説明

含リン有機ポリマー及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池

【課題】本発明は、含リン有機ポリマー及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池に関する。
【解決手段】本発明の含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基と官能基R1及び官能基R2を含む。前記多リン側鎖官能基に、隣接した2つのPが共有結合により結び付けられる。前記官能基R1及び官能基R2は、それぞれメチル基、クロロメチル基、トリクロロエタン基、ジフルオロメチレン基、フルオロメチル基、エーテル基、フッ素基、塩素基、シアン基、ベンゼン基、アミノ基、水素基及びアルキル基の一種又は幾種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含リン有機ポリマー及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用無線電話、携帯用パソコン、携帯用ビデオカメラ等の電子機器が開発され、各種電子機器が携帯可能な程度に小型化されている。それに伴って、内蔵される電池としても、高エネルギー密度を有し、且つ軽量なものが採用されている。そのような要求を満たす典型的な電池は、リチウム二次電池である。
【0003】
通常、リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質からなる正極と負極とを含む。前記リチウム二次電池を充電する時、リチウムイオンが正極から脱離されて、負極に挿入される。反して、前記リチウム二次電池を放電する時、リチウムイオンが負極から脱離されて、正極に挿入される。従って、リチウム二次電池の性能、特性が負極と緊密に関連する。前記負極は、負極集電体と負極材料とを備え、前記負極材料はリチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質であるので、前記リチウム二次電池の負極材料は、前記リチウム二次電池の性能に影響する要となる材料の1つである。
【0004】
従来のリチウム二次電池の負極材料は、通常炭素系材料又は金属材料からなる。金属からなる負極材料は炭素系材料を用いた負極よりも多くのリチウムイオンを吸蔵、脱離できるため、これらの材料を使用することで高容量、高エネルギー密度な電池を作製することができる。例えば、金属錫は、体積当たりでより高容量な材料の1つであり、その理論容量は、1000mAh/gより大きい。金属錫は、リチウムと合金化することが知られており、これらの材料を使用することで高容量、高エネルギー密度な電池を作製することができると考えられている。しかしながら、金属及び合金の自然資源がわずかであり、且つ価格が比較的高いので、良好なリチウムイオンの吸蔵特性を有し、価格が比較的低い新しい負極材料を開発する研究がなされている。体積当たりの容量が高く、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質として注目されている材料は、シリコン複合物、酸化錫、遷移金属酸化物、金属窒化物及び金属リン化物などである。ここで、金属リン化物は、例えばLiMO(M=Ti、V等)、MnP、CoP、CuP、CuP、FeP、LiCuP、TiPなどの無機リン化物である。しかし、前記無機リン化物のサイクル性能は悪い。
【0005】
また、リチウム二次電池においてリチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な負極材料として、黒リン-炭素合成物が用いられることが非特許文献1に掲載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】hun−joon Sohn et al., “Black Phosohorus and its Composite Lithium Rechargeable Batteries”, Advanced materials. 2007年、第19巻, 第2465−2468頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記黒リン-炭素合成物の製造要求は苛酷であり、且つ黒リンが高価品であるので、リチウム二次電池のコストを増加させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明はコストが低く、製造工程が簡単である含リン有機ポリマー及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池を提供する。
【0009】
本発明の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基と官能基R1及び官能基R2を含み、前記含リン有機ポリマーの構造式は
【化1】

