説明

回転式・機械的往復スライド金属羽根エアポンプ並びにパルスガスタービンエンジンシステムと組み合わされた境界層ガスタービン

回転式・機械的往復スライド羽根エアポンプは、単一のシャフト上で、パルス駆動境界層ガスタービンと一体にされている。シャフトにはスロットが設けられ、シャフトは往復スライド金属羽根を機械的に駆動させるスロット付きロータと整列配置されている。ハウジングに形成された空洞は、中心がシャフトの中心線から外れていて、ロータと空洞壁との間に偏心環状空洞を形成している。エアがハウジングの吸気口に確実に吸引され、ハウジングの排気口において確実に移動させられる。吸引ポートと排気ポートとが、夫々、空洞部に対して90°と270の角度を持ってハウジング壁に貫通形成されている。圧縮エアが、タービンハウジングの両側壁に取り付けられた燃焼室内にマニホールドを介して向けられる。アーク電極が、燃料とエアとの混合気を爆発燃焼させて、ノズルを介して境界層ガスタービンの羽根に向かって排出される高温・高圧パルス作動流体を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式・機械的往復スライド金属羽根エアポンプ(rotary mechanically reciprocated sliding metal vane air pump)並びにパルス爆発駆動ガスタービンエンジンシステム(pulse explosion driven gas turbine engine system)と組み合わされた境界層タービン(boundary layer turbine)の分野に関するものである。
【0002】
特許文献1に記載されているような爆発パルス駆動ガスタービンの分野においては、そのタービンは、運動インパクトと膨脹ガスとによってブレードレース(blade race)を介して確実に変位されるブレードを備えた爆発駆動の修正ペルトン水車(explosion−driven modified Pelton water wheel)である。圧縮エアが、ルーツ型ローブブロワー(Roots−type lobe blowers)、または、主タービン/シャフト組立体の外に設けられたスライド羽根ブロワーによって発生させられる。
【0003】
ローブブロワーは、ギヤボックスを介して同期される二つのローブを駆動させる二つのシャフトを有しているので、パルス駆動ガスタービンエンジンの主シャフトと機械的に一体化させることができない。市販のスライド羽根ブロワーは、複数のグラファイト羽根、典型的には一つのロータにつき四つのグラファイト羽根を用いており、それらグラファイト羽根は、回転中に羽根が遠心力によってポンプキャビティ内に張り出すことを可能にさせる、ロータに形成されたアングルスロット(angle slots)内に配置されている。それら羽根は、ポンプシャフト及びロータに設けられたスロットを介してポンプハウジングの直径を横切って伸びておらず、機械的に往復動しない。更に、これら羽根は、爆発性背圧によって壊れやすく、粉砕されやすい。
【0004】
境界層現象及び境界層技術は、1906年及び1913年に特許が付与されたニコラ・テスラ渦流タービン(Nikola Tesla vortex turbines)を筆頭に、一世紀以上にわたって様々な分野において用いられている。境界層タービンは、遠心タービンや軸流タービンと同様に、一定の圧力及び流量を保つ全てのタイプの作動流体と共に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,000,214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高圧パルス作動流体と共にハイブリッド境界層タービンを利用するというものである。
【0007】
本発明によれば、回転式・往復スライド羽根エアポンプと境界層タービンとが、爆発駆動ガスタービンエンジンシステムのシャフトと一体にされている。エアポンプは、スロット付きロータと回転式往復スライド羽根とを収容する二つのエンドプレートを備えた空洞ブロックハウジング(cavitated block housing)を有している。ロータは、ロータ及びシャフトが空洞ハウジング内で回転するにつれて、往復スライド羽根が空洞内で前後に動くことを可能にさせるスロット付きタービンシャフトの中心に取り付けられている。ハウジングの空洞は、シャフトの中心線から外れていて、ロータとハウジング壁との間にスペースを形成している。ロータ及び空洞の寸法が、回転毎の排気量を決定する。エアが、空洞ハウジングの入り口において確実に変位され、出口においても確実に変位される。吸気ポートと排気ポートとが、ロータと羽根が時計回りに回転する方向で、空洞に対して夫々90°と270°の角度をもって空洞ハウジング壁に設けられている。
【0008】
回転式・機械的往復動金属羽根が、空洞ハウジング壁に形成された吸気ポートを通り越して回転するに従って、羽根が、吸気オリフィスから一回分のエア(a charge of air)を確実に吸引させて、空洞内のそのエアを排気オリフィスへ確実に移動させる。回転毎に二度、エアチャージ及び排気がなされる。排気されたエアは、逆止め弁を介してマニホールドに入る。マニホールドは、タービンハウジングに設けられたバルブレス燃焼室へとエアを直接向かわせる。燃料が、燃焼室のベンチュリオリフィス(venturi orifice)内に噴射され、その燃料とエアとの混合気が、アーク点火によって着火される。爆発ガスが、ベンチュリ管内で背圧を生じさせ、燃焼室内へのエア流を減少させ、こうして、マニホールド内のエアは、その流れの向きが一時的に反対側の燃焼室の方向へ変えられる。その最初の爆発パルスが、温かい高速/低質量膨張ガスを境界層ガスタービンの羽根に対して向かわせるノズルを介して燃焼室を出て、タービンとシャフトとスライド羽根ロータを回転させて、燃焼用エアの連続的チャージを生じさせる。
