説明

味をマスクした有効物質の結晶または顆粒の分散体、分散体を詰めた咀嚼ソフトカプセル、およびその調製方法

本発明は味をマスクするためのコーティングでコートされた有効物質結晶または顆粒の親油性媒体への分散体に関する。本発明はまた、単位投与形態および特に前記分散体を詰めた、咀嚼あるいは速溶性のソフトゼラチンカプセルならびにそれを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味の悪い有効成分の結晶または顆粒の味をマスクしたものの分散体を含む液状充填物を含む速溶性ソフトカプセルを提供する新規な投与形態に関する。特に、前記投与形態は味をマスクするためのコーティングによってコートされた有効物質の結晶または顆粒の親油性媒体への分散体である。本発明はまた、口の中で素早く溶け、また前記分散体を含む咀嚼ソフトカプセルに関し、またこの新規な投与形態を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、特に不快な味を有する薬剤の経口投与は、ある種の患者、特に幼児、子供、燕下障害の患者には大変困難である。そういった困難があると治療の協力が得にくい。経口製剤処方における味が悪いという問題を克服するために様々な投与形態が開発されてきた。
【0003】
この問題を克服するためのアプローチの例としては、有効物質の結晶または顆粒のコート、米国特許第5,019,563号および第5,024,997号に記載されたような有効物質のシクロデキストリンタイプの分子中への錯体化(包摂錯体)、米国特許第5,180,590号および第5,262,179号に記載されたようなわずかに局部的な興奮を引き起こす薬剤の添加、非常に大量の香味料の添加および米国特許第4,975,465号に記載されたようなあるpH環境の保持、米国特許第5,466,865号に記載されたような有効物質の結晶形態の変更、米国特許第4,831,058号に記載されたようなイブプロフェンとそのアルミニウム塩の混合物の使用、米国特許第5,814,332号および第5,653,993号に記載されたような有効物質のカプセル化がある。
【0004】
さらに具体的には、子供用の経口製剤処方として、多くの懸濁液投与形態が存在する。そのためには特別なコートした粒子を開発する必要があり、味をマスクするためのそのコーティングは、一方では、貯蔵中には水性媒体に耐えなければならず、他方一旦呑み込まれると、有効物質が生体内において満足な生体利用効率が得られるように極めて速やかに崩壊することができなければならない。
【0005】
多量の高価なポリマー、コーティングおよび主にpHに依存するポリマーを使用しなければならず、有用なコーティングの開発は困難である。コーティングレベルが高くなると、薬剤含有率は粒径の因子によって制限されるようになるが、粒径は口の感触に受け入れられるようにしなければならない。さらに、先行技術の調製では安定性に問題があり、貯蔵期間が長くなると味のマスキングが失われることがある。
【0006】
速溶性錠剤も入手可能である。速溶性錠剤は英国特許第1548022号に記載されているように水溶液の凍結乾燥を必要とする方法によって作ることができる。そういった錠剤の製造には、投与形態の製造に使用される水性媒体に対しては抵抗し、一旦呑み込まれると有効物質が利用されるように速やかに崩壊しなければならないので、味をマスキングするコートの微妙な調製が含まれる。
【0007】
噛んでも噛まなくても口の中で速やかに崩壊する錠剤も提案されている。例えば国際特許出願第WO99/04763号および第WO00/51568号参照。しかし、そういった固体錠剤の製造にも、やはり味をマスキングするためのコーティングの微妙な調製が含まれる。この場合コーティングは噛むことによる圧力に耐えなければならず、一旦呑み込まれると速やかに崩壊しなければならない。ある場合、これらの固体錠剤のためのコート物質は(錠剤を形成するための)圧縮操作に耐えるために弾性で厚くなければならず、燕下後には速やかに溶解しなければならない。さらに、これらの錠剤は口の中で柔らかく、ざらざらしたまたはいわゆる砂のような感触を残す傾向があり、不快となるかも知れない。これはコートされた結晶および/または顆粒の粒径分布により、また唾液以外に液体基剤が存在しないことによる。
【0008】
さらに、不快な味を持った有効物質、特にイブプロフェンを含むソフトカプセルは、国際特許出願第WO88/02625号、第WO93/11753号、第WO94/14423号および第WO02/17855号に記載されている。これらのカプセルにおいては、有効物質は親水性の基剤の溶液中に入れられる。有効物質の溶解は既に達成されているので、生体内における放出は速いと予測される。しかし、これらのカプセルは燕下の困難な人が、呑み込んで、しばしばコップ一杯の水を使用することを前提としている。このような投与形態では、充填製剤処方が、非常に不快な味を呈したり、ある場合にはひりひりする可能性のある成分と混じるので噛んではならない。ポリエチレングリコールとイブプロフェンのような充填成分は、強い苦みを呈し、口の中がひりひりする(ヤケ)。
【特許文献1】米国特許第5,019,563号
【特許文献2】米国特許第5,024,997号
【特許文献3】米国特許第5,180,590号
【特許文献4】米国特許第5,262,179号
【特許文献5】米国特許第4,975,465号
【特許文献6】米国特許第5,466,865号
【特許文献7】米国特許第4,831,058号
【特許文献8】米国特許第5,814,332号
【特許文献9】米国特許第5,653,993号
【特許文献10】英国特許第1548022号
【特許文献11】国際特許出願第WO99/04763号
【特許文献12】国際特許出願第WO00/51568号
【特許文献13】国際特許出願第WO88/02625号
【特許文献14】国際特許出願第WO93/11753号
【特許文献15】国際特許出願第WO94/14423号
【特許文献16】国際特許出願第WO02/17855号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すべてのタイプの患者が服用でき、不快な味を持った有効物質に適した経口投与のための薬剤投与形態に対する現実的なニーズが存在する。本発明による投与形態は、口の中で柔らかい感触や、ざらざらした感触を残すことはない。本発明はまた貯蔵期間にわたって安定で、1回の投与で大量の有効物質を摂取でき、有効物質が満足に生体内に放出される投与形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、そして予想もしなかったことであるが、本発明者等は、好ましい実施形態においては味をマスクした有効成分と脂溶性液体で構成された分散体で満たされており、噛むことができ、口の中で素早く溶解するソフトカプセルを含む改善された経口投与形態を見出した。別の実施形態においては、本発明は、味をマスキングするためにコーティングによってコートされた有効物質の結晶または顆粒の親油性媒体中への分散体に関する。前記分散体は、例えば、従来のソフトカプセル、咀嚼ソフトゼラチンカプセル、速溶性のソフトゼラチンカプセル、アンプル、小袋、スティックパックなどいかなるタイプの入れ物にも入れることができる。本発明の別の実施形態によれば、前記分散体は咀嚼外包を含む速分散性の咀嚼ソフトカプセルに入れることができる。
【0011】
本発明においては、「味をマスクするためのコーティング」という用語は、カプセルが破裂したとき、味蕾によって感知される量の有効物質が口腔内で前記味蕾に接触するのを妨げるような何らかのコーティングを意味する。
【0012】
本発明による分散体においては、少なくとも1種の味マスキング剤でコートされた顆粒または結晶は親油性媒体中の懸濁液で存在する。
【0013】
本発明はコートされた有効成分の微粒子にかかるストレスが少ないという点で従来の系よりも優れている。さらに、このコートは、水性媒体に懸濁されないので、水充填剤に耐性である必要がない。さらに、本発明による投与形態においては、コートは、錠剤を調製するのに使用される圧縮操作に耐える必要がない。さらに、脂溶性の充填剤は味マスクされた有効成分の「オーバーコート」を提供する。つまり、脂溶性の充填剤が、カプセル(あるいは何らかの他の予想される投与単位)から口の中に放出されると、薄い脂溶性の層がコートされた有効成分の微粒子を取り囲み、さらに味蕾の隔離をもたらす。
