説明

吸脱着装置およびロータ回転数制御方法

【課題】デシカントロータでの水分の吸脱着状態を把握し、デシカントロータの回転数を自動調整するようにして、デシカントロータの吸脱着状態の変動を軽減する。
【解決手段】水分交換状態監視装置300Aを設ける。水分交換状態監視装置300Aは、湿度差検出部15と湿度差設定値記憶部16とロータ回転数制御演算部17とを備えている。湿度差検出部15はデシカントロータ3を通過する処理側の空気の前後の湿度差Δhを検出する。ロータ回転数制御演算部17は、湿度差検出部15からの湿度差Δhが湿度差設定値記憶部16に記憶されている湿度差設定値Δhsp1とΔhsp2との間に入るように、デシカントロータ3の回転数を制御する。再生側も同様にして、デシカントロータ3を通過する再生側の空気の前後の湿度差Δhを検出し、この検出された湿度差Δhに基づいてデシカントロータ3の回転数を制御することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理側の空気の流路および再生側の空気の流路に配設され処理側の空気からの水分の吸着と再生側の空気への水分の脱着とを回転しながら連続的に行うロータを用いた吸脱着装置(デシカント空調システム)およびこの吸脱着装置におけるロータの回転数を制御するロータ回転数制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍倉庫,電池工場など湿度を低く保つための空調として、ロータを用いたデシカント空調システムが採用されている(例えば、特許文献1,2参照)。以下、このデシカント空調システムにおけるロータをデシカントロータと呼ぶ。
【0003】
デシカントロータは、円板状に形成され、その厚さ方向に空気が貫通できるような構造とされている。デシカントロータの表面には、多孔性の無機化合物を主成分とする固体吸着物が設けられている。この多孔性の無機化合物としては、細孔径が0.1〜20nm程度で水分を吸着するもの、例えばシリカゲルやゼオライト、高分子収着剤等の固体吸着剤が使用される。また、デシカントロータは、モータによって駆動されて、中心軸回りに回転し、処理側の空気からの吸湿と再生側の空気への放湿とを連続的に行う。
【0004】
〔デシカント空調システム〕
図8にデシカントロータを用いた従来のデシカント空調システムの概略を示す。同図において、1は処理側の空気流を形成する処理側ファン、2は再生側の空気流を形成する再生側ファン、3は処理側の空気の流路L1および再生側の空気の流路L2に跨って配設されたデシカントロータ(吸脱着手段)、4はデシカントロータ3による吸湿後の処理側の乾燥した空気を冷却する冷水コイル(冷却装置)、5はデシカントロータ3による放湿前の空気を加熱する温水コイル(加熱装置)、6はデシカントロータ3を回転させるモータ、7は冷水コイル4によって冷却された処理側の乾燥した空気(給気)SAの温度を計測する温度センサ、8は温水コイル5によって加熱された再生側の空気(再生用空気)SRの温度を計測する温度センサであり、これらによってデシカント空調機100が構成されている。
【0005】
デシカント空調機100の冷水コイル4には冷水弁9を介して冷水CWが供給され、温水コイル5には温水弁10を介して温水HWが供給される。また、冷水コイル4に対してコントローラ11が設けられ、温水コイル5に対してコントローラ12が設けられている。コントローラ11は、温度センサ7が計測する給気SAの温度tspvを設定温度tsspに一致させるように、冷水弁9の開度を制御する。コントローラ12は、温度センサ8が計測する再生用空気SRの温度trpvを設定温度trspに一致させるように、温水弁10の開度を制御する。200はデシカント空調機100からの給気SAの供給を受けるドライルーム(被空調空間)である。
【0006】
〔処理側〕
このデシカント空調システムにおいて、ドライルーム200からの還気RAはデシカントロータ3への吸湿前の処理側の空気に戻される。この例では、還気RAが外気OAと混合され、デシカントロータ3への吸湿前の処理側の空気とされる。なお、ドライルーム200からの還気RAの量は一定とされる。また、還気RAと混合される外気OAの量は、ドライルーム200における室圧を一定とするように、図示されていない室圧制御装置によって制御される。
【0007】
