説明

回路付サスペンション基板

【課題】配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができ、さらには、効率よく製造することができる回路付サスペンション基板を提供すること。
【解決手段】導体パターン7を表面において備える回路付サスペンション基板1において、回路付サスペンション基板1の裏面側に折り返し可能な折返部10を備え、折返部10を、その周縁において、周縁の一部が、折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1と、折曲部18を介して連続し、周縁の残部が、折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1と、回路付サスペンション基板1を厚み方向に貫通する貫通空間25を隔てて配置し、導体パターン7に、少なくとも、回路付サスペンション基板1の表面に配置されるヘッド側端子16と、折返部10に配置される素子側端子22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路付サスペンション基板、詳しくは、ハードディスクドライブに用いられる回路付サスペンション基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路付サスペンション基板は、ハードディスクドライブに用いられている。このような回路付サスペンション基板は、サスペンションと、その上に形成され、磁気ヘッドと接続するためのヘッド側端子部を有する導体パターンとを備えている。そして、この回路付サスペンション基板では、磁気ヘッドをサスペンションの上に実装して、磁気ヘッドをヘッド側端子部と接続させている。
【0003】
このような回路付サスペンション基板には、近年、種々の電子素子、例えば、光アシスト法により記録密度の向上を図るための発光素子や、磁気ヘッドの位置精度を検査するための検査用素子、さらには、磁気ヘッドの位置および角度を精細に調節するためのピエゾ素子やマイクロアクチュエータなどを搭載することが、提案されている。
【0004】
このような電子素子を搭載するための回路付サスペンション基板としては、例えば、表面に磁気ヘッドが実装される基板本体部と、基板本体部から連続して形成される補助部とを備えるとともに、導体パターンを、外部側端子とヘッド側端子とを備える第1導体パターンと、供給側端子と素子側端子とを備える第2導体パターンとを含むように、かつ、外部側端子とヘッド側端子と供給側端子とをともに基板本体部に配置し、素子側端子を補助部に配置するようにそれぞれ設けた回路付サスペンション基板が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1に記載の回路付サスペンション基板では、補助部を、基板本体部に対して折り返した後、厚み方向に隣接する基板本体部の金属支持基板と、補助部との金属支持基板とを溶接により接合する。そして、この回路付サスペンション基板では、その表面において、ヘッド側端子に磁気ヘッドを電気的に接続するとともに、折り返され、裏面側に配置された素子側端子に電子素子に電気的に接続することができるので、全ての端子を表面に配置する場合に比べ、配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−118096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、回路付サスペンション基板は、例えば、1枚の金属支持基板に絶縁層や導体パターンなどが積層された、回路付サスペンション基板が複数形成される回路付サスペンション基板集合体シートとして製造されている。
【0008】
このような集合体シートにおいては、上記した特許文献1に記載の回路付サスペンション基板は、折り返される前の状態として形成されるところ、補助部が、基板本体部から突出するように設けられているため、集合体シートにおいて補助部を設けるスペースを必要とし、1枚の集合体シートに形成できる回路付サスペンション基板の数が低減して、製造効率に劣るという不具合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができ、さらには、効率よく製造することができる回路付サスペンション基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明の回路付サスペンション基板は、導体パターンを表面において備える回路付サスペンション基板であって、前記回路付サスペンション基板は、その裏面側に折り返し可能な折返部を備え、前記折返部の周縁において、前記周縁の一部が、前記折返部の周囲の前記回路付サスペンション基板と、折曲部を介して連続しており、前記周縁の残部が、前記折返部の周囲の前記回路付サスペンション基板と、前記回路付サスペンション基板を厚み方向に貫通する貫通空間を隔てて配置されており、前記導体パターンが、少なくとも、前記回路付サスペンション基板の表面に配置される表面側端子と、前記折返部に配置される裏面側端子とを備えることを特徴としている。
【0011】
このような回路付サスペンション基板では、折り返し可能な折返部の周縁において、その周縁の一部が、折返部の周囲の回路付サスペンション基板と、折曲部を介して連続しており、周縁の残部が、折返部の周囲の回路付サスペンション基板と、回路付サスペンション基板を厚み方向に貫通する貫通空間を隔てて配置されている。
【0012】
すなわち、折返部が、回路付サスペンション基板の内側に形成されている。そのため、端子を回路付サスペンション基板の表面側および裏面側に配置し、配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができ、さらには、回路付サスペンション基板を、その集合体シートとして製造する場合にも、省スペースで、効率よく製造することができる。
【0013】
また、本発明の回路付サスペンション基板は、表面側に磁気ヘッドを搭載するスライダを実装可能とするともに、裏面側に電子素子を実装可能とし、前記導体パターンは、外部回路に電気的に接続される第1端子と、前記磁気ヘッドに電気的に接続される第2端子とを備える第1導体パターンと、外部回路に電気的に接続される第3端子と、前記電子素子に電気的に接続される第4端子とを備える第2導体パターンとを備え、前記表面側端子が前記第2端子であり、前記裏面側端子が前記第4端子であることが好適である。
【0014】
このような回路付サスペンション基板では、磁気ヘッドに電気的に接続される第2端子が、表面側端子として形成されるとともに、電子素子に電気的に接続される第4端子が、裏面側端子として形成されるため、それら端子を低い配置密度で形成でき、これにより、それらの短絡を防止することができる。その結果、導体パターンの接続信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記折返部が折り返された状態において、前記スライダと前記電子素子とが対向可能であり、前記スライダが前記第2端子に接続可能とされ、前記電子素子が前記第4端子に接続可能とされるように、 前記第2端子および前記第4端子が配置されていることが好適である。
【0016】
電子素子とスライダとが広い間隔を隔てて配置されると、電子素子の機能を十分に発現できない場合があるが、このような回路付サスペンション基板では、電子素子とスライダとが厚み方向に対向配置されるので、電子素子をスライダの近傍に配置することができ、電子素子を効率よく稼動させることができる。
【0017】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記導体パターンは、前記折返部に補助パッドを備えるとともに、前記折返部の周囲の回路付サスペンション基板に補助パッドを備えており、それら前記補助パッドが対をなし、前記折返部が折り返された状態において、少なくとも1対の前記補助パッドが、前記回路付サスペンション基板の厚み方向に互いに対向するとともに、超音波接合されることにより、前記折返部が回路付サスペンション基板の裏面側に固定可能とされていることが好適である。
【0018】
このような回路付サスペンション基板では、補助パッドを超音波接合することにより、折返部を、回路付サスペンション基板の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0019】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記導体パターンは、前記折返部に補助パッドを備えるとともに、前記折返部の周囲の回路付サスペンション基板に補助パッドを備えており、それら前記補助パッドが対をなし、前記折返部が折り返された状態において、少なくとも1対の前記補助パッドが、前記回路付サスペンション基板の厚み方向に互いに対向するとともに、はんだ接合されることにより、前記折返部が回路付サスペンション基板の裏面側に固定可能とされていることが好適である。
【0020】
このような回路付サスペンション基板では、補助パッドをはんだ接合することにより、折返部を、回路付サスペンション基板の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0021】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、少なくとも1対の前記補助パットのいずれか一方には、はんだを充填可能とする貫通穴が形成されており、前記貫通穴にはんだを充填することにより、少なくとも1対の前記補助パッドが互いに接合可能とされていることが好適である。
【0022】
このような回路付サスペンション基板では、貫通穴にはんだを充填することにより、補助パッドをより確実にはんだ接合することができ、折返部を、回路付サスペンション基板の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0023】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記貫通空間は、前記電子素子を挿通可能としていることが好適である。
【0024】
このような回路付サスペンション基板では、電子素子を、貫通空間に挿通して実装できるため、回路付サスペンション基板の薄型化を図ることができる。
