説明

回路保護装置

【課題】キャパシタを用いることなく、簡単な回路構成で負荷電流又は負荷電流の二乗を積分した積分値が所定値を超えたときに遮断できるようにして、小型化、軽量化を図った回路保護装置を提供する。
【解決手段】複数の第1〜第4コンパレータCmp1〜Cpm4がそれぞれ、電流検出値VMOが第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF4を超えたか否かを判定する。第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF4は、互いに異なる値に設定されている。加減算回路18は、第1コンパレータCmp1により第1基準電圧VREF1以下であると判定されている間、所定時間毎に異常判定値から1を減算し、基準電圧を超えていると判定している第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4のうち最も大きな基準電圧に設定されているコンパレータに対応して予め定めたa〜cを所定時間毎に異常判定値に加算する。異常判定値が所定値を超えたときに遮断回路19が、MOSFETQ1をオフして負荷電流ILの供給を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路保護装置に係り、特に、負荷電流の異常を検出したときに直流電源から負荷に対する電源供給を遮断して回路を保護する回路保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両において、車載バッテリからの電源はパワーMOSFET及び絶縁被覆により覆われた電源線を介して車両の各部に配されている負荷に供給されている。上述した電源線は、常時振動しているエンジンルーム内等において車体に沿って配索されるが、このとき、車体の角部に接近して位置されていると、振動により角部と断続的な接触を繰り返すようになり、これが長期間続くと電源線の絶縁被覆が車体の角部により徐々に削られて内部導線が微少ではあるが露出するようになる。
【0003】
この電源線の露出部が車体と接触することに伴って、電源線にデッドショートやレアショートが起こり、過電流が流れるとパワーMOSFETや電源線が加熱して熱破壊する事態に至るようになる。そこで、このような事態が至ることを未然に防止するために、特許文献1に記載された回路保護装置が提案されている。
【0004】
この回路保護装置は、負荷電流ILを表すフィードバック信号が基準電圧を超えている間に負荷電流ILの2乗を積算し、その積算値であるIL2×tが上限閾値レベルを超えたときにパワーMOSFETをオフして車載バッテリから負荷に供給される電源を遮断する。詳しくは、この回路保護装置は、図5(A)に示すように、電流ソース101と、IL2×t生成部102と、シュミットトリガー二重レベル閾値回路103と、を備えている。
【0005】
上記電流ソース101は、IL2に応じたIL2電流信号を供給する回路である。上記IL2×t生成部102は、上記電流ソース101によって供給されたIL2電流信号を積算してIL2×tに応じたIL2×t信号を生成する回路である。シュミットトリガー二重レベル閾値回路103は、IL2×t信号が上側閾値レベルを超えたときにパワーMOSFETをオフする遮断信号を出力する回路である。
【0006】
次に、上記電流ソース101の詳細について、図5(B)を参照して説明する。上記電流ソース101は、複数の電流ミラー回路M11〜M14と、複数の基準回路M21〜M24と、複数のダイオードD1〜D4と、抵抗R55と、を備えている。複数の電流ミラー回路M11〜M14は、互いに直列に接続されている。また、複数の電流ミラー回路M11〜M14は、負荷電流ILが入力され、ミラー比がそれぞれ1:2:4:8に設定されている。
【0007】
上記複数の基準回路M21〜M24は、複数の電流ミラー回路M11〜M14に対応して設けられている。複数の基準回路M21〜M24はそれぞれ、1:3:16:64の電流比となる基準電流を発生させる。ダイオードD1〜D4はそれぞれ、互いに対応して設けられた電流ミラー回路M11〜M14と基準回路M21〜M24との両者に接続される。ダイオードD1〜D4は、接続された電流ミラー回路M11〜M14の出力電流が基準回路M21〜M24の基準電流よりも高いときのみ抵抗R55に電流ミラー回路M11〜M14の出力電流を供給する。この抵抗R55により、ダイオードD1〜D4を経由して供給された電流ミラー回路M11〜M14の出力電流が加算される。そして、この抵抗R55に流れる電流がIL2に応じたIL2電流信号として出力される。
【0008】
次に、上記IL2×t生成部102の詳細について、図5(A)を参照して以下説明する。IL2×t生成部102は、キャパシタCと、スイッチSW1と、放電電流ソース102aと、を備えている。上記キャパシタCは、IL2電流信号によって充電される。このキャパシタCの両端電圧Vcapが、IL2×tに応じたIL2×t信号となる。上記スイッチSW1は、電流ソース101とキャパシタCとの間に接続されている。上記スイッチSW1は、負荷電流ILが増加してフィードバック信号が基準電圧を超えるとオンして、IL2電流信号によりキャパシタCを充電する。放電電流ソース102aは、一定の放電電流でキャパシタCを放電する。