【0014】
味覚は主として溶液中のまたは親油性媒体中で遊離した薬剤物質の量に関係している。本発明の1つの利点は、従来に比べて使用が容易で、コーティングレベルが低くても使用でき、すなわちコート/有効物質の重量比が小さい、親水性のおよび/または脂溶性のコーティングを使用することにある。
【0015】
さらに、本発明は特に高度に水溶性で、大部分の親油性媒体に対する溶解度が低い薬剤物質に適している。これらの薬剤は、素早く唾液に溶解して味蕾に到達するので、通常の投与形態を用いて味をマスクするのは困難である。対照的に、これらの薬剤は困難なく使用することができ、本発明による分散体を満足に提供することができる。
【0016】
本発明の1つの態様はコートした有効成分の分散のための親油性媒体の選択にある。親油性媒体は、有効成分および/または少なくとも1つの味をマスクするコート成分に対する溶解力を制限するように選択される。
【0017】
薬剤または有効物質の許容される溶解性の度合いは、入れる薬剤および有効成分の味の関数であるということに注意すべきである。味は液体基剤中の薬剤の味の知覚限度を測定することによって定量化することができる。例えばイブプロフェンのように非常に不快な味を有する有効成分の場合、親油性媒体はイブプロフェンおよびコート成分を溶解しないようにあるいは溶解性を最少にするように選択される。他方、味があまり不快でない有効成分の場合、有効成分および/またはコーティングのある程度の溶解は許容される。
【0018】
言い換えると、親油性媒体中の遊離の有効物質の濃度は、水中で味が感知できる有効物質濃度の約1.5倍以下、好ましくは約1.0倍以下、さらにより好ましくは約0.5倍以下とすべきである。例えば、もし問題の薬剤が水中で1.0mg/mlで感知できるとすると、親油性媒体中の遊離の有効物質の溶解度は1.5mg/ml以下とすべきである。
【0019】
本発明による分散体は、貯蔵中非常に安定である。すなわち分散体の官能的性質は少なくとも3カ月、好ましくは少なくとも1年、さらにより好ましくは少なくとも2年間保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
親油性基剤は消化性油および鉱油およびそれらの混合物を含む群から選択される。本発明においては、「消化性油」は正常な生理状態において生体内で膵臓のリパーゼの存在下に脱エステル化を行う可能性のある油を意味する。
【0021】
消化性油は、特に植物油および動物油、脂肪酸のジグリセリド、トリグリセリド、モノグリセリド、脂肪代謝性油、中鎖(C8-C12)脂肪酸または長鎖(C14-C22)脂肪酸と、低分子量(6以下の炭素原子)のモノアルコール、ジアルコール、ポリアルコール、およびそれらの混合物との全エステルまたは部分エステルを含む群から選択される。
【0022】
親油性媒体の例として使用できる具体的な植物油の例には大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ココナッツ油、椰子油、菜種油、葡萄種油、小麦麦芽油、ゴマ油、アボカド油、アーモンド油およびアプリコット油およびそれらの混合物。
【0023】
本発明による分散体の親油性媒体として使用できる動物油の例には、特に魚の肝油、鮫油およびミンク油が含まれる。
【0024】
本発明による分散体中の親油性媒体として使用することのできるトリグリセリドの具体例は、Sasol社から販売されているMiglyol(登録商標)810およびMiglyol(登録商標)812、Stepan Europe社から販売されているNeobee(登録商標)M5およびNeobee(登録商標)0、およびAbitec社から販売されているCaptex(登録商標)300、Captex(登録商標)355およびCaptex(登録商標)8000など、特に飽和C6-C12の脂肪酸のトリグリセリド、特にカプリン酸トリグリセリドおよび/またはカプリル酸トリグリセリドを含むものである。
【0025】
鉱油はパラフィン、軽質ワックス、ワセリン、ジメチコン、ケイ素オイル混合物などのケイ素オイルおよびシメチコンなどのコロイダルシリカ、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0026】
親油性媒体はさらにまた、増粘剤および/または分散剤、甘味料、香味剤、着色料、発泡剤、超錠剤分解剤、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、水溶性生体内分散促進剤およびそれらの混合物を含む群から選択される添加剤を含むことができる。
【0027】
本発明は不快な味を有する有効物質や係る有効物質の配合物に特に適している。係る有効物質はビタミン、ミネラル塩類、オリゴエレメント、薬草抽出物などの食用物質でもよく、あるいはまたアスピリン、アセトアミノフェン、カフェイン入りアセトアミノフェンなどの鎮痛薬;イブプロフェン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンおよびそのアルカリ金属塩、ニメスリド、ピロキシカムおよびその塩などの非ステロイド系抗炎症剤;シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、エブロチジン(ebrotidine)、ミフェンチジン、ロキサチジン、ピサチジン(pisatidine)およびアセロキサチジンなどのH2拮抗薬;コデインおよびその塩酸塩、コデインおよびそのリン酸塩、エバスチン、クレマスチンおよびそのフマル酸エステル、アザチジン(azatidine)およびそのマレイン酸塩、ヒドロキシジンおよびそのパモン酸塩およびその塩酸塩、クロルフェニラミンおよびそのマレイン酸塩およびタンニン酸塩、プソイドエフィドリン(pseudoephidrine)およびその硫酸塩および塩酸塩、ブロムフェニラミン(bromphenyramine)およびマレイン酸塩、ロラタジン(loratidine)、フェニレフリンおよびそのタンニン酸塩および塩酸塩、メトスコポラミンおよびその硝酸塩、フェニルプロパノールアミンおよびその塩酸塩、ブロムフェニラミン(bromphenylamine)およびそのマレイン酸塩、テルフェナジン、アクリバスチン、アステミゾール、セチリジンおよびその塩酸塩、フェニンダミンおよびその酒石酸塩、トリペレナミンおよびその塩酸塩、シプロヘプタジンおよびその塩酸塩、シプロヘプタジンおよびその塩酸塩、プロメタジンおよびその塩酸塩、ピリラミンおよびその塩酸塩およびタンニン酸塩などの抗アレルギー治療薬;バルプロ酸(divalproex)およびそのアルカリ金属塩、チモロールおよびそのマレイン酸エステル、プロパノールおよびそのハロゲン水和物、エルゴタミンおよびその酒石酸塩、カフェイン、エリトリプタン、スマトリプタンおよびそのコハク酸エステル、などの抗偏頭痛薬および同じ治療クラスの有効物質;ジヒドロエルゴタミン、その水素化物およびメシレート、メトセルギド(methsergide)およびそのマレイン酸エステル、イソメテプテン(isomethepten)ムコン酸塩、ジクロラールフェナゾン;メクリジンおよびその塩酸塩、ヒドロキシジンおよびその塩酸塩およびパモン酸塩、ジフェンヒドラミンおよびその塩酸塩などの制吐剤(antiemitics);プロクロルペラジンおよびそのマレイン酸塩、ベンズキナミドおよびその塩酸塩、グラニセトロンおよびその塩酸塩、ドロナビノール、ビスマスサブサリチレート、プロメタジンおよびその塩酸塩、メトクロプラミドおよびそのハロゲン化物(halides)/水和物、クロルプロマジン、トリメトベンズアミドおよびその塩酸塩、チエチルペラジンおよびそのマレイン酸塩、スコポラミン、ペルフェナジン、オンダンセトロンおよびその塩酸塩;ロペラミドなどの制潟剤;セルダン(seldane)、ヒスマナール、リラフェン、タビストなどの抗ヒスタミン剤;鎮咳剤、充血除去剤、