説明

吹付け可能な耐炎性液体塗料組成物、およびその使用方法

皮膜形成用高分子成分、前記塗料組成物を硬化することができる硬化剤、および耐炎性材料成分を含む耐炎性塗料組成物、ならびにその使用方法を開示する。これらは、車両の床ライナ用の吹付け可能な塗料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用基材上に使用するための塗料組成物に関する。特に、本発明は、軽量および中量のトラックの床の耐炎性塗料として有用な吹付け可能な液体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
成形されたトラックの床ライナが利用されており、ポリエチレン、またはポリプロピレン、またはポリ塩化ビニルなど様々な材料からなる。ライナは、一般に真空形成され、ドロップインライナとするために、特定の構成のトラックの床に適合する在庫品として保管される。このようなライナは、トラックの床自体を保護し、車両の外観特性を改善かつ維持するための手段として有用である。
【0003】
予め成形されたドロップイン取付式トラックの床ライナの主な問題は在庫要件である。なぜなら、このようなライナの保管には相当量の体積的空間が利用可能でなければならないからである。さらに、このようなライナは取り付け後に、極端な環境条件に曝露されると亀裂を生じ、それによってトラックの床自体から分離する傾向にある。落し込み型ライナは、トラックの床とライナとの間に密集する汚れ、水分、および泥の問題も抱えている。これによって、ライナの下にある基材の浸食を早める環境が生み出される。
【0004】
吹付け可能な塗料をトラックの床上に塗布し、その材料が、強靭でしかも弾性力のあるライニング材料に硬化できることによって形成されたトラックの床ライナも、当技術分野でよく知られている。このような塗料組成物は単一または多成分とすることができ、熱硬化または周囲温度硬化することができる。吹付け可能なエポキシ、ポリウレタン、またはポリ尿素は、このような組成物に使用される化学物質の例である。これらの塗料は、通常は、硬化性樹脂を皮膜形成用主成分とし、エラストマー成分、および補強充填剤を含む。
【0005】
吹付け可能な床ライナは、ドロップインライナに比べて、汚れ、水分、および泥の密集問題を回避しながら、改善された耐食性および亀裂抵抗を含めて多くの改善点を提供する。しかし、このような所望の耐久性を提供するためには、このような塗料を、非常に厚い被膜塗り厚で塗布しなければならない。したがって、これらは、かなりの質量の潜在的に危険で非常に可燃性の有機材料をトラックの床に加える。したがって、耐炎性塗料組成物が必要とされている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,015,510号明細書
【特許文献2】米国特許第5,998,503号明細書
【特許文献3】米国特許第4,591,533号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の一目的は、耐炎性を有し、かつトラックの床の摩擦性および耐久性の要件にもちこたえる能力を有する吹付け可能な塗料組成物を提供することである。本発明の別の目的は、このような組成物を導電性にして、トラックの床上に貯蔵されうるガソリンを発火させるかもしれない、あるいはガソリン充填操作中の危険要因となることがある静電気を発生させる可能性を最小限に抑えることである。また、このような塗料は、従来型のスプレー装置を使用して様々なトップコート上に塗布することができ、優れた接着を有することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吹付けることにより保護ライナをトラックの床および他の基材上に形成するのに有用な硬化性塗料組成物に関する。該塗料組成物は、
(a)硬化性皮膜形成用高分子材料、
(b)塗料組成物を硬化することができる硬化剤、および
(c)難燃剤成分
を含む。
【0009】
任意選択的に、組成物は、以下の材料のうち1つまたは複数をさらに含むことができる。
(d)導電材料、
(e)エラストマー材料、および
(f)補強充填剤
【0010】
組成物は、溶媒および希釈液が、上記に記述するポリマーを分散しかつ/または希釈し、配合および吹付け塗布を容易にする液体キャリヤーとして使用される、吹付け可能な液体組成物であることが最も好ましい。
【0011】
本発明は、基材を上記の塗料組成物で被覆する方法、および上記の組成物による塗料を接着させた車体やその一部分などの基材にも関する。
【0012】
本発明の組成物を使用して、組成物を車両の床上に、好ましくは車両組立て作業中に塗布し、続いて車両の床上のライナを硬化し形成することによって、車両の床ライナをその場で形成することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書では、「耐炎性」または「耐炎性の」という用語を、点火源に曝露した後、炎を伝播するほどまでには、燃焼の影響を受けやすくないと定義する。
【0014】
本明細書では、「導電性の」という用語を、電流を導きまたは伝える特性として定義し、したがって電気抵抗の逆数と見なされるべきである。
【0015】
本明細書では、「その場で」という用語を、適所で、と定義する。塗装を形成する場合では、「その場で」は、予め形成してその後ドロップイン取り付けすることに対比して、適所で形成することを意味する。
【0016】
