説明

回路基板、回路基板を用いた回路装置、及び回路基板の製造方法

【課題】 絶縁層の剥離が発生するのを抑制することが可能な回路基板を提供する。
【解決手段】 回路基板100は、基材1、第1の配線層2、絶縁層3、充填材4、第2の配線層5、及びビアホール6を備える。基材1の上に第1の配線層2が形成される。絶縁層3には熱伝導性が良好な充填材4が充填され、基材1(または第1の配線層2)を被覆するように形成される。絶縁層3によって、第1の配線層2と第2の配線層5とが電気的に絶縁されている。絶縁層3の底部では、基材1(または第1の配線層2)の上面側において絶縁層3に充填された充填材4が剥き出しになり、基材1(または第1の配線層2)は充填材4の一部と直に接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、回路基板を用いた回路装置、及び回路基板の製造方法に関し、特に粒子状の充填材を含む絶縁層を用いた回路基板、回路基板を用いた回路装置、及び回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器などに含まれる回路装置は、小型化、高密度化および多機能化のために、単位体積当たりの発熱密度が増加している。このため、近年では、回路装置の基板として、高い放熱性を有する金属基板を用いるとともに、その金属基板上に、IC(Integrated Circuit:集積回路)やLSI(Large Scale Integrated Circuit:大規模集積回路)などの回路素子を装着している(たとえば、特許文献1参照)。また、従来では、金属基板上に、ハイブリッドIC(Hybrid Integrated Circuit:混成集積回路)が形成された構造も知られている。ここで、ハイブリッドICとは、ICチップやコンデンサ、抵抗などの回路素子を1つの基板上にまとめて組み込んだ回路装置を意味する。
【0003】
図12は、上記特許文献1に開示された従来の回路装置の構造を概略的に示した断面図である。図12を参照して、従来の回路装置では、アルミニウムからなる金属基板101上に、絶縁層として機能するとともに、充填材としてのシリカ(SiO)が添加された樹脂層102が形成されている。樹脂層102上の所定領域には、樹脂からなる接着層103を介してICチップ104が装着されている。また、樹脂層102上のICチップ104の端部から所定の間隔を隔てた領域には、接着層103を介して銅からなる金属配線105が形成されている。この金属配線105と金属基板101とは、樹脂層102によって絶縁されている。また、金属配線105とICチップ104とは、ワイヤ106によって電気的に接続されている。
【0004】
図12に示した従来の回路装置では、アルミニウムからなる金属基板101を用いるとともに、その金属基板101上に、樹脂層102を介してICチップ104を装着することによって、ICチップ104から多量の熱が発生したとしても、その熱を金属基板101により放熱することが可能となる。
【特許文献1】特開平8−288605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、絶縁層にシリカなどの粒子状の充填材を充填することで熱伝導率を高めてきた。しかしながら、図12に示した従来の回路装置では、充填材の充填量が多いと(典型的には70〜80vol%程度)、熱伝導率が急上昇する一方で、回路素子が発熱すると回路装置全体の温度が上昇し、熱膨張係数の大きな樹脂層102は膨張しようとする。このため、従来の回路装置のように、金属基板101の上に熱膨張係数の大きい樹脂層(絶縁層)102が貼り付けられた構造では、熱ひずみによって回路装置が変形するという問題が発生し、状況によっては、金属基板101から樹脂層(絶縁層)102が剥離してしまうという問題が発生した。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、絶縁層の剥離が発生するのを抑制することが可能な回路基板およびこの回路基板を用いた回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の回路基板は、基材と、基材の上に設けられた絶縁層と、絶縁層に充填された熱伝導性を有する粒子状の充填材と、を備え、充填材の一部が絶縁層の底部において剥き出しとなり、基材と接触していることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、絶縁層の底部において充填材が剥き出しになっていることにより、絶縁層の底部に充填材の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、基材と絶縁層および充填材との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、基材と絶縁層および充填材との密着性が向上する。
【0009】
また、回路基板に熱が加わった場合においても、温度上昇による絶縁層の膨張が、基材に埋め込まれた充填材によって抑制されるので、基材と絶縁層との熱膨張率の差から生じる剥がれを防止することができる。
【0010】
これらの結果、信頼性の優れた回路基板を提供することができる。
【0011】
上記態様において、基材と充填材の一部との接触面積が、基材と絶縁層との接触面積よりも広くてもよい。このようにすることで、基材と絶縁層および充填材と密着性の向上効果および高温時における剥離の抑制効果をより確実かつ顕著に得ることができる。
【0012】
また、上記構成において、充填材の一部は、絶縁層内の上下方向に積層され、互いに接触していてもよい。このようにすることで、高温下で基材と絶縁層との間に応力が発生したときに、積層してつながった充填材間で絶縁層内の上下方向に応力を分散するので、剥離の抑制効果を高くすることができる。
