。特定の態様において、コーティング組成物は、1〜13%の不透明性改質剤、1〜43%の衝撃改質剤、および1〜39%の光沢改質剤を含み、ここで質量パーセントはコーティング組成物の総質量基準である。特定の態様において、コーティング組成物は、2〜11%の不透明性改質剤、2〜36%の衝撃改質剤、および2〜38%の光沢改質剤を含み、ここで質量パーセントはコーティング組成物の総質量基準である。特定の態様において、コーティング組成物は、3〜9%の不透明性改質剤、3〜30%の衝撃改質剤、および3〜37%の光沢改質剤を含み、ここで質量パーセントはコーティング組成物の総質量基準である。
【0137】
追加の添加剤
加えて、種々の他の特定用途の添加剤を使用することが可能である。このような追加の添加剤としては、これらに限定するものではないが、難燃剤、UV吸収剤、酸化防止剤、着色剤、および光学的光沢剤が挙げられる。一般的に、プライマーとして使用されることになるポリマー配合物のために、不透明な白色着色が望ましい。二酸化チタンは広く使用される白色顔料であるが、種々の他の金属の酸化物および塩を使用できる。
【0138】
コーティング配合物に対する用途は、組成物を所望の形状または物品に溶融加工する能力によって制限されるのみである。ベースレジンの選択は、使用条件,例えば温度耐性、堅牢性、耐候性(weathering)によって決定する。本発明の組成物は、成形およびトリムの市場における塗料プライマーの代替として使用するために開発されたものであり、そして例えば米国特許第6,660,086号および第7,374,795号に記載されるように押出法とともに、使用できる。コーティング配合物は、現在塗装、包囲、またはジェッソ処理されている任意の線形プロファイルの物質のコーティング用に使用できることが証明される。見込まれるような用途は、ドア枠、窓枠、他のドア/窓部品、フラットパネル棚、引出し物品、外装の成形およびトリム、外装または内装の羽目板への技術の単純な拡張である。基材物質は、潜在的にはMDF、パーティクルボード、配向ストランドボード、繊維ガラス、天然木材、他のコンポジット木材製品、および合成基材であることができる。基材物質は、コーティングプロセス中に配合物が接着する能力によって制限されるのみである。これらの物品が、内装および外装の両者において用途を見出すことができると考えるのは自然であり、そして組成物への少量の添加が外装の耐候性の懸念を補償する。
【0139】
着色した顔料を配合物に添加して、所望の色またはデザインを有する仕上げされた物品(これは、所望の場合には後日再塗装できる)を製造する能力もまた予測できる。塗装可能な不透明のシートまたはフィルムはまた、看板工業のためにあり得ることができる。射出成形された物品は、塗装用の用途がより少ないが、使用の可能性はなお存在する。
【0140】
本発明のコーティング配合物は、当業者に一般的な従来のコンパウンド法を用いて製造できる。配合物は、連続法およびバッチ法の両者を用いて製造できる。コンパウンド装置は、通常、異なる添加剤のための複数の供給ポートを有する二軸押出機型の系である。二軸系は、使用される最も有望な設備であることができるが、特に設計された混合軸を有する単軸押出系、遊星ミキサ、またはバンバリミキサを用いて本発明の配合物を製造できるということが考えられる。完全な配合物をコンパウンドすることに加え、同様のコンパウンド法を用いて単独成分濃縮物を製造して濃縮物のペレット−ペレットブレンドを実施して最終配合物を製造することが考えられる。これらのペレット−ペレットブレンド物は、押出しプロセス中に完全にコンパウンドされる。
【0141】
配合物は、二軸コンパウンド、一軸コンパウンド、遊星混合または連続ミキサ操作を介して与えられる高剪断分散および混合を介した熱可塑性マトリクス中での特定成分の溶融ブレンドを介して製造できる。添加剤、少なくとも1種の熱可塑性、少なくとも1種の不透明性改質剤、任意に少なくとも1種の光沢改質剤、および任意に少なくとも1種の衝撃改質剤は、適切な比で混合設備内に供給する。二軸および一軸の系において、配合されたポリマーストランドは水浴を通過して、配合されたポリマー溶融物はクエンチされる。これらのクエンチされたストランドは、ペレタイザを通って進み、そして制御されたサイズのポリマーペレットに切断された。ペレットストランドをクエンチするための他の方法,例えばチルドベルト、チルドエア等が公知である。該コンパウンドされた添加剤を製造する別の方法は、まず押出しプロセスによるフィルムまたはシートへの押出し、および該フィルムまたはシートの所望の粒子サイズへの粉砕による。これらの方法は当業者に公知である。
【0142】
物品の説明
本発明に係る一態様は、熱可塑性レジンコーティングで少なくとも部分的に覆われた基材を含み、該熱可塑性レジンコーティングにおいてレジンが溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有し、そして塗料がレジンコーティングの少なくとも一部を覆っており、該コーティングが押出コーティングであり、熱可塑性レジンがTg約60℃超および約150℃未満を有し、そして塗料がパフォーマンススコア6〜10を有する、物品を含む。本発明の特定の態様において、熱可塑性レジンは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)(ASA)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、セルロースエステルおよびその混合物からなる群から選択される。特定の態様において、基材は、MDF、パーティクルボード、配向ストランドボード、繊維ガラス、天然木材、コンポジット木材製品、および合成基材を含む。代替として、レジンのTgは約70℃〜約150℃、または約70℃〜約130℃、または75℃〜約115℃の範囲である。代替として、ポリカーボネートレジンの溶解パラメータは約10.8(cal/cm30.5である。代替として、SANレジンについての溶解パラメータは、32%アクリロニトリルで、約9.7(cal/cm30.5である。代替として、PMMAレジンについての溶解パラメータは約9.45(cal/cm30.5である。
【0143】
本発明の一態様は、組成物の総質量基準で約40質量%〜約100質量%の熱可塑性レジン(熱可塑性レジンはコポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、およびその混合物からなる群から選択される)、組成物の総質量基準で約0質量%〜約15質量%の不透明性改質剤、組成物の総質量基準で約0質量%〜約50質量%の衝撃改質剤、組成物の総質量基準で0質量%〜約40質量%の光沢改質剤、を含むレジンコーティングを含み、ここで不透明性改質剤、衝撃改質剤または光沢改質剤の少なくとも1つは0質量%超であり、コーティングは押出しコーティングであり、熱可塑性レジンは溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5の範囲を有し、そして熱可塑性レジンはTg約70℃超および約150℃未満を有する。
【0144】
一態様において、レジンは、溶解パラメータ約10.4〜約11.5(cal/cm30.5を有するポリエステルを含む。
【0145】
押出し
押出プロセスは、クロスヘッドダイプロセス(例えば米国特許第6,660,086 Bl号(参照により本明細書に組入れる)に開示されるような)であることができる。
【0146】
本発明に従い、コーティング押出法を開示し、これはポリマーコーティングを基材に均一かつ制御された様式で適用する。コーティング押出装置は、供給ステージ、任意の前処理ステージ、少なくとも1つのコーティング押出ステージおよび仕上げステージを含む。1つまたは複数のコーティングステージは、ポリマーフィーダおよびポリマーコーティング押出装置を含む。ポリマーコーティング押出装置は、押出されたポリマーで完全にまたは部分的にコートされることになる基材の周囲に適合するアパーチャーまたはダイを含む。基材がアパーチャーまたはダイを通過するのに従って、ポリマーコーティング物質が均一かつ一定の層に、典型的には0.001インチ〜0.250インチの範囲に、適用される。幾つかの態様において、ポリマーコーティング物質はまた、ポリマーコーティング物質を適用する際に、基材上の表面の軽微な欠陥および傷を埋めて、全領域に亘って一定の仕上げを実現する。
【0147】
ブラストプロセス
本発明の特定の態様は、基材の物理的な表面トポグラフィを変えて、表面特性の変化を可能にするためのブラストメディアプロセス(「サンドブラスト」または「ブラストプロセス」ともいう)を開示する。該方法の特定の態様は、塗料のポリマー基材に対する接着を改善する。典型的には、押出しおよび射出成形されたポリマー物品は、極めて平滑な、ざらつきのない表面を示す。表面トポグラフィの欠如は、基材および塗料の溶解パラメータが十分適合している場合であっても、塗料の見掛けの接着を低下させる。出願人は、この仮説に限定されるものではないが、ブラストプロセスが表面積、ひいては相互作用面積を増大させ、更に、塗料コーティングと機械的に噛み合うことを可能にする表面の特徴を形成すると確信する。本発明の他の態様において、ブラストプロセスを用いて、基材(例えばポリマー基材)または基材上のポリマーコーティングの得られる光沢レベルを、配合物光沢改質剤の使用なしで改質できる。サイズ、形状、物質の性質およびプロセスのパラメータ(ブラストプロセスに関連するもの)を用いて、光沢および表面の改質のレベルを調整できる。艶消し仕上げをしばしば用いて、押出しシートに対するスクラッチ耐性を得ることができ、そしてこれらのブラストプロセスは、非平坦線形物品の上に艶消し仕上げを生成する能力を可能にし、これによりスクラッチ耐性を与える。基材表面のトポロジーによってもたらされる任意の特性は、潜在的にはこの技術で制御する。プロセスは、バッチプロセスまたはインライン連続プロセスとして運転できる。
【0148】
ポリマー押出し法およびポリマー配合法とともに用いる本発明の特定の態様は、下塗りされた基材,例えばMDFトリムプロファイル、の製造を可能にし、これは、ほぼ同一の塗料接着性能とともに増大したコーティング堅牢性を有するジェッソコーティングの平滑な仕上げを有する。先に、ポリマー押出し法とともに用いるポリマーコーティング配合法は、平滑、強靭なコーティングの製造を可能にしたが、この基材に対する塗料スクラッチ接着は種々の塗料に対して、競合の提供物ほどには強固ではなかった。ポリマー表面を摩耗させるための後押出し法の追加は、基材への塗料の接着を改善する。
【0149】
出願人は、ブラスト系を、注意深く選択したブラストメディアとともに使用して、ポリマーまたはコンポジットの基材表面上に特に設計された表面トポグラフィを得ることを開示する。ブラストメディアは、形状、球状または不規則/顆粒状によって主として2つのカテゴリーに分けられる。球状形状の粒子が、ポリマー基材の表面に単にディンプル形成する一方、顆粒状形状の粒子はポリマー表面の引裂きまたは荒れ(より大きい表面相互作用および機械的な噛み合せを形成すると考えられるトポグラフィ的な特徴を形成する)の原因となったことを見出した。これらのトポグラフィ的な特徴のサイズは、ブラストメディアの粒子サイズを変更すること、更にはポリマー基材またはブラストメディアのいずれかの「硬度」を変えることにより影響される。ポリマー上のブラストメディアの出現の速さおよび角度もまた、ポリマー基材上の結果であるトポグラフィ的な特徴のサイズに影響する。本発明の特定の態様において、より不規則な顆粒状粒子は、光沢を低下させ、そして明澄なコーティングにおいて、球状ブラストメディアよりも高レベルの不透明性を生じさせた。本発明の幾つかの態様において、球状粒子は、透明性の深刻な変化/低下なしで光沢を低下させた。本発明の一態様は、空気駆動式のブラストメディア法を記載し、これを調整して、特定用途のために必要な所望の表面トポグラフィを得ることができる。
【0150】
任意の従来の空気駆動式ブラスト系を用いて、本発明の方法において用いるブラストメディアを送達できるが、ブラストメディアおよびブラスト設備の運転方法の選択は結果に影響する。メディアブラスト処理は、公知の方法によって実施できる。例えば、米国特許第6,461,792号(参照により本明細書に組入れる)に記載されるブラストプロセスを用いることができる。メディアブラストは、微粒子化された研磨剤をポリマーの表面上に高速でスプレーすることによって、表面(例えばポリマーのもの)を荒らすためのプロセスである。例えば、酸化アルミナ粒子を圧縮空気と一緒に強くスプレーでき、任意に次いで水で洗浄して乾燥させることができる。ブラスト処理によるポリマーの表面粗さの制御は、スプレーすべき粒子の粒子サイズおよび処理量(面積当たりの処理頻度)を調整することによって実施できる。粒子のより大きい粒子サイズおよび処理量は、ポリマー表面のより高い表面粗さをもたらす。
【0151】
本発明に係る特定の態様において、メディアブラスト処理は、圧縮空気でのフィルム表面上の研磨剤のスプレーによって制御される表面処理であり、そして形成される不規則性は、従って、メディアブラスト処理の条件によって調整する。
【0152】
研磨剤メディアは、メディアブラスト吹き飛ばしノズルを介して吹き飛ばしてポリマー上にスプレーする。処理条件を調整して、研磨メディアの吹き飛ばし量(ブラスト量)およびメディアブラスト吹き飛ばしノズルとポリマーとの間の角度および間隔(ブラスト角度およびブラスト距離)を制御する。ホッパ内の研磨メディアを、空気チャンバから出て送られる圧縮空気によってメディアブラスト吹き飛ばしノズルを介して吹き飛ばして、これをポリマー表面上にスプレーし、これにより、各ポリマーについて適切にされた条件下でメディアブラスト処理を行う。これらの方法の例は、例えば、第JP−A−8−34866号、第JP−A−11−90827号および第JP−A−11−254590号に記載されている。
【0153】
表面トポグラフィに影響する因子
ブラストメディア中の粒子の形状、サイズ、機械特性,例えば硬度、入射角および速度は、得られる表面トポグラフィに影響する。
【0154】
形状
エアブラストに起因するトポグラフィに影響する1つの因子は、ブラストメディア粒子の形状である。均一な形状の球状粒子は、単純に、これが接触する基材上の位置にその形状を直接転写することによって表面において変形またはディンプルを形成する。これらのディンプルのサイズは、粒子サイズを変え、そして粒子の速度を変えることによってより少ない範囲にすることにより変更できる。
【0155】
一方、不均一形状の粒子(これは、不規則または顆粒状として説明できる)は表面に対して異なる効果を有する。不均一形状、不規則および顆粒状という用語は互換的に用いる。表面にディンプル形成するよりもむしろ、端部を有するこれらの不均一粒子は、顕微鏡レベルで表面を剥ぎ取りおよび引裂くと考えられる。球状粒子または顆粒状粒子のいずれかのサイズを変えることは、表面のトポグラフィ的な特徴のサイズ(特徴の間の間隔および特徴の深さが挙げられる)に影響する。光学顕微鏡およびSEMの画像(図1a−fおよび2a−g)は、粒子サイズ(球状粒子については径、および不規則粒子についてはグリットサイズまたはメッシュサイズ)の変化とともに特徴のサイズの独特の変化を示す。また、これらの変化は主としてマイクロスケールの形態において生じるが、極端に大きいおよび小さい粒子(手触りおよび粗さ測定によって検出可能な表面の平滑性の相違をもたらす)で、観察可能な表面粗さに対する何らかの効果が存在する。
【0156】
表面にぶつかる粒子の速度を増大させることは、特徴の深さを増大させる働きをする場合がある一方、典型的には、特徴の間の距離は変化させない。全体的には、特徴の深さは、粒子の運動量(これは、質量(重量)と粒子の速度との一次関数である)に左右される。
【0157】
入射角
入射角もまた、全体の表面結果に作用する。90°入射角(基材表面に対して垂直)を用いることは、ブラスト流の力(より小さいディンプルサイズ)および粒子密度(より小さいヒットの数)の幾らかかの希釈をもたらす。表面をヒットした粒子がまっすぐ上に跳ね返り、そしてポリマー基材に向かって降りてくる他の粒子と干渉するからである。
【0158】
ブラストメディアの硬度
基材表面の表面トポグラフィに作用するブラストメディア粒子の別の特性は、ブラストメディア粒子の機械特性である。クルミ殻およびコーン穂軸のような材料に由来する、より柔らかい粒子を、ブラストメディアとして使用できるが、深さおよび効率(使用するメディアの量当たりの増大した表面粗さとして規定される)の点では、表面上で、同様のサイズのより硬い粒子(例えば酸化アルミニウム)と比べ、これほどには攻撃的ではない。幾つかのより柔らかいメディアについて、粒子は、衝撃、更に基材表面が処理されることにより変化した。
【0159】
コーティング接着
本発明のブラスト法の有用性は、表面トポグラフィの性質によって支配される基材の任意の特性に付随する。特に、本発明のこの方法を用いて表面を改質する能力は、塗料コーティングの得られる接着に対して顕著な効果を示した。配合物は全体の塗料接着にも作用するが、表面粗さはまた、得られる塗料接着,特に塗料スクラッチ接着における因子であることを見出した。
【0160】
塗料接着
特定用途において、ポリマーコーティングまたは基材に対する塗料接着は主な懸念事項である。本発明の特定の態様は、ポリマーまたはコンポジット基材表面を、ブラストメディア粒子で、表面粗さ(Ra)約50〜約370マイクロインチを生成するのに十分な時間ブラストすることを含む方法を含み、ここで該ブラストメディア粒子は、サイズ約1ミクロン〜約700ミクロンの範囲を有する。幾つかの態様において、ブラストメディア粒子の入射角は、20〜約90°または20〜85°である。特定の態様において、粒子は、不連続形状を有する。ブラストメディア粒子材料の例としては、これらに限定するものではないが、酸化アルミニウム、破砕ガラス、シリコンカーバイド、スチールグリット、クルミ殻、砂、ジェットマグ、炭酸カルシウムまたは任意の他の従来の研磨材料を挙げることができる。特定の態様において、ブラストメディア粒子サイズは、約50〜約100ミクロンの範囲である。特定の態様において、光沢は約1〜40または3〜15の範囲である。
【0161】
本発明の特定の態様において、コーティング上の塗料は、テープ剥離値少なくとも3または少なくとも4または少なくとも5を有する。本発明の特定の態様において、コーティング上の塗料は、クロスハッチ値少なくとも3または少なくとも4または少なくとも5を有する。特定の態様において、コーティング上の塗料は、組合せのクロスハッチ値およびテープ剥離値3〜10、または3〜9、または3〜8、または3〜7、または3〜6、または4〜10、または4〜9、または4〜8、または4〜7、または4〜6、または5〜10、または5〜9、または5〜8、または5〜7、または5〜6、または6〜10、または6〜9、または6〜8、または7〜10、または7〜9、または7〜8、または8〜10、または8〜9、または9〜10の範囲を有する。特定の態様において、ブラストメディア処理されたポリマー表面についてのスクラッチ接着値は、少なくとも約50%、または少なくとも約100%で、非処理ポリマー表面についてのスクラッチ接着値よりも大きい。幾つかの態様において、コーティング上の塗料は、テープ剥離値少なくとも3または少なくとも4または少なくとも5、およびブラストメディア処理されたポリマー表面についてのスクラッチ接着値は少なくとも約50%、または少なくとも約100%で、非処理ポリマー表面についてのスクラッチ接着値よりも大きい。幾つかの態様において、コーティング上の塗料は、クロスハッチ値少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5を有し、そしてブラストメディア処理されたポリマー表面についてのスクラッチ接着値は少なくとも約50%、または少なくとも約100%で、非処理ポリマー表面についてのスクラッチ接着値よりも大きい。特定の態様において、コーティング上の塗料は、組合せのクロスハッチ値およびテープ剥離値、3〜10、または3〜9、または3〜8、または3〜7、または3〜6、または4〜10、または4〜9、または4〜8、または4〜7、または4〜6、または5〜10、または5〜9、または5〜8、または5〜7、または5〜6、または6〜10、または6〜9、または6〜8、または7〜10、または7〜9、または7〜8、または8〜10、または8〜9、または9〜10の範囲を有し、そしてブラストメディア処理されたポリマー表面についてのスクラッチ接着値は少なくとも約50%、または少なくとも約100%で、非処理ポリマー表面についてのスクラッチ接着値よりも大きい。特定の態様において、ブラストメディア処理されたポリマー表面上でのスクラッチ接着試験(力の単位ニュートンで表す)は、少なくとも10または11または12または13ニュートンである。
【0162】
光沢
本発明の特定の態様において、表面トポグラフィは、基材の表面光沢に対して顕著な影響を示す。所望の光沢レベルは、コーティング上で、種々のブラストプロセス因子(例えば、粒子の形状、サイズ、速度、およびメディア材料)を用いることによって制御できる。本発明の方法は、ポリマー表面コーティングを形成する種々の用途領域(射出成形操作、シート/フィルム押出し操作、または任意の他の操作に関連する用途が挙げられる)に適用される。
【0163】
本発明の特定の態様は:ポリマーまたはコンポジットの基材表面を、規則形状(実質的または完全に、鋭い角および端部を有さないもの)を有するブラストメディア粒子で、表面粗さ約50〜約70マイクロインチの範囲を生成するのに十分な時間ブラストすることを含み、該ブラストメディア粒子がサイズ約1ミクロン〜約700ミクロンの範囲を有し、そしてブラストメディア粒子の入射角が20〜約90である、方法を含む。ブラストメディア粒子材料の例としては、これらに限定するものではないが、ガラスビーズ、セラミックショット、スチールショット、プラスチックショットまたは他の製品ビーズが挙げられる。特定の態様において、ブラストメディア粒子のサイズは、約50〜約100ミクロンの範囲である。特定の態様において、光沢は、約1〜80光沢単位(グロスユニット)である。
【0164】

