噴射ノズル装置
【課題】粒子がノズル内壁に付着せず、しかもガス流速によって得られる微粒化効果および粒子の加速効果を有効に活用することができる噴射ノズル装置を提供する。
【解決手段】ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を備えてなることを特徴とする。
【解決手段】ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を備えてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを衝突させることによって微粒化した粒子を、冷却または溶融状態で成膜対象に衝突させ皮膜を形成するのに好適である噴射ノズル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスを用いて金属材を微粒化する主な技術として、(1) 微粉製造、(2) スプレーフォーミング、(3) 溶射が知られており、これらの溶射技術には各種構造からなる噴射ノズルが使用されている。
【0003】
(1) 微粉製造
粉末冶金に利用される微粉製造は、容器から注がれる溶湯流に対し、円周上に配置された複数のノズルからその溶湯流に向けてジェットガスを衝突させ、金属材を微粒化する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、上記複数のノズルに代えて円錐状のラバルノズルを配置し、そのラバルノズルでガスを加速させ、高速に加速されたガス中に金属材等を溶融状態で導入することにより、微粒化する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
上記ラバルノズルの長さは短いものを使用しているため、ノズル内壁に微粒化された粒子が付着することは少ないが、ノズルの長さが短いと高速気流となっているノズル内を溶湯や微粒子が通過する時間が極めて短いため、ガス流速によって引き出すことのできる本来の微粒化効果を十分に活用することはできない。
【0006】
(2) スプレーフォーミング
プリフォームを製造するスプレーフォーミングにおいても上記微粉製造と同様な構成の微粒化装置(アトマイザー)が使用されている。
【0007】
この種の微粒化装置においても、ノズル孔から放出されて減速してしまったガスを溶湯に衝突させるものはガス流によって粒子を十分加速させることができず、その結果として得られた堆積物の密度は低くなり、材料は多孔質になりがちである。
【0008】
例えば、特許文献3に記載のスプレー形成方法では、金属材が噴霧前に凝固しないように、ノズル温度を十分高い温度に維持するための加熱エレメントがノズル周囲に設けられている。
【0009】
この微粒化装置によればノズル内壁に金属粒子が付着することを防止できる。ところが、ノズル内壁を構成している材料と、ノズルに供給した金属材とが濡れ性のよい場合には、金属粒子がノズル内壁に膜状に付着し、ノズル中央を流れるガスに引っ張られてゆっくりとノズル出口側に押し出されるため、ノズル中央を飛行する微粒子と比べると非常に大きな粒径のままノズル出口から吐き出されることになる。その結果、成膜の品質が悪化したり、堆積物の品質が低下する。
【0010】
さらに、ノズル内壁と接触した後に吐き出された金属粒子は、ノズル壁材料の成分が混入しているため、微粒化した金属粒子を汚染する可能性もある。
【0011】
(3) 溶射
上記スプレーフォーミングが大容量の溶湯を供給して塊の堆積物や成型体を得るのに対し、溶射は同様の原理によって少量の材料を供給し皮膜を形成するコーティング技術であり、溶射の方式としては電気を熱源とするアーク溶射や燃焼ガスを熱源とするフレーム溶射等がある。
【0012】
(3-1) ノズル内で金属材を溶融させるもの
アーク溶射は、金属材を2本のワイヤの形態で供給し、それぞれのワイヤを陽極と陰極として電荷を付加し、両ワイヤ間でアークを発生させ金属材を溶融する(例えば特許文献4参照)。
【0013】
この特許文献4に記載の溶射ノズル装置では、ノズルに粒子が付着することを予め考慮してノズル壁の温度を金属材の融点以上まで加熱している。
【0014】
この溶射ノズル装置を含め、多くのアーク溶射では、金属粒子の加速性能を犠牲にしてノズル内壁に溶融状態の粒子が付着しない方法を選択している。
【0015】
また、特許文献5に記載のアーク溶射装置は、図28に示すように、霧化部の下流において高速の噴霧流を促進するように構成されている。
【0016】
詳しくは、線材ガイド110,110を通した線材111,111を、ノズル中心軸上で互いに接触させるようにし、その中心軸と同軸に、先細のテーパ区画112aと先広がりのテーパ区画112bが連通するガスキャップ112を設け、テーパ区画112aにガスを通過させることにより溶融金属噴霧用の一次ガス流G1を発生させ、テーパ区画112bに設けられた複数のオリフィス112cから二次ガス流G2を発生させている。
【0017】
二次ガス流G2は互いに内側に向けられており、溶融金属の霧化を妨害しないように、線材111の接触点から下流側に十分に間隔を置いた位置で合流するようにし、それにより、一次ガス流G1が二次ガス流G2によって狭められ、かつ加速されるようになっている。
【0018】
上記アーク溶射装置のノズル構造は粒子速度を高めることを意図しているが、ガスキャップ112のテーパ区画112bにおける半頂角(ノズル中心軸とノズル内壁がなす角度)が極めて大きくしかも長さが短いため、ガスキャップ112内で流れの剥離が生じ、超音速のガス流を形成することは困難である。
【0019】
(3-2) ノズル外で金属材を溶融させるもの
ノズルを使用することによって溶射面に向けて高速フレームを形成するとともに、その高速フレーム(燃焼炎)の途中に溶射材を投入する溶射装置(例えば特許文献6参照)が知られている。
【0020】
また、同じく高速フレームによる溶射ガンバレルにガスシュラウドを付加し、そのガスシュラウドにおいて円周状に形成されたスリットより不活性ガスをシュラウド内に供給し、ガンバレルより溶射される金属粒子の速度を加速させ、大気から遮断した状態で基材表面に金属粒子を衝突させるものもある(例えば特許文献7参照)。
【0021】
金属粒子の加速が得られた理由は、ガスシュラウドが存在することによってノズルの長さが延長され粒子の加速距離が増加したことと、高温のフレームに対して周囲から不活性ガスが供給されことと考えられる。超音速で流れている気流は加熱されると減速し、冷却されると加速する性質を持っているからである。
【0022】
また、不活性ガスを供給するスリットの傾斜面は、シュラウド筒部の中心軸への直交線に対して70°以内に傾斜させることが好ましいとある。70°を超えると、シュラウド中央を流れるフレームに対し不活性ガスを混合させることが難しくなるからと思われる。
【0023】
(3-3) 3次元の造形
微粒化した溶融金属を標的に向けて噴射し凝固させることにより3次元の造形を行う方法である。
【0024】
金属材を線材にし、この線材の端部を放電によって溶融させ、形成された溶融球をガス流で飛翔させるが、ガスで噴射された溶融金属がノズル内壁に付着することを避けるため、ノズルの外部で線材を溶解させている(例えば特許文献8参照)。
【0025】
この造形方法では、ノズルから噴射し拡散するガスによって溶融金属が吹き飛ばされるため、基材に対する溶融金属滴の命中精度が低いという問題がある。
【0026】
仮に、溶融金属の粒子を長いノズル内で飛行させ、直進性を保った状態でノズルから噴射することができれば、命中精度を格段向上させることが期待できるが、このようなノズルは実現されていない。
【0027】
(3-4) コールドスプレー
材料を溶融またはガス化させることなくガスとともに超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて皮膜を形成する方法である(例えば特許文献9参照)。超音速で衝突した材料は粒子自体が塑性変形することによって皮膜となるため、他の溶射方法とは異なり、熱による材料の特性変化や酸化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特公昭62−24481号公報
【特許文献2】特開昭62−110738号公報
【特許文献3】特表2004−503385号公報
【特許文献4】特開2006−175426号公報
【特許文献5】特開平11−279743号公報
【特許文献6】特開2001−181817号公報
【特許文献7】特開2003−183805号公報
【特許文献8】特開2000−248353号公報
【特許文献9】特開2006−52449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
上記微粉製造、スプレーフォーミング、溶射に使用されている従来の噴射ノズルのいずれについても、粒子がノズル内壁に付着するという問題は解消されていない。また、長さの短いノズルを使用して、あるいはノズル外部で金属材を微粒化する方法では、ガス流速によって引き出すことのできる本来の微粒化効果を十分に活用することができないという問題がある。
【0030】
本発明は以上のような従来の噴射ノズルにおける課題を考慮してなされたものであり、粒子がノズル内壁に付着せず、しかもガス流速によって得られる微粒化効果および粒子の加速効果を有効に活用することができる噴射ノズル装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、
上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、その噴射口が上記ノズル孔の筒軸方向に複数段備えられ、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を構成してなることを要旨とする。
【0032】
上記筒状のシールドガスの流れを形成するとは、実質的に筒状の流れが形成されるものであればよく、例えば環状の噴射口からシールドガスを噴射することによって筒状の流れを形成してもよく、または、円周上に配置された多数の複数口からシールドガスを噴射することによって筒状に形成するものであってもよい。
【0033】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が連続的または段階的に拡大する末広ノズルに形成することができる。
【0034】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルは、複数のリング状部品をリング中心軸方向に連結した集合体から構成することができる。
【0035】
上記噴射ノズル装置のノズルを、上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルで形成した場合、連結されたリング状部品における各隣り合った内壁の段差部分に、上記シールドガス噴射口としてのスリットを環状に形成することができる。
【0036】
上記噴射ノズル装置において、上記スリット上流側のシールドガス供給路に、シールドガスの流速を上記高速ガス流の流速に揃えるためのシールドガス用スロート部を形成すれば、例えばラバルノズル等のガスを高速に加速するタイプの噴射ノズル装置についても、導入したシールドガスによって上記高速ガス流を促進させることができる。
【0037】
上記噴射ノズル装置において、上記リング状部品の下流側内周縁部に、上記シールドガスの流れを上記ノズルの中心軸と略平行に且つ下流側に向けて揃えるためのガス流偏向部を設けることができる。
【0038】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルのスロート部近傍に、溶射材料をワイヤの形態で供給する一対のワイヤガイドを配設し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成することができる。
【0039】
上記噴射ノズル装置において、上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このセラミックスに、溶射材料としてのワイヤを供給する一対のワイヤガイドを挿通し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成することができる。
【0040】
上記噴射ノズル装置において、上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このリング状部品に、ワイヤガイドから上記スロート部を通して供給されたワイヤとの間でアーク溶解を行うための固定電極を配設することができる。
【0041】
上記噴射ノズル装置において、上記スロート部を通して、上記ノズル中心軸上に溶湯を供給する溶湯ノズルを設けることができる。
【0042】
上記噴射ノズル装置において、上記リング状部品を貫通して設けられた溶湯ノズルから上記ノズル内の高速ガス流に対して交差する方向から溶湯を供給するように構成することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の噴射ノズル装置によれば、粒子がノズル内壁に付着せず、しかもガス流速によって得られる微粒化効果および粒子加速効果を有効に活用することができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明に係る加速ノズルの原理を示す正面断面図、(b)はそのB部拡大図である。
【図2】図1のリング状部品の下流側側面を示す斜視図である。
【図3】本発明の加速ノズルによって得られる粒子速度分布を示すグラフである。
【図4】本発明の加速ノズルによるガス流れを示す説明図である。
【図5】本発明に係る加速ノズルの流速調整方法を示す説明図である。
【図6】ノズル内の主流ガスとシールドガスの速度ベクトルを示した説明図である。
【図7】本発明の加速ノズルの第二実施形態を示した原理図である。
【図8】本発明の加速ノズルの第三実施形態を示した原理図である。
【図9】図8に示す加速ノズルの変形例を示した原理図である。
【図10】図8に示す加速ノズルの別の変形例を示した原理図である。
【図11】本発明の加速ノズルの第四実施形態を示した原理図である。
【図12】本発明の加速ノズルの第五実施形態を示した原理図である。
【図13】本発明の加速ノズルの第六実施形態を示した原理図である。
【図14】(a)は亜鉛用噴射ノズル装置の構成を示す平面断面図、(b)はその正面断面図である。
【図15】(a)は図11に示した基端側リング状部品の構成を示す正面断面図、(b)はその右側面図、(c)は同図(b)のE−E矢視断面図である。
【図16】(a)は連結されるリング状部品の正面断面図、(b)はその右側面図である。
【図17】(a)はノズル先端のリング状部品の正面断面図、(b)はその右側面図である。
【図18】(a)はチタン用噴射ノズル装置の構成を示す平面断面図、(b)はその正面断面図である。
【図19】(a)は溶射性能を密度で比較したグラフ、(b)は溶射性能を歩留まりで比較したグラフである。
【図20】本発明によって形成された溶射皮膜の成分を分析したグラフである。
