回転ドラム式吸着装置
【課題】吸着処理と脱着処理とを同一装置内で同時並行して行うことができ、連続稼動させ得る構成簡素でコンパクトな回転ドラム式吸着装置を提供すること。
【解決手段】周上に吸着剤層２を備え、両端に隔壁１１を備え、回転可能に設けられた回転ドラム１と、回転ドラム１内へ原水Ａを供給する原水供給手段５と、ドラム上部外側から吸着剤層２に再生液Ｃを供給する再生液供給手段６と、ドラム内で吸着剤層２を通過した再生液を回収する再生液回収手段７と、ドラム上部外側から吸着剤層２に洗浄水Ｄを供給する再生液供給手段８と、ドラム内で吸着剤層２を通過した洗浄水を回収する再生液回収手段９と、から回転ドラム式吸着装置１０を構成した。
【解決手段】周上に吸着剤層２を備え、両端に隔壁１１を備え、回転可能に設けられた回転ドラム１と、回転ドラム１内へ原水Ａを供給する原水供給手段５と、ドラム上部外側から吸着剤層２に再生液Ｃを供給する再生液供給手段６と、ドラム内で吸着剤層２を通過した再生液を回収する再生液回収手段７と、ドラム上部外側から吸着剤層２に洗浄水Ｄを供給する再生液供給手段８と、ドラム内で吸着剤層２を通過した洗浄水を回収する再生液回収手段９と、から回転ドラム式吸着装置１０を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば、産業廃水、家庭廃水、或いは富栄養化した河川水、湖沼水等の原水から、目的とする汚濁物質を吸着除去する吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、活性炭やイオン交換樹脂を用いて廃水中の物質を吸着除去する技術としては、槽内に吸着剤を充填した吸着塔方式によるものが一般的である。しかしながら、吸着塔方式は、吸着剤層が破過した時点で吸着剤を取り替える必要があり、連続稼動できない難点があった。
【０００３】
そこで、現在までに、複数の吸着塔を備え、各吸着塔において吸着処理と脱着再生処理とを交互に繰り返して連続稼動を可能にする多段吸着塔装置が提案されている（例えば、特許文献１参照）。しかしながら、この多段吸着塔装置は、構成が複雑になり、また、大型化せざるを得ない難点があった。
【特許文献１】特開平９−３８４５１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、従来の吸着塔方式の吸着装置に上記ような難点があったことに鑑みて為されたもので、吸着処理と脱着処理とを同一装置内で同時並行して行うことができ、連続稼動させ得る構成簡素でコンパクトな回転ドラム式吸着装置を提供することを技術的課題とする。
【０００５】
また、本発明の他の技術的課題は、同一装置内で異なる吸脱着処理、或いは吸脱着処理の前処理として固液分離処理等を同時並行して行うことができる回転ドラム式吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、周上に吸着剤層を備え、両端に隔壁を備えて成る中空円筒体であって、円筒軸線と同軸の回転軸を水平にして回転可能に設けられた回転ドラムと、
前記回転ドラム内へ吸着処理すべき原水を供給する原水供給手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側に配設された再生液ノズルから前記吸着剤層へ、吸着質を脱着させるための再生液を供給する再生液供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記再生液を回収する再生液回収手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側で、かつ、前記再生液ノズルよりも該回転ドラムの回転下流側に配設された洗浄水ノズルから前記吸着剤層へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記洗浄水を回収する洗浄水回収手段と、を備えたことを特徴としている。
【０００７】
また、本発明は、前記回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、該他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の特性を有する吸着剤層または濾過材にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【０００８】
本発明に係る回転ドラム式吸着装置にあっては、同一装置内において吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を行うことができるので、構成簡素でコンパクトでありながら連続稼動させることができる。従来の吸着塔方式の場合、吸着塔内に充填した吸着剤層に原水や再生液を供給して吸脱着処理を行うのに対し、本発明に係る回転ドラム式吸着装置の場合には、吸着剤層を回転ドラムの周上に設けて吸着剤層自体を循環移動可能に構成し、回転ドラムの周上の各位置で、吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を同時並行して行うことができるので、構成簡素でコンパクトな連続稼動可能な吸着装置を提供することができる。
【０００９】
また、回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、この他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の吸着剤層または濾過材にすれば、同一装置内で異なる吸脱着処理、或いは吸脱着処理の前処理としての固液分離処理等を同時並行して行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０について、図１〜図３を参照しながら説明する。
【００１１】
回転ドラム式吸着装置１０は、図１及び図２に示すように、主として、周上に吸着剤層２を備えた回転ドラム１と、回転ドラム１内へ吸着処理すべき原水Ａを供給する原水供給手段５と、回転ドラム１の吸着剤層２へ脱着処理するための再生液Ｃを供給する再生液供給手段６と、吸着剤層２を通過した再生液Ｃを回収する再生液回収手段７と、回転ドラム１の吸着剤層２へ洗浄処理するための洗浄水Ｄを供給する洗浄水供給手段８と、吸着剤層２を通過した洗浄水Ｄを回収する洗浄水回収手段９と、から構成されている。
