説明

吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤

【課題】 本発明の解決しようとする課題は、従来の数多くの物性(吸水速度、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、粒度など)以外に、吸水性樹脂が膨潤後に発生する臭気が無い、実使用において不快臭を与えない粒子状吸水剤を与えることである。
【解決手段】 本発明は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明では、高温での加熱処理後に原料由来の不純物および/または副生物を原因とする特定の臭気成分をコントロールすることで、膨潤時に不快臭を発生しない粒子状吸水剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤に関する。さらに詳しくは、紙オムツなど吸収性物品に用いられる吸収体用の粒子状吸水剤で、従来になく実使用時に臭気やエチレングリコールを発生せず、かつ、優れた吸収能を発揮する粒子状吸水剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的とした吸水性樹脂(または吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤)およびパルプ等の親水性繊維が幅広く使用されている。かかる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、アクリロニトリル共重合体の加水分解物または架橋体、アクリルアミド共重合体の加水分解物または架橋体、カチオン性モノマーの架橋重合体等が主原料として用いられている。
【0003】
上記吸水性樹脂に望まれる吸水特性としては、従来から、体液等の水性液体に接した際の高い吸収倍率、優れた吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引量等が唱えられ、特定物性に調整した粒子状吸水剤が提供されている。
【0004】
さらに、近年は、非常に粒度分布が狭い吸水性樹脂粉末や、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂粉末が求められ、加圧下吸収倍率や加圧下通液性などの高いことが必須に求められるようになっている。そして、下記特許文献1〜39のように、これらの吸水性樹脂の諸物性を規定した多くのパラメーター特許や測定法も出願されている。
【0005】
特許文献1では、ゲル強度、可溶分、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。特許文献2では無加圧通液性、吸水速度、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。特定の粒度分布を規定した技術として特許文献3〜6なども提案されている。また、各種荷重での加圧下吸収倍率に優れた吸水性樹脂やその測定法も多く提案され、加圧下吸収倍率単独または他の物性との組み合わせにおいて優れた吸水性樹脂が特許文献7〜16、38、39などに提案されている。
【0006】
また、耐衝撃性に優れた吸水性樹脂が特許文献17、18などに提案されている。また、粉塵量を規定した吸水性樹脂が特許文献19などに提案され、着色の少ない吸水性樹脂が特許文献20などに提案されている。耐尿性を規定するL-アスコルビン酸水溶液などへのゲル耐久性や吸水能に優れた吸水性樹脂が特許文献21、22で提案され、通気性に優れた吸水性樹脂が特許文献23で提案されている。また、残存モノマーの少ない吸水性樹脂が特許文献24に提案されている。
【0007】
さらに特定の物性を持った吸水性樹脂が、特定の物性・構成・ポリマー濃度を有する吸水性物品(紙オムツ)に好適であることが、特許文献25〜32などに提案されている。さらに、表面架橋を行なう際に、樹脂粒子の少なくとも一部を粉砕しながら行なう方法が特許文献33などに提案されている。
【0008】
また、近年では、紙オムツ等の衛生材料は薄型化、すなわち吸水性樹脂濃度が増加する傾向にあり、吸水性樹脂から発生する臭気に対する改善要求が高まっている。臭気に対しては、吸水性樹脂に消臭性能を付与するため、これまでに吸水性樹脂と各種の消臭剤や抗菌剤との組み合わせが提案されている。例えば、吸水性樹脂とツバキ科植物の葉抽出物とからなる吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献34参照。)、針葉樹木抽出エキスと特定の性能を有する吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献35等参照。)、などが知られている。また、近年、吸水性樹脂の臭気として、アクリル酸中の不純物である酢酸やプロピオン酸に注目した技術(例えば、特許文献36参照。)も提案されている。さらに、残存モノマ−に関連して、アクリル酸塩中の不純物であるβ−ヒロドキシプロピオン酸に注目した技術(例えば、特許文献37参照。)も提案されている。
【特許文献1】米国再発行特許Re32649号明細書
【特許文献2】英国特許第2267094号B明細書
【特許文献3】米国特許第5051259号明細書
【特許文献4】米国特許第5419956号明細書
【特許文献5】米国特許第6087002号明細書
【特許文献6】欧州特許第0629441号明細書
【特許文献7】欧州特許第0707603号明細書
【特許文献8】欧州特許第0712659号明細書
【特許文献9】欧州特許第1029886号明細書
【特許文献10】米国特許第5462972号明細書
【特許文献11】米国特許第5453323号明細書
【特許文献12】米国特許第5797893号明細書
【特許文献13】米国特許第6127454号明細書
【特許文献14】米国特許第6184433号明細書
【特許文献15】米国特許第6297335号明細書
【特許文献16】米国再発行特許Re37021号明細書
【特許文献17】米国特許第5140076号明細書
【特許文献18】米国特許第6414214B1号明細書
【特許文献19】米国特許第5994440号明細書
【特許文献20】米国特許第6444744号明細書
【特許文献21】米国特許第6194531号明細書
【特許文献22】欧州特許第0940148号明細書
【特許文献23】欧州特許第1153656号明細書
【特許文献24】欧州特許第0605215号明細書
【特許文献25】米国特許第5147343号明細書
【特許文献26】米国特許第5149335号明細書
【特許文献27】欧州特許第0532002号明細書
【特許文献28】米国特許第5601452号明細書
【特許文献29】米国特許第5562646号明細書
【特許文献30】米国特許第5669894号明細書
【特許文献31】米国特許第6150582号明細書
【特許文献32】国際公開第02/053198号パンフレット
【特許文献33】欧州特許第0937739号明細書
【特許文献34】特開昭60−158861号公報
【特許文献35】特開平11−241030号公報
【特許文献36】国際公開第03/095510号パンフレット
【特許文献37】米国特許6388000号明細書
【特許文献38】米国特許5409771号明細書
【特許文献39】英国特許235307号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、吸水性樹脂の種々の特性を満たすべく、多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツなどの吸収体で吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸収体の吸水性樹脂が高濃度となる傾向を示すなかで、従来の吸水性樹脂では高濃度(吸水性樹脂の高い重量比)の使用に十分に性能を示すとは言えなくなっている。さらに、紙オムツ等吸収体に対する吸水性樹脂の使用量が増加(高濃度化)するに従い、重要な因子となってきている消臭性能についても、吸水剤自体に消臭性能を付与するためにさまざまな消臭剤を検討しても、十分な消臭性能が得られていない。
【0010】
さらに、近年、紙オムツ等の吸収体における吸水性粒子のゴツゴツ感を低減し、また、粒度偏析を少なくして吸収体作製時の粒度ブレを少なくするために、粒度分布が狭い吸水性樹脂粒子が求められている。
【0011】
しかし、実使用時に不快臭が少なく、優れた吸収倍率を示すとともに、粒度分布が狭く粒度偏析が少ないという特性をすべて満たす吸水性樹脂はいまだなかった。
【0012】
すなわち、本願の課題は、実使用時に不快臭が少なく、優れた吸収倍率を示すとともに、粒度分布が狭く粒度偏析が少ないという特性をすべて満たす吸水性樹脂を実現することにより、吸収性物品での実使用時に高物性かつ安全性も高いだけでなく、従来になく膨潤後に発生する不快臭が少なく、快適に使用できる吸水剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者らは、吸水性樹脂(吸水剤)の付加機能として消臭性能(例えば消臭剤の付与)を検討する過程で、意外にも、吸水性樹脂自体が膨潤時に特異的な臭気を有することを見出し、かかる吸水性樹脂自体の臭気が消臭性能を低下させ、その結果、紙オムツ等での実使用での消臭性能を低下させている事実を見出した。
【0014】
そして、吸水性樹脂自体の特異的な臭気の原因を鋭意検討した結果、特定の表面架橋剤(カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤)を用い、高い加圧下吸収倍率および高い無加圧下吸収倍率を有する場合に、吸水性樹脂の原料自体は臭気を有さずとも、得られた製品の実使用時に臭気の問題が特異的に発生して、紙オムツ等吸収体中での吸水剤の実使用での性能を低下させている事実を見出した。また、かかる吸水性樹脂自身の臭気の問題を解消することにより、カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤を用い、高い吸収倍率を有することと、臭気の改善との、相反する特性を初めて兼ね備えた高物性の紙オムツ等の吸水性物品が得られる事実を見出した。
【0015】
さらに、本発明者らは臭気の少ない特定の表面架橋剤を検討する中で、単量体や架橋剤としてエチレングリコールを全く使用しない吸水性樹脂でも残存エチレングリコールが含有される場合があることを見出し、このように、臭気の原因となる単量体や架橋剤を用いない場合にも、選択する表面架橋剤の種類によっては、吸水性樹脂にエチレングリコールが副生して存在し、安全性の問題の原因となることを見出した。そしてかかるエチレングリコールの由来を追求した結果、原料(特にエチレングリコール誘導体;例、エチレンカーボネートやポリエチレングリコール)の表面架橋剤の不純物または分解物であることを見出した。さらに、表面架橋剤としてアルキレンカーボネート(特にエチレンカーボネート)を使用して物性(特に加圧下吸収倍率や加圧下通液性)などを向上させると、多量の表面架橋剤や高温での反応が必要なため、原料でエチレングリコールを全くしない吸水性樹脂でも、また、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートに実質エチレングリコールが含有されずとも、最終製品である吸収性物品にエチレングリコールが副生することを見出した。かかるエチレングリコールによる安全性の問題を解消することにより、表面架橋剤としてアルキレンカーボネートを使用して物性(特に加圧下吸収倍率や加圧下通液性)などを向上させることと、安全性の改善との、相反する特性を初めて兼ね備えた高物性の紙オムツ等の吸水性物品が得られる事実を見出した。
【0016】
さらに、粒度分布が狭く、粒度偏析が少ない吸水性樹脂粒子を得るために細粒化を行なうと、微粉発生量が増えるという問題に着目し、吸水性樹脂粒子の平均粒子径と微粉量と、粒度分布とが、高物性の紙オムツ等の吸水性物品に重要な因子である事実を見出し、平均粒子径や粒度分布と、微粉量という、相反する特性の値を所定の範囲とすることで、粒度分布が狭く粒度偏析が少ない吸水性樹脂粒子が得られることを見出した。
【0017】
かかる新たな知見(特定の表面架橋剤および特定の物性と臭気とが相反、表面架橋剤であるアルキレンカーボネートによる高物性とエチレングリコールの副生残存が相反、平均粒子径と微粉量が相反、5つの物性(無加圧下吸収倍率(CRC)、加圧下吸収倍率(AAP)、質量平均粒子径、粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子の割合、粒度分布の対数標準偏差)が紙オムツ等の実使用に重要)に基づき、本発明者らは、少なくとも5つの特定物性に制御された粒子状吸水剤が実使用で好適であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤(第1の吸水剤)は、カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤で表面架橋処理されたポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を満たすことを特徴としている。
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(f)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発するアルコール系揮発性物質の含有量が0〜10ppm。
【0019】
また、本発明の粒子状吸水剤(第2の吸水剤)は、カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤で表面架橋処理されたポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、上記表面架橋剤がアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤であり、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(g)を満たすことを特徴としている。
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(g)粒子状吸水剤中の残存エチレングリコール含有量(HPLC定量)が0〜40ppm。
【0020】
本発明の粒子状吸水剤は、さらに、アミノアルコール、アルキレンカーボネートおよび多価アルコールから選ばれるアルコール系化合物(ただしエチレングリコールを除く)を含有していることが好ましい。
【0021】
また、本発明の粒子状吸水剤は、さらに、キレート剤、消臭剤、多価金属塩、および、無機微粒子からなる群より選ばれる成分を含んでいてもよい。
【0022】