処理側において、還気RAと外気OAとの混合空気は、デシカントロータ3を通過する際、その空気中に含まれる水分がデシカントロータ3の固体吸着剤に吸着(吸湿)される。そして、このデシカントロータ3による吸湿後の還気RAと外気OAとの混合空気、すなわちデシカントロータ3によって除湿された還気RAと外気OAとの混合空気が冷水コイル4へ送られて冷却され、給気SAとしてドライルーム200へ供給される。
【0008】
〔再生側〕
一方、再生側では、再生側の空気として外気OAが取り込まれ、温水コイル5に送られて加熱される。これによって、外気OAの温度が上昇し、相対湿度が下げられる。この相対湿度が下げられた高温の外気OAは、再生用空気SRとしてデシカントロータ3へ送られ、デシカントロータ3の固体吸着剤を通過する。
【0009】
すなわち、デシカントロータ3は回転しており、処理側において還気RAと外気OAとの混合空気から水分を吸着した固体吸着剤が再生用空気SRに対面した際に、接する気体の濃度に応じて吸着等温線により決まる吸着量の低下に伴い、固体吸着剤から水分が脱着され、再生用空気SRへ水分が移動する。この固体吸着剤からの水分を吸収した再生用空気SRは排気EAとして排出される。また、再生用空気SRとの熱交換によりデシカントロータ3の温度は上昇している。
【0010】
このようにして、デシカント空調システムでは、デシカントロータ3を一定の回転速度で回転させながら、還気RAと外気OAとの混合空気(処理側の空気)からの吸湿と再生用空気SR(再生側の空気)への放湿とがデシカントロータ3において連続的に行われ、デシカント空調機100からのドライルーム200への給気(乾燥空気(低露点温度の空気))SAの供給が続けられる。
【0011】
このデシカント空調システムにおいて、デシカントロータ3の吸脱着状態を把握するようにし、この把握した吸脱着状態に基づいてデシカントロータ3の回転数を調整するにようすれば、条件変化によるデシカントロータ3の吸脱着状態の変動を軽減することができる。
【0012】
〔デシカントロータの運転方法〕
デシカントロータの回転数と除湿効率との関係は凸型であることが知られており、従来より、デシカントロータの回転数を決定する方法として、想定した使用条件下で除湿効率が最大となる回転数を実測により決定する方式があり、また吸熱に関する理論式を用いる方式などが研究されている。
【0013】
例えば、想定条件下での実測による方式では、再生風量、再生空気入口温度、再生空気入口絶対湿度、処理風量、処理空気入口温度、処理空気入口絶対湿度などを使用条件に合わせて調節した装置を構成し、デシカントロータ3の回転数を変えながら出口空気露点温度が最も低くなる(除湿効率が最大となる)回転数を探索するという方法がとられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0014】
例えば、吸熱に関する理論式を用いる方式では、平衡状態での絶対湿度、吸着剤の水分量、風速等のデータを吸熱に関する理論式を用いて数値解析を行い、最適な回転数を予測するという方法がとられる(例えば、非特許文献2、3参照)。
【0015】
例えば、前記の方法を用いて、さまざまな運転条件でのデシカントロータの最適な回転数を予め求めておき、運転の際に各種運転条件を与えて対応する回転数でデシカントロータを運転する方法がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−308229号公報
【特許文献2】特開2001−241693号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】頭島、杉浦、福井、藤居、今成「低露点空調設備の省エネルギーに関する検討(第1報)」空気調和・衛生工学会学術講演論文集、2006(長野)、pp.355−358。
【非特許文献2】荒井、木村、黒田、渡邉、「非結露型空調のための新デシカント調湿機提供と省エネルギー効果の研究」、HiKaLo情報誌 No.30(2008)、pp.14−18。
【非特許文献3】辻口、児玉、「吸着材デシカントロータの水蒸気吸脱着挙動」、日本冷凍空調学会論文集 Vol.24,NO.3(2007)、pp.205−216。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来より研究されているデシカントロータの回転数決定方法によると、デシカントロータの除湿効率を最大にする回転数がその他の条件によって異なるため、運転条件の変化により除湿能力不足となることがある。
【0019】
