説明

回路基板の製造方法、タッチパネル、電気光学装置、電子機器

【課題】互いに交差し、絶縁膜を介して前記絶縁膜上を配線するブリッジ配線の導通不良の原因の絶縁膜のしみ上がりを防ぐ。
【解決手段】互いに交差する複数の配線と、前記複数の配線の交差部において、前記配線間に形成される絶縁層とを含む回路基板の製造方法であって、基板配線形成工程と、絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層の表面に前記基板配線に交差するブリッジ配線を形成するブリッジ配線形成工程とを含み、前記絶縁膜形成工程は、前記絶縁膜の材料を含む機能液を液滴として吐出する液滴吐出工程を含み、前記機能液はレベリング剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法、タッチパネル、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型のタッチスクリーンのタッチパネルでは、絶縁層を介して、互いに交差する電極膜が備えられ、この電極膜が形成されたパネルに指などが近づくことによって、電極間に生成される容量を充電する電流を検出して、位置検出を行うことが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上記のタッチパネルでは、基板上に電極等を形成する際に、スパッタ法、フォトリソグラフィー法、エッチング法などの製造方法を複数回繰り返して電極膜等を形成するため、製造コストが上昇してしまう。そこで、印刷法等を用いて、複雑な工程を経ずに電極等を形成することが考えられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−63403号公報
【特許文献2】特開2003−80694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、印刷法によって絶縁膜を形成した場合、吐出された機能液の乾燥時間の差によって生じるしみ上がりが絶縁膜に段差を形成してしまう。つまり、液滴の周辺部から乾燥が起こり、液滴の中心部から乾燥の速い周辺部に向かって対流が生じる。この対流によって周辺部に機能液が供給され、溶質成分が積み重なるように段差が形成される。この絶縁膜上に電極膜や配線膜を形成すると、上記段差部で電極膜や配線膜が屈曲し、断線が生じ易くなってしまい、歩留まりが低下する可能性があった。特に、互いに交差するように配列される電極を形成する場合には、電極の交差部に設けるブリッジ配線に断線が生じ易くなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の一つを解決するために、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
〔適用例1〕本適用例の回路基板の製造方法は、互いに交差する複数の配線と、前記複数の配線の交差部において、前記配線間に形成される絶縁層とを含む回路基板の製造方法であって、基板の配線を施す面に基板配線を形成する基板配線形成工程と、前記基板配線の少なくとも一部を被覆する絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層の表面に前記基板配線に交差するブリッジ配線を形成するブリッジ配線形成工程とを含み、前記絶縁膜形成工程は、前記絶縁膜の材料を含む機能液を液滴として吐出する液滴吐出工程を含み、前記機能液はレベリング剤を含むことを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、絶縁膜を形成する機能液にレベリング剤を含ませることにより、機能液の表面張力を小さくさせることで、基板の配線を施す面と絶縁膜との接触角を小さくすることができる。すなわち、接触角が小さくなることにより、吐出された機能液の液滴は塗布面に対して濡れ拡がり易く、なだらかな形の塗布形状を有することとなる。このことによって、機能液のしみ上がりを防ぐことができ、段差の少ない絶縁膜を形成することができる。
【0009】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記基板配線形成工程と前記絶縁層形成工程との間に前記基板の表面に撥液化処理を施す表面処理工程を含むことを特徴とする。
【0010】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記表面処理工程では、シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0011】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記表面処理工程では、ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、レベリング剤を含んだ絶縁膜を形成する機能液が、濡れ拡がり過ぎないよう制御することができる。絶縁膜は、膜厚が厚いほうが耐絶縁性能は高い。しかし、レベリング剤を含んだ機能液が濡れ拡がり過ぎて膜厚を確保できなくなる虞がある。そこで撥液化処理を基板の表面に施すことにより、機能液の接触角を大きくするようにし、濡れ拡がり方を制御し、所定の膜厚を確保することができる。
【0013】
撥液化処理の処理液は、基板材料との結合性が良く、優れた撥液性を有するシラン化合物を含む表面処理剤を用いて処理することが好ましい。シラン化合物の中でも、撥液性の制御が、処理方法の一つとしてガス拡散法による処理を行った場合、処理時間による撥液性能の制御が可能であり、また処理後であってもUV照射することでも撥液性能を制御することが可能であることから、ヘキサメチルジシラザンを処理液に含むことがなお好ましい。
【0014】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記レベリング剤は、フッ素系界面活性剤であることを特徴とする。
【0015】
上述の適用例によれば、フッ素系のレベリング剤は、機能液に添加することにより、機能液の表面張力を下げることが可能となり、塗布膜のレベリング性(平滑性)が向上する。よって、絶縁膜が平坦に成膜されることにより、絶縁膜上に形成するブリッジ配線膜も均一に成膜することが可能となる。
さらに、フッ素系のレベリング剤は、絶縁膜上に形成するブリッジ配線膜を形成する際に、レベリング剤に含まれるフッ素成分の影響で絶縁膜表面上が撥液状態となるため、ブリッジ配線の細線化が可能となる。絶縁膜表面上の撥液性は、アクリル系レベリング剤やシリコーン系レベリング剤と比較して、フッ素系レベリング剤を使用した際に最も高くなる。したがって、レベリング剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。