上記表面架橋剤は、グリセリン、1,3−プロパンジオール、エチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、および、エタノールアミンからなる群より選ばれる1種類以上の化合物であることが好ましい。
【0023】
本発明の粒子状吸水剤は、さらに(h)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発する硫黄系揮発性物質量が0〜0.3ppmであることが好ましい。
【0024】
また、本発明の粒子状吸水剤は、さらに(i)粒子状吸水剤中の、アクリル酸、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量(HPLC定量)が0〜1000ppmであることが好ましい。
【0025】
また、本発明の粒子状吸水剤は、さらに(j)白度としてハンター式測色色差計で示される明度指数L値が80以上であって、クロマチックネス指数を示すa値が−2〜2.5であって、b値が0〜4であることが好ましい。
【0026】
本発明の高濃度吸収体は、本発明の粒子状吸水剤および親水性繊維から成形された吸収体であって、粒子状吸水剤および親水性繊維の合計質量に対して該粒子状吸水剤が30〜100質量%(100質量%は粒子状吸水剤単独)である。
【0027】
本発明にかかる粒子状吸水剤の製造方法は、未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合し架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥し、整粒して下記(a)、(b)、(c)および(d)を満たす吸水性樹脂を得る工程と、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が30g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(c)150μm未満の粒子が0〜8質量%
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.50
上記吸水性樹脂の表面近傍を、エステル結合を形成する表面架橋剤を添加後さらに加熱処理する工程と、上記加熱処理中および/または加熱処理後の吸水性樹脂を雰囲気温度60℃以上の気流下に暴露する工程と、を含むことを特徴としている。
【0028】
本発明にかかる粒子状吸水剤の製造方法において、上記未中和アクリル酸は、該アクリル酸の質量に対してメトキシフェノール10〜200ppm、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量0〜10000ppm、アクリル酸ダイマー量0〜1000ppm、フルフラール0〜10ppm、およびプロトアネモニン0〜10ppmから選ばれる1以上の化合物が該当する範囲内であるアクリル酸であることが好ましい。また、上記表面架橋剤はアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤であることが好ましい。
【0029】
上記アルキレンカーボネートに含有されるエチレングリコール量は、該アルキレンカーボネートの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の粒子状吸水剤およびその製造方法によれば、実使用時に不快臭や安全性の問題が少なく、優れた吸収倍率を示すとともに、粒度分布が狭く粒度偏析が少ないという特性をすべて満たす粒子状吸水剤が実現される。それゆえ、得られる粒子状吸水剤は、従来臭気が特に問題になった高濃度紙オムツ(1枚に多量の吸水性樹脂を使用)など、吸収性物品での実使用時、高物性かつ安全性も高いだけでなく、従来になく不快臭が少なく快適に使用でき、かつ優れた吸収能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の粒子状吸水剤、粒子状吸水剤に使用する吸水性樹脂、および、その原料や反応条件等について説明する。また、本発明における、(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)、(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)、(c)質量平均粒子径(D50)、(d)150μm未満の粒子の割合、(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)、(f)粒子状吸水剤から揮発するアルコール系揮発性物質の含有量、(g)粒子状吸水剤中の残存エチレングリコール含有量、(h)粒子状吸水剤から揮発する硫黄系揮発性物質量(硫黄系揮発成分の含有量)、(i)粒子状吸水剤中のアクリル酸、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量、(j)白度は、後述する実施例に記載する方法によって測定した数値とする。また、本明細書において「重量部」「重量%」は、それぞれ「質量部」「質量%」と読み替えてよい。
【0032】
(1)吸水性樹脂
本発明において吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことであり、例えば、水膨潤性とはイオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指し、また、水不溶性とは水可溶分が50重量%以下のものを指す。なお、これらの測定法は本発明の実施例や、EDANA(Europian Disposables And Nonwovens Association)のERT(EDENA Recommended Test Method) 441.1-99や、470.1-99に準じていればよい。
【0033】
本発明において、吸水性樹脂は、本発明を達成する上で、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合して得られる架橋重合体を乾燥した吸水性樹脂であればよく、ポリカルボン酸系吸水性樹脂をより好適に用いることができる。中でも、さらに好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体が用いられる。
【0034】
また、本発明で用いられる吸水性樹脂は、本願開示の製造方法により製造されるものに限定されず、後述する不飽和単量体由来の構成単位を含む架橋重合体を乾燥したものであればよい。後述する不飽和単量体由来の構成単位とは、例えば重合反応によって各単量体の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(−C=C−)が単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
【0035】
(2)粒子状吸水剤およびその製造方法
本発明で粒子状吸水剤とは、吸水性樹脂を主成分とし、必要により少量の添加剤および/または水を含有する、水性液体の吸収固化剤のことを指し、吸水性樹脂の含有量は全体の、すなわち、粒子状吸水剤を100質量%としたときに、70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲である。上記粒子状吸水剤中の吸水性樹脂以外の成分としては、通常は水が主成分とされ、さらには後述の添加剤が使用される。なお、上記水性液体としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒および/または無機溶媒との混合物、雨水、地下水など、水を含めば特定に制限されないが、好ましくは、尿、特に人尿を挙げることができる。
【0036】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、本発明の物性が得られるように制御されれば特に限定されるものではない。かかる製造方法としては、例えば、表面架橋前に特定粒度に制御して表面架橋する製法、より好ましくは以下の<製法例1>の方法を用いることができる。また、<製法例1>に加えて、例えば、さらに、下記<製法例2>、<製法例3>、または<製法例4>の方法を用いてもよい。
【0037】
<製法例1>
特定の粒度および吸収倍率に制御した吸水性樹脂を得たのち、得られた吸水性樹脂の表面近傍を、エステル結合を形成する表面架橋剤を添加後加熱処理し、該加熱処理中および/または加熱処理後の吸水性樹脂を雰囲気温度60℃以上の気流下に暴露する方法。好ましくは、さらに原料アクリル酸の純度を後述する範囲に制御する。
【0038】
<製法例2>
未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤および必要により連鎖移動剤の存在下で架橋重合し、特定吸収倍率に制御された吸水性樹脂を得たのち、特定の粒度に調整し、得られた特定の粒度および吸収倍率の架橋重合体を表面架橋する工程を含む方法。
【0039】
<製法例3>
未中和アクリル酸を主成分とする特定濃度の不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下で架橋重合し、特定吸収倍率に制御された吸水性樹脂を得たのち、さらに中和し、特定の粒度に調整し、得られた特定の粒度および吸収倍率の架橋重合体を表面架橋する工程を含む方法。
【0040】
<製法例4>
未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合し、特定吸収倍率に制御された吸水性樹脂を得たのち、特定の粒度に調整し、得られた特定の粒度および吸収倍率の架橋重合体を表面架橋する工程を含み、必要により、その重合時、または表面架橋の前後ないし同時に、キレート剤を添加する方法。
【0041】
以下、本発明の粒子状吸水剤の製造方法、さらには本発明の粒子状吸水剤について順次説明する。
【0042】
(3)不飽和単量体
<アクリル酸>
吸水性樹脂を構成する不飽和単量体(以下、適宜単量体と略す)としては、アクリル酸および/またはその塩を主成分として使用することが好ましい。また、本発明の粒子状吸水剤を得るために、特定純度のアクリル酸、すなわち、特定化合物が特定の含有量含まれるアクリル酸を使用することが好ましい。かかるアクリル酸としては、具体的には、メトキシフェノール10〜200ppm、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量0〜10000ppm、アクリル酸ダイマー量0〜1000ppm、フルフラール0〜10ppm、およびプロトアネモニン0〜10ppmから選ばれる1以上の化合物が該当する範囲内であるアクリル酸であることが好ましい。
【0043】
中でも、上記アクリル酸は、アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸の合計含有量が1000ppm〜0ppmで、且つ、アクリル酸ダイマー量が1000ppm〜0ppmであることが好ましい。また、アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸の合計含有量、および、アクリル酸ダイマー量の含有量はそれぞれ500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。フルフラールは5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。また、プロトアネモニンは、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがさらに好ましい。アクリル酸中の酢酸およびプロピオン酸の合計含有量、且つアクリル酸ダイマー量が多い場合、臭気または残存モノマーの要因となり、アルコール系揮発性物質(アルコール換算)など揮発性有機物の少ない本発明の粒子状吸水剤が得にくい。また、フルフラールやプロトアネモニンが多い場合、高倍率の吸水剤となり難い。p−メトキシフェノールは、通常200ppm以下、好ましくは20〜160ppm、さらには30〜100ppmで、重合を制御し促進するに有効である。
【0044】
かかるアクリル酸を得る方法としては、アクリル酸の酸化条件を制御したり、蒸留や晶析の条件を上記範囲になるように厳密に制御すればよい。精製方法として蒸留法を採用する場合は理論段数の増加(例えば6〜20段増加すること)や還流比の増加等により、また、精製方法として晶析法を採用する場合は晶析回数の増加(例えば3〜10回増加すること)等により、それぞれ精留度を上げて上記範囲のアクリル酸を得ることができる。なお、蒸留法と晶析法は組み合わせて用いてもよい。また、精製後のかかるアクリル酸の保存は低い温度(10〜25℃)に制御すればよい。
【0045】
<その他の単量体>
本発明で用いる吸水性樹脂を構成する単量体としては、アクリル酸以外の「その他の単量体」を共重合成分として併用してもよいし、「その他の単量体」だけから吸水性樹脂を得てもよい。かかる「その他の単量体」としては、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、これらのアンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性の不飽和単量体等を挙げることができる。なお、本発明において「水溶性」とは、室温の水100gに、1g以上溶解するものをいう。
【0046】
また、ポリカルボン酸系吸水性樹脂として、上記の不飽和単量体の架橋重合体以外でも、ポリアミノ酸架橋体(例、ポリアスパラギン酸)やカルボキシ化ポリマー架橋体(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル澱粉)などの吸水性樹脂を用いてもよい。
【0047】
本発明でアクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合、本発明を達成するため、該アクリル酸(塩)以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸および/またはその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%の割合である。
【0048】
なお、単量体として酸基含有の不飽和単量体を使用する場合、その塩としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、得られる吸水性樹脂の性能、工業的入手の容易さ、安全性等の面からナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0049】
またアクリル酸などの酸基含有不飽和単量体は、物性面およびpH面から酸基が中和されることが好ましく、酸基の中和率は通常20〜100モル%、さらには好ましくは30〜95モル%、より好ましく40〜80モル%である。酸基の中和は単量体で行ってもよいし、<製法例3>のように重合体で行ってもよいし、それらを併用しても良い。
【0050】
(4)架橋性単量体(内部架橋剤)
