説明

吸気冷却装置を備えたコンバインドサイクルプラント及びその運転方法,制御方法

【課題】出力向上と熱効率向上を簡単な設備で両立できるコンバインドプラント及びその運転方法、制御方法を提供する。
【解決手段】圧縮機1と、圧縮機1からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器2と、燃焼器2からの燃焼ガスにより回転駆動するタービン3と、タービン3を回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラ4と、排熱回収ボイラ4で蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービン5と、蒸気タービン5を回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器11と、を備えたコンバインドサイクルプラント00において、圧縮機1の吸気を冷却するために、冷却水を循環させるポンプ10と、この冷却水と圧縮機吸気とを熱交換させる熱交換器と、この熱交換器から供給される冷却水を蒸気と水に分離する気液分離器9を有する吸気冷却装置101を備え、気液分離器9で分離された蒸気を蒸気タービン5に供給する系統を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの圧縮機へ流入する吸入空気を冷却するための吸気冷却装置を備えた、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクルプラント及びその運転方法,制御方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
コンバインドサイクルプラントは、例えば特開平11−287132号公報には、圧縮機入口に供給される吸気に液滴を噴霧し、圧縮機に入る吸気の温度を低下させ、その液滴を圧縮機内で気化させることでガスタービンの出力を向上させる技術が開示されている。また、例えば特開平6−26674号公報には、圧縮機の吸気ダクト内に蒸発伝熱管を設け、蒸発潜熱で空気を冷却するとともに、蒸発した蒸気を気液分離ドラムから凝縮器へ導入し、凝縮した水を再び気液分離ドラムへ戻す圧縮機の吸気冷却装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−287132号公報
【特許文献2】特開平6−26674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された、コンバインドサイクルプラントのガスタービン圧縮機の吸気に水噴霧を用いる方法では、空気の冷却を水の蒸発潜熱によっており、噴霧した水を圧縮機内で完全に蒸発させる必要があるため、吸気温度の減温度幅が小さく十分な冷却効果が得られない。そして、圧縮機の吸気部で水噴霧を増加することで、液滴が完全に蒸発されずに、液滴が圧縮機内に導入される場合がある。液滴が圧縮機内に導入されると、圧縮機の翼に液滴が衝突して、エロージョンを引き起こす恐れがある。さらに、圧縮機へ液滴が導入されると、圧縮機で吸気される空気内にダストがある場合は液滴によってダストが翼に付着しやすくなり、翼に付着した汚れによって、圧縮機の性能低下を引き起こす可能性がある。
【0005】
特許文献2に開示された吸気冷却装置では、蒸発伝熱管で圧縮機吸気空気から熱を奪い水から相変化した水蒸気は、気液分離器から凝縮器へ導入され、凝縮器で凝縮され水へ戻される。この吸気冷却装置は凝縮器を含むため、装置が大型化する。また、圧縮機吸気空気から奪った熱である蒸発潜熱を凝縮器で奪っているため、熱効率の点では不利である。
【0006】
本発明の目的は、出力向上と熱効率向上を簡単な設備で両立できるコンバインドプラント及びその運転方法、制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンと、該タービンを回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器と、を備えたコンバインドサイクルプラントにおいて、前記圧縮機の吸気を冷却するために、冷却水を循環させるポンプと、前記冷却水と前記圧縮機吸気とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器から供給される冷却水を蒸気と水に分離する気液分離器を有する吸気冷却装置を備え、前記気液分離器で分離された蒸気を前記蒸気タービンに供給する系統を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、発電出力と効率に優れたコンバインドサイクルプラントを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
