呼気アルコール測定装置
【課題】 被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる呼気アルコール測定装置を提供する。
【解決手段】 アルコールインターロックシステムは、運転者の呼気中のアルコール濃度の測定を行うアルコール燃料電池センサと、運転者が呼気の吹込みを行っている最中の運転者の撮影を行うCCDイメージセンサと、運転者が呼気の吹込みを行うためのマウスピース23が設置されたユニットであるハンディーユニット20とを備え、ハンディーユニット20は、撮影のときに発光する被写ランプ27を備えることを特徴とする。
【解決手段】 アルコールインターロックシステムは、運転者の呼気中のアルコール濃度の測定を行うアルコール燃料電池センサと、運転者が呼気の吹込みを行っている最中の運転者の撮影を行うCCDイメージセンサと、運転者が呼気の吹込みを行うためのマウスピース23が設置されたユニットであるハンディーユニット20とを備え、ハンディーユニット20は、撮影のときに発光する被写ランプ27を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気アルコール測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気アルコール測定装置として、被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、被験者が呼気の吹込みを行っている最中の被験者の撮影を行う被験者撮影部と、被験者が吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
呼気アルコール測定装置においては、例えば人や物の輸送業の運転者の飲酒運転を防止するために運転者の呼気中のアルコール濃度の測定が行われる際に、飲酒していない替玉が呼気中のアルコール濃度の測定を受けて飲酒状態の運転者が車両を運転するという不正が行われることがある。しかしながら、従来の呼気アルコール測定装置は、被験者が呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っている最中の被験者の撮影を行って証拠画像を残すことによって、被験者の替玉による不正を抑止することができる。
【特許文献1】特開2007−271628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の呼気アルコール測定装置においては、飲酒していない替玉が撮影されない位置で本物の呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っている最中に、飲酒状態の被験者が偽物の呼気吹込ユニットを使用して撮影されることによって、被験者が本物の呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っているように見せかけた証拠画像を残すことができる。すなわち、従来の呼気アルコール測定装置においては、偽物の呼気吹込ユニットを使用することによって、被験者の替玉による不正が行われる可能性がある。
【0005】
本発明は、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる呼気アルコール測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、前記被験者が前記呼気の吹込みを行っている最中の前記被験者の撮影を行う被験者撮影部と、前記吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備え、前記呼気吹込ユニットは、前記撮影のときに発光する撮影時発光部を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者が本物の呼気吹込ユニットを使用して呼気の吹込みを行っている場合に、撮影時発光部が発光している呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残る。そのため、撮影時発光部が発光していない呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残っている場合には、偽物の呼気吹込ユニットが使用されて被験者の替玉による不正が行われたと判断されることができる。したがって、本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被験者が本物の呼気吹込ユニットを使用して呼気の吹込みを行っている場合に、撮影時発光部が発光している呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残ることによって、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる呼気アルコール測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
まず、本実施の形態に係る呼気アルコール測定装置としてのアルコールインターロックシステムの構成について説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るアルコールインターロックシステム10の斜視図である。図2は、アルコールインターロックシステム10の構成を示すブロック図である。
【0012】
アルコールインターロックシステム10は、被験者としての運転者が飲酒状態であるときに運転者による車両100の運転を許可しないシステムである。図1および図2に示すように、アルコールインターロックシステム10は、車両100のダッシュボード101の正面のうちハンドル102の左側の部分に着脱可能に取り付けられたハンディーユニット20と、ダッシュボード101の上面のうちハンドル102の右側の部分に設置されて各種の表示を行う表示ユニット40と、車両100のバックミラー103の上部に設置されて運転者を撮影するためのカメラユニット60と、ダッシュボード101の内部に設置されてハンディーユニット20、表示ユニット40およびカメラユニット60の制御を行うコントロールユニット80と、ハンディーユニット20およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル11と、表示ユニット40およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル12と、カメラユニット60およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル13とを備えている。
【0013】
コントロールユニット80は、スイッチ81aと、スイッチ81aの接続状態を切り替えるための電磁石81bとを備えたインターロック用リレー81を備えている。スイッチ81aは、端子81cおよび端子81dを備えている。
【0014】
図2に示すように、車両100は、バッテリ111と、バッテリ111によって駆動されてエンジンを始動させるためのセルモータ112と、バッテリ111およびセルモータ112の電気的な接続状態を切り替えるスタータリレー113と、キーが回されることによってバッテリ111およびスタータリレー113の電気的な接続状態を切り替えるスタータキースイッチ114と、車両100の速度を表す車速パルス信号を発生させる車速パルス発生器115とを備えている。バッテリ111は、アースに電気的に接続されたマイナス端子111aと、プラス端子111bとを備えている。セルモータ112は、アースおよびバッテリ111のマイナス端子111aに電気的に接続された端子112aと、端子112bとを備えている。スタータリレー113は、スイッチ113aと、スイッチ113aの接続状態を切り替えるための電磁石113bとを備えている。スタータリレー113のスイッチ113aは、セルモータ112の端子112bに電気的に接続された端子113cと、バッテリ111のプラス端子111bに電気的に接続された端子113dとを備えている。スタータリレー113の電磁石113bは、アース、バッテリ111のマイナス端子111aおよびセルモータ112の端子112aに電気的に接続された端子113eと、インターロック用リレー81のスイッチ81aの端子81cに電気的に接続された端子113fとを備えている。スタータキースイッチ114は、バッテリ111のプラス端子111bおよびスタータリレー113の端子113dに電気的に接続された端子114aと、車両100のエンジンを切るためのOFF端子114bと、車両100のアクセサリ電源をオン状態とするためのACC端子114cと、イグニッション電源をオン状態とするためのON端子114dと、セルモータ112を始動させるためのSTART端子114eとを備えている。START端子114eは、コントロールユニット80のインターロック用リレー81の端子81dに電気的に接続されている。
【0015】
なお、バッテリ111の電力は、コントロールユニット80に供給され、コントロールユニット80からケーブル11、12、13を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60にも供給されている。以下の説明においては、電力の供給についての説明を省略する。
【0016】
図3は、ハンディーユニット20の正面図である。図4は、ハンディーユニット20の構成を示すブロック図である。
【0017】
ハンディーユニット20は、運転者が運転前に呼気中のアルコール濃度を測るための装置である。図3および図4に示すように、ハンディーユニット20は、ケース21と、ケース21の上部に設けられた交換可能なマウスピース23と、ケース21の正面に設けられて運転者に押されるスイッチ25と、ケース21の正面に設けられてアルコール濃度を表示する7seg表示のアルコール濃度表示部26と、ケース21の上部に設けられてカメラユニット60による撮影の際に発光する撮影時発光部としての被写ランプ27とを備えており、ケース21の下部にケーブル11が接続されている。ハンディーユニット20は、呼気吹込部としてのマウスピース23を備えており、本発明の呼気吹込ユニットを構成している。
【0018】