ザナックスなどの向不安薬;クロザリル、イラルドン(ilaldon)などの抗精神病薬;カイトリル、セサメット(cesamet)などの制吐剤;ベントリン(bentolin)、プロベンチルなどの気管支拡張剤;プロザック、ゾロフト、パクシルなどの抗うつ剤;バソテック、カポテン、ゼストリルなどのACE-阻害剤;ニセルゴリンなどの抗アルツハイマー治療薬;およびプロカルディア、アダラート、カランなどのCall-拮抗薬;ロバスタチン、プラバスタチンなどの抗高コレステロール症薬; デキストロメトルファンおよびその臭化水素酸塩およびグアイフェネシンおよびその塩酸塩などの風邪および咳薬;CoX-2阻害剤;抗癲癇作用化合物;シルデナフィルなどの5HT阻害剤;オメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾール(lanzoprazole)、テルビナフィンなどのプロトンポンプ阻害剤;およびクラリスロマイシン(chlarithromycine)、ロキシスロマイシン(roxythromicin)、アジスロマイシン(azythromycin)などのマクロライド類およびテリスロマイシン、β-lactamin、セファロスポリン、フルオロキノロン、クエチアピンなどのケトライド類を含む群から選択された薬学物質であってもよい。
【0028】
このリストにはアミノ酸塩、金属塩などの対応する塩が含まれる。これらの有効物質の塩はコーティング/味マスキングポリマー、脂溶性の充填剤中における味および胃の中での急速崩壊に結びついたその生体受容性との相性を考慮して選択すべきである。
【0029】
分散体中の有効物質の濃度は前記分散体がカプセルに入れられることを意図した入れ物に依存する。当業者には、前記濃度はカプセルにおけるよりもスティックパックまたは小袋中の方が低いことは明らかであろう。
【0030】
ソフトカプセル中の有効物質の濃度は75%以下、好ましくは5〜50%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0031】
特に有効物質の結晶が小さすぎて、直接コートしたり、有効物質が味マスキングコートが一旦除去されたときの溶解性および崩壊性を改良できない場合、前記有効物質はコートする前に顆粒にしてもよい。顆粒化は当業者によく知られている適当な方法であればどんな方法で達成してもよい。
【0032】
特別の一実施形態によれば、有効物質は、可溶化剤、顆粒化剤、バインダーおよび場合によっては甘味料、香味料および着色料を含む溶液または分散体の助けによって中性の核の上で顆粒化してもよい。
【0033】
有効物質の生体内における崩壊を増大させたければ、顆粒の中に発泡剤、超崩壊剤、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、水溶性分散促進剤、およびその混合物を含む群から選択された追加の賦形剤を入れてもよい。
【0034】
本発明は味の悪い有効物質のフォーミュレーションに特に適しているので、有効物質の結晶または顆粒は味をマスクするためのコーティングを備える。このコートは生体内でのより速い放出を達成するために親水性ベースのものの方がよい。
【0035】
有用なコーティングは以下の参照文献に記載されている。国際特許出願第WO01/03672号、および米国特許第5,320,855号および第5,552,152号
【0036】
好ましい実施形態においては、このコートは国際特許出願第WO01/03672号に記載されたようなエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物、あるいは米国特許第5,320,855号に記載されたようなヒドロキシエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物で構成される。他の有用なコーティングには、米国特許第5,552,152号に記載されたような十分な弾性を有するメタクリル酸コポリマー、ワックス、脂質化合物および親油性化合物、グリセリンマクロゴールがあり、特に流動化基材上に設置した空気流動床を使用して脂溶性または脂質ベースの物質を熱噴霧する、いわゆる「ホットメルトコート」法によってコートされる。さらなる詳細は米国特許第6,194,005号を参照されたい。代表的物質としてはグリセリンおよび/またはポリエチレングリコールベヘネート(Compricoat(登録商標)、Compritol(登録商標)888ATO、HD5ATO)、グリセリンパルミトステアレート(Precirol(登録商標)ATO5)、グリセリンステアレート(Precirol(登録商標)WL2155ATO)パルミチン酸セチル(Precifac(登録商標)ATO)、Macrogol(登録商標)、ミツロウ、グリセリンおよびPEG-32ラウリン酸エステル、グリセリンおよびPEG-32パルミトステアレート、グリセリンおよびPEG-32ステアレートなどのgeluciresがある。
【0037】
コーティングは着色料、甘味料、香味料、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、水溶性生体内分散促進剤、およびそれらの混合物を含む群から選択されるさらなる添加剤を含んでもよい。
【0038】
コーティングは、特に国際特許出願第WO01/03672号および米国特許第5,552,152号に記載されているような流動空気床コートや特に米国特許第5,320,855号に記載されているような回転式顆粒化(roto顆粒化)などのコアセルベーションまたは噴霧や米国特許第6,194,005号に記載されているような脂質化合物または親油性化合物の高温噴霧、すなわちいわゆるホットメルトコート法など、当業者によく知られているいかなる方法によっても行うことができる。
【0039】
味をマスキングするためのコーティングは有効成分の生体内崩壊プロフィールを変成するの適応させることもできる。
【0040】
この味マスキングコーティングはコートされた結晶または顆粒の全重量の2〜70%、好ましくは5〜50%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態によれば、コートされた有効物質の結晶または顆粒の平均粒径は300μm未満、好ましくは5〜180μm、さらに好ましくは50〜150μmである。
【0042】
コートされた結晶および/または顆粒の平均粒径はおいしさおよび口当たりをよくするためには300μmよりも小さくすべきである。さらに、粒径分布は容器のシール形成、特にカプセルのシールを形成するのに影響がある。日常的な製造操作においては、さらに大きな微粒子をカプセル化することで、封止が緩くなってしまう。
【0043】
当業者には明らかであるが、親油性媒体に添加する添加剤はどんなものであっても、コートの品位に影響を与えず、薬剤物質の最終分散体への溶解度を増大させないような割合で加えなければならない。
【0044】
顆粒あるいはまた親油性媒体にも入れることのできる発泡剤は、特に局所的なpHの変化や、微粒子の膨潤によって生体内における有効物質の崩壊を促進することができる。しかし、分散体をソフトカプセルに入れたい場合は、親油性媒体中における発泡剤の使用は避けなければならない。
【0045】
係る発泡剤はガスを放出できる薬剤であって、特に、酸-塩基の組合せである。前記酸は特に、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、アルファヒドロキシ酸、アスコルビン酸およびアミノ酸類、およびその塩および誘導体、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。アルカリ剤はカリウム、リチウム、ナトリウム、カルシウム、またはアンモニウムの炭酸塩、あるいはL-リジンの炭酸塩、アルギニンの炭酸塩、ナトリウムグリコンの炭酸塩、アミノ酸のナトリウム炭酸塩、無水過ホウ酸ナトリウム、発泡性過ホウ酸塩、過ホウ酸ナトリウム1水和物、過炭酸ナトリウム、ナトリウムジクロロイソシアニド、次亜塩素酸カルシウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0046】