本発明の組成物は、運搬車両基材用の塗料として有用である。本発明の塗料組成物は、優れた耐炎特性、ならびに環境および摩擦の影響に対する耐久性を有する強靭な仕上げをなす。特に、本発明の塗料組成物は、塗料をトラックの床上に吹付け塗布し、次いで塗料を硬化することによってトラックの床ライナをその場で形成するのに最も有用である。
【0017】
本発明の塗料組成物は、粉末、スラリー、または液体の形とすることができるが、塗料組成物は液体の形であることが好ましい。
【0018】
塗料組成物は、基材の形状と同一の広がりをもつ硬化塗装をなす。したがって、特定の製品があればそれを金型形状に応じて形成することができる。金属性であろうと、木材であろうと、またはプラスチックであろうと、ほとんどどの適切な形成基材も使用することができる。例には、多数ある中でとりわけ、自動車およびトラックパネル、航空機パネル、貨物船基材、輸送容器、大型トラック、鉄道車両が含まれるだろう。
【0019】
本発明の塗料組成物は、顧客のニーズに応じて様々な質感が得られるように配合することができる。組成物は、事実上どんな色にも着色された注文の色とすることもできる。さらに、組成物は、硬化改質によって様々な摩擦係数および増大した引張強さを示すように改質することもできる。
【0020】
最終的な硬化塗料組成物製品は、約100〜約15000マイクロメートル(約4〜600ミル)、好ましくは約1000〜5000マイクロメートル(約40〜200ミル)の実質的な厚さを有するものである。
【0021】
本発明の塗料組成物は、多数ある中でとりわけ、空気スプレー、高容量/低圧、静電回転ベル、ローラ、ブラシアプリケータなど様々な技法を、ロボット、自動または手動プロセスと一緒に使用することによって基材に塗布することができる。塗料は、高容量/低圧アプリケータをロボットアームと共に使用して塗布することが好ましい。
【0022】
本発明の塗料組成物は、皮膜形成用高分子成分を含む。高分子成分は、硬化剤と反応して、皮膜網を形成し、したがって耐久性および強さを付与するポリマーである。ポリマーは、単一パッケージ系中に硬化剤とともに含み、あるいは多重パッケージ系中に別の材料として添加することができる。
【0023】
本発明に使用するポリマーは、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、加水分解性シラン、アセトアセトネート、またはエポキシ官能基を含む。ポリマーは、上記の官能基の実際的な任意の組合せも含むことができる。通常知られているポリアクリル、ポリエステル、セルロース、アルキド、脂肪族エポキシド、ポリ尿素、およびポリウレタンポリマーが、高分子成分として最も有用である。さらに、高分子成分は、オリゴマー材料とすることができる。好ましい一実施形態では、高分子成分は、アミン官能基をもつポリ尿素ポリマーである。
【0024】
本発明の塗料組成物は、所望の硬化条件下で塗料を架橋することができる硬化剤も含む。硬化条件は、周囲温度から約150℃の範囲の温度を含む。
【0025】
本発明に使用する硬化剤は、脂肪族または芳香族のポリイソシアナート樹脂、通常のモノマーメラミンホルムアルデヒド樹脂、および通常の高分子メラミンホルムアルデヒド樹脂である。いくつかの有用なポリイソシアナート樹脂の例には、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、およびその任意の混合物が含まれる。
【0026】
触媒は、液体塗料組成物に添加して、高分子材料と硬化剤との架橋反応をさらに増強することができる。使用する典型的な触媒は、有機リン酸、有機スルホン酸、またはジラウリン酸ジブチルスズなどの有機金属錯体である。
【0027】
室温硬化性塗料組成物を得るために、塗料組成物は、2成分または複数成分の組成物であることが最も望ましい。それは、高分子材料をある容器に配置し、硬化剤を第2の容器に配置することを意味する。塗料の硬化は、吹付けプロセスの直前に材料をブレンドすると開始する。このような複数成分組成物は、硬化温度が約40〜約95℃である低温ベーキング条件にも非常に有用である。好ましい一実施形態では、脂肪族ポリイソシアナート樹脂を硬化剤として、有機金属触媒と組み合わせて使用する。
【0028】
単一成分の高温硬化性組成物を本発明で配合することができる。このような組成物は、約80〜約150℃の温度範囲で硬化することができる。高分子またはモノマーのメラミンホルムアルデヒド樹脂は硬化剤として最も有用である。これらの硬化剤を、通常は有機スルホン酸またはリン酸の触媒と一緒に使用する。
【0029】
本発明の塗料組成物は、難燃剤成分を含む。本発明の任意の塗料組成物中で実際的にかつ効果的に使用することができる市販の任意の耐引火性材料を使用することができる。参照により本明細書に組み込まれるヤコブソン(Jacobson)らの米国特許公報(特許文献1)、およびヤコブソン(Jacobson)らの米国特許公報(特許文献2)は、特に有用な耐引火性材料とすることができる難燃剤ポリマーを開示している。また、ハロゲン化ホスフェートまたはハロゲンを含まないホスフェートをベースとする市販の耐引火性材料も同様に有用である。
【0030】
塗料組成物は、任意選択的に導電剤を含むことができる。組成物に実際的に組み込むことができる市販の任意の導電剤を使用することができる。導電剤の例は、様々なカーボンブラック、粉末グラファイト;亜鉛、鉄、銅、黄銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、銀、金、アルミニウムなど粉末またはフレーク金属、さらには二硫化モリブデン、鉄リン化物、スズまたはアンチモンでドープされたBaSOなどのいずれかである。導電剤は、特定の最終用途の基準を満たすように、当業者によって選択することができる。
