説明

回転式アクチュエータ

【課題】 ドリブンギヤを圧入するときの出力軸の変形に起因してトルク伝達効率が低下することを抑制することができる回転式アクチュエータを提供する。
【解決手段】 出力軸5は、第2ボス部410が外壁に圧入固定されるドリブンギヤ圧入部50と、ドリブンギヤ圧入部50に対し軸方向に隣接し且つ一体に設けられると共に、コントロールロッド72と連結するための嵌合穴510が形成されるロッド連結部51とを有する。そのため、嵌合穴510はドリブンギヤ圧入部50に対し軸方向にずれて配置されるので、ドリブンギヤ圧入部50への第2ボス部410の圧入によっては嵌合穴510が変形し難い。よって嵌合穴510が変形する影響による出力軸5とコントロールロッド72との係合不良が生じ難い。したがって、ドリブンギヤ41を圧入するときの出力軸5の変形に起因してトルク伝達効率が低下することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を減速して出力する回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動軸に平行に設けられた出力軸を有する回転式アクチュエータが知られている。特許文献1の回転式アクチュエータでは、駆動軸と同軸に配置されるリングギヤの内歯に噛み合うプラネタリギヤが、駆動軸まわりに公転しつつその駆動軸に対し偏心する偏心軸まわりに自転する。駆動軸の回転に対し減速されるプラネタリギヤの自転成分は、ドライブギヤおよびドリブンギヤを経由して出力軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の出力軸は、例えばコントロールロッド等の被駆動ロッドと連結するために内歯面からなる嵌合穴を有しているが、その嵌合穴に対し径外方向に位置する外壁にドリブンギヤが圧入固定されている。そのため、ドリブンギヤを圧入するとき径内方向に位置する嵌合穴が変形する可能性がある。したがって、嵌合穴の変形の影響により出力軸と被駆動ロッドとの係合不良が生じ、出力軸からのトルク伝達効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドリブンギヤを圧入するときの出力軸の変形に起因してトルク伝達効率が低下することを抑制することができる回転式アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、モータ、偏心軸、リングギヤ、プラネタリギヤ、ドライブギヤ、回転伝達手段、ドリブンギヤ、および出力軸を備える。モータは、回転可能な駆動軸、この駆動軸に固定されるロータコア、及びロータコアの径外方向に設けられるステータを有する。駆動軸に対し偏心する偏心軸は、両端が駆動軸に平行に連結される。偏心軸の径外方向に設けられるリングギヤは、ハウジングに固定され、駆動軸と同軸の内歯を内壁に形成する。偏心軸と同軸に設けられるプラネタリギヤは、リングギヤの内歯に噛み合う第1外歯を外壁に形成し、偏心軸の偏心軸中心線まわりに自転可能に且つ駆動軸の第1軸中心線まわりに公転可能に偏心軸により支持される。プラネタリギヤの反ロータコア側に位置するドライブギヤは、ハウジングにより第1軸中心線まわりに回転可能に支持され、駆動軸と同軸の第2外歯を外壁に形成する。回転伝達手段は、プラネタリギヤの自転成分をドライブギヤに伝達する。ドリブンギヤは、基部およびギヤ部を有する。基部は、第1軸中心線に平行な第2軸中心線上に設けられる環状部材である。またギヤ部は、基部から第1軸中心線側に突出し、第2外歯に噛み合う第3外歯を突出先端に形成する。
【0007】
出力軸は、ハウジングにより第2軸中心線まわりに回転可能に支持され、ドリブンギヤ圧入部およびロッド連結部を有する。ドリブンギヤ圧入部は、ドリブンギヤの基部が外壁に圧入固定される。またロッド連結部は、ドリブンギヤ圧入部に対し軸方向に隣接し且つ一体に設けられ、前記第2軸中心線に平行な方向に長手状をなすロッド連結用の嵌合穴を有する。そのため、ロッド連結部の嵌合穴はドリブンギヤ圧入部に対し軸方向にずれて配置されるので、ドリブンギヤ圧入部へのドリブンギヤの圧入によっては嵌合穴が変形し難い。よって嵌合穴が変形する影響による出力軸と被駆動ロッドとの係合不良が生じ難い。