【0013】
本発明の別の態様の回路基板は、基材は、その最外層に配線層を含み、充填材の一部が絶縁層の底部において剥き出しとなり、配線層と接触していることを特徴とする。このようにすることで、絶縁層の底部において充填材が剥き出しになっていることにより、絶縁層の底部に充填材の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、基材の配線層と絶縁層および充填材との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、配線層と絶縁層および充填材との密着性が向上する。
【0014】
上記態様において、充填材の熱膨張係数が、絶縁層の熱膨張係数に比べて配線層の熱膨張係数により近くてもよい。
【0015】
この態様によれば、絶縁層の熱膨張係数に比べて配線層の熱膨張係数に近い充填材を使用することにより、回路基板の温度が上昇した場合であっても、配線層と充填材との熱応力が小さいために、配線層が絶縁層および充填材から剥離することが抑制される。
【0016】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の回路装置は、上記記載の回路基板と、回路基板に搭載された回路素子と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、絶縁層の剥離が発生するのを抑制することが可能な回路基板の上に、フリップチップ接続やワイヤボンディング接続などにより回路素子を接続しているので、絶縁層の剥離が発生するのを抑制することが可能な回路装置を提供することができる。
【0018】
本発明のある態様の回路装置の製造方法は、基材を用意する第1の工程と、熱伝導性を有する粒子状の充填材が充填された絶縁層を、基材に対して圧着する第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、絶縁層中の充填材が効果的に基材に対して埋め込まれるようになる。こうして製造された回路装置では、基材と絶縁層および充填材との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められ、基材と絶縁層および充填材との密着性が向上するようになる。
【0020】
また、上記製造方法において、第2の工程は、充填材の一部が、絶縁層内において上下方向に積層され、互いに接触するように圧着する工程であることが好ましい。この製造方法によれば、基材に対して埋め込まれる充填材に対して圧着圧を効果的に伝播させることができるので、基材に対して充填材がより埋め込まれ、基材と絶縁層および充填材との密着性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁層の剥離が発生するのを抑制することが可能な回路基板およびこの回路基板を用いた回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具現化した実施形態について図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、本明細書において、「上」方向とは、膜の積層の順番により決まる概念であり、先に積層される膜の側から見て後から積層される膜の存在する方向が上であると規定している。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における回路基板の構成を示す断面図である。回路基板100は、基材1、第1の配線層2、絶縁層3、充填材4、第2の配線層5、及びビアホール6を備える。
【0023】
基材1は、ガラスクロス(ガラス繊維)に絶縁性の樹脂を含浸させた材料であり、樹脂としては例えばエポキシ樹脂、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等の有機系樹脂が好適に用いられる。基材1の膜厚は、たとえば、60μm程度とする。ガラスクロスは、エポキシ樹脂内に3層あると好ましい。ここで、1層とは、異なる方向にそれぞれ延びているガラス繊維が交差している状態をいい、3層とは、この状態を単位として上下方向に3段積み重なっている状態をいう。
【0024】
基材1の上に設けられた第1の配線層2および第2の配線層5は、多層配線の一部を構成し、それぞれ所定の配線パターンを有する。また、第1の配線層2と第2の配線層5とはビアホール6を介して接続されている。第1の配線層2および第2の配線層5の材料は、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)などの金属が好適である。
【0025】
絶縁層3は、第1の配線層2と第2の配線層5との間に設けられている。絶縁層3により、第1の配線層2と第2の配線層5との間が電気的に絶縁されている。絶縁層3に用いられる材料としては、例えば、エポキシ樹脂、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等が挙げられる。絶縁層3の膜厚は、特に限定されないが、典型的には25〜60μmである。但し、絶縁層3の膜厚の下限は、少なくとも、後述する充填材4の粒径よりも大きい必要がある。
【0026】
絶縁層3には、絶縁層3の熱伝導率を高くするために、充填材4が添加されている。充填材4は、熱伝導性が良好な粒子状の無機材料で構成されている。この充填剤としては、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)および窒化ホウ素(BN)などが挙げられる。本実施形態の充填材4は球状であるが、充填材4は粒子状であればよく、楕円状、不定形などの形状でもよい。
