説明

吸音構造体

【課題】吸音構造体の吸音特性の調整を容易に行い、簡単な構成で吸音構造体の吸音性能を向上させる。
【解決手段】被取付面Mに、複数の吸音材10を互いに間隔をあけて配置し、吸音材10間に多数の貫通孔を有する板状部材からなる孔あき吸音板20を配置する。吸音材10と孔あき吸音板20を被取付面Mに沿って交互に並べて取り付けて、吸音構造体1を被取付面Mに設置し、孔あき吸音板20により、吸音材10間を区画して被取付面Mとの間に空気層Kを形成する。空気層Kを有する孔あき吸音板20により所定の周波数帯域の音を吸音しつつ、吸音材10の表側面と側面でも吸音し、孔あき吸音板20の貫通孔と空気層Kの状態等を変更することで、吸音構造体1の吸音率を含む吸音特性を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面や天井面に取り付けられて吸音する吸音壁や吸音天井等の吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路や鉄道、又は、工場や各種の施設では、吸音構造体を壁面や天井面等の被取付面に取り付けて設置し、騒音源から発生する音を吸音構造体により吸音して低減させることが行われている。これに対し、従来、多孔質吸音材を並べて配置し、それらの背面側に空気層を形成等することで、吸音特性を調整できるようにした吸音構造体が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この従来の吸音構造体は、吸音特性を調整するために、嵩密度を部分的に変化させて多孔質吸音材を形成する必要があり、その形成が比較的困難で手間がかかる。そのため、多孔質吸音材の製造コストが高くなるとともに、使用する多孔質吸音材の数に応じて、吸音構造体の全体のコストも上昇する。また、吸音特性の調整や変更毎に嵩密度等を変化させて多孔質吸音材を形成する必要があり、そのために多大な手間や時間を要するため、吸音特性の調整や変更に容易に対応できない、という問題もある。更に、多孔質吸音材の配置や空気層の形成のために、複数の部材を組み合わせて使用しており、その構成や構造が複雑になり、製造や設置の手間や時間が増加してコストが上昇する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−285857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、吸音構造体の吸音特性の調整を容易に行えるようにし、簡単な構成で吸音構造体の吸音性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被取付面に取り付けられて吸音する吸音構造体であって、互いに間隔をあけて被取付面に配置された複数の吸音材と、多数の貫通孔を有する板状部材からなり、被取付面の吸音材間に配置されて被取付面側に空気層を形成する孔あき吸音板と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸音構造体の吸音特性の調整を容易に行うことができ、簡単な構成で吸音構造体の吸音性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の吸音構造体を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のX−X線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸音構造体の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の吸音構造体は、壁面や天井面等の被取付面に取り付けられて、騒音の低減を図る場所に設置され、各面の表面を構成して伝搬等する音を吸音する。
【0010】
図1は、本実施形態の吸音構造体を模式的に示す正面図であり、図2は、図1のX−X線矢視断面図である。
吸音構造体1は、図示のように、それぞれ吸音性を有する吸音材10及び孔あき吸音板20を複数備え、吸音材10と孔あき吸音板20が被取付面Mに沿って交互に並べて配置されている。吸音構造体1は、吸音材10と孔あき吸音板20が被取付面Mに取り付けられて、その表面の必要な範囲を覆い、吸音材10と孔あき吸音板20とにより所定の吸音特性を発揮して吸音する。
【0011】
吸音材10は、互いに所定の間隔をあけて被取付面Mに複数配置され、例えば接着剤により、隙間を開けて並べて被取付面Mに接着されて、それぞれ離間した状態で固定される。また、吸音材10は、正面視矩形状(図1参照)をなし、同じ幅(図2のW1)で所定厚さの平板状に形成され、互いに等間隔で平行に、かつ、所定方向(図1では左右方向)に並列して配置されている。この吸音材10は、全体が音を吸音できる材料により形成されて、全ての面が吸音面になっており、被取付面Mに取り付けられた面の逆側面(表側面)に加えて、その側面でも各々吸音する部材である。
【0012】
