説明

回転操作ユニット及び電子機器

【課題】回転操作部材の回転操作時にクリック感を発生させつつ、1個の検出素子により回転操作部材の回転量及び回転方向を検出可能な回転操作ユニットを提供する。
【解決手段】回転操作部材36と一体的に回転する回転マグネット37は、円周方向にS極とN極とが交互に一定のピッチで着磁されており、回転マグネット37が回転したときの磁束の向きの変化をGMRセンサ41で検出することで、回転操作部材36の回転方向及び回転量を検出する。また、回転マグネット37のN極との間で吸引力が発生するようにS極に着磁された固定マグネット35を回転マグネット36と対向するように配置し、回転操作部材36を回転させたときの回転マグネット37の磁極と固定マグネット35の磁極との間の吸引力/反発力の変化を利用してクリック感を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作ユニットを備える電子機器に関し、特に、回転操作時にクリック感を発生させる回転操作ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置では、ダイアル等の回転操作部材を回転操作することで、撮影条件の設定や機能の選択を行えるようにしている。例えば、円周方向にS極とN極とを交互に着磁したリング状マグネットを回転操作部材の下面側に配置し、ホール素子でリング状マグネットの回転を検出する回転操作ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この回転操作ユニットでは、2つのホール素子を互いに磁極の配置ピッチの整数倍からややずらして配置し、これら2つのホール素子の出力の位相関係から回転方向を検出している。つまり、一方のホール素子の出力が他方のホール素子の出力よりも位相が早いか又は遅いかを検出することで、回転方向を検出している。
【0004】
また、この回転操作ユニットは、回転操作部材を回転操作した際に操作者がクリック感を感じることができるようにするための、リング状マグネットの磁極と磁気的に相互に作用するクリック感発生用マグネットを備えている。このクリック感発生用マグネットは、互いに磁力線の方向が逆になるように着磁された磁極がリング状マグネットの磁極の配置角度ピッチPと同じピッチPで交互に複数配置された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−280799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の回転操作ユニットでは、2個のホール素子を必要とするため、ユニットコストが増加し、また、ユニットが大型化するという問題がある。また、2個のホール素子の設置角度の調整が必要となってくるため、ユニットの構造が複雑になり、ユニットの組立作業性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、回転操作部材の回転操作時にクリック感を発生させつつ、1個の検出素子により回転操作部材の回転量及び回転方向を検出可能な回転操作ユニット、及びこの回転操作ユニットを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転操作ユニットは、操作されることにより回転する回転操作部材と、リング状の形状を有し、円周方向にS極とN極とが交互に一定のピッチで着磁され、前記回転操作部材と一体となって回転する第1のマグネット部材と、前記第1のマグネット部材に着磁された磁極と対向するように配置され、前記第1のマグネット部材において互いに隣接するS極とN極との間に生じる磁束の向きを検出し、検出した磁束の向きに応じて異なる信号を出力する磁束検出手段と、前記第1のマグネット部材に着磁されたS極とN極のうち一方の磁極との間で吸引力が発生するように着磁されて前記第1のマグネット部材の磁極と対向するように配置され、前記回転操作部材の回転が停止された際に前記吸引力によって前記第1のマグネット部材に着磁されたS極とN極のうち一方の磁極と前記磁束検出手段とが対向するように前記第1のマグネット部材を回転させる第2のマグネット部材と、前記回転操作部材が操作されるときに、前記磁束検出手段から出力される信号に基づいて、前記回転操作部材の回転方向と回転量とを検出する回転検出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作者が回転操作部材を回転させたときに、操作者にクリック感を感じさせつつ、1個の検出素子で回転操作部材の回転量及び回転方向を検出することができる。これにより、快適な操作性を実現しつつ、部品点数を減らした簡素な構造を有する回転操作ユニットを実現することができるため、組み立てが容易になり、ひいては、装置コストを低く抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のデジタルカメラが備える回転操作ユニットとしてのジョグダイアルの構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は断面図である。
