説明

含フッ素重合体からなる汚れ脱離剤

【課題】洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与する汚れ脱離剤を提供する。
【解決手段】(A) 式: CH2=C(−X)−COO−(Y)l−Z−MfmMrn−H (I)
[式中、Xは、水素原子またはメチル基であり;
Yは、−CH2CH(OH)CH2−または−R1−NHCO−であり;
Zは、−L1−L2−S−であり(但し、L1は直接結合または−O−または−COO−または−NH−であり、L2はアルキレン基またはアリール基であり、Sはイオウ原子を表す。);
MfmMrnは、フッ素含有モノマー(Mf)から誘導されるm個の単位とフッ素非含有モノマー(Mr)から誘導されるn個の単位からなるフロロケミカルオリゴマーである。]
で示される含フッ素マクロモノマーから誘導される繰り返し単位、及び
(B) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位
を必須成分とする含フッ素共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品などに優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与し、かつ洗濯耐久性に優れた含フッ素共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維織物等に撥水撥油性を付与し、かつ繊維に付着した汚れを洗濯などにより除去しやすくする防汚加工剤として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、フッ素含有化合物ともいう)と親水性基含有化合物との共重合体が知られている(特開昭53−134786号公報、特開昭59−204980号公報、特開昭62−7782号公報参照)。
【0003】
しかしながら、これらの含フッ素共重合体で処理された繊維織物等は必ずしも、洗濯耐久性において満足と言えるものではなく、また、しつこい汚れ(例えば、使用済みエンジンオイル等の廃油)に対しては十分かつ満足できる汚れ脱離性を付与できない傾向にある。
十分な汚れ脱離性を得るには、撥油性とflip-flop性が重要とされ、空気中ではパーフルオロアルキル基(以下、Rf基と略す)が表面に配向し、高い撥油性を示しながら、水中ではこれとは逆に、Rf基が後退し、親水性基が表面に配向して、汚れが落ちやすくなるとされている。Flip-flop性とは、空気中と水中で環境に応じて表面分子構造が変化する性質であり、Shermanらによって提唱されている。[P.Sherman, S.Smith, B,Johannessen, Textile Research Journal,39,499(1969)]
Rf基は鎖長が短いとRfの結晶性の低下とともに撥油性も低下する傾向にあり、油汚れで被処理物品が汚染しやすくなる。このため、Rf基の炭素数は実質的に8以上のものが使用されてきた。(特開昭53−134786号公報、特開2000−290640号公報参照)
【0004】
さらに、最近になってテロメリゼーションによって得られる炭素数8のRf基を含有する化合物については、
Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-2303-8])(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf) や
EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)が、テロマーが分解または代謝により perfluorooctanoic acid(以下、「PFOA」と略す)を生成する可能性があると公表している。
EPA(米国環境保護庁)は、PFOAに対して科学的調査を強化することを発表している。(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf) 参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−134786号公報、
【特許文献2】特開昭59−204980号公報、
【特許文献3】特開昭62−7782号公報
【特許文献4】特開昭53−134786号公報、
【特許文献5】特開2000−290640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維織物等に対して、洗濯耐久性を維持しながら、優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与する汚れ脱離剤を提供すること、更にはRf基の炭素数が8未満と従来に比較して短くても、同様に優れた汚れ脱離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A) 一般式:
CH2=C(−X)−COO−(Y)l−Z−MfmMrn−H (I)
[式中、Xは、水素原子またはメチル基であり;
Yは、−CH2CH(OH)CH2−または−R1−NHCO−であり
(但し、lは0または1であり、R1は−(CH2CH2O)a(CH2)b−であり、aは0〜20、bは1〜20である);
Zは、−L1−L2−S−であり
(但し、L1は直接結合または−O−または−COO−または−NH−であり、L2は炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアリール基であり、Sはイオウ原子を表す。);
MfmMrnは、フッ素含有モノマー(Mf)から誘導されるm個の単位とフッ素非含有モノマー(Mr)から誘導されるn個の単位からなるフロロケミカルオリゴマーである
(mは2〜50、nは0〜20である。)。]
で示される含フッ素マクロモノマーから誘導される繰り返し単位、及び
(B) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位
を必須成分として含有する含フッ素共重合体を提供する。