火力発電プラントにおけるガスタービンは、空気(大気)を吸入して圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された空気と燃料とを混合燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器、燃焼器で生成された高温高圧燃焼ガスにより回転動力を得るタービンから構成される。火力発電プラントには、熱効率を向上させるために、ガスタービンの排ガスのエネルギーを排熱回収ボイラで回収し、排熱回収ボイラで発生した蒸気を蒸気タービンの駆動に利用した、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合サイクルとしてコンバインドサイクルプラントがある。
【0010】
ガスタービンにおいて一般的に用いられる体積流量一定の定回転数の圧縮機では、夏場など吸気温度が高くなった場合、空気密度が小さくなり吸入空気の質量流量が低減するため、これに合わせて燃焼器での燃料流量も低減せざるをえない。つまり圧縮機の吸気温度が高ければガスタービンの出力は低下する。
【0011】
本発明の実施形態では、圧縮機の吸気冷却装置に、蒸発伝熱管と気液分離機及び循環ポンプを備えている。そして水を冷却媒体とする吸気冷却装置を用い、さらに、吸気冷却装置で発生した蒸気を蒸気タービンの動力として利用した。これにより、ガスタービン,蒸気タービンの出力増加を図りつつ、吸気冷却装置のシンプル化,コンパクト化を実現した。本発明の実施形態ではまた、蒸発伝熱管を通じて圧縮機吸気空気から熱を奪い水から相変化した水蒸気を、凝縮器で蒸発潜熱を奪って水に戻すのではなく、その蒸発潜熱の熱エネルギーを蒸気タービンで有効利用する。この構成により、コンバインドプラントの出力増加と熱効率向上を両立することができる。
【0012】
図2を用い、コンバインドサイクルプラントを説明する。図2は、コンバインドサイクルプラント00の系統図を示す。ガスタービン0は、大気から取り入れた空気51を圧縮し圧縮空気52を生成する圧縮機1と、この圧縮機1からの圧縮空気52と燃料53とを混合燃焼させ、高温高圧の燃焼ガス54を生成する燃焼器2と、この燃焼器2からの燃焼ガス54によって軸動力を得るタービン3とを備えており、タービン3を駆動した燃焼ガス54は、タービン3から排気ガス55として排出される。
【0013】
このようなガスタービン0の単体の効率は30%余りであり、排気ガス55の温度は
500〜600℃程度である。この排気ガス55のエネルギーを排熱回収ボイラ4で回収し、このエネルギーで水を蒸気に相変化させ、発生した蒸気で蒸気タービン5を駆動させ発電機6で電気エネルギーに変換するといった、ガスタービン0と蒸気タービン5を組み合わせたコンバインドサイクルプラント00により、プラント全体として効率を向上させることができる。なお、燃焼器2で用いる燃料53には、天然ガスの他、天然ガスを主成分とする都市ガス、或いは灯油や軽油,A重油などを用いてもよい。
【0014】
このように構成されたコンバインドサイクルプラント00においても、夏場など、圧縮機の吸気温度が高い場合には空気の密度は小さく、圧縮機吸入空気の質量流量が低減する。このため、燃焼器での燃料流量も低減せざるをえず、ガスタービン0の出力、ひいてはコンバインドサイクルプラント00の出力が低下する。そこで、夏場におけるガスタービンの出力増加のために、圧縮機1の吸入空気を冷却する吸気冷却装置が要求される。
【0015】
(比較例)
図3は、圧縮機の吸気冷却装置102に冷凍機を用いたガスタービンシステムを示す。
【0016】
圧縮機1の入口の吸気ダクト7内に設置された対向流熱交換器18には水が供給される。熱交換器18では水が圧縮機の吸気空気51から熱を奪って蒸発し、圧縮機吸気空気51を冷却する。そして、発生する飽和蒸気はモータ15によって駆動される圧縮機14で断熱圧縮され、その結果、温度が上昇して吸気冷却装置102の外部環境より高温の加熱蒸気となる。この蒸気は、凝縮器19において、凝縮器19に供給される冷媒を介して外部環境に熱を放出し、それによって蒸気自身は冷却され凝縮し飽和液となる。この飽和液は膨張弁16を通過することで圧力が低下し、液の飽和温度も低下して再び熱交換器18に戻り、循環する。
【0017】
なお、冷凍機に用いられる冷媒の温度範囲は、一般的に大気温度以下であるため、凝縮器19の冷媒としてはフレオン系のものやアンモニアなどを用いる。
【0018】
このような、冷凍機を用いた吸気冷却装置102は、圧縮機14,凝縮器19,膨張弁16、そして凝縮器19で飽和蒸気を凝縮させるための冷媒供給系統が必要となるため、吸気冷却装置102が大型となりコストも高くなる。また、圧縮機の吸気空気51から熱を奪って蒸発した蒸気の蒸発潜熱は、凝縮器19を介して外部環境へ放出されるため、エネルギーの有効利用がなされない。
