説明

回転力伝達装置

【課題】昇降機能付き搬送車における回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構の入力軸との連結動作の信頼性が高い回転力伝達装置を提供する。
【解決手段】昇降機能付き搬送車1の基体3の側端部に、入力軸20に連結された被駆動回転盤12を設け、搬送経路の所定位置において、被駆動回転盤12の回転中心軸B方向が略軸芯方向となるように配置され、軸芯方向に進退可能に支持された軸体10、軸体10の先端に被駆動回転盤12に対向するように取り付けられた駆動回転盤11、軸体10を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータ7、軸体10を回転中心軸Aまわりに回転させる回転アクチュエータを備え、被駆動回転盤12に回転中心軸Bから径方向に離間した係合孔を形成し、駆動回転盤11に前記係合孔に遊嵌する係合ピン21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構を有し、前記上下方向の直線運動により被搬送物を昇降させることができる昇降機能付き搬送車に対して、搬送経路の所定位置に配設され、前記入力軸との連結及びその解除が可能であり、前記入力軸と連結された状態で回転力を伝達して前記変換機構を駆動する回転力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば艤装工場の自動車組立ラインにおける内装品等を組み付けるトリム工程又は外装品等を組み付けるファイナル工程等において、部品組み付け作業に適した高さに被搬送物である車体を昇降させることができる昇降機能付き搬送台車が使用される。
このような昇降機能付き搬送台車に用いられる回転力伝達装置として、搬送経路の所定位置で台車を停止させ、位置決めピンを位置決めシリンダにより上昇させて基台の位置決め孔に嵌合して台車を位置決めした状態で、搬送経路の所定位置のピット内に配設された昇降駆動源を昇降用エアシリンダにより上昇させ、昇降駆動源の出力軸に連結されたソケット連結部を基台側の入力軸に連結し、この入力軸に伝達される昇降駆動源の回転力により伝達機構を介して基台上のガイドポストに内蔵したボールねじ軸を回転させてボールねじのナットとともに受部材を昇降させ、受部材が所望の高さとなった状態で、昇降駆動源を昇降用エアシリンダにより下降させてソケット連結部と入力軸との連結を解除するとともに、位置決めピンを位置決めシリンダにより下降させて基台の位置決め孔から抜き取り、位置決めピンと位置決め孔との嵌合を解除するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−225476号公報(第1−2図、第6−8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような回転力伝達装置は、基台側の入力軸に対してソケット連結部を進退させて連結及びその解除を行う構成であるため、前記連結動作の信頼性が低下する場合があり、特に前記入力軸が水平である場合に特許文献1と同様の構成を適用すると、水平の入力軸に向かってソケット連結部が水平方向に進退するため、重力によるたわみ等の影響により前記連結動作の信頼性の低下が顕著になる。
その上、基台側の入力軸と昇降駆動源側のソケット連結部とを連結して回転力を伝達するために、昇降機能付き搬送台車を停止させる必要がある。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、昇降機能付き搬送車における回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構の入力軸(昇降機能付き搬送車の基体側の入力軸)と駆動側の出力軸との連結動作の信頼性が高く、特に前記入力軸が水平である場合であっても前記連結動作の信頼性が低下することがなく、前記連結動作のために搬送車を停止させる必要がない回転力伝達装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転力伝達装置は、前記課題解決のために、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構を有し、前記上下方向の直線運動により被搬送物を昇降させることができる昇降機能付き搬送車に対して、搬送経路の所定位置に配設され、前記入力軸との連結及びその解除が可能であり、前記入力軸と連結された状態で回転力を伝達して前記変換機構を駆動する回転力伝達装置であって、前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部に、前記入力軸に連結