また、吸熱に関する理論式を用いる方式や、予め条件に対応した最適な回転数を求めておく方式では、平衡状態での絶対湿度、吸着剤の水分量、風速等、多くのパラメータを考慮し、これらすべてを妥当な精度で計測または推定する、ことが困難なため、デシカントロータの最適な回転数を運転条件に合わせて決定することができない。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、デシカントロータの回転数を自動調整するようにして、デシカントロータの吸脱着状態の変動を軽減することが可能な吸脱着装置およびロータ回転数制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するために、本発明に係る吸脱着装置は、処理側の空気の流路および再生側の空気の流路に配設され処理側の空気からの水分の吸着と再生側の空気への水分の脱着とを回転しながら連続的に行うデシカントロータと、このデシカントロータを通過する空気の前後の湿度差を検出する湿度差検出手段と、この湿度差検出手段によって検出された湿度差に基づいてデシカントロータの回転数を制御する回転数制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の一形態として、デシカントロータを通過する空気の前後の湿度差として、デシカントロータを通過する処理側の空気の前後の湿度差を検出することが考えられる。この場合、デシカントロータを通過する処理側の空気の前後の湿度差に基づいて、デシカントロータの回転数が制御される。
【0023】
また、本発明の一形態として、デシカントロータを通過する空気の前後の湿度差として、デシカントロータを通過する再生側の空気の前後の湿度差を検出することが考えられる。この場合、デシカントロータを通過する再生側の空気の前後の湿度差に基づいて、デシカントロータの回転数が制御される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、デシカントロータを通過する空気の前後の湿度差を検出し、この検出された湿度差に基づいてデシカントロータの回転数を制御するようにしたので、デシカントロータを通過する処理側の空気の前後の湿度差に基づいてデシカントロータの回転数を制御したり、デシカントロータ通過する再生側の空気の前後の湿度差に基づいてデシカントロータの回転数を制御するようにしたりし、デシカントロータの回転数を自動調整するようにして、デシカントロータの吸脱着状態の変動を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る吸脱着装置の一実施の形態(実施の形態1)を含むデシカント空調システムの概略を示す図である。
【図2】このデシカント空調システムにおける水分交換状態監視装置での特徴的な動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】このデシカント空調システムにおける水分交換状態監視装置のロータ回転数制御演算部による回転数の制御状況を説明する図である。
【図4】本発明に係る吸脱着装置の他の実施の形態(実施の形態2)を含むデシカント空調システムの概略を示す図である。
【図5】このデシカント空調システムにおける水分交換状態監視装置での特徴的な動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】このデシカント空調システムにおける水分交換状態監視装置のロータ回転数制御演算部による回転数の制御状況を説明する図である。
【図7】デシカントロータによって吸湿された処理側の空気を再生側の空気としてデシカントロータに戻すようにした例を示す図である。
【図8】従来のデシカント空調システムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る吸脱着装置の一実施の形態(実施の形態1)を含むデシカント空調システムの概略を示す図である。同図において、図8と同一符号は図8を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0027】
この実施の形態1では、デシカント空調機100に対して、このデシカント空調機100におけるデシカントロータ3の水分の交換状態を監視する水分交換状態監視装置300Aを設け、このデシカント空調機100と水分交換状態監視装置300Aとによって吸脱着装置を構成させている。
【0028】
また、デシカントロータ3を駆動するモータ6に回転数調整用のインバータ18を付設し、水分交換状態監視装置300Aでの監視結果として出力される回転数の指示信号(インバータ出力)をインバータ18へ送るようにしている。