【0027】
絶縁層3における充填材4の充填率(体積充填率)は50〜90vol%が好ましく、65〜75vol%がより好ましい。充填材4の充填率が50vol%より少ないと、十分な熱伝導性が得られない。一方、充填材4の充填率が90vol%より多いと、絶縁層3が脆くなり、耐久性が損なわれる。充填材4の充填率を50〜90vol%とするために、粒径の分布が比較的に大きい集団と、粒径の分布が比較的に小さい集団とを混在させることが好適である。これにより、粒径が大きい粒子との間に生じた隙間に粒径が小さい粒子が入り込むことにより、絶縁層3に充填材をより密に充填させることができる。例えば、平均粒径が0.7μmの集団Aと、平均粒径が3μm(最大粒径15μm)の集団Bとを1:4の構成比で混在させることにより、充填材4の充填率を70vol%とすることができる。
【0028】
充填材4の熱膨張係数は、絶縁層3の熱膨張係数に比べて第1の配線層2の熱膨張係数により近いことが望ましい。たとえば、絶縁層3としてエポキシ樹脂(熱膨張係数:30.3×10−6/K)を用い、第1の配線層2として銅(熱膨張係数:17.7×10−6/K)を用いた場合には、絶縁層3にアルミナ(熱膨張係数:7.8×10−6/K)を充填材4として用いることにより、上述の関係が確保される。
【0029】
第1実施形態では、絶縁層3は、基材1(または第1の配線層2)を被覆する状態で形成され、基材1(または第1の配線層2)の上面側において絶縁層3に充填された充填材4が剥き出しになっている。このため、基材1(または第1の配線層2)は、充填材4の一部と直に接している。基材1(または第1の配線層2)と充填材4との接触面積は、基材1(または第1の配線層2)と絶縁層3との接触面積より大きいことが望ましい。これにより、後述する効果を確実かつ顕著に得ることができる。
【0030】
基材1(または第1の配線層2)の上面側において、充填材4が剥き出しになっていることにより、基材1(または第1の配線層2)の上面側に充填材4の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、基材1(または第1の配線層2)と絶縁層3および充填材4との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、基材1(または第1の配線層2)と絶縁層3および充填材4との密着性が向上する。
【0031】
また、回路基板100に熱が加わった場合においても、温度上昇による絶縁層3の膨張が、基材1(または第1の配線層2)に埋め込まれた充填材4によって抑制されるので、基材1(または第1の配線層2)と絶縁層3との熱膨張率の差から生じる剥がれを防止することができる。また、絶縁層3に比べて熱膨張係数が第1の配線層2に近い充填材4を使用することにより、回路基板100の温度が上昇した場合であっても、第1の配線層2と充填材4との熱応力が小さいために、絶縁層3および充填材4が第1の配線層2から剥離することが抑制される。
【0032】
これらの結果、信頼性の優れた回路基板100を提供することができる。
【0033】
この他、第1実施形態の回路基板100は高温時の放熱性が向上されている。たとえば、充填材4として用いられるアルミナの熱伝導率は30W/mK程度であり、絶縁層3として用いられるエポキシ樹脂の熱伝導率の100倍以上に相当する。このため、第1の配線層2が熱伝導性の良好な充填材4と直に接することにより、絶縁層3内の充填材4を放熱経路とした熱拡散が多くなり、回路基板としての放熱性が向上する。
【0034】
さらに、第1実施形態の回路基板においては、充填材4の一部が絶縁層3内の上下方向に積層され、互いに接触していてもよい。このようにすることで、高温下で基材1(または第1の配線層2)と絶縁層3との間に応力が発生したときに、積層してつながった充填材4間で絶縁層3内の上下方向に応力を分散するので、絶縁層3および充填材4が基材1(または第1の配線層2)から剥離するのを抑制する効果を高くすることができる。
【0035】
図2および図3は、第1実施形態に係る回路基板100の製造方法を示す。
【0036】
まず、図2(A)に示すように、基材1の上に、第1の配線層2を形成する。第1の配線層2は、例えば、フォトリソグラフィ法とエッチング法とを組み合わせた加工法により、所定の配線パターンに形成することができる。
【0037】
図2(B)および(C)に示すように、予め所定の割合で充填材4が含有された絶縁層3および銅箔5e付き積層シートを用意する。なお、積層シートは、充填材4同士の凝集を防止し、またエポキシ樹脂である絶縁層3となじみやすくするために、充填材4の表面にはシランカップリング剤による親水化処理を施してから、所定の割合で混練し、銅箔5e上に塗布することで形成される。この積層シートを、第1の配線層2の上に貼り付けて、150℃で120分圧着して硬化させる。この圧着処理によって、絶縁層3の底部においては充填されている充填材4が剥き出しとなり、基材1の表面および第1の配線層2の表面に埋め込まれた(食い込んだ)状態に形成される。
【0038】
なお、この圧着処理において、充填材4の一部が絶縁層3内において上下方向に積層され、互いに接触するように圧着するようにすれば、基材1(または第1の配線層2)に対して埋め込まれる充填材4に対して、圧着圧を効果的に伝播させることができるので、基材1(または第1の配線層2)に対して充填材4をより確実に埋め込むことができる。
【0039】
図3(D)に示すように、フォトリソグラフィ法およびエッチング法と組み合わせて、後述するビアホール6の形成領域上に位置する銅箔5eを除去する。これにより、絶縁層3のビアホール6の形成領域が露出される。