【0025】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記折返部および前記第4端子が、少なくとも1対設けられており、前記折返部が折り返された状態において、少なくとも1対の前記第4端子が、前記貫通空間を挟むように配置されていることが好適である。
【0026】
このような回路付サスペンション基板では、電子素子に電気的に接続される第4端子が、貫通空間を挟むように配置されているため、電子素子を、2方向から、導体パターンに接続することができる。そのため、電子素子と導体パターンとを接続する端子を、分散して配置することができ、電子素子を1方向から導体パターンに接続する場合に比べ、配線密度を低く抑えることができ、短絡の抑制および接続信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記電子素子が、発光素子であり、
前記スライダは、光導波路および近接場光発生部材を備えていることが好適である。
【0028】
このような回路付サスペンション基板では、発光素子から出射される光をスライダの光導波路に入射させることにより、光導波路の光が変換された近接場光による加熱と、磁気ヘッドの磁界とによって、光アシスト法を効率的に実施することができる。
【0029】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記折返部が折り返された状態において、前記発光素子から出射される光が通過して前記光導波路に入射されるように、前記貫通空間が配置されていることが好適である。
【0030】
このような回路付サスペンション基板では、発光素子を実装する場合にも、その発光素子から出射される光が貫通空間を通過するため、光が遮られることがなく、光アシスト法を効率的に実施することができる。
【0031】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記電子素子が、検査用素子であることが好適である。
【0032】
このような回路付サスペンション基板では、電子素子として検査用素子が実装されることにより、回路付サスペンション基板における磁気ヘッドおよびスライダの位置や角度などを検査することができる。
【0033】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記電子素子が、前記貫通空間を跨ぐように配置可能とされることが好適である。
【0034】
このような回路付サスペンション基板では、貫通空間を跨ぐように電子素子を配置することにより、スライダと所定間隔を隔てるように電子素子を設けることができ、導体パターンの短絡などを抑制することができる。
【0035】
また、本発明の回路付サスペンション基板では、前記電子素子が、ピエゾ素子であることが好適である。
【0036】
このような回路付サスペンション基板では、電子素子としてピエゾ素子が実装されることにより、磁気ヘッドの位置や角度などを精細に調節することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の回路付サスペンション基板では、折り返し可能な折返部の周縁において、その周縁の一部が、折返部の周囲の回路付サスペンション基板と、折曲部を介して連続しており、周縁の残部が、折返部の周囲の回路付サスペンション基板と、回路付サスペンション基板を厚み方向に貫通する貫通空間を隔てて配置されているので、折返部が、回路付サスペンション基板の内側に形成される。
【0038】
そのため、本発明の回路付サスペンション基板によれば、端子を回路付サスペンション基板の表面側および裏面側に配置し、配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができ、さらには、回路付サスペンション基板を、その集合体シートなどとして製造する場合にも、省スペースで、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の回路付サスペンション基板の一実施形態の平面図を示す。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板のA−A線に沿う断面図を示す。
【図3】図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、ベース絶縁層を形成する工程、(c)は、導体パターンを形成する工程、(d)は、カバー絶縁層を形成する工程、(e)は、スリット部、スライダ実装部およびヘッド側端子形成部に対応する領域の金属支持基板を除去する工程を示す。
【図4】図1の回路付サスペンション基板の折返部を折り返した状態の平面図を示す。
【図5】図4の回路付サスペンション基板のB−B線に沿う断面図を示す。
【図6】図4の回路付サスペンション基板のC−C線に沿う断面図を示す。
【図7】回路付サスペンション基板の他の実施形態を示す要部拡大平面図であって、(a)は、補助パッドを、素子側端子の裏面として形成する形態、(b)は、補助パッドを、導体パターンおよび素子側端子の裏面として形成する形態を示す。
【図8】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドをはんだ接合可能とする形態)を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドにはんだを充填可能とする貫通穴を形成する形態)を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドをフライングリードとして設ける形態)を示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(素子側端子を貫通空間を挟むように配置する形態)の平面図を示す。
【図12】図11の回路付サスペンション基板のD−D線に沿う断面図を示す。
【図13】図11の回路付サスペンション基板の折返部を折り返した状態の平面図を示す。
【図14】図13の回路付サスペンション基板のE−E線に沿う断面図を示す
【図15】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(電子素子として検査用素子が用いられる形態)の折返部を折り返した状態を示す要部断面図である。
【図16】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(電子素子としてピエゾ素子が用いられる形態)の平面図を示す。
【図17】図16に示す回路付サスペンション基板のジンバル部の拡大平面図である。
【図18】図17に示すジンバル部において折返部を折り返した状態の平面図である。
【図19】図18に示す回路付サスペンション基板のF−F線に沿う要部断面図である。
【図20】図18に示すジンバル部のスライダ実装部を回動させた状態の平面図である。
【図21】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(貫通空間を平面視略コ字状に形成する形態)の要部平面図である。
【図22】本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(貫通空間を平面視略U字状に形成する形態)の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明の回路付サスペンション基板の一実施形態の平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板のA−A線に沿う断面図、図3は、図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図を示す。また、図4〜図6は、図1の回路付サスペンション基板の折返部を折り返した状態を示し、図4は平面図、図5は図4のB−B線に沿う断面図、図6は図4のC−C線に沿う断面図を示す。
【0041】
なお、図1および図4において、後述するカバー絶縁層14は、後述する導体パターン7の相対配置を明確に示すために省略している。
【0042】
図1および図2において、この回路付サスペンション基板1は、詳しくは後述するが、表面において導体パターン7を備えるとともに、裏面側に折り返し可能な折返部10を備えている。
【0043】
このような回路付サスペンション基板1は、表面側に、後述する磁気ヘッド38を搭載するスライダ39を実装可能とするとともに、裏面側に、後述する電子素子としての発光素子40を実装可能としており、図4〜図6が参照されるように、折返部10を折り返し、後述する磁気ヘッド38を搭載するスライダ39および発光素子40を実装して、光アシスト法を採用するハードディスクドライブに用いられる。
【0044】
この回路付サスペンション基板1では、金属支持基板11の表面に、導体パターン7が支持されている。
【0045】
金属支持基板11は、長手方向(先後方向)に延びる平帯状に形成されており、長手方向他方側(以下、後側という。)に配置される配線部2と、配線部2の長手方向一方側(以下、先側という。)に配置される実装部3とを、一体的に備えている。
【0046】
配線部2は、長手方向に延びる平面視略矩形状に形成されている。この配線部2は、裏面(下面)が図示しないロードビームに搭載されて支持される領域として、回路付サスペンション基板1において区画されている。
【0047】
実装部3は、配線部2がロードビームに実装されたときに、ロードビームに搭載されることなく、ロードビームから露出する領域として、区画されている。具体的には、実装部3は、回路付サスペンション基板1において、スライダ39(に搭載される磁気ヘッド38(図6参照))が実装される長手方向一端部(先端部)として形成されている。
【0048】
詳しくは、実装部3は、配線部2の先端から連続して形成されており、配線部2に対して幅方向(長手方向に直交する方向)両外側に膨出する平面視略矩形状に形成されている。
【0049】
また、実装部3には、平面視において先側に向かって開く略U字状のスリット部4が形成されている。また、実装部3は、スリット部4に幅方向において挟まれるジンバル部5と、スリット部4の幅方向両外側に配置されるアウトリガー部8と、ジンバル部5およびアウトリガー部8の先側に配置される配線折返部6とに区画されている。
【0050】
ジンバル部5は、スライダ39(図6参照)に動作の自由度を付与する部分であり、実装部3の幅方向中央および先後方向中央に配置され、平面視略矩形状に形成されている。
【0051】
また、ジンバル部5には、スライダ実装部43と、ヘッド側端子形成部45とが区画されている。