塗装性の試験
クロスハッチ試験
クロスハッチ接着試験(そして、以下で議論するように、スクラッチ塗料接着試験)のために、平坦化ポリマーフィルムまたは平坦ポリマーコートMDF基材を、試験すべき塗料でコートした。塗料は、Byrdアプリケータ型装置を用いて基材上に引き落として、全試験領域に亘って1つのサンプルから次へと一定フィルム厚みを形成した。フィルム厚みは、3〜10ミリメートル(湿潤)で異なる組の試料について変動させたが、各組の中では一定であった。
【0165】
ASTM D3359−02“Standard Test Method for Measuring Adhesion by Tape Test,”(これは、“cross−hatch adhesion test,”としてよりよく知られている)は、塗料接着についての工業基準試験である。この試験において、一連のスクラッチは、剃刀でクロスハッチパターンにてスチールテンプレートを用いて形成した。テンプレートは10の平行スリット(2mm間隔)を有し、これが剃刀を案内した。10カットの1組の後、テンプレートを90°回転させ、更に10カットを最初のカットの組とは直角に形成した。刃は、塗料を完全に貫通した。パターンをカットした後、規定のテープ(Permacil 99)を用いてクロスハッチパターンを覆い、そしてコーティングに向かって気泡が残らなくなくなるまで押した。テープをパターンから、適用後90秒以内に、可能な限り180°の剥離角度に近くなるように剥離した。テープは制御された連続動作で急速に取り除いた。次いで、塗料コーティングの除去についての面積を調べ、除去された塗料の量に基づいて評定した。
【0166】
【表1】