【0040】
図3(E)に示すように、銅箔5eの上方からUVレーザ(波長355nm、パルス幅15nsec)を所定の位置に照射することによって、絶縁層3の露出した表面から第1の配線層2の表面に達するまでの領域を除去する。これにより、絶縁層3に約70μmの直径を有するビアホール6を開口する。UVレーザ照射におけるレーザのパルスエネルギおよびエネルギ密度は、絶縁層3を構成する樹脂が加工される一方で、充填材4はほとんど加工されない条件に調整されていることが好ましい。加工後のビアホール6の側壁は、図3(E)に示すように、絶縁層3に充填された充填材4が部分的に露出した状態になっている。
【0041】
図3(F)に示すように、パラジウムをキャタリストに用いた無電界銅めっき処理によって、銅箔5eの上面およびビアホール6の内面上に、約0.5μmの厚みで銅薄膜を析出させる。続いて、硫酸銅溶液をめっき液とした電解めっき処理によって、銅箔5eの上面およびビアホール6の内部に、約15μmの厚みで銅膜をめっきする。この結果、銅からなる第2の配線層5が形成される。
【0042】
続いて、図1に示すように、フォトリソグラフィ法およびエッチング法とを組み合わせた加工法により、第2の配線層5を所定の配線パターンに加工する。これにより、本発明に係る回路基板100が製造される。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態による回路装置の構成を示す断面図である。
【0043】
第2実施形態による回路装置110では、図4に示すように、約100μm〜約3mm(例えば、約1.5mm)の厚みを有する基板11を用いる。例えば、この基板11は、銅からなる下層金属層と、下層金属層上に形成されたFe−Ni系合金(いわゆるインバー合金)からなる中間金属層と、中間金属層上に形成された銅からなる上層金属層とが積層されたクラッド材によって構成される。
【0044】
基板11の表面上には、約60μm〜約160μmの厚みを有するエポキシ樹脂を主成分とする1層目の絶縁層12が形成されている。ここで、絶縁層12には、絶縁層12の熱伝導率を高くするために充填材(図示せず)が添加されている。なお、絶縁層12には、第1実施形態での絶縁層3(および充填材4)と同じ組成の材料を適用している。絶縁層12の底部では、基板11の上面側において絶縁層12に充填された充填材が剥き出しになって、基板11の表面に食い込んだ状態であり、基板11は充填材の一部と直に接している。充填材が剥き出しになって基板11の表面に食い込んでいることにより、基板11の上面側に充填材の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、基板11と絶縁層12との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、基板11と絶縁層12の密着性が向上する。
【0045】
また、第2実施形態では、後述するLSIチップ(回路素子)19の下方に位置する絶縁層12の所定領域に、約100μmの直径を有するとともに、絶縁層12を貫通する4つのビアホール12aが形成されている。そして、絶縁層12上の所定領域には、約15μmの厚みを有するとともに、サーマルビア部13aと、配線部13b〜13dとを含む1層目の銅からなる導電層13が形成されている。導電層13のサーマルビア部13aは、LSIチップ19の下方の領域に配置されているとともに、基板11の表面に接触するように、ビアホール12a内に埋め込まれた部分を有する。この導電層13のサーマルビア部13aは、基板11に熱を放熱する機能を有する。尚、ビアホール12a内に導電層13が埋め込まれた状態での樹脂層12の熱伝導率は、約6W/(m・K)〜約8W/(m・K)である。また、導電層13の配線部13b〜13dは、後述するLSIチップ19(サーマルビア部13a)の周辺領域に配置されている。
【0046】
さらに、導電層13を覆うように、上記した1層目の絶縁層12と同じ厚みおよび組成を有する2層目の絶縁層14が形成されているとともに、絶縁層14上の所定領域に、上記した1層目の導電層13と同じ厚みを有する2層目の銅からなる導電層15が形成されている。
【0047】
ここで、絶縁層14には、絶縁層12と同じ組成の材料を適用しているので、絶縁層14の底部では、絶縁層12および導電層13の上面側において絶縁層14に充填されている充填材が剥き出しになって、絶縁層12および導電層13の表面に食い込んだ状態である。これにより、導電層13は充填材の一部と直に接している。充填材が剥き出しになって絶縁層12および導電層13の表面に食い込んでいることにより、絶縁層12および導電層13の上面側に充填材の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、絶縁層12および導電層13と絶縁層14との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、絶縁層12および導電層13と絶縁層14の密着性が向上する。
【0048】
具体的には、絶縁層14のLSIチップ19の下方に位置する領域に、約100μmの直径を有するとともに、絶縁層14を貫通する4つのビアホール14aが形成されている。この4つのビアホール14aは、それぞれ、4つのビアホール12aに対応する位置に形成されている。また、絶縁層14には、導電層13の配線部13b、13dに対応する領域に、約200μmの直径を有するとともに、絶縁層14を貫通するビアホール14bが形成されている。また、導電層15は、充填ビア部(サーマルビア部)15aと、非充填ビア部15b、15cと、配線部15dを含む。そして、導電層15のサーマルビア部15aは、LSIチップ19の下方の領域に配置されているとともに、導電層13のサーマルビア部13aの表面に接触するように、ビアホール14a内に埋め込まれた部分を有する。この導電層15のサーマルビア部15aは、LSIチップ19で発生した熱を導電層13のサーマルビア部13aに伝達して放熱する機能を有する。
