説明

回路基板及びその製造方法

【課題】寸法精度が高い配線回路を狭小なピッチであっても浮き上がりや剥離が生じないように可撓性絶縁基材に埋設した回路基板及びそのような回路基板を容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】可撓性絶縁基材1に埋設された配線回路2を、線幅及び材質が互いに異なる第1導電性金属層22と第2導電性金属層21とを積層して形成すると共に、第1導電性金属層22の線幅Aを第2導電性金属層21の線幅Bよりも大きく、かつ第2導電性金属層21の一面を可撓性絶縁基材1の一面に露出させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性絶縁基材に配線回路を埋設した回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等の可撓性絶縁基材の表面上に、メッキ法及び/又はエッチング法によって配線回路を形成した回路基板が広く実用に供されている。一般に、エッチング法で形成された配線回路は、その縦断面形状が台形状(図9参照)、すなわち、可撓性絶縁基材1に接する側(固定端面側)の幅よりもその反対側(上端面側)の幅が狭い姿の縦断面形状に有している。
【0003】
その為、かかる回路基板を他の基板に接続する場合、あるいは、それに電子部品を実装する場合等において、接合すべき配線回路同士間に異方導電性フィルム(ACF)を介在させて加熱圧着し、該ACF中に分散されている導電性粒子を互いに接触させて電気的接合を得ることができるが、その際、接合すべき配線回路の幅が小さ過ぎると、ACF中の導電性粒子を十分に接触させることが難しくて十分な電気的接合が得られないといった問題が生じる。
【0004】
そこで、一般に配線回路ピッチが30μm〜40μm以下の狭小ピッチ領域においては、その縦断面形状が矩形の配線回路(図10参照)を形成し得るめっき法(いわゆるアディティブ法もしくはセミアディティブ法)が好適とされているが、めっき法によると、まず、一面上に導電性薄層を形成した可撓性絶縁基材の該導電性薄層上にレジスト膜を形成した後、露光、現像を行って該レジスト膜に、配線回路を形成する為の開孔パターンを形成し、次いで、該開孔パターン内の導電性薄層を陰極として配線回路をめっき形成した後、該レジスト膜を剥離し、次いで、該配線回路が形成されていない部分の該導電性薄膜をソフトエッチングによって除去し、もって、一面上に配線回路が形成された回路基板を得ることができる。
【0005】
しかし、この製造方法においては、その製造中における環境変化(温度及び吸湿条件の変化)の影響を受けて可撓性絶縁基材自体の寸法が変化し、これ等に起因して、形成された配線回路の寸法がマスクの寸法に対して、およそ±0.05%程度の誤差が生じる。その為、そのような寸法誤差が生じないようにする方法が諸々提案されているが、その代表例として、導電性基材上に電解めっき法により配線回路を形成し、次いで、該配線回路を可撓性絶縁基材に転写することによって回路基板を得る方法が挙げられる(下記引用文献1を参照)。
【0006】
かかる転写方法によると、熱膨張係数が可撓性絶縁基材に比較して大幅に小さく、かつ湿度による寸法変化もほとんどない導電性基材(例えばアルミニウム基材等)の一面上に配線回路を形成した上で、それを可撓性絶縁基材に転写するから、寸法精度の良い配線回路を形成することができる。
【0007】
なお、転写された該配線回路は、可撓性絶縁基材上の接着剤層に埋め込まれて保持されているが、一般にめっき法によって配線回路を形成する場合、配線回路の高さを配線回路幅の1.0〜1.5倍以上に厚くすることは、レジスト膜への露光、現像による開孔の形成及び該開孔内へのめっき形成が共に難しくなるので、通常は、およそ1.0倍以下で形成されていることが多い。その為、配線回路が狭小ピッチの場合においては、配線回路幅(線幅)のみならず配線回路高さ(厚さ)も小さくなるから、該接着層で保持する為の接着面積が小さく、従って、その保持力(又は接着力)が小さい。
【0008】
そこで、可撓性絶縁基材に対して配線回路を埋設することによって該保持力を強化すること等が提案されているが、一般に可撓性絶縁基材として利用されるポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ガラス繊維若しくはアラミド繊維補強エポキシ樹脂等と、配線回路を形成する導電性金属とは、金属表面を粗面化する等の特殊な処理を行なわない限り、その間の接着力はさほど大きくない。それ故、狭小なピッチの回路基板の場合には、配線回路が可撓性絶縁基材から浮き上がったりあるいは剥がれを起こしやすいといった問題が生じる。このことは、配線回路上にバンプを形成し、プローブとして利用する場合や繰り返し折り曲げて使用する場合等、配線回路に外力が作用する場合において特に問題になる為、そのような問題を解消する方法が更に提案されている。