【図21】本発明の加速ノズルをコールドスプレーに適用した場合の構成を原理図で示した断面図である。
【図22】本発明の加速ノズルを高速フレーム溶射に適用した場合の構成を原理図で示した断面図である。
【図23】本発明の加速ノズルを微粒化装置に適用した場合の構成を示す断面図である。
【図24】微粒化装置における粒子速度を測定する水実験モデルの構成図である。
【図25】水実験モデルによる、スプレー方向と直交する方向の粒子速度分布を示すグラフである。
【図26】水実験モデルによる、スプレー方向の粒子速度分布および粒子径の変化を示すグラフである。
【図27】加速ノズルを角筒状にした場合の構成を示す斜視図である。
【図28】従来の噴射ノズル装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
1 加速ノズルの原理
図1は本発明の噴射ノズル装置に用いる加速ノズルの原理を示したものであり、同図(a)は正面断面図を示し、同図(b)は図1(a)のB部拡大図である。
【0046】
両図において、加速ノズル1は、ノズル2の入口側3にキャリアガスを導入するようになっている。
【0047】
導入されたキャリアガスは、内径が絞られたスロート部4を通過することによって高速ガス流(以下、主流ガスGsと呼ぶ)を形成し、その主流ガスGs流によって固体もしくは液体の粒子を微粒化し、その微粒化した粒子をノズル2の出口側5から噴射するようになっている。
【0048】
また、上記ノズル2は、主流ガスGsを流すための貫通孔を備えた複数のリング状部品2a〜2jを、ノズル中心軸方向に連結することによって構成されている。
【0049】
詳しくは、主流ガスGsの流れ(A方向)において最も上流側に、例えばベースとなるセラミックス製リング状部品2aが配置され、最も下流側にノズルエンドとなるSUS製リング状部品2jが配置され、それらのリング状部品2aおよび2jの間に連結用のSUS製リング状部品2b〜2iが多段に配置されている。
【0050】
また、6は各リング状部品2a〜2iを貫通して穿設されたシールドガス供給路(ガス供給路)であり、このシールドガス供給路6は、リング状部品2a〜2jの連結部分に間隙部分として設けられた環状通路(ガス通路)6aと連通し、各環状通路6aはさらにノズル内壁円周位置に形成された環状のスリット(噴射口)Tと連通している。このスリットTは、図1(b)に示すように、連結された上流側リング状部品2aと下流側リング状部品2bの内壁段差部分に環状に開口しており、図1(a)に示すように、ノズル孔の筒軸方向に複数段設けられている。
【0051】
それにより、シールドガス供給路6に導入されたシールドガスSGsは、環状通路6aで合流し、その環状通路6aを通じて各段の噴射口としてのスリットTに個別に供給され、スリットT全体から筒状となってノズル2内に噴射されるようになっている。
【0052】
上記シールドガス供給路6およびスリットTは、シールドガス供給部として機能する。
【0053】
次に、上記構成を有する加速ノズル1の動作について溶射を例に取り説明する。
【0054】
リング状部品2aには、溶射材料としてのワイヤをノズル2内に供給するワイヤガイド(後述する)が一対挿通されており、各ワイヤガイドから突出した2本のワイヤは、スロート部4の出口側近傍で互いに接触するようになっている。
【0055】
加速ノズル1は、ノズル2内を流れる主流ガスGsと略同じ流速でフレッシュなガスを各リング状部品2a〜2iからノズル2内に順次送り込むことによりノズル2内壁を覆う新気(シールドガスSGs)の膜を形成し、それにより、ノズル2内壁に金属粒子が付着する機会を大幅に減少させている。
【0056】
また、シールドガスSGsは、理想的にはノズル中心軸と平行に噴射させることが好ましく、さらに、ノズル内壁2k全周にわたって一様に供給することが好ましい。
【0057】
したがって、円形断面を有するノズル2では、全周にわたって同一幅で構成された環状のスリットからシールドガスSGsを供給することにより、シールドガスSGsを筒状の流れに形成し、ノズル2内に供給することが理想となる。
【0058】
このシールドガスSGsをノズル中心軸と平行に供給するには、助走区間として、ガス流偏向部7が必要になる。
【0059】
詳しくは、上流側のリング状部品2aと下流側のリング状部品2bの間にシールドガスSGs供給用の環状通路6aが形成されている。
【0060】
ガス流偏向部7は、リング状部品2aにおける下流側内周縁が顎状に突出形成されたものであり、リング状部品2bにおける上流側端面8を超えてさらに下流側に延設されている(図中、突出し長さN参照)。それにより、上記環状通路6aと連通するスリットTが環状に形成されている。このような環状通路6aと環状スリットTが、リング状部品2a〜2iのそれぞれに形成されている。
【0061】
1-1 加速ノズルの構成
図2はリング状部品2aの下流側側面を示した斜視図である。
【0062】
リング状部品2aの中心部に設けられた貫通孔の周縁にガス流偏向部7が筒状に形成され、その裾部に環状通路6aが凹設されている。この環状通路6aには、シールドガス供給路6が円周上に等間隔に(本実施形態では8個)形成されている。
【0063】
すなわち、シールドガス供給路6から供給されるシールドガスSGsは、環状通路6aに流れて合流し、ガス流偏向部7によってガス流の向きがノズル中心軸方向に変更されるとともに筒状の流れに形成され、ノズル2内に供給されるようになっている。なお、図中9はスタックボルト孔である。
【0064】
図1に戻って説明する。
【0065】
各リング状部品2a〜2jにおいて、上流側のリング状部品に対し下流側のリング状部品のノズル孔径は大きく形成されており、その孔径の違いによって生じる段差を利用して上記スリットTを確保している。また、下流側に向けてノズル孔径を段階的に拡径していることにより、同時に、溶融状態の粒子が多く飛行するノズル中心軸付近からノズル内壁を遠ざけることを可能にしている。
【0066】
ノズル中心軸に溶融金属を導入するか、若しくはノズル中心軸上にワイヤの形態で供給された金属材をアーク溶解した場合、通常、ノズル中心軸上での粒子濃度が最も高く、周辺(径方向)に至るほど粒子濃度は減少するガウス分布に従うと言われている。
【0067】
したがって、ノズル内壁をノズル中心軸から遠ざけると、粒子がノズル内壁2kに接触する確率を減少させることができる。
【0068】
また、ノズル中心軸上から供給された粒子は、上記したようにノズル下流側に飛行する間にノズル径方向に広がっていくが、この広がりはノズル内の流れの乱れによって影響される。
【0069】
ノズル2内の流れは、速度勾配(空間上で速度が変化する割合)が大きいほど大きな乱れとなって現れるため、ノズル2内のガス流速は極力一様であることが好ましい。
【0070】
本発明の加速ノズル1は、シールドガスの速度を主流ガスのそれと一致させるという大きな課題を克服し、上記ノズル2内に一様なガス流れを形成することに成功している。
【0071】
以下、詳しく説明する。
【0072】
(a)ノズルが、ノズル内流れのマッハ数が1未満の亜音速で作動するノズルの場合
スリットTを通過するシールドガスの流速uはスリット前側の圧力p1とスリット後側の圧力p2より、ガスの密度ρを用いて
【0073】
【数1】
で表される。
【0074】
ノズル内圧力はスリット後側の圧力と等しく、p2であるから、最も上流側のスリットTを含めてリング状部品2a〜2jのすべてのスリット前側圧力をp1にすればよい。
【0075】
これを実現するために、全てのスリットTに個別のシールドガス供給路を用意し、圧力をすべて所定値となるように調整することもできるが、より簡単にこれを実現する方法としては、一カ所のガス貯留タンク(通常ヘッダーと呼ばれる)から分岐させて各スリットTにシールドガスSGsを供給する方法を採用することができる。
【0076】
図1に示した加速ノズル1は上記ヘッダーからの分配方式を採用しており、各リング状部品2a〜2jのスリットTに対して同一圧力p1のシールドガスを供給している。
【0077】
(b)ノズルが、ノズル内流れのマッハ数が1以上の超音速で作動するノズルの場合
超音速ノズルを使用する場合、ラバルノズルのように拡大部を有するノズル形状を通過させなければ、主流ガスGsと同一の流速でシールドガスSGsをノズル2内に供給することができない。
【0078】
図1(b)ではそのための構成として、スリットT出口の開口幅C>スリット最狭部2mの開口幅Dとなるように、下流側リング状部品2bの内周縁に曲面が加工されている。
【0079】
スリット最狭部(シールドガス用スロート部)2mは、最終的にはノズル内壁と連絡するのに対し、スリット最狭部2mと対向しているガス流偏向部7は直線的な平面に形成されている。このように、直線部分と円弧部分がある隙間を持って流路を形成することにより、シールドガスSGs噴射用のスリットTは、中間に最狭部スロートを有し下流側にいくほど開口幅が広がるラバルノズルを構成していることになる。
【0080】
なお、スリットTをラバルノズル構造とするにあたっては、必ずしも、上記したように直線部分と円弧部分の組み合わせに限定されるものではなく、例えば円弧と円弧の組み合わせであってもよい。
【0081】
1-2 粒子速度分布
図3は上記加速ノズル1によって得られる粒子速度分布を示したグラフである。
【0082】
同図において、横軸のゼロはノズル2の中心を示し、+値および−値はそのノズル中心からの相反する方向のX方向距離およびY方向距離を示し、縦軸は粒子速度を示している。
【0083】
ノズル2の出口径はφ15mmであり、従って、横軸における+7.5mm〜−7.5mmの範囲がノズル領域内を示していることになる。
【0084】
また、同グラフの測定結果は、アーク溶解機構を備えたノズル(図7参照)を用いて亜鉛の溶射を行ったものであり、溶射条件は以下の通りである。
【0085】
窒素ガスのガス圧力は1.3MPa,ガス流量は0.17kg/s,ガスマッハ数は1.8であり、亜鉛の供給量は1.7×10−4kg/sである。
【0086】
レーザー位相ドップラー流速計によって計測した結果、ノズル出口における平均速度は420m/s程度であった。また、ノズル出口径φ15mmに対して、粒子が存在していた部位はφ12mm(+6〜−6mm)の範囲内であり、粒子速度はほぼ一定であった。
【0087】
また、堆積物のミクロ観察写真を分析すると、基材に衝突した粒子径はφ10〜30μmであった。
【0088】
また、堆積物厚さ方向のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)ライン分析を行ったところ、リング状部品の主成分であるFeが所々で検出されている。これはリング状部品の内壁面と衝突した粒子のあることを意味しているが、その濃度は極めて僅かであり、しかも散発的にしか発生していないことから、ノズル2を溶融金属から保護するシールドガスSGsが機能していたことがわかる。
【0089】
また、キャリアガスが亜鉛と反応して窒化した可能性を確認すべく窒素の存在を調査したが窒素は全く検出されなかった。このことは窒化する間もなく急速に亜鉛粒子が冷却されたためと考えられる。
【0090】
また、酸素が検出されたが、これはワイヤの酸化皮膜による持ち込みである可能性が高い。
【0091】
1-3 ノズル長さの調節
なお、一つのスリットTからノズル2内にシールドガスSGsを供給しても、ある距離についてガスと粒子が移動すると、やがてはノズル2内に少なからず存在する乱れによって粒子がノズル内壁2k近くまで拡散してしまう。
【0092】
そこで、本実施形態の加速ノズル1では、複数のリング状部品2a〜2jを連結することによってノズル2を構成するとともに、リング状部品の各連結部分に形成されたスリットTからそれぞれシールドガスSGsを、ノズル中心軸と略平行な方向でノズル2内に供給しており、シールドガスSGsの供給動作を、粒子の加速に必要な長さまで繰り返し行っている。
【0093】
また、ノズル2内にシールドガスSGsを供給する間隔は、リング状部品2a〜2iの厚みによって決定されるが、通常は5〜20mmの範囲内で選択することができる。
【0094】
リング状部品2a〜2iについて必要な厚さを事前に予測することは困難なため、各種厚みのリング状部品を用意して微粒化を行い、試行錯誤によってリング状部品の厚さを決定する。
【0095】
例えば、ノズル内壁に粒子の付着が見られた場合には厚みの薄いリング状部品に交換し、粒子の付着がない場合にはリング状部品の厚さを増すといった厚み調整を行う。
【0096】
また、粒子の加速に必要なノズル長さは、金属材料によって、また、金属材料の供給方法(溶解炉から融点以上の十分高い温度で材料を供給するか、材料をワイヤの形態で供給し、アーク溶解させるか)によって、或いはまた、ノズル内ガス流速によって異なるため、リング状部品の連結枚数を変更することによってノズル長さを調節している。
【0097】
すわなち、ノズル2を長くすると、粒子の速度は増加するが、粒子の温度はガスによって冷却され低下する。
【0098】
溶射では付着する歩留まりと気孔率、スプレーフォーミングと3次元造形では堆積する歩留まりと密度に関係するため、ノズル長さは重要なパラメータである。
【0099】
本実施形態ではそのノズル長さを、リング状部品の連結枚数を変えるという簡単な方法で調整できるようにしているため、ノズル2全体を製作し直すことなくノズル長さを変更することが可能になっている。
【0100】
また、微粒化作業の後には必ず、ノズル2の分解清掃が必要になるが、本実施形態のリング状部品2a〜2jはどの部位にも指が届くように構成されているため、メンテナンスが簡便に行え、メンテナンスに要する時間を大幅に短縮することが可能になっている。
【0101】
1-4 シールドガスの供給方法
次に、主流ガスGsの流速にシールドガスSGsの流速を一致させてそのシールドガスSGsをノズル2内に供給する方法について説明する。
【0102】
亜音速の流れについても超音速の流れについても、流速を音速で割って無次元化したマッハ数によってガス流れの速度を表すことができるため、ここではマッハ数Mを用いて流速を説明する。
【0103】
図1に示したスロート部4を経てノズル2内に噴射される主流ガスGsも、各スリットTを経てノズル2内に噴射されたシールドガスSGsも、ノズル2内で圧力(静圧)が釣り合う状態になるまで膨張する。なお、超音速流れの場合には圧力波がノズル2内で複雑に反射することになるが、この影響は無視する。
【0104】
もし、スロート部4からの主流ガスGsも各スリットTからのシールドガスSGsも同じ全圧(淀み点圧力)と全温を持つのであれば、両ガスの流速が一致する条件は、マッハ数Mが一致することである。この時、同時にスロート部4からの流れも各スリットTからの流れも同一の圧力(静圧)を持つことになり、ノズル2内で釣り合った状態とすることができる。
【0105】
これを最も簡単に実現する方法として、図1に示したように、同一箇所の亜音速部(スロート部4の上流側)よりガスを取り出すことにより、主流ガスGsおよびシールドガスSGsを含むすべてのガスの全圧と全温を等しくすることができる。
【0106】
