説明

吸湿フィルタおよび加湿装置

【課題】60℃以下の温風で吸湿フィルタから水を脱離して加湿空気を室内に供給する。
【解決手段】加湿装置10筐体内に吸湿フィルタ16と、室内空気12を前記吸湿フィルタ11に通過させ室外に排気するための送風排気手段17からなる吸湿風路19と、加熱手段11と前記吸湿フィルタ16に通気して室内に送風するための送風手段13とからなる脱離風路22とを備える。吸湿風路19にて吸湿フィルタ16に水分を吸着させた後、前記吸湿フィルタ16は脱離風路22までスライド移動し、加熱手段11にて温められた空気が前記吸湿フィルタ11を通過して水分が脱離し、加湿空気を室内に供給する。そして、前記吸湿フィルタ11は、多孔質材料としてメソポーラスシリカ26上に、潮解性を有するアルカリ土類金属のハロゲン化物として塩化カルシウム27を添着した吸湿材料24を添着した通気性ハニカムとしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿フィルタとそれを搭載した無給水の加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸湿フィルタを用いた無給水の加湿装置においては、特許文献1に記載のものが知られており、空気中の水分を吸湿剤によって吸着し、水分を吸着した吸湿剤を再生用ヒータによって加熱して、濃縮した水分を回収し室内に供給する加湿装置を内蔵した空気調和機が知られている。以下、前記加湿装置の構成を図9とともに説明する。
【0003】
この加湿装置は、空気中の水分を吸着する通風孔を有した回転式の吸湿フィルタ1と、前記吸湿フィルタ1に室内空気2を送風する第一送風機3と前記吸湿フィルタ1を通過した乾燥空気を室外に排出する室外送風口4と、前記吸湿フィルタ1を加熱して再生する再生用ヒータ5と、前記再生用ヒータ5と前記吸湿フィルタ1の両方に通風し、室内空気2を送風する第二送風機6と、室内に加湿後の空気を送風する室内送風口7とで構成される加湿装置8として使用される。
【0004】
室内の空気を第一送風機3にて吸い込む。第一送風機3の風路では送風した空気は吸湿空気として、空気中の水分が吸湿フィルタ1に吸着される。また、水分を吸着され、乾燥した空気は、送風口4より室外に排出される。吸湿フィルタ1はギアモータなどの回転手段9で回転することによって移動し、やがて第二送風機6の風路に入る。第二送風機6の風路では、加湿装置8内の吸湿フィルタ1の通気上流にある再生ヒータ5によって温められて、再生空気となり、再生空気によって吸湿フィルタ1が吸着した水分は脱離して、送風口7より室内に戻され、結果、室内に加湿空気が送られる。
【0005】
室外の湿度が低い場合は自然換気によって室内に供給される空気が乾燥するため、室内の湿った空気が室外に逃げてしまい、室内の水分が減少して室内は乾燥する。一方、加湿装置があることにより、室内から排気される空気は水分を取り除かれ、水分が室内に戻されるため、乾燥した空気が自然換気等によって供給されても、室内は、加湿装置がない場合に比べ乾燥しにくい、もしくは加湿される。
【0006】
また、特許文献2に記載されたものでは、前記、特開平10−47707号公報であった吸湿剤への送風をひとつのファンで行い、それを分割して、一方を吸湿空気とし、他方を再生ヒータに通過させて再生空気としている加湿装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−47707号公報
【特許文献2】特開平10−61977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の加湿装置の吸湿フィルタは、ヒータを使って空気を80℃以上、好ましくは100℃以上に加熱して、水分を脱離する必要があった。そのため、ヒータの設置およびその周りのスペースが必要なのはもちろんであるが、ヒータで再生するために大きな電力が必要であるという課題も有していた。また、100℃以上の高温で加熱して脱離するため、得られる高湿度な空気は高温であり、低温の空気と混合させてから供給する必要があった。
【0009】