された被駆動回転盤を設け、搬送経路の所定位置において、前記被駆動回転盤の回転中心軸方向が略軸芯方向となるように配置され、軸芯方向に進退可能に支持された軸体と、この軸体の先端に前記被駆動回転盤に対向するように取り付けられた駆動回転盤と、前記軸体を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータと、前記軸体をその軸芯を回転中心軸として、この回転中心軸まわりに回転させる回転アクチュエータとを備え、前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の一方に、その回転中心軸から径方向に離間した単又は複数の係合孔を形成し、前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の他方に、これらの回転盤が同期して前記回転中心軸まわりに回転するように前記係合孔に遊嵌する、前記係合孔の個数と同一又は少ない個数の係合ピンを設けてなるものである。
【0007】
ここで、前記係合孔を、前記被駆動回転盤又は駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個、90°等分で4個、60°等分で6個又は45°等分で8個形成し、前記係合ピンを、前記駆動回転盤又は被駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個設け、前記係合孔の前記係合ピン側の内縁に面取り面を形成するとともに、前記係合ピンの先端部に面取り面、円錐面又は半球面を形成してなると好ましい。
【0008】
また、前記軸体の支持部材を搬送方向に移動可能に支持された移動台に取り付けるとともに、この移動台上に前記軸体の進退とともに同方向へ移動する被駆動体を設け、前進した前記被駆動体に当接する駆動体を、これら被駆動体及び駆動体が当接した状態で前記回転盤同士の搬送方向の位置決めがされるように、前記昇降機能付き搬送車の基体に設けてなると好ましい。
【0009】
さらに、前記軸体の支持部材を前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部から離間した位置に設けた搬送方向軸まわりに揺動可能な揺動台に取り付けることにより、前記駆動回転盤をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に移動可能とし、前記揺動台を弾性体により支持するとともに前記回転中心軸方向と略平行な軸まわりに回転するカムフォロワを前記揺動台に取り付け、前記昇降機能付き搬送車の基体に前記カムフォロワを追従させて前記弾性体を弾性変形させることにより、前記回転盤同士をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に位置決めすると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転力伝達装置によれば、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構を有し、前記上下方向の直線運動により被搬送物を昇降させることができる昇降機能付き搬送車に対して、搬送経路の所定位置に配設され、前記入力軸との連結及びその解除が可能であり、前記入力軸と連結された状態で回転力を伝達して前記変換機構を駆動する回転力伝達装置であって、前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部に、前記入力軸に連結された被駆動回転盤を設け、搬送経路の所定位置において、前記被駆動回転盤の回転中心軸方向が略軸芯方向となるように配置され、軸芯方向に進退可能に支持された軸体と、この軸体の先端に前記被駆動回転盤に対向するように取り付けられた駆動回転盤と、前記軸体を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータと、前記軸体をその軸芯を回転中心軸として、この回転中心軸まわりに回転させる回転アクチュエータとを備え、前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の一方に、その回転中心軸から径方向に離間した単又は複数の係合孔を形成し、前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の他方に、これらの回転盤が同期して前記回転中心軸まわりに回転するように前記係合孔に遊嵌する、前記係合孔の個数と同一又は少ない個数の係合ピンを設けてなるので、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構に対し、その