具体的には、リング状部品2aのスロート部4上流側から各リング状部品2a〜2iを貫通するようにしてシールドガス供給路6を穿設することによってシールドガスSGsを分岐すればよい。
【0107】
図4はノズル内ガス流れをモデル化したものである。
【0108】
なお、説明を簡単にするため、リング状部品の連結数を6段とし、スリットT1〜T5とする。
【0109】
同図に示すように、スロート部4からのガス流れG0、およびスリットT1〜T5からのガス流れG1〜G5がそれぞれ同一のマッハ数になって噴出しているとし、さらにそのままマッハ数が変わらずにノズル2内を平行に流れ、ノズル2内に円筒状のガス流れを形成すると考える。
【0110】
実際にはノズル2内の乱れによってガスは拡散しようとするが、G0〜G5間で圧力が平衡状態になっているならば各スリットT1〜T5からの噴射されるガスは膨張することも、また、収縮することもないため、各スリットから噴射されるガスが占有する断面積が変わらず、ノズルの断面積を決めるためには妥当な仮定である。
【0111】
通常、マッハ数を一定に維持するためのノズルは、G0で表されるほぼ直管からなる長いノズルであるのに対し、本発明の加速ノズルでは、シールドガスSGsをG1〜G5で示されるように段階的に噴射するように構成しているため、ノズル内壁面をノズル中心軸から段階的に遠ざけることが可能であり、粒子の付着を防止する上で有効である。
【0112】
次に、スロート部4および各スリットT1〜T5から同一のマッハ数でガスを噴射させるための条件について図5を参照しながら説明する。
【0113】
スロート最狭部の面積をA0*、スロート出口の面積をA0とすると、スロート出口でのマッハ数M0は、式(2)で表される。
【0114】
【数2】
ただし、κは比熱比である。
【0115】
同様に、スリット最狭部2mの面積をAi*、スリット出口での面積をAiとすると、
スリット出口でのマッハ数Miは、式(3)で表される。
【0116】
【数3】
ここで、i=1,2,3……。
【0117】
スロート部4およびスリットT1,T2,T3……の出口におけるマッハ数が等しいためには、
【0118】
【数4】
が成り立つ必要があり、すなわち、最狭部と出口における面積比がスロート部4および各スリットT1〜T5について等しくすればよい。
【0119】
それにより、主流ガスGsの流速とシールドガスSGsの流速を一致させることができる。
【0120】
図6は、主流ガスGsと、リング状部品2aとリング状部品2bの連結部分に形成されたスリットTから噴射されたシールドガスSGsの速度ベクトルを代表的に示したものである。
【0121】
同図に示されるように、シールドガスSGsは主流ガスGsと平行に流れ、流速が略一致していることがわかる。
【0122】
2 加速ノズルの種類
図7〜図12は本発明に係る加速ノズルの他の実施形態を示す原理図である。
【0123】
まず、図7に示す加速ノズル20は、最上流側に配置されたリング状部品21aに形成されているスロート部21d上流側近傍に、溶射材料としてのワイヤを供給するワイヤガイド22,23を配設し、これらのワイヤガイド22,23を通して陽極と陰極の電極を兼用するワイヤ24,25をノズル26内に供給し、スロート部21dの上流側で溶解させるように構成したものである。
【0124】
図8に示す加速ノズル30は、最上流側に配置されるリング状部材31aをセラミックスで構成し、このリング状部材31aに、溶射材料としてのワイヤを供給するワイヤガイド32,33を挿通し、これらのワイヤガイド32,33を通した、陽極と陰極の電極を兼用するワイヤ34,35をノズル36内に供給し、スロート部31dの下流側で溶解させるように構成したものである。
【0125】
図9および図10は、図8に示した加速ノズル30の変形例を示したものである。
【0126】
図9に示す加速ノズル37は、アーク点の上流側ノズル孔を絞る(例えば、図8に示したスロート部31dの孔径がφ3.5mmとすると、スロート部31fの孔径をφ1.3mmに絞る)ことによりそのノズル内を流れる気流を亜音速に加速できるようにしたものである。
【0127】
また、図10に示す加速ノズル38は、アーク点の上流側近傍まで細径のノズル通路31g(φ1.3mm)とすることにより、亜音速の気流をアーク点近傍で噴射するようにしたものである。
【0128】
図9に示した加速ノズル37の構成によれば、超音速気流によってアークが吹き飛ばされたり、あるいはワイヤ34,35がAl等の比較的軟らかい素材で構成され超音速気流を受けて振動することによってアークが不安定になるような場合にアークを安定させる効果がある。
【0129】
また、図10に示した加速ノズル38によれば、アーク点に近づけて亜音速の気流を噴射することができるため、図9の加速ノズル37に比べ、アークをより安定させることができる。
【0130】
上記加速ノズル37,38によれば、細く且つエネルギ密度の高いスプレーを実現することができる。
【0131】
図11に示す加速ノズル40は、最上流側に配置されたリング状部材41aをセラミックスで構成し、このリング状部材41aに、ワイヤガイドからノズルのスロート部41dを通して供給されたワイヤ42との間でアーク溶解を行うための固定電極43,44を配設したものである。
【0132】
図12に示す加速ノズル50は、垂直方向に配列されたリング状部材51a〜51cからなるノズル52を有し、金属材料をそのノズル52内に供給する手段として、ノズル52のスロート部51dを通して、溶湯を供給する溶湯ノズル53を設けたものである。
【0133】
図13に示す加速ノズル60は、水平方向に配列されたリング状部材61a〜61cからなるノズル62を有し、金属材料をそのノズル62内に供給する手段として、スロート部61dの下流側近傍に配置されているリング状部材61bを貫通して溶湯ノズル63を、主流ガスGsの流れと略直交する方向(下向きに)から挿入し、その溶湯ノズル63からノズル62内の高速ガス流に対して溶湯を供給するようにしたものである。
【0134】
なお、加速ノズルは上記した垂直方向、水平方向姿勢で配置する場合に限らず、傾斜姿勢で配置することもできる。
【0135】
3 加速ノズルを用いた噴射ノズル装置
次に、溶射材に応じた噴射ノズル装置の構成について説明する。
【0136】
3-1 亜鉛用噴射ノズル装置
Znは融点が低い(692.7K)ため、400m/sまで十分に加速できれば、衝突時の塑性変形熱で表面が溶け、基材上に付着させることができる。したがって、この場合、図14に示すように加速を重視した長いノズルを使用する。また、ガス圧力は1.2MPa、ガス温度は常温とした。
【0137】
同図(a)は噴射ノズル装置10の全体平面図を断面で表したものであり、同図(b)はその正面図を断面図で示したものである。
【0138】
両図において、噴射ノズル装置10は、本体部11と、この本体部11から突出して設けられるノズル12とを有している。
【0139】
本体部11内にはノズル12に向けて主流ガスGsを流すためのガス通路13が形成されている。このガス通路13は平面から見ると下流側に向けて先細形状に構成されており、また、左右方向からガスを供給するためのガス供給路13aと連通している。
【0140】
上記ガス通路13内には一対のワイヤガイド14,14が鋭角(下流側に向けて)に配置されており、これらのワイヤガイド14,14から送り出されるワイヤ15,15は、リング状部品12aに形成されているガイド孔を通過してノズル部12内に突出し、突出した各先端は、スロート部12mの下流側で互いに接触するようになっている。
【0141】
上記ワイヤ15,15の先端は、陽極と陰極を兼用しており電荷が付加されることによってアーク溶解されるようになっている。
【0142】
ノズル12は、複数のリング状部品12a〜12kをノズル中心軸方向に連結することによって構成されている。
【0143】
図15はノズル12の基端を構成しているリング状部品12aの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図、同図(c)は図15(b)のE−E矢視断面図である。
【0144】
リング状部品12aの中心部には主流ガスGsの流れるガス流路12nが形成され、このガス流路12nの途中にスロート部12mが形成されている。
【0145】
このスロート部12mの下流側近傍には、ワイヤを供給するためのガイド孔12p,12pが開口し、ガス流路12nの下流側端部は筒状に突出するガス流偏向部12qが形成され、シールドガスSGsの流れを主流ガスGsの流れと略平行にするようになっている。
【0146】
このガス流偏向部12qの周囲には凹溝12rが環状に形成されており、この凹溝12rとリング状部品下流側端面12sとの間には凹溝12rよりも大径に形成された係合凹部12tが環状に形成されている。
【0147】
また、凹溝12rにはシールドガスSGsを供給するためのシールドガス供給路12uが円周上に等間隔に配設されており、各シールドガス供給路12uから供給されたシールドガスSGsは、凹溝12rで合流し、ガス流偏向部12rの外壁に沿って筒状の流れを形成するようになっている(図15(c)のシールドガス流SGs参照)。
【0148】
なお、図中、12vはスタック用ボルトを通すための孔部である。
【0149】
図16は上記リング状部品12aの下流側に連結されるリング状部品12bの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図である。
【0150】
なお、リング状部品12b〜12jについてはガス流路12nの内径が順次拡大される点を除いては基本的に同じ構成であるため、上記リング状部品12bを代表してそれらの構成を説明する。
【0151】
リング状部品12bにおける上流側端面12wの中心部には筒状の係合凸部12xが形成されており、この係合凸部12xは上記したリング状部品12aの係合凹部12tと嵌合するようになっている。
【0152】
また、リング状部品12bにおけるガス流路12nの内径d2>リング状部品12aのガス流偏向部12qにおける外径d1となっている。
【0153】
なお、環状溝12yにはシール材としてのOリングが装着される。また、図中、12q′はガス流偏向部、12r′は環状の凹溝、12t′はさらに下流側に連結されるリング状部品の係合凸部が嵌合される係合凹部である。
【0154】
図17は、ノズル12の先端に配置されるリング状部品12kの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図である。
【0155】
リング状部品12kはその中心部にガス流路12nが形成され、上流側端面12w′に係合凸部12x′が形成されている。リング状部品12aから段階的に拡大されたガス流路12nの内径dは、最終的にこのリング状部品12kの内径、本実施形態では15mmとなっている。
【0156】
3-2 チタン用噴射ノズル装置
Tiは融点が高い(1953K)ため、粒子が冷え過ぎた場合700m/s程度まで加速しないと衝突時の塑性変形熱による熱で表面を溶かし付着させることができない。この粒子の加速に必要なガス圧力は、空気の場合、50MPaを超えることになる。したがって、Tiの溶射では粒子が冷え過ぎないように短いノズルを使用する。また、ガス圧力は1.8MPa、ガス温度は常温とした。
【0157】
図18(a)は噴射ノズル装置10′の全体平面図を、同図(b)はその正面図をそれぞれ断面図で示したものである。
【0158】
両図において、噴射ノズル装置10′は、本体部16と、この本体部16から突出して設けられるノズル部17とを有している。
【0159】
本体部16内にはノズル部17に向けて主流ガスを流すためのガス通路18が形成されており、このガス通路18に対して左右方向からガスを供給するガス供給路18aが形成されている。
【0160】
このガス通路18内には一対のワイヤガイド19,19が鋭角に配置されており、これらのワイヤガイド19,19から送り出されるワイヤ19a,19aはリング状部品12aに形成されているガイド孔を通過してノズル部17内に突出し、突出した各先端は、スロート部17iの下流側で互いに接触するようになっている。
【0161】
ノズル部17は、各リング状部品17a〜17hを筒軸方向に連結することによって構成されており、各リング状部品17a〜17hにおける連結部分に形成されているスリットからシールドガスSGsがノズル17内に向け、主流ガスGsの流れと平行に噴射されるようになっている。
【0162】
なお、上記実施形態では溶射材としてZnとTiを例に取り説明したが、溶射材としてはこれ以外に、Al,Cu,SUS鋼等の金属/合金,セラミックス,サーメット等を使用することもできる。
【0163】
また、上記実施形態では同じ厚さのリング状部品を複数枚連結することによってノズルを構成したが、異なる厚さのものを混在させて連結することもできる。
【0164】
また、上記実施形態では上記ノズルを上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルで構成したが、連続的に拡大する末広ノズルで構成することもできる。この場合、ノズル内壁円周位置に噴射口を多数配列することによってノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射することになる。
【0165】
3-3 溶射性能
図19に示すグラフは、異なる溶射材を使用した場合の溶射性能を比較したものであり、(a)のグラフは溶射によって形成された皮膜の密度を、(b)のグラフは皮膜の歩留まりをそれぞれ示している。
【0166】
テストピースとして使用した溶射材は、Al,Cu,Ti,SUS304である。なお、溶射試験に際してはリング状部品の連結枚数を変更することにより、溶射材毎にノズル長さを調節した。具体的には、融点が低い溶射材については加速を重視した長いノズル、例えばAl,Cuについては200mm長さのノズルを使用した。一方、融点の高い溶射材については粒子が冷え過ぎないように短いノズル、例えばTiについては40mm、SUS304については70mmを使用した。
【0167】
(a)のグラフに示すように、各溶射材によって得られた皮膜密度は90〜94%と高密度であり良好な成膜状態が確認できた。
【0168】
また、(b)のグラフに示すように、ノズル長さを40〜200mmの範囲で変更し、皮膜の歩留まりを調べた。その結果、ノズル長さが長くするにつれて各溶射材ともに、歩留まりが低下する傾向が確認された。これは、飛行中の粒子が冷え過ぎると基材に付着しにくくなるからであると考えられる。
【0169】
なお、Alについてはノズル長さを200mmとしても40%程度の歩留まりが得られるが、Cuついては15%程度、SUS304やTiについては5〜10%程度の歩留まりしか得られない。このことから、溶射材に融点の低い材料を使用する場合は長さ200mmまでのノズルを使用することができるが、融点の高い材料を使用する場合はノズル長さの上限を70mm以下に設定することが好ましい。より好ましくは40mm程度である。
【0170】
図20に示すグラフは、40mm長さのノズルを用いて成膜されたTi溶射皮膜をEPMAによってφ1μm程度の点について成分分析したものであり、横軸はエネルギ、縦軸はX線強度を示している。