【0009】
本発明は、単一の回転式・機械的往復スライド金属羽根を有するエアコンプレッサ又はブロワーを利用するものである。その羽根は、スロット付きロータ及びスロット付きシャフトに摺動自在に収容されている。ハウジング壁との接触によって、空洞ハウジングの直径を横切るスロット内で羽根を機械的に前後へ往復動させて、回転毎に二回のエアパルスを誘発及び放出させる。
【0010】
本発明は、燃料と混合されて、アーク点火によって燃焼室内で着火された時に爆発を引き起こすパルス化された、エアのチャージを利用して、ノズルを介して高速で燃焼室から放出される爆発力を生じさせるものである。
【0011】
本発明は、高温,高圧及び高速の作動流体を軸出力に変換する手段としてハイブリッド境界層ガスタービンをも利用するものである。従来の境界層タービンは、間に配置されたスペーサーと一体にボルト連結された一組のハイブリッドディスクにより構成されている。本発明のハイブリッド境界層タービンは、外側表面に機械加工された溝を備えたソリッドホイールを使用している。
【0012】
本発明の原理について、本発明の好ましい実施形態を図示した添付図面を参照して更に説明する。添付図面に図示されている実施形態は、本発明の要旨を限定するという意図のものであるというよりも、本発明を例示的に示すという意図でのものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転式・往復スライド羽根エアポンプ,空洞ハウジング,スロット付きロータ,スロット付きシャフト及びスライド羽根の横断面図である。
【図2】境界層ガスタービンホイールの端面図で、ホイールの周囲に設けられた溝によって形成された羽根部を示した図である。
【図3】回転式・往復スライド羽根エアポンプによって発生させられるパルス化された燃焼用エアと、燃焼用エアをエンジン燃焼室に運ぶマニホールドを用いた爆発駆動境界層ガスタービンエンジンシステムの横断面図である。
【図4】図1〜3に示した構成部品が組み立てられた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、図1に示した回転式・往復スライド羽根エアポンプと図2に一つだけ示した二つの境界層ガスタービンとが一体となって、図3及び図4に図示された爆発駆動ガスタービンエンジンシステムを構成している。
【0015】
図1を参照すると、回転式・往復スライド羽根エアポンプは、スロット付きシャフト13に取り付けられたスロット付きロータ12を有するハウジング11を含んでいる。そのハウジング11は空洞15を有し、その空洞15の中心はシャフト13の中心線から外れていて、そのため、ロータ12と空洞壁との間に偏心環状スペースが形成されている。単一の機械的往復スライド金属羽根14が、ハウジング11の空洞15を横切って伸びるようにスロット付きロータ12内に配置されている。より詳述すると、ロータ12とシャフト13の双方は、直径方向へ伸びて互いに整列したスロットを有し、それらスロット内に金属羽根がスライド自在に収容されている。その羽根14は、ロータ12が回転するに伴って、その両端が空洞壁に接触するように寸法付けされている。空洞壁は略円筒状になっているが、全てのポイントにおける均一なブレード接触が維持されることが要請される場合には、若干非円筒状の形状に形成することができる。
【0016】
吸気チャネル16が、ハウジング11の上部から空洞15に対して90°の角度をもってキャビティ壁まで伸びている。また、排気チャネル17が、ハウジング11の上部から吸気チャネル16に対して270°の角度をもって空洞壁まで伸びている。スロット付きシャフト13及びスロット付きロータ12が時計回りに回転するのに伴って、エアが、機械的往復スライド金属羽根14によって、吸気チャネル16を介して確実に偏心スペースへと吸い込まれ、そして、機械的往復スライド金属羽根14によって、排気チャネル17へと確実に移動させられる。従って、回転式・往復スライド金属羽根エアポンプは、一回転毎に二度のエアチャージを生じさせる。
【0017】
図2を参照すると、二つの境界層ガスタービンアセンブリの各々は、緊密嵌め合わせハウジング内に配置される円形ディスク23を有している。そのディスクの中央面の両側の中心部分に浮き縁を付ける(milled out)ことによりフライホイールが形成されている。ディスクは、その中心に穴を有し、スロット付きシャフト13上に取り付けられている。ディスク23の周囲は、表面が放射面上にある複数の周方向の羽根部24を形成する一連の深い複数の周方向の溝を有している。それら溝の深さ及び数と、ディスク23の円周が、羽根部の全表面積を決定している。
【0018】
高速の燃焼ガスがディスク23の溝内に入るに伴って、羽根壁に作用する摩擦抗力が、タービンディスク23を駆動し加速させる。タービンの周速度が高速ガスの速さに近づくにつれて、境界層が羽根部表面上に生じて、タービンディスク23の速度を維持させる。
【0019】
