説明

噴霧機

【課題】 噴霧の飛散を少なくする。
【解決手段】 本発明の噴霧機1は、ポンプにより圧送される液体を噴霧する多頭口噴管5を備え、多頭口噴管5に配置された噴口12の周囲を囲繞する飛散防止カバー30が設置されている。飛散防止カバー30は、噴口12における噴霧上流側及び噴霧下流側にそれぞれ上流側開口30e及び下流側開口30fを有しており、上流側開口30eの開口面積よりも下流側開口30fの開口面積の方が大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に薬液、液肥、水等の液体を噴霧する噴霧機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場を走行可能に車輪52に支持された機体51に、ポンプ71により圧送される液体を下向きに噴霧する多頭口噴管65が支持された自走式噴霧機50が記載されている。詳細は特許文献1に記載されているが、この自走式噴霧機50は、図10に示すように、機体51が4輪の車輪52により前後走行可能に支持され、機体51のほぼ中央部に車輪52を駆動するエンジン57が設置され、機体51の前端に多頭口噴管65が水平にかつ機体51の進行方向に対し垂直に支持されている。多頭口噴管65には、動噴装置70のリール73から繰り出される給液ホース55が連結され、動噴装置70のポンプ71により圧送される液体が給液ホース55から多頭口噴管65に供給され、噴口66から噴霧されるようになっている。
【0003】
特許文献2には、天丼壁及び左右の側壁からなる門形枠体を有し、その中に噴口を配置した牽引走行式噴霧機が記載されている。この噴霧機では、天丼壁及び左右の側壁により三方への薬液の飛散を防止でき、さらに天丼壁の後端から後方被いを垂らすことにより、後方への薬液の飛散を防止できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−209464号公報
【特許文献2】特開2005−13037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自走式噴霧機50により農薬を散布すると、無風状態に近くても浮遊する噴霧の飛散範囲は広く、風があると飛散範囲はさらに大きく拡大する。噴霧が例えば隣接する圃場に飛散し、そこの作物に付着した場合、作物に害を与えたり、知らないうちに農薬使用基準に違反するということが起こり得る。
【0006】
一方、特許文献2に記載された牽引走行式噴霧機では、噴口の周囲を門形枠体で取り囲むことにより噴霧の横飛散を抑えている。しかし、門形枠体では、浮遊する噴霧が前後開口から外部に飛散するのを防ぐことはできず、たとえ後方被いを設置しても、浮遊する噴霧は被いの下を通って門形枠体から抜け出し、飛散する。特に開放された圃場で風があると、飛散防止効果は急激に低下する。さらに、門形枠体は噴霧機全体を被う大きさを有し、これを仮に特許文献1に記載された自走式噴霧機に適用して多数の畝列に同時に農薬散布しようとすれば、門形枠体が構造的に大きくなりすぎて、実用化は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明の噴霧機は、
ポンプにより圧送される液体を噴霧する噴管を備えた噴霧機において、
前記噴管に配置された噴口の周囲を略囲繞する飛散防止カバーが設置されており、
該飛散防止カバーは、前記噴口における噴霧上流側及び噴霧下流側にそれぞれ上流側開口及び下流側開口を有しており、前記上流側開口の開口面積よりも前記下流側開口の開口面積の方が大きくなるように構成されている。
【0008】
前記「噴口の周囲を略囲繞」とは、前記噴口の周囲の全体を取り囲んでいる場合に限定されない。例えば、前記噴口の周囲における任意の1又は2以上の箇所に、穴、切れ目又は隙間等を有しながらも、前記飛散防止カバーの中で、前記噴口から噴霧すると、該飛散防止カバー内に前記上流側から空気が流れ込んで噴霧流が増幅され、上流側から下流側に向かって勢いよく流れる気流が発生するように、前記噴口の周囲を取り囲んでいるような場合も、前記「噴口の周囲を略囲繞」に含まれる。
【0009】