したがって、ドリブンギヤを圧入するときの出力軸の変形に起因してトルク伝達効率が低下することを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、第2外歯と第3外歯との軸方向噛合中心位置が、第2軸中心線に平行な方向において嵌合穴の軸方向中心位置に略一致する。そのため、ドライブギヤからドリブンギヤおよび出力軸を経由して被駆動ロッドへ回転が伝達されるとき、第3外歯に作用する力および出力軸に作用する反力が第2軸中心線に略直交する平面内に発生する。したがって、第3外歯に作用する力および出力軸に作用する反力の影響でドリブンギヤが第2軸中心線に直交する軸まわりに傾くことを抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、ギヤ部は、第2軸中心線に平行な方向において基部との連結部の位置が第3外歯の位置よりもロータコア側にシフトする曲部を有する。この曲部をギヤ部が有することで、第2軸中心線に平行な方向において第2外歯と第3外歯との軸方向噛合中心位置を嵌合穴の軸方向中心位置に略一致させることができる。さらに、出力軸をロータコア側に配置することができるので、アクチュエータの外郭を扁平形状とし、アクチュエータの軸方向寸法を小さくすることができる。そのため、車両搭載上スペースの制約があるとき小スペースにアクチュエータを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のアクチュエータを備えるシフトバイワイヤシステムの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態のアクチュエータの縦断面図。
【図3】本発明の一実施形態のアクチュエータの前ハウジングおよび中ハウジングを図2のX矢印方向から見た図。
【図4】本発明の一実施形態のリングギヤ、プラネタリギヤ、およびドライブギヤを図2のY矢印方向から見た図。
【図5】本発明の一実施形態の駆動軸、リングギヤ、およびプラネタリギヤを模式的に示す斜視図。
【図6】本発明の一実施形態の出力軸が有するロッド連結部の横断面図。
【図7】本発明の他の実施形態の出力軸が有するロッド連結部の横断面図。
【図8】本発明の他の実施形態の出力軸が有するロッド連結部の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による回転式アクチュエータ(以下「アクチュエータ」という)を図面に基づいて説明する。
【0012】
(一実施形態)
本発明をシフトバイワイヤシステムに適用した一実施形態について図1に基づいて説明する。
シフトバイワイヤシステム7は、運転者により操作される例えばセレクトレバー等のレンジ選択部材の操作位置に応じてアクチュエータ1を作動させて車両用自動変速機のシフトレンジを切り換える。シフトバイワイヤシステム7は、レンジ選択部材とアクチュエータ1とがワイヤ(電線)を経由して電気的に接続されるバイワイヤシステムであり、電子制御ユニット71(Electric Control Unit;以下「ECU」という)、アクチュエータ1、コントロールロッド72、ディテント機構73、およびパーキングロック機構74を備えている。
【0013】
本実施形態の車両用自動変速機に採用する遊星歯車式の有段変速機は、入出力部材間に設けられる複数の遊星歯車装置の各回転要素と他部材との係合関係を油圧式クラッチで制御することにより、変速段およびシフトレンジを切り換える。油圧式クラッチに所定圧の作動油を供給する油圧制御装置には、レンジ切換弁としてのマニュアルバルブ70が設けられる。このマニュアルバルブ70は、バルブボディ700内に軸方向移動可能に収容される弁部材701を備え、この弁部材701が軸方向に移動することで油圧制御装置内の油路を切り換えて有段変速機のシフトレンジを切り換える。有段変速機のシフトレンジには、前進走行用のDレンジ、後進走行用のRレンジ、駐車用のPレンジ、および動力遮断用のNレンジが設定される。
【0014】
ECU71は、図示しないCPU、ROM、およびRAMなどを有するマイクロコンピュータから構成されている。ECU71は、図示しないレバーポジションセンサおよびエンコーダ75(図2参照)に電気的に接続している。レバーポジションセンサは、セレクトレバーの操作位置を電気信号としてECU71に出力する。エンコーダ75は、アクチュエータ1のモータ2(図2参照)の回転角度量に対応する所定のカウント数を電気信号としてECU71に出力する。