本発明で用いられる吸水性樹脂は上記不飽和単量体を重合することにより得られる架橋重合体を乾燥することにより得られるが、かかる架橋重合体は、架橋性単量体を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、物性面から好ましくは、一分子中に2個以上の重合性不飽和基、2個以上の反応性基を有する架橋性単量体(吸水性樹脂の内部架橋剤とも言う)を共重合又は反応させることによって得られる。なお、架橋重合体であることは、上記水不溶性であることでも規定される。
【0051】
上記内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0052】
これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種類または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂や粒子状吸水剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0053】
これら内部架橋剤の使用量は上記単量体(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内とされる。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%よりも多い場合には、充分な吸収特性が得られないおそれがある。内部架橋剤の使用量が上記範囲より少ないと、架橋構造が十分に形成されず、上記(1)で述べたような水膨潤性水不溶性の架橋重合体を得ることができなくなるため好ましくない。また、内部架橋剤の使用量が、上記範囲より多いと、水可溶分などは低減されるが、吸水性樹脂や吸水剤の吸収倍率の低下を引き起こし、紙オムツ等の吸収性物品の吸収量を低下させるため好ましくない。
【0054】
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記不飽和単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0055】
(5)重合開始剤
本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述の単量体を重合するに際して使用される開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤等を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は物性面から0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%(対全単量体)である。これらの重合開始剤が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、一方重合開始剤が2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0056】
(6)重合方法および重合溶液
本発明で用いられる吸水性樹脂を製造するために不飽和単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、物性面から上記単量体を水溶液とすることによる、水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は水溶液の温度や単量体によって決まり、特に限定されるものではないが、例えば<製法例1>+<製法例2>、<製法例1>+<製法例4>のように、予め中和された酸基含有不飽和単量体で重合(中和重合法)を行なう場合は、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%である。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0057】
上記の重合を開始させる際には、上記重合開始剤を使用して開始させることができる。また、上記重合開始剤の他にも、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独で、あるいは上記重合開始剤と併用して用いても良い。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、上下限で15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。
【0058】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などに記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などに記載されている。これらに例示の単量体や開始剤なども本発明では適用できる。
【0059】
(7)その他の重合方法
(a)未中和のカルボン酸基(アクリル酸)が主成分である単量体の重合
上記(6)の重合方法は、通常、予め中和された酸基含有不飽和単量体で重合(中和重合法)されるが、例えば、上記<製法例3>のように、重合方法として、未中和の酸基含有不飽和単量体、特に未中和アクリル酸を主成分として重合を行い、重合後に酸基を中和する、いわゆる酸重合&後中和法を用いてもよい。
【0060】
例えば<製法例3>では、未中和アクリル酸を主成分とする特定濃度の不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合したのち中和し、特定の粒度に調整し、得られた特定の粒度および吸収倍率の架橋重合体をさらに表面架橋する。
【0061】
このような酸重合&後中和法では、未中和アクリル酸が主成分、特に30〜100モル%、さらには90〜100モル%、特に100モル%の不飽和単量体を重合させて得られる架橋重合体について、1価塩、特に、アルカリ金属塩を添加し、架橋重合体のカルボキシル基を部分的に中和してアルカリ金属塩とすることで本発明で用いられる吸水性樹脂を得ることが出来る。かかる酸重合&後中和法により得られる吸水性樹脂を本発明の粒子状吸水剤として用いた場合、吸収能が高く、尿に対する安定性に優れた粒子状吸収体を得ることが可能になる。
【0062】
なお、酸重合&後中和法においても、上述の重合方法(6)と同様に、アクリル酸とともに必要により「その他の単量体」も使用することが出来る。また、「その他の単量体」、「架橋性単量体(内部架橋剤)」、および「重合開始剤」の種類、添加量等詳細については、上記(3)(4)(5)記載の内容と同様である。また、酸重合&後中和法において、溶媒を使用する場合の不飽和単量体全体(アクリル酸+その他の単量体)の濃度は特に限定されるものでは無いが、通常5〜40%質量%、好ましくは10〜30質量%の低濃度である。また、重合開始温度は低温であり、10〜25℃の水溶液とされる。
【0063】
酸重合&後中和法において、重合後の架橋重合体は必須に中和される。得られた架橋重合体中の酸基を中和して部分的にアルカリ金属塩基とするために使用されるアルカリ金属化合物としてはアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなど)などが挙げられる。また、アンモニア、アルカノールアミン、炭酸アンモニウム等のアミンを用いてもよい。得られる吸水性樹脂の性能、工業的入手の容易さ、安全性等の面からナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。本酸重合&後中和法においては、架橋重合体中の酸基の50〜90モル%、好ましくは60〜80モル%がアルカリ金属化合物との中和反応によりアルカリ金属塩に変換される。重合により得られる架橋重合体をアルカリ金属化合物で中和する方法としては溶媒を使用して重合した場合、得られたゲル状重合体を約1cm以下の小片に裁断しながらアルカリ金属化合物の水溶液を添加し、ゲルをさらにニーダーやミートチョパーで混練する方法がある。また、本発明の粒子状吸水剤を得る上で、中和温度は好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃であり、中和は米国特許6187872号の請求項1に記載の第一中和指数(粒子200個の中和度合いで規定)が10以下であって、均一さを示すことが好ましい。
【0064】
(b)連鎖移動剤を添加する方法(例えば、<製法例2>)
本発明の粒子状吸水剤の製造方法では、重合時に必要により連鎖移動剤が使用されても良い。上記不飽和単量体、内部架橋剤、および、重合開始剤に加えて水溶性連鎖移動剤を存在させて重合することで、得られる架橋重合体から製造された吸水性樹脂を本発明の粒子状吸水剤として用いた場合、吸収能が高く、尿に対する安定性に優れる吸収体を得ることが可能になる。
【0065】
本発明で重合に使用する上記水溶性連鎖移動剤としては、水または水溶性エチレン性不飽和単量体に溶解するものであれば特に限定されず、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜燐酸塩類などを挙げることが出来る。具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ドデシルメルカプタン、チオグリコール類、チオリンゴ酸、3−メルカプトプロピオン酸、イソプロパノール、次亜燐酸ナトリウム、蟻酸、およびこれらの塩類からなる群から選ばれる1種類または2種類以上が用いられるが、その効果から次亜燐酸ナトリウムなどの次亜燐酸塩を用いることがより好ましい。
【0066】
上記水溶性連鎖移動剤の使用量は水溶性連鎖移動剤の種類、単量体水溶液のモノマー濃度にもよるが、全単量体に対して0.001〜1モル%であり、好ましくは0.005〜0.3モル%である。使用量が0.001モル%未満の場合、本発明に用いる内部架橋剤量では架橋密度が高く吸収倍率が低くなりすぎるので好ましくない。また1モル%を超えて使用すると水可溶成分量が増加し、かえってゲルの安定性が低下するので好ましくない。
【0067】
(8)乾燥
上述した重合方法により得られる上記架橋重合体は含水ゲル状架橋重合体として得られる。得られた架橋重合体は、必要に応じて例えば含水率10%以上70%未満のゲルの状態で粉砕し、さらに乾燥される。乾燥は通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は重合体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。なお、本発明では、乾燥後の架橋重合体を吸水性樹脂と称する。
【0068】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率は特に限定されないが、室温でも流動性を示す粒子(粉末)であり、より好ましくは含水率が0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。含水率が上記範囲の上限より高くなってしまうと、吸水性樹脂の流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなったり、特定の粒度分布に制御できなくなってしまう恐れがある。なお、吸水性樹脂の含水率は吸水性樹脂に含まれる水分量で規定され、吸水性樹脂1gを直径52mmのアルミカップに広げ、180℃で3時間無風乾燥した場合の乾燥減量の、乾燥前の質量に対する割合(%)で規定される。
【0069】
用いられる乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等目的の含水率となるように種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
【0070】
以上のような製法で得られた、本発明で用いられる吸水性樹脂の形状は、粉末として取り扱えるのであれば、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状、不定形状、造粒粒子状、多孔質構造を有する粒子等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0071】
(9)粉砕・分級および粒度制御、ならびに吸収倍率
上記(8)の工程で得られた吸水性樹脂は、本発明の粒子状吸水剤を得るために、好ましくは粉末として特定の粒度に調整される。
【0072】
本発明の粒子状吸水剤に用いるために好ましい上記吸水性樹脂の粒径は、質量平均粒子径が通常150〜600μm、好ましくは180〜500μm、より好ましくは200〜450μm、特に好ましくは220〜430μmに狭く制御され、かつ、150μm未満の粒子の割合が、0〜8質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%に制御される。
【0073】
また、本発明の粒子状吸水剤を得るために好ましい上記吸水性樹の嵩比重(JIS K−3362−1998年度で規定)は好ましくは0.40〜0.90g/ml、より好ましくは0.50〜0.80g/mlの範囲に調整される。また600〜150μmの間の粒子が全体の好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、さらに好ましくは98〜100質量%とされる。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.20〜0.45、特に好ましくは0.20〜0.40とされる。
【0074】
粒度の調整は、架橋重合体を逆相縣濁重合で製造した場合には、粒子状で分散重合および分散乾燥させて調整してもよいが、通常、特に水溶液重合の場合、乾燥後に粉砕および分級し、相反する質量平均粒子径D50と、粒子径150μm未満の粒子の割合を制御しながら、特定粒度に調整する。例えば、質量平均粒子径D50を400μm以下と小さくしながら、150μm未満の微粒子量を少なくするという特定粒度への調製では、必要により、上記粉砕後に粗粒子と微粒子とをふるい等の一般的な分級装置で除去してもよい。その際に除去される粗粒子としては、好ましくは5000μm〜400μmの粒子径を有する粒子、より好ましくは2000μm〜400μmの粒子径を有する粒子、さらに好ましくは1000μm〜400μmの粒子径を有する粒子である。また、粒度の調整により除去される微粒子としては、好ましくは200μm未満の粒子径を有する粒子、より好ましくは150μm未満の粒子径を有する粒子である。なお、除去された粗粒子はそのまま廃棄してもよいが、一般的には、再度、上記の粉砕工程で粉砕する。また、除去された微粒子は、次項(10)の、微粒子の大粒径化工程を行なえば、ロスを低減することができる。このようにして粉砕工程を経て特定の粒度に調整して得られた吸水性樹脂の形状は、不定形破砕状の形状を示す。
【0075】
