説明

回路基板、電子部品及び電気接続箱

【課題】 半田等のろう材中に残留する気泡を低減する。
【解決手段】 回路構成体2のランド部7及びダイパッド部10の表面には、格子状の逃がし溝20,21が形成されている。逃がし溝20,21は、ランド部7及びダイパッド部10の表面に形成されたメッキ層4B,10Bの一部をレーザ等により除去することで形成される。半田15による接合時には、ダイパッド部10若しくはランド部7と半田15との間に挟まれた外気や、半田15やメッキ層4B,10Bから発生したガスが逃がし溝20,21を通じて逃がされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、電子部品及び電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のバッテリーから各車載負荷へ電力を分配するための配電回路に、FET等のパワー半導体装置を用いたものが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなパワー半導体装置は、例えば半導体チップをダイパッド上に半田等のろう材によって接合し、その半導体チップを封止樹脂により封止した構成になっており、外部に露出されたダイパッドやその他の電極板を回路基板上の導電路に半田付けすることにより基板上に実装される。
【特許文献1】特開2003−164039公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、半田等のろう材を用いた接合作業の際には、接合しようとする導電路や電極板等とろう材との間に外気が挟み込まれて気泡ができることがある。また、加熱によりろう材や、あるいは導電路や電極板の表面に設けられたメッキ層からガスが発生して気泡となることもある。このようにして、接合後にろう材中に多くの気泡が残ると、ろう材が剥がれやすくなって電気接続の信頼性が損なわれたり、あるいは熱抵抗が大きくなって放熱性が大きく低下するおそれがある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、半田等のろう材中に残留する気泡を低減することで、放熱性の向上等を図るところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る回路基板は、電子部品がろう材を用いて接合される導電路を備えた回路基板であって、前記導電路の表面には、接合時に気体を逃がすための逃がし溝が形成されているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記逃がし溝の底部は、周辺部よりも前記ろう材の濡れ性が低くされているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記導電路は、基材の表面にメッキ層を設けてなり、前記逃がし溝は、前記メッキ層の一部を除去することで形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記逃がし溝は、前記メッキ層が線状に除去されてなるところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記逃がし溝は、前記メッキ層が格子状に除去されてなるところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明に係る電子部品は、外部の導電路にろう材を用いて接合される電極板を有した電子部品であって、前記電極板の表面には、接合時に気体を逃がすための逃がし溝が形成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、前記逃がし溝の底部は、周辺部よりも前記ろう材の濡れ性が低くされているところに特徴を有する。
【0011】
請求項8の発明は、請求項7に記載のものにおいて、前記電極板は、基材の表面にメッキ層を設けて構成され、前記逃がし溝は、前記メッキ層の一部を除去することで形成されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項9の発明は、請求項8に記載のものにおいて、前記逃がし溝は、前記メッキ層が線状に除去されてなるところに特徴を有する。
【0013】
請求項10の発明は、請求項8に記載のものにおいて、前記逃がし溝は、前記メッキ層が格子状に除去されてなるところに特徴を有する。
【0014】
請求項11の発明に係る回路基板は、請求項6から請求項10のいずれかに記載の電子部品を実装したところに特徴を有する。
【0015】
請求項12の発明に係る電気接続箱は、請求項1から請求項5及び請求項11のいずれかに記載の回路基板を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
<請求項1の発明>
導電路の表面に逃がし溝が形成されているため、ろう材による接合時に気体が逃がし溝により逃がされる。これにより、ろう材中に残留する気泡を低減することができ、放熱性を向上させることができる。
【0017】
<請求項2及び請求項7の発明>
逃がし溝の底部が周辺部に比べてろう材の濡れ性が低くなっているため、接合時に逃がし溝がろう材で埋められにくくなる。従って、逃がし溝の通気性を確保することができる。
【0018】
<請求項3及び請求項8の発明>
逃がし溝は、メッキ層の一部を除去することで形成されるため、簡易に形成することができる。
【0019】
<請求項4及び請求項9の発明>
逃がし溝は、メッキ層を線状に除去することで形成されている。このため、逃がし溝を例えばレーザ等によって簡易に形成することができる。
【0020】
<請求項5及び請求項10の発明>