入力軸に伝達機構により連結された被駆動回転盤と、この被駆動回転盤に対向する駆動回転盤とを備えており、被駆動回転盤に対して駆動回転盤を前進させ、被駆動回転盤又は駆動回転盤の回転中心軸から径方向に離間した係合孔に、駆動回転盤又は被駆動回転盤の回転中心軸から径方向に離間した係合ピンを遊嵌することにより、駆動回転盤と被駆動回転盤とを係合してこれらを同期して回転させるため、昇降機能付き搬送車の基体側の入力軸と駆動側の出力軸(回転アクチュエータにより駆動される軸体)との連結動作の信頼性が高く、特に前記入力軸が水平である場合であっても、重力によるたわみ等の影響を受けにくく、また、ある程度の誤差は遊嵌される係合孔と係合ピンにより吸収されるため、前記連結動作の信頼性が低下することがない。
その上、前記入力軸を水平とすれば、特許文献1の構成のように搬送経路の適宜箇所に昇降駆動源等を収容するピットを設ける必要がない。
【0011】
また、前記係合孔を、前記被駆動回転盤又は駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個、90°等分で4個、60°等分で6個又は45°等分で8個形成し、前記係合ピンを、前記駆動回転盤又は被駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個設け、前記係合孔の前記係合ピン側の内縁に面取り面を形成するとともに、前記係合ピンの先端部に面取り面、円錐面又は半球面を形成してなると、前記効果に加え、回転中心軸に対し対称に配設された2個の係合ピンを回転中心軸まわりに対称に配設された係合孔に遊嵌する構成であるため、回転力の伝達がより円滑になる。
その上、係合ピンの先端部には面取り面、円錐面又は半球面が形成され、係合孔の内縁には面取り面が形成されているため、駆動回転盤と被駆動回転盤との位置誤差を吸収できる範囲が広がるため、さらに前記連結動作の信頼性を向上することができる。
その上さらに、回転中心軸に対し対称に形成される係合孔の数が係合ピンの数よりも多いものにあっては、係合孔の数が多いもの程、これらの係合孔への2個の係合ピンの挿入をより短時間で行うことが可能になる。
【0012】
さらに、前記軸体の支持部材を搬送方向に移動可能に支持された移動台に取り付けるとともに、この移動台上に前記軸体の進退とともに同方向へ移動する被駆動体を設け、前進した前記被駆動体に当接する駆動体を、これら被駆動体及び駆動体が当接した状態で前記回転盤同士の搬送方向の位置決めがされるように、前記昇降機能付き搬送車の基体に設けてなると、前記効果に加え、被駆動回転盤と駆動回転盤との搬送方向の位置決めを容易かつ確実に行うことができるため、前記連結動作を容易かつ確実に行うことができる。
その上、昇降機能付き搬送車を停止させずに回転力伝達装置の回転力を昇降機能付き搬送車の基体側の入力軸へ伝達して被搬送物の昇降を行うことができる。
【0013】
さらにまた、前記軸体の支持部材を前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部から離間した位置に設けた搬送方向軸まわりに揺動可能な揺動台に取り付けることにより、前記駆動回転盤をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に移動可能とし、前記揺動台を弾性体により支持するとともに前記回転中心軸方向と略平行な軸まわりに回転するカムフォロワを前記揺動台に取り付け、前記昇降機能付き搬送車の基体に前記カムフォロワを追従させて前記弾性体を弾性変形させることにより、前記回転盤同士をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に位置決めすると、前記効果に加え、被駆動回転盤と駆動回転盤との回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向の位置決めを容易かつ確実に行うことができるため、前記連結動作を容易かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
本明細書においては、昇降機能付き搬送車1は、フリクションローラ式駆動装置又はパワーチェーン式駆動装置等の一般的な走行駆動装置により駆動され、搬送されるものであるため、以下の説明において走行駆動装置の説明は省略する。なお、昇降機能付き搬送車1は自走式のものであってもよい。
また、昇降機能付き搬送車1の搬送方向(図中矢印F参照。)側を前とし、左右は前方に向かっていうものとし、左方から見た図を正面図とする。
【0015】
