説明

器官形成方法

脊椎動物の未分化細胞から器官及び/又は組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸X受容体リガンド(例えばレチノイン酸X受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト)の存在下で培養する工程を含む方法、及び脊椎動物の未分化細胞から膵臓をインビトロで形成する方法、又は脊椎動物の未分化細胞から膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンド及びアクチビンの存在下で培養する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は脊椎動物の未分化細胞から器官を形成する方法に関する。
【背景技術】
ヒトを含めて脊椎動物の生体には非常に沢山の器官や組織が存在しているが、それらはもともと1個の受精卵から細胞分裂(卵割)と細胞分化を経て形成され、バランスのとれた体制をもつ個体を構成するようになる。このような器官及び組織形成のプロセスはきわめて複雑であり、誘導現象と呼ばれる重要な細胞間の相互作用が多段階にわたって行われていると考えられている。
生体内で行われる器官形成のプロセスを試験管内(イン・ビトロ)で再現し、未分化細胞から所望の器官を形成する試みがなされている(例えば、「未分化細胞からの臓器形成」、炎症・再生、Vol.22,21,2002、膵臓の器官形成については特開2001−299335号公報及び特開2001−333770号公報を参照のこと)。例えば、イモリの胞胚期のアニマルキャップ(多能性をもった細胞塊)である未分化細胞を高濃度のアクチビンで処理するとリズミカルに拍動する心臓を60%の形成率で形成することができる。この心臓は、1ヶ月以上も正常な拍動数を維持することができ、心筋細胞に特異的な遺伝子の発現や心筋に特異的な介在板の存在なども確認できることから、機能的及び構造的にほぼ完全な心臓であると言える。
一方、レチノイン酸(ビタミンA酸)はビタミンAの活性代謝産物であり、発生途上にある未熟な細胞を特有な機能を有する成熟細胞へと分化させる作用や、細胞の増殖促進作用や生命維持作用などの極めて重要な生理作用を有している。これまでに合成された種々のビタミンA誘導体、例えば、特開昭61−22047号公報や特開昭61−76440号公報記載の安息香酸誘導体、及びジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry,1988,Vol.31,No.11,p.2182)に記載の化合物なども、同様な生理作用を有することが明らかにされている。レチノイン酸及びレチノイン酸様の生物活性を有する上記化合物は「レチノイド」と総称されている。
レチノイン酸は前後軸に沿った胚のパターンニングに対する調節因子であり(Nature 340,140−144,1989、Development 112,945−958,1991、Dev.Biol.192,1−16,1997、Zool.Sci.15,879−886,1998)、このレチノイン酸がツメガエル胚における前方神経組織を後方化させ、中胚葉の発達において影響を及ぼすことが知られている(Genes Dev.5,175−187,1991、Develop.Growth.Differ.35,123−128,1993)。また、ツメガエルアニマルキャップ細胞にアクチビンの投与量を変化させて処理することにより脊索、筋肉、間充織及び体腔上皮のようなほとんどの中胚葉組織を誘導することができること(Roux’s Arch.Dev.Biol.198,330−335,1990、Nature 347,391−394,1990、Roux’s Arch.Dev.Biol.200,230−233,1991)、及びアクチビンと共処理するレチノイン酸の投与量を変化させることにより、アニマルキャップ細胞から分化する脊索、筋肉及び前腎のような中胚葉組織を側後方化させること(Develop.Growth.Differ.35,123−128,1993)が報告されている。
内胚葉性器官に対するレチノイン酸の作用については、発生段階22〜32のツメガエル胚をレチノイン酸で処理すると、腸、肝臓、胃などの消化器官の形態が異常になると、Dixonらにより報告されているが、レチノイン酸で処理した発生段階22〜32のツメガエル胚の膵臓は正常に形成され、内胚葉特異的マーカーであるXlHbox8の発現にも影響がみられないことも報告されている(Dev.Genes Evol.208,318−326,1998)。
また、オール・トランス(all−trans)・レチノイン酸は、細胞核内に存在する核内受容体・スーパーファミリー(Evans,R.M.,Science,240,p.889,1988)に属するレチノイン酸受容体(RAR)にリガンドとして結合して、動物細胞の増殖・分化あるいは細胞死などを制御することが明らかにされている(Petkovich,M.,et al.,Nature,330,pp.444−450,1987)。このオール・トランス・レチノイン酸を用いて、あるいはオール・トランス・レチノイン酸とアクチビンを組み合わせて用いることによって膵臓をインビトロで形成できることが知られている(特開2001−299335号公報及び特開2001−333770号公報)。