【0049】
さらに、導電層15の非充填ビア部15bは、LSIチップを囲むように周辺領域に配置されているとともに、導電層13の配線部13cの表面に接触するように、ビアホール14bの内壁をU字状に被覆する部分を有する。導電層15の非充填ビア部15cも、非充填ビア部15bと同様であるが、非充填ビア部15cではビアホール14bが複数個形成されている。そして、導電層15の配線部15dは、他のLSIチップやチップ抵抗など(図示せず)と接続するように配置されている。
【0050】
また、導電層15を覆うように、導電層15の非充填ビア部15b、15cおよび配線部15dに対応する領域に開口部を有するソルダーレジスト層16(16a,16b,16c)が形成されている。さらに、非充填ビア部15b,15cでは、ビアホール14b内を埋め込むようにソルダーレジスト層16b,16cが設けられている。ここで、ソルダーレジスト層16は、メラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂およびポリアミドビスマレイミドなどの熱硬化性樹脂からなる。尚、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、及びメラミン誘導体は、高周波特性に優れているので、ソルダーレジスト層16の材料として好ましい。また、ソルダーレジスト層16に、SiOなどの充填剤を添加してもよい。
【0051】
このソルダーレジスト層16(16a,16b,16c)は、導電層15の保護膜として機能する。さらに、非充填ビア部15b,15cでは、ビアホール14b内を埋め込むようにソルダーレジスト層16b,16cが設けられているため、ビアホール14b内のソルダーレジスト層16b,16cが、非充填ビア部15b,15cが変形する際の緩衝材として機能し、非充填ビア部15b,15cの過度の変形を抑制することができる。LSIチップ19は、導電層15のサーマルビア部15a上のソルダーレジスト層16a上に、約20μmの厚みを有するエポキシ樹脂からなる接着層(図示せず)を介して装着されている。尚、LSIチップ19では、単結晶シリコン基板(図示せず)が用いられており、熱膨張係数は、約4ppm/℃である。このLSIチップ19は、ワイヤ17によって、導電層15の非充填ビア部15b,15cに電気的に接続されている。
【0052】
また、図4に示すように、装置内部に装着されたLSIチップ19などを保護するために、LSIチップ19を覆うように、エポキシ樹脂からなる封止樹脂層20が形成されている。
【0053】
第2実施形態では、上記のように、非充填ビア部15b,15cにおいて、ビアホール14b内にソルダーレジスト層16b,16cが埋め込まれるために、アンカー効果によって、配線層15b、15cとソルダーレジスト層16b,16cとの密着性を向上させることができる。また、LSIチップ19に覆われたビアホール14aが導電層15で充填され、充填ビア部15aとなり、LSIチップ19で発生した熱を、この充填ビア部15aを経由して放熱することができる。さらに、ビアホール14bの内壁を導電層15がU字状に被覆しているため、充填ビア部(サーマルビア部)15aからのストレスに対してこのU字状の導体層がバネとして機能し、ストレスを吸収・緩和することができる。これにより、充填ビア部(サーマルビア部)15aおよびサーマルビア13aによってLSIチップ19で発生した熱を効率的に放熱できるとともに、一方で非充填ビア部15b、15cによって充填ビア部(サーマルビア部)15aの熱膨張によって生ずるストレスを吸収・緩和し、密着性および配線信頼性に優れた回路装置を提供することができる。
【0054】
図5〜図7は、図5に示した第2実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図4〜図7を参照して、第2実施形態による回路装置の製造プロセスについて説明する。
【0055】
まず、図5(A)に示すように、予め所定の割合で充填材が含有された絶縁層12および銅箔13e付き積層シートを用意し、この積層シートを基板11の上に貼り付けて、150℃で120分圧着して硬化させる。この圧着処理によって、絶縁層12の底部において充填されている充填材が剥き出しとなり、基板11の表面に埋め込まれた(食い込んだ)状態に形成される。
【0056】
図5(B)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ビアホール12a(図4参照)の形成領域上に位置する銅箔13eを除去する。これにより、絶縁層12のビアホール12aの形成領域が露出される。
【0057】
図5(C)に示すように、銅箔13eの上方から炭酸ガスレーザまたはUVレーザを照射することによって、絶縁層12の露出した表面から基板11の表面に達するまでの領域を除去する。これにより、樹脂層12に、約100μmの直径を有するとともに、絶縁層12を貫通する4つのビアホール12aを形成する。このビアホール12aは、後述するサーマルビア部13aを形成するために設けられる。
【0058】