ECU71は、ROMに記録されている所定の制御プログラムにしたがって入力される信号に基づきアクチュエータ1を制御する。具体的には、ECU71は、アクチュエータ1を作動に先立って、セレクトレバーの操作位置に対応する指示シフトレンジへ切り換えるためのアクチュエータ1の回転角度量を算出する。そして、算出した回転角度量が得られるまでアクチュエータ1を回転駆動させる。
【0015】
アクチュエータ1は、出力部材としての出力軸5(図2参照)がコントロールロッド72に機械的に連結されており、指示シフトレンジに応じてコントロールロッド72を回転させる。なおアクチュエータ1の構成は後に詳述する。
【0016】
「被駆動ロッド」としてのコントロールロッド72は、軸中心線まわりに回転可能に設けられおり、ディテント機構73のディテントプレート730が一体的に固定されている。アクチュエータ1からコントロールロッド72に入力されるトルクはディテントプレート730に伝達される。
【0017】
ディテント機構73は、ディテントプレート730およびディテントスプリング733を備えている。
ディテントプレート730は、コントロールロッド72から径外方向に突出する板状部材であり、突出先端面に複数の係合溝731を有している。またディテントプレート730は、コントロールロッド72の軸方向に平行な方向へ突出する係合突起732を形成する。この係合突起732は、マニュアルバルブ70の弁部材701に対し軸方向の係合が可能である。
【0018】
ディテントスプリング733は、マニュアルバルブ70のバルブボディ700に基端部が固定されている方持ち状のばね板である。二股に分かれるディテントスプリング733の先端部にはローラ734が設けられている。ディテントスプリング733のローラ734がディテントプレート730の複数の係合溝731のいずれか1に係合することによりディテントプレート730およびコントロールロッド72の回動位置が固定されるようになっている。ディテント機構73はコントロールロッド72の回り止め手段として機能する。
【0019】
パーキングロック機構74は、パークロッド740、カム部材741、パーキングロックポール742、およびパーキングギヤ743を備えている。
パークロッド740の基端部はディテントプレート730に連結されている。そしてパークロッド740の先端部は、ディテントプレート730が回動するに従ってパーキングギヤ743の軸方向に略平行な方向へ往復移動する。カム部材741はパークロッド740の先端部に設けられ、その先端部と共に往復移動する。パーキングロックポール742にはパーキングギヤ743に接近および離間可能な噛合突起部742aが設けられている。この噛合突起部742aは、カム部材741がパーキングロックポール742の先端部と台座744との間に挿入されるとパーキングギヤ743側へ移動してそのパーキングギヤ743に噛み合い、パーキングギヤ743が固定される有段変速機の出力部材を回転不能に固定する。また噛合突起部742aは、カム部材741がパーキングロックポール742の先端部と台座744との間から抜け出すとパーキングギヤ743から離間してそのパーキングギヤ743との噛み合いを解除し、有段変速機の出力部材を回転可能とする。
【0020】
以上のように構成されているシフトバイワイヤシステム7は、セレクトレバーにより指示される指示シフトレンジが変更されると、ECU71からアクチュエータ1の作動指令信号を出力する。その作動指令信号に従いアクチュエータ1が作動すると、コントロールロッド72およびディテントプレート730が回動する。その回動によりディテントプレート730に係合されている弁部材701が軸方向に移動すると、マニュアルバルブ70が作動してシフトレンジが切り換わると共にカム部材741が軸方向へ移動する。指示シフトレンジがPレンジである場合、カム部材741がパーキングロックポール742を押し上げることでパーキングロックポール742の噛合突起部742aとパーキングギヤ743とが噛み合い、有段変速機の出力部材を回転不能に固定する。
【0021】