なお、上記(8)の工程で得られた吸水性樹脂は上記粒度に調整されるが、好ましくは、表面架橋前の生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が30g/g以上、より好ましくは32〜70g/g、さらに好ましくは35〜65g/g、特に好ましくは40〜60g/gとされる。無加圧下吸収倍率(CRC)の制御は内部架橋剤など、前述の重合条件や乾燥条件を制御して行えばよい。なお、吸水性樹脂は、本発明の粒子状吸水剤を得るために、後述する表面架橋処理を施されるので、本発明の粒子状吸水剤の無加圧下吸収倍率が27g/g以上であるためには、表面架橋処理前の吸水性樹脂の無加圧下吸収倍率は、27g/g以上であることが通常は必須である。なお、加熱によって吸水性樹脂自体の吸収倍率が向上する内部架橋剤(米国特許第5389722号明細書、米国特許第5532323号明細書等参照。)を使用する場合、27g/g未満でもよい。
【0076】
(10)微粒子の大粒径化
上記(9)の粉砕・分級および粒度制御によって除去された微粒子は、より大きな粒子または粒子状凝集物に再生し、本発明で用いられる吸水性樹脂として用いることができる。このような微粒子の大粒径化の方法としては、米国特許6228930号、同5264495号、同4950692号、同5478879号および欧州特許844270号などに記載の方法を用いることが可能である。なお、このように再生された再生吸水性樹脂は実質的に多孔質構造を有する。
【0077】
本発明で用いられる吸水性樹脂に含まれる、本工程によって再生される再生吸水性樹脂の割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。本工程によって、再生された再生吸水性樹脂は、同じ粒子径を有する、再生されていないものと比較して表面積が大きいため、最終的に得られる粒子状吸水剤ではより速い吸収速度を得ることができ、性能的に有利である。このように、大粒径化された再生吸水性樹脂は、一般には、上記(8)乾燥工程で得た吸水性樹脂と混合された後に、粉砕・分級および粒度制御が行なわれる。
【0078】
(11)表面架橋処理
本発明の粒子状吸水剤は、好ましくは、例えば、上記<製法例1>及び<製法例2〜4>に代表されるように、特定の粒度および吸収倍率に制御し、得られた特定の粒度および吸収倍率の吸水性樹脂をさらに表面架橋して得た表面架橋処理後の吸水性樹脂を含んでいる。本発明の粒子状吸水剤は、例えば、かかる表面架橋によってその無加圧下吸収倍率(CRC)を低下、好ましくは表面架橋前の無加圧下吸収倍率(CRC)の95〜50%、さらには90〜60%にまで低下させて得られる。なお、無加圧下吸収倍率(CRC)の低下は架橋剤の種類や量、反応温度や時間などで適宜調整すればよい。
【0079】
<表面架橋剤>
本表面架橋処理工程で用いることができる表面架橋剤としては、必須にカルボキシル基とエステル結合を形成する表面架橋剤が使用される。かかる架橋剤を使用しない場合、後述の特定物性(無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率)が達成され難いだけなく、一般に安全性の高いエステル結合を形成する表面架橋剤(好ましくは多価アルコール、アルキレンカーボネート、オキセタン化合物、アミノアルコール化合物)に比べて、他の架橋剤によっては、残存架橋剤の安全性の問題となる場合もある。
【0080】
ポリカルボン酸系吸水性樹脂の官能基(カルボキシル基)とエステル結合(好ましくは脱水エステル結合)を形成する表面架橋剤としては、多価アルコールないしアミノアルコールなどの分子内に水酸基を有する架橋剤;アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン、オキセタンなどの開環によって水酸基を発生する表面架橋剤が例示できる。
【0081】
かかる表面架橋剤としては、例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、meso−エリスリトール、D−ソルビトール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール化合物;N−アシルオキサゾリジノン、2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物(米国特許6559239号);1,3−ジオキソラン−2−オン(別称;エチレンカーボネ−ト)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキセスパン−2−オンなどのアルキレンカーボネート化合物(米国特許5409771号);2−イミダゾリジノン等の環状尿素や3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等のオキセタン化合物(米国特許公開2002/0072471);エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール化合物等が挙げられ、これらの1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0082】
なかでも本発明の特徴である臭気成分の発生を抑制しながらその表面架橋効果を十分に発揮するためには、上記表面架橋剤は、炭素数3〜6で且つ分子内に含有する水酸基が2〜3の多価アルコール、アミノアルコール、炭素数3〜5のアルキレンカーボネート、および炭素数2〜10のオキセタン化合物からなる群より選ばれる1種類以上の表面架橋剤であることがより好ましく、グリセリン、1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、エチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、および、エタノールアミンからなる群より選ばれる1種類以上の表面架橋剤であることがさらに好ましい。
【0083】
かかる表面架橋剤の使用量は、表面架橋剤として用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂に対して、0.001〜10質量%の範囲内が好ましく、0.01〜5質量%の範囲内がより好ましい。
【0084】
また、上記表面架橋剤は、さらに「その他の架橋剤」を含んでいてもよい。「その他の架橋剤」としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物などを挙げることができる。「その他の架橋剤」は、表面架橋剤全体に対し、0〜10質量%、さらに0〜5質量%、特に0〜1質量%で併用してもよい。
【0085】
<表面架橋剤の混合および加熱処理>
本発明で表面架橋を行う場合には、水を用いることが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、吸水性樹脂に対して0.5〜20質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。
【0086】
また、水と表面架橋剤以外に親水性有機溶媒を用いてもよいが、得られる粒子状吸水剤の臭気の原因となることを避けるため、できるだけ少ない使用量であることが好ましい。その使用量は、吸水性樹脂に対して0〜10質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0〜5質量%の範囲内、さらに好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0質量%(実質使用しない)の範囲内である。なお、本願でいう親水性有機溶媒とは、100gの室温の水に1g以上、好ましくは10g以上、さらに好ましくは100g以上溶解する有機溶媒をいう。また、上記親水性有機溶媒の沸点は150℃以下であることが好ましい。
【0087】
さらに、上記表面架橋剤に加えて、有機酸(乳酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸)や無機酸(リン酸、硫酸、亜硫酸)などの酸物質、苛性ソーダや炭酸ソーダなどの塩基物質、硫酸アルミニウムなどの多価金属などを、本発明の臭気レベルの粒子状吸水剤が得られる範囲内であれば、吸水性樹脂に対して0〜10重量%、さらには0〜5重量%、特に0〜1%程度で併用してもよい。
【0088】
本発明において表面架橋を行う場合には、水及び/または親水性有機溶媒と表面架橋剤とを予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。
【0089】
本発明の吸水性樹脂と該表面架橋剤、水や親水性有機溶媒を混合する際に用いられる混合装置としては両者を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0090】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は加熱処理されることが好ましい。加熱温度(熱媒温度または材料温度)は、好ましくは120〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0091】
加熱処理を行う装置としては、表面架橋剤と吸水性樹脂の混合物に対して均一に熱が伝わるように処理が行われる装置であれば、特に限定されるものではないが、均一な加熱処理を確実に行うために、大きな混合装置を備えていることが好ましい。上記加熱処理装置としては、ベルト式、溝型攪拌式、スクリュー型、回転型、円盤型、捏和型、流動層式、気流式、赤外線型、電子線型の乾燥機又は加熱炉が挙げられる。
【0092】
<気流に暴露>
本発明の好ましい製造方法は気流に暴露することを特徴とする。すなわち、表面架橋剤混合後の吸水性樹脂の加熱処理時および/または加熱処理後に該吸水性樹脂は気流下に暴露されることが好ましい。上記気流下における吸水性樹脂の暴露とは、吸水性樹脂または粒子状吸水剤の加熱処理機および/またはその他プロセス中の内部に充満した気体を循環および置換することを意味する。この操作を行うことにより、高温での加熱処理によって発生する不快臭の原因となる揮発成分を除去することが可能となる。上記気流に用いられる気体としては、水蒸気、空気、窒素、および、これらの1種類以上の混合気体などであり、その供給量は適宜決められるが、通常、吸水性樹脂または粒子状吸水剤が存在する加熱処理機および/またはその他プロセスにおける単位容積1mあたり、0.001〜100m/hr、さらには0.01〜10m/hrの範囲である。また、別の指標である気流の線速で表現するならば、気流の線速は好ましくは0.01〜100m/s、より好ましくは0.1〜50m/sの範囲である。さらに、暴露する時間は、好ましくは1分〜120分、より好ましくは10分〜90分の範囲である。気流は送風により生じさせてもよいし、吸引により生じさせてもよい。また、その際、10%以内、好ましくは、1%以内の減圧または加圧となってもよい。
【0093】
上記気流下の暴露は、表面架橋剤混合後の吸水性樹脂の加熱処理時に同時に行う場合には、気体供給装置ないし気体排気装置を具備する上記乾燥機または加熱炉を用いることが好ましく、加熱処理時の温度設定(好ましくは120℃〜250℃)が著しく低下してエネルギー的に悪影響を及ぼさない範囲で、乾燥機ないし加熱炉の空間を占める気体(水蒸気、空気、窒素、および、これらの1種類以上の混合気体など)を置換することが好ましい。
【0094】
上記気流下の暴露が加熱処理後の工程で行われる場合には、該表面架橋後の吸水性樹脂の冷却機、輸送中に輸送ラインないし配管内を通気することが好ましい。この場合の該気体の温度としては、適宜加熱されても冷却されてもよいが、通常、不快臭の原因となる揮発成分が吸水性樹脂または粒子状吸水剤から揮発しやすいように、その温度が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。なお、暴露される気流の温度が50℃未満である場合には、上記揮発成分の除去が困難になる惧れがあるため好ましくない。また、加熱処理後の工程で行うので表面架橋をおこなう加熱処理温度である120℃より低く設定すべきである。
【0095】
また、この特定温度の気流に暴露する工程は、不快臭低減という効果に加えて、表面架橋剤としてアルキレンカーボネート化合物、特に、1,3ジオキソラン−2−オンを用いた場合に高温処理によって副生成するエチレングリコールを除去する効果もある。詳しくは後述するが、エチレングリコールは人体に悪影響を及ぼすおそれのある物質であるため、できるだけこの工程で低減または除去することが好ましい。
【0096】
さらに、不快臭、エチレングリコール等を除去する別の方法としては、上述した特定温度の気流に暴露する方法以外に、得られた表面架橋処理後の吸水性樹脂または粒子状吸水剤を洗浄する方法を挙げることができる。例えば、不快臭の原因となる物質を低減または除去するために、低沸点の溶媒で洗浄してもよい。かかる低沸点の溶媒としては、例えば、沸点が0℃以上70℃未満、さらには30℃以上50℃未満であるものがより好ましく、それらの中でも、アセトン、ジメチルエーテル、塩化メチレン等が好ましい。また、エチレングリコールは水溶性であるので、吸水性樹脂が膨潤しない範囲で水を併用してもよい。なお、かかる溶媒による洗浄を行なった場合には、使用した溶媒由来の臭気が残存する可能性がある。したがって、後述するアルコール系揮発性物質の含有量が所定の範囲になるように十分に低沸点溶媒を除去する必要がある。低沸点溶媒を除去する方法としては、例えば、得られた吸水性樹脂または粒子状吸水剤の性能を損なわない範囲で、これらを熱風乾燥させる方法等を挙げることができる。
【0097】
(12)造粒
本発明の粒子状吸水剤を得るために、上記表面架橋処理後の吸水性樹脂は、必要に応じて、水を加えて粉末として特定の粒度に調整される。また添加する水の中に、後述するキレート剤、植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩などを含んでもよい。これらのキレート剤、植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩などの含有量は、水溶液の濃度が、0.001〜50質量%の範囲である。好適な造粒方法や造粒特性は特願2004−211856号に例示されている。
【0098】
(13)キレート剤の添加
本発明の粒子状吸水剤は、キレート剤、特に多価カルボン酸およびその塩を配合することが出来る。
【0099】
特に、上記製法例4は、未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合したのち、特定の粒度に調整し、得られた特定吸収倍率の架橋重合体粒子をさらに表面架橋し、その重合時、または表面架橋の前後ないし同時に、キレート剤を添加する方法であり、本発明の粒子状吸水剤は製法例4を用いてキレート剤を添加することで得ることもできる。
【0100】