図4に示すように、ハンディーユニット20は、ケーブル11(図3参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース29と、呼気の温度を測定するための呼気温度センサ31と、呼気の圧力を測定するための呼気圧センサ32と、呼気中の炭酸ガスの濃度を測定するための呼気CO2センサ33と、呼気中のアルコール濃度を測定するための呼気アルコール測定部としてのアルコール燃料電池センサ34と、アルコール燃料電池センサ34から出力された信号を増幅するアンプ35と、アルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を取り込むための吸引ポンプ36と、各種のデータを記録する不揮発メモリ37と、ハンディーユニット20の各構成を制御するCPU(Central Processing Unit)38とをケース21の内部に備えている。
【0019】
図5は、図1に示す表示ユニット40の斜視図である。図6は、表示ユニット40の構成を示すブロック図である。
【0020】
表示ユニット40は、運転者の呼気中のアルコール濃度を表示したり、操作手順を音声および表示によって示したりする装置である。図5および図6に示すように、表示ユニット40は、ケース41と、ケース41の正面の左端に設けられてハンディーユニット20(図1参照。)のアルコール燃料電池センサ34(図4参照。)がウォームアップ中であることを表示するためのWarmUPランプ43と、ケース41の正面のWarmUPランプ43の右隣に設けられて運転者に呼気の吹込みを促すためのBlowランプ44と、ケース41の正面のBlowランプ44の右隣に設けられてアルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを表示するためのWaitランプ45と、ケース41の正面のWaitランプ45の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されなかったことを表示するOKランプ46と、ケース41の正面のOKランプ46の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されたことを表示するNGランプ47と、ケース41の正面のNGランプ47の右隣に設けられてアルコール濃度を表示する7seg表示のアルコール濃度表示部48と、ケース41の上面に設けられて運転者の右手の指の指紋を読み取る指紋読取部50と、ケース41の上面の指紋読取部50の右隣に設けられたスピーカ52とを備えており、ケース41の背面にケーブル12が接続されている。
【0021】
図6に示すように、表示ユニット40は、ケーブル12(図5参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース54と、数千人の指紋の画像をID(以下「登録者ID」という。)とともに登録可能であって登録された指紋の画像に基づいて指紋読取部50によって読み取られた指紋の認証を行う指紋認証モジュール55と、スピーカ52によって出力される音声を生成する音声LSI(Large Scale Integration)57と、表示ユニット40の各構成を制御するCPU58とをケース41(図5参照。)の内部に備えている。
【0022】
図7は、図1に示すカメラユニット60の正面図である。図8は、カメラユニット60の構成を示すブロック図である。
【0023】
図7および図8に示すように、カメラユニット60は、ケース61と、ケース61の正面の中央に設けられたレンズ63と、夜間でも撮影可能なようにケース61の正面の端に設けられた撮影ランプ64とを備えており、ケース61にケーブル13が接続されている。
【0024】
図8に示すように、カメラユニット60は、ケーブル13(図7参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース66と、レンズ63(図7参照。)を介して運転者を撮影するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ67と、場所を特定するためのGPS(Global Positioning System)電波を受信する内蔵アンテナ68と、内蔵アンテナ68によって受信したGPS電波を復号するためのGPS受信モジュール69と、CCDイメージセンサ67によって撮影された画像データがコントロールユニット80に転送されるまで画像データを一時的に記録するメモリ70と、カメラユニット60の各構成を制御するCPU71とをケース61(図7参照。)の内部に備えている。
【0025】
図9は、図1に示すコントロールユニット80の斜視図である。図10は、コントロールユニット80の構成を示すブロック図である。
【0026】
図9および図10に示すように、コントロールユニット80は、ケース82と、ケース82の上面に立てられたアンテナ83とを備えており、ケース82の背面にケーブル11〜14が接続されている。
【0027】
図10に示すように、コントロールユニット80は、上述したインターロック用リレー81と、外部インターフェース85と、インターロック用リレー81の電磁石81bに電気的に接続されたアンプ86と、アンテナ83を介して外部と無線通信を行うための通信モジュール87と、時間を計測するための時計LSI88と、時計LSI88の電力源であるリチウム電池89と、車両100(図1参照。)の加速度を測定するための加速度センサ90と、飲酒状態の判定結果の履歴情報などの各種のデータを記録するLOGメモリ94と、コントロールユニット80の各構成を制御するCPU95とをケース82(図9参照。)の内部に備えている。インターロック用リレー81の端子81cは、ケーブル14(図9参照。)を介してスタータリレー113(図2参照。)の端子113fに電気的に接続されている。インターロック用リレー81の端子81dは、ケーブル14を介してスタータキースイッチ114(図2参照。)のSTART端子114eに電気的に接続されている。外部インターフェース85は、それぞれケーブル11、12、13(図9参照。)を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60に電気的に接続されているとともに、ケーブル14を介してバッテリ111(図2参照。)のマイナス端子111aおよびプラス端子111bと、スタータキースイッチ114のACC端子114cと、車速パルス発生器115とに電気的に接続されている。
【0028】
図11は、図4に示すハンディーユニット20に基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけ吹込まれたときの呼気圧センサ32の出力電圧およびアルコール燃料電池センサ34の出力電圧を示すグラフである。
【0029】
ハンディーユニット20は、不揮発メモリ37にID(以下「ハンディーID」という。)が記録されている。ハンディーIDは、ハンディーユニット20の校正のときに不揮発メモリ37に記録される。ハンディーユニット20の校正は、呼気圧センサ32、アルコール燃料電池センサ34、吸引ポンプ36などの各構成部品の個体差の影響を取り除くために行われる。ハンディーユニット20の校正について、図11を用いて具体的に説明する。図11には、アルコールとして基準の濃度のエタノールが含まれた基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけマウスピース23(図3参照。)から吹込まれたときの呼気圧センサ32の出力電圧191およびアルコール燃料電池センサ34の出力電圧192が示されている。出力電圧191、192は、基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけマウスピース23から吹込まれた時間193から吸引ポンプ36が駆動させられて、アルコール燃料電池センサ34の内部に基準ガスが吸引されたときの出力電圧である。出力電圧191の電圧値191aは、基準の風圧に対応して呼気圧センサ32が出力した電圧値である。また、出力電圧192の最大の電圧値192aと、図中にハッチングで示した面積192bとは、エタノールの濃度が計算される際に使用される。ハンディーユニット20の校正は、実際に測定された電圧値191a、電圧値192a、面積192bと、それぞれが想定されている値との差に基づいて行われる。ここで、電圧値191aや電圧値192aは、一般的に3、4桁程度の値であってそれぞれハンディーユニット20の個体間で全く異なる。面積192bは、一般的に8桁程度の値であってハンディーユニット20の個体間で全く異なる。したがって、ハンディーIDは、電圧値191a、電圧値192aおよび面積192bによって構成されることによって、十分な識別力を持つことになる。
【0030】
次に、アルコールインターロックシステム10の動作について説明する。
【0031】
図12は、アルコールインターロックシステム10の動作のフローチャートである。図13は、アルコールインターロックシステム10の動作のうち図12に示す動作の続きのフローチャートである。
【0032】
運転者が車両100の運転席に座ってハンディーユニット20のスイッチ25を押すと、コントロールユニット80のCPU95は、スイッチ25が押されたことを検知して、図12に示す動作を開始する。
【0033】
まず、CPU95は、ハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDを読み出して(ステップS200)、読み出したハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されている最新のハンディーIDとが同一であるか否かを判断する(ステップS202)。
【0034】
CPU95は、不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されているハンディーIDとが同一ではないとステップS202において判断すると、ハンディーユニット20が変更されたことと、ステップS200において読み出したハンディーIDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60の内蔵アンテナ68およびGPS受信モジュール69から取得したGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94および不揮発メモリ37に記録した後(ステップS204)、ハンディーユニット20が変更されたことを表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力する(ステップS206)。
【0035】
