説明

周縁部分に図柄部分を形成してなる板材及びその製造方法

【課題】意匠感に富み、耐久性に優れた板材とその製造方法を提供できるようにする。
【解決手段】板状素材の少なくとも表面部分の周縁部分に絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、当該図柄部分形成用の空間に板状素材の側縁部分の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の周縁部に図柄部分と縁取り部分とを一体に形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周縁部分に図柄部分を形成してなる板材、特に机やテーブルの天板等に適した板材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の板材では特許文献1に示されているように、圧縮ボードの表裏に化粧板を設けた板状素材を矩形に切断し、その周縁部の厚みの中間高さ部分に、係合溝を刻設
し、差込突起部を有する保護縁体を板状素材の周縁に巻きつけ、差込突起部を係合溝に叩き込んだり、圧入したりして嵌合させることにより、保護縁体で板状素材の周縁部分を保護するようにしたものが知られている。
【0003】
ところがこうしたものでは、差込突起部を嵌合させて保護縁体を板状素材の周縁部分に止めつける構造であることから、板材は、保護縁体を板状素材の周縁に設けただけの平凡なもので、意匠性に欠けるという問題があった。
しかも、差込突起部と係合溝との嵌合が外れたり、その嵌合が緩んだりすると周縁部と保護縁体との間に隙間を生じ、これが剥離の原因になるという問題もあった。
更に、保護縁体がテープ状に形成され、周囲に巻きつけた後、端部同士が突き合せた状態になるように切断されるのであるが、保護縁体と板状素材の熱膨張率が異なるために環境の温度変化等でぴったりと突き合わせても、その端部同士間に隙間が発生し、その隙間が徐々に大きくなってゆくという問題もあった。
【特許文献1】実開平6−38672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み提案されたもので、意匠感に富み、耐久性に優れた板材とその製造方法を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にかかる周縁部分に図柄を形成した板材は、板状素材の少なくとも表面部分の周縁部分に絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、当該図柄部分形成用の空間に板状素材の側縁部分の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の周縁部に図柄部分と縁取り部分とを一体に形成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
本発明にかかる周縁部分に図柄を形成した板材では、板状素材が平面視において矩形に形成されており、その四隅部分に図柄部分を形成したこと、板状素材が表面の化粧板と裏面に裏板とを備え、裏板の周縁部分にも絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、当該図柄部分形成用の空間部分に板状素材の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の表面の周縁部に、図柄部分を縁取り部分とを一体に形成したこと、更に、図柄部分及び縁取り部分を形成する樹脂を少なくとも化粧板若しくは板状素材の表面の色と異なる色にしたことも特徴とするものである。
【0007】
本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造方法では、板状素材の少なくとも表面部分で側縁近傍部に、平面視において絵や文字、記号となる図柄を形成する図柄部分形成用の空間を切削具により切削し、当該図柄部分形成用の空間が形成された板状素材を、その周囲に縁取り部分形成用の空間が形成される大きさを有する板状素材装着用キャビティに装着し、縁取り部分形成用の空間と図柄部分形成用の空間とにわたって樹脂を流し込むことにより、板状素材の周縁部分に図柄部分を形成するようにしたことを最も主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の周縁部分に図柄を形成した板材によれば、板状素材に絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、この図柄部分形成用の空間に板状素材の側縁部分の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の周縁部に図柄部分と縁取り部分とを一体に形成してあるので、縁取り用の樹脂が板状素材の側縁部分と密着する上、これと一体に形成された板材の表面の図柄部分とが相俟って図柄部分並びに縁取り部分の樹脂の剥離を確実に防止する。
これにより、従来のように板材と保護縁体との間に隙間を生じたり、剥離したりするのを防止してその耐久性を大幅に向上させることができる利点がある。
【0009】
また、縁取り用の樹脂が板材の側縁に密着するので、防水効果もあり、屋外に設置される例えばベンチやブランコ等の座部や背もたれにも使用することができ、板材の汎用性が一段と高められる。
【0010】