酸剤およびアルカリ剤の代表的量は、アルカリ剤と酸によって放出されるプロトンとの反応が満足な発泡を得るのに十分な量のガスを発生させることができるように調節される。
【0047】
顆粒および/またはコートに含まれる超崩壊剤は、市場でクロスカルメローズと呼ばれている架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、クロスポビドンならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0048】
コートされた微粒子の沈降を抑制するために親油性媒体中に濃縮剤および/または分散剤を入れてもよい。代表的薬剤には、グアーガム、キサンタンガムなどのゴム類、短鎖オリゴマー、部分的に水素化した植物油、硬い脂肪、ハチミツ、カルナバなどのワックス、大豆レシチン特にコロイダルシリカなどの両親媒性化合物、およびそれらの混合物が含まれる。
【0049】
味マスキングコートの破裂が容易となるように、顆粒、コートおよび/または親油性媒体中に親油性界面活性剤および親水性界面活性剤を入れてもよい。代表的な界面活性剤は国際特許公開第WO95/00561に記載されている。他の界面活性剤には、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖モノ-ジステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステルおよびそれらの混合物を含む群から選択される、ショ糖の脂肪酸エステルである糖エステルが含まれる。
【0050】
有効物質の生体中における分散は顆粒、コートおよび/または基剤に水溶性薬剤を添加することによって改善することができる。これらの薬剤は、食塩、水酸化カリウム、クエン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、一リン酸ナトリウムまたは二リン酸ナトリウム、およびそれらの混合物を含む群から選択された塩または緩衝液である。
【0051】
本発明による親油性媒体、顆粒またはコーティングに含めることのできる着色料、香味料および甘味料は、食品または医薬品工業において従来から使用されてきたものである。これらの添加剤は所望の味および外観的性質を与え、かつ専門家にも容易に受け入れられるように十分な量で添加する。
【0052】
着色料の例にはアゾルビン、FCFブリリアントブルー、パテントブルーV、エリスロシン、ブラウン、イエロー、ブラック、レッド4、イエローオレンジS酸化鉄、キノリンイエロー、FDCレッド、DCレッド33、コチニールレッドA、チミロン(timiron)、二酸化チタン、FD8C赤40、FD8C緑3、クルクミン、ラクトフラビン(リボフラビン)、タルトラジン、アマランシン、インジゴチン(インジゴカーミン)、クロロフィル類、クロロフィルおよびクロロフィリンの銅錯体、ブリリアントアシッドグリーンBS、カラメル、ブリリアントブラックBN、カーボメディシナリスベジタリス、カロテノイド類(α-、β-、γ-カロテン、ビキシン、ノルビキシン、カプサンチン、カプソルビン、リコペン、β-アポ-8'カロテナール、β-アポ-8'カロテン酸エチルエステル)、キサントフィル、(フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン(rubixanthin)、ビオロキサンチン(violoxanthin)、ロドキサンチン、カンタキサンチン)、ビートルートレッド、ベタニン、アントシアニン、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸銀またはそれらの混合物が含まれる。
【0053】
香味料の例には、例えば乾燥形態でマルトデキストリン(maltdodextrine)と共にまたはプロピレングリコール、プレゴン、マルトールなどの他の基材と共に、レモン、オレンジ、メントールの精油など、、果物香味料、アニシード、カラメル、ハチミツ、甘草、クリーム、様々なスパイスおよびそれらの他の香味料との組合せ、ならびにそれらの混合物などの精油が含まれる。
【0054】
甘味料の例にはアスパルテーム、サッカリン、サッカリン酸ナトリウム、アセスルファムK、スクラロース、塩酸ネオヘスペリジン、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、シクラミン酸ナトリウム、メントールおよびそれらの混合物が含まれる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態によれば、分散体は親油性媒体としてジメチコンを含み、その中に有効物質、好ましくはイブプロフェンのコートされた顆粒が分散され、前記コートはエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を含み、前記コートは顆粒の全重量の5%〜30%であり、有効物質は分散体の全重量の5〜50重量%であり、少なくとも1種の添加剤がジメチコンに分散され、前記添加剤はコーティングが味をマスクする効果に実質的に影響を与えてはならず、味をマスクする効率を改良するのが望ましく、着色料、香味料および甘味料を含む群から選択される。
【0056】
本発明による分散体は、シロップとして存在しても良いし、または、好ましくは、何らかのタイプの入れ物、特に従来の、噛めるカプセル、ソフトゲルタイプのカプセル、アンプル、小袋およびスティックパックに入れることを意図してもよい。
【0057】
本発明はまた、上記の分散体を詰めた「咀嚼カプセル」および速溶性カプセルにも関する。「速溶性カプセル」という用語は、噛まなくても30秒未満で口の中で崩壊する、すなわち分散体充填物が30秒未満で口の中に放出されるカプセルを意味する。前記カプセルの外被を構成するゼラチンの殻は120秒未満で口の中で分散することができる。
【0058】
「咀嚼カプセル」という用語は、口腔内に置かれると顎または舌による圧力のもとで破裂するソフトカプセルを意味する。カプセルが破裂したときに得られる残渣は速やかに口の中で分散する。本発明による製剤処方に完全に適合した、咀嚼ソフトカプセルは、例えば、国際特許出願第WO95/00123号に記載されたようなものである。
【0059】
本発明の重要な一態様は、本発明の分散体およびそれら分散体で満たされたソフトカプセルは少なくとも3カ月、好ましくは少なくとも1年間、さらにより好ましくは少なくとも2年間優れた物理的安定性を有するという事実によっている。
【0060】
本発明による咀嚼ソフトカプセルの特別の実施形態によれば、咀嚼ソフトカプセルの外包はゼラチンおよび可塑剤、ならびに少なくとも、可塑剤のための第1のマトリックスを形成するゼラチンおよびそのゼラチンと適合性のあるデンプンまたはデンプンの酢酸エステルならびに可塑剤のための第2のマトリックスを形成するデンプンまたはデンプンの酢酸エステルを含む。
【0061】
好ましい一実施形態によれば、外包またはカプセル壁は18〜30%のゼラチン、30〜45重量%の可塑剤、3〜12%のデンプンまたは酢酸デンプンおよび12%以下の、好ましくは6〜10%の、漂白していないデンプンおよび100%にする水を含み、これらの百分率は壁組成物の全重量に対する重量百分率である。
【0062】
漂白していない酢酸デンプンは好ましくはジャガイモ由来のものである。ゼラチンはウシ科動物、ブタ、魚、家禽類由来のものでよい。可塑剤はポリオール、特にグリセリン、キシリトール、ソルビトール、ポリグリセリン、ソルビトールの非結晶性溶液、グルコース、フルクトースおよびグルコースシロップ、およびそれらの混合物を含む群から選択される。好ましい可塑剤はANIDRISORB(登録商標)の商標名で売られているソルビトール、ソルビタン類、マルチトールおよびマンニトールの混合物である。
【0063】
好ましい可塑剤はグリセリンであり外包(乾燥フィルム)組成物の少なくとも30重量%、好ましくは30〜70重量%である。
【0064】