【0016】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記回路基板は、互いに交差する方向に延在する複数の第1電極膜および第2電極膜を有し、前記第1電極膜は第1方向に間隔をあけて形成された複数の第1島状電極部と、隣接する前記第1島状電極部を電気的に接続する第1接続配線とを有し、前記第2電極膜は前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて形成された複数の第2島状電極部と、隣接する前記第2島状電極部を電気的に接続する第2接続配線とを有し、前記第1接続配線が前記基板配線であり、前記第2接続配線が前記ブリッジ配線であるタッチパネルであることを特徴とする。
【0017】
〔適用例7〕上述の回路基板の製造方法により製造されたタッチパネル。
【0018】
上述の適用例によれば、複数の島状電極部をブリッジ配線で電気的に接続し形成される電極膜を複数配置したタッチパネルにおいては、ブリッジ配線部が非常に多く配置されている。このブリッジ配線の1箇所でも断線し、導通が確保できないとタッチパネルとしては不良品となってしまい、多くの工程を経て作られたタッチパネルを廃棄しなければならない。従って、ブリッジ配線の断線の原因となる絶縁膜のしみ上がりが防止できることで、タッチパネルの歩留まりの向上、コストダウンの実現が可能となる。
【0019】
〔適用例8〕上述の適用例のタッチパネルを備えたことを特徴とする電気光学装置。
【0020】
上述の適用例によれば、信頼性の高いタッチパネルを備えた電気光学装置を提供することができる。この場合、電気光学装置は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等がこれに該当する。
【0021】
〔適用例9〕上述の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【0022】
上述の適用例によれば、信頼性の高い電気光学装置を搭載した電子機器を提供することができる。この場合、電子機器は、例えば、カラーフィルター、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)を搭載したテレビ受像機、パーソナルコンピューター、携帯電子機器、その他、各種の電子製品がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】しみ上がり現象を説明する配線部の拡大断面図。
【図2】実施形態におけるタッチパネルの構成を示す平面図。
【図3】実施形態におけるタッチパネルの一部の拡大平面図。
【図4】実施形態におけるタッチパネルの構成を示す断面図。
【図5】実施形態におけるタッチパネルの製造方法を示すフローチャート。
【図6】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図7】吐出ヘッドの構成を示す模式図。
【図8】実施形態におけるタッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図9】実施形態におけるタッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図10】表面処理装置の構成を示す模式図。
【図11】基材における接触角の測定データ。
【図12】実施形態における液滴の塗布後の挙動を示す模式図。
【図13】ブリッジ配線膜の製造方法を示すフローチャート。
【図14】電子光学装置としての液晶表示装置の構成を示す平面図及び断面図。
【図15】電子機器としてのパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
【図16】タッチパネルの製造に適用した絶縁膜形成用組成物の実施例および比較例と、対応する評価結果とを示す表。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。本形態は、ブリッジ配線を多用するタッチパネルに適用した実施形態により説明するが、タッチパネルに限らず、ブリッジ配線を備える回路基板に適用可能なものである。
【0025】
実施形態の説明の前に、課題である「しみ上がり」を図1に基づいて、概略の説明をする。図1に示す、基板1の機能面1aに配置された配線膜2の上に、液滴吐出法により第1絶縁膜3aと第2絶縁膜3bが積層された絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3上には基板1に配置された電極膜4及び電極膜5を電気的に接続するブリッジ配線膜6が配置されている。
【0026】
第1絶縁膜3a及び第2絶縁膜3bは液滴吐出法により基板1に絶縁膜3を形成する機能液を塗布し、乾燥固化することで形成される。この機能液の塗布時に液滴が絶縁膜外周部でせり上がり、角状部3cを形成する。この現象をしみ上がりと言う。しみ上がりは第1絶縁膜3a形成時だけではなく、第2絶縁膜3b形成時にも発生するため、角(つの)状のしみ上がり部が大きく成長し、角状部3cを形成してしまう。
【0027】
この角状部3cも含めた絶縁膜3上にブリッジ配線膜6を形成すると、角状部3c部分ではブリッジ配線膜6が大きく屈曲し、亀裂6aや薄肉部6bが発生しやすくなる。この亀裂6aが、断線部となって電気的な導通性を遮断させたり、薄肉部6bが、電気的な導通性を低下させたりしてしまう。
【0028】
(実施形態)
〔回路基板の構成〕
図2は本実施形態における回路配線を備えるタッチパネルの全体を模式的に示す平面図であり、図3は図2に示すタッチパネル100の電極部を部分的に拡大した平面図である。また図4は図2におけるA−A’断面図を示す。
【0029】
図2に示すように、タッチパネル100は基板10、入力領域20(2点鎖線により囲まれた領域)、引き回し配線30を有する。基板10は、平面視で矩形状に形成されており、材質としてガラス、アクリル樹脂などの透明な材質が用いられている。
【0030】
入力領域20は、タッチパネル100に入力される指の位置情報を検出する領域である。入力領域20には、複数の第1電極膜としてのX電極膜40と複数の第2電極膜としてのY電極膜50が配置されている。図2に図示したXY軸方向に対して、X電極膜40は第1方向としてのX軸方向に沿って延在し、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極膜50は第2方向としてのY軸方向に沿って延在し、X軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。
【0031】
図2及び図3に示すように、X電極膜40は、X軸方向に配列された複数の第1島状電極部42と、X軸方向に隣り合う第1島状電極部42同士を電気的に接続する第1接続配線としての配線膜41とを備えている。第1島状電極部42は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配線されている。Y電極膜50は、Y軸方向に配列された複数の第2島状電極部52と、Y軸方向に隣り合う第2島状電極部52同士を接続する第2接続配線としてのブリッジ配線膜51とを備えている。第2島状電極部52は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配線されている。