【0009】
上述したIL2×t信号は、電源装置に発生するエネルギーに直接的に関連している。言い換えると、熱による潜在的なダメージに応じた値なので、非常に有益である。また、図5に示す回路保護装置は、IL2の積分値IL2×tが上限閾値レベル以上のときに遮断しているが、単にILの積分値IL×tが所定値以上のときに遮断するものも提案されている(特許文献2)。
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来例では、IL2信号やIL2×t信号を得るために図5に示すように大掛かりな回路が必要なため装置が大型化してしまう。しかも、上述した従来例は何れも負荷電流IL又は負荷電流ILの2乗を積分するためにキャパシタCを用いているため、装置が大型化する、という問題点があった。特にスローブローヒューズのようにゆっくりと遮断する特性を得るためにはキャパシタCの容量を大きくする必要がありさらに大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−67785号公報
【特許文献2】特開2005−102474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、キャパシタを用いることなく、簡単な回路構成で負荷電流又は負荷電流の二乗を積分した積分値が所定値を超えたときに遮断できるようにして、小型化、軽量化を図った回路保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、直流電源から負荷に流れる負荷電流を検出する電流検出手段と、前記検出された負荷電流が閾値を超えたか否かを判定する、互いに異なる前記閾値が設定された複数の比較器と、前記閾値を超えていると判定している比較器のうち最も大きな閾値に設定されている比較器に対応して予め定めた加算値を所定時間毎に異常判定値に加算する加算回路と、前記異常判定値が所定値を超えたときに前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第1遮断手段と、を備えたことを特徴とする回路保護装置に存する。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記複数の比較器のうち最も小さい閾値に設定されている比較器により前記閾値以下であると判定されている間、前記所定時間毎に前記異常判定値から予め定めた減算値を減算する減算回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の回路保護装置に存する。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されたとき、直ちに前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第2遮断手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置に存する。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定された状態が一定時間以上継続したとき、前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第2遮断手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置に存する。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されたとき、一旦前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断し、その後前記電源供給を再開させても、前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されている場合、前記電源供給の遮断を継続する第2遮断手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置に存する。
【0018】
請求項6記載の発明は、設定された閾値が大きい比較器ほど大きな加算値が設定され、
