説明

回路基板とリード線との接続構造及び方法

【課題】振動環境下においても信頼性の向上が可能であり、且つ、製造コストの低コスト化に寄与することが可能であり、更には、信頼性を確保するための導通確認の簡素化に寄与することが可能な回路基板とリード線との接続構造を提供する。
【解決手段】複数のスルーホール11が形成された回路基板12と、複数のスルーホール11のいずれかに挿入されて接続されるスルーホール挿入ピン部13を有する複数のリード線14と、複数のリード線14のスルーホール挿入ピン部13のそれぞれが対応するスルーホール11に挿入されるように、複数のリード線14を位置決め固定するリード線固定部材15と、を備え、スルーホール挿入ピン部13は、リード線14の導体露出部20に曲げ加工を施して形成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板とリード線との接続構造及び方法に係り、特に、車両等の振動状況下で用いるのに好適な回路基板とリード線との接続構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、回路基板とリード線とを接続する場合、例えば、特許文献1に記載されているように、回路基板の接続部にリード線の導体露出部を接触させ、はんだ付け等により接合して電気的に接続する。
【0003】
ところが、はんだ接合による回路基板とリード線との接続構造(以下、単に接続構造ともいう)を車両等の振動状況下で用いた場合(例えば、車載センサのリード線とECUの回路基板とを接続する場合等)、振動により回路基板とリード線との接合部に外力が加わり、リード線が外れたりして信頼性上好ましくない。
【0004】
この問題を克服すべく、車両等の振動状況下では、振動によって生じる接合部への影響を低減するために抵抗溶接による接続構造を用いることが多い。抵抗溶接は、はんだ接合よりも接合強度が高く信頼性に優れるが、接合時に回路基板を破壊してしまう虞がある。即ち、はんだ接合の場合は、回路基板の接続部をはんだの融点(組成にもよるが200℃前後)まで加熱すれば接合が可能であるが、抵抗溶接の場合は、接続する材料の融点(例えば、リード線の導体露出部及び回路基板の接続部は主に銅で形成されており、この場合融点は1000℃以上)まで加熱しなければならず、加熱時の熱で回路基板を破壊してしまう虞がある。そのため、リード線を回路基板に直接、抵抗溶接することは好ましくないので、以下のような構造を採用している。
【0005】
図4に示すように、抵抗溶接による接続構造30は、リード線31と、スルーホール32が形成された回路基板33と、プレス成形により形成された端子部品34がインサート成形されてなる端子インサート基板ホルダ35と、を備える。
【0006】
この接続構造30においては、図5(a)〜(c)に示すように、リード線31の素線固めされた導体露出部36が端子部品34の接続端子37に抵抗溶接され、端子部品34のスルーホール挿入ピン部38が回路基板33のスルーホール32に挿入されると共にはんだ接合されて、リード線31と回路基板33とが端子部品34を介して接続されている。なお、図5(a),(b)では端子部品34のみを、図5(c)ではリード線31と回路基板33と端子部品34のみを図示している。
【0007】
このように、リード線31と端子部品34とを接合強度の高い抵抗溶接で接続し、回路基板33と端子部品34とを振動でも接続が外れにくいスルーホール32及びスルーホール挿入ピン部38を用いた方法で接続することで、振動に強い接続構造を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−98560号公報
【特許文献2】特開平11−237289号公報
【特許文献3】特開2007−123202号公報
【特許文献4】特開平5−159818号公報
【特許文献5】特開2002−8757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、抵抗溶接による接続構造では、端子部品を介してリード線と回路基板とを接続する必要があるため、はんだ接合による接続構造に比べて、端子部品の分だけ部品点数が増大してしまうという問題や、端子部品のプレス成形、及び端子部品のインサート成形のために、高コストになってしまうという問題があった。
【0010】
また、抵抗溶接のためにリード線を端子部品の溶接位置へ位置決めする必要があるが、この位置決めが複雑で自動化が困難であるため、手作業に頼る部分が多く、高コストになってしまっていた。
【0011】
更に、リード線と端子部品、スルーホールとスルーホール挿入ピン部の2箇所で接続を行うため、信頼性を確保するための導通確認を2箇所で行う必要があり、面倒であるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、前記課題を解決し、振動環境下においても信頼性の向上が可能であり、且つ、製造コストの低コスト化に寄与することが可能であり、更には、信頼性を確保するための導通確認の簡素化に寄与することが可能な回路基板とリード線との接続構造及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために創案された本発明は、複数のスルーホールが形成された回路基板と、前記複数のスルーホールのいずれかに挿入されて接続されるスルーホール挿入ピン部を有する複数のリード線と、前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれが対応する前記スルーホールに挿入されるように、前記複数のリード線を位置決め固定するリード線固定部材と、を備え、前記スルーホール挿入ピン部は、前記リード線の導体露出部に曲げ加工を施して形成される回路基板とリード線との接続構造である。
【0014】