図5(D)に示すように、無電解めっき法を用いて、銅箔13eの上面およびビアホール12aの内面上に、銅を約0.5μmの厚みでめっきする。続いて、電解めっき法を用いて、銅箔13eの上面およびビアホール12aの内部に、めっきする。尚、第2実施形態では、めっき液中に、抑制剤および促進剤を添加することによって、抑制剤を銅箔13eの上面上に吸着させるとともに、促進剤をビアホール12aの内面上に吸着させる。これにより、ビアホール12aの内面上の銅めっきの厚みを大きくすることができるので、ビアホール12a内に銅を埋め込むことができる。その結果、図5(D)に示すように、樹脂層12上に、約15μmの厚みを有する導電層13が形成されるとともに、ビアホール12a内に、導電層13が埋め込まれる。
【0059】
図6(E)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、導電層13をパターニングする。これにより、LSIチップ19(図4参照)の下方の領域に位置するサーマルビア部13aと、配線部13b〜13dを形成する。
【0060】
図6(F)に示すように、予め所定の割合で充填材が含有された絶縁層14および銅箔15e付き積層シートを用意し、導電層13および絶縁層12を覆うように、この積層シートを導電層13および絶縁層12の上に貼り付けて、150℃で120分圧着して硬化させる。この圧着処理によって、絶縁層14の底部において充填されている充填材が剥き出しとなり、導電層13のおよび絶縁層12の表面に埋め込まれた(食い込んだ)状態に形成される。
【0061】
図6(G)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、ビアホール14aおよび14b(図5参照)の形成領域上に位置する銅箔15eを除去する。これにより、絶縁層14のビアホール14aおよび14bの形成領域が露出される。
【0062】
図6(H)に示すように、銅箔15eの上方から炭酸ガスレーザまたはUVレーザを照射することによって、絶縁層14の露出した表面から導電層13の表面に達するまでの領域を除去する。これにより、絶縁層14に約100μmの直径を有するとともに、絶縁層14を貫通する4つのビアホール4aを形成する。さらにこの工程では、絶縁層14に約200μmの直径を有するとともに、絶縁層14を貫通するビアホール14bを同時に形成する。
【0063】
図7(I)に示すように、無電解めっき法を用いて、銅箔15eの上面およびビアホール14aおよび14bの内面上に、銅を約0.5μmの厚みでめっきする。続いて、電解めっき法を用いて、銅箔15eの上面およびビアホール14aおよび14bの内部に、めっきする。ビアホール14aでは、この際、めっき液中に、抑制剤および促進剤を添加することによって、抑制剤を銅箔15eの上面上に吸着させるとともに、促進剤をビアホール14aの内面上に吸着させる。これにより、ビアホール14aの内面上の銅めっきの厚みを大きくすることができるので、ビアホール14a内に銅を埋め込むことができる。その結果、絶縁層14上に、約15μmの厚みを有する導電層15が形成されるとともに、ビアホール14a内に、導電層15が埋め込まれ充填される。ビアホール14bでは、導電層15の形成膜厚に比べてビア径が大きいので、導電層15はビアホール14bの内壁を被覆するようにのみ形成される。
【0064】
図7(J)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、導電層15をパターニングする。これにより、LSIチップ19(図5参照)の下方の領域に位置する充填ビア部(サーマルビア部)15aと、LSIチップ19の周辺の非充填ビア部15b、15cと、配線部15dを形成する。
【0065】
尚、非充填ビア部15b、15c(ビアホール14b)は、LSIチップ19を囲むように3ヶ所以上設けられ、3個以上のビアホール14bを結んで囲まれる領域に、LSIチップ19が配置されるようにレイアウトしておく。第2実施形態では、LSIチップ19などの回路素子の配置領域以外のビアホールは、すべてビアホール14bのような非充填ビアとなるように設計した。
【0066】
図7(K)に示すように、導電層15を覆うように、導電層15のワイヤボンディング部15b、15cに対応する領域に開口部を有するソルダーレジスト層16aを形成する。この際、非充填ビア部15b,15cでは、ビアホール14b内を埋め込むようにソルダーレジスト層16b,16cが設けられている。尚、銅(Cu)からなる導電層15のヤング率は約129.8GPa、ソルダーレジスト層16のヤング率は約10GPaであり、導電層15に比べて低いヤング率となっている。
【0067】
そして、導電層15のサーマルビア部15a上のソルダーレジスト層16a上に、約50μmの厚みを有するエポキシ樹脂からなる接着層(図示せず)を介してLSIチップ19を装着する。このLSIチップ19を装着した後の接着層の厚みは、約20μmとなる。この後、LSIチップ19と導電層15のワイヤボンディング部15b、15cとをワイヤ17により電気的に接続する。
【0068】
最後に、図4に示したように、基板11上のLSIチップ19を保護するために、LSIチップ19を覆うように、エポキシ樹脂からなる封止樹脂層20を形成することによって、第2実施形態による回路装置110が形成される。
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態による回路装置の構成を示す断面図である。第3実施形態での回路装置130は、配線層31、絶縁層35、回路素子39、封止樹脂層40、ソルダーレジスト層43、及び外部電極45を備える。
【0069】
配線層31は、導電部材で形成された所定のパターンを有する。配線層31は、銅(Cu)などの単一の金属によって形成されてもよいが、複数の金属層によって形成されていてもよい。たとえば、銅からなる金属層の上に銀(Ag)膜を形成することにより、ワイヤボンディング時の接続信頼性を向上させることができる。