この構成によれば、前記噴口は前記上流側及び前記下流側が開放した前記飛散防止カバーにより囲繞されている。前記飛散防止カバーの中で、前記噴口から噴霧すると、該飛散防止カバー内に前記上流側から空気が流れ込んで噴霧流が増幅され、上流側から下流側に向かって勢いよく流れる気流が発生し、噴霧はその気流とともに下流側に流れ、圃場に植えられた作物又は表土に付着する。しかも、前記上流側開口の開口面積よりも前記下流側開口の開口面積の方が大きくなるように構成されているので、該下流側開口から気流がスムーズに放出される。その結果、横方向への浮遊噴霧の飛散が減り、また風による飛散も抑えられる。なお、前記飛散防止カバーの上流側が開放されていない場合、上流側から下流側に向かう気流が発生しないだけでなく、該飛散防止カバー内が負圧になって、かえって噴霧が浮遊し、飛散が抑えられない。また、前記上流側開口の開口面積よりも前記下流側開口の開口面積の方が小さい場合、気流の一部が前記上流側開口に逆流することがあり、該上流側開口からも噴霧が放出されてしまうことがある。
【0010】
第2の発明の噴霧機としては、前記第1の発明において、
前記飛散防止カバーは、前記下流側開口に、前記噴霧下流側へ延びる可撓性の暖簾状部位が配設された態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前記下流側開口から前記暖簾状部位が垂れ下がり、該下流側開口と圃場表面側との隙間を狭くするので、噴霧の飛散をさらに低減することができる。なお、前記暖簾状部位は可撓性を有しているので、圃場に植えられた作物や表土に接触しても、これらを痛めることがなく、また、下流側へ向かう気流の流れを大きく妨げることもない。
【0012】
第3の発明の噴霧機としては、前記第2の発明において、
前記噴霧機は、前記噴口が圃場に向けて下向きに噴霧するように構成されており、
前記暖簾状部位の下側縁部は、前記圃場の表面形状に沿った形に形成された態様を例示する。
【0013】
前記圃場の表面形状とは、圃場自体の表面形状や、圃場に植えられた作物を含む表面形状をいう。
【0014】
この構成によれば、前記下流側開口と圃場表面側との隙間をさらに狭くすることができるので、噴霧の飛散を、よりさらに低減することができる。
【0015】
第4の発明の噴霧機としては、前記第1〜3のいずれかの発明において、
前記飛散防止カバーは、前記噴口又は前記噴管に連結されており、前記噴口又は前記噴管とともに、噴霧機本体側に対して一体的に着脱可能に構成された態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、該飛散防止カバーと前記噴口又は前記噴管とを噴霧機本体側から取り外すことにより、旋回時、運搬時、収納時等に占有スペースを小さくすることができる。この構成は、特に、次の多頭口噴管タイプの場合に有効である。
【0017】
第5の発明の噴霧機としては、前記第1〜4のいずれかの発明において、
前記噴管は、その長さ方向へ複数個の噴口が配置された多頭口噴管である態様を例示する。
【0018】
第6の発明の噴霧機としては、前記第5の発明において、
前記飛散防止カバーが多頭口噴管の全部の噴口の周囲をまとめて囲繞するように構成された態様(飛散防止カバーが1つの態様)を例示する。
【0019】
第7の発明の噴霧機としては、前記第5の発明において、
前記飛散防止カバーが複数個に分割された態様(飛散防止カバーが2以上の態様)を例示する。ここで、各飛散防止カバーは1つの噴口の周囲のみを囲繞してもよく、2個以上の噴口の周囲をまとめて囲繞してもよい。
【0020】
前記第6及び7の発明のように、前記飛散防止カバーとしては、前記噴管の形態等に応じて、種々の態様を採用することができる。
【0021】
第8の発明の噴霧機としては、前記第1〜7のいずれかの発明において、
前記噴管は、その長さ方向へ伸縮可能に構成されており、
前記飛散防止カバーは、該噴管の伸縮に連動して伸縮するように構成された態様を例示する。
【0022】
この構成によれば、圃場の形状や、栽培形態等に応じて適宜前記噴管及び前記飛散防止カバーの長さを調節することができる。
【0023】
第9の発明の噴霧機としては、前記第1〜8のいずれかの発明において、
圃場を走行可能に1又は2以上の車輪に支持された機体を備え、該機体に前記噴管及び前記飛散防止カバーが装備された態様を例示する。
【0024】
第10の発明の噴霧機としては、前記第9の発明において、