【0009】
すなわち、導電性基材の一面上に形成されたレジスト膜に、配線回路を形成する為の開孔を設け、該開孔内に配線回路をめっき形成する際、レジスト膜厚さを超えて電解めっきを析出成長せしめて配線回路にオーバーハング部を設け、次いで、レジスト膜を除去した後に、導電性基材とその上に形成された配線回路上に可撓性絶縁基材を積層し、次いで、該導電性基材を剥離することによって、可撓性絶縁基材に配線回路を埋設した回路基板を得る方法が提案されている(下記引用文献2を参照)。
【0010】
この方法によると、配線回路が、オーバーハング部によって可撓性絶縁基材に対して強く保持され、従って、配線回路の浮き上がりや剥離を防止することができる。しかし、この方法では、レジスト膜の厚さ以上にめっき金属を析出成長させる際、電流密度や薬液濃度の若干のムラによってめっきの析出速度にムラが生じ、その為、形成されるオーバーハングの大きさにも若干のムラが生じることが避けられない。
【0011】
特に隣り合う配線回路同士間スペースが10〜20μm以下の狭小ピッチの場合においては、回路基板全域にわたって適正なオーバーハングを形成することが難しい。すなわち、回路基板全域にわたって十分なオーバーハングを形成しようとすると、一部分ではオーバーハングが大きくなり過ぎて隣接する配線回路が短絡する問題を生じ、また、逆に短絡を防ぐためにオーバーハング形成を小さくすると、回路基板の一部領域では配線回路層の高さがレジスト膜の厚さまでに至らず、従って、オーバーハングが形成されない為に可撓性絶縁基材から配線回路が局部的に浮き上がったり、あるいは剥がれたりするといった問題が生じる。このような問題は、エレクトロニクス製品の小型化及び軽量化に伴い、狭小なピッチで、かつ寸法精度の高い配線回路を有する可撓性の回路基板が求められている現状において解決が必須である。
【0012】
【特許文献1】特開2001―352151号公報(段落0020〜0023の記載参照)。
【0013】
【特許文献2】特開平11−174086号公報(段落0013〜0015の記載参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の欠点に鑑みて発明されたものであって、その目的は、寸法精度の高い配線回路が狭小なピッチであっても浮き上がりや剥離が生じないように可撓性絶縁基材に埋設された回路基板及びそのような回路基板を製造するのに好適な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために本発明に係る回路基板においては、可撓性絶縁基材に埋設した配線回路を、少なくとも、線幅及び材質が互いに異なる第1導電性金属層と第2導電性金属層との積層で形成し、かつ好ましくは、該第1導電性金属層の線幅を該第2導電性金属層のそれよりも大きく設けると共に、該第2導電性金属層の一面と該可撓性絶縁基材の一面とを面一にしている。
【0016】
このように、可撓性絶縁基材の内層側に位置する第1導電性金属層の線幅を、同外層側に位置する第2導電性金属層のそれよりも大きくして所謂、鍔状に形成し、可撓性絶縁基材に埋設された該鍔状部分を強固に保持し得る為に、配線回路が絶縁樹脂基材から浮き上がったり、あるいは剥がれたりすることが生じ難い。しかも、温度や湿度の影響が少ない導電性基材の上で第1導電性金属層と第2導電性金属層からなる配線回路を形成して,転写法により可撓性絶縁基材に埋設しているので寸法精度が高い。
【0017】
また、本発明に係る回路基板の製造方法においては、導電性基材の一面上に電解メッキによって導電性金属の積層構造の配線回路を形成した後、該配線回路を被覆するように導電性基材の該一面上に可撓性絶縁基材を積層し、次いで、該導電性基材を該可撓性絶縁基材から分離するが、その際、該配線回路の形成を、材質が互いに異なる第1導電性金属層と第2導電性金属層とを積層して形成し、そして、湿式エッチングによって該第2導電性金属層の線幅を該第1導電性金属層の線幅より狭めた後に、該可撓性絶縁基材の積層を行うようにしている。
【0018】
その為、上述の回路基板、すなわち、寸法精度の高い配線回路を狭小なピッチであっても浮き上がりや剥離が生じないように可撓性絶縁基材に埋設した回路基板を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、寸法精度が高い配線回路を狭小なピッチであっても浮き上がりや剥離が生じないように可撓性絶縁基材に埋設した回路基板及びそのような回路基板を容易に製造することができる方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る回路基板は、縦断面図である図1及び図1の平面図である図2に示す如く、可撓性絶縁基材1に配線回路2が埋設されているが、該可撓性絶縁基材1は、要求される耐熱性、強度、寸法安定性、電気特性等を考慮して選択され、耐熱性及び耐薬品性等に優れたポリイミド樹脂、又は吸湿寸法安定性及び誘電特性等に優れた液晶ポリエステル樹脂や繊維強化されたエポキシ樹脂等が好適である。