【0052】
スライダ実装部43は、その表面(上面)に、スライダ39(磁気ヘッド38を搭載するスライダ39(図6参照))を実装するための領域であって、ジンバル部5の長手方向中央に配置され、幅方向に長い平面視略矩形状に区画されている。
【0053】
また、スライダ実装部43には、貫通空間25が形成されている。
【0054】
貫通空間25は、回路付サスペンション基板1の厚み方向を貫通し、幅方向に長い長穴形状に形成され、平面視においてスライダ実装部43と重複するように、スライダ実装部43よりもわずかに小さく区画されている。
【0055】
なお、貫通空間25は、折返部10が折り返された状態において、発光素子40を挿通可能とするように、発光素子40よりも大きな長穴とされる。
【0056】
また、スライダ実装部43は、図2に示すように、スライダ39が載置される台座9を備えている。台座9はスライダ実装部43における貫通空間25の周囲において、後述するベース絶縁層12およびカバー絶縁層14から、形成されている。
【0057】
ヘッド側端子形成部45は、その表面(上面)に、後述する表面側端子(第2端子)としてのヘッド側端子16が形成される領域であって、幅方向に延びるように区画され、スライダ実装部43の先側に配置されている。
【0058】
そして、貫通空間25内には、その内側において、複数(2つ)の折返部10が形成されている。
【0059】
各折返部10は、それぞれ、折曲部18を介して貫通空間25の周囲のスライダ実装部43に連続している。
【0060】
折曲部18は、貫通空間25の幅方向略中央において互いに幅方向に間隔を隔てて並列配置され、スライダ実装部43における貫通空間25の先端縁から後側に向かって平面視矩形状に突出されている。
【0061】
各折返部10は、折曲部18から後側に向かって延び、貫通空間25の幅方向略中央において互いに幅方向に間隔を隔てて並列配置されている。
【0062】
折返部10は、その先側に素子側端子形成部46を備えるとともに、その後側に突出部20を備えている。
【0063】
素子側端子形成部46は、表面(上側。図4〜図6が参照されるように、折返部10が折り返されるときには、裏面(下面)。)に、裏面側端子(後述する第4端子)としての素子側端子22が形成されている領域であって、折曲部18よりも幅方向に膨出する平面視略矩形状に形成されている。
【0064】
また、素子側端子形成部46は、長手方向において、ヘッド側端子形成部45と間隔を隔てて対向配置されている。なお、素子側端子形成部46は、図4〜図6が参照されるように、折返部10が折り返されるときに、厚み方向において、ヘッド側端子形成部45と対向配置される。
【0065】
突出部20は、裏面(下側。図4〜図6が参照されるように、折返部10が折り返されるときには、上側。)に、後述する第1補助パッド33aが形成されている領域であって、折返部10において、素子側端子形成部46から後側へ突出するように、平面視略矩形状に形成されている。
【0066】
このような折返部10は、その周縁において、先端縁(周縁の一部)が、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43(折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1)と、折曲部18を介して連続しており、先端縁以外の周縁(周縁の残部)が、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43(折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1)と、貫通空間25を隔てて配置されている。
【0067】
また、折曲部18の幅方向両端部には、切欠部28が形成されている。切欠部28は、折曲部18の幅方向両端部が、幅方向内側に向かって平面視略三角形状に切り欠かれることにより、形成されている。
【0068】
これにより、折曲部18は、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43と、折返部10との間の脆弱部分として形成されるので、折返部10は、折曲部18の表面(裏面)が山(谷)となるように、回路付サスペンション基板1の裏面側に折返し可能とされている。
【0069】
また、折曲部18は、上記した形状の切欠部28によって、折曲部18の位置を明瞭に示すことができ、そのため、折返工程(後述)を容易かつ確実に実施することができる。
【0070】
配線折返部6は、実装部3のヘッド側端子形成部45よりも先側において、幅方向に長い平面視略矩形状に区画されている。
【0071】
導体パターン7は、図1および図2に示すように、第1導体パターン13と、第2導体パターン19とを備えている。
【0072】
第1導体パターン13は、金属支持基板11の表面に形成されており、第1端子としての外部側端子17と、第2端子としてのヘッド側端子16と、これら外部側端子17およびヘッド側端子16を接続する信号配線15とを一体的に備えている。
【0073】
各信号配線15は、長手方向に沿って複数(6本)設けられ、幅方向において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
【0074】
複数の信号配線15は、第1信号配線15a、第2信号配線15b、第3信号配線15c、第4信号配線15d、第5信号配線15eおよび第6信号配線15fから形成されている。これら第1信号配線15a、第2信号配線15b、第3信号配線15c、第4信号配線15d、第5信号配線15eおよび第6信号配線15fは、幅方向一方側から幅方向他方側に向かって、順次配置されている。
【0075】
また、実装部3において、第1信号配線15a、第2信号配線15bおよび第3信号配線15c(一方側信号配線15g)は、幅方向一方側のアウトリガー部8にわたって配置され、それに沿うように形成されている。また、第4信号配線15d、第5信号配線15eおよび第6信号配線15f(他方側信号配線15h)は、幅方向他方側のアウトリガー部8にわたって配置され、それに沿うように配置されている。
【0076】
また、第1信号配線15a、第2信号配線15b、第3信号配線15c、第4信号配線15d、第5信号配線15eおよび第6信号配線15fは、配線折返部6において、折り返され、ヘッド側端子形成部45に至るように配置されている。具体的には、各信号配線15は、アウトリガー部8の先端から配線折返部6の幅方向両外側部に至って屈曲した後、配線折返部6において、幅方向内側に向かって延び、その後、さらに後側に折り返され、配線折返部6の後端から後側に向かって延び、ヘッド側端子形成部45のヘッド側端子16の先端部に至るように配置されている。
【0077】
また、信号配線15において、最外側の第1信号配線15aおよび第6信号配線15fは、金属支持基板11の外端縁と、後述する電源配線21が形成される間隔を隔てて形成されている。
【0078】
外部側端子17は、配線部2の表面の後端部に配置され、各信号配線15の後端部がそれぞれ接続されるように、複数(6つ)設けられている。また、この外部側端子17は、幅方向に互いに間隔を隔てて配置されている。また、外部側端子17は、第1信号配線15a、第2信号配線15b、第3信号配線15c、第4信号配線15d、第5信号配線15eおよび第6信号配線15fに対応して接続される、第1外部側端子17a、第2外部側端子17b、第3外部側端子17c、第4外部側端子17d、第5外部側端子17eおよび第6外部側端子17fが、幅方向一方側から幅方向他方側に向かって順次配置されている。
【0079】
外部側端子17には、図5および図6に示すように、外部回路としての外部回路基板35が電気的に接続される。なお、外部回路基板35として、例えば、リード・ライト基板などが用いられる。
【0080】
ヘッド側端子16は、実装部3の表面に配置される表面側端子であって、より具体的には、ジンバル部5のヘッド側端子形成部45に配置されている。ヘッド側端子16は、各信号配線15の先端部がそれぞれ接続されるように、複数(6つ)設けられている。
【0081】
より具体的には、ヘッド側端子16は、ヘッド側端子形成部45の後端縁(スライダ実装部43の先端縁)に沿うように、幅方向において互いに間隔を隔てて配置されている。
【0082】
複数のヘッド側端子16は、第1ヘッド側端子16a、第2ヘッド側端子16b、第3ヘッド側端子16c、第4ヘッド側端子16d、第5ヘッド側端子16eおよび第6ヘッド側端子16fから形成されている。また、ヘッド側端子16は、第3信号配線15c、第2信号配線15bおよび第1信号配線15a(一方側信号配線15g)と、第6信号配線15f、第5信号配線15eおよび第4信号配線15d(他方側信号配線15h)とに対応して接続される、第3ヘッド側端子16c、第2ヘッド側端子16bおよび第1ヘッド側端子16a(一方側ヘッド側端子16g)と、第6ヘッド側端子16f、第5ヘッド側端子16eおよび第4ヘッド側端子16d(他方側ヘッド側端子16h)とが、幅方向一方側から幅方向他方側に向かって順次配置されている。
【0083】
なお、一方側ヘッド側端子16gと他方側ヘッド側端子16hとは、幅方向に間隔を隔てて配置され、配線折返部6においては、一方側信号配線15gと他方側信号配線15hとが、一方側ヘッド側端子16gおよび他方側ヘッド側端子16hに対応して、幅方向に間隔を隔てて配置される。
【0084】
ヘッド側端子16には、図6が参照されるように、磁気ヘッド38がはんだボール26を介して電気的に接続される。
【0085】
第1導体パターン13では、外部回路基板35から伝達されるライト信号を、外部側端子17、信号配線15およびヘッド側端子16を介して、スライダ39の磁気ヘッド38に入力するとともに、磁気ヘッド38で読み取ったリード信号を、ヘッド側端子16、信号配線15および外部側端子17を介して、外部回路基板35に入力する。
【0086】
第2導体パターン19は、金属支持基板11の表面に形成されており、第3端子としての供給側端子23と、第4端子としての素子側端子22と、これら供給側端子23および素子側端子22を接続するための電源配線21とを備えている。
【0087】
電源配線21は、長手方向に沿って複数(2本)設けられ、幅方向に互いに間隔を隔てて並列配置されている。
【0088】
より具体的には、複数の電源配線21は、第1電源配線21aおよび第2電源配線21bから形成されている。第1電源配線21aおよび第2電源配線21bは、幅方向に間隔を隔てて配置されている。