本発明の共重合体は汚れ脱離剤の活性成分として機能する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維製品などに優れた撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与し、かつ洗濯耐久性に優れた汚れ脱離剤である含フッ素共重合体が得られる。
また、含フッ素共重合体中のパーフルオロアルキル基の炭素数が8未満であっても、同様に優れた上記の汚れ脱離剤が得られる。
従来技術では、Rf基の炭素数が8未満の場合、汚れ脱離性が低下してしまうが、本発明によれば、まず、炭素数8未満のRf基を有する重合性単量体を用いて、これをマクロモノマー化し、引き続き親水成分と共重合することで、共重合体中のフッ素成分を局在化することができる。このため、従来型の汚れ脱離剤に比較して、共重合体中のフッ素成分が比較的少量であっても、効率よく機能することができ、高flip-flop性と空気中での撥油性維持を両立し、優れた汚れ脱離性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の含フッ素共重合体は(A)前記フッ素マクロモノマー(a)から誘導された繰り返し単位及び(B)前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)から誘導された繰り返し単位を必須成分として含有する含フッ素共重合体である。
更に必要により、(C)モノマー(a)およびモノマー(b)と共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもかまわない。
【0010】
本発明において、繰り返し単位(A)は、式(I)の含フッ素マクロモノマー(a)によって構成される。
式(I)において、Yの具体例は、−CH2CH(OH)CH2−、-(CH2)bNHCO-、(bは1〜10の数である)である。
Zの具体例は、-O(CH)d-S-、(dは1〜10の数である)である。
【0011】
含フッ素マクロモノマー(a)は以下のようにして合成される。
フッ素含有モノマー(Mf)単独、またはフッ素含有モノマー(Mf)とフッ素非含有モノマー(Mr)との混合物を、連鎖移動剤としての活性水素含有メルカプタンの存在下、ラジカル開始剤でラジカル重合させ、活性水素を有する反応性含フッ素オリゴマーを得る。さらにこの反応性含フッ素オリゴマーに、活性水素と反応する官能基を有する(メタ)アクリロイルモノマーを反応させ、式(I)の含フッ素マクロモノマー(a)を得る。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0012】
上記式(I)においてフッ素含有モノマー(Mf)は重合性の不飽和二重結合を有する含フッ素モノマーである。
フッ素含有モノマー(Mf)が一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n−Rf (Ia)
[式中、Xは、水素原子、メチル基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、
CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、−S−または−SO−であり;
Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基であり;
mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。]
で示されるものであることが好ましい。一般式(Ia)において、pおよびnが0であり、かつYが−OCH2CH2N(R2)SO2−基(但し、R2は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−OCH2CH(OCOCH3)CH2−基である例が挙げられる。
他のフッ素含有モノマー(Mf)の好ましい例は、フッ素化オレフィン(炭素数、例えば3〜20)、例えば、CF3(CF2)7CH=CH2、C8F17−C6H4−CH2O−COCH=CH2
C5F11−C6H4−CH2O−COC(CH3)=CH2、などが挙げられる。
【0013】
フッ素含有モノマー(Mf)は一般にはパーフルオロアルキル基および/または部分的にフッ素化されたフルオロアルキル基を有する。パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は炭素数1〜21である。Rf基の炭素数の上限は、8、例えば6、特に5、特別に4であってよい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等である。
フッ素含有モノマー(Mf)は単独で使用することはもちろんのこと、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
フッ素含有モノマー(Mf)としては例えば、次のものが挙げられる。
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)m−S−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)m−SO2−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−O−(CH2)n−Rf
CH2=C(−X)−C(=O)−NH−(CH2)n−Rf
[上記式中、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基であり;
mは1〜10、nは0〜10である。]
【0015】
フッ素含有モノマー(Mf)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−OCH2CH2N(C2H5)SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−OCH2CH2N(CH3)SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−OCH2CH(OCOCH3)CH2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−OCH2CH2N(C2H5)SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−OCH2CH2N(CH3)SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−OCH2CH(OCOCH3)CH2−Rf