【0167】
スクラッチ試験−剥離しない最小スクラッチ力
クロスハッチ接着試験に加え、スクラッチ試験を用いて、剪断層間剥離試験モードにおける塗料接着を測定した。試験サンプルは、クロスハッチ接着試験用のサンプルと同一様式で作製した。各サンプルを試験テーブル上に置き、そしてテーブルに固定した。Taber(登録商標)710Multi−Finger Scratch/Mar Tester(1mmチップ、および指部の力の範囲(2N−20N)(2−20Nの範囲に亘って連続していない分離した値で得られる)を有する)を用いた。較正した力のブロックで指部を試験サンプル上に下げた。次いでサンプルに亘り10インチ試験長さに亘って指部を空気圧駆動させた。サンプルを、塗料コーティングを層間剥離させるのに必要であった臨界力に基づいて評価した。実験に基づき、試験で用いた特定の塗料は、得られる臨界力に顕著に作用できることを見出した。よって、比較評定システムを幾つかの場合で用いて、試験体の性能を評価し、そして値を数値スケール(スクラッチスケール)に規格化して種々の塗料に亘って比較を性能した。異なる潜在的な配合物の評価中に行ったスクラッチ接着試験は、メディアブラストプロセスに処理されなかったポリマーコーティングについては基準化せず、適用後の試験のために18〜48時間で変動する時間、および塗料フィルム厚み3および6milを用いた。結論として、スクラッチ接着試験の結果はおおよその定性的なものに過ぎない。メディア処理済ポリマーコーティングについてのスクラッチ接着試験結果は、18時間に基準化し、そして塗料フィルム厚みは3milに基準化し、そして定量的に信頼できる。
【0168】
テープライン試験
コーティングの塗装性を評価するために用いる最終試験はテープライン試験であった。この試験は、成形およびトリムの用途におけるコーティングの使用を再現するように設計し、ここで壁はテープで「マスク」され、そしてトリムが塗装される。パネル(フィルムのみまたはフィルムで覆われた木材基材)を12〜16インチ長に切断し、そしてテープ(マスキングテープまたはブルーペインターズテープ)片を、パネルの長さと直角にパネル全部に亘って1〜2インチ毎に置いた。5ピースのテープを各パネル上に置き、5つの異なる試験間隔時間(3、6、24、30および48時間)各々に対して1つを置いた。テープはパネル上にしっかりと滑らかにし、そして標準的な塗料ブラシを用いて塗料の厚いコートで塗装した。塗料の厚みは、典型的な成形およびトリムの用途における塗料のほぼ2コートのものであった。同じ2つの分析を、全てのテープライン試験のために用いて、差異を最小化した。次いでテープを、規定の間隔時間で、ほぼ180°剥離角度および一定剥離速度を用いて除去した。残った塗料ラインを層間剥離エッジについて評価した。層間剥離を、小(<1cm)から大(>1cm)まで等級分けした。性能は、NPを剥離/層間剥離なし、SPを小さい剥離/層間剥離、およびLPを大きい剥離/層間剥離、に対して指定した。各フィルムについてのテープライン試験スコア(テープスコアともいう)は、5で開始し、1ポイントを各々の大きい層間剥離について、0.5を各々の小さい層間剥離について、減じることによって算出した。全ての時間間隔にて大きい層間剥離が観察された場合には、フィルムは0と評定し、そして、任意の時間間隔にて層間剥離が観察されなかった場合には、フィルムは5と評定した。中間の性能は、5から0の間の評定を与えた。
【0169】
上記の試験から得たスクラッチ値は、成形およびトリムの用途における使用中に受ける実際の力を表すものではなく、よって、上記試験の1つまたは全てにおける不具合は、適用における不具合を請合うものではないことに留意すべきである。値は潜在的な配合物の比較試験の方法を与えるのみである。
【0170】
基材に対するコーティングの接着についての試験
コーティング組成物の基材物質への接着は、90°剥離試験を用いてAdhesion/Release Tester AR−1000(ChemInstruments,Fairfield,Ohio製)にて、10lbロードセルで測定した。試験体は、9”×1/2”テンプレートを用いて作製して剥離サンプルを剃刀でトレースした。サンプルを、スライドする90°剥離具内に固定し、そして剥離速度毎分12インチで試験した。平均剥離力を次いで記録した。剥離力に加え、観察可能なレベルの繊維引き抜きもまた評価した。剥離試験体の背面上に残留したMDF繊維の量を用いて、存在していた接着のレベルを示した。
【0171】
粗さ試験
コーティングの粗さは、Mitutoyo Surftest SJ−201P粗さ試験機を用いて測定し、これはサンプルの表面変化の平均振れ幅を評価した。フラットパネルサンプルは、2.5mmサンプル長さを5mmサンプル長さ領域に亘って行き来する走査モードを用いて試験した。針(スチルス)を試験領域に亘ってドラッグし、これが縦方向の偏位を測定する。Surftest SJ−201Pが上昇方向および下降方向の両者における平均偏位および最大偏位を算出する。
【0172】
光沢試験
組成物の光沢は、BYK Gardner micro−TRI−gloss instrument(これはASTM D 523 およびISO 2813に適合する)を用いて測定した。試験は、ASTM Test Method D 2457に従って実施した。試験は、全て、フィルムのみのサンプルで実施した(すなわちサンプルはコートされた板ではなかった)。60°の入射角および反射角を用いた。これは光沢の目視の印象を近似的に表すからである。光沢は、検出された光の量によって表し、そして0%〜100%の光沢レベルとして報告する。
【0173】
不透明性試験
組成物の不透明性は、従来の様式で、HunterLab UltraScan XE SpectroPhotometer(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,Virginia製)を用いて測定した。装置は、HunterLab Universal Software(version 4.1)を用いて操作した。装置の較正および操作はHunterLab User Manualに従い、そして主としてUniversal Softwareで指示した。装置は、関連する基準(例えばASTM E 1164およびE 308)に適合させた。HunterLab機器は、単純に、CIE Tristimulus Y値を用い、以下の等式:不透明性(Y)=100*Y/Y(式中、黒および白は、反射読みにおいて用いるバックである)に従って不透明性を算出することによって不透明性を得る。試験は全て、フィルムのみのサンプルにおいて、D65光源を用いて10°観察角を用いて反射モードにて実施(含まれる正反射で)した。
【0174】
堅牢性試験
種々の実験において配合した組成物の堅牢性を検査するために、フィルム系引張試験を用いた。これはクラック/リガメント(ligament)長さ12.7mmでのプレクラック機構を用いた。フィルム(7−8mil)を、1”Kilion上に汎用スクリューで押出した。1インチ幅×5インチフィルムサンプルを、押出したフィルムロールから切断した。12.7mmカットを、幅方向にフィルムストリップの端部から中央に形成した。フィルムをInstron 5565内に5kNの静止ロードセルとともに3インチギャップで空気圧クランプ間に置いた。フィルムをクランプ内に固定し、そして試験体を一定速度毎分50mmで引く。負荷/変位カーブを得て、これから総エネルギー、負荷変位カーブの積分、を算出した。総エネルギーを用いて、種々の組成物の堅牢性を比較した。フィルムの堅牢性もまた破壊の様式に基づいて評価した(脆性/延性/混合)。
【0175】
フィルム試験に加えて、MDF基材上のコーティングの堅牢性の試験を実施した。コートされたMDFプロファイルは、Dewaltマイター・ソーを用いて90°および45°で切断した。コーティングのカットラインの破壊/チッピングについての試験を用いて、コーティング配合物において適切な堅牢性が実現されたか否かを評価する。
【0176】
コーティング配合物の許容可能な性能に必要なバランスに鑑み、全体のパフォーマンススコアは、クロスハッチ接着スコア(Bを除いた数を用い、すなわち5Bは5として加えた)にテープスコアを加えた合計として規定した。パフォーマンススコアがより高いと、コーティング配合物がより良好である。各々の次の組の実験のための配合物の選択においては全体のパフォーマンススコアを用いた。
【0177】
例1〜6−塗装性についてのベースレジンの評価
塗料接着性能は、以下の無充填のベースレジンで試験した:ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート)(ASA)、およびグリコール変性ポリ(エチレンテレフタレート)(PETG)。これらのポリマーを1”Kilion上に汎用スクリューで、各フィルム内で7−8milで変動するフィルム厚みで押出した。フィルムは、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて試験した。
【0178】
4つの塗料を各フィルム上で試験して広範囲の塗料曝露(種々のベースレジンおよびVOCレベル)を与えた。塗料はDevoe Wonder Speed Semigloss,Sherwin Williams Promar Semigloss,Valspar Guardian Semigloss、およびICI Alkyd Semiglossであった。始めの3つは水系ラテックス塗料であり、そして最後のものは溶媒系塗料である。白/明澄フィルムサンプルで層間剥離がより容易に観察されるようにするため、塗料は全て2オンスのEngelhard Blue(ガロン当たり)の白色塗料で色付けした。しかし、PETGサンプルは他の無充填のレジンとは異なる時間で実施した。
【0179】
表1は、各々の塗料を伴う各々のベースレジンでの塗料評価の結果を示す。表中で示される最小スクラッチ力は実際の値であるが、これらの値はまた、比較のために0−5数値スケールに規格化した。
【0180】
【表2】