レチノイン酸の生理活性の発現については、レチノイドX受容体(RXR,9−cis−レチノイン酸を天然リガンドとする:本化合物はRARのリガンドでもある)の存在が証明されている。RXRはRARと二量体を形成し、遺伝子の転写を惹起ないし抑制してレチノイン酸の生理活性の発現を調節していることが明らかにされている(Mangelsdorf,D.J.et al.,Nature,345,pp.224−229)。RXRに結合可能なアゴニスト又はアンタゴニストが種々知られているが(アゴニストとしては、例えば特開平10−59951号公報に記載されたHX600など、アンタゴニストとしては同公報に記載されたHX603など)、RXRに結合するリガンドを用いて未分化細胞から器官を形成できるか否かは従来全く知られていない。
【発明の開示】
本発明の課題は、脊椎動物の未分化細胞から所望の器官を形成する手段を提供することにある。本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、RXRに結合するリガンドを用いて未分化細胞から心臓や神経などの器官を形成できることを見出した。また、本発明者らは、RARリガンドとしてレチノイン酸受容体(RAR)サブタイプγに実質的に結合しないRARリガンドとアクチビンとを用いると、未分化細胞から高度に分化した膵臓を形成できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明により、脊椎動物の未分化細胞から器官及び/又は組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸X受容体リガンドの存在下で培養する工程を含む方法が提供される。この発明の好ましい態様によれば、レチノイン酸X受容体リガンドがレチノイン酸X受容体のアゴニスト又はアンタゴニストである上記の方法、形成される器官及び/又は組織が心臓、平滑筋組織、又は脂肪細胞組織である上記の方法が提供される。また、脊椎動物の未分化細胞から器官及び/又は組織をインビトロで形成するための分化誘導剤であって、レチノイン酸X受容体リガンドを含む分化誘導剤が本発明により提供される。
別の観点からは、脊椎動物の未分化細胞から膵臓をインビトロで形成する方法、又は脊椎動物の未分化細胞から膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンド及びアクチビンの存在下で培養する工程を含む方法が提供される。この発明の好ましい態様によれば、上記のレチノイン酸受容体リガンドが4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸である上記の方法が提供される。また、脊椎動物の未分化細胞から膵臓又は膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成するための分化誘導剤であって、レチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンドを含む分化誘導剤も本発明により提供される。
また、別の観点からは、本発明により、上記の方法で形成された器官及び/又は組織が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ES細胞のコロニーを示した写真である。
第2図は、バクテリアディシュで形成された胚様体を示した写真である。
第3図は、例1の方法で形成された心臓(心筋様細胞塊)を示した写真である。
第4図は、例2の方法で形成された平滑筋組織(平滑筋様細胞塊)を示した写真である。
第5図は、例2の方法で形成された脂肪細胞組織を示した写真である。
第6図は、例3の方法により胚葉体から分化誘導された膵臓導管や内分泌・外分泌細胞などを含む膵臓組織の写真である。
第7図は、例3の方法により誘導された膵臓の外分泌細胞を示した写真である。
第8図は、例3の方法により誘導された膵臓のβ細胞(内分泌細胞)を示した写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において「器官及び/又は組織」とは、脊椎動物を構成する器官、組織、及びそれらの結合物を意味している。例えば、本発明の方法により形成される器官には、通常は組織として分類される構造物が結合している場合もあるが、そのような結合物を形成する方法も本発明の範囲に包含される。また、本発明の方法により同時に形成される器官及び組織はそれぞれ2種以上であってもよい。器官としては、例えば心臓、膵臓、腎臓などを例示することができ、組織としては神経組織、平滑筋組織、脂肪細胞組織などを例示することができるが、これらに限定されることはない。器官としては心臓又は膵臓などが好ましく、組織としては平滑筋組織又は脂肪組織などが好ましい。
レチノイン酸X受容体リガンド(以下、RXRリガンドと呼ぶ場合がある)には、レチノイン酸X受容体のアゴニスト(以下、RXRアゴニストと呼ぶ場合がある)及びレチノイン酸X受容体のアンタゴニスト(以下、RXRアンタゴニストと呼ぶ場合がある)が包含される。ある物質がRXRリガンドとなりうるか否かは、例えばBoehm,M.F.,et al.,J.Med.Chem.,37(18),2930−2941,1994;Heyman,R.A.,et al.,Cell,68(2),397−406,1992;Levin,A.A.,et al.,Nature,355(6358),359−361,1992;Chen,J.Y.,et al.,Nature,382,819−822,1996などに記載された方法により当業者が容易に確認することができる。RXRリガンドとしては、例えば、特開平9−100270号公報、特開平10−59951号公報、特開平10−114757号公報、特開平10−237050号公報、特開平10−338658号公報、特開2000−273079号公報、国際公開WO 99/24415などに記載された化合物のうちRXRリガンドとして作用可能な化合物を用いることができるが、これらに限定されることはない。RXRリガンドは2種以上を組み合わせて用いてもよい。RXRアゴニストとRXRアンタゴニストとを組み合わせて用いることも可能である。