【0019】
(実施例1)
図1を用い、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例であるコンバインドサイクルプラントを示す。本実施例のコンバインドサイクルプラントは、図2で示したコンバインドサイクルプラントに、吸気冷却装置101と、蒸気圧縮機31を加えたものである。
【0020】
本実施例の吸気冷却装置101は、ガスタービン圧縮機1の吸気ダクト7内の熱交換器である蒸発伝熱管8,気液分離器9および循環ポンプ10から構成される。冷却媒体として水を用いる。吸気ダクト7内に設けられた蒸発伝熱管8は圧縮機吸気空気51の流れと対向させて設置される。循環ポンプ10によって供給される循環水63は、真空に近い蒸発伝熱管8内で吸気空気51から熱を奪って蒸発し、気液分離器9へ導入される。気液分離器9で循環水63は飽和蒸気64と水63に分離され、分離された水63は、循環ポンプ10により蒸気伝熱管8に導入され、吸気空気51の冷却に使用される。ここで、循環ポンプ10は、蒸発伝熱管8での圧損を考慮して、多少高めの圧力で循環水を供給する。
【0021】
一方、気液分離器9で発生した飽和蒸気64は、蒸発潜熱を保持したまま配管21を介して蒸気圧縮機31へ供給される。蒸気圧縮機31で昇圧された飽和蒸気64は、コンバインドサイクルプラント00を構成する蒸気タービン5へ配管22を介して送られる。蒸気タービン5へ送られた飽和蒸気64は、排熱回収ボイラ4で生成された、蒸気タービン5内を流れる蒸気と混合し、蒸気タービンの膨張に利用され、最終的に復水器11で水となる。
【0022】
上記吸気冷却系統において、気液分離器9には、常温水を外部から供給可能な外部供給系統61と、復水器11には、復水器11で飽和蒸気の蒸発潜熱を奪った後、外部へ排水可能な外部排水系統62が配設されている。これにより、気液分離器9で蒸発し、蒸気圧縮機31を介して蒸気タービン5に送られた飽和蒸気は、復水器11で蒸発潜熱を奪われ、外部排水系統から排水される。この排水された分の水は、気液分離器9に設置された外部供給系統61から供給され、システムの流量バランスが保持されている。
【0023】
このような吸気冷却装置101を用いることで、夏場のガスタービンの出力を増加させることが可能となり、また、吸気冷却によって得られた蒸発潜熱を保持した飽和蒸気を蒸気タービン5で有効利用することで、コンバインドサイクルの発電出力増加と効率向上が達成される。本実施例における吸気冷却装置101は、蒸発伝熱管8,気液分離器9,循環ポンプ10から構成されており、従来の冷凍機などの凝縮器19,圧縮機14および駆動モータ15,膨張弁16といった装置が不要となるため、吸気冷却装置101のコンパクト化と低コスト化を達成することができる。また、水の蒸発潜熱を利用した熱交換器であるため、水の顕熱を利用した熱交換器に比べて伝熱面積を小さくすることができ、熱交換器自体のコンパクト化も可能である。そして、この蒸発伝熱管8内の循環媒体に液体である水を用いることで、気液二相による吸気冷却により、気体だけの熱交換に対して熱交換性能が向上するため、熱交換器をさらにコンパクトにすることができる。
【0024】
また、蒸発伝熱管8を用いた吸気冷却のため、水噴霧で冷却する方式とは異なり、液滴が完全に蒸発されずに圧縮機内に導入されるために圧縮機の翼に液滴が衝突してエロージョンを引き起こす可能性や、圧縮機で吸気される空気内のダストが液滴によって翼に付着しやすくなることによる圧縮機の性能低下を引き起こす可能性がほとんどなく、信頼性を向上することができる。
【0025】
例えば、大気温度が40℃のとき、吸気冷却装置101での潤滑水の温度を15℃に設定して吸気冷却すれば、圧縮機1の入口での空気温度を15℃近くまで冷却することができる。そして、ほぼ真空に引かれた蒸発伝熱管8内で循環水は15℃で沸騰しながら循環ポンプ10により循環され、気液分離器9で飽和蒸気64と水とに分離される。気液分離器9内の温度,圧力はほぼ一定に保たれている。この温度を越える高温の水が流入しても、その水の一部が蒸発し、蒸発潜熱の形で水の熱を奪うことにより気液分離器9内の温度は保たれる。
【0026】
温度15℃における飽和蒸気圧は12.8 トールであり、蒸気タービンの低圧タービンにおける最終段の出口における真空度は、約30〜35トール程度である。したがって、圧力比が3.0 程度より大きな蒸気圧縮機31で昇圧することにより、飽和蒸気64を蒸気タービン5に導入し、蒸気タービン5の出力をアップさせることができる。これにより、コンバインドサイクルプラントの発電出力の増加と効率向上を達成できる。
【0027】