図1〜図9は本発明の実施の形態に係る回転力伝達装置の構成を示す概略図であり、図1は昇降機能付き搬送車1及び回転力伝達装置2の平面図、図2は回転力伝達装置2の要部拡大平面図、図3は同じく正面図、図4及び図5は同じく前方から見た図であり、図4は回転力伝達装置2の右側に昇降機能付き搬送車1が無い場合、図5は回転力伝達装置2の右側に昇降機能付き搬送車1が有る場合を示している。
また、図6は軸体10及び駆動回転盤11並びに入力軸20及び被駆動回転盤12の要部拡大分解斜視図、図7は軸体10及び駆動回転盤11まわりを示す前方から見た部分縦断面図、図8及び図9は駆動回転盤11及び被駆動回転盤12まわりを示す要部拡大部分横断平面図であり、図8(a)は被駆動体16及び駆動体17が当接していない状態を、図8(b)は被駆動体16及び駆動体17が当接した状態を、図9(a)は係合ピン21が係合孔22に挿入される直前の状態を、図9(b)は係合ピン21が係合孔22に挿入された状態を示している。
【0016】
図1において、昇降機能付き搬送車1は、前記走行駆動装置により駆動され、所定軌道上を転動する図示しない走行車輪により所定の搬送経路を走行するものであり、基台3上に図示しない被搬送物を昇降可能に支持する昇降支持手段4、入力軸5Aの回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構5等を備えている。
また、入力軸5Aは、変換機構5の左下後部から左方へ突出し、左右方向軸まわりに回転可能であり、入力軸5Aには、カップリング6A、左方に延びる連結軸6及びカップリング6Bを介して、昇降機能付き搬送車1の基台3の側端部(左端部)に位置する入力軸20(図5及び図6参照。)が連結され、入力軸20の先端(左端)に、左右方向の回転中心軸Bまわりに回転可能な被駆動回転盤12が固定される。なお、入力軸20は、ハウジング(後述する駆動体でもある。)17(図5、図8及び図9参照。)により左右方向軸まわりに回転可能に支持される。
【0017】
ここで、昇降支持手段4は、上下方向に伸縮するX字状対称リンク(例えば、特開2005−230960号公報参照。)又はリニアガイド等により構成され、入力軸5Aの回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構5は、スパイラル状の垂直板と水平板とを組み合わせて昇降する駆動機構(例えば、米国特許第6,547,216号明細書参照。)により構成されるが、前記変換機構5としてボールねじ等を採用してもよく、ボールねじを採用した場合においては、例えば上下方向に延びるボールねじ軸の下端を入力軸とし、ボールねじを回転することによりボールねじのナットを昇降させ、該ナットに被搬送物の支持部材を連結すればよい。
【0018】
図1〜図5に示すように、回転力伝達装置2は、昇降機能付き搬送車1の搬送経路の所定位置(本実施の形態では基台3の左側)に配設され、入力軸20(図5参照。)との連結及びその解除が可能であり、入力軸20と連結された状態で回転力を伝達して前記変換機構5を駆動するものであり、搬送方向の前後に移動可能な移動台14上に、略左右方向に延びる軸体10が、その軸芯方向(回転中心軸A方向)に進退可能なように支持部材13A,13B及び13Cにより支持されており、軸体10を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータ7、並びに、軸体10をその軸芯を回転中心軸Aとして、この回転中心軸Aまわりに回転させる回転アクチュエータ8等を備えている。
【0019】
図6に示すように、入力軸20には、その先端(左端)の角軸20Aに被駆動回転盤12の角孔12Aを嵌合した状態で、端キャップ23の通孔23A,23Aを通してボルト24,24を軸端の螺孔20B,20Bに螺合することにより、その左面に回転中心軸Bまわりの周上に90°等分で4個の係合孔22,…が形成された被駆動回転盤12が強固に固定され、該被駆動回転盤12に対向するように、その右面に回転中心軸Aまわりの周上に180°等分で2個の係合ピン21,21が突設された駆動回転盤11が、軸体10の先端(右端)に取り付けられる。なお、係合孔22,…は通孔でなくてもよい。
【0020】
また、係合孔22,…の内縁には面取り面22A,…が形成されており、係合ピン21,21の先端部(右端部)には半球面21A,21Aが形成されている。
したがって、後述するように被駆動回転盤12に対して駆動回転盤11を近づけながら、駆動回転盤11を回転させることにより、駆動回転盤11(係合ピン21,21)と被駆動回転盤12(係合孔22,…)との位置誤差を、係合ピン21及び係合孔22のクリアランス並びに係合ピン21の半球面21A及び係合孔22の面取り面22Aにより吸収しながら、係合ピン21,21を係合孔22,…に遊嵌することができ、よって駆動回転盤11の回転力を被駆動回転盤12に確実に伝達することができる。