本発明の粒子状吸水剤に用いることが出来るキレート剤としては、好ましくは、FeやCuに対するイオン封鎖能やキレート能が高いレート剤、具体的にはFeイオンに対する安定度定数が10以上、好ましくは20以上のキレート剤が好ましく、さらに好ましくは、アミノ多価カルボン酸およびその塩、特に好ましくは、カルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸およびその塩である。
【0101】
これら多価カルボン酸は具体的には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、N−アルキル−N‘−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルケニル−N’−カルボキシメチルアスパラギン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。中でも、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸およびその塩が最も好ましい。
【0102】
本発明においてキレート剤、特にアミノ多価カルボン酸の使用量は、主成分である吸水性樹脂100重量部に対して微量成分、通常0.00001〜10重量部、好ましくは0.0001〜1重量部である。使用量が10重量部を超えると、使用に見合う効果が得られず不経済になるばかりか、吸収量が低下するなどの問題が生じる。また、0.00001重量部よりも少ないと十分な添加効果が得られない。
【0103】
(14)その他添加剤
本発明ではさらに、上記したキレート剤以外にも、下記の(A)植物成分、(B)有機酸の多価金属塩、(C)無機微粒子((D)複合含水酸化物を含む)、(E)還元性物質等を微量成分として添加し、これにより本発明の粒子状吸水剤に種々の機能を付与させることも出来る。
【0104】
これら(A)〜(E)および(F)の添加剤の使用量は、目的や付加機能によっても異なるが、通常、その1種類の添加量として、吸水性樹脂100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.002〜3重量部の範囲である。通常、0.001重量部より少ないと十分な効果や付加機能が得られず、10重量部以上の場合は添加量に見合った効果が得られないか、吸収性能の低下を招くことがある。
【0105】
(A)植物成分
本発明にかかる粒子状吸水剤は、消臭性を発揮させるために、上記量で植物成分を配合することが出来る。本発明において用いることが出来る植物成分は、好ましくは、ポリフェノール、フラボンおよびその類、カフェインから選ばれる少なくとも1種類の化合物;タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子および没食子酸から選ばれるすくなくとも1種類の化合物等である。好適な植物成分は、例えば米国特許6469080号、WO2002/423479号、国際出願番号PCT2003/JP6751号などに例示されている。
【0106】
(B)多価金属塩
本発明にかかる粒子状吸水剤は、粉体流動性の向上、吸湿時のブロッキング防止のために上記量で多価金属塩、特に有機酸の多価金属塩を配合することが出来る。
用いられる有機酸の多価金属塩や混合方法は、例えば、国際出願番号でPCT/JP2004/1355号、PCT/JP2004/1007号、PCT/JP2004/1294号、PCT/JP2004/9242号などに例示されている。本発明に用いることのできる炭素数が分子内に7個以上の有機酸多価金属塩(PCT/JP2004/1355号)は好ましくは、脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなる。
【0107】
(C)無機微粒子
本発明にかかる粒子状吸水剤は、吸湿時のブロッキング防止のために無機微粒子、特に水不溶性無機微粒子を配合することが出来る。本発明に使用される無機粉末としては、具体的には例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられる。このうち二酸化珪素および珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が0.001〜200μmの二酸化珪素および珪酸(塩)がさらに好ましい。
【0108】
(D)複合含水酸化物
本発明にかかる粒子状吸水剤は、優れた吸湿流動性(吸水性樹脂または粒子状吸水剤が吸湿した後の粉体の流動性)を示し、さらに、優れた消臭性能を発揮させるために亜鉛と珪素、または、亜鉛とアルミニウムを含む複合含水酸化物(例えば、特願2003−280373号、PCT/JP2004/10896号に例示)を配合することが出来る。
【0109】
(E)還元性物質
本発明にかかる吸水剤は、臭気や着色の防止のために、還元性物質、特に無機還元性物質、さらには含硫黄ないし含酸素の還元性物質を使用することが好ましい。用いられる還元性物質としては、米国特許4863989号、同4863989号などに例示の亜硫酸(塩)ないし亜硫酸(水素塩)などが挙げられる。
【0110】
(F)その他
抗菌剤、水溶性高分子、水不溶性高分子、水、有機微粒子など、その他添加剤は特に本発明の粒子状吸水剤が得られる限り、その添加は任意である。
【0111】
(15)本発明の粒子状吸水剤
上記製法、さらには製法例1〜4などを製法の一例とする本発明の粒子状吸水剤は、従来にない新規な性能を示す新規な粒子状吸水剤である。すなわち、本発明は新たな知見(平均粒子径と微粉量が相反、特定の表面架橋剤および特定の物性と臭気が相反、5つの物性が紙オムツ等の吸収性物品の実使用に重要)に基づき、本発明の粒子状吸水剤は、少なくとも5つの特定物性に制御された吸水剤が実使用で好適であることを見出して、設計および製造された吸水剤である。
【0112】
本発明の粒子状吸水剤(第1の吸水剤)は、カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤でさらに表面架橋処理したポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分する粒子状吸水剤であって、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を満たすことを特徴とする。
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(f)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発するアルコール系揮発性物質の含有量が0〜10ppm。
【0113】
以下、本発明の粒子状吸水剤についてさらに説明する。
【0114】
<アルコール系揮発性物質>
本発明でいうアルコール系揮発性物質とは、本願の実施例で規定される測定法で検知されるアルコール揮発性物質量(ガス検知管で定量される雰囲気濃度)のことであり、アルコール検知管、特にメタノールガス検知管で定量される揮発性成分のことである。
【0115】
アルコール系揮発性物質はメタノールガス検知管で検出および定量される揮発性成分であるため、必ずしもアルコールに限定されるものではなく、本願ではアルコール換算の総揮発性成分量で規定されるものである。よって、場合により前述の酢酸、プロピオン酸、残存モノマー(アクリル酸)など、アルコール以外の揮発性物質も、アルコール系揮発性物質としてカウントされることもある。
【0116】
本発明者らは、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の付加機能として消臭性能(例えば消臭剤の付与)を検討する過程で、意外にも、吸水性樹脂自体が膨潤時に特異的な臭気を有することを見出し、かかる吸水性樹脂自体の膨潤時に発生する臭気が消臭性能を低下させ、その結果、紙オムツ中等での実使用での消臭性能を低下させている事実を見出した。そして、かかる吸水性樹脂自体の臭気、および、紙オムツ等での実使用での消臭性能を種々さまざまな手法で分析および定量を検討した結果、吸水性樹脂自体の臭気、および、紙オムツ等での実使用での消臭性能がアルコール検知管で測定される雰囲気濃度と非常によく相関する事実を見出し、かかる新規パラメーターの臨界的範囲を見出し、本願を完成させた。
【0117】
本発明の粒子状吸水剤の(f)アルコール系揮発性物質の含有量は0〜10ppm、好ましくは0〜8ppm、より好ましくは0〜5ppm、特に好ましくは0ppm(検出できない)である。この範囲を外れると不快臭の原因となる臭気物質の揮発量が多くなり本発明の効果を示さない。
【0118】
<吸収倍率>
本発明者は、従来の吸水剤では特定の表面架橋剤(カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤)および特定の物性(高い加圧下吸収倍率、高い無加圧下吸収倍率)と、臭気(消臭性能)が相反する特性であること見出したが、それらを解決して高物性の紙オムツ等の吸水性物品が得られる事実を見出した。
【0119】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤の(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)は27g/g以上、好ましくは28g/g以上、29g/g以上、30g/g以上、33g/g以上、36g/g以上とされる。無加圧下吸収倍率が27g/g未満である場合には紙オムツ等に使用した場合に高物性を示さない惧れがある。また、上限は特には問わないが、製造上の困難によるコストアップから60g/g程度で十分である。
【0120】
本発明の粒子状吸水剤の(b)4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)は20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、さらに好ましくは24g/g以上、特に好ましくは26g/g以上とされる。加圧下吸収倍率が20g/g未満である場合には紙オムツ等に使用した場合に高物性を示さない惧れがある。また、上限は特には問わないが、製造上の困難によるコストアップから35g/g程度で十分である。
【0121】
<粒度分布>
また、特定の表面架橋剤、特定の物性および臭気に加えて、吸水剤(吸水性樹脂)の平均粒子径と微粉量も高物性の紙オムツ等の吸水性物品に重要な因子である事実を見出し、さらに、それらを制御する過程で平均粒子径と微粉量も相反する特性であることを見出し、それらを解決して高物性の紙オムツ等の吸水性物品が得られる事実を見出した。
【0122】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤は(c)質量平均粒子径(D50)は200〜450μm、好ましくは220〜430μm、より好ましくは250〜400μmに狭く制御され、かつ、(d)150μm未満の粒子の割合が、0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%に制御され、かつ、(e)対数標準偏差(σζ)は0.20〜0.40、好ましくは0.20〜0.38、特に好ましくは0.20〜0.35に制御される。
【0123】
粒度調整は、表面架橋前に粒度が制御され、また、表面架橋後に粉砕および分級、造粒されて特定粒度にされる。粒度がこれらの範囲から外れると、紙オムツ等に使用した場合、本発明の効果を示さない。
【0124】
<残存エチレングリコール含有量>
本発明の粒子状吸水剤の残存エチレングリコール含有量(HPLC定量)は0〜40ppm、好ましくは0〜30ppm、より好ましくは0〜20ppm、特に好ましくは、0ppm(検出しない)である。残存エチレングリコール含有量が上記範囲を越えた場合、臭気の原因となるだけでなく人体に悪影響を及ぼす惧れがあるため好ましくない。
【0125】
本発明者らは単量体や架橋剤としてエチングリコールを全く使用しない吸水性樹脂でもエチレングリコールが含有される場合があることを見出し、エチレングリコールに起因する安全性の問題が存在することを見出した。かかるエチレングリコールの由来を追求した結果、原料(特にエチレングリコール誘導体;例、エチレンカーボネートやポリエチレングリコール)の表面架橋剤の不純物または分解物であり、特に分解物であることを見出した。さらに、表面架橋剤としてアルキレンカーボネート(特にエチレンカーボネート)を使用して物性(特に加圧下吸収倍率や加圧下通液性)などを向上させると、多量の表面架橋剤や高温での反応が必要なため、原料でエチレングリコールを全く使用しない吸水性樹脂でも、また、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートに含まれるエチレングリコールやエチレングリコール系不純物が実質的にゼロの高純度のものを使用しても、最終製品にエチレングリコールが副生することを見出した。
【0126】
よって、本発明の粒子状吸水剤の好ましい製法としては、エチレングリコールを全く使用しないだけでなく、エチレンカーボネートやポリエチレングリコールなどに含まれるエチレングリコール、エチレングリコール系不純物を低減(例えば純度98%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上)させた上で、副生したエチレングリコールを吸水性樹脂の製造時に除去、好ましくは洗浄ないし揮発、具体的には前述の雰囲気温度60℃以上の気流下で暴露すればよい。
【0127】
このように、本発明は、原料の純度を高めて、粒子状吸水剤中のエチレングリコール含有量を低減するというだけではなく、高物性を達成するために、実質的にエチレングリコールやエチレングリコール系不純物がゼロの高純度の原料(特にエチレンカーボネート)を使用してもエチレングリコールが副生することを見出したことに基づくものである。
【0128】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤(第2の吸水剤)は、カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤でさらに表面架橋処理したポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分する粒子状吸水剤であって、
上記エステル結合しうる表面架橋剤がアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤であり、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(g)を満たすことを特徴とする。
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
および
(g)吸水剤中の残存エチレングリコール含有量(HPLC定量)が0〜40ppm
かかる第2の吸水剤は、好ましくは、上記の(f)アルコール系揮発性物質の含有量0〜10ppmをさらに満足し、さらに、後述の物性(h)〜(j)を満足し、後述の添加物を含有する。