【００１２】
回転ドラム１は、略中空円筒形状に構成されており、円筒周上に横並び状態で１６分割に区分された複数の吸着剤層２を備えており、円筒両端にはそれぞれ、原水Ａを通さない円板形状の隔壁１１を備えている。各隔壁１１の中央には、回転ドラム１の円筒軸線と同心の中空軸１２がドラムの側方へ向けて突設されており、この中空軸１２を通じて回転ドラム１の内側空間とドラム外部とが連通している。また、この中空軸１２は、図示しない軸受手段により回転可能に軸受けされており、伝達ベルト１３を介して原動機１４に連結されている。このことで、回転ドラム１は、原動機１４により駆動され、水平な円筒軸線回りに連続回転する。
【００１３】
なお、本実施形態では、回転ドラム１の下方に、回転ドラム１の下部を囲むように、上方が開放した処理槽３が設けられている。この処理槽３は、回転ドラム１の吸着剤層２により吸着処理して得た処理水Ｂを一時的に貯留する。この処理槽３の側壁の所定高さ位置には、処理水Ｂを外部へ導くための処理水排出管３１が接続されており、この処理水排出管３１により処理水Ｂの貯留レベルを一定に保つことができる。
【００１４】
吸着剤層２は、原水Ａを通す網袋内に粒状の吸着剤を充填して、所定の厚みを保って構成されており、図１に示すように、隔壁１１と仕切板２１とによって区画された部分に着脱自在に固定されている。本実施形態では、吸着剤として、リン、窒素、フッ素等を吸着することができ、アルカリ溶液と接触させることにより容易にこれらの吸着質を脱着させ得る多孔質のオキシ水酸化鉄触媒を採用しているが、勿論これに限定されるものではなく、その他の多孔質金属酸化物や活性炭等を採用することもできる。また、例えば、金、銅等を吸着することができ、酸性溶液との接触によってこれらの吸着質を脱着させ得る有機高分子多孔質体を採用しても良い。このように、再生液との接触によって吸着質を脱着させ得る吸着剤であれば、吸着除去すべき吸着質に応じて、種々の吸着剤、イオン交換樹脂を採用することができる。
【００１５】
また、本実施形態では、回転ドラム１の外周に、複数のガイド４が設けられている。本実施形態のガイド４は、図３に示すように、回転ドラム１が備える一対の隔壁１１の外周部位１１１と、隣り合う一対の仕切板２１の外側部位２１１とから構成されており、この仕切板２１にて仕切られた複数の吸収剤層２毎に配設されている。このガイド４によって再生液供給手段６から供給される再生液Ｃ、または洗浄水供給手段８から供給される洗浄水Ｄを、吸着剤層２へ確実に導いて吸着剤層２と接触させることが可能となる。なお、本実施形態では、このようにガイド４を隔壁１１及び仕切板２１と一体に構成することによって構成の簡素化を図っているが、これら隔壁１１及び仕切板２１と別体のガイド板を配設することによってガイドを構成しても良い。また、必ずしも各吸収剤層２の位置に合わせてガイドを設けなくても良い。
【００１６】
更にまた、本実施形態では、回転ドラム１の内周において、上記仕切板２１の内側部位２１２を、回転ドラム１の軸心へ向けて吸着剤層２よりも突出させている。このことで、吸着剤層２を通過した再生液Ｃまたは洗浄水Ｄをそれぞれ、再生液回収手段７または洗浄水回収手段９へ導いて確実に回収させることが可能となる。
【００１７】
原水供給手段５は、図１及び図２に示すように、上記回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された原水供給管５１と、この原水供給管５１に接続された図示しない原水ポンプとから構成されている。原水供給管５１の先端の開口部は、回転ドラム１の内側空間に臨んでおり、後端側は回転ドラム１の外側で原水ポンプに接続されている。この原水ポンプを駆動することによって、原水Ａを回転ドラム１内へ連続供給することができる。
【００１８】
再生液供給手段６は、回転ドラム１の上部外側に配設された再生液ノズル６１と、この再生液ノズル６１に接続された再生液供給管６２と、この再生液供給管６２に接続された図示しない再生液ポンプと、から構成されている。この再生液ポンプを駆動することによって、再生液供給管６２を通じて再生液Ｃを再生液ノズル６１から吸着剤層２に散布することができる。
【００１９】
再生液回収手段７は、回転ドラム１内に配設された再生液ホッパー７１と、この再生液ホッパー７１の下部に接続され、回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された再生液排出管７２と、から構成されている。上記再生液供給手段６により供給され、吸着剤層２を通過して落下する再生液Ｃを、再生液ホッパー７１で受け、そして、再生液排出管７２を通じて回転ドラム１の外側へ導く。この再生液ホッパー７１は、ドラム外部において固定された再生液排出管７２の先端に支持されており、このことで、再生液ホッパー７１は、連続回転する回転ドラム１の内側空間において、回転せずに位置固定されている。また、本実施形態では、図３に示すように、再生液ホッパー７１は、その開口先端部を上記仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設されており、吸着剤層２から落下する再生液Ｃを確実に再生液ホッパー７１で受けることができる。
【００２０】
洗浄水供給手段８は、図１及び図２に示すように、回転ドラム１の上部外側で、かつ、上記再生液供給手段６の再生液ノズル６１よりも回転ドラム１の回転方向の下流側に配設された洗浄水ノズル８１と、この洗浄水ノズル８１に接続された洗浄水供給管８２と、この洗浄水供給管８２に接続された図示しない洗浄水ポンプと、から構成されている。この洗浄水ポンプを駆動することによって、洗浄水供給管８２を通じて洗浄水Ｄを洗浄水ノズル８１から吸着剤層２に散布することができる。
【００２１】
洗浄水回収手段９は、回転ドラム１内に配設された洗浄水ホッパー９１と、この洗浄水ホッパー９１の下部に接続され、回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された洗浄水排出管９２と、から構成されている。上記洗浄水供給手段８により供給され、吸着剤層２を通過して落下する洗浄液Ｄを、洗浄水ホッパー９１で受け、そして、洗浄水排出管９２を通じて回転ドラム１の外側へ導く。この洗浄水ホッパー９１は、ドラム外部において固定された洗浄水排出管９２の先端に支持されており、このことで、洗浄水ホッパー９１もまた、連続回転する回転ドラム１の内側空間において、回転せずに位置固定されている。この洗浄水ホッパー９１もまた、その開口先端部を上記仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設されており、吸着剤層２から落下する洗浄水Ｄを確実に洗浄水ホッパー９１で受けることができる。