図3に示されているように、境界層ガスタービン23は、タービンハウジング30内に配置されている。タービン23は、主シャフト13に取り付けられている。バルブレス燃焼室20,21がハウジング30に取り付けられており、アーク電極31とアーク電極32とが、燃焼室20と燃焼室21内に夫々配置されている。機械的往復スライド金属羽根エアポンプからの出口が、燃焼用エアを中央マニホールド22に供給して、そのマニホールド22が燃焼用エアを燃焼室20,21へと向かわせる。燃焼用エアが燃焼室20,21に通じているベンチュリ管を通過するに伴って、燃料噴射器18,19が、燃料をその燃焼用エアと混合させる。次に、アーク電極31,32が燃料とエアとの混合気を爆発燃焼させて、高圧・高速作動流体を発生させる。ハウジング30には、燃焼した高圧・高速ガスを燃焼室20,21から境界層ガスタービンの羽根部24へ向けさせることを可能にさせる角度をもってガスノズル25,28が穿孔形成されている。そのガスは、複数の羽根部24の間を流れて、羽根部表面上に作用する摩擦抗力を生じさせる。ハウジング30に形成された排ガスポート26と排ガスポート27は、ノズル25とノズル28のダウンストリームにおいてノズル25とノズル28に対して夫々90度の角度をもって位置し、排気マニホールド33,33´が排気ガスをタービン23から大気中へと排出させる。
【0020】
図4に示されているように、上記構成部品が、二つの境界層ガスタービンハウジング30,30A間の中央部でエアポンプハウジング11と共に組み立てられている。それら構成部品とエンドベアリングプレート37,38とは、全て共通の主シャフト13上に位置決めされ、スペーサー36によって離間され、ハウジング11,30,30Aとエンドベアリングプレート37,38の全てのコーナーにおいて四つの締め付けボルト35によって一体に保持されている。このアセンブリ全体は、剛性を維持させるためのベースプレート34のような共通の構造体に取り付けられている。
【0021】
本発明による回転式・機械的往復スライド金属羽根エアポンプと境界層ガスタービンは本発明の要旨を逸脱しない範囲において修正及び変更し得るので、上述した本発明の内容及び添付図面は、特許請求の範囲において定義された発明の単なる例示を示すものとして解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトを支持するハウジングと、
吸気口と排気口とを有するエアポンプと、
少なくとも一つのタービンアセンブリを有し、
前記エアポンプが、回転毎に二つの圧縮エアパルスを生じさせるように前記シャフトによって駆動され、
前記少なくとも一つのタービンアセンブリが、
マニホルールドによって前記排気口に接続された一対のバルブレス燃焼室と、
前記燃焼室からの燃焼エアによって駆動されるタービンを有し、
前記燃焼室の各々が、前記燃焼室に入る前記圧縮エアに燃料を注入する手段と、前記燃料と前記エアとの混合気を前記燃焼室内で着火させる手段を有し、
前記タービンが、前記回転シャフト上で前記エアポンプの片側に取り付けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記エアポンプが、
前記吸気口と前記排気口とが貫通形成された壁によって区画された空洞を有するハウジングと、
前記空洞内で回転するように前記シャフトに固定されたロータと、
単一の金属羽根を有し、
前記空洞が前記シャフトの中心線から外れた中心を有し、
前記ロータと前記ハウジングの壁とが、それらの間に偏心環状スペースを形成し、
前記ロータと前記シャフトとの双方が、直径方向へ伸びて互いに整列したスロットを有し、
前記金属羽根が、前記整列スロット内にスライド自在に配置され且つ両端が前記ハウジング壁と接触するように寸法付けされ、前記ロータが前記空洞内で回転するに従って、前記羽根が、前記吸気口を介してエアを前記偏心環状スペース内に吸引させ、前記排気口を介して前記エアを偏心環状スペースの外へ移動させるようになっている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記タービンが、周方向の複数の羽根部を区画している周方向の複数の溝を備えた周辺部を有する境界層タービンであって、前記複数の羽根部が、燃焼用ガスが前記タービンに向けられた時に境界層を形成するのに十分な表面積を有している、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記タービンアセンブリを二つ有し、それらタービンアセンブリが、前記エアポンプの両側に配置されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記タービンアセンブリを二つ有し、それらタービンアセンブリが、前記エアポンプの両側に配置されている、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記タービンアセンブリを二つ有し、それらタービンアセンブリが、前記エアポンプの両側に配置されている、請求項3に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517741(P2011−517741A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536080(P2010−536080)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084328
【国際公開番号】WO2009/073406
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(311006054)アルファ エンジンズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】