【0089】
また、幅方向一方側に配置される第1電源配線21aと、幅方向他方側に配置される第2電源配線21bとは、幅方向において信号配線15が形成される間隔を隔てて配置されている。
【0090】
つまり、第1電源配線21aは、配線部2において、第1信号配線15aの幅方向一方側(外側)に配置され、第2電源配線21bは、第6信号配線15fの幅方向他方側(外側)に配置されている。
【0091】
また、第1電源配線21aおよび第2電源配線21bは、アウトリガー部8において、それぞれ、第1信号配線15aおよび第6信号配線15fに沿って延び、配線折返部6において、幅方向内側に向かって延び、その後、さらに後側に折り返され、一方側信号配線15gと他方側信号配線15hとの間において、後側に向かって延び、一方側ヘッド側端子16gと他方側ヘッド側端子16hとの間を通過し、さらに、各折曲部18を通過して、素子側端子形成部46の素子側端子22の先端部に至るように配置されている。
【0092】
供給側端子23は、配線部2の表面の後端部に配置され、各電源配線21の後端部がそれぞれ接続されるように、複数(2つ)設けられている。供給側端子23は、第1電源配線21aおよび第2電源配線21bに対応して接続される、第1供給側端子23aおよび第2供給側端子23bから形成されている。これら第1供給側端子23aおよび第2供給側端子23bは、幅方向に間隔を隔てて配置されている。
【0093】
また、幅方向一方側に配置される第1供給側端子23aと、幅方向他方側に配置される第2供給側端子23bとは、幅方向において外部側端子17が形成される間隔を隔てて配置されている。
【0094】
また、供給側端子23は、幅方向に投影したときに、外部側端子17と同一位置に配置されるように形成されている。供給側端子23には、外部回路としての電源(図示せず)が電気的に接続される。
【0095】
素子側端子22は、折返部10の表面に形成され、図5および図6が参照されるように、折返部10が折り返された状態において、回路付サスペンション基板1の裏面側に配置される裏面側端子であって、素子側端子形成部46に設けられている。
【0096】
また、素子側端子22は、各電源配線21の先端部がそれぞれ接続されるように、複数(2つ)設けられており、第1電源配線21aおよび第2電源配線21bに対応してそれぞれ接続される、第1素子側端子22aおよび第2素子側端子22bから形成されている。これら第1素子側端子22aおよび第2素子側端子22bは、対応する素子側端子形成部46において、幅方向に間隔を隔てて配置されている。
【0097】
また、素子側端子22は、ヘッド側端子16と、長手方向において対向配置されている。なお、素子側端子22は、図4〜図6が参照されるように、折返部10が折り返されるときに、厚み方向において、ヘッド側端子16と対向配置される。
【0098】
すなわち、この回路付サスペンション基板1では、図4〜6が参照されるように、折返部10が折り返された状態において、スライダ39と発光素子40とが対向可能であり、スライダ39(に搭載される磁気ヘッド38)がヘッド側端子16(表面側端子、第2端子)に接続可能とされ、発光素子40が素子側端子22(裏面側端子、第4端子)に接続可能とされるように、ヘッド側端子16および素子側端子22が配置されている。
【0099】
そして、素子側端子22には、図6に示すように、発光素子40がワイヤ41を介して電気的に接続される。
【0100】
また、第2導体パターン19は、さらに、各折返部10に第1補助パッド33aをそれぞれ備えるとともに、各電源配線21の途中において、第2補助パッド33bをそれぞれ備えており、それら各第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bが、対をなしている。
【0101】
第1補助パッド33aは、各折返部10の突出部20(裏面側)において、平面視略矩形状に形成されている。なお、各第1補助パッド33aは、各折返部10において、素子側端子22と、電源配線21により接続されている。
【0102】
また、第2補助パッド33bは、配線折返部6(裏面側)において、第1補助パッド33aと略同一、または、第1補助パッド33aよりもわずかに大きい平面視略矩形状に形成され、第1補助パッド33aと長手方向において対向配置されている。
【0103】
これら第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bからなる補助パッド33の対は、図5および図6が参照されるように、折返部10が折り返された状態において、回路付サスペンション基板1の厚み方向において、互いに接触するように、対向配置される。
【0104】
なお、第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33b(以下、それらを総称するときは、補助パッド33とする。)は、後述するように、例えば、超音波接合、はんだ接合などにより接合され、これにより、折返部10を回路付サスペンション基板1の裏面に固定可能としている。
【0105】
第2導体パターン19では、電源から供給される電気エネルギーを、供給側端子23、電源配線21および素子側端子22を介して、発光素子40に供給することにより、発光素子40を駆動させる。
【0106】
そして、この回路付サスペンション基板1は、図2に示すように、金属支持基板11と、金属支持基板11の表面に形成されるベース絶縁層12と、ベース絶縁層12の表面に形成される導体パターン7と、ベース絶縁層12の表面に、導体パターン7を被覆するように形成されるカバー絶縁層14とを備えている。
【0107】
金属支持基板11は、回路付サスペンション基板1の外形をなし、その内側において、スリット4、スライダ実装部43およびヘッド側端子形成部45を除く領域に、形成されている。
【0108】
また、金属支持基板11は、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅などの金属材料から形成されている。好ましくは、ステンレスから形成されている。金属支持基板11の厚みは、例えば、15〜50μm、好ましくは、15〜20μmである。
【0109】
ベース絶縁層12は、導体パターン7が形成される部分(補助パッド33が形成される領域を除く)に形成されるとともに、台座9が形成される部分に形成されている。
【0110】
また、ベース絶縁層12は、詳しくは、ジンバル部5において、補助パッド33が形成される領域を除くヘッド側端子形成部45の全面と、貫通空間25が形成される領域を除くスライダ実装部43の全面(折返部10を含む)とに形成されている。
【0111】
また、ベース絶縁層12は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂などの絶縁材料から形成されている。好ましくは、ポリイミド樹脂から形成されている。
【0112】
ベース絶縁層12の厚みは、例えば、1〜35μm、好ましくは、8〜15μmである。
【0113】
導体パターン7は、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはそれらの合金などの導体材料などから形成されている。好ましくは、銅から形成されている。
【0114】
導体パターン7の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜20μmである。
【0115】
各信号配線15および各電源配線21の幅は、例えば、5〜200μm、好ましくは、8〜100μmであり、各信号配線15間の間隔と、信号配線15および電源配線21間の間隔(第1信号配線15aおよび第1電源配線21a間の間隔と、第6信号配線15fおよび第2電源配線21b間の間隔と)とは、例えば、5〜1000μm、好ましくは、8〜100μmである。
【0116】
また、各外部側端子17、各ヘッド側端子16、各供給側端子23および各素子側端子22の幅は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、30〜800μmである。また、各外部側端子17間の間隔と、各ヘッド側端子16間の間隔と、各外部側端子17および各供給側端子23間の間隔(第1外部側端子17aおよび第1供給側端子23a間の間隔、および、第6外部側端子17fおよび第2供給側端子23b間の間隔)とは、例えば、20〜1000μm、好ましくは、30〜800μmである。
【0117】
また、各補助パッド33の幅は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、30〜800μmである。また、第1補助パッド33a間の間隔、および、第2補助パッド33b間の間隔は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、30〜800μmである。
【0118】
カバー絶縁層14は、ベース絶縁層12が形成される部分(外部側端子17、供給側端子23、ヘッド側端子16および素子側端子22を除く)に形成されるとともに、台座9が形成される部分に形成されている。
【0119】
また、カバー絶縁層14は、詳しくは、ジンバル部5において、台座9が形成される領域を除くスライダ実装部43(折返部10を含む)と、ヘッド側端子形成部45とには形成されておらず、それら以外のベース絶縁層12が形成されている部分(上記した端子を除く)に形成されている。
【0120】
具体的には、カバー絶縁層14は、第1導体パターン13に対応して、外部側端子17およびヘッド側端子16(図2において図示せず)を露出し、信号配線15を被覆するパターンで形成されている。また、カバー絶縁層14は、第2導体パターン19に対応して、供給側端子23(図2において図示せず)および素子側端子22を露出し、電源配線21を被覆するパターンで形成されている。
【0121】
カバー絶縁層14は、上記したベース絶縁層12の絶縁材料と同様の絶縁材料から形成されている。カバー絶縁層14の厚みは、例えば、1〜40μm、好ましくは、1〜10μmである。
【0122】
次に、この回路付サスペンション基板1の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0123】
この方法では、まず、図3(a)に示すように、金属支持基板11を用意する。
【0124】