前記リード線の導体露出部は、前記リード線の露出された導体を素線固めして形成されると良い。
【0015】
前記リード線固定部材は、前記スルーホールに挿入される前記スルーホール挿入ピン部の端部を除く前記リード線の端部を覆うように形成されると共に、前記回路基板を載置するための台座部を有すると良い。
【0016】
また、本発明は、回路基板に複数のスルーホールを形成し、複数のリード線のそれぞれを段剥きして導体を露出させ、前記複数のリード線の露出された前記導体を素線固めして導体露出部を形成し、前記複数のリード線の前記導体露出部のそれぞれに曲げ加工を施して、前記複数のスルーホールのいずれかに挿入するためのスルーホール挿入ピン部を形成し、前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれが対応する前記スルーホールに挿入されるように、前記複数のリード線を位置決め固定し、前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれを対応する前記スルーホールに挿入すると共に接合して、前記回路基板と前記リード線を接続し、前記リード線と接続した前記回路基板を樹脂でポッティグする回路基板とリード線との接続方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、振動環境下においても信頼性の向上が可能であり、且つ、製造コストの低コスト化に寄与することが可能であり、更には、信頼性を確保するための導通確認の簡素化に寄与することが可能な回路基板とリード線との接続構造及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る回路基板とリード線との接続構造を示す図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明の実施の形態に係る回路基板とリード線との接続方法を説明する図である。
【図3】本発明の変形例を示す図である。
【図4】抵抗溶接による接続構造を示す図である。
【図5】(a)は端子部品を示す平面図、(b)は端子部品を示すA−A線断面図、(c)はリード線と回路基板と端子部品の接続関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0020】
図1は、本発明の好適な実施の形態に係る回路基板とリード線との接続構造を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る回路基板とリード線との接続構造10は、複数のスルーホール11が形成された回路基板12と、複数のスルーホール11のいずれかに挿入されて接続されるスルーホール挿入ピン部13を有する複数のリード線14と、複数のリード線14のスルーホール挿入ピン部13のそれぞれが対応するスルーホール11に挿入されるように、複数のリード線14を位置決め固定するリード線固定部材15と、を備え、スルーホール挿入ピン部13は、リード線14の導体露出部20に曲げ加工を施して形成される。
【0022】
この接続構造10の構成を、回路基板12とリード線14の接続方法と共に説明する。
【0023】
先ず、回路基板12に複数のスルーホール11を形成する。この回路基板12は、図4で説明した従来の接続構造30で用いていたものをそのまま転用することが可能であり、格別工程が増加する訳ではない。
【0024】
他方、図2(a),(b)に示すように、複数のリード線14のそれぞれを段剥きして導体16を露出させておく。図2(a)では、複数本(例えば7本)の素線からなる導体16(撚線)とその外周に被覆された絶縁体17とを有する2本のリード線14がシース18により束ねられたケーブル19を用いる例を示しているが、リード線14の形態はこれに限定されるものではない。例えば、リード線14は、導体16のみからなるものであっても良いし、絶縁体17とシース18との間に介在物を有するものであっても良い。
【0025】
次いで、図2(c)に示すように、複数のリード線14の露出された導体16を素線固めして導体露出部20を形成する。この素線固めは、例えば超音波溶着によって行うと良い。これにより、導体露出部20はリジッドに形成される。
【0026】
その後、図2(d)に示すように、複数のリード線14の導体露出部20のそれぞれに曲げ加工を施して、複数のスルーホール11のいずれかに挿入するためのスルーホール挿入ピン部13を形成する。これにより、リード線14の導体露出部20自体がリジッドなスルーホール挿入ピン部13となる。
【0027】
そして、図2(e)に示すように、複数のリード線14のスルーホール挿入ピン部13のそれぞれが対応するスルーホール11に挿入されるように、複数のリード線14を位置決め固定する。
【0028】
この位置決め固定は、複数のリード線14のスルーホール挿入ピン部13のそれぞれが対応するスルーホール11に挿入されるように、複数のリード線14のそれぞれを位置決めして(金型に形成された溝等に)保持しておき、複数のリード線14の絶縁体17の部分に樹脂を射出成形して行う。この射出成形された樹脂が、複数のリード線14を位置決め固定するためのリード線固定部材15となる。なお、前工程の曲げ加工と本工程の射出成形を同時に実施することも可能である。これにより、工程を1つ減らすことができる。
【0029】
その後、複数のリード線14のスルーホール挿入ピン部13のそれぞれを対応するスルーホール11に挿入すると共にはんだ接合等により接合して、回路基板12とリード線14を接続する。
【0030】
最後に、リード線14と接続した回路基板12をエポキシ等の樹脂でポッティグして、構造の気密性を確保する。
【0031】
以上の工程により、接続構造10が得られる。
【0032】
この接続構造10では、スルーホール11にスルーホール挿入ピン部13を挿入して接続する構造としているため、強固な接続を実現でき、車両等の振動環境下で用いたときの信頼性が高い。