【0032】
第1島状電極部42と第2島状電極部52とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されている。この第1島状電極部42同士を配線膜41により接続したX電極膜40と、第2島状電極部52同士をブリッジ配線膜51により接続したY電極膜50とは入力領域20の平面視でマトリックス状に配置されている。この時配線膜41とブリッジ配線膜51は交差部Kで交差している。
【0033】
X電極膜40及びY電極膜50を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物/登録商標)、ZnO、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透光性を有する導電膜を採用することができる。
【0034】
引き回し配線30は、X電極膜40及びY電極膜50と接続されており、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と接続されている。
【0035】
図3に示すようにブリッジ配線膜51と配線膜41とは、配線膜41上に形成された絶縁膜60を介在させることによって電気的な絶縁性が確保されている。
【0036】
次に、断面視におけるタッチパネル100の構成について説明する。図4は図2のA−A’断面を示す。図4に示すように、基板10の一面としての機能面10aに、第1島状電極部42(図示は省略)、第2島状電極部52、及び配線膜41が設けられている。配線膜41上には絶縁膜60が形成されている。
【0037】
絶縁膜60上を経由し、隣り合う第2島状電極部52の一部を接続するブリッジ配線膜51が形成され、隣り合う第2島状電極部52は電気的に接続されている。また、基板10の機能面10aに、引き回し配線30が配置されている。引き回し配線30は、機能面10aに配置された第1層30aと第1層30aに積層された第2層30bとによって構成されている。そして、引き回し配線30を覆う配線保護膜70が形成されている。
【0038】
上述の電極膜及び配線膜を覆って平坦化膜11が形成されている。平坦化膜11上には接着層12を介して保護基板13が配置されている。また、基板10の裏面10bにはシールド層14が設けられている。
【0039】
絶縁膜60は、立体的に交差する配線膜41とブリッジ配線膜51とを絶縁する。絶縁膜60は、ポリシロキサン、ポリシラザン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを主材とする機能液を、例えば、印刷法等を用いて塗布し、それを乾燥固化して形成することができる。ポリシロキサン、及びポリシラザンを主材として用いて形成した場合には、絶縁膜60はシリコン化合物からなる無機絶縁膜となる。一方、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを主材に採用した場合には、絶縁膜60は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。ここでは、AZ エレクトロニック マテリアルズ社 Spinfilにレベリング剤を混合したインクを用いている。
【0040】
絶縁膜60の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、配線膜41、ブリッジ配線膜51の交差部における寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。また絶縁膜60の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板10やX電極膜40、Y電極膜50との屈折率差を小さくすることができ、使用者に絶縁膜60のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0041】
引き回し配線30の第1層30aは、X電極膜40又はY電極膜50を入力領域20の外側の領域まで延出したものであり、ITOやIZO(登録商標)、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電膜によって形成されている。第2層30bは、第1層30a上に積層形成され、引き回し配線30の配線抵抗を低減する。第2層30bは、Au、Ag、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いて形成することができる。第2層30bの構成材料は、第1層30aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。
【0042】
引き回し配線30を覆う配線保護膜70は、絶縁膜60と同様に、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを形成材料に用いた印刷法によって形成することができる。したがって、配線保護膜70は絶縁膜60を形成する工程で同時に形成することができる。
【0043】
平坦化膜11は、基板10の機能面10aの少なくとも入力領域20を覆って形成され、X電極膜40やY電極膜50による機能面10aの凹凸を平坦化している。平坦化膜11は、図示のように、機能面10aの略全面(外部接続端子部を除く)を覆って形成されていることが好ましい。平坦化膜11により基板10の機能面10a側が平坦化されていることで、基板10と保護基板13とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。また平坦化膜11の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、基板10やX電極膜40、Y電極膜50との屈折率差を小さくすることができ、X電極膜40やY電極膜50の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0044】
保護基板13は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板13として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0045】
シールド層14は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料を基板10の裏面10bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムを基板10の裏面10bに接着した構成としてもよい。シールド層14が設けられていることで、基板10の裏面10b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では基板10の裏面10bにシールド層14を形成しているが、例えば、シールド層14を基板10の機能面10a側に形成することもできる。この場合、基板10の機能面10a上にシールド層14を形成し、シールド層14を覆う絶縁膜を形成する。このようにすれば、基板10の片面にシールド層14や、X電極膜40、Y電極膜50、引き回し配線30等を形成するので、製造工程が煩雑化するのを回避でき、製造性に優れたタッチパネルとすることができる。