孔あき吸音板20は、多数の貫通孔21(図1では一部のみ示し、図2では省略する)を有する板状部材(多孔板)からなる。また、孔あき吸音板20は、矩形板状の表面部22と、その幅方向(図2の矢印F方向)の両端部から同じ方向に屈曲する一対の側面部23とを有し、表面部22と両側面部23とが直交する断面コ字状に形成されている。
【0013】
孔あき吸音板20は、一対の側面部23の突端側が被取付面Mに当接して、表面部22が被取付面Mから所定距離を隔てて配置され、表面部22と被取付面Mとが平行な状態で対向するように、被取付面Mに取り付けられる。また、孔あき吸音板20は、被取付面Mの吸音材10間に配置されて吸音材10間の各隙間を埋め、表面部22と一対の側面部23とにより、吸音材10間の空間を内面側と外面側に区画する。これにより、孔あき吸音板20は、吸音材10間を表面部22で覆い、表面部22の内部である被取付面Mとの間の内部空間に、貫通孔21を介して外部と連通する断面矩形状の空気層Kを形成する。
【0014】
ここで、この吸音構造体1では、吸音材10間に位置する孔あき吸音板20の幅(図2のW2)が吸音材10の幅W1と同じか、又は同程度の幅になっており、吸音材10と孔あき吸音板20が、側面同士を隣接させて被取付面Mに等間隔で均等に配置されている。これに対し、厚さは、孔あき吸音板20が吸音材10よりも厚くなっており、孔あき吸音板20間の部分(凹溝内)に吸音材10の全体が収容されて、それらの表面間に段差が設けられている。また、孔あき吸音板20は、各側面部23の突端に、外側に直角に屈曲して形成された取付部24を有する。孔あき吸音板20は、それぞれ隣接する吸音材10の被取付面Mへの取り付けに伴い、両側の取付部24が、吸音材10と被取付面Mとの間に挟み込まれて被取付面Mに取り付けられ、同時に、被取付面M側に空気層Kを形成する。
【0015】
吸音構造体1を被取付面Mに取り付けて設置するときには、まず、被取付面Mの不陸(凹凸)を調整し、吸音材10の配置位置の被取付面Mに下地処理用のシーラーを塗布する。続いて、被取付面Mに取付部24を当接させて、孔あき吸音板20を被取付面Mの所定位置に配置し、孔あき吸音板20を任意の仮止め手段により被取付面Mに仮止めする。次に、吸音材10の被取付面Mとの接触面に、ここでは、専用の接着剤(例えば弾性接着剤)を塗布し、吸音材10を被取付面Mに押し付けて密着させる。その際、吸音材10により、孔あき吸音板20の取付部24を被取付面Mとの間に挟み込み、接着剤が固化するまで、吸音材10を仮止め手段により被取付面Mに仮止めする。
【0016】
このようにして、被取付面Mに、全ての孔あき吸音板20を離間させて配置してから、それらの間に吸音材10を各々配置する。これにより、孔あき吸音板20の取付部24を、それぞれ隣接する吸音材10で挟み込みながら、孔あき吸音板20と吸音材10を仮止めして上記のように交互に配置する。その後、接着材が固化したら、孔あき吸音板20と吸音材10の仮止め手段を取り外して、被取付面Mへの吸音構造体1の取り付け作業が終了し、吸音構造体1の設置が完了する。また、孔あき吸音板20は、吸音構造体1が被取付面Mに設置された状態で、取付部24が吸音材10と被取付面Mとの間に挟み込まれて固定され、取付部24を介して、被取付面Mに取り付けられて吸音材10間に保持される。
【0017】
以上説明したように、本実施形態では、複数の吸音材10を互いに間隔をあけて配置したため、その表側面に加えて露出した各側面でも吸音でき、吸音材10の吸音面積を増加させて、吸音構造体1の単位面積当たりの吸音率を高くできる。その結果、従来よりも少ない吸音材10により、充分な吸音性能を発揮させて必要な吸音率を確保できるため、吸音材10の数や使用量を減らして、吸音構造体1のコストを削減できる。加えて、吸音材10間に配置した孔あき吸音板20が、空気層Kを形成する多孔板からなり、吸音性を有するため、孔あき吸音板20でも吸音して吸音構造体1の吸音率を高くできる。吸音時には、これら吸音材10と孔あき吸音板20により、吸音構造体1の設置範囲の全体で吸音しつつ、それぞれの吸音特性に応じた各種の音を吸音して確実に音を低減できる。
【0018】
また、孔あき吸音板20は、貫通孔21の状態(形状、寸法、配置の仕方、間隔等)や空気層Kの状態(容積、形状、寸法等)に応じた周波数帯域の音を吸音するため、それらを適宜設定することで、所定の周波数帯域の音を吸音できる。これに伴い、各周波数帯域の吸音率を比較的自由に調整できるため、吸音構造体1の吸音率を含む吸音特性を調整して適切に設定でき、特定の周波数帯域の音を重点的に吸音して低減することもできる。一方、吸音材10についても、配置間隔や各面の面積の変更により吸音率を調整して高くできるとともに、その厚さにより吸音できる音の周波数帯域も変更でき、それらを適宜設定することで、吸音構造体1の吸音特性を調整できる。
【0019】