【0031】
引張強さ、耐衝撃性、硬度および剛性を増大し、被膜塗り厚を増大し、収縮を低減し、熱膨張係数を低減し、熱伝導性を増大し、透湿を低減し、流動性を増減する助けとなり得る反応性または非反応性の材料など追加の材料を、液体塗料組成物中で使用することができる。使用することができるいくつかの材料の例は、シリカ、シリケート、炭酸カルシウム、粘土、酸化鉄、酸化アルミニウム、ポルトランドセメント、繊維材料、発泡剤、天然または合成のゴム化合物、エラストマー材料、帯電防止剤、離型剤、および他の潤滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、販売名サーリン(Surlyn)(登録商標)で本願特許出願人から市販のものなどのイオノマー、販売名ケブラー(Kevlar)(登録商標)またはノーメックス(Nomex)(登録商標)で本願特許出願人から市販のものなどのアラミド材料、販売名テフロン(Teflon)(登録商標)で本願特許出願人から市販のフルオロポリマー樹脂、再生タイヤ、塗料余剰汚泥などである。着色、隠蔽、および/または錆止めの目的で、顔料を添加することができる。
【0032】
さらに、望むなら、吹付けする目的で粘度を制御するための適切な溶媒もしくは希釈液、または溶媒のブレンドを組み込むことができる。適切な溶媒の例には、メタノール、n−ブタノール、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、トルエン、キシレン、アセトン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、n−酢酸ブチル、t−酢酸ブチル、n−プロピオン酸プロピル、n−プロピオン酸ブチル、n−酢酸プロピル、ならびに通常使用される他のエステル、エーテル、ケトン、脂肪族および芳香族の炭化水素溶媒が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
耐久性をさらに高めるためには、紫外線安定剤、または紫外線安定剤の組合せを、透明なコート組成物に添加することができる。このような安定剤には、紫外線吸収剤、遮断剤、消光剤、およびヒンダードアミン系光安定剤が含まれる。有用な典型的紫外線安定剤には、ベンゾフェノン、トリアゾール、トリアジン、ベンゾエート、ヒンダードアミン、およびその混合物が含まれる。紫外線安定剤の具体例は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公報(特許文献3)に開示されている。良好な耐久性には、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)1130、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)384、およびチヌビン(Tinuvin)(登録商標)123(ヒンダードアミン系光安定剤)(すべてチバガイギー(Ciba−Geigy)から市販されている)のブレンドが好ましい。また、酸化防止剤を添加することができる。このような紫外線安定剤の使用によって、長期耐久性、ならびに通常の下塗表面および電気塗装下塗への塗料組成物の接着が可能になる。
【0034】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の組成物の成分の様々な修正、改質、付加または置換は、当業者に明らかである。本発明は、本明細書に記載する例示的な実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床ライナの形成に有用な硬化性塗料組成物であって、
(a)高分子成分、
(b)前記塗料組成物を硬化することができる硬化剤、および
(c)耐炎性成分
を含むことを特徴とする硬化性塗料組成物。
【請求項2】
(a)塗料組成物を提供する工程であって、該塗料組成物は、高分子成分、有効な補強材、ある量の繊維、前記塗料組成物を硬化することができる硬化剤を含む工程と、
(b)該組成物を車両の床上に塗布する工程と、
(c)前記車両の床上のライナを硬化し形成する工程と
を含むことを特徴とする車両の床ライナをその場で形成する方法。
【請求項3】
前記床がトラックの床であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
導電剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
該組成物が吹付け可能な液体組成物であることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。

【公表番号】特表2007−533775(P2007−533775A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524774(P2006−524774)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027359
【国際公開番号】WO2005/019357
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】