【0033】
また、リード線14の導体露出部20を直接にスルーホール挿入ピン部13として加工しているので、従来の接続構造に比べて、端子部品の分だけ部品点数を削減することができ、端子部品のプレス成形、及び端子部品のインサート成形が必要ないので、低コストでリード線14と回路基板12を接続することができる。
【0034】
なお、リード線14の射出成形が必要なことを考慮すると、成形費用はインサート成形を行う従来と同程度になる可能性はあるが、端子部品、及び抵抗溶接工程が無くなることを考えれば、顕著な低コスト化が期待できる。
【0035】
また、接続構造10では、複数のリード線14を金型に形成された溝等に保持した上で樹脂を射出成形することで、予めリード線固定部材15で位置決め固定しているので、複数のリード線14が位置決めされて保持されるような形状の金型を一度作製してしまえば、その後は位置決めの手間が省ける。つまり、手作業に頼る必要がなく、複数のリード線14を金型に機械的に保持させれば自動的に位置決めされた状態で射出成形が行われる。そのため、人件費を削減することが可能となり、製造コストの低減に寄与することができる。
【0036】
更に、スルーホール11とスルーホール挿入ピン部13の1箇所で接続を行うため、従来に比べて導通確認を行う箇所を半分に減らすことができる。
【0037】
また、リード線14の導体露出部20をリジッドに形成しているため、導体露出部20をスルーホール挿入ピン部13とし、これをスルーホール11に挿入する際に、スルーホール挿入ピン部13に曲げが生じず挿入が容易である。
【0038】
また、従来の接続構造では抵抗溶接のためのスペースが必要であるが、本実施の形態に係る接続構造10では、リード線14を回路基板12に直接接続するため、前記のスペースを必要とせず構造の小型化を図ることができる。
【0039】
以上、要するに、本発明によれば、振動環境下においても信頼性の向上が可能であり、且つ、製造コストの低コスト化に寄与することが可能であり、更には、信頼性を確保するための導通確認の簡素化に寄与することが可能な回路基板とリード線との接続構造及び方法を提供することができる。
【0040】
なお、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、リード線固定部材15を、図3に示すように、スルーホール11に挿入されるスルーホール挿入ピン部13の端部を除くリード線14の端部を覆うように形成すると共に、回路基板12を載置するための台座部21を有するように構成しても良い。
【0042】
この場合、リード線固定部材15が回路基板12のケースを兼ねる。ポッティグの際には、ケース内をエポキシ等の樹脂で埋めるようにポッティグすると良い。
【0043】
このような構造によれば、リード線14の端部までリード線固定部材15により固定されるため、前記の実施の形態に比べてリード線14を強固に固定することができると共に、リード線14の位置決め精度を向上させることができるという付加的な効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
10 接続構造
11 スルーホール
12 回路基板
13 スルーホール挿入ピン部
14 リード線
15 リード線固定部材
16 導体
17 絶縁体
18 シース
19 ケーブル
20 導体露出部
21 台座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスルーホールが形成された回路基板と、
前記複数のスルーホールのいずれかに挿入されて接続されるスルーホール挿入ピン部を有する複数のリード線と、
前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれが対応する前記スルーホールに挿入されるように、前記複数のリード線を位置決め固定するリード線固定部材と、 を備え、
前記スルーホール挿入ピン部は、前記リード線の導体露出部に曲げ加工を施して形成されることを特徴とする回路基板とリード線との接続構造。
【請求項2】
前記リード線の導体露出部は、前記リード線の露出された導体を素線固めして形成される請求項1に記載の回路基板とリード線との接続構造。
【請求項3】
前記リード線固定部材は、前記スルーホールに挿入される前記スルーホール挿入ピン部の端部を除く前記リード線の端部を覆うように形成されると共に、前記回路基板を載置するための台座部を有する請求項1又は2に記載の回路基板とリード線との接続構造。
【請求項4】
回路基板に複数のスルーホールを形成し、
複数のリード線のそれぞれを段剥きして導体を露出させ、
前記複数のリード線の露出された前記導体を素線固めして導体露出部を形成し、
前記複数のリード線の前記導体露出部のそれぞれに曲げ加工を施して、前記複数のスルーホールのいずれかに挿入するためのスルーホール挿入ピン部を形成し、
前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれが対応する前記スルーホールに挿入されるように、前記複数のリード線を位置決め固定し、
前記複数のリード線の前記スルーホール挿入ピン部のそれぞれを対応する前記スルーホールに挿入すると共に接合して、前記回路基板と前記リード線を接続し、
前記リード線と接続した前記回路基板を樹脂でポッティグすることを特徴とする回路基板とリード線との接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−109382(P2012−109382A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256755(P2010−256755)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】