【0016】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0017】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0018】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0019】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0020】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基である。]
【0021】
フッ素含有モノマー(Mf)から誘導されるオリゴマー(Mfm)の具体例は次のとおりである。



【0022】
フッ素含有モノマー(Mf)の量は、含フッ素マクロモノマー(a)に対して、1〜98重量%、例えば30〜95重量%、特に60〜84重量%が好ましい。
【0023】
フッ素非含有モノマー(Mr)が、式(I)に存在することがある。あるいは、フッ素非含有モノマー(Mr)が、式(I)に存在しなくてもよい。
フッ素非含有モノマー(Mr)の量は、含フッ素マクロモノマー(a)に対して、0〜39重量%、特に1〜15重量%が好ましい。
フッ素非含有モノマー(Mr)は不飽和二重結合を有する重合性単量体であり、かつ反応性含フッ素オリゴマーをマクロマー化する際に支障を招くような官能基(例えば水酸基)を含まないものであれば、原則何でも可能であるが、共重合体への柔軟性付与、共重合体への親水性の付与、被処理基材との密着性向上、溶剤溶解性等を考慮して選択することが更に望ましい。
フッ素非含有モノマー(Mr)は2種類以上の混合物であってもよい。
【0024】
フッ素非含有モノマー(Mr)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、酢酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、エチレン、塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、スチレン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートまたはシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、メチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなど。
【0025】
フッ素非含有モノマー(Mr)から誘導されるオリゴマー(Mrn)の具体例は次のとおりである。



(上記式中、nは2〜10である。)



(上記式中、nは2〜10である。)



(上記式中、nは2〜5である。)
【0026】
フルオロケミカルオリゴマー(MfmMrn)は、モノマー単位が記載のように配置していなくてもよい。2種以上の単量体からなるフルオロケミカルオリゴマー(MfmMrn)は、ブロック重合体であっても、あるいはランダム重合体であってもよい。
【0027】
含フッ素マクロモノマー(a)は、次のようにして調製できる。
(1)フッ素含有モノマー(Mf)、必要によりフッ素非含有モノマー(Mr)、および活性水素含有メルカプタンを反応させることによって、反応性含フッ素オリゴマーを得る。
(2)反応性含フッ素オリゴマーを、活性水素と反応する官能基を有する(メタ)アクリロイルモノマーと反応させる。
【0028】
活性水素含有メルカプタンは、アルキレンチオール連鎖移動剤または活性水素基を有するアリール連鎖移動剤などである。活性水素含有メルカプタンにおける活性水素を含有する反応性基の例は、水酸基、カルボン酸基、アミノ基などが挙げられる。活性水素含有メルカプタンの使用量は、フッ素含有モノマー(Mf)とフッ素非含有モノマー(Mr)の合計1モルに対して0.01〜0.5モル、例えば0.05〜0.5モル、特に0.1〜0.3モルであってよい。
【0029】
活性水素含有メルカプタンの具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
HS(CH2)nOH n=2, 4, 6, 11
HSCH2COOH
HSCH2CH2COOH
HSCH2CH(CH3)COOH
HS−C6H4−COOH
HS−C6H4−OH
HS−C6H4−NH2
【0030】
前駆体である反応性含フッ素オリゴマーを得る為の重合方法は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できるが、その後のマクロモノマー化反応を考慮すれば、有機溶剤を用いた溶液重合が好ましい。
有機溶剤としては、単量体を溶解し、その後のマクロモノマー化工程で支障をきたすような活性水素基を有しない極性溶剤、炭化水素系溶剤、フッ素系溶剤等が好適である。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0031】
重合開始剤は公知のラジカル重合用開始剤が使用され、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが使用される。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
【0032】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体および活性水素含有メルカプタンを有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱攪拌することによって、前駆体である反応性含フッ素オリゴマーが得られる。このようにして得られた反応性含フッ素オリゴマーに、活性水素と反応する官能基を有する(メタ)アクリロイルモノマーを反応させ、式(I)の含フッ素マクロモノマー(a)を得る。官能基を有する(メタ)アクリロイルモノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルクロリド、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