【0171】
同グラフから分かるように、溶射皮膜を構成している元素としてTiが検出されている。分析結果に酸素は検出されておらず、それにより、酸化のない状態でTi皮膜を形成できることが実証された。
【0172】
なお、NおよびCも極めて僅かな量、検出されているが、Nはキャリアガスとしての窒素が検出されたものであり、Cはテストピースを成形するための樹脂が成分として検出されたものであり、無視することができる。
【0173】
4 コールドスプレー
次に、本発明の加速ノズルをコールドスプレーに適用する場合の構成について説明する。
【0174】
コールドスプレーは、溶射材の融点よりも低い温度の超音速ガス流に粉末状態の溶射材を投入し、固相状態のままその溶射材を基材に衝突させて皮膜を形成する方法である。
【0175】
溶射材としては、金属、合金、サーメット、セラミックス等を使用することができる。また、溶射材の粒径は、一般的に、1〜50μmのものを使用することができる。
【0176】
図21に示すように、コールドスプレー用の噴射ノズル装置70は、本体部71と、この本体部71の先端に接続される加速ノズル72とから主として構成されている。
【0177】
上記本体部71は中空室71aを有し、この中空室71aのスプレー方向前側には先細部71bが形成されている。また、中空室71aには高圧ガスを供給する第1供給孔71cと、高圧ガスと粉体とを供給する第2供給孔71dがそれぞれ連通しており、各高圧ガスは共通のガス源(窒素、ヘリウム、空気等)から分岐させて供給するようになっている。
【0178】
上記加速ノズル72の構成は、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じものであり、ノズル内を飛行する溶射材に対しその周囲に筒状のシールドガスを形成することができるように構成されている。
【0179】
上記噴射ノズル装置70によれば、第1供給孔71cを通じて供給される高圧ガスと第2供給孔71dを通じて供給される溶射材を含む高圧ガスとが中空室71a内で合流し、先細部71bを通過することによって超音速流となる。
【0180】
加速ノズル72を構成している各リング状部品72a〜72kの各スリットTからはその内壁に沿ってガスが順次噴射され略筒状のガス流を形成している、それにより、加速ノズル72内を飛行する溶射材は、略筒状に流れるガス流によってシールドされる。
【0181】
それにより、本体部71から超音速で噴射された溶射材は、加速ノズル72の内壁に接触することなく、すなわち、内壁に堆積することなく加速され、基材に衝突し、その結果、皮膜が形成される。
【0182】
上記噴射ノズル装置70によれば、例えば部品の必要範囲にだけを狙って部分加工を行なうことが可能になるとともに、緻密な皮膜を形成することができる。
【0183】
5 高速フレーム溶射
図22は、本発明の加速ノズルを高速フレーム溶射に適用する場合の構成を示したものである。
【0184】
同図に示すように、高速フレーム溶射装置の溶射ガン80は、燃焼チャンバ80aとノズル部80bとバレル部80cとからなっている。
【0185】
燃焼チャンバ80aで燃料と酸素が混合、着火されることにより燃焼炎(フレーム)が発生し、この燃焼炎はノズル部80bに形成されたスロート部80dで一旦、絞られることにより高速流となり、さらにバレル部80cを通過する。
【0186】
従来技術としての高速フレーム溶射では、一般的に粉末溶射材を供給するようになっており、バレル部80cの長さは長い方が粒子を加速させることができ、基材に堆積される皮膜中の気孔を減らす上で有利である。しかしながら、バレル部80cを長くすると、燃焼炎中を加速中の粒子はその火炎熱によって溶融し始め、やがてバレル部80cの内壁に付着してしまう。
【0187】
そこで、図22に示した高速フレーム溶射装置では、バレル部80cの先端に、さらに、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じ構成からなる加速ノズル81を接続している。
【0188】
上記加速ノズル81をバレル部80cの先端に接続することにより、粒子が溶融を開始してからもノズル内で粒子の加速を維持することが可能になる。その結果、粒子がバレル内壁に付着するという従来の高速フレーム溶射の問題点を解消することができる。
【0189】
なお、本発明の加速ノズルは、上記した高速フレーム溶射に限らず、プラズマ溶射等、高温ガスによって粒子を溶解させるタイプの溶射装置の後段に接続することも可能であり、ノズル内での加速を維持させてノズル内壁への粒子の付着を解消することができる。
【0190】
なお、図中、82は溶射粒子、83は基材、84はその基材83上に堆積される溶射皮膜を示している。
【0191】
6 微粒化装置
図23は、溶融金属流を微細化することにより金属粉を製造する微粒化装置に、本発明の加速ノズルを適用する場合の構成を示したものである。
【0192】
同図において、微粒化装置90は、溶解炉91の下方に配置されたハウジング92内に収納されている。
【0193】
微粒化装置90は、中空の環状部90aと、その外周壁から直径方向に延設された支持体90bおよび90cを有し、一方の支持体90cは中空からなり、環状部90aに連通して高圧ガスの供給路として機能するようになっている。
【0194】
また、支持体90b,90cはそれらの軸まわりに回動するようになっており、それにより、環状部90aを紙面厚さ方向に揺動させることができる。
【0195】
環状部90aの底面には、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じ構成からなる加速ノズル93が垂設されている。
【0196】
上記構成において、支持体90cを通じて環状部90aに供給された高圧ガスは、噴射ノズル装置93の各リング部品93a〜93hのスリットTからも噴射されるようになっている。
【0197】
なお、上記環状部90aが揺動動作する微粒化装置では、微粒化装置90が溶解炉91に固定されない構造上、溶解炉91とその微粒化装置90との間には空間94が存在しており、この空間94は通常、ほぼ大気圧となっている。
【0198】
上記構成を有する微粒化装置90において、溶湯ノズル91aから吐出された溶湯95は、重力によって鉛直方向に流下し、環状部90aの中心を通過する際に、高圧ガス(アトマイズガス)AGsによって微粒化される。
【0199】
微粒化された粒子はさらに加速ノズル93内を通過する際にスリットTから噴射される高圧ガスによって加速され、基材に衝突する衝突速度が高められる。
【0200】
基材上に粒子が堆積して形成されたビレットの密度は、粒子の衝突速度にほぼ比例するため、粒子を加速させることができる上記加速ノズル93を付加することにより、密度の高いビレットを成形することができる。
【0201】
なお、上記構成では空間94が加速ノズル93のノズル中央に連通しているため、加速ノズル93は、ノズル中央から大気圧のガスを吸い込んで粒子とともに加速することになる。したがって、ノズル中央に高圧ガスを導入する場合と比較すると、粒子を加速する能率は低くなる。
【0202】
そこで、ノズル内の粒子速度とガスマッハ数を実験により測定すると、例えば0.6MPaのガスをリング状部品の各スリットTから噴射した場合、ノズル中央を飛行する粒子の速度は300m/s(ノズル中央に高圧ガスを供給した場合は400m/s)となり、ガスのマッハ数は1.0〜1.5程度まで加速することができた。それにより、実用上、満足できる加速効果の得られることが確認された。
【0203】
7 水実験モデルを用いた粒子速度測定
図24は加速ノズル内を飛行する粒子の速度および速度分布を測定するために構成された水実験モデルである。
【0204】
同図において、水タンク91′は図23に示した溶解炉91に相当し、環状部90a′は同じく環状部90aに相当し、加速ノズル93′は加速ノズル93に相当する。96は水タンク91′から垂下されたノズルである。また、中空の環状部90a′から高圧ガスを供給した。
【0205】
なお、図24に示した水実験モデルは、図23に示した微粒化装置を高圧ガス供給方向から見た配置となっている。したがって、加速ノズル93′は左右方向に揺動動作する。
【0206】
図25の示すグラフは上記水実験モデルを用い、スプレー方向と直交する方向の粒子速度分布を測定したものである。
【0207】
同グラフにおいて、横軸はスプレー中心Sからの距離を示し、縦軸は粒子速度を示している。なお、本水実験モデルで使用した加速ノズル93′のノズル出口の孔径はφ16mmである。
【0208】
グラフ中、特性M1はノズル出口から25mmの距離において粒子速度を測定したものであり、ノズル内壁に近いスプレー周辺部では粒子速度が速く(350m/s)、スプレー中心部では粒子速度が遅くなる(250m/s)という速度分布が得られた。これは、スプレー中心部では大気圧のガスを吸い込みながら加速しなければならないことによって生じた遅れと考えられる。
【0209】
特性M2は、ノズル出口から250mmの距離において粒子速度を測定したものであり、スプレー中心部の粒子速度が特性M1に比べて加速される一方でスプレー周辺部についてはスプレー中心からの距離が拡がるとともに粒子速度も減衰していく。
【0210】
特性M3は、ノズル出口から550mmの距離において粒子速度を測定したものである。上記特性M2と比較し、スプレー中心部の粒子速度はやや減衰し、スプレーがさらに裾拡がりとなる。
【0211】
図26に示すグラフは、スプレー方向における粒子速度分布を測定したものである。
【0212】
同グラフにおいて、横軸はスプレー高さを、左縦軸は粒子速度を、右縦軸は粒子径をそれぞれ示している。
【0213】
特性N1はスプレー高さ60〜1250mmの範囲で粒子速度の変化を測定したものであり、スプレー高さが約300mmまでは粒子は加速途中であるため、310m/s程度まで速度が増加するが、それ以後は徐々に減衰していく。
【0214】
また、粒子径については、スプレー高さ500mmまでは21μm前後で安定するが、スプレー高さ500mmを超えるとやや粒子径が大きくなる傾向がある。これは飛行する粒子同士が合体することによるものと推定される。
【0215】
また、水実験モデルにおける水を塗料に変更すれば、本発明の加速ノズルを塗装にも利用することができるようになる。
【0216】
上記各実施形態を用いて説明したように、本発明の加速ノズルは、微粉製造、スプレーフォーミング、溶射、成膜、3次元造形、塗装等のいずれの分野にも幅広く適用することができる。
【0217】
なお、上述した各実施形態では円筒状加速ノズルを例に取り説明したが、加速ノズルは上記円筒形に限らず、例えば図27に示すように、角型部品100a〜100dを接続した角筒状ノズル100であってもよい。角筒状ノズル100に構成する場合、ノズル孔100eの開口形状は偏平な矩形であってもよく、また、正方形であってもよい。なお、図中100fは、スロート部である。
【産業上の利用可能性】
【0218】
噴射ノズル内の高速ガス流を延長することによって粒子加速効果を有効に活用することができる噴射ノズル装置であり、粒子の微粒化とノズル内壁への粒子付着防止を両立させることが必要な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0219】
1 加速ノズル
2 ノズル
2a〜2j リング状部品
2k ノズル内壁
2m スリット最狭部
3 入口側
4 スロート部
5 出口側
6 シールドガス供給路
7 ガス流偏向部
8 上流側端面
9 スタックボルト孔
11 本体部
12 ノズル部
12a〜12k リング状部品
13 ガス通路
14 ワイヤガイド
15 ワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを衝突させることによって微粒化した粒子を、冷却または溶融状態で成膜対象に衝突させ皮膜を形成するのに好適である噴射ノズル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスを用いて金属材を微粒化する主な技術として、(1) 微粉製造、(2) スプレーフォーミング、(3) 溶射が知られており、これらの溶射技術には各種構造からなる噴射ノズルが使用されている。
【0003】
(1) 微粉製造
粉末冶金に利用される微粉製造は、容器から注がれる溶湯流に対し、円周上に配置された複数のノズルからその溶湯流に向けてジェットガスを衝突させ、金属材を微粒化する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、上記複数のノズルに代えて円錐状のラバルノズルを配置し、そのラバルノズルでガスを加速させ、高速に加速されたガス中に金属材等を溶融状態で導入することにより、微粒化する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
上記ラバルノズルの長さは短いものを使用しているため、ノズル内壁に微粒化された粒子が付着することは少ないが、ノズルの長さが短いと高速気流となっているノズル内を溶湯や微粒子が通過する時間が極めて短いため、ガス流速によって引き出すことのできる本来の微粒化効果を十分に活用することはできない。
【0006】
(2) スプレーフォーミング
プリフォームを製造するスプレーフォーミングにおいても上記微粉製造と同様な構成の微粒化装置(アトマイザー)が使用されている。
【0007】
この種の微粒化装置においても、ノズル孔から放出されて減速してしまったガスを溶湯に衝突させるものはガス流によって粒子を十分加速させることができず、その結果として得られた堆積物の密度は低くなり、材料は多孔質になりがちである。
【0008】
例えば、特許文献3に記載のスプレー形成方法では、金属材が噴霧前に凝固しないように、ノズル温度を十分高い温度に維持するための加熱エレメントがノズル周囲に設けられている。
【0009】
この微粒化装置によればノズル内壁に金属粒子が付着することを防止できる。ところが、ノズル内壁を構成している材料と、ノズルに供給した金属材とが濡れ性のよい場合には、金属粒子がノズル内壁に膜状に付着し、ノズル中央を流れるガスに引っ張られてゆっくりとノズル出口側に押し出されるため、ノズル中央を飛行する微粒子と比べると非常に大きな粒径のままノズル出口から吐き出されることになる。その結果、成膜の品質が悪化したり、堆積物の品質が低下する。
【0010】
さらに、ノズル内壁と接触した後に吐き出された金属粒子は、ノズル壁材料の成分が混入しているため、微粒化した金属粒子を汚染する可能性もある。
【0011】
(3) 溶射
上記スプレーフォーミングが大容量の溶湯を供給して塊の堆積物や成型体を得るのに対し、溶射は同様の原理によって少量の材料を供給し皮膜を形成するコーティング技術であり、溶射の方式としては電気を熱源とするアーク溶射や燃焼ガスを熱源とするフレーム溶射等がある。
【0012】
(3-1) ノズル内で金属材を溶融させるもの
アーク溶射は、金属材を2本のワイヤの形態で供給し、それぞれのワイヤを陽極と陰極として電荷を付加し、両ワイヤ間でアークを発生させ金属材を溶融する(例えば特許文献4参照)。
【0013】