【0129】
従来、表面架橋剤としてアルキレンカーボネート(特にエチレンカーボネート)を使用して物性(特に加圧下吸収倍率や加圧下通液性など)を向上させると、原料でエチレングリコールを全く使用しない吸水性樹脂や、実質エチレングリコールがゼロの高純度の原料を用いた吸水性樹脂でも、最終製品に原料や不純物としてのエチレングリコールの量をはるかに超える量のエチレングリコールが副生することを本発明者は見出した。かかるエチレングリコールが安全性のみならず、種々の問題を起こしていたが、本発明ではかかる問題のない新規な吸水剤を提供する。
【0130】
かかる粒子状吸水剤は、例えば、前述の製造方法、すなわち、粒子状吸水剤の製造方法であって、
未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を架橋剤の存在下に架橋重合し、架橋重合体を得る工程と、
得られた架橋重合体を乾燥し、さらに整粒して下記(a)、(b)、(c)および(d)を満たす吸水性樹脂を得る工程と、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が30g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(c)150μm未満の粒子が0〜8質量%
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.50
上記吸水性樹脂の表面近傍を、エステル結合を形成する表面架橋剤でさらに加熱処理する工程と、
上記加熱処理中および/または加熱処理後の吸水性樹脂を雰囲気温度60℃以上の気流下に暴露する工程と、
を含む、粒子状吸水剤の製造方法で得られる。さらに、かかる製造方法で、上記エステル結合しうる表面架橋剤としてアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤(特に第2の吸水剤の場合)を用いることが好ましい。
【0131】
(16)本発明の粒子状吸水剤のその他の特性
<第2成分>
本発明の吸水剤は、主成分の吸水性樹脂以外にさらに、アミノアルコール、アルキレンカーボネートおよび多価アルコール(ただしエチレングリコールを除く)から選ばれるアルコール系化合物を含有することが好ましい。なお、アルキレンカーボネートはアルコール誘導体(例えば、エチレンカーボネートはエチレングリコールと二酸化炭素)であるため、本発明では、水酸基の有無によらずアルキレンカーボネートもアルコール系化合物と呼ぶ。
【0132】
かかるアルコール系化合物の含有によって、紙オムツ等への固定性が向上し、さらに吸水剤の粉塵も防止され、吸水速度も向上する。かかるアルコール系化合物の含有量は吸水性樹脂の重量に対して10〜10000ppm、好ましくは20〜5000ppm、より好ましくは、30〜3000ppmである。アルコール系化合物は表面架橋剤とて使用して特定量を残存させてもよいし、別途、添加してもよい。ただし、上記の範囲内であってもアルコール系揮発性物質が前述(f)の範囲を越える場合には膨潤時の臭気の原因となる惧れがあるため、(f)アルコール系揮発性物質の含有量の範囲内となるように設定される。
【0133】
<第3成分>
主成分の吸水性樹脂以外に、上記したキレート剤、消臭剤、多価金属塩、および、無機微粒子から選ばれる微量成分をさらに含むことが好ましい。
【0134】
<表面架橋剤>
上記エステル結合性表面架橋剤は、グリセリン、1,3−プロパンジオール、エチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、および、エタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。その純度は臭気の原因となる不純物の混入を避けるため高いほうが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97%以上であることが最も好ましい。
【0135】
<硫黄系揮発成分>
本発明の粒子状吸水剤の(h)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発する硫黄系揮発性物質量は、通常0〜10ppm、好ましくは0〜5ppm、より好ましくは0〜2ppm、さらに好ましくは0〜0.3ppm、特に好ましくは0ppm(検出できない)である。
【0136】
硫黄系揮発成分の含有量が10ppmを超える場合、消臭作用を臨界的に低下させ好ましくない。かかる硫黄系揮発成分は原料の硫黄系化合物(例、過硫酸塩、亜硫酸水素塩)の分解ないし不純物に由来すると推定され、硫黄系化合物を全く使用しないか、硫黄系化合物の不純物を低減(例えば純度99.99%以上)させればよい。
【0137】
<残存モノマー>
本発明の(i)粒子状吸水剤中のアクリル酸、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量(HPLC定量)は0〜1000ppm、さらには0〜500ppm、好ましくは0〜300ppm、より好ましくは0〜200ppm、特に好ましくは0〜100である。合計含有量が500pmを超える場合、消臭作用を臨界的に低下させ好ましくない。かかるためには、例えば、上記の高純度のアクリル酸を使用して上記の重合を行なえばよい。
【0138】
<白度>
本発明の粒子状吸水剤の(j)白度は、ハンター式測色色差計で示される明度指数L値および、クロマチックネス指数を示すa値、b値で表される。その範囲は、L値が80以上、a値が−3〜3、b値が−5〜15であることが好ましく、L値が83以上、a値が−2.5〜2.5、b値が−3〜13であることがより好ましく、L値が85以上、a値が−2〜2、b値が0〜10であることが特に好ましい。
【0139】
上記白度を外れる場合、紙オムツ等の吸水性物品として実用に不適であるだけでなく、高濃度の使用では特に問題となる場合がある。かかるためには、例えば、上記の高純度のアクリル酸を使用して上記の重合を行なえばよい。
【0140】
<600〜150μmの粒子>
本発明の粒子状吸水剤は嵩比重(JIS K−3362で規定)は好ましくは0.40〜0.90g/ml、より好ましくは0.50〜0.80g/mlの範囲に調整される。また、600〜150μmの粒子の間に存在する粒子(標準ふるい分級で規定)が全体の好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100重量%、特に好ましくは90〜100質量%とされる。上記粒度を外れる場合、紙オムツ等の吸水性物品として実使用に不適であるだけでなく、消臭性能をも低下させる。かかるためには、表面架橋前の上記の粒度制御、表面架橋後の造粒や分級で達成される。
【0141】
<ボルテックス吸水速度>
本発明の粒子状吸水剤の吸収速度は生理食塩水へのボルテックス吸水速度として60秒以下、好ましくは1〜55秒、より好ましくは2〜50秒である。吸収速度が60秒を超える場合、紙オムツ等の吸収体に吸水性樹脂、あるいは粒子状吸収体を使用した場合に十分な吸収能力を発揮しない場合もある。
【0142】
<可溶分量、可溶分劣化増加量および可溶分劣化増加倍率>
本発明の粒子状吸水剤の1時間可溶分量は必須に40質量%以下、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.2〜25質量%、さらに好ましくは0.3〜20質量%、特に好ましくは0.4〜15質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%である。可溶分量が上記上限範囲を超える場合、吸水時に可溶分が吸収体に溶出され、血液や尿等の吸収体への液の拡散性が阻害する場合があるので好ましくない。なお、下限以下の達成は一般に困難でコストに見合わない。
【0143】
本発明の粒子状吸水剤の可溶分劣化増加量は、通常0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜8質量%、特に好ましくは0〜5質量%である。劣化増加量が15質量%を超えると、尿に対する吸水性樹脂の安定性が不足し、実際に長時間吸収体中で使用した場合に架橋重合体としての構造を保持することが難しくなり、十分な吸収能力を発揮できない惧れがある。
【0144】
本発明の粒子状吸水剤の可溶分劣化増加倍率は、通常1〜4倍、好ましくは1〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍である。劣化増加倍率が4倍を超えると、尿に対する吸水性樹脂の安定性が不足し、実際に長時間吸収体中で使用した場合に架橋重合体としての構造を保持することが難しくなり、十分な吸収能力を発揮できない惧れがある。なお、これらのパラメータについては、特願2004−96083号に測定方法が記載されている。
【0145】
(17)吸収体および吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤の用途は特定に限定されないが、好ましくは、吸収体および吸収性物品に使用され、特に従来臭気が特に問題になった高濃度紙オムツ(1枚に多量の吸水性樹脂を使用)で優れた吸収能を発揮する。
【0146】
本発明の吸収体は、上記の粒子状吸水剤を用いて得られる。なお、本発明で吸収体とは、粒子状吸水剤と必要により親水性繊維で成型された吸収材(例えばシート状)のことであり、親水性繊維がゼロの場合は紙や不織布上に粒子状吸水剤が固定されて得られる。
【0147】
本発明の吸収体は、粒子状吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)は高濃度、すなわち、30〜100%質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%である。かかる吸収体は密度0.05〜0.50g/cm、坪量10〜1000g/mの範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0148】
本発明の吸収性物品の製造方法は、例えば繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(コア)を作成し、コアを、液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、特に子供用紙オムツ、大人用紙オムツや生理用ナプキンとすればよい。
【0149】
本発明の粒子状吸水剤は優れた吸収特性を示すものである。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい子供用紙オムツ、大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられ、それらに特に限定されるものではないが、吸収性物品の中に存在する粒子状吸水剤が消臭性能に優れ、漏れ量も少なく、使用感およびドライ感が著しいことにより、装着している本人、介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【実施例】
【0150】
以下に本発明の実施例と比較例を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0151】
なお、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)、吸収性物品の諸性能は以下の方法で測定した。また実施例において使用される電気機器はすべて200Vまたは100V、60Hzの条件で使用した。さらに、吸水性樹脂、粒子状吸水剤、吸収性物品は、特に指定がない限り、25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。また、生理食塩水として0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0152】
また、比較として市販品の吸水性樹脂や紙オムツ、紙オムツの吸水性樹脂で比較試験する際、流通過程で吸湿している場合、適宜、減圧乾燥(例、60〜80℃で16時間程度)して吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂1gを直径52mmのアルミカップに広げ、180℃で3時間無風乾燥した場合の乾燥減量の、乾燥前の質量に対する割合(%)で規定)を平衡(5質量%前後、2〜8質量%)にまで乾燥したのちに比較すればよい。さらに、下記測定法や実施例に例示の試薬や器具は適宜相当品で代替してもよい。
【0153】
(a)生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Cenrifuge Retension Capacity)
後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)W(g)(約0.20g)を不織布製の袋(60mm×85mm、材質はEDANA ERT 441.1-99 に準拠)に均一に入れシールして、25±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s)で3分間水切りを行った後、袋の質量W(g)を測定した。また、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W(g)を測定した。そして、これら質量W、Wから、次式に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=((質量W(g)−質量W(g))/W(g))−1
(b)生理食塩水に対する4.8kPaでの加圧下吸収倍率(AAP/Absorbency Against Pressure)
400メッシュのステンレス製金網(目の大きさ38μm)を円筒断面の一辺(底)に溶着させた内径60mmのプラスチック製支持円筒の底の金網上に、後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)W(g)(約0.90g)を均一に散布し、その上に外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との壁面に隙間が生じずかつ上下の動きは妨げられないピストン(cover plate)を載置し、支持円筒と粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)とピストンの質量W(g)を測定した。このピストン上に、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)に対して、ピストンを含め4.8kPaの荷重を均一に加えることができるように調整された荷重を載置し、測定装置一式を完成させた。直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルターを置き、25±2℃に調温した生理食塩水をガラスフィルターの上部面と同レベルになるように加えた。その上に直径9cmの濾紙(トーヨー濾紙(株)製、No.2)を1枚載せて表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0154】