前記機体を人力で進行させるためのハンドルが設置された態様を例示する。
【0025】
第11の発明の噴霧機としては、前記第9の発明において、
前記車輪を駆動する駆動装置が前記機体に設置された態様を例示する。
【0026】
第12の発明の噴霧機としては、前記第9の発明において、
別体の牽引装置に接続するための接続部が前記機体に設置された態様を例示する。
【0027】
第13の発明の噴霧機としては、前記第9〜12のいずれかの発明において、
前記噴管は、前記機体の進行方向に対し垂直に支持された態様を例示する。
【0028】
前記第9〜13の発明によっても、本発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の噴霧機によれば、噴霧の飛散を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図7は本発明を具体化した第一実施形態の噴霧機1を示している。この噴霧機1は、図1〜図4に示すように、圃場Hを走行可能に車輪2に支持された機体4に、ポンプ(図示略)により圧送される液体を下向きに噴霧する多頭口噴管5が支持されており、多頭口噴管5に配置された噴口12の周囲を囲繞する飛散防止カバー30が設置されている。
【0031】
機体4は、一輪の車輪2で走行可能に構成されており、該機体4を人力で進行させるための手押しハンドル6と、走行停止時に機体4を支持するための跳ね上げ式スタンド7とを備えている。
【0032】
本例の多頭口噴管5は、その長さ方向へ複数個の噴口12が配置されており、機体4の進行方向に対し垂直に支持されている。多頭口噴管5は、三方コック8を介して互いに可撓性のホース14及びジョイント部15で連結された左右の噴管片9,9からなり、それぞれに下向きに噴霧する噴口12が7個ずつ設置されている。ジョイント部15は機体4に支持されており、各噴管片9はジョイント部15により機体4から着脱可能になっている。三方コック8には、図示しない動噴装置のリールから繰り出される給液ホース13が連結され、動噴装置のポンプにより圧送される液体が三方コック8,ホース14,ジョイント部15を介して多頭口噴管5に供給され、各噴口12から噴霧されるようになっている。なお、三方コック8を操作することにより、左右の噴管片9,9のいずれかのみに液体を供給することも可能になっている。
【0033】
本噴霧機1には、機体の左右に伸びる1つの飛散防止カバー30が設置されており、飛散防止カバー30は、多頭口噴管の全部(本例では14個)の噴口12の周囲をまとめて囲繞するように構成されている。飛散防止カバー30内における噴口12の位置は、飛散防止カバー30内であれば、特に限定されないが、本例では飛散防止カバー30の上下方向の中心位置よりやや上の位置としている。
【0034】
本例の飛散防止カバー30は、図1,図5及び図6に示すように、左右方向における中央部で、左右のカバー片32,32に分割可能に構成されており、各カバー片32は、カバーの輪郭を決める骨格としての枠体34と、枠体34に沿って組付部材38(図1参照。例えば、紐状部材、面ファスナー等。)で組み付けたプラスチックフィルム35からなっている。左右のカバー片32の接合部におけるプラスチックフィルム35同士は、面ファスナー39で貼り合わすようになっている。飛散防止カバー30は、全体としてみると、前後方向に所定間隔を置き互いにやや傾斜させて配置された略台形の前面及び後面(前後面30a,30b参照)と、その両端を塞ぐようにやや傾斜させて配置された略台形の両側面(両側面30c,30d参照)で構成される中空の部材で、上方及び下方に長方形の開口(上流側開口30e,下流側開口30f参照)が形成されているとともに、下流側開口30fに、噴霧下流側へ延びる可撓性の暖簾状部位36が配設されている。本例では、暖簾状部位36は、プラスチックフィルム35に一体形成されている。このように、飛散防止カバー30は、噴口12における噴霧上流側及び噴霧下流側にそれぞれ上流側開口30e及び下流側開口30fを有しており、上流側開口30eの開口面積よりも下流側開口30fの開口面積の方が大きくなるように構成されている。
【0035】