グリシジル(メタ)アクリレートとしては、次の式の化合物が挙げられる。


(メタ)アクリロイルクロリドとしては、次の式の化合物が挙げられる。
CH2=CHCOOCl
CH2=C(CH3)COOCl
【0034】
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとしては、
CH2=CX1C(=O)−O−(CH2CH2O)a(CH2)b−NCO
[式中、X1は、水素原子またはメチル基、aは、0〜20、bは1〜20である]
が挙げられる。イソシアネート基含有(メタ)アクリレートの例は、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートである。
【0035】
これらの官能基を有する(メタ)アクリロイルモノマーを反応性含フッ素オリゴマーと有機溶剤中、必要なら触媒を用いて例えば反応温度、室温〜120℃、反応時間、1〜10時間反応させることで、含フッ素マクロモノマー(a)を得る。
触媒としては例えば、ウレタン化ならジブチルスズジラウレートや3級アミン、グリシジル基と水酸基との反応ならSnCl4等のルイス酸、グリシジル基とカルボン酸基との反応ならトリエチルアミン等の3級アミンといった公知の触媒を使用することができる。
【0036】
含フッ素マクロモノマー(a)の具体例に関して、一般式(I)におけるX、Y、Zの具体例は、次のとおである。


【0037】
bは1〜5の数である。
dは1〜5の数である。
M1fm: M1f: CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
m: 2〜 20 , Rf: -C4F9, -C6F13, -C8F17
M2fm: M2f: CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH2−Rf
m: 2〜 30 , Rf: -C4F9, -C6F13, -C8F17
M3fm: M3f: CH2=C(−CH3)−C(=O)−OCH2CH2N(C2H5)SO2−Rf
m: 2〜 30 , Rf: -C4F9, -C6F13, -C8F17
M1rn: M1r: CH2=C(−H)−C(=O)−O−C2H5 ,n : 1 〜 4
M2rn: M2r: CH2=C(−H)−C(=O)−O−C18H37 ,n : 1 〜 3
【0038】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであってよい。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)の分子量は、500以上、例えば1000以上、特に1500以上であってよい。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)の分子量は、例えば、6000以下であってよい。
【0039】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、一般式(II)
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (II)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数
である。]
で示されるものであることが好ましい。nは、特に2〜30、例えば2〜20であってよい。
モノマー(b)において一般式(II)中のRは特にエチレンであることが好ましい。
モノマー(b)において一般式(II)中のRは2種類以上のアルキレンの組み合わせであっても良い。その場合、少なくともRのひとつはエチレンであることが好ましい。Rの組合せとしては、エチレン基/プロピレン基の組合せ、エチレン基/ブチレン基の組合せが挙げられる。
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)は2種類以上の混合物であっても良い。その場合は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)の少なくともひとつは一般式(II)中のRがエチレンであることが好ましい。
【0040】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)90-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0041】
本発明の共重合体において、モノマー(a)(すなわち、繰り返し単位(A))の量は、モノマー(a)とモノマー(b)の合計に対して、20〜90重量%、好ましくは30〜85重量%、例えば35〜80重量%、特に50〜75重量%の範囲であってよい。20重量%〜90重量%であることによって、汚れ離脱性が高く、かつ油汚れの進入が防げる。
モノマー(b)(すなわち、繰り返し単位(B))の量は、モノマー(a)とモノマー(b)の合計に対して、10〜80重量%、好ましくは15〜70重量%、例えば20〜65重量%、例えば25〜50重量%の範囲であってよい。10〜80重量%であることによって、汚れ離脱性が高く、かつ油汚れの進入が防げる。
【0042】
本発明の共重合体には、汚れ脱離性の耐久性向上、有機溶剤への溶解性、柔軟性の付与被処理物への密着性などを目的として、他の重合性モノマー[モノマー(c)]、特に非フッ素単量体を導入してもよい。
【0043】
モノマー(c)の具体例として例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸誘導体、塩化ビニル、エチレン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、グリセロール(メタ)アクリレート、スチレン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロキシトリアルキルシランまたは(メタ)アクリロキシトリアルコキシシランのようなケイ素系モノマー、2−イソシアナートエチルメタクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリレートまたはメチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0044】
