説明

吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びにそれらの利用

【課題】内部架橋剤の存在下で解砕を行いながら重合を行い、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合にも、未乾燥物が低減された吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂並びにその利用方法及び利用物を提供する。
【解決手段】カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、1分子中にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤(A)と、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)との存在下で解砕を行いながら重合させる重合工程と、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程とを含む吸水性樹脂の製法であって、(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びにそれらの利用に関するものであり、特に、内部架橋剤の存在下で解砕を行いながら重合を行い、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合にも、含水ゲル状架橋重合体が十分細粒化されないことに起因する未乾燥物が低減された吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂は、子供用紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品等の広い用途に利用されている。かかる吸水性樹脂は、通常、カルボキシル基含有不飽和単量体を、内部架橋剤の存在下で重合することにより得られる含水ゲル状架橋重合体を解砕して乾燥しやすい大きさにした後、乾燥、粉砕、分級、表面架橋等の工程を経て最終製品として得られる。
【0003】
かかる吸水性樹脂の製造において、含水ゲル状架橋重合体を解砕する方法としては、解砕手段を有する反応容器内で生成する含水ゲル状架橋重合体の解砕を行いながら重合する方法、解砕を行わずに重合した後解砕機等によって含水ゲル状架橋重合体の解砕を行う方法、両方法を併用する方法が用いられている。
【0004】
中でも解砕手段を有する反応容器内で生成する含水ゲル状架橋重合体の解砕を行いながら重合する方法は、重合後の含水ゲル状架橋重合体をさらに解砕する工程を必要とせず、すぐに乾燥することができるため、効率の面で優れている。
【0005】
このように含水ゲル状架橋重合体の解砕を行いながら重合する方法を用いる場合には、解砕を行わないで重合する場合に得られるゼリー状の含水ゲル状架橋重合体の塊ではなく、細粒化された含水ゲル状架橋重合体が得られる。
【0006】
しかし、近年、吸水性樹脂の吸水特性の観点から、内部架橋剤が多い領域で重合を行う傾向が増している。このように内部架橋剤が多い領域では、得られる含水ゲル状架橋重合体は硬いゲルとなる。そのため、内部架橋剤が多い領域での重合を、解砕手段を有する反応容器内で解砕を行いながら重合する方法で行うと、含水ゲル状架橋重合体がやわらかいゲルである場合のように細粒化が進まず、含水ゲル状架橋重合体の大きいゲルの塊ができてしまう。そのため、得られた含水ゲル状架橋重合体をそのまま乾燥すると、大きいゲルの塊が未乾燥の含水ゲル状架橋重合体(以下、本明細書において「未乾燥の含水ゲル状架橋重合体」を「未乾燥物」と称することがある。)として残るという問題が生じている。
【0007】
かかる未乾燥物はゴム状で非常に大きな粘着力を有しているために、粉砕工程における粉砕機に未乾燥物が付着して粉砕機の稼動を停止させるトラブルが発生し易くなる等、加工性に問題がある。それゆえ未乾燥物は極力低減する必要がある。
【0008】
解砕手段を有する反応容器内で解砕を行いながら重合する方法に限られず一般的に、過剰な乾燥を行わずに、未乾燥物の問題を解決する方法としては、乾燥物の粒子よりも体積や重量が大きくなっている未乾燥物の粒子を分級等により分離除去し、未乾燥物を再利用する方法が知られている。
【0009】
なお、上記問題は、特に内部架橋剤が多い領域での重合の場合に顕著であるが、内部架橋剤として、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤と、1分子中にカルボキシル基と反応しうる官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤とを一定の割合で併用する方法についてはいくつかの報告がある(例えば、特許文献1ないし6等参照。)
例えば、特許文献1では、加圧下吸収倍率に優れ、水可溶分量の少ない吸水性樹脂を製造することを目的として、一分子中に不飽和基を2個以上有する化合物と、1分子中にカルボキシル基と反応しうる官能基としてエポキシ基を少なくとも2個以上有する化合物とを重合時に特定比率で使用する技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献2では、高いゲル床透過性(すなわち、通液性)および低い吸収容量を有する吸水性樹脂を製造することを目的として、ポリビニル第1架橋剤およびヒドロキシル含有第2架橋剤を含む架橋剤を重合時に使用する技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献3では、吸水時に発音する吸水性樹脂を提供することを目的として、重合時に、一分子中に不飽和基を2個以上有する化合物と、アルキレンカーボネートとを使用する技術が開示されている。
【0012】
また、特許文献4ないし6では、吸収性能の向上を目的として、アクリル酸アンモニウム塩を使用し、一分子中に不飽和基を2個以上有する内部架橋剤とグリセリン等の縮合型架橋剤とを使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−188602号公報(1996年7月23日公開)
【特許文献2】特表2003−518150号公報(2003年6月3日公開)
【特許文献3】特開平6−200168号公報(1994年7月19日公開)
【特許文献4】特開2005−200630号公報(2005年7月28日公開)
【特許文献5】特開2006−199805号公報(2006年8月3日公開)
【特許文献6】特開2006−225455号公報(2006年8月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、吸水性樹脂の製造にあたり、内部架橋剤が多い領域で、解砕を行いながら重合を行う場合に、細粒化されずに残る大きなゲルの塊に起因する未乾燥物の問題を解決する方法としては、従来は、さらに含水ゲル状架橋重合体を解砕機で解砕するか、上述したように未乾燥物の粒子を分離する方法しかなかった。
【0015】
生成する含水ゲル状架橋重合体の解砕を行いながら重合を行う場合に、内部架橋剤が多い領域であっても、大きな塊が発生せず、十分な細粒化ができるような重合方法があれば、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行なう工程や、未乾燥物を分離する工程を必要とせず、吸水性樹脂の生産の効率を高めることが可能となる。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部架橋剤の存在下で解砕を行いながら重合を行い、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合にも、含水ゲル状架橋重合体が十分細粒化されないことに起因する未乾燥物が低減された吸水性樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、上記課題を解決するために、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)との存在下で、解砕を行いながら重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程とを含む吸水性樹脂の製造方法であって、上記(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であることを特徴としている。
【0018】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個または3個有することが好ましい。
【0019】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる上記内部架橋剤(B)の上記官能基は、カルボキシル基と、110℃以上で反応することが好ましい。
【0020】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記官能基はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記内部架橋剤(B)の分子量は、40以上500以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記乾燥工程は、該乾燥工程で得られた吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、1.0×10−5mol/g以下となるように乾燥を行うことが好ましい。
【0024】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、さらに、上記乾燥工程で得られた吸水性樹脂を表面架橋剤と混合し、加熱して表面架橋を行う表面架橋工程を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を、表面架橋前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)より、3g/g以上低下させ、且つ、遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上となるように表面架橋を行うことが好ましい。
【0026】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下となるように表面架橋を行うことが好ましい。
【0027】
本発明に係る吸水剤の製造方法は、上記吸水性樹脂と通液性向上剤とを含む吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂の製造方法を用い、さらに上記吸水性樹脂に通液性向上剤を添加する工程を含むことが好ましい。
【0028】
本発明に係る吸水性樹脂は、上記課題を解決するために、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合して得られ、内部架橋構造を有し、且つ、表面架橋された吸水性樹脂であって、上記内部架橋構造に、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)とを含んでいるとともに、(A)の含有量は、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であることを特徴としている。
【0029】
本発明に係る吸水性樹脂では、上記内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個または3個有することが好ましい。
【0030】
本発明に係る吸水性樹脂では、上記官能基はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る吸水性樹脂では、上記内部架橋剤(B)の分子量は、40以上500以下であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る吸水性樹脂では、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る吸水性樹脂は、遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る吸水性樹脂では、上記内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下であることが好ましい。
【0035】
本発明に係る吸水剤は、上記吸水性樹脂と通液性向上剤とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、以上のように、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)との存在下で、解砕を行いながら重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程とを含む吸水性樹脂の製造方法であって、上記(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であるので、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合でも、含水ゲル状架橋重合体が十分細粒化されないことに起因する未乾燥物が低減された吸水性樹脂を製造することができるという効果を奏する。
【0037】
また、(B)/(A)が大きい場合、すなわち、後の乾燥工程で反応する内部架橋剤(B)を多く使用する場合には、乾燥工程でどれだけの内部架橋剤(B)が反応するかをコントロールすることが難しいため、内部架橋度の異なる吸水性樹脂が生成し、得られる吸水性樹脂の吸水容量の指標となる遠心分離機保持容量CRCにばらつきがでてしまう。(B)の(A)に対する使用量を限定する上記構成により、CRCのばらつきが安定し、それにより安定した性能の吸水性樹脂が製造できる。
【0038】
さらに、上記構成により、得られる吸水性樹脂は、ダメージ後の加圧下吸収力(AAP)に優れるという効果を奏する。
【0039】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、AAPの測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【図2】図2は、SFCの測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びにそれらの利用について説明する。また、本発明における、(a)遠心分離機保持容量(CRC:Centrifuge Retention Capacity)、(b)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP:Absorbency Against Pressure)、(c)食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)、(d)粒子径、(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、後述する実施例に記載する方法によって測定した数値とする。なお、本発明においては、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。
【0042】
(1)本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法とその利用
本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、i)1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、ii)1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)との存在下で、解砕を行いながら重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程とを含む吸水性樹脂の製造方法であり、上記(A)の使用量を、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下とし、且つ、上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下とする。