この特許文献4に記載の溶射ノズル装置では、ノズルに粒子が付着することを予め考慮してノズル壁の温度を金属材の融点以上まで加熱している。
【0014】
この溶射ノズル装置を含め、多くのアーク溶射では、金属粒子の加速性能を犠牲にしてノズル内壁に溶融状態の粒子が付着しない方法を選択している。
【0015】
また、特許文献5に記載のアーク溶射装置は、図28に示すように、霧化部の下流において高速の噴霧流を促進するように構成されている。
【0016】
詳しくは、線材ガイド110,110を通した線材111,111を、ノズル中心軸上で互いに接触させるようにし、その中心軸と同軸に、先細のテーパ区画112aと先広がりのテーパ区画112bが連通するガスキャップ112を設け、テーパ区画112aにガスを通過させることにより溶融金属噴霧用の一次ガス流G1を発生させ、テーパ区画112bに設けられた複数のオリフィス112cから二次ガス流G2を発生させている。
【0017】
二次ガス流G2は互いに内側に向けられており、溶融金属の霧化を妨害しないように、線材111の接触点から下流側に十分に間隔を置いた位置で合流するようにし、それにより、一次ガス流G1が二次ガス流G2によって狭められ、かつ加速されるようになっている。
【0018】
上記アーク溶射装置のノズル構造は粒子速度を高めることを意図しているが、ガスキャップ112のテーパ区画112bにおける半頂角(ノズル中心軸とノズル内壁がなす角度)が極めて大きくしかも長さが短いため、ガスキャップ112内で流れの剥離が生じ、超音速のガス流を形成することは困難である。
【0019】
(3-2) ノズル外で金属材を溶融させるもの
ノズルを使用することによって溶射面に向けて高速フレームを形成するとともに、その高速フレーム(燃焼炎)の途中に溶射材を投入する溶射装置(例えば特許文献6参照)が知られている。
【0020】
また、同じく高速フレームによる溶射ガンバレルにガスシュラウドを付加し、そのガスシュラウドにおいて円周状に形成されたスリットより不活性ガスをシュラウド内に供給し、ガンバレルより溶射される金属粒子の速度を加速させ、大気から遮断した状態で基材表面に金属粒子を衝突させるものもある(例えば特許文献7参照)。
【0021】
金属粒子の加速が得られた理由は、ガスシュラウドが存在することによってノズルの長さが延長され粒子の加速距離が増加したことと、高温のフレームに対して周囲から不活性ガスが供給されことと考えられる。超音速で流れている気流は加熱されると減速し、冷却されると加速する性質を持っているからである。
【0022】
また、不活性ガスを供給するスリットの傾斜面は、シュラウド筒部の中心軸への直交線に対して70°以内に傾斜させることが好ましいとある。70°を超えると、シュラウド中央を流れるフレームに対し不活性ガスを混合させることが難しくなるからと思われる。
【0023】
(3-3) 3次元の造形
微粒化した溶融金属を標的に向けて噴射し凝固させることにより3次元の造形を行う方法である。
【0024】
金属材を線材にし、この線材の端部を放電によって溶融させ、形成された溶融球をガス流で飛翔させるが、ガスで噴射された溶融金属がノズル内壁に付着することを避けるため、ノズルの外部で線材を溶解させている(例えば特許文献8参照)。
【0025】
この造形方法では、ノズルから噴射し拡散するガスによって溶融金属が吹き飛ばされるため、基材に対する溶融金属滴の命中精度が低いという問題がある。
【0026】
仮に、溶融金属の粒子を長いノズル内で飛行させ、直進性を保った状態でノズルから噴射することができれば、命中精度を格段向上させることが期待できるが、このようなノズルは実現されていない。
【0027】
(3-4) コールドスプレー
材料を溶融またはガス化させることなくガスとともに超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて皮膜を形成する方法である(例えば特許文献9参照)。超音速で衝突した材料は粒子自体が塑性変形することによって皮膜となるため、他の溶射方法とは異なり、熱による材料の特性変化や酸化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特公昭62−24481号公報
【特許文献2】特開昭62−110738号公報
【特許文献3】特表2004−503385号公報
【特許文献4】特開2006−175426号公報
【特許文献5】特開平11−279743号公報
【特許文献6】特開2001−181817号公報
【特許文献7】特開2003−183805号公報
【特許文献8】特開2000−248353号公報
【特許文献9】特開2006−52449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
上記微粉製造、スプレーフォーミング、溶射に使用されている従来の噴射ノズルのいずれについても、粒子がノズル内壁に付着するという問題は解消されていない。また、長さの短いノズルを使用して、あるいはノズル外部で金属材を微粒化する方法では、ガス流速によって引き出すことのできる本来の微粒化効果を十分に活用することができないという問題がある。
【0030】
本発明は以上のような従来の噴射ノズルにおける課題を考慮してなされたものであり、粒子がノズル内壁に付着せず、しかもガス流速によって得られる微粒化効果および粒子の加速効果を有効に活用することができる噴射ノズル装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、
上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、その噴射口が上記ノズル孔の筒軸方向に複数段備えられ、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を構成してなることを要旨とする。
【0032】
上記筒状のシールドガスの流れを形成するとは、実質的に筒状の流れが形成されるものであればよく、例えば環状の噴射口からシールドガスを噴射することによって筒状の流れを形成してもよく、または、円周上に配置された多数の複数口からシールドガスを噴射することによって筒状に形成するものであってもよい。
【0033】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が連続的または段階的に拡大する末広ノズルに形成することができる。
【0034】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルは、複数のリング状部品をリング中心軸方向に連結した集合体から構成することができる。
【0035】
上記噴射ノズル装置のノズルを、上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルで形成した場合、連結されたリング状部品における各隣り合った内壁の段差部分に、上記シールドガス噴射口としてのスリットを環状に形成することができる。
【0036】
上記噴射ノズル装置において、上記スリット上流側のシールドガス供給路に、シールドガスの流速を上記高速ガス流の流速に揃えるためのシールドガス用スロート部を形成すれば、例えばラバルノズル等のガスを高速に加速するタイプの噴射ノズル装置についても、導入したシールドガスによって上記高速ガス流を促進させることができる。
【0037】
上記噴射ノズル装置において、上記リング状部品の下流側内周縁部に、上記シールドガスの流れを上記ノズルの中心軸と略平行に且つ下流側に向けて揃えるためのガス流偏向部を設けることができる。
【0038】
上記噴射ノズル装置において、上記ノズルのスロート部近傍に、溶射材料をワイヤの形態で供給する一対のワイヤガイドを配設し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成することができる。
【0039】
上記噴射ノズル装置において、上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このセラミックスに、溶射材料としてのワイヤを供給する一対のワイヤガイドを挿通し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成することができる。
【0040】
上記噴射ノズル装置において、上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このリング状部品に、ワイヤガイドから上記スロート部を通して供給されたワイヤとの間でアーク溶解を行うための固定電極を配設することができる。
【0041】
上記噴射ノズル装置において、上記スロート部を通して、上記ノズル中心軸上に溶湯を供給する溶湯ノズルを設けることができる。
【0042】
上記噴射ノズル装置において、上記リング状部品を貫通して設けられた溶湯ノズルから上記ノズル内の高速ガス流に対して交差する方向から溶湯を供給するように構成することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の噴射ノズル装置によれば、粒子がノズル内壁に付着せず、しかもガス流速によって得られる微粒化効果および粒子加速効果を有効に活用することができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明に係る加速ノズルの原理を示す正面断面図、(b)はそのB部拡大図である。
【図2】図1のリング状部品の下流側側面を示す斜視図である。
【図3】本発明の加速ノズルによって得られる粒子速度分布を示すグラフである。
【図4】本発明の加速ノズルによるガス流れを示す説明図である。
【図5】本発明に係る加速ノズルの流速調整方法を示す説明図である。
【図6】ノズル内の主流ガスとシールドガスの速度ベクトルを示した説明図である。
【図7】本発明の加速ノズルの第二実施形態を示した原理図である。
【図8】本発明の加速ノズルの第三実施形態を示した原理図である。
【図9】図8に示す加速ノズルの変形例を示した原理図である。
【図10】図8に示す加速ノズルの別の変形例を示した原理図である。
【図11】本発明の加速ノズルの第四実施形態を示した原理図である。
【図12】本発明の加速ノズルの第五実施形態を示した原理図である。
【図13】本発明の加速ノズルの第六実施形態を示した原理図である。
【図14】(a)は亜鉛用噴射ノズル装置の構成を示す平面断面図、(b)はその正面断面図である。
【図15】(a)は図11に示した基端側リング状部品の構成を示す正面断面図、(b)はその右側面図、(c)は同図(b)のE−E矢視断面図である。
【図16】(a)は連結されるリング状部品の正面断面図、(b)はその右側面図である。
【図17】(a)はノズル先端のリング状部品の正面断面図、(b)はその右側面図である。
【図18】(a)はチタン用噴射ノズル装置の構成を示す平面断面図、(b)はその正面断面図である。
【図19】(a)は溶射性能を密度で比較したグラフ、(b)は溶射性能を歩留まりで比較したグラフである。
【図20】本発明によって形成された溶射皮膜の成分を分析したグラフである。
【図21】本発明の加速ノズルをコールドスプレーに適用した場合の構成を原理図で示した断面図である。
【図22】本発明の加速ノズルを高速フレーム溶射に適用した場合の構成を原理図で示した断面図である。
【図23】本発明の加速ノズルを微粒化装置に適用した場合の構成を示す断面図である。
【図24】微粒化装置における粒子速度を測定する水実験モデルの構成図である。
【図25】水実験モデルによる、スプレー方向と直交する方向の粒子速度分布を示すグラフである。
【図26】水実験モデルによる、スプレー方向の粒子速度分布および粒子径の変化を示すグラフである。
【図27】加速ノズルを角筒状にした場合の構成を示す斜視図である。
【図28】従来の噴射ノズル装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
1 加速ノズルの原理
図1は本発明の噴射ノズル装置に用いる加速ノズルの原理を示したものであり、同図(a)は正面断面図を示し、同図(b)は図1(a)のB部拡大図である。
【0046】
両図において、加速ノズル1は、ノズル2の入口側3にキャリアガスを導入するようになっている。
【0047】
導入されたキャリアガスは、内径が絞られたスロート部4を通過することによって高速ガス流(以下、主流ガスGsと呼ぶ)を形成し、その主流ガスGs流によって固体もしくは液体の粒子を微粒化し、その微粒化した粒子をノズル2の出口側5から噴射するようになっている。
【0048】
また、上記ノズル2は、主流ガスGsを流すための貫通孔を備えた複数のリング状部品2a〜2jを、ノズル中心軸方向に連結することによって構成されている。
【0049】
詳しくは、主流ガスGsの流れ(A方向)において最も上流側に、例えばベースとなるセラミックス製リング状部品2aが配置され、最も下流側にノズルエンドとなるSUS製リング状部品2jが配置され、それらのリング状部品2aおよび2jの間に連結用のSUS製リング状部品2b〜2iが多段に配置されている。
【0050】
また、6は各リング状部品2a〜2iを貫通して穿設されたシールドガス供給路(ガス供給路)であり、このシールドガス供給路6は、リング状部品2a〜2jの連結部分に間隙部分として設けられた環状通路(ガス通路)6aと連通し、各環状通路6aはさらにノズル内壁円周位置に形成された環状のスリット(噴射口)Tと連通している。このスリットTは、図1(b)に示すように、連結された上流側リング状部品2aと下流側リング状部品2bの内壁段差部分に環状に開口しており、図1(a)に示すように、ノズル孔の筒軸方向に複数段設けられている。
【0051】
それにより、シールドガス供給路6に導入されたシールドガスSGsは、環状通路6aで合流し、その環状通路6aを通じて各段の噴射口としてのスリットTに個別に供給され、スリットT全体から筒状となってノズル2内に噴射されるようになっている。
【0052】
上記シールドガス供給路6およびスリットTは、シールドガス供給部として機能する。
【0053】
次に、上記構成を有する加速ノズル1の動作について溶射を例に取り説明する。
【0054】
リング状部品2aには、溶射材料としてのワイヤをノズル2内に供給するワイヤガイド(後述する)が一対挿通されており、各ワイヤガイドから突出した2本のワイヤは、スロート部4の出口側近傍で互いに接触するようになっている。
【0055】
加速ノズル1は、ノズル2内を流れる主流ガスGsと略同じ流速でフレッシュなガスを各リング状部品2a〜2iからノズル2内に順次送り込むことによりノズル2内壁を覆う新気(シールドガスSGs)の膜を形成し、それにより、ノズル2内壁に金属粒子が付着する機会を大幅に減少させている。
【0056】
また、シールドガスSGsは、理想的にはノズル中心軸と平行に噴射させることが好ましく、さらに、ノズル内壁2k全周にわたって一様に供給することが好ましい。
【0057】
したがって、円形断面を有するノズル2では、全周にわたって同一幅で構成された環状のスリットからシールドガスSGsを供給することにより、シールドガスSGsを筒状の流れに形成し、ノズル2内に供給することが理想となる。