【0181】
以下の例の全てにおいて用いるベースレジンは、名目31モル%のシクロヘキサンジメタノール(CHDM)ヒドロキシル成分(100モル%のヒドロキシル成分基準で)で改質されたPETレジンであった。
【0182】
例7〜27−塗装性に対する添加剤効果の評価
上記の例1〜6において用いたのと同じ4つの色付けした塗料の塗料接着性能に対する添加剤の効果を評価するために、一連のグリコール変性ポリ(エチレンテレフタレート)(PETG)サンプルを配合した。添加剤は、不透明性改質剤、光沢改質剤、衝撃改質剤、および潜在的な接着改質剤を含んでいた。試験した不透明性改質剤はTiO2のみであった。残りの添加剤は、光沢改質剤または衝撃改質剤として分類した。
【0183】
添加剤は、PETGサンプル中に20質量%(濃縮物の、40質量%でコンパウンドした希釈物基準で)で存在したが、Surlyn 8527およびExxon Mobil Exxact 4011が20質量%濃縮物としてコンパウンドされ、フィルムとして押出す際に希釈されなかったことを除く。加えて、Ester Gum 8LM添加剤を有するフィルムは、潜在的な粒状物の恐れによりコンパウンドしなかった。
【0184】
PETGサンプルは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき、各フィルム内で7−8milで変動するフィルム厚みで押出した。フィルムは、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて試験したが、テープライン試験は選択したサンプルで試験したのみである。結果を以下の表2A−2Dに示す。
【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
【表5】