また、吸気冷却装置101は冷却媒体に水を用いているため、冷却媒体温度を最低0℃まで低下させることが可能である。そのため、より高い圧縮機吸気温度低減効果を得ることができる。ただし、冷却媒体温度を下げると飽和蒸気圧が低くなるため、蒸気タービン5へ供給される飽和蒸気64を昇圧させるための圧縮機の圧力比を増加させる必要がある。
【0028】
なお、気液分離器9から発生した飽和蒸気64を昇圧する蒸気圧縮機31は、ターボ圧縮機だけでなく、レシプロ圧縮機でもよい。
【0029】
図4を用い、本実施例の吸気冷却装置の制御例を示す。気液分離器9に供給される水
60は水供給装置500から供給され、その供給路間には供給水の温度をコントロールできる温度調節装置502が設置されている。配管21の途中には、気液分離器9から蒸発した飽和蒸気64の蒸気流量を計測できる計測装置503が設置されている。また、この計測装置503により得られた蒸気流量から供給水の温度をコントロールする制御装置
501を備える。
【0030】
吸気冷却装置101の気液分離器9で分離される飽和蒸気64の量は、ガスタービン圧縮機1の吸気ダクト7に流入する大気の温度変化により変動する。例えば、吸気ダクト7に流入する大気が想定する大気温度より高温になると飽和蒸気64の量は増え、想定する大気温度より低温になると、蒸気量は減る。この蒸気量の変動は、蒸気タービン5,蒸気圧縮機31の双方にとって好ましくない。
【0031】
飽和蒸気64の量の変動が蒸気タービン5に与える影響は以下の通りである。蒸気タービン5は、蒸気量が増えると出力増加に繋がるが、蒸気タービン5内でタービン翼へ噴射する蒸気噴射量が増加し、蒸気タービンの主流の流れを必要以上に乱して翼の損失を増加させる恐れがある。また、蒸気を供給する配管20は、想定された蒸気量に対して信頼性を確保できるように設計されているため、蒸気流量が増えることで配管の信頼性を低下させる可能性がある。一方、蒸気量が減ると、得られる出力が想定量に満たない可能性がある。
【0032】
次に、飽和蒸気64の量の変動が蒸気圧縮機31に与える影響について述べる。図5は蒸気圧縮機31の蒸気流量に対する圧力比を示す。図6は、蒸気圧縮機31の圧力比に対する効率を示す。気液分離器9で発生する飽和蒸気64の量が増加すると蒸気圧縮機31へ流入する蒸気量が増加するため、蒸気圧縮機31の効率が低下し、システム全体としても効率が低下する。蒸気量が減少すると、蒸気圧縮機31へ流入する蒸気量は減少し、蒸気圧縮機31の圧力比は増加し、効率は低下する。圧力比が増加すると圧縮機のサージマージンは減少し、圧縮機の信頼性の低下につながる。
【0033】
サージマージンとは、サージング現象が発生する圧力比と実際の運転点の圧力比との間の余裕を意味する。サージング現象とは、回転機械が強い音響を伴う圧力と流れの激しい脈動と機械の振動を引き起こして運転が不安定になる現象のことである。サージング現象は、圧縮機の圧力比を上昇していくと、ある圧力比において突然発生する。そのため、圧縮機はサージング現象の発生による信頼性の低下を抑制するために、充分な量のサージマージンをとって設計されている。
【0034】
従って、蒸気タービン5の出力と信頼性や、蒸気圧縮機31の効率と信頼性を考慮すると、本実施例のガスタービンプラントを運転する際には、気液分離器9から蒸発する飽和蒸気64の蒸気量の変動を抑えるように制御することが望ましい。
【0035】
この制御は制御装置501によりなされる。制御装置501は、蒸気流量計測装置503からの蒸気量情報から供給水60の所望の温度を判断し、供給水60が所望の温度となるように温度調節装置502を制御する。供給水60の所望の温度とは、気液分離器9における蒸気64の発生量が本実施例のコンバインドサイクルプラントにおける設計値となる温度を意味する。このように、大気温度が高くなった場合は供給水60の温度を低下させるように制御することで飽和蒸気64の量の増加を抑制し、大気温度が低くなった場合には供給水60の温度を上昇させるように制御することで蒸気量の減少を抑制する。本実施例のコンバインドサイクルプラントは、このようにしてシステムの出力増大と高信頼性を達成している。
【0036】
(実施例2)
図7を用い、本発明の別の実施例を説明する。本実施例は、復水器11から排熱回収ボイラ4へ戻る経路とは別経路である冷却水供給経路13を形成し、冷却水供給ポンプ12により吸気冷却装置101の気液分離器9に復水器11からの水を供給できる系統を有していることを特徴とする。
【0037】
このような構成にすることで、気液分離器9で蒸発し、蒸気圧縮機31を介して蒸気タービン5に送られた飽和蒸気64は、復水器11で凝縮され、冷媒供給ポンプ12により再び気液分離器9へ供給されるため、システムの流量バランスを保持することができ、水の少ない地域においても運用可能となる。
【0038】