【0047】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線30を介してX電極膜40及びY電極膜50に所定の電位を供給する。なお、シールド層14には、例えばグランドの電位(接地電位)を入力する。
【0048】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板13側から入力領域20に向けて手指を近づけると、保護基板13に近づけた手指と、接近位置付近のX電極膜40及びY電極膜50のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極膜40及びY電極膜50では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0049】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極膜40及びY電極膜50を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域20における指の位置情報が検出される。具体的には、X軸方向に延在するX電極膜40によって、手指が接近した位置の入力領域20におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極膜50によって、入力領域20におけるX座標が検出される。
【0050】
〔回路基板の製造〕
次に、本実施形態の回路配線を備えるタッチパネルの製造方法について説明する。図5はタッチパネルの製造方法を示すフローチャートである。
【0051】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、図5に示す工程を有している。
(S10)基板10の機能面10aに、第1,第2島状電極部42,52、配線膜41、及び引き回し配線30の第1層30aを形成する電極膜形成工程。
(S20)引き回し配線30の第1層30aに第2層30bを積層する補助配線膜形成工程。
(S30)少なくとも交差部Kの範囲を撥液化する表面処理工程。
(S40)配線膜41上に絶縁膜60の形成範囲に、絶縁膜の材料を含む機能液として吐出・塗布し、塗布された機能液を乾燥・固化して絶縁膜60を形成するとともに、引き回し配線30を覆って配線保護膜70を形成する絶縁膜形成工程。
(S50)絶縁膜60上を経由して隣り合った第2島状電極部52同士を接続するように、ブリッジ配線膜の材料を含む機能液として吐出・塗布し、塗布された機能液を乾燥・固化して、ブリッジ配線膜51を形成するブリッジ配線膜形成工程。
(S60)基板10の機能面10a側を平坦化する平坦化膜11を形成する平坦化膜形成工程(保護膜形成工程)。
(S70)接着層12を介して保護基板13を平坦化膜11と接合する保護基板接合工程(接着層形成工程)。
(S80)基板10の裏面10bにシールド層14を形成するシールド層形成工程(導電膜形成工程)。
【0052】
上述の通り、本実施形態のタッチパネル100の製造工程は、印刷法の一種である液滴吐出法によって成膜する工程を有しているので、ここで液滴吐出装置について説明する。
【0053】
図6は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と、Y軸方向駆動軸1004と、X軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒーター1015とを備えている。機能液を液滴として吐出する装置として、ピエゾ素子(圧電素子)を用いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置が用いられる。
【0054】
ステージ1007は、この液滴吐出装置IJにより機能液が塗布配置されるワークWを支持するものであって、ワークWを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0055】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されているワークWに対して、機能液が吐出されるようになっている。
【0056】
Y軸方向駆動軸1004には、Y軸方向駆動モーター1002が接続されている。このY軸方向駆動モーター1002は、ステッピングモーター等からなるもので、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、Y軸方向駆動軸1004を回転させる。Y軸方向駆動軸1004が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はY軸方向に移動する。
【0057】
X軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。ステージ1007は、X軸方向駆動モーター1003を備えている。X軸方向駆動モーター1003はステッピングモーター等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ1007をX軸方向に移動する。
【0058】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、Y軸方向駆動モーター1002に液滴吐出ヘッド1001のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、X軸方向駆動モーター1003にステージ1007のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0059】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のX軸方向の駆動モーターが備えられている。このX軸方向の駆動モーターの駆動により、クリーニング機構1008は、X軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0060】
ヒーター1015は、ここではランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に配置された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒーター1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0061】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001とワークWを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、ワークWに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にY軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0062】