前記任意の比較器には、{(当該比較器に設定された閾値)/(前記複数の比較器に設定された閾値のうちの最小)}2以下の加算値が設定されていることを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載の回路保護装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、複数の比較器と加算回路を構成する論理回路とで構成することにより、キャパシタを用いることなく、簡単な回路構成で負荷電流又は負荷電流の二乗を積分した積分値が所定値を超えたときに遮断できるようにして、小型化、軽量化を図った回路保護装置を得ることができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、減算回路により判定値を減算することにより、より一層、熱によるダメージに応じて適切に遮断する回路保護装置を得ることができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、第2遮断手段によりデッドショートが発生して大電流が流れると直ちに遮断されるので、より一層確実に回路を保護することができる回路保護装置を得ることができる。
【0022】
請求項4及び5記載の発明によれば、ノイズの影響で大きな負荷電流が誤検出されたときに電源供給が遮断されてしまうのを防止することができる回路保護装置を得ることができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、負荷電流の二乗を積分した積分値が所定値を超えたときに遮断できるようにした回路保護装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の回路保護装置を組み込んだ電源供給装置を示す回路図である。
【図2】第1〜第4ナンドゲート及び第1〜第4過電流信号の真理値表である。
【図3】スイッチのオンオフ状態、負荷電流、電流検出値、サンプリングクロック、第1〜第4過電流信号、過電流遮断信号、ラッチ回路の出力を示すタイムチャートである。
【図4】他の実施形態における本発明の回路保護装置を組み込んだ電源供給装置を示す回路図である。
【図5】(A)は従来の回路保護装置の一例を示す回路図であり、(B)は(A)に示す電流ソースの詳細を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の回路保護装置を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の回路保護装置を組み込んだ電源供給装置を示す回路図である。同図に示すように、電源供給装置は、図示しない車載バッテリと接続された電源端子VBと、車載バッテリから電源が供給される負荷10と、負荷10に対する電源供給をオン/オフするマルチソース型のMOSFETQ1と、装置全体を過電流から保護する回路保護装置11と、を備えている。
【0026】
上述したMOSFETQ1は、メインFETQ11と、センスFETQ12と、が内蔵されたワンチップで構成され、ドレイン端子D、ゲート端子G、第1メインソース端子SM1、第2メインソース端子SM2及びセンスソース端子SSの5つの外部接続端子が設けられている。上記メインFETQ11及びセンスFETQ12は、NチャンネルのFETであり、ドレイン及びゲート同士が互いに接続されると共に、それぞれがドレイン端子D及びゲート端子Gに接続されている。
【0027】
また、メインFETQ11は、ソースが2つに分岐して第1メインソース端子SM1及び第2メインソース端子SM2に接続されている。センスFETQ12は、ソースがセンスソース端子SSに接続されている。上述した内部構成のMOSFETQ1は、ドレイン端子Dが電源端子VBに接続され、第1メインソース端子SM1が負荷10に接続されると共に、ゲート端子Gが抵抗RGを介してスイッチSWに接続されている。
【0028】
スイッチSWは、駆動電源VPの+側に接続されたオン接点onと、グランドに接続されたオフ接点offと、を有している。上記駆動電源VPは、−側が電源端子VBに接続され、+側がオン端子onに接続されている。以上の構成により、スイッチSWがオン接点on側に切り換えられると、抵抗RGを介してゲート端子Gに駆動電源VPが供給されてメインFETQ11及びセンスFETQ12がオンして、負荷10に負荷電流ILが供給される。一方、スイッチSWがオフ接点off側に切り換えられると、抵抗RGを介してゲート端子Gにグランドが接続されてメインFETQ11及びセンスFETQ12がオフして、負荷10に供給された負荷電流ILが遮断される。
【0029】
また、上記メインFETQ11及びセンスFETQ12は、素子面積がn:1の比率となるように、設けられている。このMOSFETQ1は、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間電圧を互いに等しくすると、メインFETQ11のソースから流れる電流とセンスFETQ12のソースから流れる電流の比、即ち分流比がnとなる特性がある。
【0030】