その上、回転中心軸Aに対し対称に配設された2個の係合ピン21,21を回転中心軸Bまわりに対称に配設された係合孔22,22に遊嵌する構成であるため、回転力の伝達がより円滑になる。
【0021】
なお、係合ピン21の先端部には、半球面21Aではなく、面取り面又は円錐面等を形成してもよいし、被駆動回転盤12に係合ピン21,21を突設して駆動回転盤11に係合孔22,…を形成してもよい。
さらに、係合孔22は、回転中心軸Bまわりの周上に90°等分で4個ではなく、180°等分で2個、60°等分で6個又は45°等分で8個等形成してもよい。
すなわち、被駆動回転盤12及び駆動回転盤11の一方に、その回転中心軸から径方向に離間した単又は複数の係合孔を形成し、被駆動回転盤12及び駆動回転盤11の他方に、これらの回転盤が同期して前記回転中心軸まわりに回転するように前記係合孔に遊嵌する、前記係合孔の個数と同一又は少ない個数の係合ピンを設ければよい。
ここで、回転中心軸に対し対称に形成される係合孔22の数が係合ピン21の数よりも多いものにあっては、係合孔22の数が多いもの程、後述するように駆動回転盤11を回転しながら前進させて行う、これらの係合孔22,…への係合ピン21の挿入をより短時間で行うことが可能になる。
【0022】
図2〜図5に示すように、移動台14は、ガイドローラ28,28(図5参照。)により左右方向の位置決めがされた状態で、ベース板26に取り付けられた前後左右の車輪27,…が左右のレール29,29上を転動することにより、搬送方向の前後に移動することができる。
また、図4及び図5に示すように、ベース板26の上側には、昇降機能付き搬送車1の基台3(図1参照。)の側端部から離間した位置に設けた搬送方向軸Cまわりに揺動可能な揺動台15Aが取り付けられ、揺動台15A上には、前記支持部材13B及び13Cが固定されるとともに、前後のリニアガイド25,25(図2及び図3も参照。)により略左右方向に移動可能に支持されたスライド板15B上に前記支持部材13Aが固定される。
【0023】
次に、軸体10を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータ7の構成例について説明する。
図2及び図4に示すように、例えばギヤドモータである回転駆動装置31の略垂直方向の出力軸31Aがリンク32の一端に固定され、リンク32の他端が圧縮コイルばね33の左端に連結された連結体34に略垂直の支軸34Aまわりに揺動可能に連結され、圧縮コイルばね33の右端に連結された連結体35が略垂直の支軸35Aまわりに揺動可能に前記支持部材13Aに連結される。
また、図7に示すように、支持部材13Aと軸体10とは軸体10の軸芯方向への移動が規制されている。
したがって、回転駆動装置31を正転又は逆転することにより、リンク32、連結体34、圧縮コイルばね33及び連結体35を介して支持部材13Aが略左右方向に駆動されるため、支持部材13Aとともに軸体10が同方向に、すなわち軸芯方向に進退する。
【0024】
次に、軸体10を回転中心軸Aまわりに回転させる回転アクチュエータ8の構成例について説明する。
図7に示すように、左右の支持部材13B及び13C間には、軸体10に外嵌され、スプライン10A(図6も参照。)と係合するスリーブ40が軸体10の軸芯まわりに回転可能に支持されており、スリーブ40にはプーリ38が外嵌固定される。
また、図2、図3及び図7に示すように、例えばキヤドモータである回転駆動装置36の略左右方向の出力軸36Aにプーリ37が固定され、プーリ37及びプーリ38間にはベルト39が張架される。
したがって、回転駆動装置36を回転することにより、プーリ37、ベルト39,プーリ38、スリーブ40及びスプライン10Aを介して、軸体10が回転中心軸Aまわりに回転する。
【0025】
次に、駆動回転盤11と被駆動回転盤12との上下方向の位置決めについて説明する。
図4及び図5において、揺動台15Aは、軸体10並びにその支持部材13A,13B及び13C等とともに、前記のとおり搬送方向軸Cまわりに揺動可能であり、その右端部の下面とベース板26との間に弾性体である圧縮コイルばね18が配設されるため、駆動回転盤11は上下方向(回転中心軸A方向に直交し且つ搬送方向Fに直交する方向)に移動可能なように弾性支持されている。
また、揺動台15Aの右端部には回転中心軸方向Aと略平行な軸まわりに回転するカムフォロワ19が取り付けられている。
したがって、図5に示す基台3の駆動体17の下面17Cにカムフォロワ19を追従させ、図4に示す状態から図5に示す状態まで圧縮コイルばね18を弾性変形させることにより、被駆動回転盤12に対して駆動回転盤11を上下方向(回転中心軸A方向に直交し且つ搬送方向Fに直交する方向)に、容易かつ確実に位置決めすることができる。