【００２２】
以下に、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０による原水Ａの吸着処理について説明する。
【００２３】
まず、回転ドラム１を一方向へ連続回転させながら原水供給手段５により回転ドラム１内へ原水Ａを連続的に供給する。ドラム内に供給された原水Ａは、回転ドラム１の下部に一時的に溜まり、図１に示すように、原水Ａの水面レベルと処理水Ｂの貯留レベルとのレベル差Ｈに応じて吸着剤層２を通って回転ドラム１の内側から外側へ移動する。このように、回転ドラム１の下部において原水Ａが吸着剤層２を通過する過程で、吸着剤層２によって原水Ａ中の吸着質を吸着し、原水Ａから吸着質を除去する。吸着質を除去して得られた処理水Ｂは、処理槽３に一時貯留され、処理水排出管３１を通して外部へ導かれる。
【００２４】
次に、回転ドラム１の上部において、再生液供給手段６により供給された再生液Ｃが吸着剤層２を通過する過程で、再生液Ｃによって吸着剤層２から吸着質を脱着し、この吸着質を再生液Ｃと共に再生液回収手段７により回収する。即ち、ドラム下部で吸着質を吸着した吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム上部へ移動し、再生液供給手段６の再生液ノズル６１から連続散布されている再生液Ｃと接触する。このように、回転ドラム１の上部において供給された再生液Ｃが吸着剤層２を通過する過程で、この再生液Ｃにより吸着剤層２から吸着質を脱着させる。吸着剤層２から脱着した吸着質は、再生液Ｃと共に吸着剤層２を通過してドラム内へ落下し、再生液回収手段７によって回収される。なお、本実施形態では、吸着剤として、リン、窒素、フッ素等を吸着可能な多孔質オキシ水酸化鉄を使用しているので、吸着剤層２を脱着再生させる再生液Ｃとして、アルカリ溶液を用いることができる。吸着剤として、金、銅等を吸着可能な有機高分子多孔質体を使用する場合は、再生液として、酸性溶液を用いることができる。
【００２５】
次に、回転ドラム１の上部において、洗浄水供給手段８により供給された洗浄水Ｄが吸着剤層２を通過する過程で、洗浄水Ｄによって吸着剤層２から再生液Ｃを洗い落とし、再生液Ｃを洗浄水Ｄと共に洗浄水回収手段９により回収する。即ち、脱着処理された吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム上部を更に移動し、洗浄水供給手段８の洗浄水ノズル８１から連続散布されている洗浄水Ｄと接触する。回転ドラム１の上部において供給された洗浄水Ｄが吸着剤層２を通過する過程で、この洗浄水Ｄにより吸着剤層２から上記再生液Ｃを洗い落とす。吸着剤層２から洗い落とされた再生液Ｃは、洗浄水Ｄと共に吸着剤層２を通過してドラム内へ落下し、洗浄水回収手段９により回収される。この洗浄水Ｄとしては、上述した処理水Ｂを用いることができる。
【００２６】
再生液Ｃにより再生処理され、その後、洗浄水Ｄにより洗浄処理された吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム下部へ移動し、再び原水Ａと接触し吸着処理が行われる。
【００２７】
このように、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０にあっては、同一装置内において吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を行うことができるので、構成簡素でコンパクトでありながら連続稼動させることができる。従来の吸着塔方式の場合、吸着塔内に充填した吸着剤層に原水や再生液を供給して吸脱着処理を行うのに対し、本実施形態の回転ドラム式吸着装置の場合には、吸着剤層を回転ドラム１の周上に設けることで吸着剤層自体を循環移動可能に構成し、回転ドラムの周上の各位置で、吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を同時並行的に行うことができるので、構成簡素でコンパクトな連続稼動可能な吸着装置を提供することができる。
【００２８】
また、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０にあっては、回転ドラム１の外周にガイド４を設けているので、再生液ノズル６１から供給散布された再生液Ｃや、洗浄水ノズル８１から供給散布された洗浄水Ｄが、回転ドラム１の外周や隔壁１１等を伝って処理槽３の処理水Ｂに混入したり、回転ドラム１内の原水Ａに混入したりすることを確実に防止することができる。
【００２９】
つまり、回転ドラム１の吸着剤層２において、吸着脱着処理を連続的に行うためには、再生液Ｃを各吸着剤層２へ供給する再生液供給手段６だけでなく、この再生液Ｃを洗い落とす洗浄水Ｄを供給する洗浄水供給手段８を設ける必要があり、しかも、吸着剤層２での最小限の脱着時間を確保するために、再生液供給手段６に対し、ある程度の間隔をあけて回転下流側に洗浄水供給手段８を設けなければならない。したがって、回転ドラム１を余程、大径化しない限り、再生液供給手段６及び洗浄水供給手段８の少なくとも何れか一方は、回転ドラム１の傾斜周面に対向させて配置しなければならず、ガイド４を設けていないと、処理能力を向上させるべく吸着剤層２に充分な量の再生液Ｃ等を供給しようとする場合ほど、再生液Ｃ等が回転ドラム１の傾斜外周面上を流下してしまい、処理槽３の処理水Ｂに混入する弊害があったのである。本実施形態では、回転ドラム１の外周にガイド４を設けることによって、再生液Ｃ等の処理水Ｂや原水Ａへの混入を解決し、更に再生液Ｃ等の供給時の飛散を防止している。また、本実施形態では、このガイド４を回転ドラム１の隔壁１１及び仕切板２１と一体に構成しているので、構成の簡素化を図ると同時に、回転ドラム１の強度を向上させることができる。
【００３０】
