説明

含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物、多孔質物及びこれを用いた絶縁電線ケーブル

【課題】 均質な微細空孔の形成を容易にし、細径、薄肉化に容易に対応できる含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物、多孔質物及びこれを用いた絶縁電線ケーブルを提供する。
【解決手段】 紫外線硬化型樹脂組成物に、予め吸水させ膨潤させた含水吸水性ポリマを分散させると共に、前記紫外線硬化型樹脂組成物に、少なくとも1種以上の親水性モノマを10mass%以上添加したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質被膜からなる絶縁層を形成するための含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物、多孔質物及びこれを用いた絶縁電線ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野をはじめとする精密電子機器類や通信機器類の小型化や高密度実装化が進むなかで、これらに使用される電線・ケーブルもますます細径化が図られている。さらに信号線等では、伝送信号の一層の高速化を求める傾向が顕著であり、これに使用される電線の絶縁層を薄くかつ可能な限り低誘電率化することにより伝送信号の高速化を図ることが望まれている。
【0003】
従来この絶縁層には、ポリエチレンやふっ素樹脂などの誘電率の低い絶縁材料を発泡させたものが使われている。発泡絶縁層の形成には、予め発泡させたフィルムを導体上に巻き付ける方法や押出方式が知られており、特に押出方式が広く用いられている。
【0004】
発泡を形成する方法としては、大きく物理的な発泡方法と化学的な発泡方法に分けられる。
【0005】
物理的な発泡方法としては、液体フロンのような揮発性発泡用液体を溶融樹脂中に注入し、その気化圧により発泡させる方法や窒素ガス、炭酸ガスなど押出機中の溶融樹脂に直接気泡形成用ガスを圧入させることにより一様に分布した細胞状の微細な独立気泡体を樹脂中に発生させる方法などがある(特許文献1)。
【0006】
化学的な発泡方法としては、樹脂中に発泡剤を分散混合した状態で成形し、その後熱を加えることにより発泡剤の分解反応を発生させ、分解により発生するガスを利用して発泡させることがよく知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−26846号公報
【特許文献2】特開平11−176262号公報
【特許文献3】特開昭62−236837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、溶融樹脂中に揮発性発泡用液体を注入する方法では、気化圧が強く、気泡の微細形成や均質形成が難しく薄肉成形に限界がある。また、揮発性発泡用液体の注入速度が遅いために、高速製造化が難しく、生産性に劣るという問題もある。さらに、押出機中で直接気泡形成用ガスを圧入する方法は、細径薄肉押出形成に限界があること、安全面で特別な設備や技術を必要とするため、生産性に劣ることや製造コストの上昇招いてしまう問題がある。
【0009】
一方、化学発泡方法は、予め樹脂中に発泡剤を混練し、分散混合し、成形加工後に熱により発泡剤を反応分解させて発生したガスにより発泡をさせるため、樹脂の成形加工温度は、発泡剤の分解温度より低く保持しなければならない問題がある。さらに、素線の径が細くなると、押出被覆では樹脂圧により断線が起こりやすく、高速化が難しくなるという別の問題もある。
【0010】
また、フロン、ブタン、炭酸ガス等を用いる物理発泡は環境負荷が大きい問題や、化学発泡に用いる発泡剤は価格が高いといった問題がある。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するために、種々検討した結果得られたものであり、その目的は、環境にやさしく、均質な微細空孔の形成を容易にし、細径、薄肉化に容易に対応できる含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物、多孔質物及びこれを用いた絶縁電線ケーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、紫外線硬化型樹脂組成物に、予め吸水させ膨潤させた含水吸水性ポリマを分散させると共に、前記紫外線硬化型樹脂組成物に、少なくとも1種以上の親水性モノマを10mass%以上添加したことを特徴とする含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物である。
【0013】
請求項2の発明は、含水率が30mass%以上となるように含水吸水性ポリマを分散させる請求項1記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物である。
【0014】
請求項3の発明は、親水性モノマが、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートから選ばれる1種以上の親水性モノマを用いる請求項1又は2記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物である。
【0015】
請求項4の発明は、含水吸水性ポリマは、粒径(≒形成空孔径)が30μm以下に処理されているものを用いる請求項1〜3いずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を架橋硬化した後、加熱により水を除去して形成したことを特徴とする多孔質物である。
【0017】
請求項6の発明は、前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項5に記載の多孔質物である。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1〜4いずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を、導体の外周に被覆し、該樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた樹脂組成物を加熱して樹脂組成物中の水分を除去して絶縁層を形成したことを特徴とする絶縁電線である。