高温で脱離するのは、従来の吸湿フィルタで用いられる吸湿材料がゼオライトやシリカゲルといった材料であり、水分を脱離して再度吸湿ができるように再生するためには80℃以上、好ましくは100℃以上の温度が必要であるためであり、低温でも吸着と脱離での水分量差が得られる低温再生型の吸湿剤を得ることが課題であった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、吸湿フィルタの水分の脱離のための空気温度が、60℃以下の空気であっても水分を脱離可能で、かつ、60℃以下の空気でも再生できる無給水タイプの吸湿フィルタ及び加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために本発明は、少なくとも比表面積が300m/g以上の多孔質体とアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を混合した吸湿材料とを含み、空気中の水分を吸着可能な通風構造体とした吸湿フィルタ及びそれを用いた加湿装置としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸湿フィルタと、前記吸湿フィルタを搭載した無給水の加湿装置は、40℃から60℃という低温で吸着と脱離量の水分量差が得られ、水分を吸湿した前記吸湿フィルタが低温の熱源、例えば60℃以下の温風によって水分を脱離することができるため、エネルギー効率のよいヒートポンプ暖房や、燃料電池の排熱や、ガスタービンの排熱などの熱源を利用することができ、そのためヒータで再生する無給水の加湿装置より省エネ性を向上させることができる。また、60℃以下の低温で脱離するため、得られる空気温度も低くなり、そのまま加湿空気として装置外に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における加湿装置の概略説明図
【図2】(a)同実施の形態1におけるコルゲートハニカム形状吸湿フィルタの概略斜視図、(b)同概略断面図
【図3】同実施の形態1における吸湿材料と基材の概略説明図
【図4】同実施の形態1における吸湿フィルタの製造方法を示すフローチャート
【図5】同実施の形態1における吸湿フィルタシートの厚み方向の概念を表す説明図
【図6】同実施の形態1における吸湿フィルタの通気方向の概念を表す説明図
【図7】(a)本発明の実施の形態5における加湿装置の概略説明図、(b)同加湿装置に用いる吸湿フィルタの断面図
【図8】本発明の実施例1の吸湿剤の脱離温度と水分回収率との関係を示す説明図
【図9】従来の加湿装置の概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、吸湿材料として、少なくとも比表面積が300m/g以上の多孔質体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物である吸湿材料とを含み、空気中の水分を吸着可能な通風構造体とした吸湿フィルタとしてあり、塩化カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物である潮解性の材料を多孔質体に添着することによって、前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の潮解によって吸湿材料が吸湿するものであり、40℃から60℃の温度であっても乾燥、すなわち水分の脱離が起きるため、低温で再生する吸湿フィルタを提供することができる。また、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が潮解現象によって吸湿する際、液状化するが、多孔質体の表面によって液が保持される。これによって、多孔質体とアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の混合物が液状化することが防がれ、脱離により潮解した前記ハロゲン化物は再度結晶化して、再び吸湿で
きる。これを繰り返すことで連続的に吸湿フィルタに通気して除湿を行う、もしくは逆に水分を脱離させることで加湿を行うことができる。以上のことから、潮解した前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を多孔質体の表面で保持するために、比表面積は300m/g以上が望ましく、またそのため、前記多孔質体としてはその表面に親水基を有するものが望ましい。
【0015】
第2の発明は、前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の粒子径が前記多孔質体の粒子径より小さいことを特徴とする吸湿フィルタである。前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が潮解現象によって吸湿する際、潮解によって液状化するが、前記多孔質体の表面によってその液が保持される。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が多孔質体より微粒子で多孔質体表面に存在することによって、潮解した際その液体同士が凝集する可能性が少なくなり、再度乾燥によってアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が結晶化し、吸湿できるように再生される。
【0016】