更にまた、本実施形態では、仕切板２１の内側部位２１２を吸着剤層２よりも突出させているので、吸着剤層２を通過した再生液Ｃ等が回転ドラム１内の原水Ａに混入するのを防ぐことができる。また、この突出した仕切板２１の内側部位２１２が、回転ドラム１の回転運動によってドラム下部の原水Ａを積極的に攪拌するので、原水Ａと吸着剤層２とを効率的に接触させることができ、吸着処理能率を向上させることができる。
【００３１】
更にまた、本実施形態では、再生液回収手段７の再生液ホッパー７１の先端、及び洗浄水回収手段８の洗浄水ホッパー８１の先端を、仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設しているので、吸着剤層２を通過して落下する再生液Ｃ等を確実に回収することができ、このことによっても、再生液Ｃ等の原水Ａへの混入を防ぐことができる。
【００３２】
以上、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０について説明したが、本発明は、その他の形態でも実施することができる。
【００３３】
例えば、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の回転軸である中空軸１２と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を、他の吸着特性を有する吸着剤層にしても良い。このことで、装置全体として異なる吸脱着処理を同時並行して行うことが可能となる。また、複数の回転ドラムの回転軸を共通化できるので、この共通の中空軸を、伝達ベルト等を介して一台の原動機で回転駆動すれば、更なる構成の簡素化、コンパクト化を図ることができ、動力エネルギーの節約になる。
【００３４】
また、図４に示すように、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の回転軸である中空軸１２と同軸上に隣接して他の回転ドラム式固液分離装置２０を設けても良い。図４に示す固液分離装置２０は、回転ドラム式吸着装置１０による原水Ａの吸着処理の前処理として、廃水Ｅから浮遊物等を濾過除去するものであり、固液分離装置２０により濾過処理された濾過水Ｆが、原水Ａとして回転ドラム式吸着装置１０へ供給される。この固液分離装置２０は、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の吸着剤層２の代わりに、一般的布帛等から成る濾過材２０２を設けたものであり、回転ドラム２０１の構成は、回転ドラム式吸着装置１０のものと同様である。図４において、符号２０５は、回転ドラム２０１内へ廃水Ｅを供給する廃水供給手段の供給管であり、符号２０８は、ドラム上部においてドラム外側から濾過材２０２に対し逆洗水を噴射する逆洗水供給手段であり、符号２０９は、逆洗水の噴射により濾過材２０２から脱離した固体成分を回収するための逆洗水回収手段の排出管である。なお、回転ドラム式の固液分離装置として、例えば、特公平４−９０８１号公報、特開平７−１３６４１８号公報等に記載の従来公知の固液分離装置を適用することもできる。
【００３５】
このことによって、装置全体として吸脱着処理の前処理としての固液分離処理を同時並行して行うことが可能となり、エネルギー的、敷地面積的、操作性等の面で有利となる。ここでは、二つの回転ドラムを隣接させた例を説明しているが、勿論、三つ以上の回転ドラムを設けても良く、各回転ドラムによって浮遊物除去、アニオン除去、カチオン除去等を同時並行処理するようにしても良い。本発明に係る回転ドラム式吸着装置は、その構成が極めて簡素でコンパクトであるので、他の廃水処理装置との組み合わせも容易であり、多目的の用途展開が可能である。
【００３６】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。同一の作用または効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】本発明に係る回転ドラム式吸着装置の一部破断側面図である。
【図２】同装置の概略平面図である。
【図３】同装置の回転ドラムの一部破断拡大側面図である。
【図４】本発明に係る他の回転ドラム式吸着装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【００３８】
１０ 回転ドラム式吸着装置
１ 回転ドラム
１１ 隔壁
１１１ 隔壁の外周部位
１２ 中空軸（回転軸）
２ 吸着剤層
２０２ 濾過材
２１ 仕切板
２１１ 仕切板の外側部位
２１２ 仕切板の内側部位
３ 処理槽
４ ガイド
５ 原水供給手段
６ 再生液供給手段
６１ 再生液ノズル
７ 再生液回収手段
７１ 再生液ホッパー
８ 洗浄水供給手段
８１ 洗浄水ノズル
９ 洗浄水回収手段
９１ 洗浄水ホッパー
Ａ 原水
Ｂ 処理水
Ｃ 再生液
Ｄ 洗浄水
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば、産業廃水、家庭廃水、或いは富栄養化した河川水、湖沼水等の原水から、目的とする汚濁物質を吸着除去する吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、活性炭やイオン交換樹脂を用いて廃水中の物質を吸着除去する技術としては、槽内に吸着剤を充填した吸着塔方式によるものが一般的である。しかしながら、吸着塔方式は、吸着剤層が破過した時点で吸着剤を取り替える必要があり、連続稼動できない難点があった。
【０００３】
そこで、現在までに、複数の吸着塔を備え、各吸着塔において吸着処理と脱着再生処理とを交互に繰り返して連続稼動を可能にする多段吸着塔装置が提案されている（例えば、特許文献１参照）。しかしながら、この多段吸着塔装置は、構成が複雑になり、また、大型化せざるを得ない難点があった。
【特許文献１】特開平９−３８４５１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、従来の吸着塔方式の吸着装置に上記ような難点があったことに鑑みて為されたもので、吸着処理と脱着処理とを同一装置内で同時並行して行うことができ、連続稼動させ得る構成簡素でコンパクトな回転ドラム式吸着装置を提供することを技術的課題とする。
【０００５】