カプセルの「かみ砕くことのできる」または「咀嚼」性質は外被の組成物に蒸留ココナッツ油のような油を添加することによって変性することができる。外被中に存在する油の量は外被の調製組成物の重量の15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは3〜7%、典型的には5重量%である。
【0065】
本発明によるソフトカプセルの外包は、甘味料および香味料も含んでよく、その場合咀嚼ソフトカプセルはよりよい味となる。また、前記カプセルによい魅力的な外観を与えるために着色料を含ませてもよい。
【0066】
これらの甘味料、香味料および着色料は分散体組成物に関して上述したものである。
【0067】
本発明の特に有利な実施形態によれば、咀嚼ソフトカプセルは以下のものを含む。
【0068】
エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物でコートされた有効物質の顆粒のジメチコン中への分散体をカプセル化する外被と、分散体の全重量の5〜50重量%の有効物質と、ジメチコン中に分散した、前記混合物が味をマスクする効果に実質的に影響を与えない、着色料、香味料および甘味料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤。
【0069】
本発明はまた咀嚼ソフトカプセルの調製方法にも関する。この方法は以下のステップを含む。
a)カプセル用のフィルムを調製するステップ、
b)必要に応じて、有効物質の顆粒を調製するステップ、
c)有効物質の結晶または上記で調製した顆粒を、味をマスクするためのコートを用いてコートするステップ、
d)必要に応じて、添加剤を親油性媒体中で分散し、それを粉砕するステップ、
e)コートされた結晶または顆粒を親油性媒体中に分散させて分散体を形成するステップ、
f)公知の技術のいずれかによってカプセルに前記分散体を満たすステップ、
g)公知の技術のいずれかによってそのカプセルを封止するステップ、
h)そのカプセルを乾燥するステップ。
【0070】
カプセルまたは外包のためのフィルムを調製するステップは国際特許出願第WO95/00123号に記載の方法によって行う。顆粒化は従来の顆粒化方法、特に乾式顆粒化および湿式顆粒化のいずれかで行うことができる。コートは従来法、好ましくは流動空気床コートによって行うことができる。
【0071】
好ましい実施形態によれば、本方法は以下のステップを含む。
a)カプセル用のフィルムを調製するステップ、
b)有効物質の結晶、好ましくはイブプロフェンを、有機溶媒系に溶解したエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物の噴霧によりコートするステップ、
c)着色料、甘味料および香味料を親油性媒体に分散し、場合によってはこれを粉砕するステップ、
d)コートされた結晶または顆粒を、添加剤を加えた親油性媒体に分散するステップ、
e)いずれかの知られている技術を用いてカプセルに前記分散体を満たすステップ、
f)いずれかの知られている技術を用いてカプセルをシールするステップ。
ここで以下の実施例を用いて本発明を詳細に説明する。この説明は単に本発明を説明するためのものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
親油性媒体
本実施例においては、イブプロフェンに対して異なる溶解力を有する親油性媒体を検討した。
【0073】
以下の親油性媒体中で25℃におけるイブプロフェンの溶解度をHPLC法を用いて測定した。
1)Mygliol(登録商標)812Nの商品名でSASOL社から販売されている中鎖トリグリセリド。溶解度は65mg/mlであった。
2)大豆油。溶解度は44mg/mlであった。
3)Rhodia社製シリコーンオイルであるジメチコン100。溶解度は1mg/mlであった。
【0074】
2人の味評価者を用いて、水性緩衝液および親油性分散体中で、10mg/mlを超える濃度でイブプロフェンの苦みが検知されることが分かった。この味の限界は別の親油性媒体においても同様であることが確かめられた。本発明の技術を使用すれば、ジメチコンは許容できる基剤になると予想される。これは以下の研究で交差チェックされた。流動空気床でコートして調製したコートされたイブプロフェンの微粒子を使用して3種類の製剤処方が調製された。
【0075】
製剤処方1:80重量%のイブプロフェンおよび商品名PRECIROL(登録商標)ATO5で販売されている20重量%のグリセリンパルミトステアレート。係る微粒子を得るのに使用される方法は米国特許第6,194,005号に説明されている。これらのコートされた粒子を以下の4種類の親油性媒体中に25重量%の濃度で分散させた。
1)Mygliol812N(製剤処方1-1)
2)大豆油(製剤処方1-2)
3)ジメチコン100cps(製剤処方1-3)
4)ジメチコン500cps(製剤処方1-4)
【0076】
製剤処方2:以下の配合で米国特許第5,814,332号に従ってコアセルベーションによってコートしたイブプロフェンの微粒子を調製した。83.4重量%のイブプロフェンおよび16.6重量%のセルロースアセテートフタレート、グルタルアルデヒドおよびナトリウムラウリル硫酸エステルを含む酸ゼラチンおよび添加剤の混合物.これらのコートされた微粒子を25重量%の濃度で以下の4種類の親油性媒体に分散させた。
1)Mygliol(登録商標)812N.(製剤処方2-1)
2)大豆油(製剤処方2-2)
3)ジメチコン100cps(製剤処方2-3)
4)ジメチコン500cps(製剤処方2-4)
【0077】
製剤処方3:空気流動床でコートすることにより以下の配合でコートされたイブプロフェンの微粒子を調製した。80.0重量%のイブプロフェン、13.3重量%のエチルセルロース、および6.7重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース。この製剤処方のために、イブプロフェンは70μmの粒径を有する。コートされた微粒子の流動床調製のために、コート成分をすべてアルコール水溶液に溶解し次いでWurster社のコート機中でイブプロフェンに入口温度4〜16℃、75-200グラム/分のスプレー速度で、200-600cfmのプロセス空気を使用してスプレーした。これらのコートされた微粒子を25重量%の濃度で以下の4種類の親油性媒体に分散した。
1)Mygliol(登録商標)812N(製剤処方3-1)
2)大豆油(製剤処方3-2)
3)ジメチコン100cps(製剤処方3-3)
4)ジメチコン500cps(製剤処方3-4)
【0078】
これら各製剤処方について、コートされた結晶の味マスキングおよび外観を時間を追って評価した(調製から1時間後、3時間後、24時間後、10日後、14日後および2カ月後)。各製剤処方の味マスキングを2人で試験した。味マスキングは以下のスケールで特性化した。
1:良好な味で、イブプロフェンによるのどのヤケはない。
2:認識できるが許容できる程度の程度のわずかなヤケがある。
3:著しくかつ許容できないヤケがある。
4:耐え難いヤケ。
【0079】
コートされた結晶の外観を10倍のレンズで顕微鏡観察で評価した。コートされた結晶およびコートの外観を以下のスケールで評価した。
A:微粒子は無傷である。
B:コートがわずかに膨潤しており、多少の結晶が露出している外観。
C:大部分の結晶のコートが剥がれている。
D:コートが剥がれた結晶のみ存在する。
【0080】
各製剤処方について得られた結果を以下の表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
これらの実施例から、イブプロフェンが溶解しないジメチコンが的確な親油性媒体であることが分かる。At3カ月の時点で、ジメチコン製剤処方はなお優れた安定性を示した。
【0083】
(実施例2)
コートされた微粒子
エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースのアルカノール水溶液を空気流動床中の70ミクロンのイブプロフェン微粒子に噴霧してイブプロフェンのコートされた微粒子を調製した。上に述べた条件により、以下の組成のコートされた微粒子が得られた。
【0084】
【表A】