【0188】
【表6】

【0189】
【表7】

【0190】
【表8】

【0191】
【表9】

【0192】
【表10】

【0193】
試験した光沢改質剤で、非処理の炭酸カルシウム含有サンプルは、塗料接着において、無充填の対照サンプルと比べて最も顕著な改善を示した。塗料接着に加え、幾つかの炭酸カルシウムフィルムは、20質量%の充填で、タルク充填フィルムと比べて著しく堅牢なフィルムをもたらした。しかし、炭酸カルシウム粒子のサイズおよび形状の効果はその相違の主な原因である場合がある。
【0194】
光沢改質剤とは異なり、衝撃改質剤の存在は、対照と比べて塗装性において著しい改善をもたらさなかった。しかし、Blendex 338、Paraloid 2314、およびLevamelt 700の組成物は塗装性の小さな低下を有した。特に、高比率のポリエチレンゴムセグメントを含有した衝撃改質剤は、塗料接着試験において悪い結果を示した。Levamelt 400(ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)40%VAc)とLevamelt 700(ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)70%VAc)との直接比較は、酢酸ビニル、極性官能基の量の増大が、改善された塗装性能をもたらすことを明らかにした。しかし、高度に極性の添加剤(ポリエチレングリコールおよびポリウレタンのような)は、悪い塗料性能を示し、そしてセルロースエステル添加剤は塗料接着性能の最小限の改善を示したのみであった。
【0195】
例28〜50−実験の設計−炭酸カルシウムのサイズ、炭酸カルシウムレベル、衝撃改質剤、および衝撃改質剤レベルの効果
先の例において上記で用いた同じ4つの色付けした塗料の塗料接着性能に対する、光沢改質剤のサイズおよび濃度の効果ならびに衝撃改質剤の性質および濃度の効果を評価するために、光沢改質剤としての炭酸カルシウム、および3つの極性の潜在的な衝撃改質剤の1つを含有する一連のグリコール変性ポリ(エチレンテレフタレート)(PETG)サンプルを配合した。
【0196】
炭酸カルシウムのサイズは、3ミクロン(「小」)または20ミクロン(「大」)のいずれかであり、一方、炭酸カルシウムの濃度は、20質量%または30質量%のいずれかであった。
【0197】
3つの極性の潜在的な衝撃改質剤は、Pebax 5533(セグメント化ポリ(エーテル−コ−アミド))、Hytrel 5526(セグメント化ポリ(エーテル−コ−ウレタン))、Ecdel 9965(セグメント化ポリ(エーテル−コ−エステル))であった。これらの各々は、先の実験において試験したポリエチレンまたはポリアクリレートのゴム状セグメントではなく、ポリエーテルゴムセグメントを含んでいた。衝撃改質剤の濃度は、総組成物の5質量%または10質量%のいずれかであった。
【0198】
ポリマーは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき、各フィルム内で7−8milで変動するフィルム厚みで押出した。フィルムは、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて試験した。各フィルムで2つの塗料を試験し、そしてこれらの塗料はValspar Guardian SemiglossおよびBehr Premium Plus Semigloss Enamelであった。白色フィルムサンプルで層間剥離がより容易に観察されるようにするため、塗料は2オンスのEngelhard Blue(ガロン当たり)の白色塗料で色付けした。
【0199】
各々の塗料試験手順の試験における性能を試験した。表3は、実施の組合せ(これらが押出しおよびコートされた順序で)を列挙する。異なるエラストマーの種類の各々を、濃度効果、更に炭酸カルシウムのサイズおよび濃度との相乗効果について独立に評価した。クロスハッチ接着試験結果は用いなかった。全てのサンプルが0の同じスコアを生じた(すなわち全サンプルが>65%の面積の塗料除去を有した)ために結果の鋭敏性が不足したことによる。
【0200】
【表11】

【0201】
【表12】

【0202】
Ecdel 9965の濃度は、テープ試験またはスクラッチ試験に対して統計的に顕著な効果を有さなかった。しかし、結果は、より大きい粒子サイズを有するより低濃度の炭酸カルシウムは、Ecdel 9965を衝撃改質剤として用いる際に塗料接着を改善することを示唆した。
【0203】
Hytrel 5526の存在は、テープ試験およびスクラッチ試験の両者についての接着性能に対して不利であった。しかし、Ecdel 9965に反して、より小さい炭酸カルシウム粒子サイズは、改善された接着性能をもたらした。このシリーズについての炭酸カルシウムの濃度を変動させることは、混合された性能:炭酸カルシウムの濃度が増大した場合にスクラッチ性能が改善され、しかしテープスコアは低下したこと、をもたらした。
【0204】
Pebax 5533について、より低い濃度は改善された接着性能をもたらした。スクラッチ性能は炭酸カルシウムの濃度または粒子サイズによっては影響されなかったが、テープ性能は、より大きい粒子サイズおよびより低い全体の濃度とともに改善された。表4は、因子と応答との間の関係を列挙する。
【0205】
【表13】

【0206】
炭酸カルシウムの粒子サイズおよび濃度の効果を用いて、Ecdel 9965を潜在的な衝撃改質剤として用いた更なる実験を導いたが、衝撃改質剤としてのEcdel 9965の効率はなお不明であり、そして更なる実験が必要であった。
【0207】
例51〜53−ABSを有する組成物の初期評価
タルク、二酸化チタン、およびEMAC(ポリエチレン−コ−メチルアクリレート)をLotader 8900とともに含むPETGのフィルムを作製した。2つの実験フィルムは、タルクに代えて炭酸カルシウムを光沢改質剤として、そしてEMACに代えてABSを衝撃改質剤として用い、一方、全てのフィルムは二酸化チタンを不透明性改質剤として用いた。加えて、最後の実験フィルムは、少量のセルロースエステルを用い、これは、20質量%で単独使用した場合に幾らかかの塗料接着改善を先に示した。フィルムは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき、各フィルム内で7−8milで変動するフィルム厚みで押出した。
【0208】
フィルムは、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて、先の例において用いたのと同じ4つの色付けした塗料を用いて試験した。塗料試験手順における組成物およびその性能を表5で詳細にする。
【0209】
【表14】

【0210】
クロスハッチ接着試験の結果は、試験した3つの塗料についての配合物の間で顕著な相違を示さなかった。一方、スクラッチスコアおよびテープライン試験の性能は顕著な相違を示し、ABSおよび炭酸カルシウムを含有する実験サンプルは著しく改善された性能を、特にテープライン試験において示す。セルロースエステル物質を含むコーティングの性能における改善は顕著ではなかった。Lotader 8900を含むことは、潜在的に、非極性、ポリエチレン系衝撃改質剤の結果を低下させた。これは反応性であり、非反応性改質剤と同じ運動性は有さないからである。その運動性の欠如は、タルク、二酸化チタン、およびEMAC/Lotader 8900フィルムによる許容可能な接着性能の要因の1つとなる場合がある。
【0211】
例54〜61−炭酸カルシウム、ABSおよびLotader 8900/EMACを含有する配合された組成物の評価
Lotader 8900および/またはEMAC(最も有効な衝撃改質剤)を含む幾つかの組成物を配合した。フィルムは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき、各フィルム内で7−8milで変動するフィルム厚みで押出した。フィルムは、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて試験した。先の例において用いた同じ4つの塗料を試験した。塗料試験手順における組成物およびその性能を表6において詳細にする。スクラッチ試験についての値は、臨界層間剥離力の絶対値ではなく、規格化された比較値を反映する。
【0212】
【表15】