次いで、図3(b)に示すように、金属支持基板11の表面に、感光性の絶縁材料のワニスを塗布して乾燥させた後、露光および現像して、加熱硬化することによりベース絶縁層12を、補助パッド33を除く導体パターン7が形成される領域、ヘッド側端子形成部45およびスライダ実装部43に、上記したパターンで形成する。
【0125】
次いで、図3(c)に示すように、ベース絶縁層12の表面に、導体パターン7を、アディティブ法またはサブトラクティブ法などにより形成する。これによって、補助パッド33を除いて、導体パターン7は、ベース絶縁層12の表面に形成され、また、補助パッド33は、ベース絶縁層12の内側において、金属支持基板11の表面に形成される。
【0126】
次いで、図3(d)に示すように、ベース絶縁層12の表面に、導体パターン7を被覆するように、感光性の絶縁材料のワニスを塗布して乾燥させた後、露光および現像して、加熱硬化することによりカバー絶縁層14を、各端子を除く導体パターン7が形成される領域、および、スライダ実装部43に、上記したパターンで形成する。
【0127】
次いで、図3(e)に示すように、スリット部4、スライダ実装部43、および、ヘッド側端子形成部45に対応する領域の金属支持基板11を除去し、スリット部4および貫通空間25を形成するとともに、金属支持基板11の裏面から補助パッド33を露出させる。また、これと同時に、金属支持基板11を外形加工して、折返部10を一体的に備える回路付サスペンション基板1を得る。
【0128】
金属支持基板11の除去では、例えば、ドライエッチング(例えば、プラズマエッチング)やウェットエッチング(例えば、化学エッチング)などのエッチング法、例えば、ドリル穿孔、レーザ加工など、好ましくは、ウェットエッチングが採用される。
【0129】
なお、このような回路付サスペンション基板1は、1枚の金属支持基板11に、ベース絶縁層12、導体パターン7およびカバー絶縁層14が積層され、回路付サスペンション基板1が複数形成される、回路付サスペンション基板集合体シートとして、形成される。
【0130】
このようにして得られる回路付サスペンション基板1は、その使用時において、図4〜6が参照されるように、折返部10が折り返され、表面側に磁気ヘッド38が搭載されるとともに、裏面側に発光素子40が搭載される。
【0131】
具体的には、使用時には、折返部10を、ジンバル部5のヘッド側端子形成部45(貫通空間25の周囲のスライダ実装部43)に対して、その裏面と対向するように折り返す(折返工程)。
【0132】
つまり、折返部10のベース絶縁層12の裏面と、ヘッド側端子形成部45のベース絶縁層12の裏面とが、厚み方向に隣接配置されるように、折返部10を裏面側に折り返す。
【0133】
折返工程では、折曲部18の表面(裏面)が山(谷)となり、折返部10の第1補助パッド33aの裏面と、配線折返部6の第2補助パッド33bの裏面とが互いに接触するように、折返部10を折り返す。
【0134】
次いで、それら互いに接触する第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bを、例えば、超音波接合(超音波圧接)などにより、接合する(接合工程)。
【0135】
なお、接合において、その接合条件、例えば、超音波周波数などは、補助パッド33の材質などにより、適宜設定される。
【0136】
その後、スライダ実装部43に、発光素子40が裏面に実装されたスライダ39を、接着剤(図示せず)を介して、発光素子40が貫通空間25に挿通されるように、搭載する。詳しくは、スライダ39を、スライダ実装部43において、貫通空間25の周り、具体的には、台座9に設けられる接着剤(図示せず)を介して、貫通空間25を上方から被覆するように、実装する。すると、発光素子40が貫通空間25に挿通される。
【0137】
これによって、搭載されたスライダ39は、折返部10が折り返された状態の回路付サスペンション基板1において、その表面側に配置される。
【0138】
また、スライダ39に実装されている発光素子40は、折返部10が折り返された状態の回路付サスペンション基板1において、その裏面側に配置される。
【0139】
なお、スライダ39は、回路付サスペンション基板1がハードディスクドライブに用いられるときに、磁気ディスク32(図6の仮想線参照)に対して、相対的に走行しながら、微小間隔を隔てて浮上するように、スライダ実装部43に配置される。また、このスライダ39には、図6に示すように、磁気ヘッド38と、光導波路31と、近接場光発生部材34とが搭載されている。
【0140】
磁気ヘッド38は、スライダ39の表面に搭載されており、図6の仮想線で示す磁気ディスク32に対向し、磁気ディスク32に対して、読み取りおよび書き込みできるように設けられている。
【0141】
光導波路31は、次に説明する発光素子40から出射される光を近接場光発生部材34に入射させるために設けられ、厚み方向に沿って延びるように形成されている。また、光導波路31の上端には、近接場光発生部材34が設けられている。
【0142】
近接場光発生部材34は、光導波路31から入射される光から近接場光を発生させ、この近接場光を磁気ディスク32に照射して、磁気ディスク32の微小な領域を加熱するために設けられている。なお、近接場光発生部材34は、金属散乱体や開口などからなり、例えば、特開2007−280572号公報、特開2007−052918号公報、特開2007−207349号公報、特開2008−130106号公報などに記載される、公知の近接場光発生装置が採用される。
【0143】
発光素子40は、光導波路31に光を入射させるための光源であって、例えば、電気エネルギーを光エネルギーに変換して、高エネルギーの光を出射口から出射する光源である。
【0144】
発光素子40は、金属支持基板11の貫通空間25に挿通されるように、スライダ39の裏面に搭載される。また、発光素子40は、その出射口が光導波路31に対向するように、スライダ39に搭載されている。
【0145】
この回路付サスペンション基板1では、磁気ヘッド38を、はんだボール26を介してヘッド側端子16と電気的に接続させるとともに、外部回路基板35を外部側端子17と接続させる。続いて、発光素子40を、ワイヤ41を介して、素子側端子22と電気的に接続する。また、電源(図示せず)を供給側端子23と電気的に接続する。
【0146】
これにより、回路付サスペンション基板1に、磁気ヘッド38および発光素子40を搭載するスライダ39を実装することができる。
【0147】
その後、ハードディスクドライブにおいて、配線部2の裏面を、ロードビームの表面に搭載して、配線部2を支持させる。
【0148】
このような回路付サスペンション基板1が搭載されるハードディスクドライブでは、光アシスト法を採用することができる。
【0149】
具体的には、そのようなハードディスクドライブでは、図6の仮想線で示される磁気ディスク32が、近接場光発生部材34および磁気ヘッド38に対して、相対的に走行している。そして、発光素子40から出射された光が、光導波路31を通過して、近接場光発生部材34に至り、近接場光発生部材34によって発生した近接場光が、近接場光発生部材34の上側に対向する磁気ディスク32の表面に照射される。そして、近接場光発生部材34からの近接場光の照射により、磁気ディスク32の表面が加熱され、この状態で、磁気ヘッド38からの磁界の照射により、磁気ディスク32に情報が記録される。そうすると、磁気ディスク32の保磁力が低下されているので、この磁気ディスク32に情報を、小さな磁界の照射によって、高密度で記録することができる。
【0150】
そして、この回路付サスペンション基板1では、折り返し可能な折返部10の周縁において、先端縁(周縁の一部)が、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43(折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1)と、折曲部18を介して連続しており、先端縁以外の周縁(周縁の残部)が、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43(折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1)と、貫通空間25を隔てて配置されている。
【0151】
すなわち、折返部10が、回路付サスペンション基板1の内側に形成されている。そのため、端子(ヘッド側端子16、外部側端子17、素子側端子22、供給側端子23など)を回路付サスペンション基板1の表面側および裏面側に分散して配置し、配線密度を低く抑えるとともに、コンパクト化を図ることができ、さらには、回路付サスペンション基板1を、その集合体シートとして製造する場合にも、省スペースで、効率よく製造することができる。
【0152】
また、このような回路付サスペンション基板1では、磁気ヘッド38に電気的に接続されるヘッド側端子16が、回路付サスペンション基板1の表面に配置されるとともに、発光素子40に電気的に接続される素子側端子22が、回路付サスペンション基板1の裏面に配置されるため、それら端子を低い配置密度で形成でき、これにより、それらの短絡を防止することができる。その結果、導体パターン7の接続信頼性の向上を図ることができる。
【0153】
また、このような回路付サスペンション基板1では、発光素子40から出射される光をスライダ39の光導波路31に入射させることにより、光導波路31の光が変換された近接場光による加熱と、磁気ヘッド38の磁界とによって、光アシスト法を効率的に実施することができる。
【0154】
また、発光素子40とスライダ39とが広い間隔を隔てて配置されると、発光素子40の機能を十分に発現できない場合があるが、このような回路付サスペンション基板1では、発光素子40とスライダ39とが厚み方向に対向配置されるので、発光素子40をスライダ39の近傍に配置することができ、発光素子40を効率よく稼動させることができる。
【0155】
また、このような回路付サスペンション基板1では、発光素子40を、貫通空間25に挿通して実装できるため、回路付サスペンション基板1の薄型化を図ることができる。
【0156】
さらには、このような回路付サスペンション基板1では、補助パッド33を超音波接合することにより、折返部10を、回路付サスペンション基板1の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0157】