また、本発明の他の技術的課題は、同一装置内で異なる吸脱着処理、或いは吸脱着処理の前処理として固液分離処理等を同時並行して行うことができる回転ドラム式吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、周上に吸着剤層を備え、両端に隔壁を備えて成る中空円筒体であって、円筒軸線と同軸の回転軸を水平にして回転可能に設けられた回転ドラムと、
前記回転ドラム内へ吸着処理すべき原水を供給する原水供給手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側に配設された再生液ノズルから前記吸着剤層へ、吸着質を脱着させるための再生液を供給する再生液供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記再生液を回収する再生液回収手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側で、かつ、前記再生液ノズルよりも該回転ドラムの回転下流側に配設された洗浄水ノズルから前記吸着剤層へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記洗浄水を回収する洗浄水回収手段と、を備えたことを特徴としている。
【０００７】
また、本発明は、前記回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、該他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の特性を有する吸着剤層または濾過材にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【０００８】
本発明に係る回転ドラム式吸着装置にあっては、同一装置内において吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を行うことができるので、構成簡素でコンパクトでありながら連続稼動させることができる。従来の吸着塔方式の場合、吸着塔内に充填した吸着剤層に原水や再生液を供給して吸脱着処理を行うのに対し、本発明に係る回転ドラム式吸着装置の場合には、吸着剤層を回転ドラムの周上に設けて吸着剤層自体を循環移動可能に構成し、回転ドラムの周上の各位置で、吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を同時並行して行うことができるので、構成簡素でコンパクトな連続稼動可能な吸着装置を提供することができる。
【０００９】
また、回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、この他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の吸着剤層または濾過材にすれば、同一装置内で異なる吸脱着処理、或いは吸脱着処理の前処理としての固液分離処理等を同時並行して行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０について、図１〜図３を参照しながら説明する。
【００１１】
回転ドラム式吸着装置１０は、図１及び図２に示すように、主として、周上に吸着剤層２を備えた回転ドラム１と、回転ドラム１内へ吸着処理すべき原水Ａを供給する原水供給手段５と、回転ドラム１の吸着剤層２へ脱着処理するための再生液Ｃを供給する再生液供給手段６と、吸着剤層２を通過した再生液Ｃを回収する再生液回収手段７と、回転ドラム１の吸着剤層２へ洗浄処理するための洗浄水Ｄを供給する洗浄水供給手段８と、吸着剤層２を通過した洗浄水Ｄを回収する洗浄水回収手段９と、から構成されている。
【００１２】
回転ドラム１は、略中空円筒形状に構成されており、円筒周上に横並び状態で１６分割に区分された複数の吸着剤層２を備えており、円筒両端にはそれぞれ、原水Ａを通さない円板形状の隔壁１１を備えている。各隔壁１１の中央には、回転ドラム１の円筒軸線と同心の中空軸１２がドラムの側方へ向けて突設されており、この中空軸１２を通じて回転ドラム１の内側空間とドラム外部とが連通している。また、この中空軸１２は、図示しない軸受手段により回転可能に軸受けされており、伝達ベルト１３を介して原動機１４に連結されている。このことで、回転ドラム１は、原動機１４により駆動され、水平な円筒軸線回りに連続回転する。
【００１３】
なお、本実施形態では、回転ドラム１の下方に、回転ドラム１の下部を囲むように、上方が開放した処理槽３が設けられている。この処理槽３は、回転ドラム１の吸着剤層２により吸着処理して得た処理水Ｂを一時的に貯留する。この処理槽３の側壁の所定高さ位置には、処理水Ｂを外部へ導くための処理水排出管３１が接続されており、この処理水排出管３１により処理水Ｂの貯留レベルを一定に保つことができる。
【００１４】
吸着剤層２は、原水Ａを通す網袋内に粒状の吸着剤を充填して、所定の厚みを保って構成されており、図１に示すように、隔壁１１と仕切板２１とによって区画された部分に着脱自在に固定されている。本実施形態では、吸着剤として、リン、窒素、フッ素等を吸着することができ、アルカリ溶液と接触させることにより容易にこれらの吸着質を脱着させ得る多孔質のオキシ水酸化鉄触媒を採用しているが、勿論これに限定されるものではなく、その他の多孔質金属酸化物や活性炭等を採用することもできる。また、例えば、金、銅等を吸着することができ、酸性溶液との接触によってこれらの吸着質を脱着させ得る有機高分子多孔質体を採用しても良い。このように、再生液との接触によって吸着質を脱着させ得る吸着剤であれば、吸着除去すべき吸着質に応じて、種々の吸着剤、イオン交換樹脂を採用することができる。
【００１５】
また、本実施形態では、回転ドラム１の外周に、複数のガイド４が設けられている。本実施形態のガイド４は、図３に示すように、回転ドラム１が備える一対の隔壁１１の外周部位１１１と、隣り合う一対の仕切板２１の外側部位２１１とから構成されており、この仕切板２１にて仕切られた複数の吸収剤層２毎に配設されている。このガイド４によって再生液供給手段６から供給される再生液Ｃ、または洗浄水供給手段８から供給される洗浄水Ｄを、吸着剤層２へ確実に導いて吸着剤層２と接触させることが可能となる。なお、本実施形態では、このようにガイド４を隔壁１１及び仕切板２１と一体に構成することによって構成の簡素化を図っているが、これら隔壁１１及び仕切板２１と別体のガイド板を配設することによってガイドを構成しても良い。また、必ずしも各吸収剤層２の位置に合わせてガイドを設けなくても良い。