例えば、復水器11の出口温度が30℃程度で、気液分離器9の供給水温度を15℃程度とした場合、通常は配管の放熱により15℃程度まで温度を低減させることが理想であるが、配管の放熱だけで温度を十分に低減することが不可能なときは、冷却水供給経路
13に冷却装置を設けてもよい。
【0039】
(実施例3)
図8を用い、本発明の別の実施例を説明する。本実施例のコンバインドサイクルプラントは、実施例1のコンバインドサイクルプラントに、蒸気圧縮機31を設けていないプラントである。
【0040】
復水器11における蒸気の凝縮には海水が利用されることが多い。そのため、蒸気タービン5を構成する低圧タービンの最終段における温度,真空度は、例えば利用可能な海水の温度に影響され、温度は30〜33℃程度、真空度は約30〜35トール程度に設定される。寒冷地などでは、温度は25℃程度で、排気真空度は約25トール程度に設定される。
【0041】
蒸気タービン5は、排気真空度を上げれば性能が向上する。そのためには、復水器11の冷却媒体の温度を下げる、または復水器11の性能を向上させることが有効である。蒸気タービン5の排気真空度を上げることができれば、配管22を介して蒸気タービン5へ供給される蒸気は、より圧力が低いものでも蒸気タービン5の出力増加に利用可能となり、本実施例で示すように、吸気冷却装置101の気液分離器9から発生する飽和蒸気64を蒸気圧縮機31で昇圧しないで、直接で蒸気タービン5へ導入する構成が実現できる。
【0042】
このような構成とすることで、蒸気圧縮機31が不要となり低コスト化と補機系統の簡略化も可能となる。気液分離器9からの蒸気の圧力が12.8 トールとすると、本実施例では、低圧タービン出口温度は15℃以下、排気真空度は12.8 トール以下にする必要がある。このような条件では、低圧タービンの後段側では湿り蒸気となり、翼列に液滴が衝突することで、翼のエロージョンが発生する可能性がある。したがって、翼材料には、エロージョンに強い材料を選定する必要がある。
【0043】
本実施例では、蒸気タービン5の排気真空度を増加することで蒸気圧縮機31をその系統に配置せずに省略することができる。また、蒸気圧縮機31の省略方法として次の方法も考えられる。例えば、気液分離器9から発生する飽和蒸気64の圧力を、蒸気タービン5の後段側よりも高圧とすれば、蒸気圧縮機31を配置しなくても飽和蒸気64を蒸気タービン5の出力増加に利用できる。
【0044】
以上2つの手法で説明した通り、実施例1のコンバインドサイクルプラントから蒸気圧縮機31を省略し、蒸気タービン5の出力を高いものとするためには、気液分離器9で発生する飽和蒸気64の圧力を、蒸気タービン5の後段側の圧力よりも高圧になるように構成すればよい。そのためには、例えば気液分離器9の温度を高く設定することで、飽和蒸気64の圧力は高くする方法がある。なお、ここでいう蒸気タービン5の後段側の圧力とは、蒸気タービン5に設けられた蒸気供給口のうち最も下流側(後段側)の供給口における蒸気の圧力を意味する。
【0045】
次に、飽和蒸気64を蒸気タービン5へ噴射する方法について示す。
【0046】
図9は、本実施例の蒸気タービン5のシステム構成を示す。蒸気タービン5は、高圧タービン71,中圧タービン72,低圧タービン73から構成され、排熱回収ボイラ4から発生する蒸気81は、高圧タービン71,中圧タービン72,低圧タービン73の順に導入され、それぞれのタービンで膨張される。低圧タービン73から排出された湿り蒸気
84は復水器11に供給される。気液分離器9から発生する飽和蒸気64は、蒸気タービン5との圧力差を考慮して、できるだけ低圧な低圧タービン73の後段側へ噴射させることが望ましい。ただし、蒸気圧縮機31を充分に高圧力比化させて飽和蒸気64を昇圧させれば低圧タービン73の中間段付近に噴射させてもよい。また、スラント角の大きいケーシング76に固定された静翼74と、ロータに植設された動翼75から構成される低圧タービン73の静翼74の前方に噴射するのが望ましい。
【0047】
図10は低圧タービン73の静翼74周りの拡大図を示す。図9を用いて静翼74の前方に飽和蒸気64を噴射したときの効果を説明する。低圧タービン73の後段側では、ケーシング76のスラント角が大きくなるため、静翼側壁の境界が発達し、側壁境界層の低エネルギー流体が蓄積する。これにより、二次流れ損失によってタービン効率が低下する。また、低圧タービン73の後段側の蒸気は、湿り蒸気となっており、静翼側壁に水滴が堆積して、翼のエロージョンを引き起こす。そこで、低圧タービン73の側壁から蒸気噴射することで、側壁境界層の低エネルギー流体を活性化させ、二次流れ損失を低減させることが可能となり、タービン効率向上を実現できる。また、この蒸気噴射により、側壁に堆積していた水滴が飛散されることで翼のエロージョンを低減でき、タービン翼の信頼性も向上できる。