なお、この回路付サスペンション基板1では、図示しないが、供給側端子23を、折返部10に設けることもできる。その場合には、電源配線21は、折返部10に配置される。
【0158】
図7は、回路付サスペンション基板の他の実施形態を示す要部拡大平面図であって、
(a)は、補助パッドを、素子側端子の裏面として形成する形態、(b)は、補助パッドを、導体パターンおよび素子側端子の裏面として形成する形態を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0159】
上記した説明では、折返部10に突出部20を設け、第1補助パッド33aを、折返部10の突出部20に配置したが、例えば、図7(a)に示すように、第1補助パッド33aを、素子側端子22の裏面として形成することができる。
【0160】
このような場合には、図示しないが、素子側端子22は、その表面がカバー絶縁層14から露出するとともに、裏面の一部が、第1補助パッド33aとして、ベース絶縁層12から露出する。
【0161】
このような場合において、第2補助パッド33bは、上記と同様、電源配線21の途中(裏面側)において、第1補助パッド33aと略同一、または、第1補助パッド33aよりもわずかに大きい平面視略矩形状に形成され、第1補助パッド33aと長手方向において対向配置されている。
【0162】
このような実施形態においても、上記と同様、補助パッド33を超音波接合することにより、折返部10を、回路付サスペンション基板1の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0163】
また、図7(b)に示すように、第1補助パッド33aを、素子側端子22の裏面として形成し、第2補助パッド33bを、電源配線21の途中(裏面側)に形成するとともに、さらに、ヘッド側端子16の裏面として形成することもできる。
【0164】
このような場合には、素子側端子22は、その表面がカバー絶縁層14から露出するとともに、裏面の一部が、各素子側端子22において複数(2つ)、第1補助パッド33aとして、ベース絶縁層12から露出する。
【0165】
また、第2補助パッド33bは、上記と同様、電源配線21の途中(裏面側)に形成されるとともに、さらに、例えば、幅方向最内側のヘッド側端子16(第1ヘッド側端子16a、第6ヘッド側端子16f)の裏面として形成され、各第2補助パッド33bが、それぞれ、貫通空間25の周囲のスライダ実装部43を挟んで、第1補助パッド33aと対向配置される。
【0166】
なお、このような場合において、第2補助パッド33bが形成される幅方向最内側のヘッド側端子16(第1ヘッド側端子16a、第6ヘッド側端子16f)、および、それらに接続される信号配線15(第1信号配線15a、第6信号配線15f)は、例えば、電気信号を伝達しない配線および端子(ダミー配線およびダミー端子)として、形成される。
【0167】
このような実施形態においても、上記と同様、補助パッド33を超音波接合することにより、折返部10を、回路付サスペンション基板1の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0168】
図8は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドをはんだ接合可能とする形態)を示す要部拡大断面図である。
【0169】
上記した説明では、補助パッド33を超音波接合したが、例えば、図8に示すように、第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bの間にはんだ52を設け、第1補助パッド33aと第2補助パッド33bとをはんだ接合することができる。
【0170】
なお、このような場合において、接合条件、例えば、はんだ52の材質や加熱条件などは、補助パッド33の材質などにより適宜設定される。
【0171】
このような回路付サスペンション基板1では、補助パッド33をはんだ接合することにより、折返部10を、回路付サスペンション基板1の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0172】
図9は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドにはんだを充填可能とする貫通穴を形成する形態)を示す要部拡大断面図である。
【0173】
上記した説明では、第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bの間にはんだ52を設けたが、例えば、図9に示すように、第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bのいずれか一方、例えば、第2補助パッド33bに、はんだ52を充填可能とする貫通穴51を形成し、その貫通穴51にはんだ52を充填することにより、補助パッド33を互いに接合することができる。
【0174】
このような回路付サスペンション基板1では、貫通穴51にはんだ52を充填することにより、補助パッド33をより確実にはんだ接合することができ、折返部10を、回路付サスペンション基板1の裏面側に、信頼性よく固定することができる。
【0175】
図10は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(補助パッドをフライングリードとして設ける形態)を示す要部拡大断面図である。
【0176】
上記した説明では、折返部10に突出部20を設け、第1補助パッド33aを、折返部10の突出部20に配置したが、例えば、図10に示すように、突出部20にベース絶縁層12およびカバー絶縁層14を形成することなく、第1補助パッド33aを、公知の方法により、フライングリードとして設けることができる。
【0177】
また、このような場合において、第1補助パッド33a(フライングリード)は、上記と同様に、第2補助パッド33bに超音波接合することができ、さらには、図10において仮想線で示すように、第1補助パッド33aおよび第2補助パッド33bの間にはんだ52を設け、第1補助パッド33aと第2補助パッド33bとをはんだ接合することができる。
【0178】
このような回路付サスペンション基板1では、第1補助パッド33aがフライングリードとして形成されるため、突出部20のベース絶縁層12およびカバー絶縁層14を省略することができ、薄層化を図ることができる。
【0179】
図11は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(素子側端子を貫通空間を挟むように配置する形態)の平面図、図12は、図11の回路付サスペンション基板のD−D線に沿う断面図を示す。また、図13および図14は、図11の回路付サスペンション基板の折返部を折り返した状態を示し、図13は平面図、図14は図13の回路付サスペンション基板のE−E線に沿う断面図を示す。
【0180】
上記した説明においては、複数(2つ)の折返部10および素子側端子22を、いずれも、貫通空間25の一方側(先側)に配置したが、例えば、図11に示すように、折返部10および素子側端子22を少なくとも1対(2つ)設けるとともに、一方の折返部10および素子側端子22を貫通空間25の先側に配置するとともに、他方の折返部10および素子側端子22を貫通空間25の後側に配置することもできる。
【0181】
つまり、この回路付サスペンション基板1では、折返部10が折り返された状態において、1対の折返部10および素子側端子22を、貫通空間25を挟むように配置することができる。
【0182】
より具体的には、この実施形態においては、複数(2つ)の折返部10が対をなし、貫通空間25内の先側および後側において、それぞれ形成されている。
【0183】
また、折返部10の表面(上側。図13および図14が参照されるように、折返部10が折り返されるときには、裏面(下面)。)には、素子側端子22が形成されており、それら素子側端子22が対をなしている。
【0184】
このような回路付サスペンション基板1では、発光素子40に接続される素子側端子22が、図13および図14が参照されるように、折返部10が折り返された状態において、貫通空間25を挟んで配置され、これにより、発光素子40が、貫通空間25を跨ぐように配置可能とされている。
【0185】
なお、この実施形態では、発光素子40はスライダと別体として設けられ、貫通空間25を挟んで対向配置されている。
【0186】
また、貫通空間25は、折返部10が折り返された状態において、発光素子40から出射される光が通過して光導波路31に入射されるように、配置されている。
【0187】
このような回路付サスペンション基板では、発光素子40に電気的に接続される素子側端子22が、貫通空間25を挟むように配置されているため、発光素子40を、2方向から、導体パターン7に接続することができる。
【0188】
そのため、発光素子40と導体パターン7とを接続する素子側端子22を、分散して配置することができ、発光素子40を1方向から導体パターン7に接続する場合に比べ、配線密度を低く抑えることができ、短絡の抑制および接続信頼性の向上を図ることができる。
【0189】
また、このような回路付サスペンション基板1では、貫通空間25を跨ぐように発光素子40を配置することにより、スライダ39と所定間隔を隔てるように発光素子40を設けることができ、導体パターン7の短絡などを抑制することができる。
【0190】
さらに、このような回路付サスペンション基板1では、発光素子40を実装する場合にも、その発光素子40から出射される光が貫通空間25を通過するため、光が遮られることがなく、光アシスト法を効率的に実施することができる。
【0191】
図15は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(電子素子として検査用素子が用いられる形態)の折返部を折り返した状態を示す要部断面図である。
【0192】
また、上記した説明においては、電子素子として、発光素子40を採用したが、図15に示すように、電子素子として、例えば、検査用素子50を用いることができる。
【0193】
すなわち、この回路付サスペンション基板1は、表面側に、スライダ39を実装可能とするとともに、裏面側に、検査用素子50を実装可能としており、磁気ヘッド38を搭載するスライダ39および検査用素子50を実装して、ハードディスクドライブに搭載される。
【0194】
検査用素子50としては、特に制限されないが、例えば、振動や圧力などに応じて電気信号を生ずる素子などが挙げられる。