図7は、ピエゾ方式による機能液の吐出原理を説明する図である。図7において、機能液を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、機能液を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して機能液が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から機能液が液滴Dとして吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による機能液は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0063】
上述の液滴吐出装置IJを用いたタッチパネル100の製造方法について説明する。図8および図9はタッチパネル100の製造工程を示す図である。これらの工程図は、図3に示した構造(ブリッジ配線膜51の交差部K及び引き回し配線30)を形成する工程を示している。
【0064】
(電極膜形成工程)
まず、電極膜形成工程S10について説明する。電極膜形成工程S10では、例えば、フォトリソグラフィー法を用いて、基板10上の第1方向(X軸方向)に間隔をあけて複数の第1島状電極部42を形成するとともに、隣接する第1島状電極部42の間を電気的に接続する配線膜41を形成することにより、X電極膜40を形成する(第1電極膜形成工程)。また、基板10上であって、第2方向(Y軸方向)に間隔をあけて複数の第2島状電極部52を形成する(第2島状電極部形成工程)。そして、第1島状電極部42及び第2島状電極部52から延出された引き回し配線30の第1層30aを形成する。なお、第1島状電極部42、配線膜41、第2島状電極部52及び第1層30aは、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnO、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透光性を有する導電膜を採用することができる。
【0065】
なお、本実施形態の電極膜形成工程S10においては、フォトリソグラフィー法を用いたが、液滴吐出装置IJを用いて、第1島状電極部42、配線膜41、第2島状電極部52及び第1層30aを形成してもよい。例えば、ITO粒子やIZO粒子などの酸化物セラミックスや、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性高分子を含有する機能液を液滴として吐出して、基板10上に機能液を塗布することにより各パターン形状を形成し、その後、塗布された機能液を固化すればよい。
【0066】
(補助配線膜形成工程)
次に、補助配線膜形成工程S20に移行する。補助配線膜形成工程S20では、液滴吐出装置IJによって、引き回し配線30の第2層30bの構成材料を含む機能液の液滴を第1層30a上に吐出配置する。第2層30bを形成するための機能液としては、例えば、銀粒子を含む機能液を用いることができる。その後、吐出配置した液滴を乾燥させる。これにより、図8(b)に示すように、第1層30a上に低抵抗の第2層30bが形成され、2層構造の引き回し配線30が入力領域20の外側の基板10上に形成される。
【0067】
引き回し配線30の第2層30bを形成する機能液としては、銀粒子を含む機能液の他、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む機能液や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む機能液を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で機能液中に分散される。また、第2層30bを金属膜とする場合には、有機金属化合物を含む機能液を用いてもよい。
【0068】
(表面処理工程)
次に表面処理工程S30に移行する。表面処理工程S30では基板10の表面に機能液に対して撥液性を付与し撥液化させる撥液化処理を行う。
【0069】
撥液化処理工程では、シラン化合物を含む処理液を使用することが好ましい。例えば、フッ化アルキルシラン(FAS)、または、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルメトキシシラン(CH3Si(OCH33)、トリメチルクロロシラン((CH33SiCl)等のシラン化合物などを用いて、ガス拡散法により基板10の表面を撥液化させる。などを用いて、基板10の表面を撥液化させる。
【0070】
撥液化はガス拡散法による処理が好ましい。図10はガス拡散法を用いて撥液化させる表面処理装置の構成を示す模式図である。表面処理装置200は、表面処理剤としてヘキサメチルジシザランを用いて機材の表面処理を行う装置であり、一般的なHDMS処理を行う装置である。表面処理装置200はヘキサメチルジシザラン(HMDS)210と、ヘキサメチルジシザラン210が入れられる皿容器220と、皿容器220と基材230を密閉可能に収容する収容容器240とを備えている。
【0071】
収容容器240内に、ヘキサメチルジシザラン210を入れた皿容器220と、皿容器220の上方に基材230をそれぞれ配置し、収容容器240を密閉状態とする。そして、ヘキサメチルジシザラン210を気化させ、収容容器240内をヘキサメチルジシザラン210のガス雰囲気下とする。これにより、基材230とヘキサメチルジシザラン210が反応結合し、基材230表面にヘキサメチルジシザラン210を主体とする撥液処理が行われる。
【0072】
撥液化処理にヘキサメチルジシザランを用いて上述の方法により行うことにより、処理時間(基材暴露時間)の制御により、容易に撥液性能(接触角の大きさ)を制御することが可能である。例えば、図11にHMDS処理の処理時間(機材暴露時間)と接触角(撥液性)との関係を示し、横軸に表面処理時間(基材暴露時間)、縦軸に接触角θをとり、基板10の表面の機能液に対する接触角θの測定データである。なお基板10はガラス、機能液は絶縁膜60の構成材料を含む液状材料である。
【0073】