【0019】
請求項8の発明は、前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空孔率が20%〜60%である請求項7に記載の絶縁電線である。
【0020】
請求項9の発明は、前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項7に記載の絶縁電線である。
【0021】
請求項10の発明は、請求項7〜9いずれかに記載の絶縁電線の外周にスキン層を設けたことを特徴とする絶縁電線である。
【0022】
請求項11の発明は、請求項7〜10いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けたことを特徴とする同軸ケーブルである。
【0023】
請求項12の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を導体の外周に被覆し、該樹脂組成物を硬化させて絶縁層を形成させた後、加熱して絶縁層中の前記含水吸水性ポリマの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法である。
【0024】
請求項13の発明は、前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項12に記載の絶縁電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、含水吸水性ポリマを紫外線硬化型樹脂組成物に分散して、含水率30mass%以上とする含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物において、少なくとも1種以上の特定の親水性モノマを10mass%以上用いることで、製膜性に優れたものが得られ、これを加熱脱水処理をすることで空孔サイズが均質でバラツキの少ない多孔質物や多孔質被覆からなる絶縁電線が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の多孔質物で絶縁層を形成した絶縁電線の一実施の形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の絶縁電線を用いた多層被覆ケーブルの一実施の形態を示す横断面図である。
【図3】本発明の絶縁電線を用いた同軸ケーブルの一実施の形態を示す横断面図である。
【図4】本発明の実施例1で、含水率40mass%より得られた厚さ100μmのフィルム断面を500倍に拡大した顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0028】
先ず、図1〜図3により、本発明の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物が適用される絶縁電線、多層皮膜ケーブル、同軸ケーブルを説明する。
【0029】
図1は、絶縁電線の横断面図であり、複数本の導体3の外周に微細な空孔2を有する含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物からなる絶縁層1を被覆して絶縁電線10が形成される。
【0030】
図2は、図1に示した絶縁電線10を用いた多層皮膜ケーブルの横断面図であり、絶縁電線10の外周にスキン層又は被覆層4を形成して多層皮膜ケーブル11を形成したものである。
【0031】
図3は、図1に示した絶縁電線10を用いた同軸ケーブルの横断面図であり、絶縁電線10の導体3を内側導体とし、絶縁電線10の絶縁層1の外周にシールド線又はシールド層5を形成し、さらにその外周に被覆層6を形成して同軸ケーブル12を形成したものである。
【0032】
さて、本発明は、絶縁層として、紫外線硬化型樹脂組成物に、予め吸水させ膨潤させた含水吸水性ポリマを分散させると共に、その紫外線硬化型樹脂組成物に、少なくとも1種以上の親水性モノマを10mass%以上添加して形成するものである。
【0033】
また、含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物中の含水率が30mass%以上となるように含水吸水性ポリマを分散させるものである。
【0034】
紫外線硬化型樹脂組成物とは、紫外線により硬化するもので、エチレン系、ウレタン系、シリコーン系、ふっ素系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリカーボネート系など公知の樹脂組成物を選択できるが、樹脂組成物の誘電率として4以下、好ましくは3以下のものが良い。
【0035】
吸水性ポリマとは、非常に良く水を吸い込み、保水力が強いため多少の圧力を加えても吸水した水を放出しない高分子物質で、例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物、ポリアクリル酸塩架橋体、カルボキシメチル化セルロース、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂等がある。
【0036】
含水吸水性ポリマとは、吸水性ポリマに水を吸水させたものである。吸水させた吸水性ポリマを分散させるのは、空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマの粒径と吸水量で制御できることや吸水膨潤によりゲル状となった吸水性ポリマは水を多く含み、水と液状の紫外線硬化型樹脂組成物とは非相溶のため、撹拌分散の際に、独立分散しやすく且つ球状となって分散しやすくなる。このため硬化後の脱水によって得られる空孔形状が球に近い形状とすることができ、つぶれに対して強いものが得られやすくなるためである。
【0037】
特に吸水性ポリマとしては、ナトリウムを含まず、吸水量が20g/g以上のものが好ましい。代表的なものとしては、ポリアルキレンオキサイド系樹脂があげられる。ナトリウムを含まないのは、電気絶縁性を低下させる要因になり易いためである。吸水量は吸水性ポリマ1gあたりに吸水される水の量(g)で、吸水量が20g/gより小さくなると、空孔形成効率が低くなることや吸水性ポリマを多く使用する必要があるためである。
【0038】