【0085】
特性評価
コートされた微粒子のサイズを分散媒体として鉱油を使用し、Mastersizer2000(Malvern)レーザー粒度分布計で測定した。10体積%が粒径76μm以下であった(D10=76μm)のに対し、50体積%は直径152μm以下(D50=152μm)であり90体積%の微粒子は281μm以下(D90=280μm)のサイズを有していた。
【0086】
異なるコート微粒子の安定性を、実施例1で使用された異なる親油性媒体中で測定した。親油性媒体の選択のさらなる根拠を得るために、上で得られたコートされた微粒子をMygliol-812Nおよびシリコン油に18時間分散した。各サンプルの粒径をMastersizer2000を使用して測定した。この試験の結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
このデータはコートされた微粒子の完全性がシリコン油を使用すると最もよく保持されることを示している。
【0089】
コートされた微粒子の安定性:
上で製造したコートされた微粒子をガラス容器にバルクで詰め、それを調節した温度および湿度:40℃/75%RHにある安定性の囲みの中に置いた。
【0090】
製造時および1カ月および3カ月貯蔵後にコートされた微粒子の性質を観測した。
【0091】
【表3】

【0092】
表4
コートされた微粒子、充填製剤処方およびカプセルの崩壊プロフィールを以下の崩壊テストを適用してモニターした。米国薬局方(USP)に準拠したタイプIIIの装置を使用した(VANKEL BIODISS)。崩壊容器に、900mlのヨーロッパ薬局方によるpH6.0のR2緩衝液を満たした。全試験期間中崩壊媒体の温度を37℃+/-0.5℃に調節した。カプセルにかかる顎の圧力を模倣するため30回浸漬/分の浸漬速度を適用した。所定の時点で各10mlのサンプルを集めHPLC/UV法を使用して溶解したイブプロフェンの濃度を測定した。
【0093】
【表4】