図11からも明らかなように、HMDS処理は処理時間によって、基板10の機能液に対する接触角を制御することが可能な処理であることが分る。従って、後述の絶縁膜60の成分を含む機能液に添加されるレベリング剤の組成、量によって機能液の接触角に変動(ばらつき)が有っても、HMDS処理時間の調整により適正な接触角を持たせることが可能となる。従って、機能液にレベリング剤を添加することで得られる基板10に対する濡れ性と、基板10に与えられる撥液性とを調整することで、容易に所定の範囲に絶縁膜60を塗布・形成することができる。なお、本実施形態では、HMDS処理としてガス拡散法を用いたが、他に、例えば、液体状のHMDSを貯留するビンに窒素ガスを吹き込んでバブリングさせ、HMDS蒸気を生じさせ、このHMDS蒸気を基材に噴射するバブリング法を用いてもよい。
【0074】
(絶縁膜形成工程)
次に絶縁膜形成工程S40に移行する。絶縁膜形成工程S40では、図3に示すように絶縁膜60は少なくともX電極膜40の配線膜41を埋めるように、絶縁膜の材料を含む機能液を液滴として液滴吐出装置IJを用いて吐出する。その後、乾燥・固化し絶縁膜60が形成される。
【0075】
ここで、絶縁膜の材料を含む機能液の調整について説明する。
図16は、タッチパネルの製造に適用した絶縁膜形成用組成物の実施例および比較例と、対応する評価結果とを示す表である。
【0076】
(実施例1〜5)
図16に示すように、実施例1〜5では、絶縁膜材料AZ エレクトロニック マテリアルズ社 Spinfilに対して、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤である、
DIC(株)メガファック F−483、
住友スリーエム(株) NOVEC FC−4430、
AGCセイミケミカル(株) サーフロン S−383
をそれぞれ添加した絶縁膜形成インクを用いて絶縁膜を形成した。
【0077】
(比較例1〜5)
図16に示すように、比較例1〜5では、実施例1〜5と同様に、絶縁膜材料AZ エレクトロニック マテリアルズ社 Spinfilに対して、
レベリング剤を添加しない絶縁膜形成インク(比較例1)、
レベリング剤としてアクリル系界面活性剤である、楠本化成(株)UVX−35
を添加した絶縁膜形成インク(比較例2)、
レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤である、ビックケミー・ジャパン(株) BYK−310を添加した絶縁膜形成インク(比較例3)、
レベリング剤としてフッ素系界面活性剤である、DIC(株)メガファック F−483を添加した絶縁膜形成インク(比較例4および5)
をそれぞれ用いて絶縁膜を形成した。
【0078】
上述の界面活性剤は、機能液に対して流動性を付与するもので、いわゆるレベリング剤と言われるものである。レベリング剤とは一般的に「塗られた塗料が流動してはけ目、ゆず肌、うねりなどが消えて平らになる事をレベリングと言い、その効果を有する材料」のことを指している。すなわち液滴吐出法により機能液が塗布された場合、塗布面に沿って拡がるように機能液が流動する、いわゆる濡れ性が高くなることである。
【0079】
これら実施例1〜5および比較例1〜5の絶縁膜において、充分な濃度の界面活性剤を添加した実施例1〜5、および比較例2および3の絶縁膜は濡れ広がりに過不足なく、全体に平滑で凹凸なくかつ滑らかな表明形状に絶縁膜が形成された。
レベリング剤を含有しない比較例1では、濡れ広がりが不足するとともに、端部に顕著な突起が生じ、中心部が大きく凹んだ。
レベリング剤の含有量が極めて僅かである比較例4では、濡れ広がりが不足するとともに、中心部分が凹み、凹凸が見られた。
レベリング剤の含有量が極めて多い比較例5では、全体に平滑で凹凸が見られないものの、濡れ広がり過ぎたために、必要量以上の大きさの絶縁膜が形成されるとともに、膜厚の確保も困難であった。
また、アクリル系界面活性剤を添加した比較例2では、絶縁膜上にブリッジ配線を形成する機能液が濡れ広がり過ぎたために、ショートが生じたとともに、ブリッジ配線を形成する機能液を乾燥・固化させる工程にて着色し、絶縁膜パターンが視認された。
さらに、シリコーン系界面活性剤を添加した比較例3では、絶縁膜上にブリッジ配線を形成する機能液が濡れ広がり過ぎたために、ショートが生じた。
【0080】
したがって、絶縁膜60の構成材料であるレベリング剤には、絶縁性を確保できること、透明であること、ブリッジ配線を形成する機能液に対し適度な接触角を有していることが重要であり、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましく、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。
ブリッジ配線膜形成工程の焼成時にて着色しないこと、例えば220℃にて可視光領域における透過率が変化しない耐熱性のある材料を用いることが好ましい。
さらに、ブリッジ配線膜形成工程において、ブリッジ配線膜を形成する機能液に対して撥液性を有していて、ブリッジ配線膜形成機能液の過度の濡れ広がりを抑制し、ブリッジ配線の細線化が可能となる材料を用いることが好ましい。
以上の点から、レベリング剤にはフッ素系界面活性剤が最も適している。
【0081】
上述の調整された機能液は、液滴吐出装置IJにより、撥液化処理された基板10表面の絶縁膜60の形成範囲へ塗布される。図12は、塗布された機能液の状態を模式的に示した断面図である。図12において上述の実施形態により塗布された絶縁膜60に対して、絶縁膜60aは、基板10は撥液化処理を施さず、絶縁膜の機能液にはレベリング剤を添加した場合の絶縁膜塗布形状である。また絶縁膜60bは、基板10は撥液化処理が施され、機能液にはレベリング剤が添加されていない場合の絶縁膜形状である。
【0082】
図12に示すとおり、撥液化された基板10の表面に絶縁膜の機能液を塗布すると、塗布された機能液の接触角θbは大きく、機能液はしみ上がり現象を起こした絶縁膜60bのように塗布形成されてしまう。また、レベリング剤を添加することで接触角θaまで小さくすることができるが、撥液化されていない基板10に対して所定の絶縁膜形成範囲を超えて絶縁膜60aが塗布形成されてしまう。しかし、本実施形態のように、上述の基板10への撥液化処理と、絶縁膜を形成する機能液へのレベリング剤の添加により、機能液は好適な接触角θを得て絶縁膜60の形成範囲に機能液を塗布することができる。また、機能液に添加されたレベリング剤により、しみ上がり現象も発生せず、塗布表面には段差を発生させずに絶縁膜60を形成することができる。
【0083】
また、配線膜41に対しても、配線膜41の上部に形成される絶縁膜層は、絶縁膜60を厚く形成することができるため、電気的な絶縁性に優れた絶縁膜60が形成される。しかし、絶縁膜60aでは周縁部への濡れ拡がりによって、中心部分では厚みは薄くなり、絶縁膜60bではしみ上がりによって中心部分の厚みが薄くなり、両者とも電気的絶縁性が低い絶縁膜となってしまう。
【0084】
(ブリッジ配線膜形成工程)
次にブリッジ配線膜形成工程S50に移行する。ブリッジ配線膜形成工程S50では、図8(d)に示すように、絶縁膜60上を経由し、隣り合う第2島状電極部52同士を接続するブリッジ配線膜51を形成する。ブリッジ配線膜51により、第2島状電極部52は電気的に接続され、Y電極膜50が形成される。
【0085】