の一種又は数種を含み、前記多リン側鎖官能基に、隣接した2つのPが共有結合により結び付けられ、且つm=1、2、…12であり、前記官能基R1及び官能基R2は、それぞれメチル基、クロロメチル基、トリクロロエタン基、ジフルオロメチレン基、フルオロメチル基、エーテル基、フッ素基、塩素基、シアン基、ベンゼン基、アミノ基、水素基及びアルキル基の一種又は数種である。
【0010】
本発明の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマーの製造方法は、重量比が1:10〜4:1である有機ポリマーと純粋なリンとを混合して混合物を形成する第一ステップと、不活性雰囲気又は真空条件下で、前記混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させる第二ステップと、不活性雰囲気で、前記乾燥した混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱し、前記混合物における純粋なリンを気化させて、前記混合物における有機ポリマーと反応させて、予備成形物を形成する第三ステップと、前記予備成形物を室温まで冷却した後、アルカリ溶液に浸漬して残余のリンを除去する第四ステップと、中性の成形物を得るために前記残余のリンを除去した予備成形物のPH値を調節する第五ステップと、前記含リン有機ポリマーを得るために前記PH値を調節した予備成形物を乾燥させる第六ステップと、を含む。
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を含む。前記負極の活性材料は、含リン有機ポリマーを含む。前記含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基と官能基R1及び官能基R2を含み、前記含リン有機ポリマーの構造式は
【化2】

の一種又は数種を含み、前記多リン側鎖官能基に、隣接した2つのPが共有結合により結び付けられ、且つm=1、2、…12であり、前記官能基R1及び官能基R2は、それぞれメチル基、クロロメチル基、トリクロロエタン基、ジフルオロメチレン基、フルオロメチル基、エーテル基、フッ素基、塩素基、シアン基、ベンゼン基、アミノ基、水素基及びアルキル基の一種又は数種である。
【発明の効果】
【0012】
従来の技術と比べて、本発明の含リン有機ポリマー及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池は、多リン側鎖官能基を導電性ポリマー主鎖に接続しているので、従来の技術の純粋なリンを採用するリチウムイオン二次電池と比べて、良好な導電特性を有し、且つ従来の技術の無機リン化物を採用するリチウムイオン二次電池と比べて、良好な可逆的にリチウムイオンを吸蔵できる性能を有する。本発明の含リン有機ポリマーは、室温でも可逆的に充/放電することができ、且つ充/放電サイクルにおいて、P―P化学結合がまったく断裂しないので、リチウムイオン二次電池の可逆的にリチウムイオンを吸蔵できる性能を高める。前記多リン側鎖官能基は、前記導電性ポリマー主鎖に固定されているので、リチウムイオン二次電池が可逆的にリチウムイオンを吸蔵するときリン又は無機リン化物を溶かすことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例1の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。
【図2】本発明実施例1の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を示す曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含んでいる。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基を含んでいる。さらに、前記側鎖は、官能基R1及び官能基R2を含んでよい。前記含リン有機ポリマーは構造式(1)の一種又は数種を含んでいる。
【0016】
構造式(1)
【化3】