【0026】
次に、駆動回転盤11と被駆動回転盤12との搬送方向の位置決めについて説明する。
図2、図5、図8及び図9に示すように、移動台14上には、軸体10の進退とともに同方向へ移動する被駆動体16が設けられ、基台3には、進退アクチュエータ7により前進した被駆動体16に当接する駆動体17が、これら被駆動体16の後面16A及び駆動体17の前面17Aが当接した状態で回転盤11,12同士の搬送方向の位置決めがされるように設けられる。
【0027】
すなわち、図8及び図9に示すように、被駆動体16は平面視略コ字状であり、その前後に右方へ突出する爪部材D,Eを有しており、前側の爪部材Dの方が後側の爪部材Eよりも長いため、被駆動体16を、軸体10及び駆動回転盤11とともに、図8(a)の位置(後退端)から前記進退アクチュエータ7により前進させて(右方へ移動させて)図8(b)の位置(待機位置)としても、搬送経路を走行する昇降機能付き搬送車1の駆動体17と後側の爪部材Eが干渉することがなく、図8(b)のように、被駆動体16の前側の爪部材Dの後面16Aと駆動体17の前面17Aとが当接する。
なお、前記後退端の位置検出は、図2及び図3に示すセンサ支持板46に取り付けられた近接センサ41により、スライド板15Bに取り付けられた検出片48を検出することにより行われ、被駆動体16と駆動体17との当接は、図5〜図7及び図8(b)に示す被駆動体16の爪部材Dに取り付けられた近接センサ45により検出される。
【0028】
図8(b)の状態では、昇降機能付き搬送車1の走行に伴い、昇降機能付き搬送車1の駆動体17により被駆動体16が後押し駆動され、移動台14(図1及び図2参照。)が昇降機能付き搬送車1とともに搬送方向に移動し、このような動作により、昇降機能付き搬送車1を停止させることなく、被駆動回転盤12と駆動回転盤11との搬送方向の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
ここで、図8(b)の位置から図9(a)の位置(中間位置)まで軸体10及び駆動回転盤11を前記進退アクチュエータ7により前進させると(右方へ移動させると)、この位置では、係合ピン21の先端が被駆動回転盤12の表面(左面)に当接する左右方向位置であり、この中間位置から、軸体10及び駆動回転盤11を、前記回転アクチュエータ8により回転させながら前記進退アクチュエータ7により前進させると、前記のとおり係合ピン21,21を係合孔22,…に遊嵌した図9(b)の位置(前進端)となる。
【0029】
図9(b)の状態では、被駆動体16の後側の爪部材Eの前面16Bと駆動体17の後面17Bも当接しており、被駆動体16と駆動体17との前後方向への相対移動が規制される。
なお、前記中間位置及び前進端の位置検出は、図2及び図3に示すセンサ支持板46に取り付けられた近接センサ42,43により、スライド板15Bに取り付けられた検出片48を検出することにより行われ、前記回転アクチュエータ8による駆動回転盤11の回転は、図5〜図9に示すセンサ支持板47に取り付けられた近接センサ44により検出される。
また、回転力伝達装置2側の駆動回転盤11が昇降機能付き搬送車1側の被駆動回転盤12と衝突しないように、回転力伝達装置2側の緩衝体50が昇降機能付き搬送車1の基台3側の当止片49に当止される。
【0030】
ここで、図9(a)の状態から、前記回転アクチュエータ8により軸体10及び駆動回転盤11を回転させながら、前記進退アクチュエータ7により、支持部材13A、軸体10及び駆動回転盤11を前進させようとした際に、係合ピン21,21が係合孔22,…に入らず支持部材13A、軸体10及び駆動回転盤11が前進しなかった場合には、前記近接センサ43により前進端の位置検出がされないため、この異常状態を認識することができ、昇降機能付き搬送車1の走行駆動や回転力伝達装置2の進退アクチュエータ7及び回転アクチュエータ8の駆動等を停止させることができるとともに、図5に示す進退アクチュエータ7の圧縮コイルばね33が弾性変形するため、進退アクチュエータ7が破損することがない。
【0031】
図9(b)の状態では、駆動回転盤11の係合ピン21,21が被駆動回転盤12の係合孔22,…に係合しているため、駆動回転盤11と被駆動回転盤12とが同期して回転する。
したがって、この状態で、前記回転アクチュエータ8により軸体10を回転させると、その回転力が、図1に示す変換機構5の入力軸5Aに伝達され、よって入力軸5Aの回転運動が上下方向の直線運動に変換され、この直線運動により昇降支持手段4に支持された被搬送物を昇降させることができる。