【0029】
この吸脱着装置において、水分交換状態監視装置300Aは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して監視装置としての各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、デシカントロータ3の処理側の空気からの吸湿状態をデシカントロータ3の水分の交換状態として監視する。
【0030】
図1には、水分交換状態監視装置300Aの要部の構成を示しており、デシカントロータ3への処理側の空気の入口湿度hinを検出する入口湿度センサ13と、デシカントロータ3からの処理側の空気の出口湿度houtを検出する出口湿度センサ14と、入口湿度センサ13が検出する処理側の空気の入口湿度hinと出口湿度センサ14が検出する処理側の空気の出口湿度houtとの湿度差Δh(Δh=hin−hout)を求める湿度差検出部15と、予め定められている湿度差設定値Δhsp1およびΔhsp2を記憶する湿度差設定値記憶部16と、湿度差検出部15からの湿度差Δhが湿度差設定値記憶部16に記憶されている湿度差設定値Δhsp1とΔhsp2との間に入るようなデシカントロータ3の回転数を決定し、その決定した回転数への指示信号をインバータ18へ送るロータ回転数制御演算部17とを備えている。
【0031】
なお、入口湿度センサ13および出口湿度センサ14は、デシカントロータ3の流路(厚さ方向の空気の通り道)での吸着量が、乾燥剤の吸着量変化に応じた水蒸気量変化を生じ、デシカントロータ3の回転移動に伴い水蒸気量変化が単調に減少していく領域が存在することに着目し、その箇所を選び出して設置している。また、設定値Δhsp1およびΔhsp2は、正の値として設定され、Δhsp2<Δhsp1とされている。
【0032】
この実施の形態1では、(1)デシカントロータ3を通過する処理側の空気の湿度変化の大小とその空気中からの水分の吸着量の大小との間に相関があること、(2)デシカントロータ3の任意の部位について吸脱着量が流路の回転移動に伴い変化することに着目し、デシカントロータ3を通過する処理側の空気の湿度差Δhを、湿度差設定値記憶部16に記憶させた単位風量当たりの吸着量に対応する設定値Δhsp1およびΔhsp2と比較することで、デシカントロータ3の処理側の空気からの水分の吸湿状態を判断させている。
【0033】
この水分交換状態監視装置300Aにおいて、湿度差検出部15が本発明でいう湿度差検出手段に相当し、湿度差設定値記憶部16およびロータ回転数制御演算部17が回転数制御手段に相当する。以下、図2に示すフローチャートに従って、水分交換状態監視装置300Aでの特徴的な動作について説明する。
【0034】
湿度差検出部15は、入口湿度センサ13が検出するデシカントロータ3への処理側の空気の入口湿度hinおよび出口湿度センサ14が検出するデシカントロータ3からの処理側の空気の出口湿度houtを定周期で取り込み(ステップS101,S102)、この処理側の空気の入口湿度hinと出口湿度houtとの湿度差Δh(Δh=hin−hout)を求める(ステップS103)。この湿度差検出部15が求めた湿度差Δhはロータ回転数制御演算部17へ送られる。
【0035】
ロータ回転数制御演算部17は、湿度差検出部15からの湿度差Δhを受けて、湿度差設定値記憶部16に記憶されている湿度差設定値Δhsp1およびΔhsp2と湿度差Δhとを比較し、Δhsp2≦Δh≦Δhsp1でなければ、デシカントロータ3の回転数の制御が必要であると判断する(ステップS105)。
【0036】
この場合、ロータ回転数制御演算部17は、図3に示すように、Δh<Δhsp2であれば、検出箇所付近の空気の流路での吸湿が望ましい量を超えている(例えばほぼ限界に達している)と判断し、デシカントロータ3の回転数をアップさせる。Δh>Δhsp1であれば、検出箇所付近の空気の流路での吸湿が望ましい量に対してまだ余裕があると判断し、デシカントロータ3の回転数をダウンさせる。湿度差ΔhがΔhsp2≦Δh≦Δhsp1の範囲となれば現状の回転数を維持する。
【0037】
このようにして、実施の形態1では、デシカントロータ3を通過する処理側の空気の前後の湿度差Δhを検出し、この検出した湿度差Δhを湿度差設定値Δhsp1およびΔhsp2と比較することにより、デシカントロータ3の処理側の空気からの吸湿状態(吸着状態)を把握し、デシカントロータ3の回転数を自動調整するようにして、デシカントロータ3の吸脱着状態の変動を軽減することができるようになる。