【0017】
前記含リン有機ポリマーの構造式の前記多リン側鎖官能基に、隣接した2つのPが共有結合により結び付けられ、且つ、m=1、2、…12と設定されている。前記官能基R1及び官能基R2は、それぞれメチル基、クロロメチル基、トリクロロエタン基、ジフルオロメチレン基、フルオロメチル基、エーテル基、フッ素基、塩素基、シアン基、ベンゼン基、アミノ基、水素基及びアルキル基の一種又は数種である。
【0018】
前記含リン有機ポリマーにおける前記リンの重量パーセンテージは、10%〜85%である。前記含リン有機ポリマーの充/放電容量は250mAh/g〜1500mAh/gである。前記含リン有機ポリマーは、有機ポリマーと純粋なリンとを反応させて得られた物である。
【0019】
前記含リン有機ポリマーの製造方法は、重量比が1:10〜4:1である有機ポリマーと純粋なリンとを混合して混合物を形成するステップ(a)と、不活性雰囲気又は真空条件で、前記ステップ(a)で得られる混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させるステップ(b)と、不活性雰囲気で、前記ステップ(b)に加工した前記混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱し、前記混合物における純粋なリンを気化させ、前記混合物における有機ポリマーと反応させて、予備成形物を形成するステップ(c)と、前記予備成形物を室温まで冷却した後、アルカリ溶液に浸漬して残余のリンを除去するステップ(d)と、中性の成形物を得るために前記ステップ(d)で得られる予備成形物のPH値を調節するステップ(e)と、前記含リン有機ポリマーを得るために前記ステップ(e)で得られる予備成形物を乾燥するステップ(f)と、を含む。
【0020】
前記ステップ(a)で、有機ポリマーと純粋なリンを混合することは、研磨若しくはボールミル粉砕して有機ポリマー粉末を形成し、同時に純粋なリンの粉末と混合し、又は溶剤に前記有機ポリマーを溶かして有機ポリマー溶液を得るステップ(aa)と、純粋なリンの粉末を前記有機ポリマー粉末又は有機ポリマー溶液に混合するステップ(ab)と、を含む。
【0021】
前記ステップ(a)で、前記有機ポリマーは、ポリエチレン、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、四ふっ化エチレン樹脂、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン・オキシド、ポリアクリロニトリル、メタクリル、1,2―ビス塩化ビニル樹脂の一種又は数種からなる。前記純粋なリンに充分に反応するために、前記有機ポリマーは、粉末、粒子又は繊維構造であることが好ましいが、ナノ粉末であることがより好ましい。前記純粋なリンは、黒リン、赤リン又は白リンであることが好ましいが、赤リンであることがより好ましい。
【0022】
前記ステップ(aa)で、前記溶剤は、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン (N−methylpyrrolidone,NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、水又はエタノールの一種又は数種からなる。
【0023】
前記ステップ(b)で、前記混合物における水又は不純物を蒸発するように、前記混合物を8時間〜48時間乾燥させる。前記不活性雰囲気は、窒素ガス、希ガス、アルゴン雰囲気又はヘリウム雰囲気である。
【0024】
前記ステップ(c)で、混合物の反応時間は、前記混合物の量によって決定するが、例えば1時間〜48時間反応する。
【0025】
前記ステップ(d)で、アルカリ溶液は、アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液の一種又は数種からなる。
【0026】
前記ステップ(e)で、予備成形物のPH値を調節することは、酸性溶液を用いて前記ステップ(d)で得られる予備成形物を中和するステップ(ea)、前記ステップ(ea)で得られる予備成形物を脱イオン水で、すすいだ脱イオン水が中性になるまですすぐステップ(eb)、を含む。
【0027】
前記ステップ(ea)で、前記酸性溶液は、硫酸水溶液、塩酸水溶液又はフッ化水素酸水溶液の一種又は数種からなる。
【0028】
前記ステップ(f)で、前記予備成形物を50℃〜100℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させる。前記乾燥時間が6時間〜48時間である。
【0029】
前記含リン有機ポリマーは、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質として用いられ、例えば電極活性材料としてリチウムイオン二次電池に応用されることができる。前記含リン有機ポリマーはリチウムイオン二次電池に応用される場合、前記リチウムイオン二次電池が正極、負極及び電解液を含む。前記含リン有機ポリマーは、前記負極の活性材料として用いられることができる。前記正極の活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)などの少なくとも一種である。前記電解液は、通常少なくとも1つの溶剤及びリチウム金属塩を含んでいる。前記リチウム金属塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)である。前記電解液に含んでいる溶剤は、エチレン・カーボネート、プロピレン・カーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチルメチルなどの少なくとも一種である。
【0030】
(実施例1)
リチウムイオン二次電池に用いられた含リン有機ポリマーの製造方法は、重量比が4:1であるポリアクリロニトリルと赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a1)と、窒素ガス雰囲気で、前記ステップ(a1)で得られる混合物を60℃まで昇温して、8時間乾燥させるステップ(b1)と、前記ステップ(b1)で得られる混合物を、密閉反応室において、前記密閉反応室に窒素ガスを導入し、同時に、前記混合物を450℃まで加熱して、12時間まで保持し、前記混合物における赤リンを気化させて、前記混合物におけるポリアクリロニトリルと反応させ、予備成形物を形成するステップ(c1)と、前記予備成形物を室温まで冷却した後、水酸化ナトリウム溶液に浸漬して残余のリンを除去するステップ(d1)と、中性の成形物を得るために前記ステップ(d1)で得られる予備成形物を塩酸溶液に浸漬した後、また脱イオン水ですすぐステップ(e)と、前記含リン有機ポリマーを得るために、前記ステップ(e1)で得られる予備成形物を60℃まで昇温し、14時間乾燥するステップ(f1)と、を含む。
【0031】
前記ステップ(a1)で、前記赤リンの純度が産業等級純度より高い。前記ポリアクリロニトリルは粒子状である。前記ポリアクリロニトリルの、重量平均分子量(Mw)=86200であり、数平均分子量(Mn)=22600である。前記ポリアクリロニトリルと赤リンを混合することは、N,N-ジメチルホルムアミドの溶剤に前記ポリアクリロニトリル粒子を溶かして溶液を形成する段階と、前記赤リンを前記溶液において混合する段階と、を含む。
【0032】
前記ステップ(c1)で形成した予備成形物は、含リン有機ポリマーと残余のリンを含む。
【0033】
前記ステップ(f1)で得られる含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基Pmを含む。前記含リン有機ポリマーは、有機ポリマーの熱分解脱水素過程に、Pが反応に参加することによって形成した物である。
【0034】
本実施例において、前記含リン有機ポリマーは、構造式(2)を含む。
【0035】
構造式(2)
【化4】