【0021】
なお、上述のポリイミド樹脂としは、非熱可塑性イミド樹脂や熱可塑性イミド樹脂のいずれも使用できる。非熱可塑性イミド樹脂の場合、イミド結合が閉環した状態では流動成形性及び接着性が不十分な為、そのままでは後述する回路基板の製造に際して導電性基材上に積層(図8(e)参照)するのが難しい。従って、ポリイミド前駆体を導電性基材上に塗布した後、加熱してイミド結合を閉環して積層(可撓性絶縁基材1を形成)するのが好ましい。また、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系等の接着層とポリイミド樹脂層とを積層したものであってもよい。
【0022】
繊維強化されたエポキシ樹脂としては、ガラス繊維もしくはアラミド繊維により補強されたエポキシ樹脂フィルムを利用することができるが、配線回路ピッチ及び配線回路幅が狭小な場合においては、ガラス繊維補強エポキシ樹脂よりもアラミド繊維補強エポキシ樹脂の方が好適できる。可撓性絶縁基材1の厚さは、回路基板の可撓性とコシの強さや強度との兼ね合いで選択され、通常およそ12μmから150μmが好適である。
【0023】
一方、配線回路2は、互いに異なる材質の2種類の導電性金属層を積層して構成され、かつ可撓性絶縁基材1に埋設されている。すなわち、可撓性絶縁基材1の内層側に位置する第1導電性金属層22と、それ上に積層された第2導電性金属層21とで構成され、かかる第2導電性金属層21の上端面を、可撓性絶縁基材1の上端面と同一レベルに位置させていると共に第2導電性金属層21の幅(B)よりも第1導電性金属層22の幅(A)の方が大きく設けられている。その為、可撓性絶縁基材1に対する配線回路2の固着強さ(保持強さ)が十分であって、配線回路2の浮き上がりや剥離が発生し難い。
【0024】
導電性金属層の幅の比率、つまり線幅の比率(B)/(A)は、およそ0.6から0.9、望ましくは0.7から0.8の間が好適である。比率が小さ過ぎると、配線回路2の線幅が小さい領域では断線する可能性があり、逆に比率が大きすぎると、可撓性絶縁基材1による導電性金属層の保持が不十分になって、配線回路2が可撓性絶縁基材1から剥離し易くなる。
【0025】
また、配線回路2を形成する2種の導電性金属の材質は特に限定されないが、電気抵抗、機械的強度、積層形成の容易性、積層界面の接着強度等を考慮して選択され、一般に第1導電性金属層22の材質がニッケル又はニッケル合金で、第2導電性金属層21の材質が銅又は銅合金であるのが好ましいが、その逆の組み合わせであっても良い。
【0026】
本発明において、配線回路2は、線幅及び材質が互いに異なる第1導電性金属層22と第2導電性金属層21とを積層している限りにおいては、二層以上に積層されたものであってもよい。上述の二層(図1参照)以外に、例えば、図3〜図5に示す如くに、三層や四層に積層されたものであってもよい。図5の三層においては、第2導電性金属層21上に耐食性、接続性、硬度等を高めるための金、スズ、パラジューム等の導電性保護層23を積層している。それに対し、図6の二層においては、第2導電性金属層21上にバンプ又はパッド30を形成している。
【0027】
要するに、配線回路2を、少なくとも、線幅及び材質が互いに異なる第1導電性金属層22と第2導電性金属層21との積層で形成すると共に、第1導電性金属層22の線幅を、第2導電性金属層21のそれよりも大きく設け、かつ好ましくは、第2導電性金属層21の一面を可撓性絶縁基材1の一面に露出させている。
【0028】
なお、図6及び図7の二層においては、絶縁保護層4を設けているが、それは、接着剤付きのポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等、又は液状のアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等をコートし乾燥もしくは固化して形成されている。
【0029】
次に、二層の配線回路2を形成した回路基板の製造方法について述べると、かかる回路基板は、図8の(a)〜(f)の工程を経て製造することができる。その際、導電性基材10等を用いるが、かかる導電性基材10としては、ステンレス板、銅板、アルミニュウム板、シリコン板(ウエハー)等を使用でき、ガラス板もしくはセラミック板に導電性を付与するための金属薄膜を形成した板であってもよい。