CPU95は、不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されているハンディーIDとが同一であるとステップS202において判断した場合、または、ステップS206の処理を終了した場合、スタータキースイッチ114のACC端子114cからの出力に基づいて車両100のアクセサリ電源がオン状態であるか否か、すなわちACC端子114cが端子114aに電気的に接続されているか否かを判断する(ステップS208)。CPU95は、ステップS208においてアクセサリ電源がオン状態であると判断すると、アクセサリ電源をオフ状態で操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS210)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、アクセサリ電源がオン状態であったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。なお、アクセサリ電源がオン状態であるときに一連の処理を終了する理由は、ハンディーユニット20の周辺の気温が低いときに後述するウォームアップの時間が長引くため、その間にアルコールインターロックシステム10を構成する機器以外の電子機器(例えばカーラジオ)によって車両100のバッテリ111が消耗することを防ぐためである。したがって、バッテリ111の容量が大きい場合や、ウォームアップの時間が短い場合には、アクセサリ電源がオン状態であったとしても一連の処理を終了する必要はない。
【0036】
CPU95は、ステップS208においてアクセサリ電源がオフ状態であると判断すると、車両100の車速パルス発生器115からの出力に基づいて車両100の速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS212)。CPU95は、ステップS212において車両100の速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS214)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。
【0037】
CPU95は、ステップS212において車両100の速度が0であると判断すると、加速度センサ90からの出力に基づいて車両100の加速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS216)。CPU95は、ステップS216において車両100の加速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS214)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の加速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。
【0038】
なお、車両100が動いているか否かは、車両100の速度や加速度以外の情報に基づいても判断することができる。例えば、車両100が動いているときにはバッテリ111が発電および充電されて電圧が高くなることを利用して、バッテリ111の電圧が所定の電圧以上であるときに車両100が動いていると判断することもできる。また、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置の変化によっても、車両100が動いているか否かを判断することもできる。
【0039】
CPU95は、ステップS216において車両100の加速度が0であると判断すると、表示ユニット40の指紋認証モジュール55に指紋認証を行わせる。指紋認証モジュール55は、自身に事前に登録されている指紋の画像と、表示ユニット40の指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像とに基づいて認証を行って、認証が成功した場合には、指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像に対応する登録者IDをCPU95に送信し、認証が失敗した場合には、認証の失敗を示す登録者ID、例えばNo.9999をCPU95に送信する。CPU95は、指紋認証モジュール55から登録者IDが送信されると、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDに基づいて、認証が成功したか否かを判断する(ステップS218)。なお、CPU95は、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録する。
【0040】
CPU95は、ステップS218において認証が失敗したと判断すると、認証が失敗したことをスピーカ52から音声で出力して(ステップS220)、一連の処理を終了する。
【0041】
CPU95は、ステップS218において認証が成功したと判断すると、図13に示すように、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップを開始して、表示ユニット40のWarmUPランプ43の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34をウォームアップ中であることを通知する(ステップS228)。ここで、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップとは、周囲の気温が例えば−45℃のように低温であってもアルコール燃料電池センサ34の内部のヒータ回路によってアルコール燃料電池センサ34を加熱して、アルコール燃料電池センサ34の内部の温度を一定の33℃まで引き上げることにより均一な測定性能を維持する動作である。そして、CPU95は、ウォームアップが完了するまで待機する(ステップS230)。
【0042】
CPU95は、ステップS230においてウォームアップが完了したと判断すると、時計LSI88の出力値に基づいて時間の計測を開始して、表示ユニット40のBlowランプ44の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、運転者による呼気の吹き込みを促し(ステップS232)、カメラユニット60の撮影ランプ64を点灯させる(ステップS234)。
【0043】
次いで、CPU95は、計測中の時間が所定の時間を経過したか否かを判断する(ステップS236)。CPU95は、ステップS236において計測中の時間が所定の時間を経過したと判断すると、計測中の時間が所定の時間を経過したことをスピーカ52から音声で出力し(ステップS238)、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、計測中の時間が所定の時間を経過したこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS240)、一連の処理を終了する。
【0044】
CPU95は、ステップS236において計測中の時間が所定の時間を経過していないと判断すると、運転者によってハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力が所定の圧力、例えば0.3L/秒以上であるか否かを呼気圧センサ32の測定値に基づいて判断する(ステップS246)。呼気の圧力が判断対象となる理由は、ある程度の圧力の呼気でなければアルコール濃度の正確な測定ができないからである。CPU95は、ステップS246において呼気の圧力が所定の圧力以上ではないと判断すると、S236の処理に戻る。
【0045】
CPU95は、ステップS246において呼気の圧力が所定の圧力以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であるか否かを呼気CO2センサ33の測定値に基づいて判断する(ステップS248)。呼気中の炭酸ガスの濃度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。人間の呼気には、空気と比較して、炭酸ガスが多く含まれている。CPU95は、ステップS248において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないと判断すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、S236の処理に戻る。
【0046】
CPU95は、ステップS248において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であるか否かを呼気温度センサ31の測定値に基づいて判断する(ステップS250)。
【0047】
図14は、ハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる空気の種類別に呼気温度センサ31の測定値の変化を示すグラフである。
【0048】
ステップS250において呼気の温度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。図14に示すように、空気入れによって吹込まれた空気は、ハンディーユニット20の周囲の空気の温度に収束するのに対して、人間の呼気は、人間の体温に依存して安定しているためハンディーユニット20の周囲の空気の温度によらず常に34℃付近に収束する。
【0049】
図13に示すように、CPU95は、ステップS250において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないと判断すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、S236の処理に戻る。
【0050】
CPU95は、ステップS250において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積が所定の体積、例えば1.0L以上であるか否かを時計LSI88によって計測した時間と、呼気圧センサ32の測定値とに基づいて判断する(ステップS252)。吹込まれた空気の体積が判断対象となる理由は、吹込まれた空気の堆積が少ないときにアルコール濃度を測定してしまうと口に入ったばかりの新鮮な空気のアルコール濃度を測定してしまうおそれがあり、呼気、すなわち肺に入っていた空気のアルコール濃度を測定するためにある程度の体積の空気が吹込まれる必要があるからである。CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上ではないとステップS252において判断すると、S236の処理に戻る。
【0051】
図15は、ハンディーユニット20のマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【0052】