【0094】
このデータからこの生成物は少なくとも3カ月間安定であることが分かる。コートによる水の吸収のために、崩壊速度は時間がたつと速くなると考えられる。
【0095】
分散体:
ここまでの実施例によって得られた結果を基に、「スティックパック」などのまとまったパッケージに入れるための分散体を調製した。
【0096】
【表5】

【0097】
分散体をガラス容器にバルクで詰め、温度および湿度を40℃/75%RHに調節した安定性区画に置いた。1カ月貯蔵後にコートされた微粒子の性質を評価した。
【0098】
【表6】

【0099】
咀嚼ソフトゲル
表2に示した分散体をロータリーダイ法を使用してソフトカプセルに入れた。このソフトカプセルは咀嚼カプセルである。まずゼラチンをグリセリンの存在下に水に溶かし、次いでデンプンの予備分散体を加えた。混合物の形成後、ゼラチンの塊を真空脱気した。
【0100】
【表7a】

【0101】
表7(a)に示した外被の処方は表7(b)に示した甘味組成物を加えることによって完了する。
【0102】
【表7b】

【0103】
よく知られているロータリーダイ技術に基づく工業装置によってカプセルを調製した。カプセル化の標準パラメータを使用した。充填分散体の重量は1カプセル当たり1103mgであった。次いでカプセルを乾燥した。
【0104】
カプセルの安定性:
このカプセルをバルクでガラス容器に詰め、それを40℃、75%RHの温度および湿度に調節した安定性区画に置いた。製造後および1カ月および3カ月貯蔵後にカプセルの性質を評価した。
【0105】
【表8】

【0106】
(実施例3)
コートされた微粒子
米国特許第6,194,005に記載された方法に従って、空気流動床装置中でイブプロフェン微粒子にPrecirol(登録商標)Ato5を熱噴霧して、コートされたイブプロフェンの微粒子を調製した。得られたコートされた微粒子は以下のような配合であった。
【0107】
【表B】

【0108】
特性評価
コートされた微粒子のサイズを鉱油を分散媒体として用いてレーザー粒度分布計Mastersizer2000(Malvern)によって測定した。
D10=62μm
D50=139μm
D90=285μm
【0109】
異なるコートされた微粒子の安定性を実施例1で用いた異なる親油性媒体中で測定した。ジメチコン中における安定性試験を10%の濃度で行い、少なくとも3カ月間の味マスキング安定性があることが実証された。
【0110】
コートされた微粒子の安定性:
コートされた微粒子をバルクでガラス容器に詰め、それを40℃、75%相対湿度(RH)の温度および湿度に調節した安定性区画に置いた。製造後および1カ月および3カ月貯蔵後にコートされた微粒子の性質を評価した。
【0111】
【表9】

【0112】
このデータからコートされた微粒子は少なくとも3カ月間安定であることが分かる。3カ月後には、コートされた微粒子の集塊作用により、崩壊速度は加速されるが、それ以前にはコートがダメージを受けるには機械的に集塊をほぐす必要があった。
【0113】
分散体:
ここまでの実施例において得られた結果を基に、「スティックパック」のようなまとまったパッケージに入れるための分散体を開発した。
【0114】
【表10】

【0115】
分散体の安定性:
分散体をガラス容器にバルクで詰め、それを調節した温度および湿度:40℃/75%RHにある安定性の囲みの中に置いた。1カ月貯蔵した後にコートされた微粒子の性質を評価した。
【0116】
【表11】

【0117】
咀嚼カプセル:
上記で得られた分散体をロータリーダイ法を用いてソフトカプセルに満たした。ソフトカプセルは咀嚼カプセルとなるようにデザインした。このゼラチンをグリセリンの存在下に水に溶解し、次いでデンプンの予備分散体を加えた。混合物を形成した後で、ゼラチンを真空で脱気した。
【0118】
【表12a】

【0119】
この外被を以下の甘味組成物によって仕上げた。
【0120】
【表12b】

【0121】
ロータリーダイ技術を使用した工業装置でカプセルを調製した。カプセル化の標準的パラメータを使用した。各カプセルには1カプセル当たり分散体940mgが含まれていた。次いでカプセルを乾燥した。
【0122】
カプセルの安定性:
カプセルをガラス容器にバルクで詰め、それを温度および湿度を40℃/75%RHに調節した安定性の囲みの中に置いた。0時間および1カ月および3カ月貯蔵した後にカプセルの性質を評価した。
【0123】
【表13】

【0124】
(実施例4)
本実施例においては、デキストロメトルファンHBrに対して異なる溶解力を有する親油性媒体をテストした。デキストロメトルファンHBrの25℃における以下の親油性媒体中における溶解度をHPLC法で測定した。:
1)SASOLよりMygliol(登録商標)812Nの商品名で販売されている中鎖トリグリセリドは120μg/m1の溶解度であった。
2)大豆油は約6μg/m1の溶解度を示した。;
3)パラフィン油は約1μg/mlの溶解度を示した。;
4)RHODIAのジメチコン100シリコーンオイルはlμg/ml未満の溶解度であった。
【0125】
2人の味評価者を用いて、水性緩衝液および脂溶性分散体中においては、デキストロメトルファンHBrの味は約0.1mg/mlの濃度で検知できることが分かった。したがって、ジメチコン、パラフィン油および大豆油は係る製剤処方に許容性のある基剤となるはずである。このことを以下の試験でクロスチェックした。
【0126】
以下の製剤処方を調製した。
【0127】
製剤処方1:
上に述べた空気流動床装置を用いてコートして、デキストロメトルファンHBrHBrのコートされた微粒子を以下の配合で調製した。
1)76.9重量%のデキストロメトルファンHBr;
2)15.4重量%のエチルセルロース;
3)7.7重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【0128】
コートされた微粒子を25重量/重量%で以下の4種類の親油性媒体の中に分散した。
1)Mygliol812N(製剤処方1-1)
2)大豆油(製剤処方1-2)
3)パラフィン油(製剤処方1-3)
4)ジメチコン100(製剤処方1-4)
【0129】
これらの製剤処方それぞれについて、コートされた結晶の味のマスキングおよび外観を時間を追って評価した(調製から1日後および3日後)。製剤処方の味のマスキングの試験は2人で行った。味のマスキングは以下のスケールで評価した。
1:良好な味。
2:気付くほどの味であるが許容できる。
3:非常にはっきりとしたしかも許容できない味。
4:我慢できない味。
【0130】
コートされた結晶の外観を10倍のレンズで顕微鏡観察して評価した。コートされた結晶およびコートの外観を以下のスケールで評価した。
1:微粒子は無傷である。
2:コートがわずかに膨潤しており、多少の結晶が露出している外観。
3:大部分の結晶のコートが剥がれている。
4:すべての結晶のコートが剥がれている。
【0131】
各製剤処方で得られた結果を表14に示す。
【0132】
【表14】