【0070】
絶縁層35は、絶縁層の熱伝導率を高くするために充填材(図示せず)が添加されている。なお、絶縁層35には、第1実施形態での絶縁層3(および充填材4)と同じ組成の材料を適用している。絶縁層35の底部では、配線層31の上面側において絶縁層35に充填された充填材が剥き出しになって、配線層31の表面に食い込んでおり、配線層31は充填材の一部と直に接している。充填材が剥き出しになって配線層31の表面に食い込んでいることにより、配線層31の上面側に充填材の分布に伴う凹凸が形成される。この凹凸により、配線層31と絶縁層35との間の接触面積が増大し、アンカー効果がより強められる。この結果、配線層31と絶縁層35の密着性が向上する。
【0071】
絶縁層35は、配線層31の隙間から配線層31の下面側へ突出した突起部42を有する。この突起部42によって、絶縁物である突起部42が障害となって隣接する配線層31間でマイグレーションが発生することが抑制される。さらに、この突起部42においても絶縁層35に含まれる充填材が剥き出しになっており、その表面には充填材の分布に伴う凹凸が形成されている。この凹凸によって表面積が増大し、突起部42における放熱性が向上するため、突起部42の表面に凹凸がない場合に比べて、回路素子39の温度上昇時における回路装置130の信頼性を向上することができる。
【0072】
回路素子39は、たとえば、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)などの半導体チップである。回路素子39は、所定領域の絶縁層35の上に、エポキシ樹脂からなる接着層38を介して装着されている。なお、接着層38としては、絶縁性を有するエポキシ樹脂の他に、導電性を有するはんだによって接着してもよい。
【0073】
封止樹脂層40は、配線層31の上方に設けられた回路素子39を封止し、回路素子39を外界からの影響から保護している。封止樹脂層40の材料は、たとえば、エポキシ樹脂などの熱硬化性の絶縁樹脂である。回路素子39を封止樹脂層40で封止することにより、回路装置130を実装する前の動作試験時などにおいて回路素子39等が破壊や損傷を受けることを抑制することができる。
【0074】
ソルダーレジスト層43は、外部電極45に対応する領域に開口部を有し、突起部42を含む配線層31の下面側(回路素子39とは反対側)を覆うように設けられ、配線層31を外界からの影響から保護している。ここで、ソルダーレジスト層43は、メラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂およびポリアミドビスマレイミドなどの熱硬化性樹脂からなる。なお、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、及びメラミン誘導体は、高周波特性に優れているので、ソルダーレジスト層43の材料として好ましい。また、ソルダーレジスト層43に、SiOなどの充填剤を添加してもよい。
【0075】
外部電極45は、外部接続端子として配線層31に接合するように、ソルダーレジスト層43の開口部に対応してアレイ状に複数配置されている。
【0076】
図9〜11は、第3実施形態に係る回路装置の製造方法を示す。
【0077】
まず、図9(A)に示すように、銅板31(後工程で配線層31となる)の上に、リソグラフィ法により配線層のパターンに合わせてレジスト32を選択的に形成する。銅板31の膜厚はたとえば125μmである。具体的には、ラミネーター装置を用いて銅板31に膜厚20μmのレジスト膜を貼り付け、配線層のパターンを有するフォトマスクを用いてUV露光した後、NaCO溶液を用いて現像し、未露光領域のレジストを除去することによって、銅板31の上にレジスト32が選択的に形成される。なお、レジスト32との密着性向上のために、レジスト膜のラミネート前に、銅板31の表面に研磨、洗浄等の前処理を必要に応じて施すことが望ましい。
【0078】
図9(B)に示すように、塩化第二鉄溶液を用いて、銅板31の露出部分をハーフエッチングし、所定の配線パターン34に該当しない領域に溝33を形成した後、レジスト32をNaOH溶液などの剥離液を用いて剥離する。溝33の深さは、たとえば50μmである。
【0079】
図9(C)および(D)に示すように、予め所定の割合で充填材(図示せず)が含有された絶縁層35の絶縁層シートを用意する。なお、絶縁層シートは、充填材同士の凝集を防止し、またエポキシ樹脂である絶縁層35となじみやすくするために、充填材の表面にはシランカップリング剤による親水化処理を施してから、所定の割合で混練して形成される。この絶縁層シートを、銅板31の上に貼り付けて、150℃で120分圧着して硬化させる。この圧着処理によって、絶縁層35の底部においては充填されている充填材が剥き出しとなり、充填材が銅板31の配線パターン34の表面および銅板31の溝33の内壁表面に埋め込まれた(食い込んだ)状態に形成される。
【0080】
図9(E)に示すように、UVレーザを用いて絶縁層35をパターニングし、配線層31を露出させ、後工程でのワイヤボンディングするための開口部36を形成する。
【0081】
図10(F)に示すように、電解めっき法または無電解めっき法により、露出した銅板31の表面に膜厚10μm程度のAg膜を形成する。これにより、銅板31の表面にAg膜からなるめっき膜37が形成される。
【0082】
図10(G)に示すように、絶縁層35の上に、約50μmの厚みを有するエポキシ樹脂からなる接着層38を介して回路素子39を装着する。この回路素子39を装着した後の接着層38の厚みは、約20μmとなる。これにより、回路素子39が絶縁層35の上に固定される。なお、回路素子39を固定する接着層38としては、絶縁性の上記材料の他に、導電性のはんだ材を用いてもよい。この場合、回路素子39が搭載される領域にはんだを印刷した後、回路素子39を所定位置に搭載した状態でリフロー処理を行うことで、回路素子39が固定される。