左右のカバー片32は、図7に示すように、それぞれの枠体34がそれぞれ機体左右の枠取付部37に固定具37a(例えば、ピン等)で着脱可能に固定されるようになっている。また、左右のカバー片32は、それぞれ左右の噴管片9に連結されることにより、各噴管片9に一体化されている。このため、枠体34と枠取付部37との固定を解くとともに、噴管片9をジョイント部15で取り外すことにより、カバー片32及び噴管片9を一体的に噴霧機1から取り外すことができる。
【0036】
本例の飛散防止カバー30及び多頭口噴管5は、図2及び図3に二点鎖線で示すように、機体4の高さ調節部16を介して高さ調節可能に支持されている。高さ調節部16は、機体4の前部に立設された支柱16aと、該支柱16aに上下位置調節可能に設けられたスライド部16bとを備え、スライド部16bに飛散防止カバー30及び多頭口噴管5が取り付けられている。スライド部16bは、固定ネジ16cにより、支柱16aに対する上下位置が固定されるようになっている。
【0037】
本例の噴霧機1を作動させると、飛散防止カバー30内において、上流側から下流側へ向かう気流により、機体4の左右に延びる飛散防止カバー30及び多頭口噴管5がホバークラフト状に浮き上がるようになり、これが一種のパワーアシストとなり、比較的軽い力で操縦することができるようになっている。
【0038】
なお、本例の噴霧機1では、飛散防止カバー30の上下方向幅や開口30e,30fの大きさ、あるいは飛散防止カバー30内の噴口12の上下方向位置など、望ましい下向き気流が発生するように、実験的に容易に求めることができる。また、飛散防止カバー30の形状としては、本例に特に限定されず、例えば、囲繞する噴口12の数によって円筒形、レーストラック形のものなど、種々の輪郭のものを適宜採用することができる。
【0039】
以上のように構成された本発明の噴霧機1によれば、噴口12は前記上流側及び前記下流側が開放した飛散防止カバー30により囲繞されている。飛散防止カバー30の中で、噴口12から噴霧すると、図1に示すように、飛散防止カバー30内に上流側開口30eから空気が流れ込んで噴霧流Sが増幅され、上流側から下流側に向かって勢いよく流れる気流が発生し、噴霧はその気流とともに下流側に流れ、圃場Hに植えられた作物C又は表土に付着する。しかも、上流側開口30eの開口面積よりも下流側開口30fの開口面積の方が大きくなるように構成されているので、下流側開口30fから気流がスムーズに放出される。その結果、横方向への浮遊噴霧の飛散が減り、また風による飛散も抑えられる。なお、飛散防止カバー30の上流側が開放されていない場合、上流側から下流側に向かう気流が発生しないだけでなく、飛散防止カバー30内が負圧になって、かえって噴霧が浮遊し、飛散が抑えられない。また、上流側開口30eの開口面積よりも下流側開口30fの開口面積の方が小さい場合、気流の一部が上流側開口30eに逆流することがあり、該上流側開口30eからも噴霧が放出されてしまうことがある。
【0040】
なお、このように、下流側開口30fが上流側開口30eよりやや幅(前後方向幅及び左右方向幅)が広く形成されているのは、噴口12からの噴霧が飛散防止カバー30内で円錐状に広がるためもである。
【0041】
また、飛散防止カバー30は、下流側開口30fに、噴霧下流側へ延びる可撓性の暖簾状部位36が配設されているので、下流側開口30fから暖簾状部位36が垂れ下がり、該下流側開口30fと圃場表面側との隙間を狭くするので、噴霧の飛散をさらに低減することができる。なお、暖簾状部位36は可撓性を有しているので、圃場Hに植えられた作物Cや表土に接触しても、これらを痛めることがなく、また、下流側へ向かう気流の流れを大きく妨げることもない。
【0042】
また、飛散防止カバー30のカバー片32は、噴管片9に連結されており、噴管片9とともに、噴霧機本体側に対して一体的に着脱可能に構成されている。このため、該カバー片32と噴管片9とを噴霧機本体側から取り外すことにより、旋回時、運搬時、収納時等に占有スペースを小さくすることができる。この構成は、特に本例のような多頭口噴管タイプの場合に有効である。
【0043】
次に、図8は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この噴霧機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く(以下、他の実施形態についても同様。)。
【0044】