【0043】
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、さらに、上記乾燥工程で得られた吸水性樹脂を、表面架橋剤と混合し、加熱して表面架橋を行う表面架橋工程を含んでいてもよい。
【0044】
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法を用いて得られた吸水性樹脂に、さらに通液性向上剤を添加して、吸水性樹脂と通液性向上剤とを含む吸水剤を製造する方法も、本発明を利用するものであるので本発明に含まれる。すなわち、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法を用い、さらに上記吸水性樹脂に通液性向上剤を添加する工程を含んでいればよい。
【0045】
以下、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法とその利用について、(1−1)重合工程、(1−2)乾燥工程、(1−3)表面架橋工程、(1−4)吸水性樹脂の製造方法の利用、(1−5)その他の工程の順に説明する。
【0046】
(1−1)重合工程
本工程では、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、i)1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、ii)1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)との存在下で、解砕を行いながら重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る。
【0047】
<重合方法>
本発明において、「解砕」を行うとは、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合する時に重合の進行に伴い生成する含水ゲル状架橋重合体を、続く乾燥工程で乾燥されやすいように細粒化するものであればよい。また「解砕を行いながら」とは、重合の開始から最適な重合時間の終了時までの間の重合時間に同時に解砕を行えばよいが、必ずしも、重合時間全体にわたって解砕を行う必要はない。なお、解砕された含水ゲル状架橋重合体は、一般的な乾燥条件で、未乾燥物となるような大きなゲルの塊が少ないほど好ましい。解砕された含水ゲル状架橋重合体の粒子の平均粒子径は、0.1mm以上5mm以下の範囲内であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下の範囲内であることがより好ましい。また、粒子径が5mm以上の粒子は、全含水ゲル状架橋重合体に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。含水ゲル状架橋重合体の粒子の粒子径または平均粒子径が上記範囲内であれば、乾燥が効率的に行われ、未乾燥物を低減することができるため好ましい。なお、ここで、含水ゲル状架橋重合体の粒子の粒子径は粉砕後の吸水性樹脂の粒子径(後述する(d)粒子径に記載の方法で測定される)と同様に、特定の目開きの篩で分級することによって求められる。また、平均粒子径についても、後述のD50と同様にして求められる。但し、含水ゲル状架橋重合体の分級操作は乾式では困難なため、特開2000−63527号の段落〔0091〕に記載の湿式の分級方法を用いて測定される。
【0048】
なお、本発明において、「解砕」は、解砕した含水ゲル状架橋重合体を乾燥して得られる乾燥物を更に細かく砕いて最終製品とする「粉砕」とは区別される。
【0049】
本発明においては、解砕を行いながら、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合させて含水ゲル状架橋重合体を得ることにより、重合後に解砕機等によって含水ゲル状架橋重合体をさらに解砕する工程を必要としないため、吸水性樹脂の生産効率を高めることが可能となる。
【0050】
上記方法としては、解砕を行いながらカルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合させる方法であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、解砕手段を有する反応容器内で解砕を行いながら重合する方法を挙げることができる。かかる反応容器としては、例えば、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合する時に重合の進行に伴い生成する含水ゲル状架橋重合体に回転攪拌翼の回転により剪断力を与え得るものであることが好ましく、そのために回転攪拌翼が複数であることがより好ましい。
【0051】
上記反応容器としては、例えば、一軸の混練機、一軸の押し出し機、双腕型ニーダー、三軸ニーダー等を挙げることができる。中でも、上記反応容器は、双腕型ニーダーまたは三軸ニーダーであることがより好ましく、双腕型ニーダーであることがさらに好ましい。
【0052】
双腕型ニーダーを使用するに際しては、二本の回転攪拌翼を互いに逆方向に等速または不等速で回転して使用することが好ましい。等速の場合は二本の回転攪拌翼の回転半径は互いに重なり合う部分を有する状態で使用し、不等速の場合は二本の回転攪拌翼の回転半径は互いに重ならない状態で使用する。
【0053】
また、上記回転攪拌翼の形態は特に限定されるものではないが、例えば、シグマ型、S型、バンバリー型、魚尾型等の回転攪拌翼を好適に用いることができる。
【0054】
また、上記反応容器としては、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体(好ましくはその水溶液)の連続供給及び/又は生成する含水ゲル状架橋重合体の連続排出が可能となっている連続式ニーダーも好適に用いることができる。これにより、重合を連続的に行うことが可能となる。また、かかる連続式ニーダーは、複数の回転攪拌軸を有するものであることがより好ましい。
【0055】
上記複数の回転攪拌軸を有する連続式ニーダーとしては、例えば、攪拌翼2本と排出用スクリュー1本とを有する三軸ニーダー(ニーダールーダー);二軸押し出し混練機;二軸押し出し混合機等を挙げることができる。中でも、上記複数の回転攪拌軸を有する連続式ニーダーは、高性能の吸水性樹脂を高生産性で製造するという観点から、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体(好ましくはその水溶液)の連続供給及び生成する含水ゲル状架橋重合体の連続排出が可能な、2つの回転攪拌軸を有するものであって、ピストンフロー性を有する連続式ニーダーであることがより好ましい。例えば、特表2003−514961号や特表2004−511633号に記載されたスイス国リスト社のミキサー型混練機(例えば、ORP250 Contikneterなど)も好適に使用できる。
【0056】
本工程でカルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことも可能であるが、得られる吸水性樹脂の物性面から上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を水溶液とすることによる、水溶液重合を行うことがより好ましい。カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を水溶液とする場合の水溶液(カルボキシル基含有不飽和単量体水溶液)中のカルボキシル基含有不飽和単量体の濃度は水溶液の温度やカルボキシル基含有不飽和単量体によって決まり、特に限定されるものではないが、例えば、予め中和されたカルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体で重合(中和重合法)を行う場合は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。これにより、得られる含水ゲル状架橋重合体を好適に解砕することができる。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0057】
すなわち、重合溶媒としては水だけを用いることが好ましいが、必要により、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の親水性有機溶媒を水に添加して用いてもよい。
【0058】
本工程で、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合するに際して使用される開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤等を用いることができる。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。また、重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、たとえば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸などの還元剤を併用して酸化還元(レドックス)重合を行ってもよい。
【0059】
これらの重合開始剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の物性面から、単量体全体に対して、0.001モル%以上2モル%以下、好ましくは0.01モル%以上0.1モル%以下であることが好ましい。これらの重合開始剤が0.001モル%以上の場合には未反応の残存単量体が十分少なくなるため好ましい。また、一方重合開始剤が2モル%以下である場合には重合の制御を良好に行うことができるため好ましい。なお、ここで、単量体とは、(a)後述する他の単量体またはグラフト用ポリマーを用いない場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体、または、(b)後述する他の単量体またはグラフト用ポリマーを用いる場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体および用いる後述する他の単量体またはグラフト用ポリマーをいう。
【0060】
上記の重合を開始させる際には、上記重合開始剤を使用して開始させることができる。また、上記重合開始剤の他にも、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独で、あるいは上記重合開始剤と併用して用いても良い。
【0061】
重合時の温度は、使用する溶媒の種類にもよるが、0℃以上120℃以下であることが好ましく、10℃以上100℃以下であることがより好ましく、20℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。重合時温度が120℃以下であることにより、重合工程において内部架橋剤(A)による内部架橋のみが進行し、より高い温度で起こる、カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基とカルボキシル基との反応は、本重合工程では実質的に起こらない。それゆえ、含水ゲル状架橋重合体の架橋度が低い状態で解砕を行うことが可能となり、未乾燥物の問題を解決することができる。
【0062】
また、重合時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは、30秒以上60分以下、より好ましくは2分以上40分以下である。重合時間が60分以下であることにより、得られる吸水性樹脂の物性の低下を回避することができるため好ましい。なお、ここで、重合時間とは、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体に重合開始剤を添加した時点から、含水ゲル状架橋重合体を反応容器から取り出すまでの時間をいう。ここで、含水ゲル状架橋重合体を反応容器から取り出す時点、すなわち、重合時間の終了時においては、単量体の転化率が90%以上であることが好ましい。
【0063】
また、本工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の含水率は10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。含水率が上記範囲内であることにより、重合中に解砕することで好適に生成する含水ゲル状架橋重合体を細粒化することが可能となる。また、含水率が60%以下であることにより、後工程である乾燥工程での乾燥に時間を要しすぎず、乾燥を良好に行なうことができるため好ましい。
【0064】
また、本工程では、必要により連鎖移動剤が使用されてもよい。これにより、吸収能が高く、尿に対する安定性に優れる吸水性樹脂を得ることが可能になる。
【0065】
上記連鎖移動剤としては、水または単量体に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜燐酸塩類などを挙げることができる。具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ドデシルメルカプタン、チオグリコール類、チオリンゴ酸、3−メルカプトプロピオン酸、イソプロパノール、次亜燐酸ナトリウム、蟻酸、およびこれらの塩類からなる群から選ばれる1種または2種以上の連鎖移動剤が用いられるが、その効果から次亜燐酸ナトリウムなどの次亜燐酸塩を用いることがより好ましい。
【0066】
上記連鎖移動剤の使用量は連鎖移動剤の種類や使用量、単量体水溶液の単量体濃度にもよるが、全単量体に対して0.001モル%以上1モル%以下であり、好ましくは0.005モル%以上0.3モル%以下である。使用量が0.001モル%以上の場合、遠心分離機保持容量が低くなりすぎないので好ましい。また1モル%以下であることにより水可溶分量が増加することなく、安定性が低下しないので好ましい。
【0067】
<カルボキシル基含有不飽和単量体>
本発明では吸水性樹脂として、吸水特性の面から、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合して得られる吸水性樹脂を製造する。また、アクリロニトリルなど重合後の加水分解によって重合後にカルボキシル基となる基を含有する単量体も本発明ではカルボキシル基含有不飽和単量体とするが、より好ましくは、重合時にカルボキシル基を含有するカルボキシル基含有不飽和単量体が用いられる。
【0068】
重合時にカルボキシル基を含有するカルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。これらカルボキシル基含有不飽和単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合してもよい。
【0069】
上記例示のカルボキシル基含有不飽和単量体のうち、アクリル酸塩系単量体を主成分として含む単量体を用いると、得られる吸水性樹脂の吸水特性や安全性がより一層向上するので好ましい。ここで、アクリル酸塩系単量体とは、アクリル酸、および/またはアクリル酸の水溶性塩類を示す。
【0070】
また、アクリル酸の水溶性塩類とは、中和率が100モル%〜0.1モル%の範囲内、より好ましくは90モル%〜50モル%の範囲内、さらに好ましくは80モル%〜60モル%の範囲内であるアクリル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアンモニウム塩、アミン塩、アルキルアミン塩を示す。上記例示の水溶性塩類のうち、アルカリ金属塩がさらに好ましく、ナトリウム塩およびカリウム塩が特に好ましい。塩を形成させるためのカルボキシル基の中和は、重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。なお、吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率は、未中和のカルボキシル基含有不飽和単量体の量と、重合前、重合途中、および/または重合後に中和に用いた全塩基量とから計算により求めることができる。また、吸水性樹脂中の可溶分量を抽出し滴定により求めてもよい。