図15において、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が時間311で所定の圧力301a以上になったので、ステップS246からステップS248に進む。次いで、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が時間312で所定の濃度302a以上になったので、ステップS248からステップS250に進む。次いで、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が時間313で34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内になったので、ステップS250からステップS252に進む。そして、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304(図15においてハッチングで示した面積)が時間314で所定の体積以上になったので、ステップS252から次のステップに進む。
【0053】
図13に示すように、CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上であるとステップS252において判断すると、ハンディーユニット20の被写ランプ27を点灯させ(ステップS254)、カメラユニット60にシャッタコマンドを転送することによってCCDイメージセンサ67に運転者を撮影させる(ステップS256)。したがって、被写ランプ27が点灯しているハンディーユニット20のマウスピース23から呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像401(図16参照。)がカメラユニット60のメモリ70に記録される。すなわち、CCDイメージセンサ67は、運転者が呼気の吹込みを行っている最中の運転者の撮影を行うようになっており、本発明の被験者撮影部を構成している。
【0054】
次いで、CPU95は、ハンディーユニット20の吸引ポンプ36を駆動させてアルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を導入することによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定を開始し(ステップS258)、表示ユニット40のWaitランプ45の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを通知する(ステップS260)。
【0055】
そして、CPU95は、ステップS258において開始した測定が終了すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、測定結果と、ステップS256において撮影されてカメラユニット60のメモリ70に記録されている画像401とをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録し(ステップS262)、測定されたアルコール濃度が所定の基準値以下であるか否かを判断する(ステップS264)。
【0056】
CPU95は、ステップS264においてアルコール濃度が所定の基準値を超えていると判断すると、飲酒状態であると判定したためにエンジンを始動できないことを、表示ユニット40のNGランプ47の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知した後(ステップS266)、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS268)、一連の処理を終了する。
【0057】
CPU95は、ステップS264においてアルコール濃度が所定の基準値以下であると判断すると、アンプ86を介してインターロック用リレー81の電磁石81bに電力を供給してスイッチ81aを閉じ(ステップS270)、飲酒状態であると判定なかったためにエンジンを始動できることを、表示ユニット40のOKランプ46の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知した後(ステップS272)、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS268)、一連の処理を終了する。なお、CPU95は、ステップS270においてスイッチ81aを閉じた後、5分間が経過すると、スイッチ81aを開く。したがって、運転者は、5分以内にスタータキースイッチ114のキーを回して端子114aと、START端子114eとを電気的に接続させることによって、車両100のエンジンを始動することができる。すなわち、スタータキースイッチ114の端子114aと、START端子114eとが電気的に接続させられると、コントロールユニット80のインターロック用リレー81のスイッチ81aと、スタータキースイッチ114とを介してスタータリレー113の電磁石113bにバッテリ111の電力が供給されてスイッチ113aが閉じ、それによってスタータリレー113のスイッチ113aを介してセルモータ112にバッテリ111の電力が供給されて、車両100のエンジンが始動させられる。
【0058】
なお、LOGメモリ94に記録された各種情報は、後で様々な目的で使用されることができる。例えば、LOGメモリ94に記録された飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合には定期的に所轄の警察署で監視に使用されたり、業務用の場合には定期的に管理本部で監視に使用されたりすることができる。
【0059】
また、LOGメモリ94に記録される各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87によって外部に送信されるようになっていても良い。例えば、飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合にはリアルタイムで所轄の警察署のメールサーバに送信されたり、業務用の場合にはリアルタイムで管理本部のメールサーバに送信されたりすることができる。もちろん、LOGメモリ94に記録された各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87を介して外部から読み出されるようになっていても良い。
【0060】
また、アルコールインターロックシステム10は、登録者IDを指紋認証によって入力するようになっているが、他の方法によって入力するようになっていても良い。例えば、登録者IDは、磁気カードやIC(Integrated Circuit)カードによって入力されるようになっていても良い。
【0061】
以上に説明したように、アルコールインターロックシステム10は、運転者が本物のハンディーユニット20を使用して呼気の吹込みを行っている場合に、被写ランプ27が発光しているハンディーユニット20に呼気の吹込みを行っている運転者の証拠画像が残る。そのため、被写ランプ27が発光していないハンディーユニット20に呼気の吹込みを行っている運転者の証拠画像が残っている場合には、偽物のハンディーユニット20が使用されて運転者の替玉による不正が行われたと判断されることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、運転者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、本発明の呼気アルコール測定装置としてアルコールインターロックシステム10について説明したが、本発明の呼気アルコール測定装置は、アルコールインターロックシステム以外の呼気アルコール測定装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアルコールインターロックシステムの斜視図である。
【図2】図1に示すアルコールインターロックシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すハンディーユニットの正面図である。
【図4】図3に示すハンディーユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す表示ユニットの斜視図である。
【図6】図5に示す表示ユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すカメラユニットの正面図である。
【図8】図7に示すカメラユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示すコントロールユニットの斜視図である。
【図10】図9に示すコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図11】図4に示すハンディーユニットに基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけ吹込まれたときの呼気圧センサの出力電圧およびアルコール燃料電池センサの出力電圧を示すグラフである。
【図12】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のフローチャートである。
【図13】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のうち図12に示す動作の続きのフローチャートである。
【図14】図3に示すハンディーユニットのマウスピースから吹込まれる空気の種類別に呼気温度センサの測定値の変化を示すグラフである。
【図15】図3に示すハンディーユニットのマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【図16】図3に示す被写ランプが点灯しているハンディーユニットのマウスピースから呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 アルコールインターロックシステム(呼気アルコール測定装置)
20 ハンディーユニット(呼気吹込ユニット)
23 マウスピース(呼気吹込部)
27 被写ランプ(撮影時発光部)
34 アルコール燃料電池センサ(呼気アルコール測定部)
67 CCDイメージセンサ(被験者撮影部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気アルコール測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気アルコール測定装置として、被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、被験者が呼気の吹込みを行っている最中の被験者の撮影を行う被験者撮影部と、被験者が吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