【0058】
このシールドガスSGsをノズル中心軸と平行に供給するには、助走区間として、ガス流偏向部7が必要になる。
【0059】
詳しくは、上流側のリング状部品2aと下流側のリング状部品2bの間にシールドガスSGs供給用の環状通路6aが形成されている。
【0060】
ガス流偏向部7は、リング状部品2aにおける下流側内周縁が顎状に突出形成されたものであり、リング状部品2bにおける上流側端面8を超えてさらに下流側に延設されている(図中、突出し長さN参照)。それにより、上記環状通路6aと連通するスリットTが環状に形成されている。このような環状通路6aと環状スリットTが、リング状部品2a〜2iのそれぞれに形成されている。
【0061】
1-1 加速ノズルの構成
図2はリング状部品2aの下流側側面を示した斜視図である。
【0062】
リング状部品2aの中心部に設けられた貫通孔の周縁にガス流偏向部7が筒状に形成され、その裾部に環状通路6aが凹設されている。この環状通路6aには、シールドガス供給路6が円周上に等間隔に(本実施形態では8個)形成されている。
【0063】
すなわち、シールドガス供給路6から供給されるシールドガスSGsは、環状通路6aに流れて合流し、ガス流偏向部7によってガス流の向きがノズル中心軸方向に変更されるとともに筒状の流れに形成され、ノズル2内に供給されるようになっている。なお、図中9はスタックボルト孔である。
【0064】
図1に戻って説明する。
【0065】
各リング状部品2a〜2jにおいて、上流側のリング状部品に対し下流側のリング状部品のノズル孔径は大きく形成されており、その孔径の違いによって生じる段差を利用して上記スリットTを確保している。また、下流側に向けてノズル孔径を段階的に拡径していることにより、同時に、溶融状態の粒子が多く飛行するノズル中心軸付近からノズル内壁を遠ざけることを可能にしている。
【0066】
ノズル中心軸に溶融金属を導入するか、若しくはノズル中心軸上にワイヤの形態で供給された金属材をアーク溶解した場合、通常、ノズル中心軸上での粒子濃度が最も高く、周辺(径方向)に至るほど粒子濃度は減少するガウス分布に従うと言われている。
【0067】
したがって、ノズル内壁をノズル中心軸から遠ざけると、粒子がノズル内壁2kに接触する確率を減少させることができる。
【0068】
また、ノズル中心軸上から供給された粒子は、上記したようにノズル下流側に飛行する間にノズル径方向に広がっていくが、この広がりはノズル内の流れの乱れによって影響される。
【0069】
ノズル2内の流れは、速度勾配(空間上で速度が変化する割合)が大きいほど大きな乱れとなって現れるため、ノズル2内のガス流速は極力一様であることが好ましい。
【0070】
本発明の加速ノズル1は、シールドガスの速度を主流ガスのそれと一致させるという大きな課題を克服し、上記ノズル2内に一様なガス流れを形成することに成功している。
【0071】
以下、詳しく説明する。
【0072】
(a)ノズルが、ノズル内流れのマッハ数が1未満の亜音速で作動するノズルの場合
スリットTを通過するシールドガスの流速uはスリット前側の圧力p1とスリット後側の圧力p2より、ガスの密度ρを用いて
【0073】
【数1】
で表される。
【0074】
ノズル内圧力はスリット後側の圧力と等しく、p2であるから、最も上流側のスリットTを含めてリング状部品2a〜2jのすべてのスリット前側圧力をp1にすればよい。
【0075】
これを実現するために、全てのスリットTに個別のシールドガス供給路を用意し、圧力をすべて所定値となるように調整することもできるが、より簡単にこれを実現する方法としては、一カ所のガス貯留タンク(通常ヘッダーと呼ばれる)から分岐させて各スリットTにシールドガスSGsを供給する方法を採用することができる。
【0076】
図1に示した加速ノズル1は上記ヘッダーからの分配方式を採用しており、各リング状部品2a〜2jのスリットTに対して同一圧力p1のシールドガスを供給している。
【0077】
(b)ノズルが、ノズル内流れのマッハ数が1以上の超音速で作動するノズルの場合
超音速ノズルを使用する場合、ラバルノズルのように拡大部を有するノズル形状を通過させなければ、主流ガスGsと同一の流速でシールドガスSGsをノズル2内に供給することができない。
【0078】
図1(b)ではそのための構成として、スリットT出口の開口幅C>スリット最狭部2mの開口幅Dとなるように、下流側リング状部品2bの内周縁に曲面が加工されている。
【0079】
スリット最狭部(シールドガス用スロート部)2mは、最終的にはノズル内壁と連絡するのに対し、スリット最狭部2mと対向しているガス流偏向部7は直線的な平面に形成されている。このように、直線部分と円弧部分がある隙間を持って流路を形成することにより、シールドガスSGs噴射用のスリットTは、中間に最狭部スロートを有し下流側にいくほど開口幅が広がるラバルノズルを構成していることになる。
【0080】
なお、スリットTをラバルノズル構造とするにあたっては、必ずしも、上記したように直線部分と円弧部分の組み合わせに限定されるものではなく、例えば円弧と円弧の組み合わせであってもよい。
【0081】
1-2 粒子速度分布
図3は上記加速ノズル1によって得られる粒子速度分布を示したグラフである。
【0082】
同図において、横軸のゼロはノズル2の中心を示し、+値および−値はそのノズル中心からの相反する方向のX方向距離およびY方向距離を示し、縦軸は粒子速度を示している。
【0083】
ノズル2の出口径はφ15mmであり、従って、横軸における+7.5mm〜−7.5mmの範囲がノズル領域内を示していることになる。
【0084】
また、同グラフの測定結果は、アーク溶解機構を備えたノズル(図7参照)を用いて亜鉛の溶射を行ったものであり、溶射条件は以下の通りである。
【0085】
窒素ガスのガス圧力は1.3MPa,ガス流量は0.17kg/s,ガスマッハ数は1.8であり、亜鉛の供給量は1.7×10−4kg/sである。
【0086】
レーザー位相ドップラー流速計によって計測した結果、ノズル出口における平均速度は420m/s程度であった。また、ノズル出口径φ15mmに対して、粒子が存在していた部位はφ12mm(+6〜−6mm)の範囲内であり、粒子速度はほぼ一定であった。
【0087】
また、堆積物のミクロ観察写真を分析すると、基材に衝突した粒子径はφ10〜30μmであった。
【0088】
また、堆積物厚さ方向のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)ライン分析を行ったところ、リング状部品の主成分であるFeが所々で検出されている。これはリング状部品の内壁面と衝突した粒子のあることを意味しているが、その濃度は極めて僅かであり、しかも散発的にしか発生していないことから、ノズル2を溶融金属から保護するシールドガスSGsが機能していたことがわかる。
【0089】
また、キャリアガスが亜鉛と反応して窒化した可能性を確認すべく窒素の存在を調査したが窒素は全く検出されなかった。このことは窒化する間もなく急速に亜鉛粒子が冷却されたためと考えられる。
【0090】
また、酸素が検出されたが、これはワイヤの酸化皮膜による持ち込みである可能性が高い。
【0091】
1-3 ノズル長さの調節
なお、一つのスリットTからノズル2内にシールドガスSGsを供給しても、ある距離についてガスと粒子が移動すると、やがてはノズル2内に少なからず存在する乱れによって粒子がノズル内壁2k近くまで拡散してしまう。
【0092】
そこで、本実施形態の加速ノズル1では、複数のリング状部品2a〜2jを連結することによってノズル2を構成するとともに、リング状部品の各連結部分に形成されたスリットTからそれぞれシールドガスSGsを、ノズル中心軸と略平行な方向でノズル2内に供給しており、シールドガスSGsの供給動作を、粒子の加速に必要な長さまで繰り返し行っている。
【0093】
また、ノズル2内にシールドガスSGsを供給する間隔は、リング状部品2a〜2iの厚みによって決定されるが、通常は5〜20mmの範囲内で選択することができる。
【0094】
リング状部品2a〜2iについて必要な厚さを事前に予測することは困難なため、各種厚みのリング状部品を用意して微粒化を行い、試行錯誤によってリング状部品の厚さを決定する。
【0095】
例えば、ノズル内壁に粒子の付着が見られた場合には厚みの薄いリング状部品に交換し、粒子の付着がない場合にはリング状部品の厚さを増すといった厚み調整を行う。
【0096】
また、粒子の加速に必要なノズル長さは、金属材料によって、また、金属材料の供給方法(溶解炉から融点以上の十分高い温度で材料を供給するか、材料をワイヤの形態で供給し、アーク溶解させるか)によって、或いはまた、ノズル内ガス流速によって異なるため、リング状部品の連結枚数を変更することによってノズル長さを調節している。
【0097】
すわなち、ノズル2を長くすると、粒子の速度は増加するが、粒子の温度はガスによって冷却され低下する。
【0098】
溶射では付着する歩留まりと気孔率、スプレーフォーミングと3次元造形では堆積する歩留まりと密度に関係するため、ノズル長さは重要なパラメータである。
【0099】
本実施形態ではそのノズル長さを、リング状部品の連結枚数を変えるという簡単な方法で調整できるようにしているため、ノズル2全体を製作し直すことなくノズル長さを変更することが可能になっている。
【0100】
また、微粒化作業の後には必ず、ノズル2の分解清掃が必要になるが、本実施形態のリング状部品2a〜2jはどの部位にも指が届くように構成されているため、メンテナンスが簡便に行え、メンテナンスに要する時間を大幅に短縮することが可能になっている。
【0101】
1-4 シールドガスの供給方法
次に、主流ガスGsの流速にシールドガスSGsの流速を一致させてそのシールドガスSGsをノズル2内に供給する方法について説明する。
【0102】
亜音速の流れについても超音速の流れについても、流速を音速で割って無次元化したマッハ数によってガス流れの速度を表すことができるため、ここではマッハ数Mを用いて流速を説明する。
【0103】
図1に示したスロート部4を経てノズル2内に噴射される主流ガスGsも、各スリットTを経てノズル2内に噴射されたシールドガスSGsも、ノズル2内で圧力(静圧)が釣り合う状態になるまで膨張する。なお、超音速流れの場合には圧力波がノズル2内で複雑に反射することになるが、この影響は無視する。
【0104】
もし、スロート部4からの主流ガスGsも各スリットTからのシールドガスSGsも同じ全圧(淀み点圧力)と全温を持つのであれば、両ガスの流速が一致する条件は、マッハ数Mが一致することである。この時、同時にスロート部4からの流れも各スリットTからの流れも同一の圧力(静圧)を持つことになり、ノズル2内で釣り合った状態とすることができる。
【0105】
これを最も簡単に実現する方法として、図1に示したように、同一箇所の亜音速部(スロート部4の上流側)よりガスを取り出すことにより、主流ガスGsおよびシールドガスSGsを含むすべてのガスの全圧と全温を等しくすることができる。
【0106】
具体的には、リング状部品2aのスロート部4上流側から各リング状部品2a〜2iを貫通するようにしてシールドガス供給路6を穿設することによってシールドガスSGsを分岐すればよい。
【0107】
図4はノズル内ガス流れをモデル化したものである。
【0108】
なお、説明を簡単にするため、リング状部品の連結数を6段とし、スリットT1〜T5とする。
【0109】
同図に示すように、スロート部4からのガス流れG0、およびスリットT1〜T5からのガス流れG1〜G5がそれぞれ同一のマッハ数になって噴出しているとし、さらにそのままマッハ数が変わらずにノズル2内を平行に流れ、ノズル2内に円筒状のガス流れを形成すると考える。
【0110】
実際にはノズル2内の乱れによってガスは拡散しようとするが、G0〜G5間で圧力が平衡状態になっているならば各スリットT1〜T5からの噴射されるガスは膨張することも、また、収縮することもないため、各スリットから噴射されるガスが占有する断面積が変わらず、ノズルの断面積を決めるためには妥当な仮定である。
【0111】
通常、マッハ数を一定に維持するためのノズルは、G0で表されるほぼ直管からなる長いノズルであるのに対し、本発明の加速ノズルでは、シールドガスSGsをG1〜G5で示されるように段階的に噴射するように構成しているため、ノズル内壁面をノズル中心軸から段階的に遠ざけることが可能であり、粒子の付着を防止する上で有効である。
【0112】
次に、スロート部4および各スリットT1〜T5から同一のマッハ数でガスを噴射させるための条件について図5を参照しながら説明する。
【0113】
スロート最狭部の面積をA0*、スロート出口の面積をA0とすると、スロート出口でのマッハ数M0は、式(2)で表される。
【0114】
【数2】
ただし、κは比熱比である。
【0115】
同様に、スリット最狭部2mの面積をAi*、スリット出口での面積をAiとすると、
スリット出口でのマッハ数Miは、式(3)で表される。
【0116】
【数3】
ここで、i=1,2,3……。
【0117】
スロート部4およびスリットT1,T2,T3……の出口におけるマッハ数が等しいためには、
【0118】
【数4】
が成り立つ必要があり、すなわち、最狭部と出口における面積比がスロート部4および各スリットT1〜T5について等しくすればよい。
【0119】
それにより、主流ガスGsの流速とシールドガスSGsの流速を一致させることができる。
【0120】
図6は、主流ガスGsと、リング状部品2aとリング状部品2bの連結部分に形成されたスリットTから噴射されたシールドガスSGsの速度ベクトルを代表的に示したものである。
【0121】
同図に示されるように、シールドガスSGsは主流ガスGsと平行に流れ、流速が略一致していることがわかる。
【0122】
2 加速ノズルの種類
図7〜図12は本発明に係る加速ノズルの他の実施形態を示す原理図である。
【0123】
まず、図7に示す加速ノズル20は、最上流側に配置されたリング状部品21aに形成されているスロート部21d上流側近傍に、溶射材料としてのワイヤを供給するワイヤガイド22,23を配設し、これらのワイヤガイド22,23を通して陽極と陰極の電極を兼用するワイヤ24,25をノズル26内に供給し、スロート部21dの上流側で溶解させるように構成したものである。
【0124】
図8に示す加速ノズル30は、最上流側に配置されるリング状部材31aをセラミックスで構成し、このリング状部材31aに、溶射材料としてのワイヤを供給するワイヤガイド32,33を挿通し、これらのワイヤガイド32,33を通した、陽極と陰極の電極を兼用するワイヤ34,35をノズル36内に供給し、スロート部31dの下流側で溶解させるように構成したものである。
【0125】
図9および図10は、図8に示した加速ノズル30の変形例を示したものである。
【0126】
図9に示す加速ノズル37は、アーク点の上流側ノズル孔を絞る(例えば、図8に示したスロート部31dの孔径がφ3.5mmとすると、スロート部31fの孔径をφ1.3mmに絞る)ことによりそのノズル内を流れる気流を亜音速に加速できるようにしたものである。
【0127】