【0133】
この実験から(デキストロメトルファンHBrが不溶性である)ジメチコンが最も良い親油性媒体であることが分かる。バックアップ基剤として、パラフィン油および大豆油も許容できる結果を示している。
【0134】
(実施例5)
コートされた微粒子
空気流動床装置中でエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの有機溶液(90重量%のアセトン、10重量%の水)をデキストロメトルファンHBrの微粒子に噴霧してデキストロメトルファンHBrのコートされた微粒子を調製した。得られたコートされた微粒子は表15に示した配合で構成されている。
【0135】
【表15】

【0136】
当業者であれば70重量%を超える有効物質の濃度は特にコートが有効な味マスキングであれば、異常であると評価してもらえることであろう。
【0137】
特性評価
コートされた微粒子のサイズを鉱油を分散媒体として用いてレーザー粒度分布計Mastersizer2000(Malvern)によって測定した。
D10=96μm
D50=166μm
D90=280μm
【0138】
コートされた微粒子の安定性を実施例4で使用した異なる親油性媒体の中で測定した。
【0139】
コートされた微粒子の安定性:
コートされた微粒子をバルクでガラス容器に詰め、それを40℃、75%相対湿度(RH)の温度および湿度に調節した安定性区画に置いた。そのデータによればコートされた微粒子は少なくとも1カ月の貯蔵後も安定であった。
【0140】
分散体:
これまでの実施例によって得られた結果を基に、「スティックパック」のようなまとまったパッケージに入れるための分散体を開発した。
【0141】
【表16】

【0142】
分散安定性;
この分散体ををバルクでガラス容器に詰め、それを40℃、75%RHの温度および湿度に調節した安定性区画に置いた。そのデータの分析によれば分散体はこの貯蔵条件で少なくとも1カ月安定であった。
【0143】
咀嚼ソフトゲル:
上で得られた分散体をロータリーダイ法を用いて咀嚼ソフトカプセルに満たした。まずゼラチンをグリセリン存在下に水に溶かし、次いでデンプンの予備分散体を加えた。混合物形成後、ゼラチンの塊を真空脱気した。
【0144】
【表17a】

【0145】
外被の処方は以下の甘味組成物を添加することによって完了した。
【0146】
【表17b】

【0147】
ロータリーダイ技術を使用した工業装置でカプセルを調製した。カプセル化の標準的パラメータを使用した。充填分散体の重量は1カプセル当たり924mgであった。次いでカプセルを乾燥した。
【0148】
カプセルの安定性
このカプセルをバルクでガラス容器に詰め、それを40℃、75%RHの温度および湿度に調節した安定性区画に置いた。これらのカプセルを評価した結果、少なくとも1カ月安定であった。
【0149】
産業上の利用可能性
製薬各社はたえず改良投与形態を探索している。本発明は幼児や老人など飲み込みの困難な人に特に適している。本発明はいくつかの特性を組み合わせて容易に投与でき、多くの有効成分に付随する味が悪いという問題を克服する投与形態を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効物質の結晶または顆粒の親油性媒体中への分散体であって、前記親油性媒体は有効物質を溶解する能力が、その味が水中で感知される有効物質濃度の1.5倍未満であり、かつ前記結晶または顆粒が味をマスクするためのコーティングによってコートされている分散体。
【請求項2】
親油性媒体が植物油、動物油、脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリド、脂肪分解油、鉱油、軽質ワックス、ワセリン、シリコーンオイル、シメチコン、シリコーンオイルとコロイダルシリカの混合物、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
親油性媒体が甘味料、香味料、着色料、増粘剤、分散剤、発泡剤、超崩壊剤、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、水溶性薬剤およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
分散体中の有効物質の濃度が分散体の重量に対して75重量%以下である、請求項1に記載の分散体。
【請求項5】
有効物質の結晶または顆粒のコーティングが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、脂質化合物、親油性化合物、ポリエチレングリコールベヘネート、グリセリンパルミトステアレート、グリセリンステアレート、パルミチン酸セチル、グリセリンマクロゴールミツロウ、グリセリン、PEG-32ステアレート、PEG-32パルミトステアレート、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の分散体。
【請求項6】
コーティングが、コートされた顆粒または結晶の全重量の5〜50重量%である、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
コートされた結晶または顆粒の平均粒径が300μm未満である、請求項1に記載の分散体。
【請求項8】
有効物質の顆粒および/または味をマスクするためのコーティングが、着色料、甘味料、香味料、発泡剤、超崩壊剤、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、水溶性薬剤およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含むことができる、請求項1に記載の分散体。
【請求項9】
前記親油性媒体がジメチコンであり、前記コーティングがエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物であり、前記コーティングが分散体全重量の5%〜70%である、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
請求項1に記載の分散体をカプセル化する外包を含む咀嚼ソフトカプセル。
【請求項11】
外包がゼラチン、可塑剤、および少なくとも1種類のデンプン、場合によっては酢酸デンプンを含む、請求項1に記載のソフトカプセル。
【請求項12】
前記外包の組成物が甘味料、香味料、着色料、およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をも含む、請求項12に記載のソフトカプセル。
【請求項13】
外包が前記外被組成物の全重量100重量%に対して、18〜30重量%のゼラチン、30〜45重量%の可塑剤、3〜12重量%デンプンまたは酢酸デンプンならびに12重量%以下の非漂白デンプンおよび水を含む、請求項11に記載のソフトカプセル。
【請求項14】
可塑剤が、ポリオール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、ポリグリセリン、ソルビトールの非結晶性溶液、グルコース、フルクトース、グルコースシロップ、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載のソフトカプセル。
【請求項15】
a)外包を調製するステップと、
b)必要に応じて有効物質の顆粒を調製するステップと、
c)有効物質の結晶または上記で調製された顆粒を、味をマスクするためのコーティングでコートするステップと、
d)必要に応じて添加剤を親油性媒体に分散し、その際前記親油性媒体は有効物質を溶解する能力が、水中で味が感知される有効物質濃度の1.5倍未満のものであり、場合によってはこれを粉砕するステップと、
e)前記コートした結晶または顆粒を前記親油性媒体中に分散するステップと、
f)前記カプセルに前記分散体を入れて封止するステップと、
g)前記カプセルを乾燥するステップと
を含む、咀嚼ソフトカプセルの調製方法。

【公表番号】特表2007−525413(P2007−525413A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502898(P2006−502898)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/001463
【国際公開番号】WO2004/066925
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501477831)アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】