上記測定装置一式を上記湿った濾紙上にのせ、液を荷重下で吸収させた。液面がガラスフィルターの上部から低下したら液を追加し、液面レベルを一定に保った。1時間後に測定装置一式を持ち上げ、荷重を取り除いた質量W(g)(支持円筒と膨潤した粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)とピストンの質量)を再測定した。そして、これら質量W、Wから、次式に従って加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0155】
加圧下吸収倍率(g/g)=(質量W(g)−質量W(g))/W(g)
(c)質量(重量)平均粒子径(D50)、粒子径150μm未満の重量百分率、および対数標準偏差(σζ)
後述する参考例、実施例および比較例で得られた吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるいで分級篩い分けし、粒子径150μm未満の重量百分率を実測するとともに、各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ = 0.5 × ln(X2/X1)
(X1はR=84.1質量%、X2は15.9質量%の時のそれぞれの粒径)
なお、分級篩い分けは、吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤10.00gを上記目開きのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0156】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0157】
(d)アルコール系揮発性物質の含有量(ppm)
ガラスシャーレ(株式会社相互理化学硝子製作所発行のGENERAL CATALOGUE A−1000(2003年発行)に記載、コード:305−07、外径×高さ=120mm×25mm)に、後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)6.00gを均一に撒布した。次いで、円形(直径116mm)に切った通気性で通液性のヒートロンペーパー(南国パルプ工業株式会社、品種:GSP−22)1枚で粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を覆い(ヒートロンペーパーでない場合は不織布で代用)、ヒートロンペーパー(または不織布)の円周3箇所をガラスシャーレ内壁にテープ(10mm×10mm)で固定した。3Lの臭い袋(近江オドエアーサービス(株)製)の一辺を開口し、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を撒布したガラスシャーレを入れた後、臭い袋の開口部分を粘着テープで隙間がないように閉じた。臭い袋に備えられたガラス管部から、臭い袋内を一旦減圧にした後、無臭空気1.2Lを注入し、続いて、外気の混入を防ぎながら臭い袋内のシャーレにテフロン(登録商標)チューブを備えたガラス漏斗を用いて、25±2℃に調温した0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)30mlを一気に注ぎ、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を均一に膨潤させ、シリコンゴム栓で密栓した。膨潤させ37℃の恒温機で放置し、60分後に取り出した後、室温で放置した。室温放置から10分後、シリコンゴム栓をはずし、外気の混入を防ぎながら、ガス採取器((株)ガステック製、GV−100S)およびガス検知管((株)ガステック製、No.111LL)を用いて雰囲気濃度を測定した。そして、この雰囲気濃度を吸水剤から揮発するアルコール系揮発性物質の含有量(ppm)とした。なお、当該測定方法では、粒子状吸水剤を用いずに、生理食塩水のみを用いて同様の操作を行なってもガス検知管が、変色することがある。かかる場合は、生理食塩水のみを用いた該変色域から検出された空試験検出値を減じて補正した(検出限界2ppm)。
【0158】
(e)硫黄系揮発性物質の含有量(硫黄系揮発性物質量)(ppm)
ガス検知管として((株)ガステック製、No.4LT)を用いた以外は(f)アルコール系揮発性物質の測定と同様の操作を繰り返して雰囲気濃度を測定した。そして、この雰囲気濃度を吸水剤から揮発する硫黄系揮発性物質量(ppm)とした。なお、当該測定方法では、粒子状吸水剤を用いずに、生理食塩水のみを用いて同様の操作を行なってもガス検知管が、変色することがある。かかる場合は、生理食塩水のみを用いた該変色域から検出された空試験検出値を減じて補正した(検出限界0.1ppm)。
【0159】
(f)残存モノマーの含有量(ppm)
後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)500mgを1Lのイオン交換水に分散させて、長さ40mmで直径8mm(8mmφ)の円筒型回転子で1時間攪拌後に膨潤ゲルを濾過した。得られた濾液の残存モノマーを液体クロマトで分析することで、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)の残存モノマーを定量した。
【0160】
(g)残存エチレングリコール含有量
粒子状吸水剤2gを、メタノール水溶液2ml(水:メタノール=1:2の混合比)に加えて10分放置した後、さらに48mlのメタノールを加えて超音波発生装置を用いて振動を与えながらリンスした。リンス後、ろ過によりメタノール溶液を分離し、その30mlをエバポレーターにて蒸発乾固させた。得られた乾固物を3mlの燐酸キャリア水溶液にて再度溶解させることで、残存エチレングリコール測定サンプルとした。得られた測定サンプルは液体クロマトで分析することで、粒子状吸水剤の残存エチレングリコール含有量を定量した。
【0161】
(h)白度
ハンター式測色色差計を用いて明度指数L値、クロマチックネス指数a値およびb値を求めた。
【0162】
(i)吸収速度評価(Vortex法)
予め調整された生理食塩水に1000質量部に食品添加物である食用青色1号ブリリアントブルー=FCF0.02重量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで直径8mm(8mmφ)の円筒型回転子で600rpmで攪拌する中に、後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)2.0gを投入し、吸収速度(秒)を測定した。終点は、JIS K 7224(1996年)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。
【0163】
(j)吸湿ブロッキング率(質量%)
後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)2gを底面の直径52mm、高さ22mmのアルミニウムカップの底に均一に散布し、あらかじめ25℃、相対湿度90%に調整した恒温恒湿器(タバイエスペック製PLATIOOUS LUCIFER PL−2G)にすばやく入れ、60分間放置した。その後、吸湿した粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を直径7.5cm、目開き2000μmのJIS標準ふるいに移す。この時、吸湿した粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)がアルミカップに強固に付着し、ふるいに移せない場合は、吸湿しブロッキングを起こした状態の粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を、できるだけ崩さないように注意しながら剥がし取ってふるいに移す。これをすぐに、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により8秒間ふるい、ふるい上に残存した粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)の重量W(g)およびふるいを通過した粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)の重量W(g)を測定した。
吸湿ブロッキング率(質量%)=重量W(g)/(重量W(g)+重量W(g))×100
により吸湿ブロッキング率(質量%)を算出した。吸湿ブロッキング率が低いほど、吸湿流動性に優れており、粉体の取り扱い性等が向上する。
【0164】
(k)可溶分量、可溶分劣化増加量および可溶分劣化増加倍率
特願2004−96083号公報の実施例に記載されている水可溶成分および耐尿性評価の方法に従って、可溶分量、可溶分劣化増加量および可溶分劣化増加倍率を求めた。
【0165】
(l)吸収体性能評価
後述する実施例および比較例で得られた粒子状吸水剤(又は吸水性樹脂)を、吸収体(コア)として性能評価するために吸収体を作成し加圧下(4.8kPa)でのコアの吸収量評価を行った。
【0166】
まず、評価用の吸収体の作成方法を以下に示した。
【0167】
後述する粒子状吸水剤(または吸水性樹脂)1質量部と、木材粉砕パルプ1質量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に広げ、直径60mmφの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPa(2kgf/cm)で1分間プレスすることにより、坪量が約520g/mの評価用吸収体を得た。
【0168】
続いて、加圧下(4.8kPa)でのコアの吸収量評価の方法を以下に示した。
【0169】
なお、測定手順は、上記(b)生理食塩水に対する4.8kPaでの加圧下吸収倍率(AAP)の評価方法において、粒子状吸水剤の替わりに上記で作成した評価用吸収体をプラスチック製支持円筒の底の金網上に配置し、生理食塩水の吸収時間を10分としたこと以外は同様の手順で行い、10分後の吸収量を加圧下(4.8kPa)でのコアの吸収量(g)とした。
【0170】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p−メトキシフェノール200ppm)酸を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp−メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0171】
〔アクリル酸ナトリム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20〜40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0172】
〔参考例1〕
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.3gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)の粒度分布を表2に示す。
【0173】
〔参考例2〕
参考例1において乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmの金網で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(b)を得た。得られた吸水性樹脂(b)の粒度分布を表2に示す。
【0174】
〔参考例3〕
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を参考例1と同様に脱気したのち、参考例1の反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(c)を得た。得られた吸水性樹脂(c)の粒度分布を表2に示す。
【0175】
〔実施例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0176】
〔実施例2〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、1,3−プロパンジオール0.3質量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(2)に水溶液を2質量部、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムが表面架橋された吸水性樹脂(2)に対して50ppmとなるように噴霧混合した。得られた混合物を60℃で1時間硬化し、さらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発成分の含有量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。また、可溶分量は8質量%、劣化後の1時間可溶分量は10質量%であった。
【0177】
〔比較例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100質量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.85質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された比較用吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋された比較用吸水性樹脂(1)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、比較用粒子状吸水剤(1)を得た。比較用粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0178】
〔比較例2〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100質量部にエチレンカーボネート0.5質量部、水2質量部、エタノール2質量部からなる表面架橋剤4.5質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、密閉式の加熱炉を用いてその上部空間の気体が外気と置換しない状態で、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された比較用吸水性樹脂(2)を得た。得られた表面架橋された比較用吸水性樹脂(2)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、比較用粒子状吸水剤(2)を得た。比較用粒子状吸水剤(2)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0179】