また、図10に示す加速ノズル38は、アーク点の上流側近傍まで細径のノズル通路31g(φ1.3mm)とすることにより、亜音速の気流をアーク点近傍で噴射するようにしたものである。
【0128】
図9に示した加速ノズル37の構成によれば、超音速気流によってアークが吹き飛ばされたり、あるいはワイヤ34,35がAl等の比較的軟らかい素材で構成され超音速気流を受けて振動することによってアークが不安定になるような場合にアークを安定させる効果がある。
【0129】
また、図10に示した加速ノズル38によれば、アーク点に近づけて亜音速の気流を噴射することができるため、図9の加速ノズル37に比べ、アークをより安定させることができる。
【0130】
上記加速ノズル37,38によれば、細く且つエネルギ密度の高いスプレーを実現することができる。
【0131】
図11に示す加速ノズル40は、最上流側に配置されたリング状部材41aをセラミックスで構成し、このリング状部材41aに、ワイヤガイドからノズルのスロート部41dを通して供給されたワイヤ42との間でアーク溶解を行うための固定電極43,44を配設したものである。
【0132】
図12に示す加速ノズル50は、垂直方向に配列されたリング状部材51a〜51cからなるノズル52を有し、金属材料をそのノズル52内に供給する手段として、ノズル52のスロート部51dを通して、溶湯を供給する溶湯ノズル53を設けたものである。
【0133】
図13に示す加速ノズル60は、水平方向に配列されたリング状部材61a〜61cからなるノズル62を有し、金属材料をそのノズル62内に供給する手段として、スロート部61dの下流側近傍に配置されているリング状部材61bを貫通して溶湯ノズル63を、主流ガスGsの流れと略直交する方向(下向きに)から挿入し、その溶湯ノズル63からノズル62内の高速ガス流に対して溶湯を供給するようにしたものである。
【0134】
なお、加速ノズルは上記した垂直方向、水平方向姿勢で配置する場合に限らず、傾斜姿勢で配置することもできる。
【0135】
3 加速ノズルを用いた噴射ノズル装置
次に、溶射材に応じた噴射ノズル装置の構成について説明する。
【0136】
3-1 亜鉛用噴射ノズル装置
Znは融点が低い(692.7K)ため、400m/sまで十分に加速できれば、衝突時の塑性変形熱で表面が溶け、基材上に付着させることができる。したがって、この場合、図14に示すように加速を重視した長いノズルを使用する。また、ガス圧力は1.2MPa、ガス温度は常温とした。
【0137】
同図(a)は噴射ノズル装置10の全体平面図を断面で表したものであり、同図(b)はその正面図を断面図で示したものである。
【0138】
両図において、噴射ノズル装置10は、本体部11と、この本体部11から突出して設けられるノズル12とを有している。
【0139】
本体部11内にはノズル12に向けて主流ガスGsを流すためのガス通路13が形成されている。このガス通路13は平面から見ると下流側に向けて先細形状に構成されており、また、左右方向からガスを供給するためのガス供給路13aと連通している。
【0140】
上記ガス通路13内には一対のワイヤガイド14,14が鋭角(下流側に向けて)に配置されており、これらのワイヤガイド14,14から送り出されるワイヤ15,15は、リング状部品12aに形成されているガイド孔を通過してノズル部12内に突出し、突出した各先端は、スロート部12mの下流側で互いに接触するようになっている。
【0141】
上記ワイヤ15,15の先端は、陽極と陰極を兼用しており電荷が付加されることによってアーク溶解されるようになっている。
【0142】
ノズル12は、複数のリング状部品12a〜12kをノズル中心軸方向に連結することによって構成されている。
【0143】
図15はノズル12の基端を構成しているリング状部品12aの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図、同図(c)は図15(b)のE−E矢視断面図である。
【0144】
リング状部品12aの中心部には主流ガスGsの流れるガス流路12nが形成され、このガス流路12nの途中にスロート部12mが形成されている。
【0145】
このスロート部12mの下流側近傍には、ワイヤを供給するためのガイド孔12p,12pが開口し、ガス流路12nの下流側端部は筒状に突出するガス流偏向部12qが形成され、シールドガスSGsの流れを主流ガスGsの流れと略平行にするようになっている。
【0146】
このガス流偏向部12qの周囲には凹溝12rが環状に形成されており、この凹溝12rとリング状部品下流側端面12sとの間には凹溝12rよりも大径に形成された係合凹部12tが環状に形成されている。
【0147】
また、凹溝12rにはシールドガスSGsを供給するためのシールドガス供給路12uが円周上に等間隔に配設されており、各シールドガス供給路12uから供給されたシールドガスSGsは、凹溝12rで合流し、ガス流偏向部12rの外壁に沿って筒状の流れを形成するようになっている(図15(c)のシールドガス流SGs参照)。
【0148】
なお、図中、12vはスタック用ボルトを通すための孔部である。
【0149】
図16は上記リング状部品12aの下流側に連結されるリング状部品12bの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図である。
【0150】
なお、リング状部品12b〜12jについてはガス流路12nの内径が順次拡大される点を除いては基本的に同じ構成であるため、上記リング状部品12bを代表してそれらの構成を説明する。
【0151】
リング状部品12bにおける上流側端面12wの中心部には筒状の係合凸部12xが形成されており、この係合凸部12xは上記したリング状部品12aの係合凹部12tと嵌合するようになっている。
【0152】
また、リング状部品12bにおけるガス流路12nの内径d2>リング状部品12aのガス流偏向部12qにおける外径d1となっている。
【0153】
なお、環状溝12yにはシール材としてのOリングが装着される。また、図中、12q′はガス流偏向部、12r′は環状の凹溝、12t′はさらに下流側に連結されるリング状部品の係合凸部が嵌合される係合凹部である。
【0154】
図17は、ノズル12の先端に配置されるリング状部品12kの構成を示したものであり、同図(a)は平面断面図、同図(b)は右側面図である。
【0155】
リング状部品12kはその中心部にガス流路12nが形成され、上流側端面12w′に係合凸部12x′が形成されている。リング状部品12aから段階的に拡大されたガス流路12nの内径dは、最終的にこのリング状部品12kの内径、本実施形態では15mmとなっている。
【0156】
3-2 チタン用噴射ノズル装置
Tiは融点が高い(1953K)ため、粒子が冷え過ぎた場合700m/s程度まで加速しないと衝突時の塑性変形熱による熱で表面を溶かし付着させることができない。この粒子の加速に必要なガス圧力は、空気の場合、50MPaを超えることになる。したがって、Tiの溶射では粒子が冷え過ぎないように短いノズルを使用する。また、ガス圧力は1.8MPa、ガス温度は常温とした。
【0157】
図18(a)は噴射ノズル装置10′の全体平面図を、同図(b)はその正面図をそれぞれ断面図で示したものである。
【0158】
両図において、噴射ノズル装置10′は、本体部16と、この本体部16から突出して設けられるノズル部17とを有している。
【0159】
本体部16内にはノズル部17に向けて主流ガスを流すためのガス通路18が形成されており、このガス通路18に対して左右方向からガスを供給するガス供給路18aが形成されている。
【0160】
このガス通路18内には一対のワイヤガイド19,19が鋭角に配置されており、これらのワイヤガイド19,19から送り出されるワイヤ19a,19aはリング状部品12aに形成されているガイド孔を通過してノズル部17内に突出し、突出した各先端は、スロート部17iの下流側で互いに接触するようになっている。
【0161】
ノズル部17は、各リング状部品17a〜17hを筒軸方向に連結することによって構成されており、各リング状部品17a〜17hにおける連結部分に形成されているスリットからシールドガスSGsがノズル17内に向け、主流ガスGsの流れと平行に噴射されるようになっている。
【0162】
なお、上記実施形態では溶射材としてZnとTiを例に取り説明したが、溶射材としてはこれ以外に、Al,Cu,SUS鋼等の金属/合金,セラミックス,サーメット等を使用することもできる。
【0163】
また、上記実施形態では同じ厚さのリング状部品を複数枚連結することによってノズルを構成したが、異なる厚さのものを混在させて連結することもできる。
【0164】
また、上記実施形態では上記ノズルを上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルで構成したが、連続的に拡大する末広ノズルで構成することもできる。この場合、ノズル内壁円周位置に噴射口を多数配列することによってノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射することになる。
【0165】
3-3 溶射性能
図19に示すグラフは、異なる溶射材を使用した場合の溶射性能を比較したものであり、(a)のグラフは溶射によって形成された皮膜の密度を、(b)のグラフは皮膜の歩留まりをそれぞれ示している。
【0166】
テストピースとして使用した溶射材は、Al,Cu,Ti,SUS304である。なお、溶射試験に際してはリング状部品の連結枚数を変更することにより、溶射材毎にノズル長さを調節した。具体的には、融点が低い溶射材については加速を重視した長いノズル、例えばAl,Cuについては200mm長さのノズルを使用した。一方、融点の高い溶射材については粒子が冷え過ぎないように短いノズル、例えばTiについては40mm、SUS304については70mmを使用した。
【0167】
(a)のグラフに示すように、各溶射材によって得られた皮膜密度は90〜94%と高密度であり良好な成膜状態が確認できた。
【0168】
また、(b)のグラフに示すように、ノズル長さを40〜200mmの範囲で変更し、皮膜の歩留まりを調べた。その結果、ノズル長さが長くするにつれて各溶射材ともに、歩留まりが低下する傾向が確認された。これは、飛行中の粒子が冷え過ぎると基材に付着しにくくなるからであると考えられる。
【0169】
なお、Alについてはノズル長さを200mmとしても40%程度の歩留まりが得られるが、Cuついては15%程度、SUS304やTiについては5〜10%程度の歩留まりしか得られない。このことから、溶射材に融点の低い材料を使用する場合は長さ200mmまでのノズルを使用することができるが、融点の高い材料を使用する場合はノズル長さの上限を70mm以下に設定することが好ましい。より好ましくは40mm程度である。
【0170】
図20に示すグラフは、40mm長さのノズルを用いて成膜されたTi溶射皮膜をEPMAによってφ1μm程度の点について成分分析したものであり、横軸はエネルギ、縦軸はX線強度を示している。
【0171】
同グラフから分かるように、溶射皮膜を構成している元素としてTiが検出されている。分析結果に酸素は検出されておらず、それにより、酸化のない状態でTi皮膜を形成できることが実証された。
【0172】
なお、NおよびCも極めて僅かな量、検出されているが、Nはキャリアガスとしての窒素が検出されたものであり、Cはテストピースを成形するための樹脂が成分として検出されたものであり、無視することができる。
【0173】
4 コールドスプレー
次に、本発明の加速ノズルをコールドスプレーに適用する場合の構成について説明する。
【0174】
コールドスプレーは、溶射材の融点よりも低い温度の超音速ガス流に粉末状態の溶射材を投入し、固相状態のままその溶射材を基材に衝突させて皮膜を形成する方法である。
【0175】
溶射材としては、金属、合金、サーメット、セラミックス等を使用することができる。また、溶射材の粒径は、一般的に、1〜50μmのものを使用することができる。
【0176】
図21に示すように、コールドスプレー用の噴射ノズル装置70は、本体部71と、この本体部71の先端に接続される加速ノズル72とから主として構成されている。
【0177】
上記本体部71は中空室71aを有し、この中空室71aのスプレー方向前側には先細部71bが形成されている。また、中空室71aには高圧ガスを供給する第1供給孔71cと、高圧ガスと粉体とを供給する第2供給孔71dがそれぞれ連通しており、各高圧ガスは共通のガス源(窒素、ヘリウム、空気等)から分岐させて供給するようになっている。
【0178】
上記加速ノズル72の構成は、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じものであり、ノズル内を飛行する溶射材に対しその周囲に筒状のシールドガスを形成することができるように構成されている。
【0179】
上記噴射ノズル装置70によれば、第1供給孔71cを通じて供給される高圧ガスと第2供給孔71dを通じて供給される溶射材を含む高圧ガスとが中空室71a内で合流し、先細部71bを通過することによって超音速流となる。
【0180】
加速ノズル72を構成している各リング状部品72a〜72kの各スリットTからはその内壁に沿ってガスが順次噴射され略筒状のガス流を形成している、それにより、加速ノズル72内を飛行する溶射材は、略筒状に流れるガス流によってシールドされる。
【0181】
それにより、本体部71から超音速で噴射された溶射材は、加速ノズル72の内壁に接触することなく、すなわち、内壁に堆積することなく加速され、基材に衝突し、その結果、皮膜が形成される。
【0182】
上記噴射ノズル装置70によれば、例えば部品の必要範囲にだけを狙って部分加工を行なうことが可能になるとともに、緻密な皮膜を形成することができる。
【0183】
5 高速フレーム溶射
図22は、本発明の加速ノズルを高速フレーム溶射に適用する場合の構成を示したものである。
【0184】
同図に示すように、高速フレーム溶射装置の溶射ガン80は、燃焼チャンバ80aとノズル部80bとバレル部80cとからなっている。
【0185】
燃焼チャンバ80aで燃料と酸素が混合、着火されることにより燃焼炎(フレーム)が発生し、この燃焼炎はノズル部80bに形成されたスロート部80dで一旦、絞られることにより高速流となり、さらにバレル部80cを通過する。
【0186】
従来技術としての高速フレーム溶射では、一般的に粉末溶射材を供給するようになっており、バレル部80cの長さは長い方が粒子を加速させることができ、基材に堆積される皮膜中の気孔を減らす上で有利である。しかしながら、バレル部80cを長くすると、燃焼炎中を加速中の粒子はその火炎熱によって溶融し始め、やがてバレル部80cの内壁に付着してしまう。
【0187】
そこで、図22に示した高速フレーム溶射装置では、バレル部80cの先端に、さらに、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じ構成からなる加速ノズル81を接続している。
【0188】