ここで、昇降支持手段4(被搬送物)の昇降高さは、図1及び図2に示す回転駆動装置2の移動台14上に取り付けた、例えばレーザ距離センサである高さ検出器51により検出され、この高さ検出値に基づいて前記回転アクチュエータ8の回転駆動装置36が制御される。
【0032】
例えば被搬送物を上昇又は下降させる際に、高さ検出器51により所定の減速高さを検出した場合に前記回転アクチュエータ8の回転駆動装置36を減速させ、高さ検出器51により所定の停止高さを検出した場合に前記回転駆動装置36を停止させればよい。
このように昇降機能付き搬送車1上ではなく、回転力伝達装置2側に高さ検出器51を設置する構成により、昇降機能付き搬送車1上には検出器用電源や地上側との通信手段等を設ける必要がなくなるため、コスト低減化を図ることができるとともに、保守性及び信頼性の向上を図ることができる。
【0033】
昇降支持手段4(被搬送物)が所望の高さとなった状態で、前記進退アクチュエータ7により、軸体10及び駆動回転盤11を後退させると(左方へ移動させると)、駆動回転盤11の係合ピン21,21が被駆動回転盤12の係合孔22,…から抜かれて、駆動回転盤11と被駆動回転盤12との係合が解除される。
また、回転力伝達装置2の移動台14は、昇降機能付き搬送車1とともに、図1の位置から前方へ移動しているため、図1〜図3に示すフリクションローラ式駆動装置9のフリクションローラ9Aを移動台14の左側に敷設されたフリクションローラ圧接レール30に圧接することにより、移動台14を後方へ移動させて図1の位置まで容易に戻すことができる。
【0034】
以上のような構成の回転力伝達装置2によれば、昇降機能付き搬送車1を停止させることなく、昇降機能付き搬送車1の走行に伴って、被駆動回転盤12と駆動回転盤11との高さ方向及び搬送方向の位置決めを容易かつ確実に行うことができ、この位置決め状態で、被駆動回転盤12の係合孔22,…に駆動回転盤11の係合ピン21,21を挿入することにより、駆動側の出力軸(回転アクチュエータ8により駆動される軸体10)の回転力を昇降機能付き搬送車1の基台3側の入力軸20から変換機構5の入力軸5Aに確実に伝達することができるとともに、この伝達を解除することも容易である。
よって、入力軸5Aの回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構5を有し、前記上下方向の直線運動により被搬送物を昇降させることができる昇降機能付き搬送車1上の被搬送物の昇降を、搬送経路の所定位置に配設された回転力伝達装置2により、高い信頼性を確保しながら容易に行うことができる。
【0035】
以上の説明においては、入力軸5A及び20並びに軸体10が水平である場合について説明したが、これらは垂直であってもよい。
しかし、本発明の構成によれば、入力軸5A及び20並びに軸体10が水平である場合であっても、重力によるたわみ等の影響を受けにくく、また、ある程度の誤差は遊嵌される係合孔と係合ピンにより吸収されるため、入力軸5A及び20並びに軸体10の連結動作の信頼性が低下することがないとともに、入力軸5A及び20並びに軸体10を水平とすれば、搬送経路の適宜箇所に回転力伝達装置2を収容するピットを設ける必要がない。
【0036】
また、以上の説明においては、昇降機能付き搬送車1が基台3を有する台車である場合について説明したが、昇降機能付き搬送車1は、下端に走行車輪が取り付けられ、前後左右に立設された脚体の上端に連結固定された天井枠体の左右に設けられた昇降支持手段によりハンガーの上端部を支持し、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構(昇降駆動機構)を備えた昇降機能付き吊下げ搬送車(特願2007−178597号参照。)等であってもよく、このような昇降機能付き吊下げ搬送車にあっては、例えば基体である天井枠体の側端部に被駆動回転盤を設け、天井枠体の近傍に設置した架台等の上に回転力伝達装置2を配設しておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】昇降機能付き搬送車及び回転力伝達装置の平面図である。
【図2】回転力伝達装置の要部拡大平面図である。
【図3】同じく正面図である。
【図4】同じく前方から見た図であり、回転力伝達装置の右側に昇降機能付き搬送車が無い場合を示している。
【図5】同じく前方から見た図であり、回転力伝達装置の右側に昇降機能付き搬送車が有る場合を示している。
【図6】軸体及び駆動回転盤並びに入力軸及び被駆動回転盤の要部拡大分解斜視図である。
【図7】軸体及び駆動回転盤まわりを示す前方から見た部分縦断面図である。