【0030】
導電性基材10の厚さは、薄すぎると表面に積層するレジスト層3や可撓性絶縁基材1の温度や吸水による寸法変化の影響を受けやすくなる為、また、厚過ぎると重くなって取り扱いに支障をきたすため、およそ0.1mmから5mmの厚さが好適である。
【0031】
まず、図8(a)に示す如く、導電性基材10の一面上に、配線回路を形成するための開孔31を有するレジスト膜3を形成する。この工程(イ)には、通常のフォトリソグラフィーの技術が利用できる。すなわち、導電性基材10の一面上にドライフィルムレジストをラミネートした後、配線回路パターンに対応するパターンが描かれたガラスマスクを介して露光、現像して配線回路を形成しようとする位置に開口31を形成する。
【0032】
レジスト膜3はネガ型、ポジ型いずれであってもかまわない。またドライフィルムレジストの代わりに液状レジストを利用することもできる。またガラスマスクを用いることなく、例えばレーザー、電子ビーム等により直接描画して開孔31を形成してもよい。
【0033】
次に、図8(b)に示す如く、導電性基材10を陰極としてレジスト膜3に形成された開孔31内に電解めっきにより第2導電性金属層21を形成する。この工程(ロ)に続いて、図8(c)に示す如く、第2導電性金属層21上に、第2導電性金属層21の材質とは異なる材質の第1導電性金属層22を電解めっき法により積層する。
次に、この工程(ハ)に続いて図8(d)に示す如く、レジスト膜3を剥離した後、第2導電性金属層21のみに作用し第1導電性金属層22及び導電性基板10には作用しないようなエッチング液で処理して配線回路2を形成する。その際において、第2導電性金属層21の線幅(B)が第1導電性金属層22の線幅(A)の0.6〜0.9に、好ましくは0.7〜0.8となるようにエッチング処理する。
【0034】
上述のエッチング液としては、例えば、第2導電性金属層21が電解銅めっきで形成され、第1導電性金属層22が電解ニッケルめっきで形成されている場合においては、アンモニア水溶液系の銅エッチング液が好適である。また、材質がその逆の組み合わせの場合においては選択的にニッケルだけをエッチングできるエッチング液が好適である。上述の配線回路2を形成する一連の工程の間、配線回路2は、温度や湿度による寸法変化が可撓性樹脂基材に比較して格段に小さい導電性基材10上に保持されており、その為、配線回路の寸法とマスクの寸法との乖離が少ない高精度の配線回路2を形成することができる。 次に、この工程(ニ)に続いて図8(e)に示す如く、導電性基材10の配線回路2が形成された面に可撓性絶縁基材1を積層する。積層方法としては、可撓性絶縁基材1として熱可塑性ポリイミド樹脂や液晶ポリエステル樹脂もしくは繊維強化エポキシ樹脂を選択した場合においては、加熱圧着することで積層することができる。可撓性絶縁基材1として非熱可塑性ポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリイミド樹脂系、エポキシ樹脂系等の接着剤、もしくはポリイミド前駆体層を介して加熱圧着する方法が好適である。
【0035】
次に、この工程(ホ)に続いて図8(f)に示す如く、導電性基材10と可撓性絶縁基材1を分離(より具体的には剥離)して、可撓性絶縁基材1に配線回路2が埋設された可撓性の回路基板を得ることができる。かかる剥離に際しては、可撓性絶縁基材1に変形が残らないような小さな力で剥離する。なお、導電性基材10としてステンレス板を用い、可撓性絶縁基材1として繊維強化エポキシ樹脂又は液晶ポリエステル樹脂等を用いる場合には、小さい力で問題なく剥離することができる。
【0036】
可撓性絶縁基材1として、接着剤層を介してポリイミド樹脂を用いる場合等のように、小さな力で剥離することが困難な場合には、例えば、該ステンレス基材表面に電解めっき法により銅、ニッケル等の金属薄膜を形成したものを導電性基材10として用い、該剥離を該ステンレス基材と該金属薄膜の間で行って、しかる後に可撓性絶縁基材1上に残った該金属薄膜をエッチング処理して除く方法が好適である。電解めっきにより形成する該金属薄膜の種類は、第2導電性金属層21をエッチング処理する際にエッチング処理されない材質を選ぶことが好ましいが、ある程度エッチング処理される材料であってもかまわない。
【0037】
該金属薄膜の厚さは、およそ1μm〜5μmが好適であるが、必ずしも、この範囲に限定されない。なお、ステンレス基材と金属薄膜を容易に剥離可能にする為に、ステンレス基材の表面はバフ研磨等で鏡面に仕上げたものがよく、また、クロム酸処理により薄膜を形成してもよい。
【0038】
以上、二層の配線回路2を形成した回路基板の製造方法について述べたが、本発明においては、引き続いて、第2導電性金属層21上に更に異なる材質もしくは第1の配線層と同じ材質の導電性金属層を積層してもよい。また、得られた回路基板の配線回路2上に、耐食性、ボンディング性等の改良のために更に金、スズ等の導電性保護層を積層してもよい。