【００１６】
更にまた、本実施形態では、回転ドラム１の内周において、上記仕切板２１の内側部位２１２を、回転ドラム１の軸心へ向けて吸着剤層２よりも突出させている。このことで、吸着剤層２を通過した再生液Ｃまたは洗浄水Ｄをそれぞれ、再生液回収手段７または洗浄水回収手段９へ導いて確実に回収させることが可能となる。
【００１７】
原水供給手段５は、図１及び図２に示すように、上記回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された原水供給管５１と、この原水供給管５１に接続された図示しない原水ポンプとから構成されている。原水供給管５１の先端の開口部は、回転ドラム１の内側空間に臨んでおり、後端側は回転ドラム１の外側で原水ポンプに接続されている。この原水ポンプを駆動することによって、原水Ａを回転ドラム１内へ連続供給することができる。
【００１８】
再生液供給手段６は、回転ドラム１の上部外側に配設された再生液ノズル６１と、この再生液ノズル６１に接続された再生液供給管６２と、この再生液供給管６２に接続された図示しない再生液ポンプと、から構成されている。この再生液ポンプを駆動することによって、再生液供給管６２を通じて再生液Ｃを再生液ノズル６１から吸着剤層２に散布することができる。
【００１９】
再生液回収手段７は、回転ドラム１内に配設された再生液ホッパー７１と、この再生液ホッパー７１の下部に接続され、回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された再生液排出管７２と、から構成されている。上記再生液供給手段６により供給され、吸着剤層２を通過して落下する再生液Ｃを、再生液ホッパー７１で受け、そして、再生液排出管７２を通じて回転ドラム１の外側へ導く。この再生液ホッパー７１は、ドラム外部において固定された再生液排出管７２の先端に支持されており、このことで、再生液ホッパー７１は、連続回転する回転ドラム１の内側空間において、回転せずに位置固定されている。また、本実施形態では、図３に示すように、再生液ホッパー７１は、その開口先端部を上記仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設されており、吸着剤層２から落下する再生液Ｃを確実に再生液ホッパー７１で受けることができる。
【００２０】
洗浄水供給手段８は、図１及び図２に示すように、回転ドラム１の上部外側で、かつ、上記再生液供給手段６の再生液ノズル６１よりも回転ドラム１の回転方向の下流側に配設された洗浄水ノズル８１と、この洗浄水ノズル８１に接続された洗浄水供給管８２と、この洗浄水供給管８２に接続された図示しない洗浄水ポンプと、から構成されている。この洗浄水ポンプを駆動することによって、洗浄水供給管８２を通じて洗浄水Ｄを洗浄水ノズル８１から吸着剤層２に散布することができる。
【００２１】
洗浄水回収手段９は、回転ドラム１内に配設された洗浄水ホッパー９１と、この洗浄水ホッパー９１の下部に接続され、回転ドラム１の中空軸１２内に挿通された洗浄水排出管９２と、から構成されている。上記洗浄水供給手段８により供給され、吸着剤層２を通過して落下する洗浄液Ｄを、洗浄水ホッパー９１で受け、そして、洗浄水排出管９２を通じて回転ドラム１の外側へ導く。この洗浄水ホッパー９１は、ドラム外部において固定された洗浄水排出管９２の先端に支持されており、このことで、洗浄水ホッパー９１もまた、連続回転する回転ドラム１の内側空間において、回転せずに位置固定されている。この洗浄水ホッパー９１もまた、その開口先端部を上記仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設されており、吸着剤層２から落下する洗浄水Ｄを確実に洗浄水ホッパー９１で受けることができる。
【００２２】
以下に、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０による原水Ａの吸着処理について説明する。
【００２３】
まず、回転ドラム１を一方向へ連続回転させながら原水供給手段５により回転ドラム１内へ原水Ａを連続的に供給する。ドラム内に供給された原水Ａは、回転ドラム１の下部に一時的に溜まり、図１に示すように、原水Ａの水面レベルと処理水Ｂの貯留レベルとのレベル差Ｈに応じて吸着剤層２を通って回転ドラム１の内側から外側へ移動する。このように、回転ドラム１の下部において原水Ａが吸着剤層２を通過する過程で、吸着剤層２によって原水Ａ中の吸着質を吸着し、原水Ａから吸着質を除去する。吸着質を除去して得られた処理水Ｂは、処理槽３に一時貯留され、処理水排出管３１を通して外部へ導かれる。
【００２４】
次に、回転ドラム１の上部において、再生液供給手段６により供給された再生液Ｃが吸着剤層２を通過する過程で、再生液Ｃによって吸着剤層２から吸着質を脱着し、この吸着質を再生液Ｃと共に再生液回収手段７により回収する。即ち、ドラム下部で吸着質を吸着した吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム上部へ移動し、再生液供給手段６の再生液ノズル６１から連続散布されている再生液Ｃと接触する。このように、回転ドラム１の上部において供給された再生液Ｃが吸着剤層２を通過する過程で、この再生液Ｃにより吸着剤層２から吸着質を脱着させる。吸着剤層２から脱着した吸着質は、再生液Ｃと共に吸着剤層２を通過してドラム内へ落下し、再生液回収手段７によって回収される。なお、本実施形態では、吸着剤として、リン、窒素、フッ素等を吸着可能な多孔質オキシ水酸化鉄を使用しているので、吸着剤層２を脱着再生させる再生液Ｃとして、アルカリ溶液を用いることができる。吸着剤として、金、銅等を吸着可能な有機高分子多孔質体を使用する場合は、再生液として、酸性溶液を用いることができる。
【００２５】
次に、回転ドラム１の上部において、洗浄水供給手段８により供給された洗浄水Ｄが吸着剤層２を通過する過程で、洗浄水Ｄによって吸着剤層２から再生液Ｃを洗い落とし、再生液Ｃを洗浄水Ｄと共に洗浄水回収手段９により回収する。即ち、脱着処理された吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム上部を更に移動し、洗浄水供給手段８の洗浄水ノズル８１から連続散布されている洗浄水Ｄと接触する。回転ドラム１の上部において供給された洗浄水Ｄが吸着剤層２を通過する過程で、この洗浄水Ｄにより吸着剤層２から上記再生液Ｃを洗い落とす。吸着剤層２から洗い落とされた再生液Ｃは、洗浄水Ｄと共に吸着剤層２を通過してドラム内へ落下し、洗浄水回収手段９により回収される。この洗浄水Ｄとしては、上述した処理水Ｂを用いることができる。