【0071】
これらアクリル酸塩系単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。なお、吸水性樹脂の平均分子量(重合度)は、特に限定されるものではない。
【0072】
また、本工程では、カルボキシル基含有不飽和単量体に併用して、本発明の効果を阻害しない程度に他の単量体を共重合させてもよい。
【0073】
併用されるその他の単量体としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの疏水性単量体;2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルホスホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸などの酸基含有単量体、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類およびこれら四級化物(たとえば、アルキルハイドライドとの反応物、ジアルキル硫酸との反応物など);ジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類およびこれら四級化物;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0074】
また、本工程では、カルボキシル基含有不飽和単量体に、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロースエーテル等のグラフト用ポリマーを、本発明の効果を阻害しない程度に重合させてもよい。
【0075】
上記その他の単量体および/またはグラフト用ポリマーを用いる場合には、これらの使用量は、その他の単量体および/またはグラフト用ポリマーと主成分として用いるカルボキシル基含有不飽和単量体との合計量に対して、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜30モル%、さらに好ましくは0〜10モル%、特に好ましくは0〜5モル%、最も好ましくは0〜1モル%の割合である。これにより、最終的に得られる吸水性樹脂および吸水剤の吸水特性がより一層向上する。
【0076】
<内部架橋剤>
本発明において用いられる内部架橋剤(A)は、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤であればよい。かかる内部架橋剤(A)は、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体が重合される条件下で同時に重合されることにより、内部架橋剤(A)による内部架橋を形成する。
【0077】
1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、N,N´−ジアリルアクリルアミド、ジアリルオキシ酢酸、ビス(N−ビニルカルボン酸アミド)等を挙げることができる。これら内部架橋剤(A)は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0078】
中でも内部架橋剤(A)は、エチレンオキサイド鎖を分子中に有するものであることがより好ましく、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0079】
また、本発明において用いられる内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤である。かかる官能基としては、カルボキシル基とエステル結合またはアミド結合する官能基は勿論、カルボキシル基と直接エステル結合またはアミド結合しなくても、カルボキシル基と反応した結果、エステル結合またはアミド結合が形成されるものも含まれる。かかる内部架橋剤(B)としては、例えば、加熱により脱炭酸して、カルボキシル基とエステル結合またはアミド結合する官能基が生じる内部架橋剤を挙げることができる。
【0080】
上記官能基を有する内部架橋剤(B)を用いる場合、かかる官能基とカルボキシル基との反応は、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体の重合反応の温度範囲よりも高い温度範囲で起こるため、本重合工程においては、内部架橋剤(B)による内部架橋は実質的には形成されない。それゆえ、重合工程において、生成する含水ゲル状架橋重合体が固くなりすぎないため解砕が良好に行われる。これにより、続く乾燥工程で完全に乾燥されず未乾燥物として残るような大きな含水ゲル状架橋重合体粒子が残ることが抑制される。さらに、これに加えて、乾燥工程で加熱を行うことにより、内部架橋剤(B)による内部架橋をおこさせることができ、所望の架橋度を達成することができる。
【0081】
したがって、内部架橋剤(B)は、該内部架橋剤(B)が有する上記官能基と、カルボキシル基とが、好ましくは110℃以上で、より好ましくは130℃以上で、さらに好ましくは150℃、特に好ましくは180℃以上で反応するものであることが好ましい。これにより、110℃より低い温度で重合反応が進行する重合工程においては、内部架橋剤(B)による内部架橋は実質的には形成されず、本発明の効果を得ることができる。それゆえ、続く乾燥工程で乾燥されにくいような大きな含水ゲル状架橋重合体が解砕されずに残ることが抑制される。なお、上記官能基とカルボキシル基とが反応する温度は、重合工程でカルボキシル基と上記官能基とを反応させないという観点からは、より高温であることが好ましいが、300℃未満であることが好ましい。300℃以下で、カルボキシル基と、上記官能基とが反応して、内部架橋剤(B)による内部架橋が行われることにより、高温による吸水性樹脂の物性の低下を回避することができるため好ましい。
【0082】
また、内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有していればよいが、かかる官能基を2個または3個有することがより好ましい。これにより、上記官能基を4個以上有する場合と比べて架橋点が分散され架橋の分布が均一となるためより好ましい。また、内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個有していることがさらに好ましい。これにより、反応性が高く、反応効率が高まるため好ましい。
【0083】
また、本発明において「非高分子」とは、高分子化合物以外の化合物をいう。ここで「高分子化合物」とは、重合により得られ、または、天然に存在する、同じ構造部分が繰り返された化合物であって、分子量(重量平均分子量)が5000より大きい化合物をいう。内部架橋剤(B)は、非高分子であればよいが、分子量が40以上500であることがより好ましく、50以上250以下であることがさらに好ましく、60以上100以下であることが特に好ましい。内部架橋剤(B)が、非高分子である場合、内部架橋剤としてポリビニルアルコールやデンプンなどの高分子化合物を用いる場合と比較して、架橋効率が上がり、また、均一に架橋されるため好ましい。さらに、内部架橋剤(B)が、非高分子である場合、内部架橋剤として高分子化合物を用いる場合と比較して、乾燥時に容易に着色しないため好ましい。
【0084】
カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、シクロカーボネート、オキサゾリジノン、イミダゾリジノン、環状ウレタン基、環状尿素基、オキセタン基等を挙げることができる。
【0085】
したがって、内部架橋剤(B)としては、上記に例示した官能基をそれぞれ単独で2個以上有する内部架橋剤、上記例示の官能基から選ばれる2種類以上の基を有しそれらの基が合わせて2個以上である内部架橋剤を挙げることができる。中でも内部架橋剤(B)はヒドロキシ基を2個以上有する内部架橋剤であることがより好ましい。なお、内部架橋剤(B)が複数の種類の官能基を有する内部架橋剤である場合、各種類の官能基の比率は特に限定されるものではない。
【0086】
また、ヒドロキシ基の中でも、内部架橋剤(B)は、第一炭素に結合したヒドロキシ基を有する内部架橋剤であることがより好ましい。これにより、第二炭素や第三炭素に結合したヒドロキシ基よりも、反応性により優れるので好ましい。
【0087】
より具体的には、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンイミンなどの多価アミン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オンなどのアルキレンカーボネート化合物;オキサゾリジノン;イミダゾリジノン;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物などを挙げることができる。これら内部架橋剤(B)は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0088】
中でも内部架橋剤(B)はポリオールであることがより好ましく、1級ヒドロキシ基を分子中に1個以上、より好ましくは2個以上有するポリオールであることがさらに好ましい。
【0089】
さらに、内部架橋剤(B)は、25℃で液体であって、1.01325×10Paのもとでの沸点が150℃以上、より好ましくは200℃以上であることが、モノマーとの混合性の点でより好ましい。
【0090】
内部架橋剤(B)のより好ましい具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール化合物を挙げることができる。中でも内部架橋剤(B)はさらに好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、又は、プロピレングリコールであり、特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。
【0091】
かかる内部架橋剤(B)を用いることにより、内部架橋剤としての高い効果が発揮され、得られる吸水性樹脂の性能向上が期待できる。また、加熱による吸水性樹脂の着色を防ぐことができるため好ましい。
【0092】
また、内部架橋剤(B)は、添加の容易さおよび均一な架橋を行う点から、100gの純水に0.1g以上溶解する水溶性であることが好ましい。
【0093】
また、内部架橋剤(B)は、その官能基当量が、29以上200以下であることが好ましく、35以上60以下であることがさらに好ましい。ここで、官能基当量とは、内部架橋剤(B)の分子量を、その内部架橋剤(B)が有する「カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基」の数で除した値をいう。上記官能基当量が29以上200以下であると、効率的に内部架橋されるため好ましい。
【0094】
なお、内部架橋剤(B)は、カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうるフリーの官能基が2個以上残存していれば、その官能基の一部が修飾されていてもよい。親水性や、物性面、安全性の面、さらには加熱処理後の着色の面から、好ましくは、官能基が無修飾の上記内部架橋剤(B)が使用される。
【0095】
本発明において内部架橋剤(A)の使用量は、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下である。
【0096】
内部架橋剤(A)の使用量が、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上であることにより、内部架橋剤(B)と内部架橋剤(A)との比率を調整することが可能となる。それゆえ、内部架橋剤(B)の使用量を低減することが可能となり、得られる吸水性樹脂の乾燥後のCRCが安定しないという問題を解決することができる。また、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して内部架橋剤(A)の使用量を、0.2mol%以下に抑えることにより、重合工程での内部架橋の架橋度が大きくなりすぎない。それゆえ、得られる含水ゲル状架橋重合体はやわらかいゲルとなるため、好適に解砕され、含水ゲル状架橋重合体の大きい塊を低減することが可能となる。それゆえ、続く乾燥工程において、大きい含水ゲルの塊が未乾燥のまま残るという問題を解決することができる。
【0097】
また、内部架橋剤(A)の使用量は、吸水量と水可溶分量のバランスの観点から0.02mol%以上0.15mol%以下であることがより好ましく、0.03mol%以上0.1mol%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
本発明では、また、内部架橋剤(A)と内部架橋剤(B)とのモル比(B)/(A)は0.01以上1.8以下となるように、内部架橋剤(A)および(B)を用いる。(B)/(A)が0.01以上であることにより、重合中の架橋度を低く保ちつつ、全体としては十分な内部架橋構造を形成することが可能となる。また、(B)/(A)を1.8以下とすることにより、内部架橋剤(B)の使用量を低減することが可能となり、得られる吸水性樹脂の乾燥後のCRCが安定しないという問題を解決することができる。
【0099】
なお、内部架橋剤として、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤と、1分子中にカルボキシル基と反応しうる官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤とを一定の割合で併用する従来の技術では、主として、吸水倍率を下げるという目的のために内部架橋剤の使用量を多くするに当たり、コスト面で有利となる後者を多く併用しており、特許文献2ないし6においても、実際に後者が、モル比で前者の2倍以上使用されている。従来は、このように内部架橋剤(A)と内部架橋剤(B)とのモル比(B)/(A)が大きいことが不都合であるとの発想は全くなかった。
【0100】
本発明者らは、本発明の製造方法を用いる場合、内部架橋剤の存在下で解砕を行いながら重合を行い、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合にも、未乾燥物の粒子が低減された吸水性樹脂を得るという目的が達成されるだけでなく、得られる吸水性樹脂においてCRCのばらつきが改善されることに気づいた。
【0101】
内部架橋剤(A)と内部架橋剤(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下と小さい場合にCRCのばらつきが改善される理由としては以下のように考えられる。内部架橋剤(A)と内部架橋剤(B)とのモル比(B)/(A)が大きい場合には、後の乾燥工程で反応する内部架橋剤(B)を多く使用するため、乾燥工程でどれだけの内部架橋剤(B)が反応するかをコントロールすることが非常に難しいと考えられる。内部架橋剤(B)の反応をコントロールできない場合、内部架橋度の異なる吸水性樹脂が生成し、吸水性能にばらつきがでてしまう。それゆえ、内部架橋剤(A)と内部架橋剤(B)とを併用する場合に、後の乾燥工程で反応する内部架橋剤(B)の量を、(B)/(A)を1.8以下となるように使用することにより、得られる吸水正樹脂におけるCRCの安定性が向上すると考えられる。
【0102】