より具体的には、RXRアゴニストとしては、例えば、
4−[5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−メチルジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル]安息香酸(HX600);
4−[2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサ)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル]安息香酸(HX630);
4−[2,3−(2,5−ジメチ−2,5−ヘキサノ)ジベンゾ[b,e]アゼピン−11−イル]安息香酸(HX640);
4−[1,3−ジヒドロ−7,8−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−1−メチル−2−オキソ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−5−イル]安息香酸(HX801);
(Z)−5−[4−[N−メチル−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)カルボキサミド]ベンジリデン]−2,4−チアゾリジンジオン(TZ191);
(Z)−5−[4−[N−メチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)アミノ]ベンジリデン]−2,4−チアゾリジンジオン(TZ335);
4−[N−シクロプロピルメチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)アミノ]安息香酸(DA124);
2−[N−シクロプロピルメチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)アミノ]ピリミジン−5−カルボン酸(PA024);
4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−1,3−ジオキソラン−1−イル]安息香酸(SR11237);
4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)エテン−1−イル]安息香酸(LGD1069);及び
6−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)シクロプロプ−1−イル]ピリジン−3−カルボン酸(LG268)などを挙げることができる。
RXRアンタゴニストとしては、
4−(5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−メチル−8−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル)安息香酸(HX531);
4−[5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−n−プロピルジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル]安息香酸(HX603);
4−(5H−10,11−ジヒドロ−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5,10−ジメチル−8−フェニル−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル)安息香酸(HX711);
2−[N−(3−n−ヘキシルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−N−メチルアミノ]ピリミジン−5−カルボン酸(PA452);
5−[4−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−yl)フェニル]トロポロン(Tp180);
(2E,4E,6Z)−3−メチル−7−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−3−n−プロピルオキシナフタレン−2−イル)オクタ−2,4,6−トリエン酸(LG100754);及び
4−[N−[3−(2−エチル−o−カルボラン−1−イル)フェニル]−N−メチルアミノ]安息香酸などが挙げられる。もっとも、RXRアゴニスト及びRXRアンタゴニストはこれらの特定の化合物に限定されることはない。