【0213】
【表16】

【0214】
【表17】

【0215】
【表18】

【0216】
【表19】

【0217】
組成物は、試験されていた炭酸カルシウムの粒子サイズ間の直接比較を可能にした。全ての場合において、平均径12ミクロンを有していた粒子は、平均径20ミクロンを有するものと比べて優れた結果を与えた。加えて、ABSを含んでいたサンプルは、ABSを有さないサンプルと比べてより悪い性能であった。これはおそらく、全体の衝撃改質剤含有量がより高いことによる。更に、Lotader 8900/EMAC (25/75)の濃度を増大させることは、塗料接着性能を低下させた。その結果は、いずれの衝撃改質剤も実際に塗料接着を改善しなかったことを示唆した、初期添加剤のスクリーニング試験と一致する。
【0218】
結果に基づき、PETGレジン、炭酸カルシウム、および二酸化チタンを含む組成物は、塗装性の観点からの潜在性を有すると考えられるが、無機フィラーの存在は、加工(留め継ぎ、ルート、釘固定等)可能なコーティングを製造するために衝撃改質剤を必要とする。
【0219】
表6に示す全てのフィルムは、フィルム堅牢性について引張試験を用いた脆性または混合した様式の破壊を示し、そして上記の破壊の様式を記す。これは成形およびトリムの用途のために加工できる配合物を実現するために更なる衝撃改質が必要であったことを示唆した。
【0220】
例62〜67−コートされたMDF基材物質の塗料接着性能および堅牢性−セット1
6つの組成物を試験して、フィルムサンプル試験による結果がコートされた板のサンプルを用いた結果と相関するか否かを評価した。6つの組成物のうち3つは、ベースレジンがPETであって名目31モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性されている実験配合物であった。6763と記すサンプルは、名目インヘレント粘度0.75dL/gを有し、5011と記すサンプルは、名目インヘレント粘度0.59dL/gを有していた。加えて、タルク、EMACおよび二酸化チタンを含有する配合物(接着試験においてフィルムとして悪い結果であったもの)で予めコートされたサンプルを試験した。最後に、ジェッソおよびPVCを比較用の対照として用いた。
【0221】
組成物は、押出しコーティングライン上で35ft/分にて送り、押出機溶融物温度は500°F、そしてダイ温度は530°Fであった。
【0222】
5つの塗料を各フィルムについて試験した。これらの塗料はSherwin Williams,Promar Semigloss,Devoe Wonder Speed Semigloss,Valspar Guardian Semigloss,ICI Alkyd Semigloss,およびBehr Premium Plus Semigloss Enamelを含んでいた。白色フィルムサンプルで層間剥離がより容易に観察されるようにするため、塗料は2オンスのEngelhard Blue(ガロン当たり)の白色塗料で色付けした。コートした木材基材を、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて評価した。
【0223】
表7は塗料試験の結果を列挙する。異なる物質の比較の性能を評価するため、クロスハッチスケールと同様にスクラッチスコアを0〜5の評定に規格化した。
【0224】
【表20】

【0225】
【表21】

【0226】
クロスハッチ接着試験においては、用いた塗料に関わらず、実験組成物はジェッソよりも良好な性能を示し、そしてPVCよりも良好またはこれと同等の性能を示した。加えて、実験組成物は、タルク、Lotader 8900および二酸化チタンを含む組成物よりも顕著に性能が優れていた。
【0227】
スクラッチ試験において、用いた塗料に関わらず、ジェッソは実験組成物と比べて若干良好な性能を示したが、実験組成物はPVCおよびタルク含有組成物よりも良好な性能を示した(1つの塗料、Devoe Wonder Speed Semigloss塗料を除く)。
【0228】
テープ剥離試験において、実験組成物は何らの不具合も示さなかった一方、他の組成物は、試験した塗料の少なくとも1つで幾らかかの程度の不具合を示した。小さい量の塗料接着改善は、セルロースエステル添加剤を含むもので見られた。
【0229】
5011ベースレジンを基にする配合物(低Ih.V.PETG)は、Mitutoyo Surftest機器を用いて試験したときを基にして、より若干粗い表面を示した。
【0230】
マイター・ソー試験を用いた加工検討は、実験組成物についてのカットラインを特徴付けるクラッキングおよびフレーキングを伴う幾らかかの脆性の存在を示した。
【0231】
例68〜75−コートされたMDF基材物質の接着性能および堅牢性−セット2
8つの組成物をコンパウンドし、そのうち6つが実験組成物であった。ジェッソ対照および減圧コートされた対照を比較用に用いた。
【0232】
6つの実験組成物をコーティングライン上に35ft/分で送った。押出機溶融物温度は480°Fおよびダイ温度は500°Fであった。2つの塗料を各フィルム上で試験し、そしてこれらの塗料はValspar Color Style SemiglossおよびBehr Premium Plus Semigloss Enamelを含んでいた。白色フィルムサンプルで層間剥離がより容易に観察されるようにするため、塗料は2オンスのEngelhard Blue(ガロン当たり)の白色塗料で色付けした。コートした木材基材を、上記で詳細にした塗料接着手順を用いて評価した。表8は結果を列挙する。
【0233】
【表22】

【0234】
Lotader 8900の存在が、他の衝撃改質剤なしで塗料接着性能を低下させることが観察され、そしてLotader 8900を含有するサンプルはいずれの試験においても許容可能な性能を示さなかった。炭酸カルシウムの粒子サイズの増大が、少なくとも若干性能を改善することが観察された。
【0235】
ジェッソおよび減圧コートされた対照組成物は、最良の性能の実験組成物のものと同様の塗料性能を示した。クロスハッチ接着スコアは、実験組成物についてより高かった一方、スクラッチスコアがジェッソおよび減圧コートされたサンプルについてより高かった。テープライン試験のスコアは、最良の性能の実験組成物と2つの対照組成物との間で同等であった。
【0236】
塗料接着試験に加え、実験配合物はDewaltマイター・ソーで切断して堅牢性を評価した。ジェッソは極めて小さいチッピングを示し、一方減圧コートされたサンプルは何らの脆性の兆候も示さなかった。全ての実験組成物は幾らかかの観察可能なレベルのチッピングを示したが、20%CaCO3(12ミクロン)、10% GP−22(ABS)、2.5% Lotader 8900、および5% TiO2を含有する組成物、ならびに20%CaCO3(12ミクロン)、10% GP−22(ABS)、5% Lotader 8900、および5% TiO2を含有する組成物は例外であり、チッピングを殆ど(あるとしても)示さなかった。
【0237】
表面粗さもまた評価した。一般的に、炭酸カルシウムの粒子サイズを変化させることによる独特の効果は見出されなかった。しかし、Lotader 8900の存在および共衝撃改質剤の不存在は表面粗さを増大させた。
【0238】
例76〜105−MDF基材に対するコーティングの接着
実験を実施して、基材に対するコーティングの接着を、コーティングラインの速度(50,100,120,または150ft/分)、ダイに入ってくる板の温度(55,74,90,120,または150°F)およびコンパウンドした材料溶融物の温度(460,480,500,または520°F)に基づいて試験した。試験組成物は、Eastman PET G.6763レジン(PETGであって、Ih.V.=0.75dL/gを有するもの)、30%炭酸カルシウム(3ミクロン)、10%Ecdel、および5%TiO2を含んでいた。この組成物のレオロジーは先の例において試験した実験組成物と同様であった。
【0239】
表9は、種々のプロセス条件、更に剥離力データを示す。各組の条件について、2つの板を試験し、そして3つの点を各々の板について試験した。報告した剥離力はこれらの6測定の平均であった。1S,1M、1Eは、板1の開始、中間、終了であり;2S,2M、2Eは、板2の開始、中間、終了である。
【0240】
【表23】

【0241】
結果は、調べた変数のいずれに基づいたデータにおいても明らかな傾向は示さなかった。90°剥離力は、全サンプルについて同様であり、そして独特の傾向は示さなかった。加えて、剥離試験後のコーティングのバックの試験は同様の量のMDF「引き抜き」(これは接着のレベルの指標である)を明らかにした。90°剥離力データにおける相違の幾らかかは、コーティング厚み(これは得られる剥離値に作用することになる)の変動の寄与である可能性がある。
【0242】
プロファイルをダイ中で消費する際に、コンパウンドされたポリマー溶融物のMDF基材の表面への十分な流動を与えるために幾らかかのレベルの熱が最小限に必要であることが予測される。この検討の結果に基づき、55°Fの板を高ラインスピードで用いる条件は、より低い(480°F)溶融物温度を用いる場合の適切な接着のためのこれらの最低限の条件に近づく場合がある。配合物のレオロジーは、最低限の条件の近傍で操作する場合、MDF基材に対する接着の能力において重要な役割を演じることに留意すべきである。
【0243】
例106〜114−得られる配合物の光沢の制御
現在入手可能なジェッソおよび減圧コーティングの両者は非光沢表面を有し、両者についての光沢数は0〜100の評定で約2.5である。PETGおよび1種の光沢改質剤(タルクまたはCaCO3)のみを含有するフィルムは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき、7−8mil厚で押出した。フィルムは、光沢について60°観察角で試験した。結果を表10に示す。
【0244】
【表24】