逃がし溝は、メッキ層を格子状に除去することで形成されている。このため、逃がし溝を例えばレーザ等によって簡易に形成することができる。また、ろう材の流動を抑えることができる。
【0021】
<請求項6、請求項11及び請求項12の発明>
導電板の表面に逃がし溝が形成されているため、ろう材による接合時に気体が逃がし溝により逃がされる。これにより、ろう材中に残留する気泡を低減することができ、放熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。
本実施形態のパワー半導体装置1(本発明の電子部品に相当)は、自動車のバッテリーから各車載負荷へ電力を分配するために用いられる電気接続箱(図示せず)の一構成部品として用いられる。電気接続箱は、配電回路を構成する回路構成体2(本発明の回路基板に相当)をケース(図示せず)内に収容してなり、図1に示すように、この回路構成体2上にパワー半導体装置1が実装されている。
【0023】
回路構成体2は、いわゆる両面プリント基板であって、絶縁性のベース基板3の表裏両面に、銅箔からなる導電路4及び絶縁皮膜5(ソルダーレジスト)のパターンを印刷することで形成されている。導電路4の一部は、絶縁皮膜5から露出されており、その露出部分において、図2にも示すように、銅箔4Aの表面に半田濡れ性に優れたNiメッキ層4Bが形成されることで、パワー半導体装置1等の電子部品が接続されるランド部6,7が形成されている。
【0024】
パワー半導体装置1は、図1に示すように、平板状のダイパッド部10(本発明の電極板に相当)を備えており、その上面にMOS−FETチップ11が半田12により接合され、さらにそのMOS−FETチップ11が封止樹脂14により封止されている。ダイパッド部10は、図2にも示すように、銅合金からなる基材10Aの表面に半田濡れ性が良好なNi等のメッキ層10Bが設けられている。また、ダイパッド部10は、底面が封止樹脂14の外側に露出しており、その底面が半田15によりランド部7に接合されている。また、封止樹脂14の一側面からは、複数本のリード部16が延出されている。各リード部16は、MOS−FETチップ9の電極にボンディングワイヤ(図示せず)を介して接続されており、外側に延出した端部が半田17によりランド部6に接合されている。
【0025】
ダイパッド部10の上下面、即ち半田12,15による接合がなされる面には、図2及び図3に示すように、格子状の逃がし溝20が形成されている。この逃がし溝20は、例えばダイパッド部10の表面にレーザ光線を照射して、メッキ層10Bの一部を除去することで形成される。このようにしてメッキ層10Bの一部が除去されると、除去された部分から露出した銅合金よりなる基材10Aの表面が酸化して酸化皮膜(図示せず)が形成される。このため、逃がし溝20の底部は、メッキ層10Bの表面に比べて半田濡れ性が低くなっている。
【0026】
一方、回路構成体2におけるランド部7の表面にも、図2及び図4に示すように、格子状の逃がし溝21が形成されている。この逃がし溝21も、ランド部7の表面へのレーザ光線の照射等により、メッキ層4Bの一部を除去することで形成される。逃がし溝21の底部は、銅箔4Aの表面に形成された酸化皮膜により、メッキ層4Bの表面に比べて半田濡れ性が低くなっている。
【0027】
パワー半導体装置1を回路構成体2上に実装する場合には、まず回路構成体2の各ランド部6,7にスクリーン印刷等によりペースト状の半田15,17を印刷する。そして、その半田15,17の上に、パワー半導体装置1のリード部16及びダイパッド部10を載置し、リフロー炉(図示せず)で半田溶融温度まで加熱、冷却することにより、リード部16及びダイパッド部10と、各ランド部6,7とを半田付けする。
【0028】
上記接合工程において、リフロー炉にて半田15が溶融すると、その半田15が濡れ性の良いランド部7及びダイパッド部10のメッキ層4B,10Bの表面を伝って濡れ拡がる一方で、濡れ性の低い逃がし溝20,21の底部には付着しない。このため、ダイパッド部10若しくは導電路4と半田15との間に挟まれた外気や、半田15やメッキ層4B,10Bから発生したガスが逃がし溝20,21を通じて外部に逃がされる。これにより、冷却後に半田15中に残留する気泡が低減される。また、同じく上記の接合工程においては、逃がし溝20,21が格子状に形成されることで半田濡れ性が良好なメッキ層4B,10Bがブロック状に分断されているため、半田15がそのブロックよりも外側に流動しにくくなる。このため、半田溶融時にパワー半導体装置1が半田の流動に伴って移動することが防止され、部品の位置決めの精度を高めることができる。
【0029】
なお、パワー半導体装置1の製造の際には、ダイパッド部10の上面にMOS−FETチップ9が半田12により接合される。この半田付け作業は加熱処理により行われるが、この工程においてもダイパッド部10と半田12との間に挟まれた外気や、半田12やメッキ層10Bから発生したガスが、ダイパッド部10の上面に設けられた逃がし溝20により外部に逃がされる。また、逃がし溝20が格子状に形成されることで半田濡れ性が良好なメッキ層10Bがブロック状に分断されているため、半田12が流動しにくくなる。このため、半田溶融時にMOS−FETチップ9が半田の流動に伴って移動することが防止され、位置決め精度を高めることができる。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、ランド部7及びダイパッド部10の表面に逃がし溝20,21が形成されているため、半田による接合時に気体が逃がし溝21により逃がされる。これにより、半田中に残留する気泡を低減することができ、放熱性を向上させることができる。
【0031】