【0039】
また、回路基板の配線回路2が露出されている方の一面に、絶縁等の目的で接着剤付きポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等を張り合わせるか、又は液状のアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等をコートし乾燥もしくは固化して、保護層を形成してもよい。更に、該保護層の一部をエッチング、レーザー加工等を行って所定位置の配線回路を露出せしめ、その露出した配線回路にバンプやパッドもしくは段部等を形成してもよい。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
導電性基材として厚さ0.5mmの光沢表面を有するステンレス板に、日合・モートン株式会社製ドライフィルム「NIT2025」(厚さ25μm)を加熱圧着してラミネートし、次いで、L/S(ラインアンドスペース)15μm、リード本数500の配線パターンを持つガラスマスクを介して露光し、炭酸ソーダ水溶液により現像してステンレス板上に配線回路を形成する為の開孔を持つレジスト膜を形成した。
【0041】
次いで、このステンレス板を陰極とし、硫酸銅めっき浴中で電流密度0.5A/dm2で60分間電解メめっきを行った。続いてスルファミン酸ニッケルメッキ浴中で電流密度0.5A/dm2で50分間メッキを行なった。
【0042】
次いで、旭電化工業株式会社「アデカリムーバー R−4050B」でレジスト層を剥離して導電性基板上にL/Sが15μmの配線回路を形成した。この時点で形成した配線回路の高さを測定すると12μmであった。夫々の電解メッキの析出速度から計算すると、およそ硫酸銅メッキ浴による第2導電性金属層の厚さはおよそ7μmで、スルファミン酸ニッケル浴による第1導電性金属層の厚さはおよそ5μmと計算される。
【0043】
次いで、第2導電性金属層をメルテックス株式会社「エープロセス」でエッチング処理した。その結果、第1導電性金属層の線幅(A)が15μmに対して第2導電性金属層の線幅(B)は、およそ12μmとなった。
【0044】
しかる後、導電性基板の配線回路を形成した一面に、新神戸電機社製の75μm厚さのアラミド繊維補強エポキシフィルムを温度180℃、圧力2MPaで積層した。そして、冷却後、導電性基材とアラミド繊維補強エポキシフィルムとを剥離したところ、表面に配線回路が埋設され、浮き上がり、剥がれ等のない可撓性の回路基板が得られた。
【0045】
回路基板の両最外側配線間のピッチ寸法を実測したところガラスマスクのそれは14,970μmであるのに対して14,973μmでありその誤差は0.02%であった。なお、めっきやエッチングに際し、それらを行わない面に対して必要に応じてマスキングテープによるマスキングを施して処理した。
【0046】
[実施例2]
導電性基材として厚さ0.5mmの光沢表面を有するステンレス板に、日合・モートン株式会社製ドライフィルム「NIT2025」(厚さ25μm)を加熱圧着してラミネートし、次いで、L/S(ラインアンドスペース)15μm、リード本数500の配線パターンを持つガラスマスクを介して露光し、炭酸ソーダ水溶液により現像してステンレス板上に配線回路を形成する為の開孔を持つレジスト膜を形成した。
【0047】
次いで、このステンレス板を陰極とし、スルファミン酸ニッケルメッキ浴中で電流密度0.5A/dm2で50分間メッキを行い、引き続き、硫酸銅めっき浴中で電流密度0.5A/dm2で60分間電解めっきを行い、二つの金属が積層された導電層を形成した。
【0048】
次いで、旭電化工業株式会社「アデカリムーバー R−4050B」を用いて40℃でレジスト層を剥離してステンレス基板上にL/Sが15μmの配線回路を形成した。この時点で形成した配線回路の高さを測定すると12μmであった。夫々の電解メッキの析出速度から計算すると、およそ硫酸銅メッキ浴による第1導電性金属層の厚さはおよそ7μmで、スルファミン酸ニッケル浴による第2導電性金属層の厚さはおよそ5μmと計算される。
【0049】
次いで、第2導電性金属層をメルテックス株式会社のニッケル剥離液「メルストリップ950で、常温Niエッチング処理を行った。その結果、第1導電性金属層の線幅(A)が15μmに対して第2導電性金属層の線幅(B)がおよそ12μmとなった。
【0050】