含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物に、少なくとも1種以上の親水性モノマを用いるのは、含水率を高くした場合の製膜性を得るためである。親水性モノマを含まないと含水率を高めることが難しく、製膜性も著しく低下する。
【0039】
紫外線硬化型樹脂組成物の親水性モノマの比率を10mass%以上とするのは、これより少ないと含水吸水性ポリマを分散して含水率を高めていく場合に製膜性効果が得られないためである。親水性モノマの比率の上限は、特に限定されるものではないが、50mass%以下であることが望ましい。この値より多くしたとしても、製膜性に対する効果が少なくなり、可撓性や機械的特性など特性バランスが得にくくなるためである。
【0040】
含水吸水性ポリマを分散させた紫外線硬化型樹脂組成物中の含水率を30mass%以上とするのは、それより少なくなると、熱可塑性樹脂のPFAやETFE等のふっ素系樹脂やポリエチレンなどの誘電率より低いものが得にくくなるためである。含水率の上限は、特に限定されるものではないが、70mass%以下が望ましい。これより多くなると、安定した多孔質物の形成が著しく困難になるためである。
【0041】
親水性モノマとして、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートから選ばれる1種以上の親水性モノマを用いるのは、含水率を高める際の製膜性を得る上で非常に有効なためである。なお、含水率によっては他の親水性モノマ、例えば、ブタンジオールモノアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、テトラヒドロフルフリールメタクリレート、ビニルアセテート、N−ビニルカプロラクタム等で製膜は可能である。
【0042】
含水吸水性ポリマの粒径は、30μm以下がよい。粒径を30μm以下とするのは、粒径と得られる空孔径はほぼ等しく、それより大きくなると薄膜化に対して、膜厚と空孔径が近くなると潰れなど機械的特性面で問題が生じやすくなるためである。
【0043】
紫外線による硬化後、加熱により脱水させるのは、脱水による体積収縮による空孔率の低下が防止できるほか、膜厚や外径の変化を防止し、安定したものを得ることができるためである。さらに、予め空孔となる部分をもって被覆を形成できるため、発泡させる必要が無く、従来のガス注入や発泡剤によるガス発泡に生じやすい導体と発泡層間の膨れや剥離による密着力低下がまったくなく安定したものが得られる。
【0044】
吸水させた吸水性ポリマの水を加熱脱水するのにマイクロ波加熱を利用するのは、水はマイクロ波により、急速に加熱されるため吸水性ポリマや周囲の樹脂などに影響をあたえることなく、短時間で加熱脱水ができ効率よく空孔形成ができるためである。また、導波管型マイクロ波加熱炉を用いることで、連続的に加熱脱水ができる。
【0045】
含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて分散剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、電気絶縁性向上剤、充填剤などを公知のものを加えて用いることができる。
【0046】
絶縁層の厚さが100μm以下、絶縁層の空孔率が20%以上〜60%以下、形成する空孔が球状で、最大・最小径部の比が2以下、厚さ方向の空孔径Dが絶縁層厚さtに対してD<1/2tで形成されている絶縁電線とするのは、医療用プロープケーブルなどを代表とする同軸ケーブルでは、細径化、伝送信号高速化が進められており、絶縁層の薄肉化、低誘電率化が必須であり、絶縁層の低誘電率化には空孔形成が有効である。しかし、空孔率が高すぎたり、空孔径が大きすぎたりすると絶縁層がつぶれやすく安定した信号伝送が得られない問題が生じることから、薄肉、低誘電率でしかも耐つぶれ性に優れた絶縁電線を得るためである。
【0047】
空孔率を20%以上、60%以下とするのは、空孔率が20%より小さいと、低誘電率化効果が低く、空孔率が60%より大きくなると、絶縁層の成形性、耐つぶれ性などが低下しやすくなるためである。
【0048】
空孔の最大と最小径部の比を2以下とするのは、2より大きくなると、つぶれが生じやすくなるためである。
【0049】
厚さ方向の空孔径Dが絶縁層厚さtに対してD<1/2tとするのは、1/2tより大きくなると、空孔率が高い程つぶれが生じやすい問題があるためである。
【0050】
吸水性ポリマは空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマの粒径と吸水量で調整でき、さらに予め組成物中に空孔となる部分が形成された状態で絶縁層を形成できることから制御が容易にできる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例1〜7と比較例1〜6について説明する。
【0052】
表1に実施例1〜7及び比較1〜6に用いた紫外線硬化型樹脂組成物を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
紫外線硬化型樹脂組成物として、ウレタンアクリレート、反応性希釈剤としてジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドを用い、これに親水性モノマA〜Eを加えた。
【0055】
この親水性モノマを添加した紫外線硬化型樹脂組成物に、含水吸水性ポリマとして、ポリアルキレンオキサイド系樹脂からなる吸水性ポリマ(「アクアコークTWB‐PF」住友精化(株)製)に予め蒸留水を吸水させもので、その吸水比は、吸水性ポリマ1質量部に対して蒸留水31質量部とし、これをホモジナイザーPA−2K(ニロ・ソアビ社製)を用いて、圧力100MPaで解砕処理を施し、含水吸水性ポリマ粒径として30μm以下としたものを含水吸水性ポリマとした。
【0056】
この含水吸水性ポリマを50℃に加温し、予め50℃に加温した各紫外線硬化型樹脂組成物に対して含水率25,30,40,50,60mass%となるように加え、撹拌機(スリーワンモータ)で、回転数300rpm、30分撹拌分散した。
【0057】
これを7MILのブレードを用いて、ガラス板上に幅100mm、長さ20mm、厚さ約100μmの塗膜を形成し、紫外線照射コンベア(メタルハライドランプ、出力80W/cm)にて、窒素雰囲気下で照射量1000mJ/cm を照射し、フィルムとして製膜できるかどうか確認した。