第3の発明は、前記発明の多孔質体がゼオライトもしくはメソポーラスシリカもしくはメソポーラスアルミナもしくは活性炭のいずれかひとつもしくは複数の混合体であることを特徴とする吸湿剤を用いた吸湿フィルタである。これらの多孔質体は相対湿度が高いとき、大きな吸湿量を持っている。そのため、潮解性物質が長時間の吸湿によって潮解し、液状化したとき、つまりミクロ的には100%の相対湿度となったときにも、潮解性物質が高比表面積をもつこれらの多孔質体表面で保持される。前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の潮解による液だれの発生や、潮解したものが液滴となって凝集し、乾燥して再結晶することによって吸湿前より大きな結晶となることによって、吸湿容量や吸湿速度が低下してしまうことを防ぐことができる。吸湿潮解しても、乾燥することによって、微細に結晶化して、吸湿できるよう再生される。
【0017】
第4の発明は、前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が、前記多孔質体の重量に対して、重量比1%以上40%以下の割合で混合されている吸湿フィルタであり、塩化カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物である潮解性の材料を多孔質体に添着することによって吸湿フィルタの吸湿容量を増やすことができる。特に40%を越えるとハロゲン化物が潮解した際に潮解したハロゲン化物同士が凝集して大きな塊となることが判明し、その一方で、潮解性物質を多く含む場合、潮解した材料によって液だれや腐食といったことがおきるため、多孔質体重量に対して40%以下の重量でかつ多孔質体よりも細かい粉末にした状態で添着する必要がある。逆に、吸湿容量を増やすためには少なくとも重量比1%以上の割合で混合されなくてはならない。
【0018】
第5の発明は通風構造がコルゲートハニカム形状であり、体積あたりの表面積を大きくすることができ、吸湿フィルタを通過する水分と吸湿材料を高効率で接触させ、吸湿させることができる。なお、コルゲート形状とは、平板状のシート(ライナー)と波型状のシート(コルゲート)を交互に積層したもので、この発明では波の大きさの波長方向長さを「ピッチ」、波の高さ方向の長さを「高さ」と称す。
【0019】
第6の発明は前記コルゲートハニカムの吸湿フィルタにおいて、コルゲートハニカムの大きさがピッチ2.0mm以上2.8mm以下であり、高さが0.8mm以上1.3mm以下であることを特徴としており、そのため、コルゲートのピッチおよび高さが大きいほど、単位体積あたりの通風抵抗が低く、気体と接触する表面積が小さくなる。本発明ではコルゲートハニカムのピッチ2.0mm以下、高さが0.8mm以下では、圧力損失が高く、かつ効率が上がらない。またピッチが2.8mm以上、1.3mm以上では、水分の回収効率が低下する。そのためコルゲートハニカムの大きさがピッチ2.0mm以上2.
8mm以下であり、高さが0.8mm以上1.3mm以下であることが望ましい。
【0020】
第7の発明は、前記吸湿フィルタのコルゲートハニカムが少なくともセラミック繊維もしくはガラス繊維もしくはその両方で構成されている基材を骨格としているものであり、基材がコルゲート形状を成し、かつ前記セラミック繊維表面およびガラス繊維表面に、コロイダルシリカなどの無機バインダを介して、前記多孔質体と前記ハロゲン化物の混合物である吸湿材料が添着することで、コルゲートハニカム表面に吸湿材料を存在させることができ、空気中水分と効率よく接触、吸着できる。また、温風による再生においても効率よく再生できる。また、前記ハロゲン化物が潮解して液化しても、セラミック繊維やガラス繊維は、液体によって変性せず、そのコルゲートハニカムの強度を保持することができるものである。
【0021】
第8の発明は、前記吸湿フィルタのコルゲートハニカムのシートにおいて、シートの厚み方向の表面に近いほうがシートの芯部よりもアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の添着濃度が高いことを特徴としている。水分はハニカム内を通過する際に、シートの表面と接触する。そのため、表面により多くのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物が存在したほうが、水分の吸湿効率が高い。そのためシートの厚み方向の表面に近いほうがシートの芯部よりもアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の添着濃度が高いことが望ましい。
【0022】