以下、アクチュエータ1の構成を図2〜図5に基づいて詳細に説明する。
アクチュエータ1は、モータ2、サイクロイド減速部3、平行軸歯車減速部4、および出力軸5を外郭部材6内に備えている。外郭部材6は、平行軸歯車減速部4および出力軸5を主に収容する前ハウジング60と、サイクロイド減速部3を主に収容する中ハウジング61と、モータ2を主に収容する後ハウジング62との3つのハウジングから構成されている。なお本実施形態では、サイクロイド減速部3および平行軸歯車減速部4が減速機を構成している。
【0022】
前ハウジング60は、平行軸歯車減速部4および出力軸5の径外方向に設けられ、サイクロイド減速部3側に向けて開口する有底短筒状の樹脂製のハウジングである。前ハウジング60は、第1すべり軸受83が嵌合する有底嵌合孔600、および第2すべり軸受84が嵌合すると共にコントロールロッド72が挿入される貫通孔601を有している。第1すべり軸受83は、平行軸歯車減速部4のドリブンギヤ41を第1軸中心線φ1まわりに回転可能に支持する。そして第2すべり軸受84は、第1軸中心線φ1に平行な第2軸中心線φ2まわりに回転可能に出力軸5を支持する。
前ハウジング60の底部には、第2軸中心線φ2に平行な方向へ突出する円筒状突出部602が設けられている。この円筒状突出部602は、図示しないミッションケースの開口部内に挿入される。円筒状突出部602とミッションケースの開口部との間に形成される隙間は、円筒状突出部602の外周部に嵌めつけられたOリング86により液密に封止される。
【0023】
後ハウジング62は、モータ2の径外方向に設けられると共にサイクロイド減速部3側に向けて開口する有底短筒状の樹脂製の後ハウジング本体620と、その後ハウジング本体620に埋め込まれた金属製の有底短筒部材621とを備えている。有底短筒部材621は、その一部が後ハウジング本体620内にインサートモールドされている。有底短筒部材621の外側筒部の内壁は、モータ2のステータコア210を嵌合固定する。そして有底短筒部材621の底部に設けられモータ2側へ突出する比較的小径の内側筒部の内壁は、第1転がり軸受80を嵌合固定する。第1転がり軸受80は、モータ2の駆動軸200の一端部200aを第1軸中心線φ1まわりに回転可能に支持する。
【0024】
後ハウジング本体620には、有底短筒部材621の他にもモータ2およびエンコーダ75からの配線部材622がインサートモールドされている。後ハウジング本体620には径外方向へ突設するコネクタ623が設けられており、配線部材622は後ハウジング本体620の底部を通ってコネクタ623内まで延びている。ECU71からの配線を収容する図示しないコネクタがコネクタ623に接続されることにより、モータ2およびエンコーダ75がECU71に電気的に接続されるようになっている。
【0025】
中ハウジング61は、前ハウジング60と後ハウジング62との間においてサイクロイド減速部3の外側に設けられると共にそれら前ハウジング60および後ハウジング62に組み合わせられる環状の樹脂製の中ハウジング本体610と、その中ハウジング本体610にインサートモールドされている金属製の環状プレート611とを備えている。中ハウジング61の一部を切り欠いて断面で示す図3のように、環状プレート611は、サイクロイド減速部3のリングギヤ30が嵌合する嵌合壁部611bと、そのリングギヤ30の回止め突起300に係合する複数の係合溝部611aとを有している。リングギヤ30は、リングギヤ保持内壁612に圧入されている。
なお、出力軸5と同軸に設けられると共に中ハウジング本体610に嵌合されているオイルシール92は、その内側に挿入されるコントロールロッド72の先端部との間の隙間を液密に封止する。
【0026】
前ハウジング60、中ハウジング61、および後ハウジング62は、互いに組み合わせられて締結ボルト87により締結されている。中ハウジング本体610と前ハウジング60との組合せ面間には第1パッキン88が設けられ、また中ハウジング本体610と後ハウジング本体620との組合せ面間には第2パッキン89が設けられている。第1パッキン88および第2パッキン89は、例えば合成ゴム等から成る。外郭部材6内の内圧は、中ハウジング61に取り付けられた内圧調整部材90により調整される。
【0027】
次にモータ2の構成を説明する。