【0038】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、デシカントロータ3の処理側の空気からの吸湿状態を監視してデシカントロータ3の回転数を自動調整するようにしたが、実施の形態2では、デシカントロータ3の再生側の空気への放湿状態を監視してデシカントロータ3の回転数を自動調整するようにして、図4に実施の形態2の吸脱着装置を含むデシカント空調システムの概略を示す。
【0039】
このデシカント空調システムでは、入口湿度センサ13によってデシカントロータ3への再生側の空気の入口湿度hinを検出するようにし、出口湿度センサ14によってデシカントロータ3からの再生側の空気の出口湿度houtを検出するようにし、この入口湿度センサ13が検出する再生側の空気の入口湿度hinおよび出口湿度センサ14が検出する再生側の空気の出口湿度houtを水分状態監視装置300Bの湿度差検出部15へ送るようにしている。
【0040】
なお、入口湿度センサ13および出口湿度センサ14は、実施の形態1と同様に、デシカントロータ3の流路(厚さ方向の空気の通り道)での吸着量が、乾燥剤の吸着量変化に応じた水蒸気量変化を生じ、デシカントロータ3の回転移動に伴い水蒸気量変化が単調に減少していく領域が存在することに着目し、その箇所を選び出して設置している。
【0041】
この実施の形態2では、(1)デシカントロータ3を通過する再生側の空気の湿度変化の大小とその空気中への水分の脱着量の大小との間に相関があること、(2)デシカントロータ3の任意の部位について吸脱着量が流路の回転移動に伴い変化することに着目し、デシカントロータ3を通過する再生側の空気の湿度差Δhを、湿度差設定値記憶部16に記憶させた単位風量当たりの放湿量に対応する設定値Δhsp3およびΔhsp4と比較することで、デシカントロータ3の再生側の空気への水分の放湿状態を判断させている。なお、この例において、設定値Δhsp3およびΔhsp4は、負の値として設定され、Δhsp4<Δhsp3とされている。
【0042】
この水分交換状態監視装置300Bにおいて、湿度差検出部15が本発明でいう湿度差検出手段に相当し、湿度差設定値記憶部16およびロータ回転数制御演算部17が回転数制御手段に相当する。以下、図5に示すフローチャートに従って、水分交換状態監視装置300Bでの特徴的な動作について説明する。
【0043】
湿度差検出部15は、入口湿度センサ13が検出するデシカントロータ3への再生側の空気の入口湿度hinおよび出口湿度センサ14が検出するデシカントロータ3からの再生側の空気の出口湿度houtを定周期で取り込み(ステップS201,S202)、この再生側の空気の入口湿度hinと出口湿度houtとの湿度差Δh(Δh=hin−hout)を求める(ステップS203)。この湿度差検出部15が求めた湿度差Δhはロータ回転数制御演算部17へ送られる。
【0044】
ロータ回転数制御演算部17は、湿度差検出部15からの湿度差Δhを受けて、湿度差設定値記憶部16に記憶されている湿度差設定値Δhsp3およびΔhsp4と湿度差Δhとを比較し、Δhsp4≦Δh≦Δhsp3でなければ、デシカントロータ3の回転数の制御が必要であると判断する(ステップS205)。
【0045】
この場合、ロータ回転数制御演算部17は、図6に示すように、Δh>Δhsp3であれば、検出箇所付近の空気の流路での放湿(乾燥)が少なく、デシカントロータ3が十分に乾燥していることを示しており、放湿(乾燥)に余裕があると判断し、デシカントロータ3の回転数をアップさせる。Δh<Δhsp4であれば、検出箇所付近の空気の流路での放湿(乾燥)が多く、デシカントロータ3が十分に乾燥できていないことを示しており、更に放湿(乾燥)が必要と判断し、デシカントロータ3の回転数をダウンさせる。湿度差ΔhがΔhsp4≦Δh≦Δhsp3の範囲となれば現状の回転数を維持する。
【0046】
このようにして、実施の形態2では、デシカントロータ3を通過する再生側の空気の前後の湿度差Δhを検出し、この検出した湿度差Δhを湿度差設定値Δhsp3およびΔhsp4と比較することにより、デシカントロータ3の再生側の空気への放湿状態(脱着状態)を把握し、デシカントロータ3の回転数を自動調整するようにして、デシカントロータ3の吸脱着状態の変動を軽減することができるようになる。
【0047】