第9の発明は、前記吸湿フィルタにおいて、通風構造の通気上流と下流でアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の濃度に勾配があることを特徴としている。吸湿の際、通気上流では水分が多く、通気下流に行くほど上流で水分を吸着されているため空気が乾燥し、吸湿しにくくなる。そのため、通気下流での吸湿能力を向上させるために、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の混合濃度に勾配を持たせ、通気下流でアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の混合濃度が高くなるように、前記吸湿フィルタを配置するのが望ましい。
【0023】
また、吸湿フィルタからの水分の脱離、つまり通過空気への加湿を行う場合には、脱離空気は水が蒸発するために下流に行くに従い温度が低下する。そのため脱離空気の通気上流において、多くの水分を脱離できることが望ましい。そのため吸湿フィルタ中のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の混合濃度に勾配を持たせ、脱離する空気の通気上流でアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の混合濃度が高くなるように、前記吸湿フィルタを配置するのが望ましい。
【0024】
第10の発明は、前記吸湿フィルタと、前記吸湿フィルタに空気を送風して前記吸湿フィルタに水分を吸湿させたのちに送風の一部もしくはすべてを所定の場所に排出する送風手段と、40℃以上60℃以下の空気を作ることのできる加熱装置と、前記加熱装置を通風しかつ前記吸湿剤に通風するための送風手段とを有し、前記空気を前記吸湿フィルタに通風する吸湿風路と前記加熱装置を通気した空気を前記吸湿フィルタに通風する脱離風路とを前記吸湿フィルタが移動する構成とした加湿装置であり、前記吸湿風路において吸湿した前記吸湿フィルタが、前記脱離風路においては加熱されて水分が脱離し、加湿された空気を室内に供給することができる。
【0025】
例えば、吸湿室外の湿度が低い場合は自然換気によって室内に供給される空気が乾燥するため、室内の湿った空気が室外に逃げてしまい、室内の水分が減少して室内は乾燥する。これを本発明の加湿装置において、自然換気量の一部を強制的に吸湿フィルタに通気させた後に室外に排気する。室内から排気される空気は水分を取り除かれ、水分が室内に戻されるため、乾燥した空気が自然換気等によって供給されても、室内は、加湿装置がない場合に比べ乾燥しにくい、もしくは加湿される。
【0026】
なお、前記40℃以上60℃以下の空気を作ることのできる加熱装置として、ヒートポンプ熱交換器の凝縮器や、マイクロガスタービンの排熱回収装置、燃料電池の排熱回収装置などが挙げられる。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における加湿装置の概略を示した図である。
【0028】
図1において加湿装置10は40℃以上の温風作ることができるヒートポンプ熱交換器などの加熱手段11を有し、室内空気12をファンなどの送風手段13によって加熱手段11を通過させ、室内送風口14から室内に供給するものである。
【0029】
加湿装置10筐体内には、通風構造としてコルゲートハニカム形状をした、吸湿材料15を添着した吸湿フィルタ16を有し、また、室内空気12を吸湿フィルタ16に通過させ、その空気を室外に排気するためのファンなどの送風排気手段17および排気風路18を持ち、吸湿フィルタ16に室内空気12を供給し、水分を吸着させる。この風路が吸湿風路19である。
【0030】
吸湿フィルタ16の全部もしくは一部が吸湿風路19上に存在しかつ、送風排気手段17が動作しているときに、吸い込まれた空気は吸湿され、乾燥した空気が排気風路18より室外に排気される。
【0031】
吸湿フィルタ16は駆動経路20をもち、それぞれの駆動経路をギアモータなどの駆動手段21を用いてスライド移動する。前述の吸湿風路19で吸湿した吸湿フィルタ16は前記駆動経路20を移動し、室内送風口14まで移動する。その際、送風手段13によって温風が吸湿フィルタ16を通過して、それによって吸湿フィルタ16から水分が脱離し、温風とともに水分を室内に供給することができる。このときの水分を脱離する風路が脱離風路22である。
【0032】
室外の湿度が低い場合は自然換気によって室内に供給される空気が乾燥するため、室内の湿った空気が室外に逃げてしまい、室内の水分が減少して室内は乾燥する。一方、加湿装置があることにより、室内から排気される空気は水分を取り除かれ、水分が室内に戻されるため、乾燥した空気が自然換気等によって供給されても、室内は、加湿装置がない場合に比べ乾燥しにくい、もしくは加湿される。
【0033】