このように、吸音構造体1は、吸音材10と孔あき吸音板20の構成を種々変更して組み合わせて吸音特性を適宜調整でき、必要に応じて様々な吸音特性を実現できる。そのため、設置環境や要求性能等に応じて適切な吸音特性に設定でき、各状況における吸音構造体1の吸音性能を向上させて、設置場所の音を確実に吸音して低減できる。また、吸音材10として通常性状の部材を使用できるため、その形成が容易で手間の増加を防止できる。同時に、この吸音構造体1は、複数の吸音材10間に孔あき吸音板20を配置した構造であり、構造や構成が比較的簡単であるため、製造や設置の手間や時間等を減少させてコストも削減できる。併せて、吸音材10と孔あき吸音板20の変更にも大きな手間をかけずに柔軟に対応でき、容易に吸音特性を調整して目的とする特性に精度よく設定できる。
【0020】
従って、本実施形態によれば、吸音構造体1の吸音特性の調整を容易に行うことができ、簡単な構成で吸音構造体1の吸音性能を向上させることができる。また、吸音材10と孔あき吸音板20を被取付面Mに沿って交互に並べて配置したため、吸音構造体1の設置範囲で吸音特性にムラが生じるのを抑制でき、吸音特性の均一性を高くして、設置範囲の全体に亘って吸音性能を同様に向上させることができる。更に、孔あき吸音板20の表面部22で吸音材10間を覆って表面部22の内部に空気層Kを形成するため、単純な構造で空気層Kを形成でき、その形成に要する部材の数を減少させて、コストをより削減できる。加えて、上記のように、吸音材10により取付部24を被取付面Mとの間に挟み込んで、孔あき吸音板20を被取付面Mに取り付けることで、取付手段を別途使用することなく、孔あき吸音板20を被取付面Mに容易に取り付けることができる。
【0021】
ここで、吸音材10には、例えば、剛体多孔質吸音材であるセメント系多孔質吸音材を使用できる。セメント系多孔質吸音材は、セメントを主成分として多孔質に形成された、例えば相互に連通する直径0.1〜1mm程度の小さな気孔が全体積の85%以上を占める発泡コンクリートであり、気孔による通気性を利用して音のエネルギーを吸収等して吸音する。このように、剛体多孔質吸音材からなる吸音材10では、比較的広い周波数帯域の音を吸音できるとともに、高い耐水性や耐久性が得られる。
【0022】
また、孔あき吸音板20は、例えば、多数の貫通孔21が全体に亘って同じパターンで均等に形成された金属製の板状部材からなる。本実施形態では、孔あき吸音板20を構成する板状部材は、金属板(ここでは鋼板)に打ち抜き加工を施して、多数の同形状の貫通孔を形成したパンチングメタルであり、切断や曲げ加工(又はプレス加工)等を経て所定形状に形成される。孔あき吸音板20には、コストや加工性、及び、吸音性能の観点から、このようなパンチングメタルを使用するのが望ましい。
【0023】
なお、本実施形態では、被取付面Mに吸音材10と孔あき吸音板20を一列配置したが、被取付面Mには、吸音材10と孔あき吸音板20の複数列を併設して配置してもよい。その際、列毎の吸音材10と孔あき吸音板20の位置を揃えて配置してもよく、列毎に、吸音材10と孔あき吸音板20の位置をずらして配置してもよい。また、孔あき吸音板20は、被取付面M側に1つの空気層Kを形成するだけでなく、内部を複数の空間に区画する等して、必要に応じて複数の空気層Kを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1・・・吸音構造体、10・・・吸音材、20・・・孔あき吸音板、21・・・貫通孔、22・・・表面部、23・・・側面部、24・・・取付部、K・・・空気層、M・・・被取付面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面に取り付けられて吸音する吸音構造体であって、
互いに間隔をあけて被取付面に配置された複数の吸音材と、
多数の貫通孔を有する板状部材からなり、被取付面の吸音材間に配置されて被取付面側に空気層を形成する孔あき吸音板と、
を備えたことを特徴とする吸音構造体。
【請求項2】
請求項1に記載された吸音構造体において、
孔あき吸音板が、表面部と一対の側面部を有し、吸音材間を表面部で覆い、表面部の内部に空気層を形成することを特徴とする吸音構造体。
【請求項3】
請求項2に記載された吸音構造体において、
孔あき吸音板は、各側面部の突端に外側に屈曲した取付部を有し、取付部が吸音材と被取付面との間に挟み込まれて被取付面に取り付けられることを特徴とする吸音構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された吸音構造体において、
吸音材と孔あき吸音板が、被取付面に沿って交互に並べて配置されていることを特徴とする吸音構造体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された吸音構造体において、
孔あき吸音板を構成する板状部材が、パンチングメタルであることを特徴とする吸音構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−128430(P2011−128430A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287812(P2009−287812)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】