なお、図7に実施の形態1(図1)の変形例を示すように、デシカントロータ3によって吸湿された処理側の空気を再生側の空気としてデシカントロータ3に戻すようにしてもよい。この場合、図7に実線で示すように、デシカントロータ3によって吸湿された処理側の空気を温水コイル5を通してデシカントロータ3に供給する方式、図7に点線で示すように、デシカントロータ3によって吸湿された処理側の空気をデシカントロータ3の再生側へ送って加熱し、このデシカントロータ3の再生側で加熱された空気を温水コイル5を通して再びデシカントロータ3に供給する方式など、種々の方式が考えられる。
【0048】
また、上述した各実施の形態において、処理側ファン1は、必ずしもデシカントロータ3の前段(処理側の空気の入口側)に設けなくてもよく、デシカントロータ3の後段(処理側の空気の出口側)に設けるようにしてもよい。同様に、再生側ファン2についても、必ずしもデシカントロータ3の後段(再生側の空気の出口側)に設けなくてもよく、デシカントロータ3の前段(再生側の空気の入口側)に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上述した各実施の形態では、ドライルーム200からの還気RAをデシカントロータ3への吸湿前の処理側の空気に戻すようにしたが、ドライルーム200からの還気RAをなくし、外気OAのみを処理側の空気としてデシカントロータ3へ供給するようにしてもよい。
【0050】
また、上述した各実施の形態では、デシカント空調機と水分交換状態監視装置およびコントローラを分離したタイプとしたが、水分交換状態監視装置およびコントローラはデシカント空調機に組み込んでもよい。
【0051】
また、上述した各実施の形態では、再生側の空気を加熱する加熱装置を温水コイルとし、処理側の乾燥した空気を冷却する冷却装置を冷水コイルとしたが、加熱装置や冷却装置は温水コイルや冷水コイルに限られるものではない。
【0052】
また、上述した各実施の形態では、デシカント空調機100を冷水コイル4を備えるタイプとしたが、冷水コイル4を備えないタイプとしてもよい。すなわち、デシカントロータ3によって除湿された空気を冷却せずに給気SAとしてドライルーム200へ送るタイプのデシカント除湿機(外調機)としてもよい。
【0053】
また、上述した各実施の形態において、デシカントロータ3に上下限の設定値を定め、この上下限の設定値の範囲内でデシカントロータ3の回転数を制御するようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態1では、デシカントロータ3への処理側の空気の入口湿度hinおよび出口湿度houtを直接検出するようにしたが、デシカントロータ3への処理側の空気の入口温度tinおよび出口温度toutを検出するようにし、この検出された処理側の空気の入口温度tinと出口温度toutとの温度差Δtを求め、この温度差Δtをデシカントロータ3を通過する処理側の空気の前後の湿度差Δhに換算するようにしてもよい。
【0055】
このデシカント空調機100において、デシカントロータ3を通過する処理側の空気は吸着熱の発生により、吸着された量に応じてその温度が上昇する。吸湿量(吸着量)が多ければ、デシカントロータ3を通過する処理側の空気の温度は吸着発熱による温度上昇が増加するため温度変化が大きく、吸湿量(吸着量)が少なければ温度変化は小さい。すなわち、デシカントロータ3における処理側の空気の通過に際し、その空気の温度変化の大小とその空気中からの水分の吸着量の大小との間には相関があり、温度差Δtと湿度差Δhとの間にも相関がある。このような相関から温度差Δtを湿度差Δhに換算することができる。
【0056】
また、実施の形態2でも同様にして、デシカントロータ3への再生側の空気の入口温度tinおよび出口温度toutを検出するようにし、この検出された再生側の空気の入口温度tinと出口温度toutとの温度差Δtを求め、この温度差Δtをデシカントロータ3を通過する再生側の空気の前後の湿度差Δhに換算するようにしてもよい。
【0057】
このデシカント空調機100において、デシカントロータ3を通過する再生側の空気は脱着吸熱の発生により、脱着された量に応じてその温度が低下する。放湿量(脱着量)が多ければ、デシカントロータ3を通過する再生側の空気の温度は脱着吸熱による温度低下が増加するため温度変化が大きく、放湿量(脱着量)が少なければ温度変化は小さい。すなわち、デシカントロータ3における再生側の空気の通過に際し、その空気の温度変化の大小とその空気中への水分の脱着量の大小との間には相関があり、温度差Δtと湿度差Δhとの間にも相関がある。このような相関から温度差Δtを湿度差Δhに換算することができる。