なお、加熱手段11としてヒートポンプ熱交換器を使用することによって、ニクロム線などのヒータを使用するより、低温な空気しか得られないがエネルギー効率が高く、加湿装置10の省エネルギー化ができるため望ましい。
【0034】
なお、加湿装置10に供給される空気はかならずしも室内空気12でなくともよく、その一部もしくはすべてを室外から供給するものであってもよい。
【0035】
図2(a)では、コルゲートハニカム構造の吸湿フィルタ16を示す。図2の((b))には、通気正面から吸湿フィルタのコルゲートハニカム構造を示すが、コルゲートの波型の波長長さがピッチ23、波高さが高さ24で示される。吸湿フィルタの水分回収効率を高くするためにピッチ23は2.0mm以上2.8mm以下、セルの高さ24は0.8mm以上1.3mm以下であることが望ましい。
【0036】
図3では、前記コルゲートハニカム形状の吸湿フィルタ16に含まれる吸湿材料15と基材の概略を示す。吸湿材料15は多孔質材料としてメソポーラスシリカ25上に、潮解
性を有するアルカリ土類金属のハロゲン化物として塩化カルシウム26を添着したものである。
【0037】
なお、メソポーラスシリカ25としては潮解性を有する材料が吸湿して、潮解し、液状化しても、その表面積において液が吸収されることにより、吸湿剤から液だれしないため、300m/g以上の比表面積をもつ粉体を用いることが望ましい。
【0038】
また、メソポーラスシリカ25の重量に対して、塩化カルシウム26はメソポーラスシリカ25重量比で1%以上40%以下の割合で添着するのが望ましい。40%以上添着すると、塩化カルシウム26が長時間の吸湿で潮解、液状化した場合にメソポーラスシリカ25上で凝集し、液だれを起こし、外部の金属などの部品を腐食させる。また、凝集し再度乾燥して塩化カルシウム26結晶になったときに、凝集前より大きな結晶となるため吸湿量や吸湿速度が低下して、室内に加湿する水分量が低下する。また、添着量が重量比1%未満である場合、塩化カルシウム26を用いない場合に比べて吸湿材料15の吸湿量および吸湿速度の違いがない。
【0039】
また、このコルゲートハニカムの基材として、セラミック繊維27もしくはガラス繊維28もしくはその両方で構成されているものが望ましい。基材がコルゲート形状を成し、かつ前記セラミック繊維27表面およびガラス繊維28表面に、無機バインダとして珪酸ナトリウムなどでなるコロイダルシリカを介して、前記メソポーラスシリカ25と前記塩化カルシウム26の混合物である吸湿材料15が添着することで、コルゲートハニカム表面に吸湿材料15を存在させることができ、空気中水分と効率よく接触、吸着できる。また、温風による再生においても効率よく再生できる。また、前記塩化カルシウム26が潮解して液化しても、セラミック繊維27やガラス繊維28は、液体によって変性せず、そのコルゲートハニカムの強度を保持することができる。
【0040】
また、図4には吸湿フィルタ16の製造方法の一例をフローチャートに示す。
【0041】
以下、フローチャートに従って製造方法を説明する。
【0042】
多孔質体としてメソポーラスシリカ25と無機バインダとしてコロイダルシリカの分散液に、少なくともセラミック繊維27もしくはガラス繊維28もしくはその両方を含む基材シートでコルゲートハニカム形状に加工したセラミックハニカムを含浸し、余剰液を吹き落とした後に100℃以上の温度で乾燥し、メソポーラスシリカハニカムを作成する。
【0043】
乾燥したメソポーラスシリカハニカムを、塩化カルシウム水溶液に含浸し、余剰液を吹き落とした後に、100℃以上にて乾燥し、メソポーラスシリカ‐塩化カルシウムハニカムの吸湿剤が完成する。このとき、メソポーラスシリカ25分散液の固形分率、塩化カルシウム26水溶液の塩化カルシウム濃度を調整することで、セラミックハニカムへの添着密度を変えることができる。
【0044】
また、図5に示すようにコルゲートハニカム形状吸湿フィルタ16のシート30の厚み方向表面31にシートの厚み方向芯部32より塩化カルシウム26を多く存在させる、つまり高濃度になるように、つまり塩化カルシウム26の濃度勾配をシート30の厚み方向に作るのが望ましい。
【0045】
これは、水分はハニカム内を通過する際に、シート30の表面と接触するので、表面により多くのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物としての塩化カルシウム26が存在したほうが、水分の吸湿効率が高くなるためである。なお、そのために、吸湿フィルタ16の製造時に塩化カルシウム26水溶液含浸後、塩化カルシウム26がマイ
グレーションを起こして移動することを利用して100℃以上、望ましくは150℃以上の温風をハニカム体に当てて乾燥させることが望ましい。
【0046】