モータ2は、スイッチドリラクタンスモータ(SRモータ)であり、ロータ20およびステータ21を備えている。
ロータ20は、駆動軸200およびロータコア201から構成されている。駆動軸200は、後ハウジング62側の一端部200aが第1転がり軸受80により第1軸中心線φ1まわりに回転可能に支持され、また前ハウジング60側の他端部200bが第2転がり軸受81により第1軸中心線φ1まわりに回転可能に支持されている。第1転がり軸受80は後ハウジング62に嵌合されている。また第2転がり軸受81はドライブギヤ40の内側に嵌合されている。
【0028】
そして駆動軸220の一端部200aと他端部200bとの間には、一端部200a側から順に大径部200cおよび偏心部200dが設けられている。大径部200cは、第1軸中心線φ1と同軸に設けられ、両端が一端部200aおよび偏心部200dに一体に連結されている。また「偏心軸」としての偏心部200dは、第1軸中心線φ1に対し偏心し且つ平行な偏心軸中心線φ3と同軸に設けられ、両端が大径部200cおよび他端部200bに一体に連結されている。
ロータコア201は、大径部200cの外壁に嵌合固定されている。またロータコア201は、周方向の45度毎に径外方向へ向けて突出する複数の突極(図示せず)を形成する。
【0029】
ステータ21は、ロータ20の径外方向で後ハウジング62の内壁面に嵌合固定されており、ステータコア210およびコイル211から構成されている。ステータコア210は、周方向の30度毎に径内方向に向けて突出する複数のステータティース(図示せず)を形成する。コイル211は、各ステータティースに巻回されているU相、V相、およびW相のコイルから成る。
【0030】
以上のように構成されているモータ2では、ECU71によりU相→V相→W相の順にコイル211への通電が切り換えられるとロータ20が一方向へ回転する。そして、ECU71によりW相→V相→U相の順にコイル211への通電が切り換えられるとロータ20が他方向へ回転する。U相、V相、およびW相のコイルへの通電が一巡する毎にロータ20が45度回転する。
【0031】
エンコーダ75は、ロータ20に固定されている磁石750、その磁石750の磁気を検出するホールIC751、及びそのホールIC751が実装されている基板752から構成されている。エンコーダ75は、ロータ20の回転に伴いホールIC751に接近および離間する磁石750の磁気の大きさを検出し、ロータ20がホールIC751に最接近する回数をカウントしてECU71に出力する。ECU71は、上記カウントされる回数すなわちカウント数に応じてロータ20の回転角度量を算出する。
【0032】
次にサイクロイド減速部3の構成を説明する。
サイクロイド減速部3は、遊星歯車減速機の一種であり、駆動軸200の偏心部200dの外側においてモータ2に隣接して設けられ、リングギヤ30およびプラネタリギヤ31を備えている。
【0033】
リングギヤ30は、偏心部200dの径外方向で径方向の移動不能且つ回転不能に中ハウジング61に固定されている環状の内歯車である。このリングギヤ30の内壁には、第1軸中心線φ1と同軸の内歯が形成されている。そしてリングギヤ30の外壁には、径外方向へ突出するように周方向の等間隔に複数個(本実施形態では6個)設けられた回止め突起300が形成されている。
【0034】
プラネタリギヤ31は、偏心部200dの径外方向に設けられ、リングギヤ30の内歯に噛み合う第1外歯311を外壁に形成する外歯車である。このプラネタリギヤ31は、偏心部200dの外壁に嵌合されている第3転がり軸受82により、偏心軸中心線φ3まわりに自転可能に且つ第1軸中心線φ1まわりに公転可能に支持されている。またプラネタリギヤ31には、偏心軸中心線φ3との同心円a上において周方向の等間隔にドライブギヤ40側へ突出する複数のトルク伝達用突起310が設けられている。このトルク伝達用突起310は、後述のトルク伝達用穴402と共に、プラネタリギヤ31の自転成分をドライブギヤ40に伝達するための回転伝達手段として機能する。
【0035】