【0048】
図11を用い、本実施例の吸気冷却装置の制御方法を示す。気液分離器9と蒸気タービン5をつなぐ配管20に蒸気流量計測装置が設置されていること以外は図10と同様である。前述の通り、気液分離器9で発生した蒸気量の変動により、蒸気タービン5の出力や信頼性は悪化する。本実施例のコンバインドプラントでは、蒸気流量計測装置503からの情報をもとに制御装置501が温度調節装置502をコントロールして供給水60の温度を調整する制御を行うことでこの悪化を抑制する。
【0049】
(実施例4)
図12を用い、本発明の他の実施例を説明する。本実施例のコンバインドプラントは、吸気冷却装置101の気液分離器9から発生する飽和蒸気64を、蒸気圧縮機31で昇圧し、さらに熱交換器25で所望の温度に調整させ、ガスタービンを構成するタービン3の高温部品の冷却に利用することを特徴としている。ここで、所望の温度とは、タービン3の高温部品の冷却に要求される温度である。なお、温度調整が必要ない場合は、熱交換器25を省略することができる。
【0050】
タービン3の高温部品の冷却方法には、圧縮機1から抽気された空気を利用する方法や、蒸気タービン5からの蒸気で冷却する方法がある。本実施例では、図12に示すように圧縮機1の吸気冷却により発生した飽和蒸気64をタービン3の高温部の冷却に利用している。そのため、圧縮機1からの抽気や蒸気タービン5からの蒸気を冷却に利用する場合と比べ、圧縮機1や蒸気タービン5の作動媒体量の低減を抑制することが可能となり、ガスタービンおよびコンバインドサイクルプラントの効率向上させることができる。また、蒸気は空気より熱伝達率が高いため、冷却に蒸気を用いていることで冷却効率も向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図2】比較例であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図3】比較例であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図4】本発明の実施例1であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図5】本発明の蒸気圧縮機の蒸気流量に対する圧力比の傾向を示す。
【図6】本発明の蒸気圧縮機の圧力比に対する効率の傾向を示す。
【図7】本発明の実施例2であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図8】本発明の実施例3であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図9】本発明の蒸気タービンのシステム構成図を示す。
【図10】本発明の低圧タービンの静翼周りの拡大図を示す。
【図11】本発明の実施例3であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【図12】本発明の実施例4であるコンバインドプラントシステムの構成図を示す。
【符号の説明】
【0052】
00…コンバインドサイクルプラント、0…ガスタービン、1…圧縮機、2…燃焼器、3…タービン、4…排熱回収ボイラ、5…蒸気タービン、7…吸気ダクト、8…蒸発伝熱管、9…気液分離器、10…循環ポンプ、11…復水器、12…ポンプ、13…経路、
14…圧縮機、15…モータ、16…膨張弁、18,25…熱交換器、20,21,22…配管、31…蒸気圧縮機、51…空気、52…圧縮空気、53…燃料、54…燃焼ガス、55…排気ガス、60…供給水、61,62…系統、63…水、64…蒸気、71…高圧タービン、72…中圧タービン、73…低圧タービン、74…静翼、75…動翼、76…ケーシング、81,84…蒸気、101,102…吸気冷却装置、500…水供給装置、502…温度調節装置、503…計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンと、該タービンを回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器と、を備えたコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記圧縮機の吸気を冷却するために、冷却水を循環させるポンプと、前記冷却水と前記圧縮機吸気とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器から供給される冷却水を蒸気と水に分離する気液分離器を有する吸気冷却装置を備え、前記気液分離器で分離された蒸気を前記蒸気タービンに供給する系統を備えることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