さらに、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法により製造された吸水性樹脂は、上記(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であることにより、当該範囲外である場合と比較して、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が向上する。例えば、後述する実施例および比較例の結果を示す表3には表面架橋を行いダメージを与えた本発明の吸水性樹脂のAAPが示されている。表3から、明らかなように、上記(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下である実施例4ないし6の吸水性樹脂は、かかる範囲を外れる比較例8ないし14の吸水性樹脂と比較して高いダメージ後のAAPを示している。この理由は明らかではないが、本発明は4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)にも優れた吸水性樹脂を製造することができるという効果をも奏することを示すものである。
【0103】
なお、上記内部架橋剤(A)および内部架橋剤(B)は、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体の重合時に存在すればよく、単量体の重合前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。また、これらの内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。
【0104】
(1−2)乾燥工程
本工程では、上記重合工程で得られた、解砕された含水ゲル状架橋重合体を、所定の範囲内の含水率となるまで乾燥して乾燥物とする。なお、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法では、上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を、解砕機でさらに解砕する操作を行なわずにそのまま乾燥する。
【0105】
本工程で用いる乾燥方法は、乾燥工程における材料(乾燥中の含水ゲル状架橋重合体)の温度が110℃以上となるような方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等種々の方法を採用することができる。
【0106】
また、用いられる乾燥機としては、例えば、箱型乾燥機;ドラム乾燥機;平行流バンド・トンネル乾燥機、通気バンド乾燥機等のバンド乾燥機等を用いることができる。
【0107】
本工程で乾燥のために用いる乾燥温度は通常110℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
【0108】
含水ゲル状架橋重合体を110℃以上で乾燥することにより、重合工程の温度範囲ではカルボキシル基との反応が起こらなかった内部架橋剤(B)による内部架橋反応を起こさせることができる。それゆえ、重合時の温度で反応する内部架橋剤の量を少なくして、重合時の内部架橋度を下げた場合にも、乾燥工程で内部架橋を進め、高架橋の吸水性樹脂を得ることが可能となる。
【0109】
また、乾燥温度の上限は、通常300℃未満であることが好ましく、250℃未満であることがより好ましく、220℃未満であることがさらに好ましい。含水ゲル状架橋重合体を300℃未満で乾燥することにより、得られる吸水性樹脂が着色することを防ぐことができる。なお、ここで、乾燥温度とは、オイルや蒸気を熱媒として用いる場合は熱媒の温度を、電子線の照射等熱媒を使用せずに乾燥する場合は、材料(乾燥中の含水ゲル状架橋重合体)の温度で規定される。また、本工程では、乾燥温度を段階的に変化させてもよい。
【0110】
また、乾燥時間は含水ゲル状架橋重合体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択すればよいが、例えば、10〜120分間、より好ましくは30〜60分間である。なお、得られた乾燥物は本発明の吸水性樹脂である。また、本発明においては、乾燥工程で含水ゲル状架橋重合体を乾燥して得られる乾燥物に限られず、さらに後述する表面架橋を行う場合には表面架橋後の吸水性樹脂、および、表面架橋後の吸水性樹脂を粉砕および分級して最終製品とする場合にはかかる粉砕および分級された最終製品も、本発明の吸水性樹脂に含まれる。
【0111】
乾燥工程により得られる吸水性樹脂の含水率は特に限定されるものではないが、室温でも流動性を示す粒子(粉末)であることが好ましく、より好ましくは含水率が0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。含水率が上記範囲の上限以下であることにより、吸水性樹脂の流動性が良好で、吸水性樹脂を用いた製品の製造に支障をきたすことなく好適に使用することができる。
【0112】
また、乾燥工程は、該乾燥工程で得られた吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、1.0×10−5mol/g以下となるように乾燥を行うことが好ましい。乾燥工程後に得られた吸水性樹脂中には、カルボキシル基と共有結合しうる上記官能基を有する内部架橋剤(B)の一分子中のいずれの上記官能基も吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の内部架橋剤(B)が残存しうる。上記内部架橋剤(B)の残存量とは、吸水性樹脂中におけるかかる未反応の内部架橋剤(B)の量をいう。なお、吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量は、後述する(2)に記載の方法で測定することができる。
【0113】
該乾燥工程で得られた吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、1.0×10−5mol/g以下となるように乾燥することにより、用いた内部架橋剤(B)が効率よく内部架橋に関与し、そのため所望の吸水特性が得られるため好ましい。
【0114】
乾燥工程後、表面架橋工程前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)は、好ましくは28g/g以上、より好ましくは33g/g以上、さらに好ましくは34g/g以上、特に好ましくは36g/g以上である。なお、乾燥工程後、表面架橋工程前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の上限は好ましくは50g/g以下である。
【0115】
乾燥工程後、表面架橋工程前の吸水性樹脂のCRCを上記範囲とすることで、未乾燥物を低減することが可能となるとともに、乾燥後のCRCの安定化が可能となるため好ましい。
【0116】
以上のような本発明の製造方法で得られる吸水性樹脂の形状は、粉末として取り扱えるのであれば、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状、不定形状、造粒粒子状、多孔質構造を有する粒子等特に限定されるものではないが、不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0117】
(1−3)表面架橋工程
本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、上記乾燥工程で得られた吸水性樹脂(乾燥物)、または乾燥物に対して後述する粉砕および必要に応じて分級を行う場合には、粉砕および分級を行う前または後の吸水性樹脂を、表面架橋剤と混合し、加熱して表面架橋を行う表面架橋工程を含んでいることがより好ましい。
【0118】
表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を、表面架橋前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)より、3g/g以上、より好ましくは、5g/g以上低下させ、且つ、遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上となるように表面架橋を行うことが好ましい。なお、表面架橋前から表面架橋後への遠心分離機保持容量(CRC)の低下の上限値は、表面架橋前の遠心分離機保持容量(CRC)の50%である。表面架橋前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)より、3g/g以上低下させることにより、表面架橋強度が十分となるため好ましい。また、遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上となるように表面架橋することにより、十分な吸水容量が保証されるため好ましい。
【0119】
また、表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下となるように表面架橋を行うことが好ましい。表面架橋後の吸水性樹脂中にも、カルボキシル基と共有結合しうる上記官能基を有する内部架橋剤(B)の一分子中のいずれの上記官能基も吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の内部架橋剤(B)が残存しうる。上記内部架橋剤(B)の残存量とは、吸水性樹脂中におけるかかる未反応の内部架橋剤(B)の量をいう。
【0120】
該乾燥工程で得られた吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下となるように表面架橋を行うことにより、乾燥工程後に未反応のまま残存している内部架橋剤(B)による内部架橋を本工程でさらに進行させ、用いた内部架橋剤(B)がさらに効率よく内部架橋に使われ、そのため所望の吸水特性が得られるため好ましい。
【0121】
本工程で用いることができる表面架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、例えば、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物、多価アミン化合物のハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノオキサゾリジノン化合物、ジオキサゾリジノン化合物、ポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等を挙げることができる。具体的には、米国特許6228930号明細書、同6071976号明細書、同6254990号明細書などに例示されている表面架橋剤を用いることができる。より具体的には、上記表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物(US6559239);オキセタン化合物;環状尿素化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物(US5409771)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の効果を最大限にするために、これらの表面架橋剤の中でも少なくとも多価アルコール、オキセタン化合物(US2002/72471)および環状尿素化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10の多価アルコールおよび炭素数2〜10のオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられる。したがって、上記表面架橋剤としては、上記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
本工程では、また、架橋剤を含むモノマーで表面架橋する方法(特許第2530668号)、ラジカル開始剤で表面架橋する方法(特開昭63−99211号公報)、ラジカル開始剤とモノマーで表面架橋する方法(US2005−0048221)等も好適に用いることができる。
【0123】
上記表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂に対して、0.001重量%以上、10重量%以下の範囲内が好ましく、0.01重量%以上、5重量%以下の範囲内がより好ましい。
【0124】
また、本工程において、表面架橋には水を用いることがより好ましい。すなわち、吸水性樹脂を、表面架橋剤および水と混合し加熱して表面架橋を行うことが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、通常、好ましくは吸水性樹脂に対し0.5重量%以上20重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上10重量%以下の範囲である。また、本工程においては、水に加えてまたは水の代わりに親水性有機溶媒を用いてもよく、吸水性樹脂に対して好ましくは0以上10重量%以下、より好ましくは0〜5重量%以下、さらに好ましくは0〜3重量%以下の範囲である。
【0125】
本工程では、さらに、上記表面架橋剤に加えて、有機酸(乳酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸)や無機酸(リン酸、硫酸、亜硫酸)などの酸物質、苛性ソーダや炭酸ソーダなどの塩基物質、硫酸アルミニウムなどの多価金属などを、吸水性樹脂に対して0〜10重量%、さらには0〜5重量%、特に0〜1%程度で併用してもよい。
【0126】
本発明において表面架橋を行う場合には、水および/または親水性有機溶媒と表面架橋剤とを予め混合した後、次いで、その水溶液または溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。
【0127】
本発明の吸水性樹脂と該表面架橋剤、水や親水性有機溶媒を混合する際に用いられる混合装置としては両者を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0128】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は加熱処理されることが好ましい。加熱温度(熱媒温度または材料温度)は、好ましくは120〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0129】
加熱処理を行う装置としては、表面架橋剤と吸水性樹脂の混合物に対して均一に熱が伝わるように処理が行われる装置であれば、特に限定されるものではないが、均一な加熱処理を確実に行うために、大きな混合装置を備えていることが好ましい。上記加熱処理装置としては、ベルト式、溝型攪拌式、スクリュー型、回転型、円盤型、捏和型、流動層式、気流式、赤外線型、電子線型の乾燥機または加熱炉が挙げられる。
【0130】
また、後述するように、通液性向上剤を添加する場合、表面架橋は、通液性向上剤の添加前、同時、および添加後から選ばれる少なくとも1つにおいて行えばよい。
【0131】
(1−4)吸水性樹脂の製造方法の利用
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法を用いて得られた吸水性樹脂に、さらに通液性向上剤を添加して、吸水性樹脂と通液性向上剤とを含む吸水剤を製造する方法も、本発明を利用するものであるので、本発明に含まれる。
【0132】
すなわち、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法を用い、さらに上記吸水性樹脂に通液性向上剤を添加する工程を含んでいる。
【0133】
通液性向上剤を添加する工程は、表面架橋工程の前、同時、後のいずれに行っても良いが、本発明の効果をより発揮するために、好ましくは、表面架橋工程の後であり、表面架橋工程とは別に行うことが好ましい。また、乾燥物に対して粉砕および分級を行う場合にはかかる工程の前、同時、後のいずれに行っても良い。
【0134】
なお、本明細書において、通液性向上剤とは、食塩水流れ誘導性(SFC)が6以上である吸水性樹脂または吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)を10以上向上させる剤のことをいう。
【0135】
通液性向上剤を吸水性樹脂または吸水剤と混合することにより、水性液を吸収した後の吸水性樹脂または吸水剤の通液路が物理的またはイオン的に保持され、それゆえ通液性を向上させることが可能となる。
【0136】