本例の飛散防止カバー30における暖簾状部位36の下側縁部36aは、圃場Hの表面形状に沿った形に形成されている。この構成によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、下流側開口30fと圃場表面側との隙間をさらに狭くすることができるので、噴霧の飛散を、よりさらに低減することができる。
【0045】
次に、図9は本発明を具体化した第三実施形態を示している。この噴霧機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0046】
本例の多頭口噴管5は、分割された複数の短管41を可撓性ホース42を介して連通させており、可撓性ホース42に迂回部42aを設けて余長を持たせることにより、多頭口噴管5の長さ方向への伸縮を可能にしている。また、飛散防止カバー30の枠体34における可撓性ホース42に対応する部位は、多頭口噴管5の長さ方向へ伸縮可能かつ締付具44で伸縮長さを固定可能に構成された伸縮部位45となっている。そして、可撓性ホース42の両側の短管41は、それぞれ伸縮部位45の両側に連結具46で固定されている。これにより、本例の飛散防止カバー30は、多頭口噴管5の伸縮に連動して伸縮するように構成されている。ここで飛散防止カバー30の伸縮部位45が縮んだときは、該伸縮部位45に張られたプラスチックフィルム35が、該伸縮部位45の伸縮方向に蛇腹状に折り畳まれた状態になるように構成されている。
【0047】
この構成によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、圃場Hの形状や、栽培形態等に応じて適宜多頭口噴管5及び飛散防止カバー30の長さを調節することができる。
【0048】
次に、図11及び図12は本発明を具体化した第四実施形態を示している。この噴霧機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0049】
本例のカバー片80は、枠取付部37(図7参照)に取り付けられるカバーユニット取付部81を備えており、該カバーユニット取付部81に対して、1個又は2個以上(本例では2個)の中間用カバーユニット82と、先端用カバーユニット83とが、それぞれ結合部84を介して直列状に結合されるようになっている。このように、本例のカバー片80は、複数個(本例では3個)のユニット82,83に分解可能に構成されており、組み立てられた状態で第一実施形態における左右のカバー片32と同等のものになるように構成されている。
【0050】
カバーユニット取付部81は、カバー片80の側断面形状である略台形状に形成された台形枠体81aを備えている。中間用カバーユニット82は、左右方向に延びる略台形柱状に構成された枠体82aを備え、該枠体82aの前面側及び後面側の2面には、暖簾状部位36付きのプラスチックフィルム35がそれぞれ張設されている。先端用カバーユニット83は、左右方向に延びる略台形柱状に構成された枠体83aを備え、該枠体83aの前面側、後面側、及び側端面側の3面には、暖簾状部位36付きのプラスチックフィルム35がそれぞれ張設されている。
【0051】
結合部84は、図12に示すように、結合対象の一方に設けられた結合部第一片84aと、結合対象の他方に設けられた結合部第二片84bとにより構成されている。結合部第一片84a及び結合部第二片84bの結合構造については、特に限定されないが、本例では、結合部第一片84aに凹部86を設けるとともに、該凹部86に嵌入する凸部87を結合部第二片84bに設け、さらに固定ネジ88で結合部第一片84a及び結合部第二片84bを固定する構造を例示する。
【0052】
本例の噴霧機によれば、第一実施形態の効果に加え、カバー片80が分解・組立可能に構成されているので、該カバー片80の製造、組立、運搬又は収納等のときの占有スペースを少なくすることができる。
【0053】
次に、図13は本発明を具体化した第五実施形態を示している。この噴霧機は、以下に示す点において、主に第四実施形態と相違している。
【0054】
本例の噴管片90は、カバー片80における各カバーユニット82(83)に対応する部分管90aごとに分割形成されてなっている。各部分管90a同士は、それを支持する支持体91同士が結合部92を介して結合されとともに、各部分管90aの管内は可撓性ホース93により互いに連通されるように構成されている。なお、各カバーユニット82(83)及びそれに対応する部分管90aを一体化し、ユニット化することも可能である。