【0036】
ここで、Pmが多リン官能基を表示し、m=1、2、…12である。隣接した2つのPは、共有結合により結び付けられている。2つ以上のPmが、それぞれ導電性ポリマー主鎖に接続している。元素分析方法によって測定すると、前記含リン有機ポリマーにおけるリンの重量パーセンテージは、56%である。
【0037】
さらに、本実施例は、含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、重量比が80:10:5:5の含リン有機ポリマー、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる。前記粘着剤は、ポリエチレン(テトラフルオロエチレン)である。前記導電剤は、重量比が1:1のアセチレン・ブラック及び導電黒鉛からなる。前記分散剤は、エタノールである。前記リチウムイオン二次電池の正極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。
【0038】
本実施例の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.6V〜2.8Vである。図1を参照し、本実施例1の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。前記図1に示された曲線座標の中、横座標軸は前記リチウムイオン二次電池の充/放電量を表示し、縦座標軸は電圧を表示する。前記図1に示すようにリチウムイオン二次電池は、循環過程に充/放電クーロン効率が、95%以上である。図2を参照し、本実施例1の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を示す曲線図である。前記図2に示す曲線図中、横座標軸はリチウムイオン二次電池の循環回数を表示し、縦座標軸は前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量を表示する。最初の充/放電容量は、1200mAh/g以上である。11回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、また500mAh/gより高い。
【0039】
(実施例2)
リチウムイオン二次電池に用いられた含リン有機ポリマーの製造方法は、重量比が1:2である塩化ビニル樹脂と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a2)と、アルゴン雰囲気で、前記ステップ(a2)で得られる混合物を80℃まで昇温して、8時間乾燥するステップ(b2)と、前記ステップ(b2)で得られる混合物を密閉反応室において、前記密閉反応室にアルゴン気体を充填し、且つ前記混合物を400℃まで加熱して、8時間まで保持し、前記混合物における赤リンが気化され、前記混合物における塩化ビニル樹脂と反応して、予備成形物を形成するステップ(c2)と、前記予備成形物を室温まで冷却した後、アンモニア溶液に浸漬して残余のリンを除去するステップ(d2)と、中性の成形物を得るために前記ステップ(d2)で得られる予備成形物を硫酸水溶液に浸漬した後、また脱イオン水ですすぐステップ(e2)と、前記含リン有機ポリマーを得るために、前記ステップ(e2)で得られる予備成形物を80℃まで昇温し、12時間乾燥するステップ(f2)と、を含む。
【0040】
前記ステップ(a2)で、前記赤リンの純度は産業等級純度より高い。前記塩化ビニル樹脂は粒子状である。前記塩化ビニル樹脂の、重量平均分子量(Mw)=62000であり、数平均分子量(Mn)=35000である。前記塩化ビニル樹脂と赤リンを混合することは、テトラヒドロフランの溶剤に前記塩化ビニル樹脂粒子を溶かして、溶液に形成する段階と、前記赤リンを前記溶液において混合する段階と、を含む。
【0041】
前記ステップ(c2)で形成した予備成形物が、含リン有機ポリマーと残余のリンを含んでいる。本実施例2の含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含んでいる。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基を含んでいる。さらに、前記側鎖は、官能基R1及び官能基R2を含んでいてよい。前記官能基R1及び官能基R2は、前記含リン有機ポリマーの物理特性に影響を与えることができる。さらに、前記官能基R1及び官能基R2が、前記導電性ポリマー主鎖の共役電子の分布状況を変化させて、含リン有機ポリマーの化学特性に影響する。前記含リン有機ポリマーの重合度は、塩化ビニル樹脂の重合度以下である。本実施例において、前記官能基R1及び官能基R2は、水素グループ(H−)である。
【0042】
本実施例において、前記含リン有機ポリマーの構造式は次の構造式(3)及び(4)の少なくとも一種を含んでいる。
【0043】
構造式(3)
【化5】