また、図6に示すようにコルゲートハニカム形状吸湿フィルタ16の通気方向33に通風構造の通気上流34と通気下流35で塩化カルシウム26の添着の濃度勾配を設けることが望ましい。
【0047】
吸湿および脱離の際に、ハニカムの通気口の通気上流と下流の間で、湿度の勾配ができるためであり、それを効率よく吸湿できるため吸湿剤である塩化カルシウム26の添着量も添着濃度に勾配があるのが望ましい。なお、塩化カルシウム26の濃度勾配をつくるために、吸湿フィルタ16の製造時に塩化カルシウム水溶液含浸後、ハニカム体の通気方向を垂直方向にして金網などの上に置き、上方から100℃以上、望ましくは150℃以上の温風を当てて乾燥するのが、塩化カルシウム26の添着濃度の勾配を持たせるために望ましい。
【0048】
なお、吸湿空気の上流で塩化カルシウムの添着濃度が低いほうが望ましい。吸湿空気が高湿度であると、上流側の塩化カルシウムが潮解現象によって液化しやすい。そのため、液化を防ぐために上流側から下流側に向かい塩化カルシウムの添着濃度が濃くなっていくように吸湿フィルタを装置内に配置するのがのぞましい。
【0049】
ただし、通気の条件や、塩化カルシウムの添着量で、潮解による液化の心配がなく、加湿装置としての能力が高くなるのであれば、上流側から下流側に向かい塩化カルシウムの添着濃度が低くなってもよい。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態1では、吸湿フィルタ16上の吸湿材料15として、メソポーラスシリカ25と塩化カルシウム26を添着した吸湿材料15を用いたが、吸湿材料15を不織布や紙などのシートに接着剤を使用して接着、もしくは接着剤を使用せず圧着もしくは、繊維の間に漉き込むなどして添着したものであってもよく、こうして得られる吸湿剤シートを波型に加工したコルゲートと平板状のライナーとを交互に積層してコルゲートハニカムとして吸湿フィルタとしてもよい。
【0051】
(実施の形態3)
実施の形態1では吸湿材料15として図3に示した多孔質材料としてメソポーラスシリカ26上に、潮解性を有するアルカリ土類金属のハロゲン化物として塩化カルシウム27を添着したものとしたが、多孔質材料としてメソポーラスシリカの代わりに、ゼオライト、シリカゲル、メソポーラスアルミナ、活性炭などの多孔質吸着材料であってもよく、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が潮解した際に吸湿材料15が液状化せず、多孔質体表面に潮解したハロゲン化物が保持されればよい。また、前述の多孔質吸着材料が複数混合したものであってもよい。
【0052】
(実施の形態4)
実施の形態1では吸湿材料15として図3に示した多孔質材料としてメソポーラスシリカ25上に、潮解性を有するアルカリ土類金属のハロゲン化物として塩化カルシウム26を添着したものとしたが、潮解性を有する材料としてアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物であればよく、さらにカルシウム、リチウムおよびマグネシウムからなる少なくとも一種の金属塩化物または臭化物がのぞましく、具体的には塩化カルシウムのほかに、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化マグネシウムまたは、それらの水和物が挙げられる。
【0053】
ここで本発明の効果をより確実に得るという観点から塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウムが好ましく上げられ、特に腐食性が小さいという観点から臭化リチウムが望ましい。
【0054】
(実施の形態5)
実施の形態1では吸湿フィルタ16を吸湿風路19と脱離風路22を交互に入れ替えることで、室内の水分を吸着して乾燥した空気を排気し、また、加熱手段11の温風によって水分を脱離して室内に水分を放出したが、これを図7に示すようにロータ形状のロータ型吸湿フィルタ36としてもよい。
【0055】
ギアモータなどの回転手段37を用いて、ロータ型吸湿フィルタ36を回転させ、吸湿風路19と脱離風路22とに交互に入れ替えることができる。そのため実施の形態1で示した駆動経路20が必要なくなり、部品点数を少なくでき、安価に製造することができる。なお、図7(b)にロータ型吸湿フィルタ36部分の断面図を示す。
【0056】
(実施の形態6)
実施の形態1では、加熱手段としてヒートポンプ凝縮器の熱交換器を使用したが、マイクロガスタービンから発せられる排熱を利用した熱交換器による加熱手段や、燃料電池から発せられる熱を利用した熱交換器による加熱手段であってもよい。なお、40℃〜60℃に温度調節できるニクロム線やPTCヒータなどの加熱手段でもよいが、前記加熱手段を用いるほうが省エネルギー性に優れているため望ましい。