【図3】図2のジョグダイアルの分解斜視図である。
【図4】図2のジョグダイアルにおいて、回転操作部材を回転させたときの回転マグネット、固定マグネット及びGMRセンサの各磁極の相対的な位置関係を模式的に示す上面図である。
【図5】図2のジョグダイアルにおいて、回転マグネットの磁極、固定マグネット及びGMRセンサの相対的な位置関係の変化と磁束の向きとの関係を模式的に示す図である。
【図6】図2のジョグダイアルにおいて、回転操作部材を時計回り/反時計回りにそれぞれ回転させたときのGMRセンサの出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る電子機器として、所謂、デジタルスチルカメラ(デジタルカメラ)を取り上げることとするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
<デジタルカメラの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラの外観を示す斜視図である。デジタルカメラ10は、前面に配置された沈胴式のレンズ鏡筒20、モードダイアル21、レリーズボタン22、ズームレバー23、電源ボタン24、ジョグダイアル25、液晶パネル26及びファインダー27を備えている。
【0013】
デジタルカメラ10は、電源ボタン24をオンにすることで、撮像動作が可能な電源オン状態となる。また、モードダイアル21を回転させることで撮影モードを切り替えることができ、選択可能な撮影モードとしては、マニュアルモード、シャッタースピード優先モード、絞り優先モード、動画撮影モード、ナイトモード等が挙げられる。レリーズボタン22が半押しされると、撮影準備動作(焦点検出動作及び測光動作)が開始され、全押されると、撮影が実行される。
【0014】
ズームレバー23は、左右それぞれの方向に一定角度だけ回転可能に構成されており、回転操作によって撮影画角の調整を行うことができるようになっている。例えば、望遠側(例えば、右側)に回転させると被写体を大きく写すことができ、広角側(例えば、左側)に回転させると被写体を小さくして、広範囲を写すことができるようになっている。
【0015】
ジョグダイアル25は本発明に係る回転操作ユニットの一例であり、デジタルカメラ10では、ジョグダイアル25を回転させ、押下することで、液晶パネル26に表示された各種項目の選択や確定の操作を行うことができるようになっている。液晶パネル26には、撮影した画像やライブビュー画像が表示される。撮影者は、液晶パネル26にライブビュー画像を表示させて被写体像を確認しながら撮影することもできるし、ファインダー27に接眼して被写体像を確認しながら撮影することもできる。
【0016】
なお、デジタルカメラ10の動作制御や画像処理は、不図示の制御部(マイクロコンピュータ)によって実行され、後述するように、制御部はジョグダイアル25の回転方向及び回転量を検出する回転検出手段として機能する。
【0017】
<ジョグダイアル(回転操作ユニット)の構造>
図2は、ジョグダイアル25の構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)に示す矢視A−A断面図である。また、図3は、ジョグダイアル25の分解斜視図である。
【0018】
ジョグダイアル25では、概略、第1のマグネット部材である回転マグネット37と、回転マグネット37と対向するように配置された第2のマグネット部材である固定マグネット35との間に作用する吸引力/反発力を利用してクリック感を発生させる。また、外部からの操作により回転操作部材36を回転させたときに回転マグネット37の磁束をGMRセンサ41で検出し、制御部がその検出結果に基づいて回転操作部材36の回転方向と回転量を検出する。以下、ジョグダイアル25の構造について詳細に説明する。
【0019】
ジョグダイアル25は、撮影者等による回転操作の対象となる回転操作部材36と、押圧操作の対象となる操作ボタン33とを備え、回転操作部材36には操作内容を表示したカバー部材38が取り付けられている。回転操作部材36又はカバー部材38の上下左右の4箇所(操作内容が表示されている4箇所及びその近傍)では、カバー部材38の平板面に垂直な方向への押圧操作が可能となっている。
【0020】
ジョグダイアル25の土台となるベース部材31には突起部311が形成されており、フレキシブル配線板40に形成される穴部401をベース部材31の突起部311に係合させることで、フレキシブル配線板40がベース部材31に位置決めされる。フレキシブル配線板40には、回転マグネット37の磁束を検出する磁束検出手段としてのGMRセンサ41が実装されている。
【0021】
GMRセンサ41は、設置面に対して水平方向の磁束を検出し、検出した磁束が設定された閾値を超えると信号を出力するデジタルタイプのセンサである。GMRセンサ41は、磁束の向きを検出することができ、本実施形態では、GMRセンサ41は、時計回りの磁束を検出すると第1の信号を出力し、反時計回りの磁束を検出すると第2の信号を出力する。なお、「時計回りの磁束」及び「反時計回りの磁束」の定義については、図5を参照して後に説明する。