呼気アルコール測定装置においては、例えば人や物の輸送業の運転者の飲酒運転を防止するために運転者の呼気中のアルコール濃度の測定が行われる際に、飲酒していない替玉が呼気中のアルコール濃度の測定を受けて飲酒状態の運転者が車両を運転するという不正が行われることがある。しかしながら、従来の呼気アルコール測定装置は、被験者が呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っている最中の被験者の撮影を行って証拠画像を残すことによって、被験者の替玉による不正を抑止することができる。
【特許文献1】特開2007−271628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の呼気アルコール測定装置においては、飲酒していない替玉が撮影されない位置で本物の呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っている最中に、飲酒状態の被験者が偽物の呼気吹込ユニットを使用して撮影されることによって、被験者が本物の呼気吹込ユニットの呼気吹込部に呼気の吹込みを行っているように見せかけた証拠画像を残すことができる。すなわち、従来の呼気アルコール測定装置においては、偽物の呼気吹込ユニットを使用することによって、被験者の替玉による不正が行われる可能性がある。
【0005】
本発明は、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる呼気アルコール測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、前記被験者が前記呼気の吹込みを行っている最中の前記被験者の撮影を行う被験者撮影部と、前記吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備え、前記呼気吹込ユニットは、前記撮影のときに発光する撮影時発光部を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者が本物の呼気吹込ユニットを使用して呼気の吹込みを行っている場合に、撮影時発光部が発光している呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残る。そのため、撮影時発光部が発光していない呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残っている場合には、偽物の呼気吹込ユニットが使用されて被験者の替玉による不正が行われたと判断されることができる。したがって、本発明の呼気アルコール測定装置は、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被験者が本物の呼気吹込ユニットを使用して呼気の吹込みを行っている場合に、撮影時発光部が発光している呼気吹込ユニットに呼気の吹込みを行っている被験者の証拠画像が残ることによって、被験者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる呼気アルコール測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
まず、本実施の形態に係る呼気アルコール測定装置としてのアルコールインターロックシステムの構成について説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るアルコールインターロックシステム10の斜視図である。図2は、アルコールインターロックシステム10の構成を示すブロック図である。
【0012】
アルコールインターロックシステム10は、被験者としての運転者が飲酒状態であるときに運転者による車両100の運転を許可しないシステムである。図1および図2に示すように、アルコールインターロックシステム10は、車両100のダッシュボード101の正面のうちハンドル102の左側の部分に着脱可能に取り付けられたハンディーユニット20と、ダッシュボード101の上面のうちハンドル102の右側の部分に設置されて各種の表示を行う表示ユニット40と、車両100のバックミラー103の上部に設置されて運転者を撮影するためのカメラユニット60と、ダッシュボード101の内部に設置されてハンディーユニット20、表示ユニット40およびカメラユニット60の制御を行うコントロールユニット80と、ハンディーユニット20およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル11と、表示ユニット40およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル12と、カメラユニット60およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル13とを備えている。
【0013】
コントロールユニット80は、スイッチ81aと、スイッチ81aの接続状態を切り替えるための電磁石81bとを備えたインターロック用リレー81を備えている。スイッチ81aは、端子81cおよび端子81dを備えている。
【0014】
図2に示すように、車両100は、バッテリ111と、バッテリ111によって駆動されてエンジンを始動させるためのセルモータ112と、バッテリ111およびセルモータ112の電気的な接続状態を切り替えるスタータリレー113と、キーが回されることによってバッテリ111およびスタータリレー113の電気的な接続状態を切り替えるスタータキースイッチ114と、車両100の速度を表す車速パルス信号を発生させる車速パルス発生器115とを備えている。バッテリ111は、アースに電気的に接続されたマイナス端子111aと、プラス端子111bとを備えている。セルモータ112は、アースおよびバッテリ111のマイナス端子111aに電気的に接続された端子112aと、端子112bとを備えている。スタータリレー113は、スイッチ113aと、スイッチ113aの接続状態を切り替えるための電磁石113bとを備えている。スタータリレー113のスイッチ113aは、セルモータ112の端子112bに電気的に接続された端子113cと、バッテリ111のプラス端子111bに電気的に接続された端子113dとを備えている。スタータリレー113の電磁石113bは、アース、バッテリ111のマイナス端子111aおよびセルモータ112の端子112aに電気的に接続された端子113eと、インターロック用リレー81のスイッチ81aの端子81cに電気的に接続された端子113fとを備えている。スタータキースイッチ114は、バッテリ111のプラス端子111bおよびスタータリレー113の端子113dに電気的に接続された端子114aと、車両100のエンジンを切るためのOFF端子114bと、車両100のアクセサリ電源をオン状態とするためのACC端子114cと、イグニッション電源をオン状態とするためのON端子114dと、セルモータ112を始動させるためのSTART端子114eとを備えている。START端子114eは、コントロールユニット80のインターロック用リレー81の端子81dに電気的に接続されている。
【0015】
なお、バッテリ111の電力は、コントロールユニット80に供給され、コントロールユニット80からケーブル11、12、13を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60にも供給されている。以下の説明においては、電力の供給についての説明を省略する。
【0016】
図3は、ハンディーユニット20の正面図である。図4は、ハンディーユニット20の構成を示すブロック図である。
【0017】
ハンディーユニット20は、運転者が運転前に呼気中のアルコール濃度を測るための装置である。図3および図4に示すように、ハンディーユニット20は、ケース21と、ケース21の上部に設けられた交換可能なマウスピース23と、ケース21の正面に設けられて運転者に押されるスイッチ25と、ケース21の正面に設けられてアルコール濃度を表示する7seg表示のアルコール濃度表示部26と、ケース21の上部に設けられてカメラユニット60による撮影の際に発光する撮影時発光部としての被写ランプ27とを備えており、ケース21の下部にケーブル11が接続されている。ハンディーユニット20は、呼気吹込部としてのマウスピース23を備えており、本発明の呼気吹込ユニットを構成している。
【0018】
図4に示すように、ハンディーユニット20は、ケーブル11(図3参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース29と、呼気の温度を測定するための呼気温度センサ31と、呼気の圧力を測定するための呼気圧センサ32と、呼気中の炭酸ガスの濃度を測定するための呼気CO2センサ33と、呼気中のアルコール濃度を測定するための呼気アルコール測定部としてのアルコール燃料電池センサ34と、アルコール燃料電池センサ34から出力された信号を増幅するアンプ35と、アルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を取り込むための吸引ポンプ36と、各種のデータを記録する不揮発メモリ37と、ハンディーユニット20の各構成を制御するCPU(Central Processing Unit)38とをケース21の内部に備えている。
【0019】
図5は、図1に示す表示ユニット40の斜視図である。図6は、表示ユニット40の構成を示すブロック図である。
【0020】
表示ユニット40は、運転者の呼気中のアルコール濃度を表示したり、操作手順を音声および表示によって示したりする装置である。図5および図6に示すように、表示ユニット40は、ケース41と、ケース41の正面の左端に設けられてハンディーユニット20(図1参照。)のアルコール燃料電池センサ34(図4参照。)がウォームアップ中であることを表示するためのWarmUPランプ43と、ケース41の正面のWarmUPランプ43の右隣に設けられて運転者に呼気の吹込みを促すためのBlowランプ44と、ケース41の正面のBlowランプ44の右隣に設けられてアルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを表示するためのWaitランプ45と、ケース41の正面のWaitランプ45の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されなかったことを表示するOKランプ46と、ケース41の正面のOKランプ46の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されたことを表示するNGランプ47と、ケース41の正面のNGランプ47の右隣に設けられてアルコール濃度を表示する7seg表示のアルコール濃度表示部48と、ケース41の上面に設けられて運転者の右手の指の指紋を読み取る指紋読取部50と、ケース41の上面の指紋読取部50の右隣に設けられたスピーカ52とを備えており、ケース41の背面にケーブル12が接続されている。