【0245】
タルクについて、濃度10、20または30質量%は光沢レベル35〜52を示し、幾らかかの散乱を伴った。散乱は、フィルムの半透明性に起因する場合があり、これは光沢測定に影響する可能性がある。一方、炭酸カルシウムの含有は光沢レベルのより漸進的な低下をもたらした。そして、タルクとの比較で、より低い光沢値を炭酸カルシウムを用いて得ることができた。
【0246】
光沢改質における検討の別の因子は、光沢改質粒子の粒子サイズである。サイズの増大は光沢レベルの顕著な低下を招来するが、約10%の光沢レベルという限定的な効果を示したと考えられる。
【0247】
光沢改質剤は、組成物の脆性を招来する可能性がある。延性−脆性遷移カーブは、種々の濃度のタルク(7μm)を含む組成物および種々の濃度の炭酸カルシウム(3または12μm)を含む2種の組成物について得た。全ての遷移は、12〜17質量%の光沢改質剤において生じたが、固有の変曲点は、データ中の散乱に起因して特定が困難であった。これらの濃度の近傍またはそれより上の光沢改質剤を有する組成物は、堅牢な組成物を形成するために衝撃改質を必要とすることになる。
【0248】
例115〜120−得られる配合物の不透明性の制御
プライマーコートの主な機能の1つは、下地表面色をカバーすることである。従って、不透明性を評価して、目的のフィルム厚み(6−7mil)で組成物が十分に不透明であるか否かを評価した。TiO2は、その高い効果により不透明性改質剤として広く用いられている。PETGをベースレジンとして含む一連の7milフィルムは、1”Kilion上に、汎用スクリューで、濃縮物ブレンドに基づき押出した。表11は得られる不透明性を列挙する。
【0249】
【表25】

【0250】
不透明性は鋭く増大し、そして3質量%超でレベルオフし始めた。光沢改質剤および任意の他の非親和性添加剤は組成物の不透明性に寄与するが、効果は二酸化チタンと比べて最小限である。例えば、30質量%のタルクの存在に起因する不透明性は、11.82に過ぎず、そして30質量%のLotader 8900の存在に起因する不透明性は48であった。これらの値の両者は、1質量%未満の二酸化チタンを用いるよりも優れていた。小粒子サイズ(0.3μm)を有する低濃度の二酸化チタンを用いた組成物の堅牢性に対する効果はない。
【0251】
種々の配合物の塗料性能および堅牢性は、最も有用な配合物の設計において用いたパラメータであった。一般的に、押出したフィルムの性能は、僅かの例外を除き、MDF基材上にコートされた同一配合物の性能を予測するのに用いることができた。MDF基材上のコーティングの性能における幾らかかの改善は、マイクロスケールの粗さ(フィルム押出しにおいては存在しない)の存在に寄与できた。例は、改善された塗料接着が極性添加剤のレベルの増大に起因するという仮説の考え方を確認した;しかし、これに対する、ポリエステル系ゴム衝撃改質剤の包含として存在する幾つかの限定は、塗料接着性能において特筆すべき改善を示さなかった。また、堅牢性の周辺の試験に基づき、幾らかかのレベルのポリエチレン系またはポリブタジエン系の衝撃改質剤が、所望レベルの堅牢性を実現するのに必要でないことが明らかとなった。基材に対するコーティングの接着は、試験した加工条件の範囲に亘る最小限の問題であることが評価された。加えて、不透明性および光沢は所望レベルになることができたが、光沢レベルも堅牢性に影響することが評価された。
【0252】
サンドブラスト例
例121〜132:塗料接着性能に対するブラストメディアの性質の効果
種々のサイズのガラスビーズ、酸化アルミニウム、破砕ガラスおよびクルミ殻を用いて、押出しコートされたMDF基材の表面を処理した。基材は、65%PETG6763、20%♯10白色炭酸カルシウム、10%Kane Ace B564衝撃改質剤、および5%Tipure W−41二酸化チタンからなるポリマー配合物でコートした。これらのサンプルを標準ブラストキャビネット内で、吸引ブラストシステム(1セットの速度対圧力のブラスト(調整可能な粒子速度を有する)を有する吸引ブラストを用いた)でブラストした。これらのサンプルを45°および90°でブラストして入射角の効果を評価した。均一な表面外観を得るのに十分な曝露によって表面を処理した。
【0253】
始めに、これらのサンプルを光学顕微鏡および表面粗さ試験機で試験した。表12は、試験した各サンプルの粗さを列挙する。酸化アルミニウム、破砕ガラスおよびクルミ殻のサンプルは、不規則形状のブラストメディアの攻撃性に対応する最も大きい表面粗さ値を示した。一方、ガラスビーズは比較的低い表面粗さ値(55〜63)を示し、これは表面処理なしの対照サンプルの値(約60)と近接していた。幾らかかの効果もまた、サンプルの処理に用いた入射角において観察され、一方90°角はより低い粗さ値を与えた。これは反射したブラスト粒子が、基材表面に向かっている新たな粒子と干渉するという仮説と一致する。均一に見える表面を形成するために複数の通路を必要とするサンプルは、小さくなった入射角効果を示した。これはおそらく、より多くの処理時間は、90°サンプルが最終的には45°サンプルと同じトポロジーを実現することを可能にする(干渉に起因し、表面をヒットする同じ数の粒子を得るためにはより多くの時間となるが)からである。
【0254】
表面の光学顕微鏡写真(図1a〜1f)(155×倍)により、ガラスビーズ処理サンプルの粗さ測定が、ディンプル形成された表面のみを示し、そして不規則粒子処理サンプルが顕著な引裂き(すなわち不規則表面)を示したことが確認された。走査型電子顕微鏡(図1a〜1f)もまた、処理後の表面の性質において同様の傾向を示した。
【0255】
2つの塗料の塗料接着はまた、これらの処理サンプルおよび対照サンプルで試験した。性能は、攻撃的なブラストメディアによって高度に質感を持たせた表面または不規則表面が、ガラスビーズ(Grand Northern,188μmサイズで提供)でブラストされたサンプルのより少なく質感を持たせた表面と比べて良好なスクラッチ接着性能を示すという仮説に合致する。酸化アルミニウム、破砕ガラスおよびクルミ殻を有するサンプルは、全て顕著なスクラッチ改善を示した。すなわち、対照によって示される力の少なくとも2倍であった。一方、ガラスビーズ処理サンプルについて、測定可能な改善は観察されなかった。
【0256】
この効果を検証するため、酸化アルミニウムおよび破砕ガラス(Northern 155μm)の処理サンプルは、USおよびカナダからの、そして異なる光沢仕上げを有する、高いおよび低いVOCを有するものを含むより広く多様な塗料で処理した。表13は広範な塗料試験による結果を示す。幾つかの塗料は最小限の改善(<50%)を示したのみであったが、大部分は非処理対照サンプルに対して顕著な改善(>50%または>100%)を示した。加えて、処理前の層間剥離面積はスクラッチチップの面積よりも常に大きく、そして処理後に層間剥離面積はスクラッチチップのサイズのみに制限されたという点で、不具合の機構もまた表面処理で変化したことにも留意すべきである。
【0257】
例132−145:表面粗さおよび塗料接着性能に対するブラストメディアサイズの効果
得られる表面性能に対する粒子サイズの効果は重要であった。表面粗さは最終的には大きくなり、これは、処理された基材表面の外見および感触を損なうからである。酸化アルミニウムは、種々のサイズで入手可能であり、そしてこの効果を試験するのに用いた。酸化アルミニウムのサイズの範囲は254ミクロンから34ミクロンまでであり、そして2つの表面を処理するために用いた。一方の表面は、65%PETG 6763、20%#10白色炭酸カルシウム、10%Kane Ace B564衝撃改質剤、および5%Tipure W−41二酸化チタン(X−095ラベル)からなり、ならびに他方は95%PETG 6763および5%Tipure W−41二酸化チタン(PETGラベル)であった。これらの表面を試験して、組成物の効果がなお重要であるか、または表面粗さの存在が塗料接着に対して単独で影響する因子であるか、を評価した。Kilz Casual Colors Semi−Gloss、Olympic Premium SatinおよびGenesis Semi−Glossの白色物を塗料として用いて粒子サイズおよび組成の効果を試験した。表14は、塗料試験および表面粗さについての結果を示す。予測したように、粒子サイズの増大はより大きい表面粗さをもたらし、両種の表面組成について同一のメディア粒子サイズで同様の粗さ値が見られた。図2a−2gは、ブラストメディアおよび得られる処理済表面の顕微鏡画像を示す。粒子サイズによる塗料接着効果は極めて最小限であり、幾つかのランダムな異常値がより高いスクラッチ値を示したが、明らかな傾向は観察されなかった。一般的に、試験された粒子サイズの範囲に亘って、得られる塗料接着に対する効果は殆どから全く存在しない。これに基づき、最小サイズとされた粒子は、表面の魅力(平滑性)および塗料接着の最適な組合せを得るために好ましい。一方、スクラッチ塗料接着は、X−095組成物において、PETG組成物と比べて一般的な改善を示した。この結果は、X−095組成物における添加剤,具体的には炭酸カルシウム(それは潜在的にメディアブラスト処理で露出する)の包含に起因すると仮説される。SEMを用いて、処理された基材の表面の性質を試験した。SEMにおける電子線の強度を変動させて、無機鉱物粒子が見え始めるのに必要な浸透深さを評価した。処理していないサンプルの分析は、低電圧では、無機粒子は電子線と相互作用しなかった;しかし電圧を増大させることは相互作用のレベルの増大を示した、ことを示した。分析に基づき、約12μm厚のコポリエステルコーティングが無機添加剤を被覆していたことが評価された。一方、酸化アルミニウムで処理したサンプルの分析は、電圧は無機粒子の観察を左右しないことを示し、これはポリマー層がブラスト処理によって除去されたことを示唆する。無機添加剤の露出は、X−095とPETG(TiO2を有する)との間のスクラッチ塗料接着における性能の差をなすことが予測される。更に、X−095サンプルをガラスビーズで処理し、そして続いてSEMで分析した。電子線電圧の依存性が再び観察され、これはガラスビーズでの処理後に無機物がなおポリマー層で覆われていることを示唆する。この観察は、球状形状のガラスビーズは顆粒状酸化アルミニウム粒子よりも攻撃的でないという先の主張を確認した。
【0258】
例146−151:表面光沢に対するメディア種の効果
塗料接着に加え、このプロセスを用いて基材表面の光沢を制御できる。表面の反射した光の乱れは光沢を制御し、そして引裂きおよびディンプル形成の両者はその反射のレベルに作用する。引裂きは光のより大きい散乱をもたらす一方、ディンプル形成は光沢をなお低下させるが同じ範囲にではない。表14は、得られる表面光沢に対する種々のメディア処理の効果を列挙する。対照と比較し、顕著な変化が全てのサンプルにおいて見られるが、球状のガラスビーズ処理は、より少ない光沢低下を誘導した。対照サンプルは比較的低い光沢レベルを有し、これは、表面および散乱光を乱れさせる炭酸カルシウムを含むことに起因することに留意されたい。無充填のポリマー系は、より高度な初期光沢を示すが、本明細書で報告する光沢レベルまでの低減がなお可能である。無充填系の半透明性は、メディアの種類および処理のレベル(粒子速度、通路の数等)に応じて光沢に同様の様式で作用することになる。
【0259】
例152−158:得られる光沢に対する粒子サイズの効果
得られる光沢に対する粒子サイズの効果もまた調べ、そして得られる光沢に対する効果は殆ど存在しないことが観察された。粒子サイズ34〜254μmの範囲を試験し、そして光沢レベルは実際には各サンプルについて具体的なブラストメディアの中で同一である。酸化アルミニウムのサイズを変化させることは、得られる表面光沢に作用しなかった。更に、ガラスビーズ粒子サイズを変化させることは、得られる表面光沢に作用しなかった。これらの結果を表15に列挙する。
【0260】
【表26】