ブリッジ配線膜形成工程S50は図13に示すように、表面処理工程S50a、塗布工程S50b、固化工程S50cとを含む。表面処理工程S50aは、少なくとも絶縁膜60の表面を、機能液に対して撥液化させる撥液化処理工程と、第2島状電極部52の表面を機能液に対して親液化させる親液化処理工程を含む。
【0086】
撥液化処理工程では、前述の表面処理工程S30と同様の方法により処理することができる。例えば、フッ化アルキルシラン(FAS)、または、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルメトキシシラン(CH3Si(OCH33)、トリメチルクロロシラン((CH33SiCl)などのシラン化合物を用いて、ガス拡散法により、基板10の表面及び絶縁膜60の表面を撥液化させる。
【0087】
次いで、親液化処理工程では、少なくとも第2島状電極部52のブリッジ配線膜51との接合部を選択的に親液化する。親液化処理は、例えば、親液化する部分を選択的に光照射することで行われる。あるいは、光照射としてレーザー照射する。光照射、あるいはレーザー照射により、照射された部分の表面を改質することで、親液化させる。
【0088】
照射する光としては、例えばNb:YAGレーザー(1.064μm)または、CO2レーザー(10.6μm)などを用いることができる。また、FASなどからなる撥液領域を親液処理する方法としては、親液化する領域以外をマスクで覆い、UV(紫外光)を照射する方法も採用することができる。
【0089】
なお親液化処理範囲として、絶縁膜60上のブリッジ配線膜51の形成範囲も親液化することが好ましい。この範囲を親液化することでブリッジ配線膜51を形成する機能液がブリッジ配線膜51の配線方向に沿って濡れ拡がりやすくなり、ブリッジ配線膜51の断線が防止できると共に、絶縁膜60との密着性を向上させることができる。
【0090】
次に、塗布工程S50bでは図8(d)に示すように、隣り合って配置された第2島状電極部52上と絶縁膜60上とをわたって、ITO微粒子を含む機能液の液滴を配線形状に配置する。なお、ブリッジ配線膜51形成に用いる機能液として、上記したITO粒子を含む機能液のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む機能液、ポリチオフェン、ポリアニリンといった導電性高分子やその誘導体、又はそのモノマー類を含む機能液を用いて形成することもできる。
【0091】
上述の絶縁膜形成工程S40において、絶縁膜60は図12によって説明したように、レベリング(平滑化)され段差のない上面状態を有していることで、ブリッジ配線膜51は滑らかに絶縁膜60上に形成され、断線しにくい配線膜とすることができる。
【0092】
上述のように機能液が塗布された後、固化工程S50cに移行される。固化工程S50cでは、塗布された機能液を加熱し、乾燥固化することでブリッジ配線膜51が形成される。
【0093】
次に、平坦化膜形成工程S60に移行する。平坦化膜形成工程S60では、図9(a)に示すように、基板10の機能面10aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜11を機能面10aのほぼ全面に形成する。平坦化膜11は、絶縁膜形成工程S40で用いた絶縁膜60形成用の機能液と同様の機能液を用いて形成することができるが、基板10表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0094】
次に、保護基板接合工程S70に移行する。保護基板接合工程S70では、図9(b)に示すように、別途用意した保護基板13と平坦化膜11との間に接着剤を含む接着層12を配置し、接着層12を介して保護基板13と平坦化膜11とを貼り合わせる。保護基板13は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層12を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0095】
次に、シールド層形成工程S80に移行する。シールド層形成工程S80では、図9(c)に示すように、基板10の裏面10b(機能面10aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層14を形成する。シールド層14は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層14を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極膜形成工程S10、及びブリッジ配線膜形成工程S50で使用されるITO粒子等を含む機能液を用いることができる。また、基板10に対する成膜によりシールド層14を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムを基板10の裏面10bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層14としてもよい。
【0096】
なお、本実施形態では、シールド層14をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層14は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層14が形成された基板10を電極膜形成工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極膜形成工程S10から保護基板接合工程S70までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0097】
また、本実施形態においては、基板10の裏面10bにシールド層14を形成しているが、基板10の機能面10a側にシールド層14を形成してもよい。この場合には、電極膜形成工程S10に先立って、シールド層14を形成する工程と、絶縁膜60を形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層14は、シールド層形成工程S80と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜60の形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S40と同様とすることができる。
【0098】
〔電気光学装置の構成〕
次に、電気光学装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、電気光学装置に適用した上述のタッチパネルを備えた液晶表示装置の構成について説明する。図14は、液晶表示装置の構成を示し、図14(a)は、平面図であり、図14(b)は、図14(a)の平面図におけるH−H’断面図である。
【0099】