モノマー(c)の共重合割合は、共重合体に対して0〜40重量%、好ましくは1〜30重量%である。また、モノマー(c)は2種類以上の混合物であってよい。
【0045】
本発明の共重合体の重量平均分子量は、1000〜1000000、好ましくは5000〜500000であってよい。1000〜1000000であることにより、耐久性を維持しながら高い汚れ脱離性が得られ、取り扱いが容易であるように重合体液の粘度が低い。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
【0046】
本発明の共重合体を得る為の重合方法は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できるが、例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定され、重合後に水で希釈したり、乳化剤を加えて水に乳化することで処理液に調製される。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
乳化重合や重合後、乳化剤を加えて水に乳化する場合の乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の一般的な各種乳化剤が使用できる。
【0047】
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物または過硫酸系の化合物を使用し得る。
重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2,-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2,-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2,-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2,-アゾビス(2,4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1,-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2,-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2,-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチル等が好ましく挙げられる。
【0048】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2,-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2,-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2,-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2,-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2,-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく
挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
また、分子量調節を目的として公知のメルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2-メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、5重量部以下、0.01〜3重量部の範囲で用いられる。
【0049】
具体的には、共重合体は、以下のようにして製造できる。
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば、50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱攪拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0050】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば、50〜80℃の範囲で1〜10時間、攪拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合性開始剤および/または油溶性重合開始剤であってよい。
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、水溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。乳化剤としては、カチオン性、アニオン性およびノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜15重量部の範囲で用いられる。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0051】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜80重量部、例えば5〜50重量部の範囲で用いてよい。
【0052】
このようにして得られた共重合体は、必要により水や有機溶剤等に希釈または分散された後、乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなどの任意の形態に調整でき、汚れ脱離剤とすることが可能である。共重合体は、汚れ脱離剤の有効成分として機能する。汚れ脱離剤は、含フッ素共重合体および媒体(特に、液状媒体)(例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。汚れ脱離剤において、含フッ素共重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