【0195】
なお、図15に示すように、電子素子が検査用素子50である場合にも、上記同様、折返部10が折り返されたときに、検査用素子50が、スライダ39に実装され、そのスライダ39が、仮想線で示す磁気ディスク32と厚み方向において対向配置される。
【0196】
通常、回路付サスペンション基板1がハードディスクドライブに用いられるときには、スライダ39は、磁気ディスク32に対して、相対的に走行しながら、微小間隔を隔てて浮上するが、回路付サスペンション基板1における磁気ヘッド38やスライダ39の位置や角度が不良である場合などには、スライダ39が磁気ディスク32に接触するなどの不具合を生じる場合がある。
【0197】
一方、上記した回路付サスペンション基板1は、検査用素子50を実装可能としている。このような回路付サスペンション基板1に、検査用素子50を実装して、スライダ39を、磁気ディスク32に対して、相対的に走行させれば、スライダ39が磁気ディスク32に接触したときに、その振動や圧力などを検査用素子50が検知し、電気信号を生じる。
【0198】
そのため、検査用素子50が生じさせた電気信号を検出することにより、スライダ39が磁気ディスク32に接触したことを判別することができ、回路付サスペンション基板1における磁気ヘッド38およびスライダ39の位置や角度などの良否を検査することができる。
【0199】
つまり、このような回路付サスペンション基板1では、電子素子として検査用素子50が実装されることにより、回路付サスペンション基板1における磁気ヘッド38およびスライダ39の位置や角度などを検査することができる。
【0200】
図16は、本発明の回路付サスペンション基板の他の実施形態(電子素子としてピエゾ素子が用いられる形態)の平面図、図17は、図16に示す回路付サスペンション基板のジンバル部の拡大平面図、図18は、図17に示すジンバル部において折返部を折り返した状態の平面図、図19は、図18に示す回路付サスペンション基板のF−F線に沿う要部断面図、図20は、図18に示すジンバル部のスライダ実装部を回動させた状態の平面図である。
【0201】
上記した説明においては、電子素子として、発光素子40(または検査用素子50)を採用したが、図16〜図20に示すように、電子素子として、例えば、ピエゾ素子60を用いることができる。
【0202】
すなわち、この回路付サスペンション基板1は、表面側に、スライダ39を実装可能とするとともに、裏面側に、ピエゾ素子60を実装可能としており、折返部10を折り返し、磁気ヘッド38を搭載するスライダ39およびピエゾ素子60を実装して、ハードディスクドライブに搭載される。
【0203】
なお、図16〜18および20において、カバー絶縁層14は、導体パターン7の相対配置を明確に示すために省略している。
【0204】
回路付サスペンション基板1では、金属支持基板11に導体パターン7が支持されている。
【0205】
金属支持基板11は、長手方向に延びる平面視略矩形平帯状に形成されており、配線部(本体部)2と、配線部2の先側(長手方向一側、以下同じ)に形成されるジンバル部5とを一体的に備えている。
【0206】
配線部2は、平面視略矩形状に形成されている。
【0207】
ジンバル部5は、配線部2の先端から先側に延びるように形成されている。また、ジンバル部5には、厚み方向を貫通する平面視略矩形状の開口部27が形成されている。
【0208】
ジンバル部5は、開口部27の幅方向(長手方向に直交する方向)外側に仕切られるアウトリガー部8と、アウトリガー部8に連結されるタング部36とを備えている。
【0209】
アウトリガー部8は、配線部2の幅方向両端部から先側に向かって直線状に延びるように形成されている。
【0210】
タング部36は、アウトリガー部8の幅方向内側に設けられ、アウトリガー部8の先端部から幅方向内側斜め後方に向かって延びる金属連結部37を介して、アウトリガー部8に連結されている。タング部36は、平面視略H字状に形成されており、幅方向に長く延びる平面視略矩形状の基部53と、基部53の先側に間隔を隔てて配置され、幅方向に長く延びる平面視略矩形状のステージ54と、基部53およびステージ54の幅方向中央を接続し、先後方向に長い平面視略矩形状の中央部55とを一体的に備えている。
【0211】
ステージ54の幅方向中央および先後方向中央は、スライダ39が実装されるスライダ実装部43とされている。また、ステージ54は、樹脂連結部56によって、アウトリガー部8に接続されている。
【0212】
スライダ実装部43には、図2に示す回路付サスペンション基板1と同様に、台座9が設けられている(図19参照)。
【0213】
樹脂連結部56は、各アウトリガー部8の先端と、ステージ54の幅方向両端を湾曲状に連結する第1連結部57と、各アウトリガー部8の先端と、ステージ54の先端とを連結する第2連結部58とを備えている。
【0214】
第1連結部57は、アウトリガー部8の先端から幅方向内側斜め先側に向かって湾曲状に延び、ステージ54の幅方向両端に至っている。
【0215】
第2連結部58は、平面視略E字状をなし、具体的には、両アウトリガー部8の先端から先側に向かって延び、その後、幅方向内側に屈曲し、幅方向内側に延びて合一となった後、後側に屈曲して、ステージ54の先端に至っている。
【0216】
中央部55は、幅方向に湾曲可能な幅狭に形成されている。
【0217】
そして、ジンバル部において、基部53、ステージ54、中央部55および第1連結部57に囲まれる空間として、回路付サスペンション基板1を厚み方向に貫通する貫通空間25が区画されている。
【0218】
そして、貫通空間25は、その内側において、折返部10を複数(4つ)備えている。
【0219】
より具体的には、折返部10は、ステージ54の幅方向外側部の後端縁から後方に向かって突出するように形成され、中央部55の幅方向両外側に互いに間隔を隔てて複数(2つ)配置される先側折返部10aと、基部53の幅方向外側部の先端縁から先方に向かって突出するように形成され、中央部55の幅方向両外側に互いに間隔を隔てて複数(2つ)配置される後側折返部10bとを備えている。
【0220】
このような折返部10において、先側折返部10aおよび後側折返部10bは、互いに対(2対)をなし、貫通空間25を挟むように先後方向に間隔を隔てて対向配置されている。
【0221】
各先側折返部10aおよび各後側折返部10bには、素子側端子形成部46が形成されている。
【0222】
導体パターン7は、外部側端子17と、ヘッド側端子16と、素子側端子22と、配線59とを備えている。
【0223】
外部側端子17は、配線部2の後端部に設けられ、先後方向に互いに間隔を隔てて複数(6つ)配置されている。
【0224】
ヘッド側端子16は、ステージ54の先端部に設けられ、幅方向に互いに間隔を隔てて複数(4つ)配置されている。
【0225】
素子側端子22は、先側折返部10aの素子側端子形成部46に形成される素子先側端子22cと、後側折返部10bの素子側端子形成部46に形成される素子後側端子22dとを備えている。
【0226】
このような素子側端子22において、素子先側端子22cおよび素子後側端子22dは、互いに対(2対)をなし、貫通空間25を挟むように配置されている。
【0227】
配線59は、外部側端子17と、ヘッド側端子16または素子先側端子22cとに連続し、それらを電気的に接続している。
【0228】
配線59は、配線部2において、幅方向に互いに間隔を隔てて複数(6つ)形成されている。
【0229】
具体的には、配線59は、配線部2の後端部において、外部側端子17から先側に向かって延び、配線部2の先後方向途中において、幅方向両側に向かって2束に分岐状に屈曲した後、幅方向両端部において先側に屈曲し、配線部2の先端部に向けて、幅方向外端縁に沿って延び、ジンバル部5において、開口部27および金属連結部37を通過した後、基部53を囲むように引き回され、続いて、素子先側端子22cおよび素子後側端子22dの間を幅方向に通過した後、中央部55の先後方向途中に集束状に至り、先側に屈曲し、続いて、中央部55に沿って先側に延び、その後、ステージ54の後端部において、幅方向両側に向かって2束に分岐状に屈曲した後、ステージ54の周端縁に沿って延び、その後、先側と後側とにそれぞれ折り返されて、ヘッド側端子16および素子先側端子22cに至るように形成されている。
【0230】
また、図示しないが、配線59の途中の裏面側、および、素子側端子22の裏面側には、補助パッド33が形成されている。
【0231】
また、図示しないが、配線59の上下およびその周囲には、ベース絶縁層12およびカバー絶縁層14が形成されており、配線59は、ベース絶縁層12およびカバー絶縁層14とともに、導体領域61を形成している。
【0232】
この回路付サスペンション基板1は、上記と同様、金属支持基板11、金属支持基板11の上に形成されるベース絶縁層12、ベース絶縁層12の上に形成される導体パターン7、および、ベース絶縁層12の上に、導体パターン7を被覆するように形成されるカバー絶縁層14を備えている。
【0233】
金属支持基板11は、回路付サスペンション基板1の外形形状に対応し、詳しくは、配線部2、アウトリガー部8、金属連結部37、基部53、中央部55およびステージ54に対応して形成されている。
【0234】
ベース絶縁層12は、配線部2およびジンバル部5にわたって、導体パターン7が形成される部分に対応して形成されている。また、ベース絶縁層12は、導体パターン7とともに、導体領域61を形成する。
【0235】
具体的には、ベース絶縁層12は、配線部2において、金属支持基板11の上に形成される一方、ジンバル部5の開口部27内と、金属連結部37、中央部55およびステージ54の上とにも、配線59に沿って形成されている。
【0236】
また、ベース絶縁層12は、また、貫通空間25内において、折返部10に対応したパターンで形成されるとともに、樹脂連結部56を形成するパターンとしても形成されている。
【0237】
導体パターン7は、上記したように、外部側端子17、ヘッド側端子16、素子側端子22(素子先側端子22c、素子後側端子22d)および配線59を備えるパターンとして形成されている。
【0238】
配線59の幅は、例えば、5〜200μm、好ましくは、8〜100μmである。また、外部側端子17、ヘッド側端子16、素子先側端子22cおよび素子後側端子22dの幅および長さ(長手方向長さ)は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、30〜800μmである。