以上のように構成されているサイクロイド減速部3では、モータ2が作動して駆動軸200が第1軸中心線φ1まわりに回転すると、プラネタリギヤ31が、図5に矢印bで示すように第1軸中心線φ1まわりに公転しつつ図5に矢印cで示すように偏心軸中心線φ3まわりに自転する。プラネタリギヤ31は、駆動軸200が第1軸中心線φ1まわりに1回転する毎に、プラネタリギヤ31の第1外歯311とリングギヤ30の内歯との歯数差に応じた所定の角度だけプラネタリギヤ31の公転方向とは反対側へ自転する。そのプラネタリギヤ31の自転速度は、駆動軸200の第1軸中心線φ1まわりの回転速度に比べて大きく減速する。サイクロイド減速部3は、モータ2から入力される回転を減速してドライブギヤ40に出力する。
【0036】
次に平行軸歯車減速部4および出力軸5の構成を説明する。
平行軸歯車減速部4は、ドライブギヤ40、およびドライブギヤ40に噛み合うドリブンギヤ41から構成されている。
【0037】
ドライブギヤ40は、プラネタリギヤ31に対しモータ2とは反対側に隣接する位置で第1軸中心線φ1と同軸に設けられ、第1すべり軸受83により回転可能に支持されている円筒状の第1ボス部400と、その第1ボス部400のプラネタリギヤ31側の端部から径外方向へ周方向に連続して突設され、第1軸中心線φ1と同軸の第2外歯403を外壁に形成する円環板状のフランジ部401とを備える外歯車である。フランジ部401には、プラネタリギヤ31のトルク伝達用突起310が遊嵌するトルク伝達用穴402が複数設けられている。このトルク伝達用穴402は、第1軸中心線φ1との同心円上において周方向の等間隔に設けられている貫通穴であり、トルク伝達用穴402と共に前記回転伝達手段を構成する。ドライブギヤ40は、トルク伝達用突起310とトルク伝達用穴402との周方向の係合によってプラネタリギヤ31にトルク伝達可能に連結されている。
【0038】
ドリブンギヤ41は、第1軸中心線φ1に平行な第2軸中心線φ2と同軸に設けられる「基部」としての環状の第2ボス部410と、その第2ボス部410から第1軸中心線φ1側に突出すると共に、第2外歯403に噛み合う第3外歯412を突出先端に形成するギヤ部411とを有する。第3外歯412のピッチ円半径は、第2外歯403のピッチ円半径よりも小さく設定されている。
第2ボス部410およびギヤ部411は、第2軸中心線φ2に平行な方向に厚みをなす一体の板状部材であり、例えばプレス加工により成形される。
【0039】
出力軸5は、第2すべり軸受84により第2軸中心線φ2まわりに回転可能に支持されている。この出力軸5は、ドリブンギヤ41の第2ボス部410が外壁に圧入固定される円筒状のドリブンギヤ圧入部50と、そのドリブンギヤ圧入部50に対し軸方向に隣接し且つ一体に設けられると共に、第2軸中心線φ2に平行な方向に長手状をなす嵌合穴510を有する円筒状のロッド連結部51とを有している。
嵌合穴510は、内側に嵌合するコントロールロッド72の外壁に対し周方向に係合可能である。この嵌合により、出力軸5とコントロールロッド72とがトルク伝達可能に連結される。本実施形態では、嵌合穴510の横断面形状すなわち第2軸中心線φ2に直交する断面の形状は、ロッド連結部51の内壁に形成されているスプライン内歯の歯面からなる凹凸形状をなす。
【0040】
ドリブンギヤ41のギヤ部411は、第2ボス部410との連結部の位置が第2軸中心線φ2に平行な方向において第3外歯412の位置よりもロータコア201側にシフトする曲部411aを有している。この曲部411aは、第3外歯412の軸方向中心位置が第2軸中心線φ2に平行な方向において嵌合穴510の軸方向中心位置に一致するように設定されている。これにより、第2外歯403と第3外歯412との軸方向噛合中心位置が、第2軸中心線φ2に平行な方向において嵌合穴510の軸方向中心位置に一致する。上述の第2外歯403と第3外歯412との軸方向噛合中心位置とは、第2軸中心線φ2に平行な方向における第2外歯403と第3外歯412との噛み合い範囲の中心位置のことである。また嵌合穴510の軸方向中心位置とは、第2軸中心線φ2に平行な方向における嵌合穴510の中心位置、すなわちスプライン内歯の軸方向中心位置のことである。
【0041】
以上のように構成されている平行軸歯車減速部4は、プラネタリギヤ31の自転成分がトルク伝達用突起310およびトルク伝達用穴402を経由してドライブギヤ40に入力されると、そのプラネタリギヤ31の自転成分を減速してドリブンギヤ41から出力軸5に出力する。そして出力軸5は、ドリブンギヤ41から入力される回転をコントロールロッド72に出力する。