本発明の方法に使用可能な脊椎動物の未分化細胞の種類は特に限定されないが、例えば、哺乳類動物のほか、鳥類、は虫類、両生類などの脊椎動物の未分化細胞を用いることができる。未分化細胞としては、胚性幹細胞、造血幹細胞、小腸クリプトの基底細胞などの幹細胞のほか、例えば中〜後期の胞胚のアニマルキャップや胚様体(embryoid body)などの細胞集団を用いることもできる。本明細書において用いられる「未分化細胞」の用語は、2以上の細胞により形成される細胞集団や細胞塊を排除するものと解釈してはならない。
本発明の方法による器官及び/又は組織形成は、未分化細胞からの器官及び/又は組織形成方法として当業界で利用されている種々の方法で行うことができる。例えば、未分化細胞から膵臓を形成する方法について特開2001−299335号公報及び特開2001−333770号公報に詳細に記載されているので、当業者はこれらの刊行物を参照しつつ、本明細書の実施例の方法に従って、未分化細胞から所望の器官を形成させることができる。特開2001−299335号公報及び特開2001−333770号公報の開示のすべてを参照として本明細書の開示に含める。
例えば、胚性幹細胞から誘導した胚様体を用いて、適宜の濃度のRXRリガンドの存在下で1ないし数日培養することにより器官形成を行うことができる。RXRリガンドの存在下で1ないし数日培養した後、RXRリガンドの非存在下でさらに培養を継続してもよい。RXRリガンドの濃度は特に限定されないが、例えば1×10−12〜1×10−3M程度の範囲から適宜選択できる。本発明の方法はイン・ビトロの環境下で行うことができるが、本明細書においてイン・ビトロの用語は「生体外」の意味で用いられており、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
例えば、胚性幹細胞(ES細胞)としては、Hooperによって樹立された129系マウスのE14細胞(ATCC #;CRL−1821)又はLedermann and Burkiによって樹立されたC57BL系マウスのB6(ATCC #;SCRC−1002)などを用いることができる。これらはマウス胚盤胞の内部細胞塊からライン化されたものである。もっとも、胚性幹細胞の種類はこれらに限定されることはない。なお、通常の場合、胚性幹細胞の継代数は器官及び/又は組織形成能に影響を及ぼさない。
例えば、胚性幹細胞から誘導した胚様体をゼラチンコートした培養皿に接着させた後、RXRリガンドの溶液を必要に応じて培地で希釈して培地に加えて1から数日処理する。RXRリガンドを溶解するための溶媒としては、水、生理食塩水、緩衝液などのほか、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒又は水と有機溶媒との混合物を用いることもできる。胚様体の培養には、必要に応じてラミニン、コラーゲンIやマトリゲルコート(Biocoat,Becton Dickinson社製)したマルチウェルプレートを用いることもできる。この処理後、一定時間後の細胞分化状態を記録することが望ましい。上記の処理の前後に、骨形成因子(Bone morphogenic protein,BMP)であるBMP2/4やBMP6/7のほか、FGF、アクチビン、フォリスタチン、ビデロゲニン、インスリン、グルカゴン、コンカナバリン、サイトカラシン、カドベリンなどの誘導因子、細胞増殖因子、又はサイトカイン類などを用いて処理することもできる。このような処理を採用することにより、器官及び/又は組織形成の方向性や形成率を高めることができる場合がある。
別の観点から提供される本発明の方法は、脊椎動物の未分化細胞から膵臓をインビトロで形成する方法、又は脊椎動物の未分化細胞から膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンド及びアクチビンの存在下で培養する工程を含むことを特徴としている。
レチノイン酸受容体(RAR)リガンド(以下、RARリガンドと呼ぶ場合がある)は、オール−トランス−レチノイン酸または9−シス−レチノイン酸が生理作用を発現するために必要な受容体に結合する性質を有する化合物である。本発明の方法には、好ましくはレチノイン酸受容体アゴニスト(以下、RARアゴニストと呼ぶ場合がある)としてレチノイン酸に類似する作用(例えば、細胞分化作用、細胞増殖促進作用、及び生命維持作用などの1種以上の作用)又はその一部の作用を発揮するRARリガンドを用いることができる。RARリガンドであるか否かは、M.Sporn et al.,Retinoids,Academic Press,1984に記載された種々の方法により容易に判定できる。本発明の方法で用いられるRARリガンドは、RARのサブタイプα(RARα)及びサブタイプβ(RARβ)に結合し、かつサブタイプγ(RARγ)には実質的に結合しないRARリガンドである。レチノイン酸受容体・サブタイプへの結合については文献記載の方法により容易に確認することができる(H.de The,and A.Dejean,″Retinoids,10 years on″,Basel,Karger,pp.2−9,1991)。
上記の性質を有するRARリガンドとしては、例えば、フェニル置換カルバモイル安息香酸又はフェニル置換カルボキサミド安息香酸を基本骨格とするRARアゴニストを用いることができる。フェニル置換カルバモイル安息香酸又はフェニル置換カルボキサミド安息香酸を基本骨格とするRARリガンドは種々知られている。基本骨格という用語は、1又は2以上の任意の置換基が結合するための主たる化学構造を意味する。通常は、カルバモイル基又はカルボキサミド基に置換するフェニル基が1個又は2個以上の置換基を有していることが好ましい。このような置換基としては、例えば、低級アルキル基を用いることができる(本明細書において低級とは炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個を意味する)。低級アルキル基としては直鎖又は分枝鎖のアルキル基が好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基などを挙げることができる。