〔比較例3〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(b)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された比較用吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋された比較用吸水性樹脂(3)をさらに目開き850μmのふるいを通過させることにより、比較用粒子状吸水剤(3)を得た。比較用粒子状吸水剤(3)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0180】
〔実施例3〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、1,3−プロパンジオール0.3量量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(3)に水2質量部を噴霧混合し、得られた混合物を60℃で1時間硬化し、さらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(3)を得た。粒子状吸水剤(3)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0181】
〔実施例4〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(4)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(4)を得た。粒子状吸水剤(4)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0182】
〔比較例4〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100質量部に、1,4ブタンジオール0.3質量部と、プロピレングリコール0.5質量部と、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.8質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された比較用吸水性樹脂(4)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(4)を得た。比較用粒子状吸水剤(4)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0183】
〔実施例5〕
実施例2で得られた粒子状吸水剤(2)に微粒子状のステアリン酸カルシウム(関東化学株式会社製)0.1質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(5)を得た.得られた粒子状吸水剤(5)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、さらに、吸湿ブロッキング率を評価して結果を表3に示した。なお、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量は、添加前の粒子状吸水剤(2)と同じであった。
【0184】
〔実施例6〕
実施例3で得られた粒子状吸水剤(3)に微粒子状の二酸化珪素・アエロジル200(日本アエロジル社製)0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(6)を得た.得られた粒子状吸水剤(6)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、さらに、吸湿ブロッキング率を評価して結果を表3に示した。なお、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量は、添加前の粒子状吸水剤(3)と同じであった。
【0185】
なお、比較のために、比較用粒子状吸水剤(1)および(4)も同様に測定し、表3に示した。
【0186】
〔実施例7〕
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)を吸収体として性能評価するために上記(l)吸収体性能評価の方法に従って評価用吸収体(1)を作成した。得られた評価用吸収体(1)の加圧下(4.8kPa)でのコアの吸収量を測定し、表4に示した。
【0187】
また、評価後の吸収体を成人の被験者10人による臭気官能試験を行った。評価方法は、不快な臭気がない(0点)から不快な臭気がある(5点)まで、被験者の不快度合いに応じて点数を報告してもらい、平均を臭気ポイントとした。この臭気ポイントは、低い方が不快臭が少ない。その結果も併せて表4に示した。
【0188】
〔実施例8〜10〕
実施例7において、粒子状吸水剤(1)に替えて、粒子状吸水剤(3)、(5)(6)を用いた以外は同様の操作を行い、評価用吸収体(2)〜(4)を得た。得られた評価用吸収体を実施例7と同様に評価し、結果を表4に示した。
【0189】
〔実施例11〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100質量部に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン0.2質量部、1,3−プロパンジオール0.3質量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を噴霧混合した。得られた混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(7)を得た。この表面架橋された吸水性樹脂(7)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(7)を得た。粒子状吸水剤(7)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0190】
〔実施例12〕
比較例2において、密閉式の加熱炉の代わりにパドル型混合加熱処理機を用いて、その上部空間の気体を外部と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理した後、さらに、該加熱処理物を線速1m/s、90℃の加熱空気の気流下に60分暴露して吸水性樹脂(8)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(8)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0191】
〔実施例13〕
実施例4で得られた吸水性樹脂(4)にエタノールアミン0.1質量部、水1.9質量部からなる水溶液を噴霧混合した。得られた混合物を線速1m/s、90℃の加熱空気の気流下に60分間暴露して硬化し、さらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(9)を得た。粒子状吸水剤(9)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
【0192】
〔比較例5〜8〕
実施例7で用いた粒子状吸水剤(1)に替えて、比較用粒子状吸水剤(1)〜(4)を用いた以外は同様の操作を行い、比較用吸収体(1)〜(4)を得た。得られた評価用吸収体を実施例7と同様に評価し、結果を表4に示した。
【0193】
【表1】

【0194】
【表2】

【0195】
【表3】

【0196】
【表4】

【0197】
本発明の粒子状吸水剤は、表1〜2にあるように、アルコール系揮発成分や硫黄系揮発成分を含まず、膨潤状態でゲルからの臭気がない、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、吸収速度の優れたものであり、必要により無機微粒子、多価金属塩、消臭剤などを添加することで、高い耐ケーキング性(低いブロッキング率、表3記載)、耐尿性、消臭性能をも示す。
【0198】
本発明の粒子状吸水剤を使用した吸収性物品(表4では紙オムツ)においては、戻り量の少ない高性能の吸収性物品(紙オムツ)を与える。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤に関する。さらに詳しくは、紙オムツなど吸収性物品での実使用時、臭気を発生せず、さらに優れた吸収能を発揮する粒子状吸水剤に関するものである。
【0200】
本発明により得られた粒子状吸水剤を紙オムツなどの薄型吸収体に使用した場合、従来の吸収体に比べ、非常に優れた吸収性能をもち、不快臭の少ない吸収体を提供することが出来るという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤で表面架橋処理されたポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)を満たす粒子状吸水剤、
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(f)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発するアルコール系揮発性物質の含有量が0〜10ppm。
【請求項2】
カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤で表面架橋処理されたポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、
上記表面架橋剤がアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤であり、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(g)を満たす粒子状吸水剤、
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(g)粒子状吸水剤中の残存エチレングリコール含有量(HPLC定量)が0〜40ppm。
【請求項3】
さらに、アミノアルコール、アルキレンカーボネートおよび多価アルコールから選ばれるアルコール系化合物(ただしエチレングリコールを除く)を含有する、請求項1または2記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
さらに、キレート剤、消臭剤、多価金属塩、および、無機微粒子からなる群より選ばれる成分を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
上記表面架橋剤が、グリセリン、1,3−プロパンジオール、エチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、および、エタノールアミンからなる群より選ばれる1種類以上の化合物である、請求項1〜4の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
さらに(h)ガス検知管で定量される雰囲気濃度として規定される、粒子状吸水剤から揮発する硫黄系揮発性物質量が0〜10ppmである、請求項1〜5の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
さらに(i)粒子状吸水剤中の、アクリル酸、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量(HPLC定量)が0〜1000ppmである、請求項1〜6の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
さらに(j)白度としてハンター式測色色差計で示される明度指数L値が80以上であって、クロマチックネス指数を示すa値が−2〜2.5であって、b値が0〜4である、請求項1〜7の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の粒子状吸水剤および親水性繊維から成形された吸収体であって、粒子状吸水剤および親水性繊維の合計質量に対して該粒子状吸水剤が30〜100質量%(100質量%は粒子状吸水剤単独)である高濃度吸収体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状吸水剤の製造方法であって、
未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合し架橋重合体を得る工程と、
得られた架橋重合体を乾燥し、整粒して下記(a)、(b)、(c)および(d)を満たす吸水性樹脂を得る工程と、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が30g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(c)150μm未満の粒子が0〜8質量%
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.50
上記吸水性樹脂の表面近傍を、エステル結合を形成する表面架橋剤を添加後さらに加熱処理する工程と、
上記加熱処理中および/または加熱処理後の吸水性樹脂を雰囲気温度60℃以上の気流下に暴露する工程と、
を含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項11】
上記未中和アクリル酸は、該アクリル酸の質量に対してメトキシフェノール10〜200ppm、酢酸およびプロピオン酸の合計含有量0〜10000ppm、アクリル酸ダイマー量0〜1000ppm、フルフラール0〜10ppm、およびプロトアネモニン0〜10ppmから選ばれる1以上の化合物が該当する範囲内であるアクリル酸で
ある請求項10記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項12】
上記表面架橋剤がアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤である請求項10または11記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項13】
上記アルキレンカーボネートに含有されるエチレングリコール量が、該アルキレンカーボネートの質量に対して0.1質量%以下である請求項12記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−116535(P2006−116535A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276541(P2005−276541)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】