【0261】
【表27】

【0262】
【表28】

【0263】
【表29】

【0264】
【表30】

【0265】
【表31】

【0266】
【表32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステルを含む熱可塑性レジンコーティングで少なくとも部分的に覆われた木材または木材コンポジット基材;
(b)該ポリエステルが、溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有する、熱可塑性レジンコーティング;ならびに
(c)レジンコーティングの少なくとも一部を覆って塗料コーティングを形成する水系塗料;
を含み、
該レジンコーティングが押出コーティングであり;
該熱可塑性レジンが、Tg約70℃超および約150℃未満を有し;そして
該塗料コーティングがパフォーマンススコア6〜10を有する、物品。
【請求項2】
熱可塑性レジンコーティングが、Tg約70℃〜約150℃のポリエステルを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
Tgが約70℃〜130℃である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
Tgが約75℃〜約115℃である、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
熱可塑性コーティング上の塗料コーティングのパフォーマンススコアが、クロスハッチ値少なくとも3を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
熱可塑性コーティング上の塗料コーティングのパフォーマンススコアが、テープ剥離値少なくとも3を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
ポリエステルレジンコーティングが、メディアブラストによって研磨されている、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
ポリエステルコーティングが、
(a)組成物の総質量基準で約40質量%〜約99質量%のポリエステル;
(b)組成物の総質量基準で約0質量%〜約15質量%の不透明性改質剤;
(c)組成物の総質量基準で約0質量%〜約50質量%の衝撃改質剤;
(d)組成物の総質量基準で約0質量%〜約40質量%の光沢改質剤;
をさらに含み、
不透明性改質剤、衝撃改質剤または光沢改質剤の少なくとも1種が少なくとも1質量%である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
不透明性改質剤が、有機染料、無機染料、金属酸化物または金属塩の1種以上を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
不透明性改質剤が、酸化亜鉛、二酸化チタン、マイカ、白鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモンまたは硫酸バリウムの1種以上を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
衝撃改質剤が、(i)ポリマーの総質量基準で20〜99質量%の非晶セグメントおよび(ii)ゴム状セグメントよりも高極性の少なくとも1種のセグメントを含むポリマーを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
衝撃改質剤が、ABSレジンまたはMBSレジンを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
光沢改質剤が、高分子フィラーまたは無機フィラーの1種以上を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項14】
光沢改質剤が、タルク、シリカ、カオリンクレー、アルミナ、炭酸カルシウム、BMATまたはKM−377の1種以上を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
ポリエステルが、
(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも80モル%の酸残基、
(b)エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールによる少なくとも80モル%のグリコール残基、
を含み、
酸残基が100モル%酸残基基準であり、そしてグリコール残基が100モル%グリコール残基基準である、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
ポリエステルが、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分;
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜70モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;および
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含み、
該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
ポリエステルが、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基、
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分、
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜81モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含み、
該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
ポリエステルを含む熱可塑性レジンコーティングで少なくとも部分的に覆われた木材または木材コンポジット基材を含む物品の製造方法であって;
(a)ポリエステルが溶解パラメータ約9.4〜約14.0(cal/cm30.5を有するものであるポリエステルコーティングを、木材または木材基材の上に押出すこと;および
(b)ポリエステルコーティングの少なくとも一部を覆う水系塗料を適用して塗料コーティングを形成すること;
を含み、
熱可塑性レジンがTg約70℃超および約150℃未満を有し;そして
ポリエステルコーティング上の塗料コーティングがパフォーマンススコア6〜10を有する、方法。
【請求項19】
塗料コーティングを適用する前に、ポリエステルコーティングをブラストメディアによって研磨して、研磨されたポリエステルレジン表面を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
研磨されたポリエステルレジン表面が、表面粗さ10〜370マイクロインチを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ブラストメディアが顆粒状である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ブラストメディアが、酸化アルミニウム、破砕ガラス、シリコンカーバイド、スチールグリット、クルミ殻、砂、ジェットマグ、および炭酸カルシウムの群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、クロスハッチ値少なくとも3を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、テープ剥離値少なくとも3を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
研磨されたポリエステルレジン表面の上の塗料のパフォーマンススコアが、非処理表面の上のスクラッチ接着値よりも少なくとも50%高いスクラッチ接着値を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
ポリエステルが、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基;
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分;
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜70モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含み、
該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
ポリエステルが、
(i)(a)テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、およびその混合物による少なくとも70モル%の酸残基、
(b)芳香族ジカルボン酸による0〜30モル%の酸残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸による0〜10モル%の酸残基;
を含む酸成分、
(ii)(a)シクロヘキサンジメタノールによる20〜81モル%のグリコール残基;
(b)エチレングリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;ならびに
(c)20個以下の炭素原子を有するグリコールによる0〜80モル%のグリコール残基;
を含むグリコール成分;
を含み、
該酸残基が100モル%の酸残基基準であり、そして該グリコール残基が100モル%のグリコール残基基準である、請求項18に記載の物品。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【公表番号】特表2011−528292(P2011−528292A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518728(P2011−518728)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/004107
【国際公開番号】WO2010/008559
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】