また、上記のフェニル基上の置換基として、例えば、メトキシ基などの低級アルコキシ基、ハロゲン原子(ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよい)、例えばトリメチルシリル基などの低級アルキル置換シリル基などを挙げることができる。カルバモイル基に置換するフェニル基としては、例えば、2ないし4個の低級アルキル基で置換されたフェニル基、あるいは1又は2個のトリ低級アルキルシリル基で置換されたフェニル基などが好ましく、2ないし4個のアルキル基で置換されたフェニル基、又は2個のトリメチルシリル基で置換されたフェニル基などがより好ましい。
上記のフェニル基上に置換する2個の低級アルキル基が隣接する場合には、それらの2つの低級アルキル基は一緒になってそれらが結合するフェニル基の環構成炭素原子とともに5員環又は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成してもよい。このようにして形成される環は飽和でも不飽和でもよく、環上には1又は2個以上の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基などが置換していてもよい。上記の形成された環上には、好ましくは2〜4個のメチル基、さらに好ましくは4個のメチル基が置換していてもよい。例えば、フェニル環上に置換する2個の隣接する低級アルキル基が一緒になって5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン環などが形成されることが好ましい。
好ましいRARリガンドとしては、例えば、下記の一般式(I):

〔式中、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、又は低級アルキル置換シリル基を示し、R、R、R、R、及びRのうち隣接するいずれか2つの基が低級アルキル基である場合には、それらが一緒になってそれらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに5員環又は6員環を形成してもよく(該環は1又は2以上のアルキル基を有していてもよい)、Xは−CONH−又は−NHCO−を示す〕で表されるRARリガンドを挙げることができる。
上記一般式(I)において、R、R、R、R、及びRが示す低級アルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基などを用いることができる。上記の低級アルキル基上には1個又は2個以上の任意の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子などを例示することができる。R、R、R、R、及びRが示す低級アルキル置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基などを挙げることができる。
、R、R、R、及びRからなる群から選ばれる隣接する2つの低級アルキル基が一緒になって、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに5員環又は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成してもよい。このようにして形成される環は飽和、部分飽和、又は芳香族のいずれであってもよく、環上には1又は2以上のアルキル基を有していてもよい。環上に置換可能なアルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基などを用いることができ、好ましくは2〜4個のメチル基、さらに好ましくは4個のメチル基が置換していてもよい。例えば、R及びRが置換するベンゼン環とR及びRとにより、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン環などが形成されることが好ましい。
より具体的には、本発明の方法に好適に用いられるRARリガンドとして、4−(2,4−ビストリメチルシリルフェニルカルボキサミド)安息香酸(Am555s,J.Med.Chem.,33,pp.1430−1437,1990)又は4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸(Am80,Hashimoto,Y.,Cellstruct.Funct.,16,pp.113−123,1991;Hashimoto,Y.,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,166,pp.1300−1307,1990)などを挙げることができ、特に好ましいRARリガンドはAm80である。