逃がし溝20,21の底部が周辺部(メッキ層4B,10Bの表面)に比べて半田濡れ性が低くなっているため、接合時に逃がし溝20,21が半田で埋められにくくなる。従って、逃がし溝20,21の通気性を確保することができる。
【0032】
逃がし溝20,21は、メッキ層4B,10Bの一部を除去することで形成されるため、簡易に形成することができる。
【0033】
また、逃がし溝20,21は、メッキ層4B,10Bを線状または格子状に除去することで形成されている。このため、逃がし溝20,21を例えばレーザ等によって簡易に形成することができる。また、逃がし溝20,21が格子状に形成されているため、半田の流動を抑えることができる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、ろう材として半田を用いたものを示したが、半田以外のろう材、例えば銀ろう等の硬ろうを用いたものも本発明に含まれる。
(2)上記実施形態では、逃がし溝を格子状に形成したものを示したが、逃がし溝の形状は適宜変更できる。例えば図5に示したものでは、線状の8本の逃がし溝21Aがランド部7の中心から放射状に延びて形成されている。また、図6に示したものでは、ランド部7のうち中央を除いた外周部に8本の線状の逃がし溝21Bが放射状に延びて形成されている。
(3)上記実施形態では、逃がし溝をダイパッド部とダイパッド部が接合されるランド部に設けたものを示したが、本発明によれば、電子部品が有するダイパッド部以外の電極板(リード部等)や、その電極板と接合される回路基板の導電路に逃がし溝を設けても良い。
(4)上記実施形態に例示した製造工程はあくまでも一例であって、適宜に変更可能である。
(5)メッキ層は、異なる成分を含む層が複数積層されたものであっても良い。この場合、逃がし溝を形成するために、メッキ層を形成する複数の層の全てを削っても良く、表面側の一部の層のみを削っても良い。
(6)逃がし溝は、導電路、電極板のメッキ層を削って形成しても良く、あるいは導電路等の基材部分に形成しても良い。また、メッキ層を備えていない導電路等に、逃がし溝を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態1に係るパワー半導体装置と回路構成体の断面図
【図2】ダイパッド部と導電路との半田接合部分を示す部分拡大断面図
【図3】ダイパッド部の平面図
【図4】ランド部の平面図
【図5】他の実施形態に係る逃がし溝を示す平面図
【図6】別の他の実施形態に係る逃がし溝を示す平面図
【符号の説明】
【0036】
1…パワー半導体装置
2…回路構成体(回路基板)
4…導電路
7A…銅箔(基材)
7B…メッキ層
10…ダイパッド部(電極板)
10A…基材
10B…メッキ層
12,15…半田(ろう材)
20,21,21A,21B…逃がし溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品がろう材を用いて接合される導電路を備えた回路基板であって、
前記導電路の表面には、接合時に気体を逃がすための逃がし溝が形成されていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記逃がし溝の底部は、周辺部よりも前記ろう材の濡れ性が低くされていることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記導電路は、基材の表面にメッキ層を設けてなり、前記逃がし溝は、前記メッキ層の一部を除去することで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記逃がし溝は、前記メッキ層が線状に除去されてなることを特徴とする請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記逃がし溝は、前記メッキ層が格子状に除去されてなることを特徴とする請求項3に記載の回路基板。
【請求項6】
外部の導電路にろう材を用いて接合される電極板を有した電子部品であって、
前記電極板の表面には、接合時に気体を逃がすための逃がし溝が形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項7】
前記逃がし溝の底部は、周辺部よりも前記ろう材の濡れ性が低くされていることを特徴とする請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記電極板は、基材の表面にメッキ層を設けて構成され、前記逃がし溝は、前記メッキ層の一部を除去することで形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記逃がし溝は、前記メッキ層が線状に除去されてなることを特徴とする請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記逃がし溝は、前記メッキ層が格子状に除去されてなることを特徴とする請求項8に記載の電子部品。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれかに記載の電子部品を実装した回路基板。
【請求項12】
請求項1から請求項5及び請求項11のいずれかに記載の回路基板を備えた電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−351926(P2006−351926A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177709(P2005−177709)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】