通液性向上剤は、水溶性多価金属化合物またはポリカチオン化合物であることが好ましく、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、および、アミノ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。より具体的には、例えば、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの水溶性の多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;シリカ、アルミナ、ベントナイトなどの非水溶性の無機微粒子;などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硫酸アルミニウム、カリウム明礬などの水溶性多価金属塩が、食塩水流れ誘導性(SFC)が向上する点で好ましい。また、通液性向上剤は、吸水性樹脂表面全体により均一に添加しやすく、通液性向上剤の偏析等がない点から、水溶性であることが好ましい。
【0137】
通液性向上剤は、吸水性樹脂に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。
【0138】
なお、通液性向上剤は、吸水剤の通液性を向上させることができるものであればよいが、吸水性樹脂の表面の官能基と共有結合しない物質であることが好ましい。
【0139】
通液性向上剤の添加方法は、特に限定されず、ドライブレンドでもよいし、水溶液または分散液として添加しても良いし、熱融着による方法でもよい。
【0140】
より詳細には、ドライブレンドとは、固体で粉体状である多価金属化合物あるいは無機微粒子等の上記通液性向上剤を、乾燥粉砕後の吸水性樹脂粒子に均一に混合する方法であり、必要に応じて、混合後、水や多価アルコールの水溶液をさらに添加混合しても良いし、さらに加熱しても良い。「水溶液として添加」とは、多価金属化合物やポリカチオン化合物等の水溶液を吸水性樹脂粒子に添加混合する方法であり、多価金属化合物やポリカチオン化合物の濃度が高いほうが好ましい。また、混合後、必要により加熱しても良い。熱融着とは、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬等の多価金属水和物と吸水性樹脂粒子を混合と同時あるいは混合した後、加熱するまたはあらかじめ加熱した吸水性樹脂粒子に多価金属化合物を混合することで、多価金属水和物を溶融させ、吸水性樹脂粒子に接着させる方法であり、必要により加熱前に水を添加しても良い。
【0141】
(1−5)その他の工程
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、さらに、上記重合工程の前に上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体と、上記内部架橋剤(A)および(B)とを含む単量体水溶液を調製する単量体水溶液調製工程を含んでいてもよい。
【0142】
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、さらに、上記乾燥工程の後または上記表面架橋工程の後に、乾燥物または表面架橋工程後の吸水性樹脂をさらに粉砕する粉砕工程を含んでいてもよい。上記乾燥物を粉砕する条件は、特に限定されるものではないが、例えば、ロールミル、ハンマーミル等、従来から知られている粉砕機を使用することができる。粉砕によって得られる形状は、不定形破砕状であることが好ましく、一部、表面積が大きくて造粒された形状の粒子を含んでいることがより好ましい。
【0143】
粉砕された吸水性樹脂粒子は、例えば、さらに分級することなどによって、重量平均粒子径および対数標準偏差(σζ)を所望の範囲に調整して最終製品としてもよい。
【0144】
本発明において、必要に応じて分級する場合、分級する際に用いる篩は、分級効率を考慮して選択する必要がある。例えば、目開き150μmの篩を通過した吸水性樹脂粒子または吸水剤を分級操作によって除いた場合において、粒子径が150μm以下の粒子を完全に除去することは困難であり、目的の粒子径を有する吸水性樹脂粒子ないし吸水剤を得るために、適宜、使用する篩の種類を選択することが好ましい。
【0145】
(2)本発明にかかる吸水性樹脂とその利用
本発明には、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合して得られ、内部架橋構造を有し、且つ、表面架橋された吸水性樹脂であって、上記内部架橋構造に、1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)とを含んでいるとともに、(A)の含有量は、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下である吸水性樹脂も含まれる。
【0146】
なお、本発明において、吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことをいう。ここで、一般に「水膨潤性」とは、例えば、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指す。また、「水膨潤性」の架橋重合体は、「イオン交換水中における吸水倍率」が5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、特に好ましくは50から1000のものであるということもできる。なお、「イオン交換水中における吸水倍率」は、測定対象として吸水性樹脂0.020gを用い、イオン交換水中で測定する以外は、後述する遠心分離機保持容量(CRC)の測定法と同様にして得られる値である。
【0147】
また、「水不溶性」とは吸水性樹脂中の未架橋の水可溶分量(水溶性高分子)が、好ましくは、吸水性樹脂全体の重量の0以上50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下のものを指す。なお、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶分量とは、以下の方法で測定した値をいう。
【0148】
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加え、16時間攪拌することにより、樹脂中の可溶分を抽出する。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801 No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを、測り取り測定溶液とする。はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得る。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求める。例えば、既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の水可溶分量を下記式によって算出する。未知量の場合には、滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0149】
水可溶分量(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(モル%)=[1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl])]×100
本発明にかかる吸水性樹脂はカルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる重合体であればよいが、カルボキシル基含有不飽和単量体に併用して、本発明の効果を阻害しない程度に他の単量体を共重合させて得られるものであってもよい。ここで、カルボキシル基含有不飽和単量体および他の単量体については上記(1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0150】
本発明に係る吸水性樹脂は、内部架橋構造を有し、係る内部架橋構造には上記内部架橋剤(A)および内部架橋剤(B)が含まれていればよい。ここで内部架橋剤(A)および内部架橋剤(B)、内部架橋剤(A)の含有量、(A)と(B)とのモル比(B)/(A)については、上記(1)で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0151】
内部架橋剤(A)は、吸水性樹脂中で、カルボキシル基含有不飽和単量体と共重合されている。
【0152】
内部架橋剤(B)中の上記官能基は吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合していればよいが、必ずしも一分子中の全ての上記官能基が、吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合している必要はなく、一分子中の上記官能基の一部が吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合せずにフリーで存在していてもよい。
【0153】
また、本発明の吸水性樹脂中には、カルボキシル基と共有結合しうる上記官能基を有する内部架橋剤(B)の一分子中のいずれの上記官能基も吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の内部架橋剤(B)が残存しうる。吸水性樹脂中におけるかかる未反応の内部架橋剤(B)の量、すなわち上記内部架橋剤(B)の残存量は、0.1×10−5mol/g以下であることが好ましい。上記内部架橋剤(B)の残存量が0.1×10−5mol/gであることにより、十分な架橋効果が発揮され、SFC等の物性に優れるため好ましい。
【0154】
かかる未反応の内部架橋剤(B)、すなわち、吸水性樹脂中の未反応の内部架橋剤(B)は、吸水性樹脂から抽出し、抽出物を液体クロマトグラフィー(LC、Liquid Chromatograohy)等で分析することにより定量することができる。抽出の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択すればよいが、例えば、吸水性樹脂1gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中で2時間以上攪拌し、攪拌後の塩化ナトリウム水溶液をろ過することにより得ることができ、ろ液として得られる抽出液を液体クロマトグラフィーで分析すればよい。
【0155】
なお、内部架橋剤(B)の一分子中の上記官能基の少なくとも1個がカルボキシル基と結合している内部架橋剤(B)は、吸水性樹脂を加水分解し、得られた液をガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS、Gas Chromatography-Mass Spectrometry)等で分析することにより定量することができる。
【0156】
また本発明に係る吸水性樹脂は表面架橋されている。表面架橋剤および表面架橋剤の使用量については上記(1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0157】
また、本発明にかかる吸水性樹脂を主成分とする吸水剤も、本発明を利用するものであるので、本発明に含まれる。本発明にかかる吸水剤は、本発明吸水性樹脂を主成分とし、必要により少量の添加剤および場合により水を含有する、水性液体の吸収固化剤のことを指す。ここで「主成分」とは、吸水性樹脂の含有量が吸水剤全体に対して50重量%以上であることをいう。吸水性樹脂の含有量は吸水剤全体中、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上である。
【0158】
本発明にかかる吸水剤としては、例えば、本発明にかかる吸水性樹脂と、通液性向上剤とを含む吸水剤を挙げることができる。本発明で用いられる通液性向上剤およびその含有量については、上記(1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0159】
また、本発明にかかる吸水剤は、さらに添加剤として、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィン、疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を、吸水剤の吸水特性を低下しない範囲、例えば、吸水性樹脂に対して0〜10重量%程度含有していてもよい。
【0160】
本発明にかかる吸水性樹脂および吸水剤の形状は特に限定されるものではないが、重合工程で解砕されて粒子状となっていることが好ましく、さらに後の工程で粉砕・分級されて特定の粒子径に調整されたものであることがより好ましい。本発明にかかる吸水性樹脂および本発明の吸水剤の粒子径は、好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子(ふるい分級で規定:JIS Z8801−1:2000)が全体の90重量%以上であり、より好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の95重量%以上であり、さらに好ましくは850μm未満で150μm以上の粒子が全体の98重量%以上である。また、300μm以上の粒子が全体の60重量%以上であることが好ましい。なお、ここで全体とは、吸水性樹脂の粒子径については粒子状吸水性樹脂全体を、吸水剤の粒子径については吸水剤全体を意味する。
【0161】
また、吸水性樹脂あるいは吸水剤の重量平均粒子径(D50)は、好ましくは200〜850μm、より好ましくは200〜600μm、さらに好ましくは300〜600μm、特に好ましくは300〜500μmとされる。吸水性樹脂および吸水剤の粒子径は必要により造粒などで調整してもよい。
【0162】
また、吸水性樹脂や吸水剤の粒子形状は、特に限定されるものではなく、球状、破砕状、不定形状等であればよいが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0163】
また、本発明における吸水性樹脂および吸水剤は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が、好ましくは0.1〜0.45、より好ましくは0.25〜0.45、さらに好ましくは0.30〜0.40である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さいほど粒度分布が狭いことを表すが、本発明における吸水性樹脂や吸水剤では粒度分布が単に狭いのではなく、ある程度の広がりをもつことが重要となる。対数標準偏差(σζ)が0.1未満の場合は、目的とする性能が得られないことがあるだけでなく、生産性が著しく低下してしまう。0.45を超える場合には粒度分布が広がりすぎて、目的とする性能が得られない恐れがある。
【0164】
なお、本発明で言う「300μm以上の粒子」とは後述する篩分級方法で分級された後に、測定される300μmの目開きを有するJIS標準篩の上に残った粒子を指す。また、「300μm未満の粒子」とは同様に後述する分級方法で分級された後に、測定される300μmの目開きを有するメッシュを通過した粒子を指す。他の目開きの大きさについても同様である。また、300μmの目開きを有するメッシュで粒子の50重量%が分級される場合、その重量平均粒子径(D50)は300μmである。
【0165】
本発明の吸水性樹脂および吸水剤は、遠心分離機保持容量(CRC)が、5g/g以上であることが好ましい。これにより、本発明の吸水性樹脂および吸水剤を紙オムツ等の衛生材料用いるときに、水性液体を吸収し保持する性能に優れるため好ましい。本発明の吸水性樹脂および吸水剤の遠心分離機保持容量(CRC)は、好ましくは5g/g以上50g/g以下、より好ましくは15g/g以上45g/g以下、さらに好ましくは26g/g以上40g/g以下、特に好ましくは27g/g以上35g/g以下の範囲である。また、遠心分離保持容量(CRC)が26g/g以上である場合は、吸水剤の使用量を少なくすることができるためより好ましい。