さらに、板材の表面部分には、側縁部分の縁取り用の樹脂と一連の図柄部分が形成されているので、この図柄部分の図柄で板材の意匠感を高めることができる。
特にこの図柄は板材の用途に合わせ、例えば園児用の机の天板用にする場合には動物の形状にしたり、商店やイベント会場等に設置される前記のベンチ等の座部や背もたれの板材の場合には宣伝文字やキャラクター等の図柄にしたりすると、意匠感が一層高められるのにくわえて宣伝効果を持たせることができる利点もある。
【0011】
また、周縁に図柄を形成してなる板材の製造方法では、板材の少なくとも表面部分の側縁近傍部に、切削具により平面視において絵や文字、記号となる図柄形成用の空間を切削して形成し、当該図柄部分形成用の空間が形成された板状部材を、その周囲に縁取り部用の空間が形成される大きさを有する板状素材装着用キャビティに装着し、縁取り部用の空間と図柄部分形成用の空間とにわたって樹脂を流し込むことにより、周縁部分に図柄を形成するようにしてあるので、従来のように、周縁部の厚みの中間高さ部分に、係合溝を刻
設し、差込突起部を有する保護縁体を板材の周縁に巻きつけ、差込突起部を係合溝に叩き込んだり、圧入したりすることなく、図柄部分形成用の空間を形成するだけで多目的に使用することができる板材を簡単に製造することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる周縁部分に図柄を形成した板材及びその製造方法の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は例えば幼稚園児が使用するような小形のテーブルの天板として使用される板材の斜視図であって、図中符号1はこの板材を全体的に示す。
この板材1は矩形に形成された板状素材2と、当該板状素材2の周縁に形成される縁取り3部分と、この縁取り部分3と一連に形成された図柄部分4とを備えてなる。
【0013】
上記板状素材2は図2に示すように表面に化粧板5と裏面に裏板6とを有し、化粧板5と裏板6との間には圧縮ボード7が挟まれている。
そして、板状素材2の周縁に設けられる縁取り部分3及び化粧板5部分に設けられる図柄部分は図2以降の工程を経て形成される。
【0014】
先ず、図2に示すように縦型フライス等の切削具8により化粧板5の周縁9を、圧縮ボード7の上寄りの一部に食い込む状態で切削するとともに、四隅部分には同じ高さで図柄(本例ではウサギのシルエット)形成用の空間10が切削された板状素材2を形成する。
そして、図3に示すように上記板状素材2を反転させてモールド用金型11の板状素材装着用キャビティ12に装着する。
このモールド用金型11の板状素材装着用キャビティ12は、図4に示すように板状素材2が装着されたときにその周囲に縁取り部用の空間13が形成される大きさになっている。
【0015】
次に、モールド用金型11の板状素材装着用キャビティ12に板状素材2が装着されると図5及び図6に示すように、図上では上面となっている板状素2の裏板6に、樹脂注入口14と排気口15とを形成した蓋板16が板状素材装着用キャビティ12に取り付けられる。
この蓋板16の板状素材装着用キャビティ12への取り付けは、図7に示すようにモールド用金型11の周囲に複数のクランプ18を配置し、このクランプ18で蓋板16を板状素材2の裏板6に密着するように確りと固定するようにして行なわれる。
【0016】
斯くして、蓋板16が板状素材装着用キャビティ12へ取り付けられると、図6に示すように板状素材2の周囲と板状素材装着用キャビティ12の内周面との間に縁取り部用の空間13が形成され、図柄部分4と板状素材装着用キャビティ12の底面との間には図柄部分形成用の空間10が形成され、両空間10・13は連通した状態になっている。
【0017】
然る後、樹脂注入機19から塩化ビニル等の高熱溶融した合成樹脂が樹脂注入口14から縁取り部用の空間13及び図柄部分形成用の空間10に注入されて充填される。
ここで、合成樹脂の色を化粧板の色と異なる色にすると、図柄部分4や縁取り部分3が強調されることになるが、こうしたものに限られず、同色や半透明の合成樹脂にすることもできる。
また、樹脂の種類としては軟質の塩化ビニルや独立発泡のウレタンにすることもでき、こうした場合には接触時の感触を良くするとともに、衝突時の怪我等の発生を防止するクッションとしても作用させることができる。
【0018】
樹脂注入口14から縁取り部用の空間13及び図柄部分形成用の空間10に注入されて充填された合成樹脂の温度が十分に低下すると、上記手順とは逆にクランプ18を緩めてモールド用金型11から取り外し、蓋板16を開ける。
そして、板状素材装着用キャビティ12内の板状素材2を取り出すと、この板状素材2の周縁部分には合成樹脂で形成された縁取り部分3と、この縁取り部分3と一連となった図柄部分4を備えた図1に示すような板材1が完成する。
【0019】
因みに、上記のように板状素材2を板状素材装着用キャビティ12内に装着し、その周囲並びに図柄部分4に合成樹脂を充填して当該部分をモールドするとき、板状素材2が木製の場合には溶融した合成樹脂が木の繊維に浸透しやすく、一層堅固に貼着でき、剥離が防止できる。
従って、板状素材2の切断や図柄部分4の切削は切り落としの儘、つまりササクレが多少あったほうが樹脂を浸透させる点で望ましく、かかる意味で仕上げ等の別段の仕上げ加工を必要としないので、その分、製造工程を簡素化できる。
【0020】
尚、上記実施の形態では板状素材2を、その中間に圧縮ボード7を挟み表面には化粧板5を、裏面には裏板6を設けたものにしてあるが、こうしたものに限られず、表面の化粧板5や裏面の裏板6を省略したり、1枚板で形成したりすることができるのは勿論のことである。