図14(a)に示すように、液晶表示装置300は、素子基板306、対向基板308、及び画像表示領域306aを有している。素子基板306は対向基板308に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。対向基板308は液晶表示装置300における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板308は、シール材314を介して素子基板306の中央部に接合されている。画像表示領域306aは、対向基板308の平面領域であって、シール材314の内周に沿って設けられた周辺見切り315の内側領域である。
【0100】
素子基板306における対向基板308の周辺には、データ線駆動回路301、走査線駆動回路303、データ線駆動回路301及び走査線駆動回路303と接続された接続端子302、及び対向基板308に対して対向して配置された走査線駆動回路303同士を接続する配線304などが配置されている。
【0101】
次に、液晶表示装置300の断面について説明する。素子基板306の液晶層312側の面には、画素電極305及び配向膜307などが積層されている。対向基板308の液晶層312側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)309、カラーフィルター310、共通電極311、及び配向膜312などが積層されている。液晶層313が、素子基板306及び対向基板308によって挟持されている。そして、対向基板308の外側(液晶層313反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0102】
〔電子機器の構成〕
次に、電子機器の構成について説明する。なお、本実施形態では、電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューターであり、上記のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を搭載したモバイル型パーソナルコンピューターの構成について説明する。図15は、モバイル型パーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピューター400は、表示部401と、キーボード402を有する本体部403とを備えている。モバイル型パーソナルコンピューター400は、上記実施形態の液晶表示装置300を表示部401に備えている。このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピューター400によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0103】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0105】
(変形例)上述の実施形態のタッチパネル100の構成では、第1電極膜としてのX電極膜40とし、第2電極膜としてのY電極膜50として、X電極膜40の配線膜41上に絶縁膜60を形成し、絶縁膜60上にブリッジ配線膜51を形成したが、これに限定されない。例えば、第1電極膜にはY電極膜50、第2電極膜にはX電極膜40とし、Y電極膜50の配線膜51を基板10上に形成し、配線膜51上に絶縁膜60を設け、当該絶縁膜60上に配線膜41をブリッジ配線として形成し、X電極膜40とY電極膜50とが互いに交差する構成であってもよい。このようにしても、上述実施形態で説明したブリッジ配線膜51の構成、及び製造方法を、上記に説明した配線膜41の構成、及び製造方法に適用することにより、上述同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0106】
40…X電極膜、41…配線膜、42…第1島状電極部、50…Y電極膜、51…ブリッジ配線膜、52…第2島状電極部、60…絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する複数の配線と、前記複数の配線の交差部において、前記配線間に形成される絶縁層とを含む回路基板の製造方法であって、
基板の配線を施す面に基板配線を形成する基板配線形成工程と、
前記基板配線の少なくとも一部を被覆する絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の表面に前記基板配線に交差するブリッジ配線を形成するブリッジ配線形成工程とを含み、
前記絶縁膜形成工程は、前記絶縁膜の材料を含む機能液を液滴として吐出する液滴吐出工程を含み、
前記機能液はレベリング剤を含む、
ことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板配線形成工程と前記絶縁層形成工程との間に前記基板の表面に撥液化処理を施す表面処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記表面処理工程では、シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とする請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理工程では、ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とする請求項2および3に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記レベリング剤は、フッ素系界面活性剤を含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載の製造方法において、前記回路基板は、
互いに交差する方向に延在する複数の第1電極膜および第2電極膜を有し、
前記第1電極膜は第1方向に間隔をあけて形成された複数の第1島状電極部と、隣接する前記第1島状電極部を電気的に接続する第1接続配線とを有し、
前記第2電極膜は前記第1方向と交差する第2方向に間隔をあけて形成された複数の第2島状電極部と、隣接する前記第2島状電極部を電気的に接続する第2接続配線とを有し、
前記第1接続配線が前記基板配線であり、前記第2接続配線が前記ブリッジ配線であるタッチパネルである、
ことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の回路基板の製造方法により製造されたタッチパネル。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチパネルを備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−191847(P2011−191847A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55462(P2010−55462)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】