【0166】
また、本発明の吸水性樹脂および吸水剤は、通液性の評価にあたる、食塩水流れ誘導性(SFC)が、10cm・s・10−7/g以上であり、好ましくは30cm・s・10−7/g以上、より好ましくは50cm・s・10−7/g以上、さらに好ましくは70cm・s・10−7/g以上、特に好ましくは100cm・s・10−7/g以上である。上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは3000cm・s・10−7/g以下、より好ましくは2000cm・s・10−7/g以下である。食塩水流れ誘導性(SFC)が10cm・s・10−7/gよりも小さいと、例えば、尿等の水性液体が吸収体内で拡散されにくくなることで吸収体に吸収されにくくなり、漏れを起こすおそれがある。
【0167】
なお、本発明における「通液性」とは、吸水性樹脂および吸水剤が加圧下で吸水膨潤した後の加圧下での通液性能、すなわち、膨潤ゲル粒子間の加圧下通液性であり、実使用時の紙オムツでの通液性モデルである。
【0168】
また、本発明の吸水性樹脂および吸水剤は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、8g/g以上であることが好ましい。これにより、本発明の吸水性樹脂および吸水剤を紙オムツ等の衛生材料用いるときに、水性液体を吸収し保持する性能に優れるため好ましい。水性液体を吸収し保持する性能の面から、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)は、好ましくは8g/g以上30g/g以下、より好ましくは16g/g以上30g/g以下、さらに好ましくは20g/g以上28g/g以下、特に好ましくは22g/g以上28g/g以下、最も好ましくは24g/g以上28g/g以下の範囲である。また、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が8g/g未満では、粒子状吸水性樹脂組成物または吸水剤に体重などの荷重がかかった場合、液体の液拡散および吸収力が劣るため、吸収体および/または衛生材料中で液体の拡散が行なわれず液がブロッキングを起こし、紙オムツでの実使用で、漏れ、肌のかぶれ等の問題がある。
【0169】
また、本発明に係る吸水性樹脂および吸水剤は、後述する実施例に示すように、ダメージを与えた後にも、上記遠心分離機保持容量(CRC)、食塩水流れ誘導性(SFC)、吸収力(AAP)について優れた特性を示す。本発明に係る吸水性樹脂及び吸水剤のダメージ後の上記遠心分離機保持容量(CRC)、食塩水流れ誘導性(SFC)、吸収力(AAP)も上記範囲と同様であることが好ましい。
【0170】
本発明の吸水剤は、遠心分離機保持容量(CRC)や4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)をはじめとする吸水特性に優れている。それゆえ、尿、血液等水性液体の吸収固化剤(吸収ゲル化剤)として、子供用紙オムツ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料に好適に使用される。
【0171】
本発明の吸水剤は、衛生材料の用途にためには、通常粒子状の形で、親水性繊維と組み合わせて、成型され吸収体として使用される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0172】
また、本発明にかかる吸水剤は、衛生材料に限らず、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品などの従来の吸水性樹脂の用途にも広く使用されうる。
【実施例】
【0173】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0174】
実施例および比較例における測定方法および評価方法を以下に示す。特に記載がない限り、下記の測定や評価は、特に指定の無いものは、温度20〜25℃、湿度50RH%の条件下で行われたものである。
【0175】
なお、以下の測定および評価の対象は、吸水性樹脂に適用してもよいし、吸水剤に適用してもよい。したがって、吸水剤を測定対象とする場合は、測定方法の記載における「吸水性樹脂」を「吸水剤」に読み替えて測定を行えばよい。
【0176】
(a)遠心分離機保持容量(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
吸水性樹脂0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、23℃に調温した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いて250G(250cm/s2)の遠心力で3分間水切りを行った後、袋の重量W(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の袋の重量W(g)を測定した。そして、これらW、Wから、下記の式に従ってCRC(g/g)を算出した。
【0177】
CRC(g/g)=[(W(g)−W(g))/吸水性樹脂の重量(g)]−1
(b)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP:Absorbency against Pressure)
4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)は、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する4.83kPaの圧力下における60分間の吸収力を表す。
【0178】
図1に示す装置を用いて測定した。内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目の大きさ38μm)101を融着させた。室温(23.0±2.0℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に吸水性樹脂(102)0.90gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して、4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整されたピストン103と荷重104とをこの順に載置して、この測定装置一式の重量Wa(g)を測定した。なお、ピストン103は外径が60mmよりわずかに小さく、支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないようになっている。
【0179】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙(107)1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0180】
この湿った濾紙上に、上記測定装置一式を載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量Wb(g)を測定した。この重量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、Wa、Wbから、次式によって4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)(g/g)を算出した。
【0181】
AAP(g/g)=[Wb(g)−Wa(g)]/吸水性樹脂の重量(g)
(c)食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)
特表平9−509591の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。図2に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。
【0182】
コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速FS(t)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をtSとし、tSと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、tSと10分間の間に得た流速を使用してFS(t=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。FS(t=0)はFS(t)対時間の最小2乗法の結果をt=0に外挿することにより計算した。
【0183】
食塩水流れ誘導性(SFC)は下記式により計算した。
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(FS(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(FS(t=0)×L0)/139506
なお、上記式中、FS、L0、ρ、A、ΔPはそれぞれ、
FS(t=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の最初の厚さ
ρ :NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A :セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
を表す。また、食塩水流れ誘導性(SFC)の単位は(cm・s・10−7/g)である。
【0184】
図2に示す装置としてはタンク31にはガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0185】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、燐酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを混合したものを用いた。
【0186】
(d)粒子径
粒子径の測定は、WO2004/69915号に記載の質量平均粒子径(D50)の測定に準じて行った。
【0187】
粉砕後の吸水性樹脂を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。なお、850μmを超える吸水性樹脂を含んでいる場合は適宜市販の目開きが850μmを超えるJIS標準ふるいを用いる。
【0188】
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)
粒度分布の対数標準偏差(σζ)はWO2004/69915号に記載の方法に準じて求めた。
【0189】
吸水性樹脂を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。なお、850μmを超える吸水性樹脂を含んでいる場合は適宜市販の目開きが850μmを超えるJIS標準ふるいを用いる。そこで、X1をR=84.1重量%、X2を15.9重量%の時のそれぞれの粒径とすると、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0190】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
粒子径、粒度分布における対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水性樹脂粒子10.0gを、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。
【0191】
(f)ペイントシェーカーテスト
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0192】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。
【0193】
〔実施例1〕
〔1−1〕
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水397.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)8.87g(0.07mol%)、1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)を溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に20質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.53gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ34秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを解砕しながら、25℃以上92℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0194】
〔1−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は85gであった。なお、未乾燥物の分離は、乾燥物を粗砕した後、目開き5mmの篩にかけ、篩上に残ったものからゲル状のものを分離することにより行った。
【0195】
〔1−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0196】
〔1−4〕
上記〔1−1〕〜〔1−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0197】
それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に35(g/g)、35(g/g)、34(g/g)、35(g/g)、34(g/g)であった。
【0198】
これらの値から計算された平均値は34.6(g/g)、標準偏差σは0.55であり、乾燥後のCRC不安定指数は5であった。
【0199】
なお、乾燥後のCRC不安定指数は以下の式で計算される。
乾燥後のCRC不安定指数=(標準偏差σ×3)/(平均値)×100
上記の5つの吸水性樹脂を混合したものを吸水性樹脂(1)とした。吸水性樹脂(1)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0200】
〔実施例2〕
〔2−1〕
実施例1の1,4−ブタンジオールの使用量を0.437g(0.02mol%)から0.873g(0.04mol%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0201】
〔2−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は91gであった。
【0202】
〔2−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0203】
〔2−4〕
上記〔2−1〕〜〔2−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0204】
それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に35(g/g)、34(g/g)、35(g/g)、36(g/g)、35(g/g)であった。
【0205】
これらの値から計算された平均値は35.0(g/g)、標準偏差σは0.71であり、乾燥後のCRC不安定指数は6であった。
【0206】
上記の5つの吸水性樹脂を混合したものを吸水性樹脂(2)とした。吸水性樹脂(2)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0207】
〔実施例3〕
〔3−1〕
実施例1の1,4−ブタンジオールの使用量を0.437g(0.02mol%)から1.310g(0.06mol%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0208】