本発明の方法は、脊椎動物の未分化細胞を上記のRARリガンド及びアクチビンの存在下で培養する工程を含んでいる。未分化細胞及び培養方法は上記に説明したものを用いることができる。本発明の方法では、例えばアクチビン以外の誘導因子(例えばFGF)を用いる必要がなく、膵臓として実質的に完成された器官、又は膵臓の形態及び機能を実質的に有する高度に分化した組織が得られるという特徴がある。RARリガンド及びアクチビンの組み合わせ濃度は適宜選択可能であるが、例えば、RARリガンドの濃度を1×10−12〜1×10−3M程度の範囲とし、アクチビンの濃度を0.1〜1000ng/ml程度の範囲とすることができる。また、より複雑な構造を有する器官の形成のために、RARリガンドとRXRリガンドとを組み合わせて用いることもできる。
本発明の方法により形成された器官及び/又は組織は、その器官及び/又は組織を直接又は間接の作用点とする医薬のスクリーニングに用いることができる。例えば、本発明の方法により心臓を形成させた場合、形成された心臓は長期に渡って一定の拍動リズムを有するが、例えばこの心臓を用いて心拍数の増減に作用する医薬をスクリーニングすることが可能である。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:RXRリガンドを用いた心臓の形成
ES細胞として29系マウスのE14細胞(ATCC #;CRL−1821)又はC57BL系マウスのB6(ATCC #;SCRC−1002)を用いた。0.1%のゼラチンでコートした培養皿に13日胚のマウスから作成したマウス胎児繊維芽細胞を播種し、12%牛胎児血清(Giboco),100U/mlペニシリン(Sigma),100μg/mlストレプトマイシン(Sigma)を含む培地で24時間培養した。この細胞を10μg/mlのマイトマイシンC(MMC;Sigma)で4時間処理し細胞分裂を阻害した後、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline,PBS)で2回洗浄してMMCを取り除いた。この繊維芽細胞(フィーダー)の上にES細胞を播種した。ES細胞用培地としては、15% ES用牛胎児血清(Giboco)、2mM L−グルタミン(Gibco)、MEM non−essential amino acid(Sigma)、1mMピルビン酸ナトリウム(Giboco)、0.0007% β−メルカプトエタノール(Sigma)、1000U/ml Leukemia inhibiting factor(Chemicon)、100U/mlペニシリン(Sigma)、100μg/mlストレプトマイシン(Sigma)を含むD−MEM(高グルコース,Giboco)を用い、COインキュベーター(5% CO、100%湿度)で37℃で培養し、培地交換は毎日行った。
継代培養は、ES細胞を播種してから72時間後に行った。ゼラチンコートした培養皿に、MMC処理したフィーダー細胞(マウス胎児繊維芽細胞)を24時間前に播種しておき、この上に0.05%トリプシン−0.02% EDTA処理によって完全に解離したES細胞を播種し、コロニーを形成させた(第1図参照)。ES細胞を播種してから3日間培養してコロニーを形成させ、このコロニーをピペッティングによって単離した後、細胞接着性の非常に弱いバクテリア用培養皿に播種した。培地としては15% Knockout SR(KSR,Giboco),100U/mlペニシリン,100μg/mlストレプトマイシンを含むD−MEM(高グルコース)を用いた。この状態でさらに3日間培養することにより胚様体を作成した(第2図)。
この胚様体を0.1%のゼラチンコートした24ウェルプレート(TPP社製)に4〜6個づづ播種し、RXRリガンドとして1×10−5MのPA024(2−[N−シクロプロピルメチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)アミノ]ピリミジン−5−カルボン酸)を添加して2日間培養した。処理開始時を0時間として48〜72時間後に自律的に拍動する心筋様細胞の細胞塊が形成された(第3図)。この細胞塊の出現頻度は、0.2細胞塊/胚様体であり、未処理群又は1×10−5Mオールトランスレチノイン酸で処理した対照群では、処理後2週間以内ではほとんど心筋様細胞の分化は認められないため、有意にPA024が作用していると考えられた。一方、2×10−6MのPA024で処理した胚様体では、出現時期は遅れるものの心筋様細胞塊の出現頻度が高く、72〜96時間で0.5細胞塊/胚様体の形成が認められた。これらの細胞塊は、骨格筋様細胞のように繊維状構造を取らず、細胞塊を形成して自立的拍動を続けた。
例2:RXRリガンドを用いた平滑筋及び脂肪細胞の形成
例1と同様にして1×10−5〜2×10−6MのPA024で処理後、培養をさらに続けると約1〜2週間で平滑筋様細胞が形成された。この細胞塊は、ゆっくりとしたぜん動運動を示した。頻度は0.1〜0.2細胞塊/胚様体であった(第4図)。また、2週間程度で脂肪細胞が出現し始め、20日間培養し続けると全体の30〜40%程度が脂肪細胞となった。胚様体あたりの数値に換算するとほぼ100%であった。対照群(1×10−5Mのオールトランスレチノイン酸処理)と比較してPA024処理群では形成された脂肪細胞の量は2〜3倍多かった(第5図)。
例3:RARリガンドであるAm80とアクチビンとの組み合わせによる膵臓の形成