また、上記回路保護装置11は、電流検出手段としての電流検出回路12と、複数の比較器としての第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4と、クロック発振回路13と、第1〜第4ナンドゲートN1〜N4と、1ポイント減算指令部14と、aポイント加算指令部15と、bポイント加算指令部16と、cポイント加算指令部17と、加算回路及び減算回路としての加減算回路18と、第1遮断手段及び第2遮断手段としての遮断回路19と、を備えている。上記電流検出回路12は、車載バッテリから負荷10に流れる負荷電流ILを検出する回路であり、OPアンプAmpと、MOSFETQ2と、センス抵抗Risと、から構成されている。
【0031】
上記OPアンプAmpは、+入力がMOSFETQ1の第2メインソース端子SM2に接続され、−入力がMOSFETQ1のセンスソース端子SSに接続されている。上記FETQ2は、ゲートがOPアンプAmpの出力に接続され、ソースがOPアンプAmpの−入力に接続されている。よって、OPアンプAmpの出力がFETQ2のゲート−ソース間を介して−入力にフィードバックされる。
【0032】
このようにOPアンプAmpの出力をフィードバックすることにより、OPアンプAmpの+入力の電圧と−入力の電圧とがほとんど同じになるイマジナリーショート状態となる。このため、メインFETQ11及びセンスFETFETQ12のゲート−ソース間電圧を等しくすることができ、第1メインソース端子SM1から出力される負荷電流ILの1/nの電流IsがMOSFETQ1のセンスソース端子SSから出力される。
【0033】
上記センス抵抗Risは、一端がFETQ2を介してMOSFETQ1のセンスソース端子SSに接続され、他端がグランドに接続される。よって、センス抵抗RisにはMOSFETQ1のセンスソース端子SSから出力される電流Is(=IL/n)が供給され、その両端電圧が負荷電流ILに応じた電流検出値VMO(=Ris×IL/n)として後述する第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4の+入力に供給される。
【0034】
上記第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4はそれぞれ、−入力に第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF2が供給されている。第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4はそれぞれ、電流検出値VMOが第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF4(閾値)を超えたときにHレベルの第1〜第4過電流信号S1〜S4を出力する比較器である。第1〜第4基準電圧VRE1〜VREF4はそれぞれ、過電流を判断するための閾値であり、互いに異なる値に設定されている。
【0035】
上記第1基準電圧VFER1は、定常値の負荷電流ILに対応する電流検出値VMOよりも大きい値に設定されると共に、マルチソース型MOSFETQ1や負荷電線が長時間にわたって通電されても過熱することがないような電流に応じた値に設定されている。第2、第3、第4基準電圧VREF2、VREF3、VREF4は、第1基準電圧VREF1の2倍、3倍、4倍というように順に高く設定される。特許文献1のように第2、第3、第4基準電圧VREF2、VREF3、VREF4を、第1基準電圧VREF1の2倍、4倍、8倍というふうにしてもよい。第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF4のうち最も大きい第4基準電圧VREF4は、負荷10に固有の突入電流よりも高い値に設定される。
【0036】
上記クロック発振回路13は、所定時間毎にHレベルのサンプリングクロックSCを出力する回路である。クロック発振回路13からのサンプリングクロックSCは、第1〜第4ナンドゲートN1〜N4の入力にそれぞれ供給されている。上記第1ナンドゲートN1の入力にはそれぞれ、サンプリングクロックSC、反転された第1過電流信号S1、が入力されている。よって、図2に示すように、第1ナンドゲートN1は、第1〜第4過電流信号S1〜S4の何れも出力されていない間、即ち電流検出値VMO≦第1基準電圧VREF1の間のみ、サンプリングクロックSCが出力される毎に、Hレベルを出力する。
【0037】
上記第2ナンドゲートN2の入力にはそれぞれ、サンプリングクロックSC、第1過電流信号S1、反転された第2過電流信号S2、が入力されている。よって、図2に示すように、第2ナンドゲートN2は、第1過電流信号S1のみが出力され、第2〜第4過電流信号S2〜S4が出力されていない間、即ち第1基準電圧VRER1<電流検出値VMO≦第2基準電圧VREF2の間のみ、サンプリングクロックSCが出力される毎に、Hレベルを出力する。
【0038】
上記第3ナンドゲートN3の入力にはそれぞれ、サンプリングクロックSC、第2過電流信号S2、反転された第3過電流信号S3、が入力されている。よって、図2に示すように、第3ナンドゲートN3は、第1及び第2過電流信号S1、S2が出力され、第3及び第4過電流信号S3、S4が出力されていない間、即ち第2基準電圧VREF2<電流検出値VMO≦第3基準電圧VREF3の間のみ、サンプリングクロックSCが出力される毎に、Hレベルを出力する。