【0083】
図10(H)に示すように、回路素子39の電極端子(図示せず)とめっき膜37(所定位置の配線層31)とをワイヤボンディングによって電気的に接続する。ワイヤボンディングに用いるワイヤ40として金線を用いることにより、Agで構成されためっき膜37との接続信頼性を向上させることができる。
【0084】
図10(I)に示すように、トランスファーモールド法により、エポキシ樹脂を用いて回路素子39を封止する封止樹脂層41を形成する。
【0085】
図11(J)に示すように、銅板31の下面を、塩化第二鉄溶液を用いてハーフエッチングし、銅板31の厚さを20μmにまで薄膜化するとともに、溝33に埋め込まれた絶縁層35を露出させることによって、突起部42を形成する。突起部42の高さは、たとえば30μmである。なお、突起部42の表面には、充填材が銅板31の溝33の内壁表面に埋め込まれた(食い込んだ)状態を反映して、充填材による凹凸が形成されている。
【0086】
図11(K)に示すように、突起部42を含む配線層31の下面側(回路素子39とは反対側)を覆うように、ソルダーレジスト層43をラミネート形成する。ここで、ソルダーレジスト層43の厚さは、たとえば40μmとする。ラミネートの条件としては、たとえば、温度110℃、時間1〜2分、2気圧などが用いられる。その後、アフターベーク工程によりソルダーレジスト層43を一部硬化させる。つづいて、ガラスをマスクとして露光することでパターニングし、外部電極45に対応する領域に開口部44を形成する。
【0087】
最後に、図8に示すように、はんだ印刷法を用いて、配線層31の下面(ソルダーレジスト層43の開口部44で露出した部分)に外部接続端子として機能するはんだボール(外部電極)45を形成する。具体的には、樹脂とはんだ材をペースト状にした「はんだペースト」を、スクリーンマスクにより所望の箇所に印刷し、はんだ溶融温度に加熱することで、はんだボール45を形成する。あるいは、別の方法として配線層31の下面部にあらかじめフラックスを塗布しておき、はんだボール45を配線層31にマウントしてもよい。
【0088】
以上の工程により、第3実施形態の回路装置130を得ることができる。
【0089】
なお、今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回路基板の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による回路装置を示した断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による回路装置を示した断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による回路装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図12】従来の回路装置の構造を概略的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基材
2 第1の配線層
3 絶縁層
4 粒子状の充填材
5 第2の配線層
6 ビアホール
100 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層に充填された熱伝導性を有する粒子状の充填材と、
を備え、
前記充填材の一部が前記絶縁層の底部において剥き出しとなり、前記基材と接触していることを特徴とした回路基板。
【請求項2】
前記基材と前記充填材の一部との接触面積が、前記基材と前記絶縁層との接触面積よりも広いことを特徴とした請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記充填材の一部は、前記絶縁層内の上下方向に積層され、互いに接触していることを特徴とした請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記基材は、その最外層に配線層を含み、
前記充填材の一部が前記絶縁層の底部において剥き出しとなり、前記配線層と接触していることを特徴とした請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記充填材の熱膨張係数が、前記絶縁層の熱膨張係数に比べて前記配線層の熱膨張係数により近いことを特徴とした請求項4に記載の回路基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路基板と、
前記回路基板に搭載された回路素子と、
を備えることを特徴とした回路装置。
【請求項7】
基材を用意する第1の工程と、
熱伝導性を有する粒子状の充填材が充填された絶縁層を、前記基材に対して圧着する第2の工程と、
を備えることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程は、前記充填材の一部が、前記絶縁層内において上下方向に積層され、互いに接触するように圧着する工程であることを特徴とした請求項7に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−180105(P2007−180105A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374033(P2005−374033)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】