記気液分離器で分離された蒸気の圧力が、前記蒸気タービンの後段側の圧力よりも高くなるように構成されていることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項3】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記気液分離器で分離された前記蒸気を前記蒸気タービンに供給する系統に、前記気液分離器で分離された蒸気を昇圧する蒸気圧縮機を設けたことを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項4】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記吸気冷却装置に供給する水の温度を調節可能な調節手段を設けることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項5】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記復水器で凝縮された水を、前記気液分離器に供給する系統を備えることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項6】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記気液分離器で分離された蒸気を前記蒸気タービンに供給する系統は、前記気液分離器で分離された蒸気を、前記蒸気タービンの側壁付近から静翼の側壁側へ向かって噴射するように構成されていることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項7】
圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンと、該タービンを回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器と、を備えたコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記圧縮機の吸気を冷却するために、冷却水を循環させるポンプと、前記冷却水と前記圧縮機吸気とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器から供給される冷却水を蒸気と水に分離する気液分離器を有する吸気冷却装置を備え、前記気液分離器で分離された蒸気を前記タービンの高温部に供給する系統を備えることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項8】
圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンと、該タービンを回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器と、を備えたコンバインドサイクルプラントの運用方法において、
前記圧縮機の吸気を冷却する冷却水を循環させ、前記冷却水と前記圧縮機吸気とを熱交換させ、熱交換後の冷却水を蒸気と水に分離し、分離された蒸気を前記蒸気タービンに供給することを特徴とするコンバインドサイクルプラントの運用方法。
【請求項9】
圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンと、該タービンを回転駆動させた燃焼ガスの熱で水を蒸発させて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで蒸発した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転駆動させた蒸気を回収して凝縮する復水器と、を備えたコンバインドサイクルプラントの制御方法において、
前記圧縮機の吸気を冷却する冷却水を循環させ、前記冷却水と前記圧縮機吸気とを熱交換させ、熱交換後の冷却水を気液分離器によって蒸気と水に分離し、前記気液分離器に圧縮機の吸気を冷却する系統外からの水を供給し、前記気液分離器で分離された蒸気を前記蒸気タービンに供給する際に、前記気液分離器で分離された蒸気量に基づいて前記気液分離器へ供給される前記系統外からの水の温度を調節することを特徴とするコンバインドサイクルプラントの制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−270700(P2007−270700A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96368(P2006−96368)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】