【００２６】
再生液Ｃにより再生処理され、その後、洗浄水Ｄにより洗浄処理された吸着剤層２は、回転ドラム１の連続回転運動によってドラム下部へ移動し、再び原水Ａと接触し吸着処理が行われる。
【００２７】
このように、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０にあっては、同一装置内において吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を行うことができるので、構成簡素でコンパクトでありながら連続稼動させることができる。従来の吸着塔方式の場合、吸着塔内に充填した吸着剤層に原水や再生液を供給して吸脱着処理を行うのに対し、本実施形態の回転ドラム式吸着装置の場合には、吸着剤層を回転ドラム１の周上に設けることで吸着剤層自体を循環移動可能に構成し、回転ドラムの周上の各位置で、吸着処理、脱着処理、及び洗浄処理を同時並行的に行うことができるので、構成簡素でコンパクトな連続稼動可能な吸着装置を提供することができる。
【００２８】
また、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０にあっては、回転ドラム１の外周にガイド４を設けているので、再生液ノズル６１から供給散布された再生液Ｃや、洗浄水ノズル８１から供給散布された洗浄水Ｄが、回転ドラム１の外周や隔壁１１等を伝って処理槽３の処理水Ｂに混入したり、回転ドラム１内の原水Ａに混入したりすることを確実に防止することができる。
【００２９】
つまり、回転ドラム１の吸着剤層２において、吸着脱着処理を連続的に行うためには、再生液Ｃを各吸着剤層２へ供給する再生液供給手段６だけでなく、この再生液Ｃを洗い落とす洗浄水Ｄを供給する洗浄水供給手段８を設ける必要があり、しかも、吸着剤層２での最小限の脱着時間を確保するために、再生液供給手段６に対し、ある程度の間隔をあけて回転下流側に洗浄水供給手段８を設けなければならない。したがって、回転ドラム１を余程、大径化しない限り、再生液供給手段６及び洗浄水供給手段８の少なくとも何れか一方は、回転ドラム１の傾斜周面に対向させて配置しなければならず、ガイド４を設けていないと、処理能力を向上させるべく吸着剤層２に充分な量の再生液Ｃ等を供給しようとする場合ほど、再生液Ｃ等が回転ドラム１の傾斜外周面上を流下してしまい、処理槽３の処理水Ｂに混入する弊害があったのである。本実施形態では、回転ドラム１の外周にガイド４を設けることによって、再生液Ｃ等の処理水Ｂや原水Ａへの混入を解決し、更に再生液Ｃ等の供給時の飛散を防止している。また、本実施形態では、このガイド４を回転ドラム１の隔壁１１及び仕切板２１と一体に構成しているので、構成の簡素化を図ると同時に、回転ドラム１の強度を向上させることができる。
【００３０】
更にまた、本実施形態では、仕切板２１の内側部位２１２を吸着剤層２よりも突出させているので、吸着剤層２を通過した再生液Ｃ等が回転ドラム１内の原水Ａに混入するのを防ぐことができる。また、この突出した仕切板２１の内側部位２１２が、回転ドラム１の回転運動によってドラム下部の原水Ａを積極的に攪拌するので、原水Ａと吸着剤層２とを効率的に接触させることができ、吸着処理能率を向上させることができる。
【００３１】
更にまた、本実施形態では、再生液回収手段７の再生液ホッパー７１の先端、及び洗浄水回収手段８の洗浄水ホッパー８１の先端を、仕切板２１の内側部位２１２に接近させて配設しているので、吸着剤層２を通過して落下する再生液Ｃ等を確実に回収することができ、このことによっても、再生液Ｃ等の原水Ａへの混入を防ぐことができる。
【００３２】
以上、本実施形態の回転ドラム式吸着装置１０について説明したが、本発明は、その他の形態でも実施することができる。
【００３３】
例えば、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の回転軸である中空軸１２と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を、他の吸着特性を有する吸着剤層にしても良い。このことで、装置全体として異なる吸脱着処理を同時並行して行うことが可能となる。また、複数の回転ドラムの回転軸を共通化できるので、この共通の中空軸を、伝達ベルト等を介して一台の原動機で回転駆動すれば、更なる構成の簡素化、コンパクト化を図ることができ、動力エネルギーの節約になる。
【００３４】
また、図４に示すように、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の回転軸である中空軸１２と同軸上に隣接して他の回転ドラム式固液分離装置２０を設けても良い。図４に示す固液分離装置２０は、回転ドラム式吸着装置１０による原水Ａの吸着処理の前処理として、廃水Ｅから浮遊物等を濾過除去するものであり、固液分離装置２０により濾過処理された濾過水Ｆが、原水Ａとして回転ドラム式吸着装置１０へ供給される。この固液分離装置２０は、回転ドラム式吸着装置１０の回転ドラム１の吸着剤層２の代わりに、一般的布帛等から成る濾過材２０２を設けたものであり、回転ドラム２０１の構成は、回転ドラム式吸着装置１０のものと同様である。図４において、符号２０５は、回転ドラム２０１内へ廃水Ｅを供給する廃水供給手段の供給管であり、符号２０８は、ドラム上部においてドラム外側から濾過材２０２に対し逆洗水を噴射する逆洗水供給手段であり、符号２０９は、逆洗水の噴射により濾過材２０２から脱離した固体成分を回収するための逆洗水回収手段の排出管である。なお、回転ドラム式の固液分離装置として、例えば、特公平４−９０８１号公報、特開平７−１３６４１８号公報等に記載の従来公知の固液分離装置を適用することもできる。
【００３５】