【0055】
本例の噴霧機によれば、第四実施形態の効果に加え、カバーユニット82及び部分管90aを連結する数を変更することにより、カバー片80及び噴管片90の長さを圃場の広さ等に応じて柔軟に変更できる。
【0056】
次に、図14〜図16は本発明を具体化した第六実施形態を示している。この噴霧機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0057】
本例の噴霧機は、機体側方へ伸縮可能に構成された伸縮アーム100を噴霧機の機体の左右にそれぞれ備えている。この伸縮アーム100は、基端部100aが噴霧機の機体に支持された固定アーム101と、該固定アーム101の長手方向へ延設されたレール102と、該レール102に沿ってスライド可能に配設された移動アーム103とを備えている。そして、固定アーム101及び移動アーム103の長手方向には、それぞれ固定噴管片104及び移動噴管片105が延設されており、該固定噴管片104及び移動噴管片105には、長手方向に沿って複数の噴口12が列設されている。また、固定噴管片104及び移動噴管片105には、それぞれ可撓性ホース106を介して噴霧用の液体が供給されるようになっている。
【0058】
本例の飛散防止カバーは、固定アーム101に取り付けられ、該固定アーム101の前面側及び後面側をカバーする固定カバー片107と、移動アーム103に取り付けられ、移動アーム103の前面側、後面側、及び側端面側をカバーする移動カバー片108とを備えている。移動カバー片108の側断面形状は、固定カバー片107の側断面形状よりも一回り大きめに形成されており、図15及び図16に示すように、伸縮アーム100を縮めると、固定カバー片107の外周に移動カバー片108が外装された状態となるように構成されている。
【0059】
本例の噴霧機によれば、第三実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)飛散防止カバーが複数個に分割された態様。
(2)圃場Hを走行可能に2以上の車輪に支持された機体を備え、該機体に多頭口噴管5及び飛散防止カバー30が装備された態様。
(3)飛散防止カバー30を、例えば、自走式噴霧機や、牽引式噴霧機に適用すること。
(4)多頭口噴管5を有する噴霧機でなくても、ポンプにより圧送される液体を下向きに噴霧する噴管を有する噴霧機において、該噴管に配置された噴口12の周囲を囲繞するとともに噴霧上流側及び噴霧下流側が開放した飛散防止カバーを設けることにより、同様に噴霧の飛散を抑制することができる。
(5)飛散防止カバーにより噴口の周囲を略囲繞する構成の変更例としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(5−1)飛散防止カバー30の前面及び後面の中央部に隙間G1,G2がある態様(図17(a)参照)。
(5−2)飛散防止カバー30の左右に隙間G3,G4がある態様(図17(b)参照)。
(5−3)前記(5−1)及び(5−2)を組み合わせた態様。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一実施形態に係る噴霧機の飛散防止カバーを示す側断面図である。
【図2】同噴霧機の側面図である。
【図3】同噴霧機の正面図である。
【図4】同噴霧機の平面図である。
【図5】同飛散防止カバーを分解した状態の側面図である。
【図6】同分解した状態の正面図である。
【図7】同噴霧機の機体に対する同飛散防止カバーの取付構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る噴霧機の正面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る噴霧機の飛散防止カバーの要部拡大正面図である。
【図10】従来の噴霧機を示す平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る噴霧機の要部を示す分解斜視図である。図である。
【図12】同噴霧機の飛散防止カバーのカバーユニットを示す斜視図である。