配線回路を形成した導電性基板の面に、クラレ(株)製の液晶ポリエステルフィルム“ベクスター”CT−100N(厚さ100μm)を温度280〜300℃、圧力2MPaで積層した。そして、冷却後、導電性基材と液晶ポリエステルフィルムとを剥離したところ、液晶ポリエステル樹脂に配線回路が埋設された、浮き上がり、剥がれ等のない可撓性の回路基板が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る回路基板の縦断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明に係る他の回路基板の縦断面図である。
【図4】本発明に係る他の回路基板の縦断面図である。
【図5】本発明に係る他の回路基板の縦断面図である。
【図6】本発明に係る他の回路基板の縦断面図である。
【図7】本発明に係る他の回路基板の縦断面図である。
【図8】図1の回路基板の製造工程を示し、図8(a)は導電性基材上のレジスト膜に配線回路を形成する為の開孔を形成し状態を示す縦断面図、図8(b)は開孔内に第2導電性金属層を形成した状態を示す縦断面図、図8(c)は第2導電性金属層上に第1導電性金属層を形成した状態を示す縦断面図、図8(d)は第2導電性金属層の線幅を第1導電性金属層の線幅より狭めた状態を示す縦断面図、図8(e)は導電性基材上に可撓性絶縁基材を積層した状態を縦断面図、図8(f)は可撓性絶縁基材から導電性基材を分離して配線回路の一面を露出させた状態を示す縦断面図である。
【図9】従来の回路基板の縦断面図である。
【図10】従来の他の回路基板の縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1: 可撓性絶縁基材
2: 配線回路
3: レジスト膜
10:導電性基材
21:第2導電性金属層
22:第1導電性金属層
31:開孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性絶縁基材に配線回路が埋設された回路基板において、該配線回路を、少なくとも、線幅及び材質が互いに異なる第1導電性金属層と第2導電性金属層を積層して形成したことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
該配線回路を、該第1導電性金属層と該第2導電性金属層との積層で形成すると共に、該第1導電性金属層の線幅を、該第2導電性金属層のそれよりも大きく設け、かつ、該第2導電性金属層の一面と該可撓性絶縁基材の一面を面一にしたことを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
該第1導電性金属層の材質がニッケル又はニッケル合金で、該第2導電性金属層の材質が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
該第1導電性金属層の材質が銅又は銅合金で、該第2導電性金属層の材質がニッケル又はニッケル合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項5】
可撓性絶縁基材に配線回路を埋設した回路基板の製造方法において、下記(イ)から(ヘ)の工程を有することを特徴とする回路基板の製造方法。
(イ)導電性基材の一面上に形成されたレジスト膜に、配線回路を形成する為の開孔を形成する工程。
(ロ)該開孔内に第2導電性金属層を電解めっきにより形成する工程。
(ハ)該第2導電性金属層上に、該第2導電性金属層とは異なる材質の第1導電性金属層を電解めっきにより積層して配線回路を形成する工程。
(ニ)該レジスト膜を除去した後、湿式エッチングにより該第2導電性金属層の線幅を該第1導電性金属層の線幅より狭める工程。
(ホ)該(ニ)の工程の後で、該導電性基材の該配線回路が形成された一面上に可撓性絶縁基材を積層する工程。
(ヘ)該可撓性絶縁基材から該導電性基材を分離して該配線回路の一面を該可撓性絶縁基材の一面に露出させる工程。
【請求項6】
該第1導電性金属層の材質がニッケル又はニッケル合金で、該第2導電性金属層の材質が銅又は銅合金であることを特徴とする請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
該第1導電性金属層の材質が銅又は銅合金で、該第2導電性金属層の材質がニッケル又はニッケル合金であることを特徴とする請求項5に記載の回路基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−19321(P2006−19321A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192499(P2004−192499)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(594066132)レイテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】