【0044】
構造式(4)
【化6】

【0045】
ここで、Pmが多リン官能基を表示し、m=1、2、…12である。隣接した2つのPは、共有結合により結び付けられている。2つ以上のPmが、それぞれ導電性ポリマー主鎖に接続している。元素分析方法によって測定すると、前記含リン有機ポリマーにおけるリンの重量パーセンテージは、75%である。
【0046】
更に、前記含リン有機ポリマーの隣接する多リン官能基Pmの側鎖が互い接続して、構造式(5)又は(6)を形成することができる。
【0047】
構造式(5)
【化7】

【0048】
構造式(6)
【化8】

【0049】
さらに、本実施例は、含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、重量比が80:10:5:5の含リン有機ポリマー、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる。前記粘着剤は、ポリエチレン(テトラフルオロエチレン)である。前記導電剤は、重量比が1:1のアセチレン・ブラック及び導電黒鉛からなる。前記分散剤は、エタノールである。前記負極集電体は、銅箔からなる。前記リチウムイオン二次電池の負極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。本実施例2の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.6V〜2.8Vである。本実施例2の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の最初の充/放電容量は、1000mAh/g以上である。10回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、450mAh/gより高い。
【0050】
(実施例3)
リチウムイオン二次電池に用いられた含リン有機ポリマーの製造方法は、重量比が1:1である塩化ポリプロピレンと赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a3)と、真空環境で、前記ステップ(a3)で得られる混合物を60℃までに昇温して、4時間乾燥させるステップ(b3)と、前記ステップ(b3)で得られる混合物を、密閉反応釜において、前記密閉反応室にアルゴン気体を導入し、同時に、前記混合物を420℃まで加熱して、10時間まで保持し、前記混合物における赤リンを気化させて、前記混合物における塩化ポリプロピレンと反応して、予備成形物を形成するステップ(c3)と、前記予備成形物を室温まで冷却した後、水酸化ナトリウムに浸漬して残余のリン及び酸化リンなどの副産物を除去するステップ(d3)と、中性の成形物を得るために前記ステップ(d3)で得られる予備成形物を脱イオン水ですすぐステップ(e3)と、含リン有機ポリマーを得るために、前記ステップ(e3)で得られる予備成形物を80℃まで昇温し、12時間乾燥するステップ(f3)と、を含む。
【0051】
前記ステップ(a3)で、前記赤リンの純度は産業等級純度より高い。前記塩化ポリプロピレンは粒子状である。前記塩化ポリプロピレンの、重量平均分子量(Mw)=60000であり、数平均分子量(Mn)=32000である。前記塩化ポリプロピレンと赤リンを混合することは、テトラヒドロフランの溶剤に前記塩化ポリプロピレン粒子を溶かして溶液を形成する段階と、前記赤リンを前記溶液において混合する段階と、を含む。
【0052】
前記ステップ(c3)で形成した予備成形物は、含リン有機ポリマーと残余のリンを含む。本実施例2の含リン有機ポリマーは、導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む。前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基を含む。さらに、前記側鎖は、官能基R1及び官能基R2を含んでよい。前記含リン有機ポリマーの重合度は、塩化ビニル樹脂の重合度以下である。本実施例において、前記官能基R1及び官能基R2は、アルキル基(−CH)である。
【0053】
本実施例において、前記含リン有機ポリマーの構造式は次の構造式(7)及び(8)の少なくとも一種を含んでいる。
【0054】
構造式(7)
【化9】