【0021】
図6に示すように、表示ユニット40は、ケーブル12(図5参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース54と、数千人の指紋の画像をID(以下「登録者ID」という。)とともに登録可能であって登録された指紋の画像に基づいて指紋読取部50によって読み取られた指紋の認証を行う指紋認証モジュール55と、スピーカ52によって出力される音声を生成する音声LSI(Large Scale Integration)57と、表示ユニット40の各構成を制御するCPU58とをケース41(図5参照。)の内部に備えている。
【0022】
図7は、図1に示すカメラユニット60の正面図である。図8は、カメラユニット60の構成を示すブロック図である。
【0023】
図7および図8に示すように、カメラユニット60は、ケース61と、ケース61の正面の中央に設けられたレンズ63と、夜間でも撮影可能なようにケース61の正面の端に設けられた撮影ランプ64とを備えており、ケース61にケーブル13が接続されている。
【0024】
図8に示すように、カメラユニット60は、ケーブル13(図7参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース66と、レンズ63(図7参照。)を介して運転者を撮影するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ67と、場所を特定するためのGPS(Global Positioning System)電波を受信する内蔵アンテナ68と、内蔵アンテナ68によって受信したGPS電波を復号するためのGPS受信モジュール69と、CCDイメージセンサ67によって撮影された画像データがコントロールユニット80に転送されるまで画像データを一時的に記録するメモリ70と、カメラユニット60の各構成を制御するCPU71とをケース61(図7参照。)の内部に備えている。
【0025】
図9は、図1に示すコントロールユニット80の斜視図である。図10は、コントロールユニット80の構成を示すブロック図である。
【0026】
図9および図10に示すように、コントロールユニット80は、ケース82と、ケース82の上面に立てられたアンテナ83とを備えており、ケース82の背面にケーブル11〜14が接続されている。
【0027】
図10に示すように、コントロールユニット80は、上述したインターロック用リレー81と、外部インターフェース85と、インターロック用リレー81の電磁石81bに電気的に接続されたアンプ86と、アンテナ83を介して外部と無線通信を行うための通信モジュール87と、時間を計測するための時計LSI88と、時計LSI88の電力源であるリチウム電池89と、車両100(図1参照。)の加速度を測定するための加速度センサ90と、飲酒状態の判定結果の履歴情報などの各種のデータを記録するLOGメモリ94と、コントロールユニット80の各構成を制御するCPU95とをケース82(図9参照。)の内部に備えている。インターロック用リレー81の端子81cは、ケーブル14(図9参照。)を介してスタータリレー113(図2参照。)の端子113fに電気的に接続されている。インターロック用リレー81の端子81dは、ケーブル14を介してスタータキースイッチ114(図2参照。)のSTART端子114eに電気的に接続されている。外部インターフェース85は、それぞれケーブル11、12、13(図9参照。)を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60に電気的に接続されているとともに、ケーブル14を介してバッテリ111(図2参照。)のマイナス端子111aおよびプラス端子111bと、スタータキースイッチ114のACC端子114cと、車速パルス発生器115とに電気的に接続されている。
【0028】
図11は、図4に示すハンディーユニット20に基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけ吹込まれたときの呼気圧センサ32の出力電圧およびアルコール燃料電池センサ34の出力電圧を示すグラフである。
【0029】
ハンディーユニット20は、不揮発メモリ37にID(以下「ハンディーID」という。)が記録されている。ハンディーIDは、ハンディーユニット20の校正のときに不揮発メモリ37に記録される。ハンディーユニット20の校正は、呼気圧センサ32、アルコール燃料電池センサ34、吸引ポンプ36などの各構成部品の個体差の影響を取り除くために行われる。ハンディーユニット20の校正について、図11を用いて具体的に説明する。図11には、アルコールとして基準の濃度のエタノールが含まれた基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけマウスピース23(図3参照。)から吹込まれたときの呼気圧センサ32の出力電圧191およびアルコール燃料電池センサ34の出力電圧192が示されている。出力電圧191、192は、基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけマウスピース23から吹込まれた時間193から吸引ポンプ36が駆動させられて、アルコール燃料電池センサ34の内部に基準ガスが吸引されたときの出力電圧である。出力電圧191の電圧値191aは、基準の風圧に対応して呼気圧センサ32が出力した電圧値である。また、出力電圧192の最大の電圧値192aと、図中にハッチングで示した面積192bとは、エタノールの濃度が計算される際に使用される。ハンディーユニット20の校正は、実際に測定された電圧値191a、電圧値192a、面積192bと、それぞれが想定されている値との差に基づいて行われる。ここで、電圧値191aや電圧値192aは、一般的に3、4桁程度の値であってそれぞれハンディーユニット20の個体間で全く異なる。面積192bは、一般的に8桁程度の値であってハンディーユニット20の個体間で全く異なる。したがって、ハンディーIDは、電圧値191a、電圧値192aおよび面積192bによって構成されることによって、十分な識別力を持つことになる。
【0030】
次に、アルコールインターロックシステム10の動作について説明する。
【0031】
図12は、アルコールインターロックシステム10の動作のフローチャートである。図13は、アルコールインターロックシステム10の動作のうち図12に示す動作の続きのフローチャートである。
【0032】
運転者が車両100の運転席に座ってハンディーユニット20のスイッチ25を押すと、コントロールユニット80のCPU95は、スイッチ25が押されたことを検知して、図12に示す動作を開始する。
【0033】
まず、CPU95は、ハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDを読み出して(ステップS200)、読み出したハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されている最新のハンディーIDとが同一であるか否かを判断する(ステップS202)。
【0034】
CPU95は、不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されているハンディーIDとが同一ではないとステップS202において判断すると、ハンディーユニット20が変更されたことと、ステップS200において読み出したハンディーIDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60の内蔵アンテナ68およびGPS受信モジュール69から取得したGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94および不揮発メモリ37に記録した後(ステップS204)、ハンディーユニット20が変更されたことを表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力する(ステップS206)。
【0035】
CPU95は、不揮発メモリ37に記録されているハンディーIDと、LOGメモリ94に記録されているハンディーIDとが同一であるとステップS202において判断した場合、または、ステップS206の処理を終了した場合、スタータキースイッチ114のACC端子114cからの出力に基づいて車両100のアクセサリ電源がオン状態であるか否か、すなわちACC端子114cが端子114aに電気的に接続されているか否かを判断する(ステップS208)。CPU95は、ステップS208においてアクセサリ電源がオン状態であると判断すると、アクセサリ電源をオフ状態で操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS210)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、アクセサリ電源がオン状態であったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。なお、アクセサリ電源がオン状態であるときに一連の処理を終了する理由は、ハンディーユニット20の周辺の気温が低いときに後述するウォームアップの時間が長引くため、その間にアルコールインターロックシステム10を構成する機器以外の電子機器(例えばカーラジオ)によって車両100のバッテリ111が消耗することを防ぐためである。したがって、バッテリ111の容量が大きい場合や、ウォームアップの時間が短い場合には、アクセサリ電源がオン状態であったとしても一連の処理を終了する必要はない。
【0036】