【0039】
上記第4ナンドゲートN4の入力にはそれぞれ、サンプリングクロックSC、第3過電流信号S3、反転された第4過電流信号S4、が入力されている。よって、図2に示すように、第4ナンドゲートN4は、第1〜第3過電流信号S1〜S3が出力され、第4過電流信号S4が出力されていない間、即ち第3基準電圧VREF3<電流検出値VMO≦第4基準電圧VREF4の間のみ、サンプリングクロックSCが出力される毎に、Hレベルを出力する。これら第1〜第4ナンドゲートN1〜N4の出力はそれぞれ、1ポイント減算指令部14、a〜cポイント加算指令部15〜17に供給されている。
【0040】
上記1ポイント減算指令部14は、第1ナンドゲートN1の出力がHレベルのとき、即ち第1〜第4過電流信号S1〜S4が何れも出力されていないときに1ポイント減算命令を後述する加減算回路18に供給する。aポイント加算指令部15は、第2ナンドゲートN2の出力がHレベルのとき、即ち第1過電流信号S1が出力され、第2〜第4過電流信号S2〜S4が出力されていないときにaポイント加算命令を後述する加減算回路18に供給する。aの値をVREF2をVREF1の2倍に設定した場合は、1〜4{=(VREF2/VREF1)2}の値とする。aの最大値が4の理由は、加減算回路18で特許文献1と同様にIL2×Tを積分するためである。過電流が発生してから遮断までの遅れを短く設定したいときは4、長くしたいときは1とすればよい。平均的な制御を狙って2.5としてもよい。
【0041】
bポイント加算指令部16は、第3ナンドゲートN3の出力がHレベルのとき、即ち第1及びS2過電流信号S1、S2が出力され、第3及び第4過電流信号S3、S4が出力されていないときにbポイント加算命令を後述する加減算回路18に供給する。bの値をVREF2をVREF1の2倍、VREF3をVREF1の3倍に設定した場合は、4〜9{=(VREF3/VREF1)2}の値とする。
【0042】
cポイント加算指令部17は、第4ナンドゲートN4の出力がHレベルのとき、即ち第1〜S3過電流信号S1〜S3が出力され、第4過電流信号S4が出力されていないときにcポイント加算命令を後述する加減算回路18に供給する。cの値をVREF3をVREF1の3倍、VREF4をVREF1の4倍に設定した場合は、9〜16{=(VREF4/VREF1)2}の値とする。
【0043】
上記加減算回路18は、例えば図示しない互いに出力が接続された公知の減算器及び加算器とデジタルコンパレータとから構成されている。減算器は、2入力の一方に出力が供給され、他方に1ポイント減算命令である「1」を表すデジタル値が供給される。よって、図示しない減算器は、1ポイント減算命令が供給されると出力から「1」を減算した値を異常判定値として出力する。即ち、減算器は、最も小さい基準電圧が設定された第1コンパレータCmp1により電流検出値VMOが第1基準電圧VREF1以下であると判定されている間、所定時間毎に異常判定値から「1」を減算する。
【0044】
上記加算器は、2入力の一方に出力が供給され、他方にa〜cポイント加算命令である「a」〜「c」を表すデジタル値が供給される。よって、図示しない加算器は、a〜cポイント加算命令が供給されると出力に「a」〜「c」を加算した値を異常判定値として出力する。即ち、加算器は、電流検出値VMOが第1〜第4基準電圧VREF1〜VREF4を超えていると判定している第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4のうち最も大きな基準電圧が設定された第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4に対応した予め定めた加算値である「a」〜「c」を所定時間毎に異常判定値に加算する。
【0045】
図示しないデジタルコンパレータは、上記加算器及び減算器により加減算された異常判定値が所定値を超えたときにHレベルの過電流遮断信号S5を後述する遮断回路19に対して出力する。
【0046】
上記遮断回路19は、オアゲートO1と、ラッチ回路20と、MOSFETQ3と、を備えている。オアゲートO1は、2入力の一方に過電流遮断信号S5が供給され、他方に第4過電流信号S4が供給されている。オアゲートO1の出力は、ラッチ回路20に供給されている。このラッチ回路20の出力は、過電流遮断信号S5及び第4過電流信号の何れか一方が出力されるとLレベルからHレベルとなり、その後過電流遮断信号S5、第4過電流信号が出力されなくなってもHレベルを維持する。MOSFETQ3は、ドレインがMOSFETQ1のゲートにソースがMOSFETQ1のソースに接続されている。ラッチ回路20の出力がHレベルになると、MOSFETQ3がオンして、MOSFETQ1のドレイン−ソースが短絡されてMOSFETQ1がオフする。このMOSFETQ1のオフによる負荷10に対する車載バッテリからの電源供給が遮断される。