【0055】
構造式(8)
【化10】

【0056】
ここで、Pmが多リン官能基を表示する。隣接した2つのPは、共有結合により結び付けられている。2つ以上のPmが、それぞれ導電性ポリマー主鎖に接続している。元素分析方法によって測定すると、前記含リン有機ポリマーにおけるリンの重量パーセンテージは、63%である。
【0057】
更に、本実施例は、含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と銅箔からなる負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、含リン有機ポリマー、粘着剤、導電剤及び分散剤からなり、ここで含リン有機ポリマー、粘着剤と導電剤の重量比が8:1:1である。前記粘着剤は、ポリエチレン(テトラフルオロエチレン)である。前記導電剤は、重量比が1:1のアセチレン・ブラック及び導電黒鉛からなる。前記分散剤は、エタノールである。前記リチウムイオン二次電池の負極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。本実施例3の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.6V〜2.8Vである。本実施例3の含リン有機ポリマーを採用したリチウムイオン二次電池の最初の充/放電容量は、1500mAh/g以上である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー主鎖及び前記導電性ポリマー主鎖に接続する側鎖を含む電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマーであって、
前記側鎖は、電気化学的に活性な多リン側鎖官能基と官能基R1及び官能基R2を含み、
前記含リン有機ポリマーの構造式は
【化1】

の一種又は数種を含み、
前記多リン側鎖官能基に、隣接した2つのPが共有結合により結び付けられ、且つm=1,2,…12であり、
前記官能基R1及び官能基R2は、それぞれメチル基、クロロメチル基、トリクロロエタン基、ジフルオロメチレン基、フルオロメチル基、エーテル基、フッ素基、塩素基、シアン基、ベンゼン基、アミノ基、水素基及びアルキル基の一種又は数種であることを特徴とする電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマー。
【請求項2】
重量比が1:10〜4:1である有機ポリマーと純粋なリンを混合させて混合物を形成する第一ステップと、
不活性雰囲気又は真空条件で、前記混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させる第二ステップと、
不活性雰囲気で、前記乾燥した混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱し、前記混合物における純粋なリンが気化され、前記混合物における有機ポリマーと反応させて、予備成形物を形成する第三ステップと、
前記予備成形物を室温まで冷却した後、アルカリ溶液に浸漬して残余のリンを除去する第四ステップと、
中性の成形物を得るために前記残余のリンを除去した予備成形物のPH値を調節する第五ステップと、
前記含リン有機ポリマーを得るために前記PH値を調節した予備成形物を乾燥する第六ステップと、
を含むことを特徴とする電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のための含リン有機ポリマーの製造方法。
【請求項3】
正極、負極及び電解液を含むリチウムイオン二次電池であって、
前記負極の活性材料は、請求項1に記載の含リン有機ポリマーを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−219050(P2010−219050A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62275(P2010−62275)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】