CPU95は、ステップS208においてアクセサリ電源がオフ状態であると判断すると、車両100の車速パルス発生器115からの出力に基づいて車両100の速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS212)。CPU95は、ステップS212において車両100の速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS214)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。
【0037】
CPU95は、ステップS212において車両100の速度が0であると判断すると、加速度センサ90からの出力に基づいて車両100の加速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS216)。CPU95は、ステップS216において車両100の加速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すようにスピーカ52から音声で出力して(ステップS214)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の加速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、一連の処理を終了する。
【0038】
なお、車両100が動いているか否かは、車両100の速度や加速度以外の情報に基づいても判断することができる。例えば、車両100が動いているときにはバッテリ111が発電および充電されて電圧が高くなることを利用して、バッテリ111の電圧が所定の電圧以上であるときに車両100が動いていると判断することもできる。また、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置の変化によっても、車両100が動いているか否かを判断することもできる。
【0039】
CPU95は、ステップS216において車両100の加速度が0であると判断すると、表示ユニット40の指紋認証モジュール55に指紋認証を行わせる。指紋認証モジュール55は、自身に事前に登録されている指紋の画像と、表示ユニット40の指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像とに基づいて認証を行って、認証が成功した場合には、指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像に対応する登録者IDをCPU95に送信し、認証が失敗した場合には、認証の失敗を示す登録者ID、例えばNo.9999をCPU95に送信する。CPU95は、指紋認証モジュール55から登録者IDが送信されると、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDに基づいて、認証が成功したか否かを判断する(ステップS218)。なお、CPU95は、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録する。
【0040】
CPU95は、ステップS218において認証が失敗したと判断すると、認証が失敗したことをスピーカ52から音声で出力して(ステップS220)、一連の処理を終了する。
【0041】
CPU95は、ステップS218において認証が成功したと判断すると、図13に示すように、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップを開始して、表示ユニット40のWarmUPランプ43の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34をウォームアップ中であることを通知する(ステップS228)。ここで、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップとは、周囲の気温が例えば−45℃のように低温であってもアルコール燃料電池センサ34の内部のヒータ回路によってアルコール燃料電池センサ34を加熱して、アルコール燃料電池センサ34の内部の温度を一定の33℃まで引き上げることにより均一な測定性能を維持する動作である。そして、CPU95は、ウォームアップが完了するまで待機する(ステップS230)。
【0042】
CPU95は、ステップS230においてウォームアップが完了したと判断すると、時計LSI88の出力値に基づいて時間の計測を開始して、表示ユニット40のBlowランプ44の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、運転者による呼気の吹き込みを促し(ステップS232)、カメラユニット60の撮影ランプ64を点灯させる(ステップS234)。
【0043】
次いで、CPU95は、計測中の時間が所定の時間を経過したか否かを判断する(ステップS236)。CPU95は、ステップS236において計測中の時間が所定の時間を経過したと判断すると、計測中の時間が所定の時間を経過したことをスピーカ52から音声で出力し(ステップS238)、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、計測中の時間が所定の時間を経過したこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS240)、一連の処理を終了する。
【0044】
CPU95は、ステップS236において計測中の時間が所定の時間を経過していないと判断すると、運転者によってハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力が所定の圧力、例えば0.3L/秒以上であるか否かを呼気圧センサ32の測定値に基づいて判断する(ステップS246)。呼気の圧力が判断対象となる理由は、ある程度の圧力の呼気でなければアルコール濃度の正確な測定ができないからである。CPU95は、ステップS246において呼気の圧力が所定の圧力以上ではないと判断すると、S236の処理に戻る。
【0045】
CPU95は、ステップS246において呼気の圧力が所定の圧力以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であるか否かを呼気CO2センサ33の測定値に基づいて判断する(ステップS248)。呼気中の炭酸ガスの濃度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。人間の呼気には、空気と比較して、炭酸ガスが多く含まれている。CPU95は、ステップS248において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないと判断すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、S236の処理に戻る。
【0046】
CPU95は、ステップS248において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であるか否かを呼気温度センサ31の測定値に基づいて判断する(ステップS250)。
【0047】
図14は、ハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる空気の種類別に呼気温度センサ31の測定値の変化を示すグラフである。
【0048】
ステップS250において呼気の温度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。図14に示すように、空気入れによって吹込まれた空気は、ハンディーユニット20の周囲の空気の温度に収束するのに対して、人間の呼気は、人間の体温に依存して安定しているためハンディーユニット20の周囲の空気の温度によらず常に34℃付近に収束する。
【0049】
図13に示すように、CPU95は、ステップS250において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないと判断すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないこととをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録した後、S236の処理に戻る。
【0050】
CPU95は、ステップS250において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積が所定の体積、例えば1.0L以上であるか否かを時計LSI88によって計測した時間と、呼気圧センサ32の測定値とに基づいて判断する(ステップS252)。吹込まれた空気の体積が判断対象となる理由は、吹込まれた空気の堆積が少ないときにアルコール濃度を測定してしまうと口に入ったばかりの新鮮な空気のアルコール濃度を測定してしまうおそれがあり、呼気、すなわち肺に入っていた空気のアルコール濃度を測定するためにある程度の体積の空気が吹込まれる必要があるからである。CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上ではないとステップS252において判断すると、S236の処理に戻る。
【0051】
図15は、ハンディーユニット20のマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【0052】
図15において、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が時間311で所定の圧力301a以上になったので、ステップS246からステップS248に進む。次いで、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が時間312で所定の濃度302a以上になったので、ステップS248からステップS250に進む。次いで、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が時間313で34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内になったので、ステップS250からステップS252に進む。そして、CPU95は、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304(図15においてハッチングで示した面積)が時間314で所定の体積以上になったので、ステップS252から次のステップに進む。
【0053】