本発明の汚れ脱離剤は、含フッ素共重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば5〜50重量部である。)をも含有する媒体を意味する。
【0053】
本発明の共重合体は、被処理物品の種類や前記調整形態(乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなど)などに応じて、任意の方法で汚れ脱離剤として被処理物品に適応され得る。例えば、水性乳濁液や有機溶剤溶液である場合には、浸漬塗布、スプレー塗布等のような被覆加工の既知の方法により、被処理物の表面に付着させ乾燥する方法が採用され得る。この際、必要ならばキュアリング等の熱処理を行っても良い。
また、必要ならば、他のブレンダーを併用することも可能である。例えば、撥水撥油剤、防シワ剤、防縮剤、難燃剤、架橋剤、帯電防止剤、柔軟剤、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ワックスエマルション、抗菌剤、顔料、塗料などである。これらのブレンダーは被処理物、処理時に処理浴に添加して使用しても良いし、あらかじめ、可能なら、本発明の共重合体と混合して使用しても良い。
【0054】
被処理物品としては、特に限定されないが繊維製品の他、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。特に繊維製品に対して有用である。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0055】
本発明においては、被処理物品を汚れ脱離剤で処理する。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素共重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【0056】
次に、合成例、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を詳しく説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
【0057】
試験は以下のようにして行った。
(1)汚れ脱離性(SR性)試験
汚れ脱離性試験は米国のAATCC Stain Release Management Performance Test Methodに準じて行った。ただし、試験用の汚れにはコーンオイルではなく、洗濯で落としにくい人工油を調整し、使用した。人工油はカーボンブラック16.7%、牛脂極度硬化油20.8%、流動パラフィン62.5%からなるダイヤペースト1gにダフニーメカニックオイル(出光興産製)100mlを加えて調整した。
水平に敷いたブロッティングペーパーの上に20cm四方の試験布を広げ、汚れとして人工油5滴(約0.2cc)を試験布に垂らす。その上からグラッシンペーパーをかけて、さらに2268gの分銅をのせ、60秒、放置する。60秒後に分銅とグラッシングペーパーを取り除き、そのまま、室温で15分、放置する。15分経過後、試験布にバラスト布を加えて1.8kgとし、洗剤(AATCC標準のWOB洗剤)100gを使用して、AATCC標準洗濯機(米国ケンモア社製)で浴量64リットル、浴温38℃の条件で12分間洗濯し、濯いだ後、AATCC標準タンブラー乾燥機(米国ケンモア社製)で試験布を乾燥する。
乾燥した試験布の残存シミ汚れの状態を判定用標準写真板と比較し、汚れ脱離性能を該当する判定級(表1参照)をもって表す。判定用標準写真板は、AATCC−TM130−2000(American Association of Textile Chemists and Colorists Test Method 130-2000)のものを使用した。
【0058】

【0059】
(2)撥油性試験
撥油性の試験は、繊維製品を用いてAATCC−TM118−2000に準じて行った。即ち、試験布を水平に広げ、表2に示す試験溶液を数滴落し、30秒後の浸透状態で判定する。撥油性が低い場合は、空気中で油汚れが被処理物品に進入して除去困難となる為、汚れ脱離性(SR性)の試験と並び重要な評価指標となる。
【0060】

【0061】
合成例1(9FSO2PAモノマー)
3-(ペルフルオロブチルスルホニル)プロピル アクリレートの合成

3-(ペルフルオロブチルスルホニル)プロパノール54.4g(159mmol)、トリエチルアミン33ml(238mmol)、4-t-ブチルカテコール(0.14g)、ジクロロメタン520mlの溶液を、塩化カルシウム管装着下0℃に冷却し、アクリロイルクロリド15.5ml(191mmol)を40分要してゆっくり滴下した。室温で1時間攪拌し、15%クエン酸水600ml、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過して減圧濃縮することで、粗製のアクリル酸エステルを得た。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し、濃縮後の透明液体を真空乾燥することで、3-(ペルフルオロブチルスルホニル)プロピル アクリレート60.0gを得た。収率95.3%
1H NMR(CDCl3; 内部標準TMS δppm): 6.45(dd, 1H, JAB=1.1Hz, JAX=17.3Hz, CHAHB=C), 6.12(dd, 1H, JAX=17.3Hz, JBX=10.5Hz, C=CHX), 5.95(dd, 1H, JBX=10.5Hz, JAB=1.1Hz, CHAHB=C), 4.34(t, 2H, JHH=6.0Hz, OCH2), 3.41(t, 2H, JHH=7.8Hz, CH2SO2), 2.36(tt, 2H, JHH=7.8Hz, JHH=6.0Hz, CH2CH2CH2).
19F NMR(CDCl3; 内部標準CFCl3 δppm): -81.2(m, 3F, CF3), -113.8(m, 2F, CF2SO2), -121.8(m, 2F, CF2), -126.3(m, 2F, CF2).