【0022】
また、GMRセンサ41は、磁束の向きに拘わらず、磁束を検出することできないとき及び磁束を検出したがその大きさが閾値以下であるときには、信号を出力しない。例えば、第1の信号は、信号レベルが「1」の信号であり、第2の信号は信号レベルが「−1」の信号であり、信号が出力されない状態では信号のレベルが「0」になる。
【0023】
フレキシブル配線板40には、互いに直交する4方向(図1に示す状態に対応する上下左右の各方向)に配置される4つのメタルドームスイッチ421と、これらの中央に配置される1つのメタルドーム422とが実装されている。フレキシブル配線板40上には弾性部材32が配置されている。弾性部材32には穴部321が形成されており、穴部321がベース部材31の突起部311と係合することで、弾性部材32はベース部材31に対して位置決めされる。また、弾性部材32には、操作ボタン33を固定するための固定部322と、GMRセンサ41を避けるための穴部323と、メタルドームスイッチ421及びメタルドーム422を押すための5つの突起部324が設けられている。
【0024】
弾性部材32上に配置される操作ボタン33には爪部331が形成されており、爪部331を弾性部材32の固定部322に挿入することで、操作ボタン33が弾性部材32に対して位置決めされる。操作ボタン33がベース部材31に向けて押し込まれると、弾性部材32の突起部324を介してフレキシブル配線板40の中央に配置されるメタルドーム422が押下され、これによってメタルドーム422は信号を出力する。
【0025】
操作ボタン33を囲むように弾性部材32上に配置される支持部材34には、位置決め部341が形成されており、位置決め部341がベース部材31の突起部311と係合することにより、支持部材34はベース部材31に対して位置決めされる。そのため、支持部材34はベース部材31に対して回転することができない。
【0026】
支持部材34の裏面(弾性部材32と対向する面)には、弾性部材32の突起部324を介してメタルドームスイッチ421を押す突起部342が、4つのメタルドームスイッチ421のそれぞれに対して形成されている。支持部材34は、ベース部材31に対して搖動可能であり、回転操作部材36又はカバー部材38が押下されると支持部材34がベース部材31に向けて押し込まれ、4つの突起部342のいずれかが対応するメタルドームスイッチ421を押す。これによって、押されたメタルドームスイッチ421が信号を出力する。
【0027】
支持部材34には、GMRセンサ41を避けるための穴部343が形成されている。また、支持部材34には円筒形状部344が形成されており、円筒形状部344には、回転防止溝345、係合部346及び凹部347が設けられている。
【0028】
ジョグダイアル25は、操作者等がクリック感を感じることができるようにクリック感を発生させるための固定マグネット35を備えている。図2(c)において、固定マグネット35の表裏(上側と下側)は互いに異なる磁極に着磁されており、本実施形態では、固定マグネット35の上側はS極に、下側はN極にそれぞれ着磁されている。固定マグネット35は、支持部材34に設けられた凹部347に接着により固定される。
【0029】
回転操作部材36はリング形状を有しており、内周部361は支持部材34の円筒形状部344に回転可能に係合する。回転操作部材36において支持部材34と対向する面には摺動部362が形成されており、摺動部362は、支持部材34との間の接触抵抗を低減させるために、その断面が半円形状となっている。
【0030】
支持部材34と回転操作部材36との間には、リング状の形状を有し、円周方向にS極とN極とが交互に一定のピッチで着磁された回転マグネット37が配置されており、回転マグネット37は回転操作部材36と一体に回転する。そのため、回転操作部材36を回転させると、回転マグネット37の磁極と固定マグネット35のS極との間に磁気的な吸引力と反発力とが交互に発生し、その差がクリック感を発生させる。
【0031】
なお、固定マグネット35と回転マグネット37に着磁されたS極とN極のうち一方の磁極との間で磁気的な吸引力が発生すればよい。したがって、回転マグネット37と対向する固定マグネット35の磁極をN極に設定することもできる。
【0032】
回転操作部材36が回転すると、回転マグネット37の各磁極がGMRセンサ41の上を通過するため、GMRセンサ41は異なる向きの磁極が交互に通過したことを検出して、磁束の向きに応じた信号を出力する。よって、デジタルカメラ10では、GMRセンサ41から出力される信号によって、回転操作部材36の回転量と回転方向を求めることができる。その詳細は、図4及び図5を参照して後に説明する。
【0033】
支持部材34の円筒形状部344に回転操作部材36を係合させた後、カバー部材38が支持部材34の円筒形状部344の内側に挿入される。カバー部材38にはフック部381が形成されており、フック部381は支持部材34の係合部346に係合する。こうして、回転操作部材36と回転マグネット37は、支持部材34とカバー部材38との間に挟持される。このように支持部材34とカバー部材38とを係合させることで、回転操作部材36と回転マグネット37とが支持部材34から外れることがなく、しかも、操作ボタン33が支持部材34の円筒形状部344の内側から外れることもない。