【図8】駆動回転盤及び被駆動回転盤まわりを示す要部拡大部分横断平面図であり、(a)は被駆動体及び駆動体が当接した状態を、(b)は被駆動体及び駆動体が当接した状態を示している。
【図9】同じく要部拡大部分横断平面図であり、(a)は係合ピンが係合孔に挿入される直前の状態を、(b)は係合ピンが係合孔に挿入された状態を示している。
【符号の説明】
【0038】
1 昇降機能付き搬送車
2 回転力伝達装置
3 基台(基体)
4 昇降支持手段
5 変換機構
5A 入力軸
7 進退アクチュエータ
8 回転アクチュエータ
10 軸体
10A スプライン
11 駆動回転盤
12 被駆動回転盤
13A,13B,13C 支持部材
14 移動台
15A 揺動台
16 被駆動体
17 駆動体(ハウジング)
18 圧縮コイルばね(弾性体)
19 カムフォロワ
20 入力軸
21 係合ピン
21A 半球面
22 係合孔
22A 面取り面
31 回転駆動装置
31A 出力軸
32 リンク
33 圧縮コイルばね
34,35 連結体
34A,35A 支軸
36 回転駆動装置
36A 出力軸
37,38 プーリ
39 ベルト
40 スリーブ
A,B 回転中心軸
C 揺動軸(搬送方向軸)
D,E 爪部材
F 搬送方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変える変換機構を有し、前記上下方向の直線運動により被搬送物を昇降させることができる昇降機能付き搬送車に対して、搬送経路の所定位置に配設され、前記入力軸との連結及びその解除が可能であり、前記入力軸と連結された状態で回転力を伝達して前記変換機構を駆動する回転力伝達装置であって、
前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部に、前記入力軸に連結された被駆動回転盤を設け、
搬送経路の所定位置において、前記被駆動回転盤の回転中心軸方向が略軸芯方向となるように配置され、軸芯方向に進退可能に支持された軸体と、
この軸体の先端に前記被駆動回転盤に対向するように取り付けられた駆動回転盤と、
前記軸体を軸芯方向に進退させる進退アクチュエータと、
前記軸体をその軸芯を回転中心軸として、この回転中心軸まわりに回転させる回転アクチュエータとを備え、
前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の一方に、その回転中心軸から径方向に離間した単又は複数の係合孔を形成し、前記被駆動回転盤及び駆動回転盤の他方に、これらの回転盤が同期して前記回転中心軸まわりに回転するように前記係合孔に遊嵌する、前記係合孔の個数と同一又は少ない個数の係合ピンを設けてなる回転力伝達装置。
【請求項2】
前記係合孔を、前記被駆動回転盤又は駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個、90°等分で4個、60°等分で6個又は45°等分で8個形成し、前記係合ピンを、前記駆動回転盤又は被駆動回転盤の回転中心軸まわりの周上に、180°等分で2個設け、前記係合孔の前記係合ピン側の内縁に面取り面を形成するとともに、前記係合ピンの先端部に面取り面、円錐面又は半球面を形成してなる請求項1記載の回転力伝達装置。
【請求項3】
前記軸体の支持部材を搬送方向に移動可能に支持された移動台に取り付けるとともに、この移動台上に前記軸体の進退とともに同方向へ移動する被駆動体を設け、前進した前記被駆動体に当接する駆動体を、これら被駆動体及び駆動体が当接した状態で前記回転盤同士の搬送方向の位置決めがされるように、前記昇降機能付き搬送車の基体に設けてなる請求項1記載の回転力伝達装置。
【請求項4】
前記軸体の支持部材を前記昇降機能付き搬送車の基体の側端部から離間した位置に設けた搬送方向軸まわりに揺動可能な揺動台に取り付けることにより、前記駆動回転盤をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に移動可能とし、前記揺動台を弾性体により支持するとともに前記回転中心軸方向と略平行な軸まわりに回転するカムフォロワを前記揺動台に取り付け、前記昇降機能付き搬送車の基体に前記カムフォロワを追従させて前記弾性体を弾性変形させることにより、前記回転盤同士をその回転中心軸方向に直交し且つ搬送方向に直交する方向に位置決めする請求項1又は3記載の回転力伝達装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−30708(P2009−30708A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194858(P2007−194858)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】