【図13】本発明の第五実施形態に係る噴霧機の要部を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の第六実施形態に係る噴霧機の伸縮アームが伸びた状態を示す斜視図である。
【図15】同噴霧機の伸縮アームが縮んだ状態を示す斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線断面図である。
【図17】本発明の飛散防止カバーの変更例の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 噴霧機
2 車輪
4 機体
5 多頭口噴管
6 ハンドル
9 噴管片
12 噴口
16 高さ調節部
30 飛散防止カバー
30a,30b 前後面
30c,30d 側面
30e 上流側開口
30f 下流側開口
32 カバー片
34 枠体
35 プラスチックフィルム
36 暖簾状部位
36a 下側縁部
37 枠取付部
37a 固定具
41 短管
42 可撓性ホース
42a 迂回部
44 締付具
45 伸縮部位
46 連結具
80 カバー片
82 中間用カバーユニット
83 先端用カバーユニット
90 噴管片
90a 部分管
100 伸縮アーム
101 固定アーム
102 レール
103 移動アーム
104 固定噴管片
105 移動噴管片
107 固定カバー片
108 移動カバー片
C 作物
H 圃場
S 噴霧流
G1〜G4 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプにより圧送される液体を噴霧する噴管を備えた噴霧機において、
前記噴管に配置された噴口の周囲を略囲繞する飛散防止カバーが設置されており、
該飛散防止カバーは、前記噴口における噴霧上流側及び噴霧下流側にそれぞれ上流側開口及び下流側開口を有しており、前記上流側開口の開口面積よりも前記下流側開口の開口面積の方が大きくなるように構成された噴霧機。
【請求項2】
前記飛散防止カバーは、前記下流側開口に、前記噴霧下流側へ延びる可撓性の暖簾状部位が配設された請求項1記載の噴霧機。
【請求項3】
前記噴霧機は、前記噴口が圃場に向けて下向きに噴霧するように構成されており、
前記暖簾状部位の下側縁部は、前記圃場の表面形状に沿った形に形成された請求項2記載の噴霧機。
【請求項4】
前記飛散防止カバーは、前記噴口又は前記噴管に連結されており、前記噴口又は前記噴管とともに、噴霧機本体側に対して一体的に着脱可能に構成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の噴霧機。
【請求項5】
前記噴管は、その長さ方向へ複数個の噴口が配置された多頭口噴管である請求項1〜4のいずれか一項に記載の噴霧機。
【請求項6】
前記飛散防止カバーが多頭口噴管の全部の噴口の周囲をまとめて囲繞するように構成された請求項5記載の噴霧機。
【請求項7】
前記飛散防止カバーが複数個に分割された請求項5記載の噴霧機。
【請求項8】
前記噴管は、その長さ方向へ伸縮可能に構成されており、
前記飛散防止カバーは、該噴管の伸縮に連動して伸縮するように構成された請求項1〜7のいずれか一項に記載の噴霧機。
【請求項9】
圃場を走行可能に1又は2以上の車輪に支持された機体を備え、該機体に前記噴管及び前記飛散防止カバーが装備された請求項1〜8のいずれか一項に記載の噴霧機。
【請求項10】
前記機体を人力で進行させるためのハンドルが設置された請求項9記載の噴霧機。
【請求項11】
前記車輪を駆動する駆動装置が前記機体に設置された請求項9記載の噴霧機。
【請求項12】
別体の牽引装置に接続するための接続部が前記機体に設置された請求項9記載の噴霧機。
【請求項13】
前記噴管は、前記機体の進行方向に対し垂直に支持された請求項9〜12のいずれか一項に記載の噴霧機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−142073(P2008−142073A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94068(P2007−94068)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】