このことによって、装置全体として吸脱着処理の前処理としての固液分離処理を同時並行して行うことが可能となり、エネルギー的、敷地面積的、操作性等の面で有利となる。ここでは、二つの回転ドラムを隣接させた例を説明しているが、勿論、三つ以上の回転ドラムを設けても良く、各回転ドラムによって浮遊物除去、アニオン除去、カチオン除去等を同時並行処理するようにしても良い。本発明に係る回転ドラム式吸着装置は、その構成が極めて簡素でコンパクトであるので、他の廃水処理装置との組み合わせも容易であり、多目的の用途展開が可能である。
【００３６】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。同一の作用または効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】本発明に係る回転ドラム式吸着装置の一部破断側面図である。
【図２】同装置の概略平面図である。
【図３】同装置の回転ドラムの一部破断拡大側面図である。
【図４】本発明に係る他の回転ドラム式吸着装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【００３８】
１０ 回転ドラム式吸着装置
１ 回転ドラム
１１ 隔壁
１１１ 隔壁の外周部位
１２ 中空軸（回転軸）
２ 吸着剤層
２０２ 濾過材
２１ 仕切板
２１１ 仕切板の外側部位
２１２ 仕切板の内側部位
３ 処理槽
４ ガイド
５ 原水供給手段
６ 再生液供給手段
６１ 再生液ノズル
７ 再生液回収手段
７１ 再生液ホッパー
８ 洗浄水供給手段
８１ 洗浄水ノズル
９ 洗浄水回収手段
９１ 洗浄水ホッパー
Ａ 原水
Ｂ 処理水
Ｃ 再生液
Ｄ 洗浄水
【特許請求の範囲】
【請求項１】
周上に吸着剤層を備え、両端に隔壁を備えて成る中空円筒体であって、円筒軸線と同軸の回転軸を水平にして回転可能に設けられた回転ドラムと、
前記回転ドラム内へ吸着処理すべき原水を供給する原水供給手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側に配設された再生液ノズルから前記吸着剤層へ、吸着質を脱着させるための再生液を供給する再生液供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記再生液を回収する再生液回収手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側で、かつ、前記再生液ノズルよりも該回転ドラムの回転下流側に配設された洗浄水ノズルから前記吸着剤層へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記洗浄水を回収する洗浄水回収手段と、を備えたことを特徴とする回転ドラム式吸着装置。
【請求項２】
前記回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、該他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の特性を有する吸着剤層または濾過材にした請求項１記載の回転ドラム式吸着装置。
【請求項１】
周上に吸着剤層を備え、両端に隔壁を備えて成る中空円筒体であって、円筒軸線と同軸の回転軸を水平にして回転可能に設けられた回転ドラムと、
前記回転ドラム内へ吸着処理すべき原水を供給する原水供給手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側に配設された再生液ノズルから前記吸着剤層へ、吸着質を脱着させるための再生液を供給する再生液供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記再生液を回収する再生液回収手段と、
前記回転ドラムの上部において、該回転ドラムの外側で、かつ、前記再生液ノズルよりも該回転ドラムの回転下流側に配設された洗浄水ノズルから前記吸着剤層へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記回転ドラム内において、前記吸着剤層を通過した前記洗浄水を回収する洗浄水回収手段と、を備えたことを特徴とする回転ドラム式吸着装置。
【請求項２】
前記回転ドラムの回転軸と同軸上に隣接して他の回転ドラム式吸着装置を設け、該他の回転ドラム式吸着装置の吸着剤層を他の特性を有する吸着剤層または濾過材にした請求項１記載の回転ドラム式吸着装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００７−１３０５７６（Ｐ２００７−１３０５７６Ａ）
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３２６２０４（Ｐ２００５−３２６２０４）
【出願日】平成１７年１１月１０日（２００５．１１．１０）
【新規性喪失の例外の表示】特許法第３０条第１項適用申請有り 平成１７年１１月２日 独立行政法人科学技術振興機構主催の「地域結集型発研究成果移転フェア」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第３０条第３項適用申請有り ２００５年１０月１９日から２１日 滋賀環境ビジネスメッセ実行委員会主催の「びわ湖環境ビジネスメッセ２００５（第８回滋賀環境ビジネスメッセ）」に出品
【出願人】（５９９１００１９８）財団法人 滋賀県産業支援プラザ (12)
【出願人】（５０３３６０１１５）独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月１０日（２００５．１１．１０）
【新規性喪失の例外の表示】特許法第３０条第１項適用申請有り 平成１７年１１月２日 独立行政法人科学技術振興機構主催の「地域結集型発研究成果移転フェア」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第３０条第３項適用申請有り ２００５年１０月１９日から２１日 滋賀環境ビジネスメッセ実行委員会主催の「びわ湖環境ビジネスメッセ２００５（第８回滋賀環境ビジネスメッセ）」に出品
【出願人】（５９９１００１９８）財団法人 滋賀県産業支援プラザ (12)
【出願人】（５０３３６０１１５）独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Ｆターム（参考）】
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