上記加速ノズル81をバレル部80cの先端に接続することにより、粒子が溶融を開始してからもノズル内で粒子の加速を維持することが可能になる。その結果、粒子がバレル内壁に付着するという従来の高速フレーム溶射の問題点を解消することができる。
【0189】
なお、本発明の加速ノズルは、上記した高速フレーム溶射に限らず、プラズマ溶射等、高温ガスによって粒子を溶解させるタイプの溶射装置の後段に接続することも可能であり、ノズル内での加速を維持させてノズル内壁への粒子の付着を解消することができる。
【0190】
なお、図中、82は溶射粒子、83は基材、84はその基材83上に堆積される溶射皮膜を示している。
【0191】
6 微粒化装置
図23は、溶融金属流を微細化することにより金属粉を製造する微粒化装置に、本発明の加速ノズルを適用する場合の構成を示したものである。
【0192】
同図において、微粒化装置90は、溶解炉91の下方に配置されたハウジング92内に収納されている。
【0193】
微粒化装置90は、中空の環状部90aと、その外周壁から直径方向に延設された支持体90bおよび90cを有し、一方の支持体90cは中空からなり、環状部90aに連通して高圧ガスの供給路として機能するようになっている。
【0194】
また、支持体90b,90cはそれらの軸まわりに回動するようになっており、それにより、環状部90aを紙面厚さ方向に揺動させることができる。
【0195】
環状部90aの底面には、図1に示した加速ノズル1の構成と基本的に同じ構成からなる加速ノズル93が垂設されている。
【0196】
上記構成において、支持体90cを通じて環状部90aに供給された高圧ガスは、噴射ノズル装置93の各リング部品93a〜93hのスリットTからも噴射されるようになっている。
【0197】
なお、上記環状部90aが揺動動作する微粒化装置では、微粒化装置90が溶解炉91に固定されない構造上、溶解炉91とその微粒化装置90との間には空間94が存在しており、この空間94は通常、ほぼ大気圧となっている。
【0198】
上記構成を有する微粒化装置90において、溶湯ノズル91aから吐出された溶湯95は、重力によって鉛直方向に流下し、環状部90aの中心を通過する際に、高圧ガス(アトマイズガス)AGsによって微粒化される。
【0199】
微粒化された粒子はさらに加速ノズル93内を通過する際にスリットTから噴射される高圧ガスによって加速され、基材に衝突する衝突速度が高められる。
【0200】
基材上に粒子が堆積して形成されたビレットの密度は、粒子の衝突速度にほぼ比例するため、粒子を加速させることができる上記加速ノズル93を付加することにより、密度の高いビレットを成形することができる。
【0201】
なお、上記構成では空間94が加速ノズル93のノズル中央に連通しているため、加速ノズル93は、ノズル中央から大気圧のガスを吸い込んで粒子とともに加速することになる。したがって、ノズル中央に高圧ガスを導入する場合と比較すると、粒子を加速する能率は低くなる。
【0202】
そこで、ノズル内の粒子速度とガスマッハ数を実験により測定すると、例えば0.6MPaのガスをリング状部品の各スリットTから噴射した場合、ノズル中央を飛行する粒子の速度は300m/s(ノズル中央に高圧ガスを供給した場合は400m/s)となり、ガスのマッハ数は1.0〜1.5程度まで加速することができた。それにより、実用上、満足できる加速効果の得られることが確認された。
【0203】
7 水実験モデルを用いた粒子速度測定
図24は加速ノズル内を飛行する粒子の速度および速度分布を測定するために構成された水実験モデルである。
【0204】
同図において、水タンク91′は図23に示した溶解炉91に相当し、環状部90a′は同じく環状部90aに相当し、加速ノズル93′は加速ノズル93に相当する。96は水タンク91′から垂下されたノズルである。また、中空の環状部90a′から高圧ガスを供給した。
【0205】
なお、図24に示した水実験モデルは、図23に示した微粒化装置を高圧ガス供給方向から見た配置となっている。したがって、加速ノズル93′は左右方向に揺動動作する。
【0206】
図25の示すグラフは上記水実験モデルを用い、スプレー方向と直交する方向の粒子速度分布を測定したものである。
【0207】
同グラフにおいて、横軸はスプレー中心Sからの距離を示し、縦軸は粒子速度を示している。なお、本水実験モデルで使用した加速ノズル93′のノズル出口の孔径はφ16mmである。
【0208】
グラフ中、特性M1はノズル出口から25mmの距離において粒子速度を測定したものであり、ノズル内壁に近いスプレー周辺部では粒子速度が速く(350m/s)、スプレー中心部では粒子速度が遅くなる(250m/s)という速度分布が得られた。これは、スプレー中心部では大気圧のガスを吸い込みながら加速しなければならないことによって生じた遅れと考えられる。
【0209】
特性M2は、ノズル出口から250mmの距離において粒子速度を測定したものであり、スプレー中心部の粒子速度が特性M1に比べて加速される一方でスプレー周辺部についてはスプレー中心からの距離が拡がるとともに粒子速度も減衰していく。
【0210】
特性M3は、ノズル出口から550mmの距離において粒子速度を測定したものである。上記特性M2と比較し、スプレー中心部の粒子速度はやや減衰し、スプレーがさらに裾拡がりとなる。
【0211】
図26に示すグラフは、スプレー方向における粒子速度分布を測定したものである。
【0212】
同グラフにおいて、横軸はスプレー高さを、左縦軸は粒子速度を、右縦軸は粒子径をそれぞれ示している。
【0213】
特性N1はスプレー高さ60〜1250mmの範囲で粒子速度の変化を測定したものであり、スプレー高さが約300mmまでは粒子は加速途中であるため、310m/s程度まで速度が増加するが、それ以後は徐々に減衰していく。
【0214】
また、粒子径については、スプレー高さ500mmまでは21μm前後で安定するが、スプレー高さ500mmを超えるとやや粒子径が大きくなる傾向がある。これは飛行する粒子同士が合体することによるものと推定される。
【0215】
また、水実験モデルにおける水を塗料に変更すれば、本発明の加速ノズルを塗装にも利用することができるようになる。
【0216】
上記各実施形態を用いて説明したように、本発明の加速ノズルは、微粉製造、スプレーフォーミング、溶射、成膜、3次元造形、塗装等のいずれの分野にも幅広く適用することができる。
【0217】
なお、上述した各実施形態では円筒状加速ノズルを例に取り説明したが、加速ノズルは上記円筒形に限らず、例えば図27に示すように、角型部品100a〜100dを接続した角筒状ノズル100であってもよい。角筒状ノズル100に構成する場合、ノズル孔100eの開口形状は偏平な矩形であってもよく、また、正方形であってもよい。なお、図中100fは、スロート部である。
【産業上の利用可能性】
【0218】
噴射ノズル内の高速ガス流を延長することによって粒子加速効果を有効に活用することができる噴射ノズル装置であり、粒子の微粒化とノズル内壁への粒子付着防止を両立させることが必要な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0219】
1 加速ノズル
2 ノズル
2a〜2j リング状部品
2k ノズル内壁
2m スリット最狭部
3 入口側
4 スロート部
5 出口側
6 シールドガス供給路
7 ガス流偏向部
8 上流側端面
9 スタックボルト孔
11 本体部
12 ノズル部
12a〜12k リング状部品
13 ガス通路
14 ワイヤガイド
15 ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、
上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、その噴射口が上記ノズル孔の筒軸方向に複数段備えられ、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を構成してなることを特徴とする噴射ノズル装置。
【請求項2】
上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が連続的または段階的に拡大する末広ノズルに形成されている請求項1記載の噴射ノズル装置。
【請求項3】
上記ノズルは、複数のリング状部品をリング中心軸方向に連結した集合体から構成されている請求項1または2記載の噴射ノズル装置。
【請求項4】
上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルに形成され、連結されたリング状部品における各隣り合った内壁段差部分に、上記シールドガス噴射口としてのスリットが環状に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項5】
上記スリット上流側のシールドガス供給路に、シールドガスの流速を上記高速ガス流の流速に揃えるためのシールドガス用スロート部が形成されている請求項4記載の噴射ノズル装置。
【請求項6】
上記リング状部品の下流側内周縁部に、上記シールドガスの流れを上記ノズルの中心軸と略平行に且つ下流側に向けて揃えるためのガス流偏向部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項7】
上記ノズルのスロート部近傍に、溶射材料をワイヤの形態で供給する一対のワイヤガイドが配設され、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項8】
上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このセラミックスに、溶射材料としてのワイヤを供給する一対のワイヤガイドを挿通し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項9】
上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このリング状部品に、ワイヤガイドから上記スロート部を通して供給されたワイヤとの間でアーク溶解を行うための固定電極が配設されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項10】
上記スロート部を通して、上記ノズル中心軸上に溶湯を供給する溶湯ノズルが設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項11】
上記リング状部品を貫通して設けられた溶湯ノズルから上記ノズル内の高速ガス流に対して交差する方向から溶湯を供給するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項1】
ノズル入口側に導入したキャリアガスを、上記ノズル内のスロート部を通過させることにより高速ガス流とし、ノズル内で溶融状態にある材料をその高速ガス流によって微粒化し、微粒化した粒子をノズル出口側から噴射する噴射ノズル装置において、
上記スロート部下流側のノズル孔における周方向内壁にノズル中心軸と略平行に且つ下流側に向けてシールドガスを噴射する噴射口を有し、その噴射口が上記ノズル孔の筒軸方向に複数段備えられ、上記高速ガス流の周囲に筒状のシールドガスの流れを形成するシールドガス供給部を構成してなることを特徴とする噴射ノズル装置。
【請求項2】
上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が連続的または段階的に拡大する末広ノズルに形成されている請求項1記載の噴射ノズル装置。
【請求項3】
上記ノズルは、複数のリング状部品をリング中心軸方向に連結した集合体から構成されている請求項1または2記載の噴射ノズル装置。
【請求項4】
上記ノズルは上記スロート部からノズル出口に向けて内径が段階的に拡大する末広ノズルに形成され、連結されたリング状部品における各隣り合った内壁段差部分に、上記シールドガス噴射口としてのスリットが環状に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項5】
上記スリット上流側のシールドガス供給路に、シールドガスの流速を上記高速ガス流の流速に揃えるためのシールドガス用スロート部が形成されている請求項4記載の噴射ノズル装置。
【請求項6】
上記リング状部品の下流側内周縁部に、上記シールドガスの流れを上記ノズルの中心軸と略平行に且つ下流側に向けて揃えるためのガス流偏向部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項7】
上記ノズルのスロート部近傍に、溶射材料をワイヤの形態で供給する一対のワイヤガイドが配設され、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項8】
上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このセラミックスに、溶射材料としてのワイヤを供給する一対のワイヤガイドを挿通し、これらのワイヤガイドの先端からノズル内に突出した一対のワイヤに対し、陽極と陰極の各電極として電荷を印加するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項9】
上記高速ガス流の流れ方向において最上流側に配置される上記リング状部品をセラミックスで構成し、このリング状部品に、ワイヤガイドから上記スロート部を通して供給されたワイヤとの間でアーク溶解を行うための固定電極が配設されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項10】
上記スロート部を通して、上記ノズル中心軸上に溶湯を供給する溶湯ノズルが設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【請求項11】
上記リング状部品を貫通して設けられた溶湯ノズルから上記ノズル内の高速ガス流に対して交差する方向から溶湯を供給するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の噴射ノズル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図22】
【図24】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図22】
【図24】
【図28】
【公開番号】特開2009−136870(P2009−136870A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6519(P2009−6519)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【分割の表示】特願2007−24715(P2007−24715)の分割
【原出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【分割の表示】特願2007−24715(P2007−24715)の分割
【原出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]