【0047】
次に、上述した構成の電源供給装置の動作を図3のタイムチャートを参照して説明する。なお、図3においては、電流検出値=0.1×IL、a=1、b=4、c=16、加減算回路18の図示しないデジタルコンパレータに設定した上記所定値=100としている。まず、スイッチSWがオフ接点off側に切り換えられている間は、MOSFETQ1がオフとなり、負荷電流ILが流れていないので電流検出値VMO=0となっている。よって、第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4からは第1〜第4過電流信号S1〜S4の何れも出力されていないので、1ポイント減算指令部17からはサンプリングクロックSCに同期して1ポイント減算指令が出ているが、加減算回路18の異常判定値はすでに0なので0のままである。
【0048】
スイッチSWがオンされるとMOSFETQ1がオンして、負荷10に負荷電流ILが供給される。最初は突入電流が流れて電流検出値VMOが第3基準電圧VREF3を超える。結果、第1〜第3コンパレータCmp1〜Cmp3から第1〜第3過電流信号S1〜S3が出力され、16ポイント加算指令部17から数回、16ポイント加算命令が出力されて、異常判定値に16ポイントが数回加算される。しかしながら、異常判定値が100までは到達する前に、負荷電流ILが小さくなり、定常状態となる。負荷電流ILが定常状態になると負荷電流ILが第1基準電圧VREF1を下回るので、1ポイント減算指令部14から1ポイント減算指令が出力されて、異常判定値に対する1ポイントの減算が繰り返し行われ、異常判定値が0に近づいていく。
【0049】
その後、例えばレアショートが発生し、電流検出値VMOが第3基準電圧VREF3と第4基準電圧VREF4との間のレベルまで上昇すると、第1〜第3コンパレータCmp1〜Cmp3から第1〜第3過電流信号S1〜S3が出力される。これに応じて、16ポイント加算指令部17からサンプリングクロックSCが出力される毎に16ポイント加算命令が出力されて、異常判定値に16ポイントの加算が繰り返し行われる。結果、異常判定値が100を超えると、加減算回路18からHレベルの過電流遮断信号S5が出力される。このHレベルの過電流遮断信号S5の出力に応じてラッチ回路20の出力がHレベルとなり、MOSFETQ3がオンする。
【0050】
そして、MOSFETQ3のオンによって、MOSFETQ1がオフして負荷10に対する負荷電流ILの供給が遮断する。負荷電流ILの供給が遮断されると、電流検出値VMOが第1基準電圧VREF1以下となり、第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4から第1〜第4過電流信号S1〜S4の何れも出力されなくなるので、1ポイント減算指令部17から1ポイント減算指令が出力されて、異常判定値から1ポイントの減算が繰り返し行われる。これにより、異常判定値が100を下回り、加減算回路18からの過電流遮断信号S5の出力は停止されるが、ラッチ回路20はHレベルを維持して、MOSFETQ3をオン、MOSFETQ1のオフを維持し続ける。
【0051】
なお、上述した実施形態では、電流検出値VMOが第3基準電圧VREF3と第4基準電圧VREF4との間のレベルまで上昇するような過電流が生じた場合について説明していたが、例えば、電流検出値VMOが第2基準電圧VREF2と第3基準電圧VREF3との間のレベルまで上昇するような過電流が生じる場合もある。この場合、第1及び第2過電流信号S1、S2が出力されるが、第3及び第4過電流信号S3、S4は出力されない。このため、サンプリングクロックSCが出力される毎に4ポイント加算指令部16から4ポイント加算指令が出力されて、異常判定値に対する4ポイントの加算が繰り返される。
【0052】
また、電流検出値VMOが第1基準電圧VREF1と第2基準電圧VREF2との間のレベルまで上昇するような過電流が生じる場合もある。この場合、第1過電流信号S1が出力されるが、第2〜第4過電流信号S2〜S4は出力されない。このため、サンプリングクロックSCが出力される毎に1ポイント加算指令部15から1ポイント加算指令が出力されて、異常判定値に対する1ポイントの加算が繰り返される。
【0053】
また、電流検出値VMOが第4基準電圧VREF4を超えるレベルまで上昇するような突入電流を超える大きな過電流が生じた場合、第4コンパレータCmp4から第4過電流信号S4が出力される。この第4過電流信号S4の出力に応じて、ラッチ回路20の出力がHレベルとなり、MOSFETQ3がオンする。そして、MOSFETQ3のオンによって、MOSFETQ1がオフして負荷10に対する負荷電流ILの供給が遮断する。負荷電流ILの供給が遮断されると、電流検出値VMOが第1基準電圧VREF1以下となり、1ポイント減算指令部17から1ポイント減算指令が出力されて、異常判定値から1ポイントの減算が繰り返し行われる。これにより、異常判定値が100を下回り、加減算回路18からの過電流遮断信号S5の出力は停止されるが、ラッチ回路20はHレベルを維持して、MOSFETQ3をオン、MOSFETQ1のオフを維持し続ける。