【0062】
合成例2(9FSO2PA-M1(マクロマー)の合成)
合成例1で合成した9FSO2PAモノマー50g、2-メルカプトエタノール1.97g、酢酸エチル78gを窒素導入管のついた4つ口フラスコに仕込んで、80℃に加温する。窒素バブリングを開始し、30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.33gを仕込んで還流下、8時間、重合した。ガスクロマトグラフィーでモノマーと2-メルカプトエタノールのピークの消失を確認した後、反応系を60℃に冷却し、t-ブチルヒドロキシトルエン0.0022g,ジブチルチンジラウレート0.01gを仕込んだ。2-メタクリロイルオキシエチル イソシアネート1.457gを徐々に反応系に加えて、3時間、反応させた。赤外線スペクトル(IR)でイソシアネート基のピークの消失を確認した後、減圧下に酢酸エチルを留去し、マクロマー9FSO2PA-M1を得た。マクロマーの重合度は、平均で約5.5であった。
【0063】
合成例3(9FSO2PA-M2(マクロマー)の合成)
合成例1で合成した9FSO2PAモノマー50g、2-メルカプトエタノール1.97g、酢酸エチル78gを窒素導入管のついた4つ口フラスコに仕込んで、80℃に加温する。窒素バブリングを開始し、30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.33gを仕込んで還流下、8時間、重合した。ガスクロマトグラフィーでモノマーと2-メルカプトエタノールのピークの消失を確認した後、反応系を室温まで冷却した。トリエチルアミン1.533g、ハイドロキノン0.014gを反応系に加え、メタクリロイルクロリド1.32gを発熱に注意しながら、徐々に加えた。
室温で3時間、反応させた後、ガスクロマトグラフィーでメタクリロイルクロリドのピークの消失を確認した。反応液を飽和食塩水で2回洗浄した後、油層を分離し、少量の無水硫酸マグネシウムを加えて一晩、放置させた。その後、減圧下に酢酸エチルを留去し、マクロマー9FSO2PA-M2を得た。マクロマーの重合度は、平均で約5.5であった。
【0064】
以下のようにして共重合体を製造した。
実施例1
100ml4つ口フラスコに合成例2で合成したマクロマー(9FSO2PA-M1)7.0g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO 23mol)2.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 0.8g、2-メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド 0.2g、とジプロピレングリコールモノメチルエーテル 29gを仕込んで60分間窒素フローした。内温を75-80℃に昇温後、メチルエチルケトン 1gに溶解させたアゾビスイソブチロニトリル 0.1gを添加し、8時間反応させた。得られた重合液そのままをゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量測定したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピークが発生していることを確認した。また、共重合体の重量平均分子量は11000であった。(ポリスチレン換算)
【0065】
実施例2〜6
表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0066】
実施例7〜8
実施例1における9FSO2PA-M1マクロマーを9FSO2PA-M2マクロマーに置き換えて、表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0067】
実施例9〜10
表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0068】
比較例1〜4
実施例1における9FSO2PA-M1マクロマーを9FSO2PAモノマーに置き換えて、表3に示すモノマー組成、重量比で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。共重合体の組成及び重量平均分子量を表3に示す。
【0069】
試験例1
実施例1で得られた重合体溶液を共重合体含量が0.86重量%になるように水で希釈し、水分散液を調整した。この際、分散を容易にする目的で、重合体に対して1.5重量%のステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを添加した。このようにして得られた処理液に、綿ツイル布を浸漬し、ロールで絞ってウエットピックアップが60mass%となるようにした。次いで、布を110℃で2分間乾燥し、更に160℃で2分間熱処理することにより、汚れ脱離剤処理を完了した。これらの布について汚れ脱離性と撥油性を測定した。結果を表4に示す。
また、洗濯耐久性を評価する目的で被処理布を浴温40℃で25分間、洗濯機で洗濯し、タンブラー乾燥した(これをHL5とする。HL10はHL5を2サイクル行う。また、HL20はHL5を4サイクル行う。)被処理布を上記と同様に汚れ脱離性と撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0070】
試験例2〜10及び比較試験例1〜4
重合体溶液をそれぞれ実施例2〜10及び比較例1〜4で得られたものに変更する以外は、試験例1と同様の手順で処理液を調整、布処理し、汚れ脱離性、撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0071】
表5の実施例1〜6、比較例1〜4の撥油性のデータを横軸にポリマー中のフッ素含有量(重量%)、縦軸に撥油性能をとりプロットした結果を図1に示す。