〔3−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は88gであった。
【0209】
〔3−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0210】
〔3−4〕
上記〔3−1〕〜〔3−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0211】
それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に35(g/g)、35(g/g)、36(g/g)、34(g/g)、34(g/g)であった。
【0212】
これらの値から計算された平均値は34.8(g/g)、標準偏差σは0.84であり、乾燥後のCRC不安定指数は7であった。
【0213】
上記の5つの吸水性樹脂を混合したものを吸水性樹脂(3)とした。吸水性樹脂(3)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0214】
〔実施例4〕
〔4−1〕
実施例1の1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、プロピレングリコール0.645g(0.035mol%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも多数含まれていた。
【0215】
〔4−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は86gであった。
【0216】
〔4−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0217】
〔4−4〕
上記〔4−1〕〜〔4−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0218】
それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に34(g/g)、35(g/g)、34(g/g)、34(g/g)、35(g/g)であった。
【0219】
これらの値から計算された平均値は34.4(g/g)、標準偏差σは0.55であり、乾燥後のCRC不安定指数は5であった。
【0220】
上記の5つの吸水性樹脂を混合したものを吸水性樹脂(4)とした。吸水性樹脂(4)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0221】
〔実施例5〕
〔5−1〕
実施例1の1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、グリセリン0.781g(0.035mol%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも多数含まれていた。
【0222】
〔5−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は93gであった。
【0223】
〔5−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0224】
〔5−4〕
上記〔5−1〕〜〔5−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0225】
それぞれの吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に32(g/g)、31(g/g)、31(g/g)、31(g/g)、32(g/g)であった。
【0226】
これらの値から計算された平均値は31.4(g/g)、標準偏差σは0.55であり、乾燥後のCRC不安定指数は5であった。
【0227】
上記の5つの吸水性樹脂を混合したものを吸水性樹脂(5)とした。吸水性樹脂(5)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0228】
〔比較例1〕
〔比1−1〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)の使用量を8.87g(0.07mol%)から11.4g(0.09mol%)に変更し、1,4−ブタンジオールの使用量を0.437g(0.02mol%)から0gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも多数含まれていた。
【0229】
〔比1−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は150gであった。
【0230】
〔比1−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0231】
〔比1−4〕
上記〔比1−1〕〜〔比1−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0232】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に32(g/g)、32(g/g)、32(g/g)、32(g/g)、33(g/g)であった。
【0233】
これらの値から計算された平均値は32.2(g/g)、標準偏差σは0.45であり、乾燥後のCRC不安定指数は4であった。
【0234】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(1)とした。比較吸水性樹脂(1)の質量平均粒子径(D50)は343μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0235】
〔比較例2〕
〔比2−1〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)の使用量を8.87g(0.07mol%)から31.67g(0.25mol%)に変更し、1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、グリセリン7.81g(0.35mol%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも多数含まれていた。
【0236】
〔比2−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は350gであった。
【0237】
〔比2−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0238】
〔比2−4〕
上記〔比2−1〕〜〔比2−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0239】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に26(g/g)、24(g/g)、25(g/g)、25(g/g)、26(g/g)であった。
【0240】
これらの値から計算された平均値は25.2(g/g)、標準偏差σは0.84であり、乾燥後のCRC不安定指数は10であった。
【0241】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(2)とした。比較吸水性樹脂(2)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0242】
〔比較例3〕
〔比3−1〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)の使用量を8.87g(0.07mol%)から1.27g(0.01mol%)に変更し、1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、グリセリン0.89g(0.04mol%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0243】
〔比3−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は75gであった。
【0244】
〔比3−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0245】
〔比3−4〕
上記〔比3−1〕〜〔比3−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0246】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に52(g/g)、58(g/g)、55(g/g)、53(g/g)、59(g/g)であった。
【0247】
これらの値から計算された平均値は55.4(g/g)、標準偏差σは3.05であり、乾燥後のCRC不安定指数は17であった。
【0248】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(3)とした。比較吸水性樹脂(3)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0249】
〔比較例4〕
〔比4−1〕
実施例1の1,4−ブタンジオールの使用量を0.437g(0.02mol%)から2.84g(0.13mol%)に変更た以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0250】
〔比4−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は92gであった。
【0251】
〔比4−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0252】
〔比4−4〕
上記〔比4−1〕〜〔比4−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0253】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に34(g/g)、31(g/g)、33(g/g)、31(g/g)、34(g/g)であった。
【0254】
これらの値から計算された平均値は32.6(g/g)、標準偏差σは1.52であり、乾燥後のCRC不安定指数は14であった。
【0255】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(4)とした。比較吸水性樹脂(4)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0256】
〔比較例5〕
〔比5−1〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)の使用量を8.87g(0.07mol%)から12.67g(0.1mol%)に変更し、1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、エチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量174.2)4.22g(0.1mol%)を用いた他は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも多数含まれていた。
【0257】
〔比5−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は300gであった。
【0258】
〔比5−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0259】
〔比5−4〕
上記〔比5−1〕〜〔比5−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0260】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に27(g/g)、27(g/g)、27(g/g)、27(g/g)、28(g/g)であった。
【0261】
これらの値から計算された平均値は27.2(g/g)、標準偏差σは0.45であり、乾燥後のCRC不安定指数は5であった。
【0262】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(5)とした。比較吸水性樹脂(5)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0263】
〔比較例6〕
〔比6−1〕
実施例1のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)8.87g(0.07mol%)のかわりに、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296.32)4.52g(0.063mol%)を用い、1,4−ブタンジオール0.437g(0.02mol%)のかわりに、グリセリン2.72g(0.122mol%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体は、実質ゲルの粒子径が約5mm以下に細分化されていたが、中には10mm以上の粒径のものも含まれていた。
【0264】
〔比6−2〕
この含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行った。得られた乾燥物から、未乾燥のゲル状、またはゴム状のものを分離した。分離した未乾燥物の量は82gであった。
【0265】
〔比6−3〕
乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の比較吸水性樹脂を得た。
【0266】
〔比6−4〕
上記〔比6−1〕〜〔比6−3〕と同様の操作を計5回行い、それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を測定した。
【0267】
それぞれの比較吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)の値は、1回目から順に32(g/g)、32(g/g)、35(g/g)、34(g/g)、35(g/g)であった。
【0268】
これらの値から計算された平均値は33.6(g/g)、標準偏差σは1.52であり、乾燥後のCRC不安定指数は14であった。
【0269】
上記の5つの比較吸水性樹脂を混合したものを比較吸水性樹脂(6)とした。比較吸水性樹脂(6)の質量平均粒子径(D50)は342μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.32であった。
【0270】
実施例1〜3、比較例1〜6の結果をまとめたものを表1、表2に示す。
【0271】
【表1】

【0272】
【表2】

【0273】
〔実施例6〕
吸水性樹脂(1)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。次に、目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、吸水性樹脂(6)を得た。すなわち、吸水性樹脂(6)は、吸水性樹脂(1)に表面架橋を行い、さらに、ペイントシェーカーテスト1でダメージを与えられた吸水性樹脂である。
【0274】
〔実施例7〕
吸水性樹脂(1)のかわりに吸水性樹脂(2)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、吸水性樹脂(7)を得た。
【0275】
〔実施例8〕
吸水性樹脂(1)のかわりに吸水性樹脂(3)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、吸水性樹脂(8)を得た。
【0276】
〔実施例9〕
吸水性樹脂(1)のかわりに吸水性樹脂(4)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、吸水性樹脂(9)を得た。
【0277】
〔実施例10〕