0.1%ゼラチンで一晩コートした培養用10cmディッシュ(TPP)に、マイトマイシン−C処理(10μg/ml、3hr)して細胞分裂を阻害したマウス胚繊維芽細胞(primary mouse embryonic fibroblast、PMEF)を播種し,1日以上培養してフィーダーレイヤーとして用いた。マウスES細胞として広く用いられているES−E14TG2a(ATCC #CRL−1821)をフィーダーレイヤー上に播種し、培養を行った。ES細胞用培地は、15%牛胎児血清(FBS、Gibco)、非必須アミノ酸、0.007% β−メルカプトエタノール、1000U/ml Leukemia inhibiting factor(Chemicon)、100U/mlペニシリン、及び0.1mg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(高グルコース、Gibco)中で行った。培地交換は毎日行なった。
上記のES細胞を播種して72時間後にコロニーからEBを形成した。ES細胞のコロニーをDulbeccoのPBSで1回洗った後、1mg/mlコラーゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche)を10cmディッシュ1枚あたり1mlずつ加え、室温で30〜40秒処理した。約50%のコロニーが溶液中に浮き上がってきたところでEmbryoid medium(EM)、15% Knockout Serum Replacement(KSR、Gibco)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(高グルコース)を10cmの培養用ディッシュ1枚あたり13ml加えてコロニーを回収した。ES細胞のコロニーに物理的ダメージを与えないようにしながらメディウムごと15mlチューブに集め、約5分静置した。コロニーが沈殿したところで培地を除き、EMに再懸濁した。このESコロニーを低接着性の培養10cmディッシュ(CorningまたはNunc)に播種して浮遊系で培養を続けた。培地交換は2日に1回行い、4日目に胚葉体(EB)として実験に用いた。
EBs形成開始から96時間後に実体顕微鏡で観察しながら直径500μm前後のEBsを低接着性の24ウェルプレート(CorningまたはNunc)に100μlの培地と共に1ウェルあたり1個づつ移した。その後で900μlのアクチビン/Am80(4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸)を含む分化誘導培地:15% KSR,10ng/mlアクチビン、0.1μM Am80、0.1% BSA、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(高グルコース)を加えて48時間培養を続けた。
分化誘導培地で48時間EB処理した後(EBs形成6日後)、実体顕微鏡で観察しながらEBsを0.1%ゼラチンで一晩コートした24ウェル組織培養プレート(TPP)に移し、10% KSR、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(高グルコース)中で3日に一度、培地交換をして培養を続けた。
培養12日目(EB形成開始からの日数)から16日目に腸管様構造が誘導形成され、この誘導形成はアクチビン/Am80処理したEBのうち60〜70%の割合で認められた。培養21日前後になると、その腸様構造が認められたEBのうち約60%に膵臓組織特異的構造や特異的に分化した細胞が形成された。この膵臓組織では、膵臓導管構造の形成と共に、アミラーゼ分泌顆粒を含む多くの外分泌細胞やインスリンやグルカゴンを産性する内分泌細胞の形態が認められた。胚葉体から分化誘導された膵臓導管や内分泌・外分泌細胞を含む膵臓組織の写真を第6図に示す。第7図は誘導された膵臓の外分泌細胞を示した写真であり、第8図は誘導された膵臓のβ細胞(内分泌細胞)を示した写真である。また抗インスリン抗体や抗アミラーゼ抗体陽性であり、RT−PCR法による解析では培養10日目から14日目にはPDX−1やPAX−4、NGN−3などの膵臓特異的転写因子の発現が持続して観察された。
【産業上の利用可能性】
本発明の方法により、脊椎動物の未分化細胞から所望の器官、例えば心臓や神経、あるいは膵臓などの器官を形成する手段が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の未分化細胞から器官及び/又は組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸X受容体リガンドの存在下で培養する工程を含む方法。
【請求項2】
レチノイン酸X受容体リガンドがレチノイン酸X受容体のアゴニスト又はアンタゴニストである請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項3】
レチノイン酸X受容体リガンドが下記の群:
4−[5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−メチルジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル]安息香酸、4−[2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサ)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル]安息香酸、4−[2,3−(2,5−ジメチ−2,5−ヘキサノ)ジベンゾ[b,e]アゼピン−11−イル]安息香酸、4−[1,3−ジヒドロ−7,8−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−1−メチル−2−オキソ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−5−イル]安息香酸、(Z)−5−[4−[N−メチル−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)カルボキサミド]ベンジリデン]−2,4−チアゾリジンジオン、(Z)−5−[4−[N−メチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)アミノ]ベンジリデン]−2,4−チアゾリジンジオン、4−[N−シクロプロピルメチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)アミノ]安息香酸、2−[N−シクロプロピルメチル−N−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)アミノ]ピリミジン−5−カルボン酸、4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−1,3−ジオキソラン−1−イル]安息香酸、4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)エテン−1−イル]安息香酸、6−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチルナフタレン−2−イル)シクロプロプ−1−イル]ピリジン−3−カルボン酸、4−(5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−メチル−8−ニトロジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル)安息香酸、4−[5H−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5−n−プロピルジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル]安息香酸、4−(5H−10,11−ジヒドロ−2,3−(2,5−ジメチル−2,5−ヘキサノ)−5,10−ジメチル−8−フェニル−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン−11−イル)安息香酸、2−[N−(3−n−ヘキシルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−N−メチルアミノ]ピリミジン−5−カルボン酸、5−[4−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−yl)フェニル]トロポロン、(2E,4E,6Z)−3−メチル−7−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−3−n−プロピルオキシナフタレン−2−イル)オクタ−2,4,6−トリエン酸(LG100754)、及び4−[N−[3−(2−エチル−o−カルボラン−1−イル)フェニル]−N−メチルアミノ]安息香酸からなる群から選ばれる請求の範囲第2項に記載の方法。
【請求項4】
形成される器官及び/又は組織が心臓、平滑筋組織、又は脂肪細胞組織である請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求の範囲第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の方法により形成された器官及び/又は組織。
【請求項6】
脊椎動物の未分化細胞から器官及び/又は組織をインビトロで形成するための分化誘導剤であって、レチノイン酸X受容体リガンドを含む分化誘導剤。
【請求項7】
脊椎動物の未分化細胞から膵臓をインビトロで形成する方法、又は脊椎動物の未分化細胞から膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成する方法であって、脊椎動物の未分化細胞をレチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンド及びアクチビンの存在下で培養する工程を含む方法。
【請求項8】
レチノイン酸受容体リガンドが4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸である請求の範囲第7項に記載の方法。
【請求項9】
脊椎動物の未分化細胞から膵臓をインビトロで形成するための、又は脊椎動物の未分化細胞から膵臓の形態及び機能を有する組織をインビトロで形成するための分化誘導剤であって、レチノイン酸受容体サブタイプγに実質的に結合しないレチノイン酸受容体リガンドを含む分化誘導剤。

【国際公開番号】WO2004/083413
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503722(P2005−503722)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003578
【国際出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【出願人】(591063648)財団法人乙卯研究所 (4)
【Fターム(参考)】