【0057】
(実施の形態7)
実施の形態1では、吸湿フィルタ16としてコルゲート形状のハニカムフィルタを示したが、通気構造を有しているものであればよく、形状として発泡ウレタンなどの発泡体、そして、発泡ウレタンに接着剤を介して吸湿材料15を添着したものであってもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例)
70mm角、10mm厚みのセラミックハニカムをメソポーラスシリカとコロイダルシリカの分散液に含浸し、余剰液を吹き落とした後に180℃にて乾燥し、メソポーラスシリカハニカムを作成する。なお、セラミックハニカムはガラス繊維やセラミック繊維をコルゲートハニカム形状に加工したものである。セラミックハニカムのセルは実施の形態1の図2(b)で示すようにピッチ23と高さ24で表現されるが、表1に示す3種類のハニカムのセルを作成して評価を行った。
【0059】
乾燥したメソポーラスシリカハニカムを、塩化カルシウム水溶液に含浸し、余剰液を吹き落とした後に、180℃にて乾燥し、メソポーラスシリカ‐塩化カルシウムハニカムの吸湿剤が完成する。このとき、メソポーラスシリカ分散液の固形分率、塩化カルシウム水溶液の塩化カルシウム濃度を調整することで、添着量を表1のように変化させた。
【0060】
なお、この添着量は、各分散液、水溶液に含浸し、乾燥する前後での重量測定から算出した。
【0061】
こうして得られた試料を下記の実験方法によって、評価した。以下、実験方法を説明する。
【0062】
(1)まず20℃40%の室内において、ヒータによって空気を温め、ダクトA内に40℃もしくは45℃もしくは50℃まで加熱した空気を供給する。なお、40℃から50℃の温度は、ヒートポンプ熱交換器や、マイクロガスタービン、燃料電池の排熱によって
作り出すことのできる温度である。
【0063】
(2)上記ダクトA内に前記の吸湿剤の試料を設置し、重量が安定するまで乾燥する。
【0064】
(3)その後、前記乾燥後の試料を取り出し、別のダクトBにて試験用空気を、面風速が0.112m/秒となるように、通過風量を整えて120秒間通風し、水分を吸湿させる。このときの吸湿前後の吸湿剤の重量変化を吸湿量とする。
【0065】
(4)一方で、20℃40%の空気の絶対湿度と通過風量から当該空気に含まれる全水分量、すなわち試料を通過した全水分量を算出する。
【0066】
(5)(3)の吸湿剤の吸湿量を(4)の通過した全水分量で除して、室内の水分回収率として評価する。
(比較例1)
比較例1として、高分子吸湿ポリマーを添着したシートをコルゲート加工した吸湿ポリマーハニカムを作成し、実施例と同様に評価した。
(比較例2)
比較例2として実施例のセラミックハニカムにゼオライトを含浸したゼオライトハニカムを作成し、塩化カルシウムなど潮解性物質は添着せず同様に実験した。
【0067】
【表1】

【0068】
上記の作成した試料および試料の評価結果を表1に、水分回収率のグラフを図8に示す。実施例および比較例1および2ともに水分を回収することができることが確認できたが、実施例のメソポーラスシリカ‐塩化カルシウムハニカムは、比較例1、2より高い水分の回収率を実現することができた。
【0069】
すなわち、多孔質体材料としてのメソポーラスシリカの添着密度は0.039g/cm以上0.084g/cm以下、潮解性を有するハロゲン化物としての塩化カルシウムの添着密度は0.012g/cm以上0.027g/cm以下がよいことがわかり、メソポーラスシリカと塩化カルシウムの比率は23%以上37%以下でよいことが確認できた。
【0070】
また、セルのピッチは2.0mm以上2.8mm以下、セルの高さは0.8mm以上1.3mm以下でよく、特にセルのピッチは2.5mm、セルの高さは1.1mmがもっとも水分の回収率が高いことがわかった。とくに脱離空気温度があがることでその傾向が顕著に現れる。
【0071】
また、脱離空気温度は温度が高いほうが水分回収率も高く、40℃から50℃の間では、1℃上がるごとに約1.5%の回収率の向上が確認された。これによってヒートポンプなどの加熱装置からの熱供給をコントロールすることによって水分供給量をコントロールすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明は比較的低い温度で水分を脱離させることができるので、省エネ加湿が可能となり、例えば温風供給時に温風供給用熱源を利用するなどして室内に加湿された空気を供給することが可能となり、調湿を行うことにより居室の快適度の向上を向上させ、乾燥による住居の劣化、空気中のウイルスの繁殖を抑えることができ、居室だけでなく特定の庫内、とくに、低温を維持したい場合、本発明の低温でかつ無給水で加湿できる加湿方式が優れており、冷蔵庫や乾燥庫、選択乾燥機、ワインセラーなどの湿度維持を実現することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 吸湿フィルタ