吸水性樹脂(1)のかわりに吸水性樹脂(5)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、吸水性樹脂(10)を得た。
【0278】
〔比較例7〕
吸水性樹脂(1)100質量部を195℃で30分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。次に、目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、比較吸水性樹脂(7)を得た。すなわち、比較吸水性樹脂(7)は、吸水性樹脂(1)に表面架橋を行わずに加熱処理のみを行い、さらに、ペイントシェーカーテスト1でダメージを与えられた吸水性樹脂である。
【0279】
〔比較例8〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(1)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(8)を得た。
【0280】
〔比較例9〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(2)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(9)を得た。
【0281】
〔比較例10〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(3)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(10)を得た。
【0282】
〔比較例11〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(4)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(11)を得た。
【0283】
〔比較例12〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(5)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(12)を得た。
【0284】
〔比較例13〕
比較吸水性樹脂(6)100質量部を205℃で30分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。次に、目開き710μmのJIS標準篩を通過した粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、比較吸水性樹脂(13)を得た。すなわち、比較吸水性樹脂(13)は、比較吸水性樹脂(6)に表面架橋を行わずに加熱処理のみを行い、さらに、ペイントシェーカーテスト1でダメージを与えられた吸水性樹脂である。
【0285】
〔比較例14〕
吸水性樹脂(1)のかわりに比較吸水性樹脂(6)を用いて、実施例6と同じ操作を行った。こうして、比較吸水性樹脂(14)を得た。
【0286】
実施例6〜10で得られた吸水性樹脂および比較例7〜14で得られた比較吸水性樹脂について、遠心分離機保持容量(CRC)、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)、および、食塩水流れ誘導性(SFC)を測定して得られた結果をまとめたものを表3に示す。
【0287】
【表3】

【0288】
〔実施例11〕
吸水性樹脂(6)100質量部に、硫酸アルミニウム27質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.80質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、および、プロピレングリコール0.016質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、得られた粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。次に、目開き710μmのJIS標準篩を通過させた粒子にペイントシェーカーテスト2を行った。こうして得られたものを、吸水剤(11)とした。
【0289】
〔実施例12〕
吸水性樹脂(6)のかわりに吸水性樹脂(7)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、吸水剤(12)を得た。
【0290】
〔実施例13〕
吸水性樹脂(6)のかわりに吸水性樹脂(8)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、吸水剤(13)を得た。
【0291】
〔実施例14〕
吸水性樹脂(6)のかわりに吸水性樹脂(9)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、吸水剤(14)を得た。
【0292】
〔実施例15〕
吸水性樹脂(6)のかわりに吸水性樹脂(10)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、吸水剤(15)を得た。
【0293】
〔比較例15〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(7)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(15)を得た。
【0294】
〔比較例16〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(8)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(16)を得た。
【0295】
〔比較例17〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(9)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(17)を得た。
【0296】
〔比較例18〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(10)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(18)を得た。
【0297】
〔比較例19〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(11)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(19)を得た。
【0298】
〔比較例20〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(12)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(20)を得た。
【0299】
〔比較例21〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(13)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(21)を得た。
【0300】
〔比較例22〕
吸水性樹脂(6)のかわりに比較吸水性樹脂(14)を用いて、実施例11と同じ操作を行った。こうして、比較吸水剤(22)を得た。
【0301】
実施例11〜15および比較例15〜22で得られた吸水剤について、遠心分離機保持容量(CRC)、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)、食塩水流れ誘導性(SFC)を測定して得られた結果をまとめたものを表4に示す。
【0302】
【表4】

【0303】
上記実施例で得られた吸水性樹脂はすべて樹脂表面のハンターLab表色系におけるL値(Lightness:明度指数)が90以上であり、着色の少ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0304】
本発明は、内部架橋剤の存在下で解砕を行いながら重合を行い、得られた含水ゲル状架橋重合体について重合後にさらなる解砕を行わないで乾燥を行う場合にも、含水ゲル状架橋重合体が十分細粒化されないことに起因する未乾燥物が低減された吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びにその利用に関する。かかる製造方法は、重合工程後に含水ゲル状架橋重合体についてさらなる解砕を行う必要がないので、吸水特性に優れた吸水性樹脂および給水剤を効率よく製造することが可能となる。
【0305】
また、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂並びに吸水剤は、衛生材料に限らず、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品などの従来の吸水性樹脂の用途にも広く使用されうる。
【0306】
それゆえ、本発明はこれらを製造する衛生材料製造業、園芸産業、土木・建築業、食品産業のみならず、吸水剤の製造を行う化学工業に利用でき非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を、
1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、
1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)と、
の存在下で、解砕を行いながら重合させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、
上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程とを含む吸水性樹脂の製造方法であって、
上記(A)の使用量が、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、且つ、
上記(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であることを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
上記内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個または3個有することを特徴とする請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
カルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる上記内部架橋剤(B)の上記官能基は、カルボキシル基と、110℃以上で反応することを特徴とする請求項1または2に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
上記官能基はヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
上記内部架橋剤(B)の分子量は、40以上500以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
上記乾燥工程は、該乾燥工程で得られた吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、1.0×10−5mol/g以下となるように乾燥を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
さらに、上記乾燥工程で得られた吸水性樹脂を表面架橋剤と混合し、加熱して表面架橋を行う表面架橋工程を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
上記表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)を、表面架橋前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)より、3g/g以上低下させ、且つ、遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上となるように表面架橋を行うことを特徴とする請求項8に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
上記表面架橋工程は、表面架橋後の吸水性樹脂中の内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下となるように表面架橋を行うことを特徴とする請求項8または9に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
上記吸水性樹脂と通液性向上剤とを含む吸水剤の製造方法であって、請求項1ないし10の何れか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法を用い、さらに上記吸水性樹脂に通液性向上剤を添加する工程を含むことを特徴とする吸水剤の製造方法。
【請求項12】
カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体を重合して得られ、内部架橋構造を有し、且つ、表面架橋された吸水性樹脂であって、
上記内部架橋構造に、
1分子中にラジカル重合性不飽和基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤(A)と、
1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を少なくとも2個以上有する非高分子の内部架橋剤(B)とを含んでいるとともに、
(A)の含有量は、前記カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.01mol%以上0.2mol%以下であり、
(A)と(B)とのモル比(B)/(A)が0.01以上1.8以下であることを特徴とする吸水性樹脂。
【請求項13】
上記内部架橋剤(B)は、1分子中にカルボキシル基と反応してエステル結合またはアミド結合を形成しうる官能基を2個または3個有することを特徴とする請求項12に記載の吸水性樹脂。
【請求項14】
上記官能基はヒドロキシ基であることを特徴とする請求項12または13に記載の吸水性樹脂。
【請求項15】
上記内部架橋剤(B)の分子量は、40以上500以下であることを特徴とする請求項12ないし14のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項16】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項12ないし15のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項17】
遠心分離機保持容量(CRC)が26g/g以上であることを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項18】
上記内部架橋剤(B)の残存量が、0.1×10−5mol/g以下であることを特徴とする請求項12ないし17のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項19】
請求項12ないし18のいずれか1項に記載の吸水性樹脂と通液性向上剤とを含む吸水剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−521537(P2010−521537A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539552(P2009−539552)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/JP2008/055182
【国際公開番号】WO2008/114848
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】