【0058】
製膜性は、完全なフィルムとして得られるものを○、不完全なものを△、まったくフィルムにならないものを×とした。
【0059】
得られたフィルムについて、マイクロ波加熱装置(発振周波数2.45GHz)を用いて10分加熱し脱水処理した後、23±2℃、55%RHで24時間状態調整後、体積重量を測定し、次式より空孔率を求めた。
【0060】
空孔率(%)={1−(脱水後の試料重量/脱水後の試料体積)/(含水させない樹脂試料重量/含水させない樹脂試料体積)}×100
実施例1〜7では、フィルムの製膜性は、いずれも良好(○)であり、また加熱脱水後のフィルムの空孔率も20%〜60%の範囲にあることが確かめられた。
【0061】
これに対して、比較例では、親水性モノマを含まないもの(比較例1)、親水性モノマの比率が、紫外線硬化型樹脂組成物に対して10mass%より少ない比較例2〜6は、含水率が25mass%では、製膜性は○で、空孔率も20%以上となるが、含水率が30mass%以上では、いずれも完全なフィルムが得られないことがわかる。
【0062】
実施例1〜7より、親水性モノマの比率を10mass%以上とすることで含水率30mass%以上の製膜性が飛躍的に向上することがわかる。
【0063】
また、実施例1に対して実施例2〜7は、含水率を高めたものであるが、親水性モノマの比率が高い方が含水率の高いものの製膜性がよいことがわかる。
【0064】
図4は、実施例1の含水率40mass%より得られた厚さ100μmのフィルム断面を500倍に拡大した顕微鏡写真を示したもので、図4より、空孔2の径は30μm以下の球状に形成されていることが確認できる。
【0065】
よって、空孔径Dが絶縁層厚さt(=100μm)に対して、D<1/2tであることが確かめられた。
【0066】
以上、実施例1〜7及び比較例1〜6に説明したとおり、紫外線硬化型樹脂組成物中の親水性モノマの比率を10mass%以上とすることにより、含水吸水性ポリマを分散させ含水率30mass%以上においても製膜性に優れたものが得られる。
【0067】
上述の実施の形態では、多孔質膜被覆電線の絶縁層の例で説明したが、本発明の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物により得られる多孔質物(発泡状物)は、緩衝材、衝撃吸収フィルム(シート)、光反射板などへの利用もできる。
【0068】
また、紫外線硬化型樹脂組成物であることから、異形状物表面に多孔質層の形成ができる。
【符号の説明】
【0069】
1 絶縁層
2 空孔
3 導体
4 スキン層又は被覆層
5 シールド線又はシールド層
6 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型樹脂組成物に、予め吸水させ膨潤させた含水吸水性ポリマを分散させると共に、前記紫外線硬化型樹脂組成物に、少なくとも1種以上の親水性モノマを10mass%以上添加したことを特徴とする含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
含水率が30mass%以上となるように含水吸水性ポリマを分散させる請求項1記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
親水性モノマが、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートから選ばれる1種以上の親水性モノマを用いる請求項1又は2記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
含水吸水性ポリマは、粒径(≒形成空孔径)が30μm以下に処理されているものを用いる請求項1〜3いずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を架橋硬化した後、加熱により水を除去して形成したことを特徴とする多孔質物。
【請求項6】
前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項5に記載の多孔質物。
【請求項7】
請求項1〜4いずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を、導体の外周に被覆し、該樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた樹脂組成物を加熱して樹脂組成物中の水分を除去して絶縁層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
【請求項8】
前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空孔率が20%〜60%である請求項7に記載の絶縁電線。
【請求項9】
前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項7に記載の絶縁電線。
【請求項10】
請求項7〜9いずれかに記載の絶縁電線の外周にスキン層を設けたことを特徴とする絶縁電線。
【請求項11】
請求項7〜10いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けたことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載の含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物を導体の外周に被覆し、該樹脂組成物を硬化させて絶縁層を形成させた後、加熱して絶縁層中の前記含水吸水性ポリマの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項13】
前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項12に記載の絶縁電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−74311(P2011−74311A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229718(P2009−229718)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】