図13に示すように、CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上であるとステップS252において判断すると、ハンディーユニット20の被写ランプ27を点灯させ(ステップS254)、カメラユニット60にシャッタコマンドを転送することによってCCDイメージセンサ67に運転者を撮影させる(ステップS256)。したがって、被写ランプ27が点灯しているハンディーユニット20のマウスピース23から呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像401(図16参照。)がカメラユニット60のメモリ70に記録される。すなわち、CCDイメージセンサ67は、運転者が呼気の吹込みを行っている最中の運転者の撮影を行うようになっており、本発明の被験者撮影部を構成している。
【0054】
次いで、CPU95は、ハンディーユニット20の吸引ポンプ36を駆動させてアルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を導入することによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定を開始し(ステップS258)、表示ユニット40のWaitランプ45の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを通知する(ステップS260)。
【0055】
そして、CPU95は、ステップS258において開始した測定が終了すると、ステップS218において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、測定結果と、ステップS256において撮影されてカメラユニット60のメモリ70に記録されている画像401とをLOGメモリ94およびハンディーユニット20の不揮発メモリ37に記録し(ステップS262)、測定されたアルコール濃度が所定の基準値以下であるか否かを判断する(ステップS264)。
【0056】
CPU95は、ステップS264においてアルコール濃度が所定の基準値を超えていると判断すると、飲酒状態であると判定したためにエンジンを始動できないことを、表示ユニット40のNGランプ47の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知した後(ステップS266)、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS268)、一連の処理を終了する。
【0057】
CPU95は、ステップS264においてアルコール濃度が所定の基準値以下であると判断すると、アンプ86を介してインターロック用リレー81の電磁石81bに電力を供給してスイッチ81aを閉じ(ステップS270)、飲酒状態であると判定なかったためにエンジンを始動できることを、表示ユニット40のOKランプ46の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知した後(ステップS272)、撮影ランプ64を消灯させて(ステップS268)、一連の処理を終了する。なお、CPU95は、ステップS270においてスイッチ81aを閉じた後、5分間が経過すると、スイッチ81aを開く。したがって、運転者は、5分以内にスタータキースイッチ114のキーを回して端子114aと、START端子114eとを電気的に接続させることによって、車両100のエンジンを始動することができる。すなわち、スタータキースイッチ114の端子114aと、START端子114eとが電気的に接続させられると、コントロールユニット80のインターロック用リレー81のスイッチ81aと、スタータキースイッチ114とを介してスタータリレー113の電磁石113bにバッテリ111の電力が供給されてスイッチ113aが閉じ、それによってスタータリレー113のスイッチ113aを介してセルモータ112にバッテリ111の電力が供給されて、車両100のエンジンが始動させられる。
【0058】
なお、LOGメモリ94に記録された各種情報は、後で様々な目的で使用されることができる。例えば、LOGメモリ94に記録された飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合には定期的に所轄の警察署で監視に使用されたり、業務用の場合には定期的に管理本部で監視に使用されたりすることができる。
【0059】
また、LOGメモリ94に記録される各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87によって外部に送信されるようになっていても良い。例えば、飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合にはリアルタイムで所轄の警察署のメールサーバに送信されたり、業務用の場合にはリアルタイムで管理本部のメールサーバに送信されたりすることができる。もちろん、LOGメモリ94に記録された各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87を介して外部から読み出されるようになっていても良い。
【0060】
また、アルコールインターロックシステム10は、登録者IDを指紋認証によって入力するようになっているが、他の方法によって入力するようになっていても良い。例えば、登録者IDは、磁気カードやIC(Integrated Circuit)カードによって入力されるようになっていても良い。
【0061】
以上に説明したように、アルコールインターロックシステム10は、運転者が本物のハンディーユニット20を使用して呼気の吹込みを行っている場合に、被写ランプ27が発光しているハンディーユニット20に呼気の吹込みを行っている運転者の証拠画像が残る。そのため、被写ランプ27が発光していないハンディーユニット20に呼気の吹込みを行っている運転者の証拠画像が残っている場合には、偽物のハンディーユニット20が使用されて運転者の替玉による不正が行われたと判断されることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、運転者の替玉による不正の抑止力を従来より向上することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、本発明の呼気アルコール測定装置としてアルコールインターロックシステム10について説明したが、本発明の呼気アルコール測定装置は、アルコールインターロックシステム以外の呼気アルコール測定装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアルコールインターロックシステムの斜視図である。
【図2】図1に示すアルコールインターロックシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すハンディーユニットの正面図である。
【図4】図3に示すハンディーユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す表示ユニットの斜視図である。
【図6】図5に示す表示ユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すカメラユニットの正面図である。
【図8】図7に示すカメラユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示すコントロールユニットの斜視図である。
【図10】図9に示すコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図11】図4に示すハンディーユニットに基準ガスが基準の風圧で一定の体積だけ吹込まれたときの呼気圧センサの出力電圧およびアルコール燃料電池センサの出力電圧を示すグラフである。
【図12】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のフローチャートである。
【図13】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のうち図12に示す動作の続きのフローチャートである。
【図14】図3に示すハンディーユニットのマウスピースから吹込まれる空気の種類別に呼気温度センサの測定値の変化を示すグラフである。
【図15】図3に示すハンディーユニットのマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【図16】図3に示す被写ランプが点灯しているハンディーユニットのマウスピースから呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 アルコールインターロックシステム(呼気アルコール測定装置)
20 ハンディーユニット(呼気吹込ユニット)
23 マウスピース(呼気吹込部)
27 被写ランプ(撮影時発光部)
34 アルコール燃料電池センサ(呼気アルコール測定部)
67 CCDイメージセンサ(被験者撮影部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、前記被験者が前記呼気の吹込みを行っている最中の前記被験者の撮影を行う被験者撮影部と、前記吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備え、
前記呼気吹込ユニットは、前記撮影のときに発光する撮影時発光部を備えることを特徴とする呼気アルコール測定装置。
【請求項1】
被験者の呼気中のアルコール濃度の測定を行う呼気アルコール測定部と、前記被験者が前記呼気の吹込みを行っている最中の前記被験者の撮影を行う被験者撮影部と、前記吹込みを行うための呼気吹込部が設置されたユニットである呼気吹込ユニットとを備え、
前記呼気吹込ユニットは、前記撮影のときに発光する撮影時発光部を備えることを特徴とする呼気アルコール測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−205432(P2009−205432A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46949(P2008−46949)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(302031454)東海電子株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(302031454)東海電子株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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