【0239】
カバー絶縁層14は、配線部2およびジンバル部5にわたって、ベース絶縁層12が形成される部分において、外部側端子17、ヘッド側端子16および素子側端子22を露出させ、配線59を被覆するパターンに形成されている。また、カバー絶縁層14は、導体パターン7およびベース絶縁層12とともに導体領域61を形成する。
【0240】
そして、この回路付サスペンション基板1は、その使用時において、図18および図19が参照されるように、折返部10が折り返され、表面側に台座9を介して磁気ヘッド38を備えるスライダ39が搭載されるとともに、裏面側に、ピエゾ素子60が実装される。
【0241】
スライダ39の先端縁は、ヘッド側端子16の後側に微小間隔を隔てて形成されており、スライダ39の先端部に搭載される磁気ヘッド38が、ヘッド側端子16とはんだボール26によって電気的に接続される。
【0242】
スライダ39の後端縁は、素子先側端子22cおよび素子後側端子22dの間と、中央部55の先後方向途中とを、幅方向に横切るように配置される。
【0243】
ピエゾ素子60は、回路付サスペンション基板1の裏面側において、先後方向に伸縮可能となるように、1対の素子先側端子22cおよび素子後側端子22dにそれぞれ架設されるように2つ実装される。
【0244】
すなわち、詳しくは図示しないが、ピエゾ素子60は、図14に示す実施形態と同様に、貫通空間25を跨ぐように配置され、貫通空間25を挟むように形成される素子側端子22(素子先側端子22cおよび素子後側端子22d)に電気的に接続されるとともに、それらにそれぞれ固定される。
【0245】
なお、ピエゾ素子60の上面と、金属連結部37と中央部55との間に架設される導体領域61との間には微小間隔が設けられる。
【0246】
この回路付サスペンション基板1において、ピエゾ素子60は、素子先側端子22cを介して電気が供給され、その電圧が制御されることによって、伸縮する。
【0247】
次に、ピエゾ素子60の伸縮によるスライダ39の揺動について、図20を参照して説明する。
【0248】
まず、ピエゾ素子60は、電気が素子先側端子22cを介して供給され、電気の電圧が制御されることによって、一方が収縮する。すると、一方のピエゾ素子60を固定する素子先側端子22cおよび素子後側端子22dが相対的に近接する。つまり、一方の素子先側端子22cが、基部53に支持される一方の素子後側端子22dに対して後側に移動する。
【0249】
これと同時に、電気が素子先側端子22cを介して供給され、電気の電圧が制御されることによって、他方のピエゾ素子60が伸長する。すると、他方のピエゾ素子60を固定する素子先側端子22cおよび素子後側端子22dが相対的に離間する。つまり、他方の素子先側端子22cが、基部53に支持される他方の素子後側端子22dに対して、先側に移動する。
【0250】
これにより、中央部55の先端および先後方向途中が、幅方向一方側に湾曲しながら、ステージ54が、中央部55の後端を支点として、幅方向一方側に向かって揺動する。これとともに、スライダ39が幅方向一方側に向かって揺動する。
【0251】
そうすると、図20に示すように、スライダ39の後端部の幅方向一端部が、金属連結部37と中央部55との間に架設される導体領域61と、厚み方向に対向する。なお、スライダ39の後端部の幅方向他端部は、上記した導体領域61から離間する。
【0252】
なお、ピエゾ素子60の一方を伸長させ、他方を収縮させれば、スライダ39が上記と逆向きに揺動する。
【0253】
このように、上記した回路付サスペンション基板1では、電子素子としてピエゾ素子60が実装されることにより、磁気ヘッド38の位置や角度などを精細に調節することができる。
【0254】
なお、上記した説明では、貫通空間25を長穴形状に形成し、その内側に折返部10を設けたが、貫通空間25を、折返部10を形成するためだけに形成してもよく、そのような場合には、貫通空間25は、例えば、図21が参照されるように、平面視において先側または後側に向かって開く平面視略コ字状であってもよく、例えば、図22が参照されるように、平面視において先側または後側に向かって開く平面視略U字状であってもよく、その平面視形状は、特に限定されず、任意に選択することができる。
【0255】
また、上記した説明では、折返部10を、平面視略矩形状の折曲部18を介して折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1と連続させたが、図21および図22に示すように、折返部10を折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1と直接連続させてもよい。
【0256】
その場合、折曲部18は、折返部10と、折返部10の周囲の回路付サスペンション基板1との境界として区画される。
【符号の説明】
【0257】
1 回路付サスペンション基板
7 導体パターン
10 折返部
13 第1導体パターン
16 ヘッド側端子
17 外部側端子
19 第2導体パターン
20 基板本体部
22 素子側端子
23 供給側端子
25 貫通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンを表面において備える回路付サスペンション基板であって、
前記回路付サスペンション基板は、その裏面側に折り返し可能な折返部を備え、
前記折返部の周縁において、
前記周縁の一部が、前記折返部の周囲の前記回路付サスペンション基板と、折曲部を介して連続しており、
前記周縁の残部が、前記折返部の周囲の前記回路付サスペンション基板と、前記回路付サスペンション基板を厚み方向に貫通する貫通空間を隔てて配置されており、
前記導体パターンが、少なくとも、前記回路付サスペンション基板の表面に配置される表面側端子と、前記折返部に配置される裏面側端子とを備えることを特徴とする、回路付サスペンション基板。
【請求項2】
表面側に磁気ヘッドを搭載するスライダを実装可能とするともに、裏面側に電子素子を実装可能とし、
前記導体パターンは、
外部回路に電気的に接続される第1端子と、前記磁気ヘッドに電気的に接続される第2端子とを備える第1導体パターンと、
外部回路に電気的に接続される第3端子と、前記電子素子に電気的に接続される第4端子とを備える第2導体パターンとを備え、
前記表面側端子が前記第2端子であり、
前記裏面側端子が前記第4端子である
ことを特徴とする、請求項1に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項3】
前記折返部が折り返された状態において、前記スライダと前記電子素子とが対向可能であり、前記スライダが前記第2端子に接続可能とされ、前記電子素子が前記第4端子に接続可能とされるように、
前記第2端子および前記第4端子が配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項4】
前記導体パターンは、前記折返部に補助パッドを備えるとともに、前記折返部の周囲の回路付サスペンション基板に補助パッドを備えており、
それら前記補助パッドが対をなし、
前記折返部が折り返された状態において、
少なくとも1対の前記補助パッドが、前記回路付サスペンション基板の厚み方向に互いに対向するとともに、超音波接合されることにより、
前記折返部が回路付サスペンション基板の裏面側に固定可能とされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路付きサスペンション基板。
【請求項5】
前記導体パターンは、前記折返部に補助パッドを備えるとともに、前記折返部の周囲の回路付サスペンション基板に補助パッドを備えており、
それら前記補助パッドが対をなし、
前記折返部が折り返された状態において、
少なくとも1対の前記補助パッドが、前記回路付サスペンション基板の厚み方向に互いに対向するとともに、はんだ接合されることにより、
前記折返部が回路付サスペンション基板の裏面側に固定可能とされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路付きサスペンション基板。
【請求項6】
少なくとも1対の前記補助パットのいずれか一方には、はんだを充填可能とする貫通穴が形成されており、
前記貫通穴にはんだを充填することにより、少なくとも1対の前記補助パッドが互いに接合可能とされていることを特徴とする、請求項5に記載の回路付きサスペンション基板。
【請求項7】
前記貫通空間は、前記電子素子を挿通可能としていることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項8】
前記折返部および前記第4端子が、少なくとも1対設けられており、
前記折返部が折り返された状態において、
少なくとも1対の前記第4端子が、前記貫通空間を挟むように配置されていることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項9】
前記電子素子が、発光素子であり、
前記スライダは、光導波路および近接場光発生部材を備えていることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項10】
前記折返部が折り返された状態において、前記発光素子から出射される光が通過して前記光導波路に入射されるように、前記貫通空間が配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項11】
前記電子素子が、検査用素子であることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項12】
前記電子素子が、前記貫通空間を跨ぐように配置可能とされることを特徴とする、請求項8に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項13】
前記電子素子が、ピエゾ素子であることを特徴とする、請求項12に記載の回路付サスペンション基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−216263(P2012−216263A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80795(P2011−80795)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】