【0042】
本実施形態では、ドリブンギヤ41は、第2ボス部410から第1軸中心線φ1側に突出すると共に、ドライブギヤ40の第2外歯403に噛み合う第3外歯412を突出先端に形成する。出力軸5は、第1軸中心線φ1に平行な第2軸中心線φ2まわりに回転可能に設けられ、第2ボス部410が外壁に圧入固定されるドリブンギヤ圧入部50と、そのドリブンギヤ圧入部50に対し軸方向に隣接し且つ一体に設けられると共に、コントロールロッド72と連結するための嵌合穴510が形成されているロッド連結部51とを有している。そのため、ロッド連結部51の嵌合穴510はドリブンギヤ圧入部50に対し軸方向にずれて配置されるので、ドリブンギヤ圧入部50への第2ボス部410の圧入によっては嵌合穴510が変形し難い。よって嵌合穴510が変形する影響による出力軸5とコントロールロッド72との係合不良が生じ難い。したがって、ドリブンギヤ41を圧入するときの出力軸5の変形に起因してトルク伝達効率が低下することを抑制することができる。
【0043】
また本実施形態では、第2軸中心線φ2に平行な方向において、第2外歯403と第3外歯412との軸方向噛合中心位置が嵌合穴510の軸方向中心位置に略一致する。そのため、ドライブギヤ40からドリブンギヤ41および出力軸5を経由してコントロールロッド72へ回転が伝達されるとき、第3外歯412に作用する力およびロッド連結部51に作用する反力が第2軸中心線φ3に略直交する平面内に発生する。したがって、第3外歯412に作用する力およびロッド連結部51に作用する反力の影響でドリブンギヤ41が第2軸中心線φ2に直交する軸まわりに傾くことを抑制することができる。
【0044】
また本実施形態では、ギヤ部411は、第2軸中心線φ2に平行な方向において、第2ボス部410との連結部の位置が第3外歯412の位置よりもロータコア201側にシフトする曲部411aを有している。この曲部411aをギヤ部411が有することで、第2軸中心線φ2に平行な方向において第2外歯403と第3外歯412との軸方向噛合中心位置を嵌合穴510の軸方向中心位置に略一致させることができる。さらに、出力軸5をロータコア側に配置することができるので、アクチュエータ1の外郭を扁平形状とし、アクチュエータ1の軸方向寸法を小さくすることができる。そのため、車両搭載上の制約に対応し易いアクチュエータ1を得ることができる。
【0045】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、出力軸は、例えば図7に示すように直線および曲線からなる横断面形状の嵌合穴520を有するロッド連結部52を備えることとしてもよいし、或いは図8に示すような多角形からなる横断面形状の嵌合穴530を有するロッド連結部53を備えることとしてもよい。要するに、コントロールロッドに対し周方向に直接的あるいは間接的に係合可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
本発明の他の実施形態では、ロッド連結部がドリブンギヤ圧入部に対しロータコア側に隣接して設けられてもよい。
【0046】
本発明の他の実施形態では、第2外歯と第3外歯との軸方向噛合中心位置が第2軸中心線に平行な方向において嵌合穴の軸方向中心位置に正確に一致していなくてもよい。つまり、第2外歯と第3外歯との軸方向噛合中心位置が第2軸中心線に平行な方向において嵌合穴の軸方向中心位置に略一致することとしてもよい。このような構成であってもドリブンギヤの傾きを抑制する効果を得ることができる。
【0047】
本発明の他の実施形態では、ギヤ部が曲部を備えず、平らに設けられてもよい。これによって第2外歯と第3外歯との軸方向噛合中心位置が、第2軸中心線に平行な方向において嵌合穴の軸方向中心位置に一致しなくてもよい。要するに、ロッド連結部の嵌合穴がドリブンギヤ圧入部に対し軸方向にずれて配置されていれば、嵌合穴の変形を抑制する効果を得ることができる。
【0048】
本発明の他の実施形態では、アクチュエータを例えば車両の他のバルブ装置等の駆動部として用いてもよいし、例えば産業ロボットや工作機械などの他の装置の駆動部として用いてもよい。