【0054】
上述した実施形態によれば、電流検出値VMOと第1〜第4基準電圧とを同数のコンパレータCmp1〜Cmp4で比較して、コンパレータCmp1〜Cmp4が判定していない場合はサンプリングクロックSCに同期して異常判定値を1ポイント減算し、コンパレータCpm1〜Cmp4が反転する場合は反転に対応する第1基準電圧VREF1の倍率の二乗に相当する予め設定された加算値a〜cをサンプリングクロックSCに同期して異常判定値に加算し、異常判定値が所定値を超えたら遮断している。即ち、複数の第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4と加減算回路18を構成する論理回路とで構成することにより、キャパシタを用いることなく、簡単な回路構成で負荷電流ILの二乗を積分した積分値である異常判定値が所定値(=100)を超えたときに遮断できるようにして、小型化、軽量化を図った回路保護装置11を得ることができる。
【0055】
また、上述した実施形態によれば、加減算回路18が、複数の第1〜第4コンパレータCpm1〜Cmp4の全てにより電流検出値が基準電圧以下であると判定されている間、所定時間毎に異常判定値から予め定めた減算値である「1」を減算する。よって、加減算回路18により異常判定値を減算することにより、より一層、熱によるダメージに応じて適切に遮断する回路保護装置11を得ることができる。
【0056】
また、上述した実施形態によれば、遮断回路19が、複数の第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4のうち最も大きい基準電圧に設定された第4コンパレータCmp4により電流検出値VMOが第4基準電圧VREF4を超えていると判定されたとき、直ちに負荷10に対する車載バッテリからの電源供給を遮断する。よって、遮断回路19によりデッドショートが発生して大電流が流れると直ちに遮断されるので、より一層確実に回路を保護することができる回路保護装置11を得ることができる。
【0057】
また、上述した実施形態によれば、設定された基準電圧が大きいコンパレータCmpほど大きな加算値a〜cが設定され、任意のコンパレータCmpnには、{(そのコンパレータCmpnに設定された基準電圧VREFn)/(VREF1)}2以下の加算値a〜cが設定されている。これにより、負荷電流の二乗を積分した積分値である異常判定値が所定値を超えたときに遮断できるようにした回路保護装置11を得ることができる。
【0058】
なお、上述した実施形態によれば、第4過電流信号S4が出力されると、すぐに負荷電流ILを遮断していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、ノイズ等による誤動作を防ぐためにサンプリングクロックSC数回にわたって第4過電流信号S4が継続して出力されていたら負荷電流ILを遮断するようにしてもよい。また、負荷電流ILを遮断させた後に、再びMOSFETQ1をオンした後に第4過電流信号S4が出力されたときに、負荷電流ILの遮断を継続させるようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、遮断時にはMOSFETQ3をオンして、MOSFETQ1のゲート−ソース間を短絡して、MOSFETQ1に供給されるゲート電圧を下げて負荷電流ILを遮断するようにしていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、MOSFETQ1のゲートに駆動電圧VPが供給できないようにして、負荷電流ILを遮断するようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、第2〜第4基準電圧VREF2〜VREF4は、第1基準電圧VREF1の整数倍に設定してたが、本発明はこれに限ったものではない。第2〜第4基準電圧VREF2〜VREF4は、第1基準電圧VREF1より大きな値であればよく、整数倍でなくてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態によれば、比較器は第1〜第4コンパレータCmp1〜Cmp4の4つ設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。比較器としては2個以上あれば、いくつでも良い。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、マルチソース型のMOSFETQ1を用いて負荷電流ILを検出した例について説明したが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図4に示すように電流検出抵抗RSを用いて負荷電流ILを検出することも考えられる。同図に示すように、電流検出抵抗RSはMOSFETQ1に直列に接続されている。この電流検出抵抗RSの車載バッテリ側の一端は、抵抗RAを介してOPアンプAmpの−入力に接続されている。一方、電流検出抵抗RSの負荷10側の他端は、直接OPアンプAmpの+入力に接続されている。第1実施形態と同様に、OPアンプAmpの出力はMOSFETQ2を介して−入力にフィードバックされている。よって、電流検出抵抗RSの両端電圧と抵抗RAの両端電圧が等しくなるようにOPアンプAmpのフィードバックが働くので、負荷10に流れる負荷電流ILとセンス抵抗Risに流れる電流Isとの関係は下記の式(1)に示すようになる。