また、板状素材2の材質は木製に限られず、金属製や硬質合成樹脂製にすることも可能である。
更に、上記実施の形態では図柄部分4を表面の化粧板5部分に設けるようにしてあるが、裏面にも図柄部分を設けることができるのは言うまでもないことである。
【0021】
そして、上記実施の形態では図柄部分4を四隅部分に設けるようにしてあるが、此れに代えて若しくはこれに加えて辺部分に形成することもできるし、板状素材2の形状は矩形に限らず三角形や五角形、その他の多角形及び円形や楕円形にすることもできる。
また、図柄部分のデザインは人気のあるキャラクターや文字及び数字、記号等にすることができる。
加えて、上記実施の形態では板材1の上面角部の面取りや樹脂注入口14や排気口15の痕を表面に残さないために板状素材2を反転させてモールド用金型11の板状素材装着用キャビティ12に装着するようにしてあるが、反転させることなく板状素材をモールド用金型11の板状素材装着用キャビティ12に装着することも可能である
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の斜視図である。
【図2】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程中の図柄部分を切削している状態の斜視図である。
【図3】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程中、板状素材をモールド用金型の板状素材に装着する過程の分解斜視図である。
【図4】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程中、板状素材をモールド用金型の板状素材に装着したときの断面図である。
【図5】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程中、板状素材を装着したモールド用金型に蓋板を装着する過程の分解斜視図である。
【図6】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程中、板状素材を装着したモールド用金型に蓋板を装着したときの断面図である。
【図7】は本発明にかかる周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造工程の樹脂の注入する工程の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・板材
2・・・板状素材
3・・・縁取り部分
4・・・図柄部分
5・・・化粧板
10・・・図柄形成用の空間
11・・・モールド用金型
12・・・板状素材装着用キャビティ
13・・・縁取り部用の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状素材の少なくとも表面部分の周縁部分に絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、当該図柄部分形成用の空間に板状素材の側縁部分の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の周縁部に図柄部分と縁取り部分とを一体に形成したことを特徴とする周縁部分に図柄を形成した板材。
【請求項2】
板状素材が平面視において矩形に形成されており、その四隅部分に図柄部分を形成したことを特徴とする請求項1に記載の周縁部分に図柄を形成した板材。
【請求項3】
板状素材が表面の化粧板と裏面に裏板とを備え、裏板の周縁部分にも絵や文字、記号等の図柄部分形成用の空間を形成し、当該図柄部分形成用の空間部分に板状素材の縁取り部分を形成する樹脂を流し込んで板状素材の表面の周縁部に、図柄部分を縁取り部分とを一体に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の周縁部分に図柄を形成した板材。
【請求項4】
図柄部分及び縁取り部分を形成する樹脂を少なくとも化粧板若しくは板状素材の表面の色と異なる色にしたことも特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の周縁部分に図柄を形成してなる板材。
【請求項5】
板状素材の少なくとも表面部分で側縁近傍部に、平面視において絵や文字、記号となる図柄を形成する図柄部分形成用の空間を切削具により切削し、当該図柄部分形成用の空間が形成された板板状素材を、その周囲に縁取り部分形成用の空間が形成される大きさを有する板状素材装着用キャビティに装着し、縁取り部分形成用の空間と図柄部分形成用の空間とにわたって樹脂を流し込むことにより、板状素材の周縁部分に図柄部分を形成するようにしたことを特徴とする周縁部分に図柄部分を形成してなる板材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−168049(P2008−168049A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5870(P2007−5870)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(391034880)トキハ産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】