2 室内空気
3 第一送風機
4 室外送風口
5 再生用ヒータ
6 第二送風機
7 室内送風口
8 加湿装置
9 回転手段
10 加湿装置
11 加熱手段
12 室内空気
13 送風手段
14 室内送風口
15 吸湿材料
16 吸湿フィルタ
17 送風排気手段
18 排気風路
19 吸湿風路
20 駆動経路
21 駆動手段
22 脱離風路
23 ピッチ
24 高さ
25 メソポーラスシリカ
26 塩化カルシウム
27 セラミック繊維
28 ガラス繊維
29 フローチャート
30 シート
31 厚み方向表面
32 厚み方向芯部
33 通気方向
34 通気上流
35 通気下流
36 ロータ型吸湿フィルタ
37 回転手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿材料として、少なくとも比表面積が300m/g以上の多孔質体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物である吸湿材料とを含み、空気中の水分を吸着可能な通風構造体としたことを特徴とする吸湿フィルタ。
【請求項2】
前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の粒子が前記多孔質体の粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の吸湿フィルタ。
【請求項3】
多孔質体がゼオライトもしくはメソポーラスシリカもしくはメソポーラスアルミナもしくは活性炭のいずれかひとつもしくは複数の混合体であることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項4】
前記多孔質体の重量に対して重量比1%以上40%以下の割合でアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を混合したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項5】
通風構造がコルゲートハニカム形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項6】
コルゲートハニカムの大きさがピッチ2.0mm以上2.8mm以下であり、高さが0.8mm以上1.3mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の吸湿フィルタ。
【請求項7】
コルゲートハニカムの基材が少なくともセラミック繊維もしくはガラス繊維もしくはその両方で構成されることを特徴とする請求項5もしくは6のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項8】
シートの厚み方向の表面に近い部分のほうがシートの芯部よりもアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の添着濃度が高いことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項9】
通風構造の通気上流と下流でのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の濃度に勾配があることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸湿フィルタ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の吸湿フィルタと、前記吸湿フィルタに空気を送風して前記吸湿フィルタに水分を吸湿させたのちに送風の一部もしくはすべてを所定の場所に排出する送風手段と、40℃以上60℃以下の空気を作ることのできる加熱装置と、前記加熱装置を通風しかつ前記吸湿剤に通風するための送風手段とを有し、前記空気を前記吸湿フィルタに通風する吸湿風路と前記加熱装置を通気した空気を前記吸湿フィルタに通風する脱離風路とを前記吸湿フィルタが移動する構成とした加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143358(P2011−143358A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6617(P2010−6617)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】