IL×RS=IS×RA …(1)
よって、電流検出値VMOは下記の式(2)のようになる。
VMO=Ris×IL×RS/RA …(2)
なお、図4においては、MOSFETQ1としてpチャンネルのものを用いているので、スイッチSWの論理が図1とは逆になっている。
【0063】
また、上述した実施形態では、電流値によって負荷電流ILを遮断していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、温度センサを設け、一定温度以上になったときに負荷電流ILを遮断するようにしてもよい。
【0064】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 負荷
11 回路保護装置
12 電流検出回路(電流検出手段)
18 加減算回路(加算回路、減算回路)
19 遮断回路(第1遮断手段、第2遮断手段)
Cmp1 第1コンパレータ(比較器)
Cmp2 第2コンパレータ(比較器)
Cmp3 第3コンパレータ(比較器)
Cmp4 第4コンパレータ(比較器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から負荷に流れる負荷電流を検出する電流検出手段と、
前記検出された負荷電流が閾値を超えたか否かを判定する、互いに異なる前記閾値が設定された複数の比較器と、
前記閾値を超えていると判定している比較器のうち最も大きな閾値に設定されている比較器に対応して予め定めた加算値を所定時間毎に異常判定値に加算する加算回路と、
前記異常判定値が所定値を超えたときに前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第1遮断手段と、
を備えたことを特徴とする回路保護装置。
【請求項2】
前記複数の比較器のうち最も小さい閾値に設定されている比較器により前記閾値以下であると判定されている間、前記所定時間毎に前記異常判定値から予め定めた減算値を減算する減算回路をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の回路保護装置。
【請求項3】
前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されたとき、直ちに前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第2遮断手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置。
【請求項4】
前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定された状態が一定時間以上継続したとき、前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断する第2遮断手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置。
【請求項5】
前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されたとき、一旦前記負荷に対する前記直流電源からの電源供給を遮断し、その後前記電源供給を再開させても、前記複数の比較器のうち最も大きい閾値に設定されている比較器により前記閾値を超えていると判定されている場合、前記電源供給の遮断を継続する第2遮断手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路保護装置。
【請求項6】
設定された閾値が大きい比較器ほど大きな加算値が設定され、
前記任意の比較器には、{(当該比較器に設定された閾値)/(前記複数の比較器に設定された閾値のうちの最小)}2以下の加算値が設定されている
ことを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載の回路保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279158(P2010−279158A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128950(P2009−128950)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】