【0058】
このように、本発明では、デシカントロータを通過する空気の前後の湿度差を検出する場合、デシカントロータを通過する空気の前後の湿度を検出してその差を湿度差として求める方式だけではなく、デシカントロータを通過する空気の前後の温度を検出してその差を温度差として求め、この温度差を湿度差に換算して求める方式を採用することも可能である。すなわち、デシカントロータを通過する空気の前後の温度を検出してその差を温度差として求め、この温度差を湿度差に換算して求める手段も本発明でいう湿度差検出手段の一形態をなすものである。
【0059】
また、本発明において、湿度差とはデシカントロータを通過する空気の前後の水蒸気量差を表し、絶対湿度の差であってもよいし、入口空気の条件が一定であれば、相対湿度の差であっても、露点温度の差であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の吸脱着装置およびロータ回転数制御方法は、例えば、湿度を低く保つための空調として、リチウム電池工場、食品工場、流通倉庫など様々な分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…処理側ファン、2…再生側ファン、3…デシカントロータ、4…冷水コイル、5…温水コイル、6…モータ、7,8…温度センサ、9…冷水弁、10…温水弁、11,12…コントローラ、13…入口湿度センサ、14…出口湿度センサ、15…湿度差検出部、16…湿度差設定値記憶部、17…ロータ回転数制御演算部、18…インバータ、100…デシカント空調機、200…ドライルーム(被空調空間)、300A、300B…水分交換状態監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理側の空気の流路および再生側の空気の流路に配設され処理側の空気からの水分の吸着と再生側の空気への水分の脱着とを回転しながら連続的に行うロータと、
このロータを通過する空気の前後の湿度差を検出する湿度差検出手段と、
この湿度差検出手段によって検出された湿度差に基づいて前記ロータの回転数を制御する回転数制御手段と
を備えることを特徴とする吸脱着装置。
【請求項2】
請求項1に記載された吸脱着装置において、
前記湿度差検出手段は、
前記ロータを通過する空気の前後の湿度差として前記ロータを通過する前記処理側の空気の前後の湿度差を検出する
ことを特徴とする吸脱着装置。
【請求項3】
請求項1に記載された吸脱着装置において、
前記湿度差検出手段は、
前記ロータを通過する空気の前後の湿度差として前記ロータを通過する前記再生側の空気の前後の湿度差を検出する
ことを特徴とする吸脱着装置。
【請求項4】
処理側の空気の流路および再生側の空気の流路に配設され処理側の空気からの水分の吸着と再生側の空気への水分の脱着とを回転しながら連続的に行うロータの回転数を制御するロータ回転数制御方法であって、
前記ロータを通過する空気の前後の湿度差を検出する湿度差検出ステップと、
この湿度差検出ステップによって検出された湿度差に基づいて前記ロータの回転数を制御する回転数制御ステップと
を備えることを特徴とするロータ回転数制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたロータ回転数制御方法において、
前記湿度差検出ステップは、
前記ロータを通過する空気の前後の湿度差として前記ロータを通過する前記処理側の空気の前後の湿度差を検出する
ことを特徴とするロータ回転数制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載されたロータ回転数制御方法において、
前記湿度差検出ステップは、
前記ロータを通過する空気の前後の湿度差として前記ロータを通過する前記再生側の空気の前後の湿度差を検出する
ことを特徴とするロータ回転数制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−17890(P2012−17890A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154548(P2010−154548)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(390003333)新晃工業株式会社 (46)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】