フッ素成分としてマクロマー9FSO2PA-M1を使用したポリマーはモノマー9FSO2PAを使用したポリマーに比較して、ポリマー中のフッ素含有量が少なくても、高い性能を示した。
【0072】
表5の実施例1〜6、比較例1〜4のSR性のデータを横軸にポリマー中のフッ素含有量(重量%)、縦軸にSR(汚れ脱離)性能をとりプロットした結果を図2に示す。
フッ素成分としてマクロマー9FSO2PA-M1を使用したポリマーはモノマー9FSO2PAを使用したポリマーに比較して、ポリマー中のフッ素含有量が少なくても、高い性能を示した。
【0073】

【0074】


































【0075】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ポリマー中のフッ素含有量(重量%)と撥油性との関係を示すグラフ。
【図2】ポリマー中のフッ素含有量(重量%)とSR性との関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 一般式:
CH2=C(−X)−COO−(Y)l−Z−MfmMrn−H (I)
[式中、Xは、水素原子またはメチル基であり;
Yは、−CH2CH(OH)CH2−または−R1−NHCO−であり
(但し、lは0または1であり、R1は−(CH2CH2O)a(CH2)b−であり、aは0〜20、bは1〜20である);
Zは、−L1−L2−S−であり
(但し、L1は直接結合または−O−または−COO−または−NH−であり、L2は炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアリール基であり、Sはイオウ原子を表す。);
MfmMrnは、フッ素含有モノマー(Mf)から誘導されるm個の単位とフッ素非含有モノマー(Mr)から誘導されるn個の単位からなるフロロケミカルオリゴマーである
(mは2〜50、nは0〜20である。)。]
で示される含フッ素マクロモノマーから誘導される繰り返し単位、及び
(B) ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位
を必須成分とする含フッ素共重合体。
【請求項2】
フッ素含有モノマー(Mf)が一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−[−(CH2)m−Z−]p−(CH2)n−Rf (Ia)
[式中、Xは、水素原子、メチル基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、
CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、−S−または−SO−であり;
Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基であり;
mは1〜10、nは0〜10、pは0または1である。]
で示される請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
フッ素含有モノマー(Mf)が一般式(Ia)において、pおよびnが0であり、かつ
Yが−OCH2CH2N(R2)SO2−基(但し、R2は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
−OCH2CH(OCOCH3)CH2−基である請求項2に記載のフッ素含有モノマーから誘導される請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
フッ素非含有モノマー(Mr)が不飽和二重結合を有する重合性単量体である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
繰り返し単位(B)を構成するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)が一般式:
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (II)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数
である。]
で示される請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
共重合体において、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の合計に対して、繰り返し単位(A)の量が20〜90重量%であり、繰り返し単位(B)の量が10〜80重量%である請求項1に記載の共重合体。
【請求項7】
共重合体の重量平均分子量が、1000〜1000000である請求項1に記載の共重合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の共重合体を必須成分とする汚れ脱離剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の共重合体および水性媒体を含んでなる汚れ脱離剤組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の汚れ脱離剤で処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項11】
請求項8に記載の汚れ脱離剤によって処理された繊維製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−189826(P2008−189826A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26365(P2007−26365)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】