本発明の他の実施形態では、前ハウジング、中ハウジング、および後ハウジングを例えば金属等の他の材質から構成してもよい。
【0049】
本発明の他の実施形態では、ドライブギヤからドリブンギヤへの減速比が可変に構成されてもよいし、ドライブギヤからドリブンギヤに回転が維持あるいは増速されて伝達されることとしてもよい。
本発明の他の実施形態では、SRモータ以外のモータを採用してもよい。
【0050】
本発明の他の実施形態では、例えばパドル型やボタン型のものを採用してもよい。また、運転者の音声を認識してシフトレンジが選択されるものを採用してもよい。
本発明の他の実施形態では、例えば平行軸歯車式の有段変速機、またはベルト式やトロイダル式の無段変速機等の他の自動変速機を採用してもよい。
【0051】
このように本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ・・・回転式アクチュエータ
2 ・・・モータ
200 ・・・駆動軸
200d・・・偏心部(偏心軸)
201 ・・・ロータコア
21 ・・・ステータ
30 ・・・リングギヤ
31 ・・・プラネタリギヤ
310 ・・・トルク伝達用突起(回転伝達手段)
311 ・・・第1外歯
40 ・・・ドライブギヤ
402 ・・・トルク伝達用穴(回転伝達手段)
403 ・・・第2外歯
41 ・・・ドリブンギヤ
410 ・・・第2ボス部(基部)
412 ・・・第3外歯
411 ・・・ギヤ部
5 ・・・出力軸
50 ・・・ドリブンギヤ圧入部
51,52,53・・・ロッド連結部
510,520,530・・・嵌合穴
φ1 ・・・第1軸中心線
φ2 ・・・第2軸中心線
φ3 ・・・偏心軸中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な駆動軸、この駆動軸に固定されるロータコア 及び、前記ロータコアの径外方向に設けられるステータを有するモータと、
前記駆動軸に対し偏心すると共に両端が当該駆動軸に平行に連結される偏心軸と、
前記偏心軸の径外方向でハウジングに回転不能に固定され、前記駆動軸と同軸の内歯を内壁に形成するリングギヤと、
前記偏心軸と同軸に設けられると共に前記内歯に噛み合う第1外歯を、外壁に形成し、前記偏心軸の偏心軸中心線まわりに自転可能に且つ前記駆動軸の第1軸中心線まわりに公転可能に前記偏心軸により支持されるプラネタリギヤと、
前記プラネタリギヤの反ロータコア側で前記ハウジングにより前記第1軸中心線まわりに回転可能に支持され、前記駆動軸と同軸の第2外歯を外壁に形成するドライブギヤと、
前記プラネタリギヤの自転成分を前記ドライブギヤに伝達する回転伝達手段と、
前記第1軸中心線に平行な第2軸中心線上に設けられる環状の基部 及び、前記基部から前記第1軸中心線側に突出すると共に、前記第2外歯に噛み合う第3外歯を突出先端に形成するギヤ部、を有するドリブンギヤと、
前記ハウジングにより前記第2軸中心線まわりに回転可能に支持され、前記基部が外壁に圧入固定されるドリブンギヤ圧入部 及び、前記ドリブンギヤ圧入部に対し軸方向に隣接し且つ一体に設けられると共に、前記第2軸中心線に平行な方向に長手状をなすロッド連結用の嵌合穴を有するロッド連結部、からなる出力軸と、を備えることを特徴とする回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記第2外歯と前記第3外歯との軸方向噛合中心位置は、前記第2軸中心線に平行な方向において前記嵌合穴の軸方向中心位置に略一致することを特徴とする請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ギヤ部は、前記第2軸中心線に平行な方向において前記基部との連結部の位置が前記第3外歯の位置よりも前記ロータコア側にシフトする曲部を有することを特徴とする請求項2に記載の回転式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219871(P2012−219871A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84553(P2011−84553)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】