【0034】
<ジョグダイアルの回転方向と回転量の検出>
図4は、回転操作部材36を回転させたときの、回転マグネット37と固定マグネット35及びGMRセンサ41との各磁極の相対的な位置関係を模式的に示す上面図である。なお、図4では、理解を容易にするために、フレキシブル配線板40、GMRセンサ41、固定マグネット35及び回転マグネット37のみを図示している。
【0035】
図5は、回転マグネット37の磁極、固定マグネット35及びGMRセンサ41の相対的な位置関係の変化と磁束の向きとの関係を模式的に示す図である。回転マグネット37が時計回りに回転したときには、図5に帯状に示した回転マグネット37は左から右へ動くものとし、回転マグネット37が反時計回りに回転したときには、図5に帯状に示した回転マグネット37は右から左へ動くものとする。
【0036】
ここで、回転マグネット37においては、隣接するN極とS極との間に磁力が発生する。各N極を基準として、その右側に位置するS極に対して生じている磁束の向きを回転マグネット37の回転方向に合わせて「時計回りの磁束」とし、同様に、各N極を基準としてその左側に位置するS極に対して生じている磁束の向きを「反時計回りの磁束」とする。
【0037】
図4(a)及び図5(a)に示す状態は、固定マグネット35のS極と回転マグネット37のN極とが磁気的吸引力により引き寄せあう磁気的安定状態である。回転操作部材36が操作されないとき、固定マグネット35と回転マグネット37とは、このような磁気的安定状態となる。磁気的安定状態では、回転マグネット37のN極の真下にGMRセンサ41が位置する。したがって、GMRセンサ41を横切る磁束はほとんど検出されない。ここで、前述の通り、GMRセンサ41は、磁束の向きに拘わらず、磁束を検出することできないとき及び磁束を検出したがその大きさが閾値以下であるときには信号を出力しないから、磁気的安定状態では、GMRセンサ41からは信号が出力されない。
【0038】
図4(b)及び図5(b)は、図4(a)及び図5(a)に示す状態から回転操作部材36を時計回りに1/4周期回転させた状態を示している。なお、「1周期」を「図4(a)及び図5(a)に示す磁気的安定状態から図4(e)及び図5(e)に示す次の磁気的安定状態に至るまで」と定義する。
【0039】
図4(b)及び図5(b)の状態では、回転マグネット37のN極とS極の中間にGMRセンサ41が位置する。したがって、GMRセンサ41は反時計回りの磁束を検出する。ここで、前述の通り、GMRセンサ41は時計回りの磁束を検知すると第1の信号を出力し、反時計回りの磁束を検知すると第2の信号を出力するので、図4(b)及び図5(b)の状態では、GMRセンサ41は第2の信号を出力する。図4(b)及び図5(b)の状態で回転操作部材36の回転操作が中止されると、固定マグネット35と回転マグネット37との間に作用する磁気的吸引力によって、図4(a)及び図5(a)に示す状態へ遷移する。
【0040】
図4(c)及び図5(c)は、図4(b)及び図5(b)に示す状態から回転操作部材36を時計回りに1/4周期回転させた状態を示している。図4(c)及び図5(c)の状態では、回転マグネット37のS極の真下にGMRセンサ41が位置する。したがって、GMRセンサ41を横切る磁束は殆ど検出されず、よって、GMRセンサ41から信号が出力されない。
【0041】
図4(c)及び図5(c)の状態で回転操作部材36の回転操作が中止されると、固定マグネット35と回転マグネット37との間に作用する磁気的反発力により、図4(b)及び図5(b)に示す状態又は図4(d)及び図5(d)に示す状態へと遷移する。したがって、例えば、図4(b)及び図5(b)に示す状態へ遷移した場合には、更に、固定マグネット35と回転マグネット37との間に作用する磁気的吸引力によって、図4(a)及び図5(a)に示す状態へ遷移することになる。
【0042】
図4(d)及び図5(d)は、図4(c)及び図5(c)に示す状態から回転操作部材36を時計回りに1/4周期回転させた状態を示している。図4(d)及び図5(d)の状態では、回転マグネット37のN極とS極の中間にGMRセンサ41が位置する。したがって、GMRセンサ41は、時計回りの磁束を検出して、第1の信号を出力する。図4(d)及び図5(d)の状態で回転操作部材36の回転操作が中止されると、固定マグネット35と回転マグネット37との間に作用する磁気的吸引力によって、図4(e)及び図5(e)に示す状態へと遷移する。
【0043】
図4(e)及び図5(e)は、図4(d)及び図5(d)に示す状態から回転操作部材36を時計回りに1/4周期回転させた状態を示している。図4(e)及び図5(e)の状態は、図4(a)及び図5(a)の状態と同様に、固定マグネット35のS極と回転マグネット37のN極とが磁気的吸引力により引き寄せあう磁気的安定状態である。また、図4(e)及び図5(e)の状態では、GMRセンサ41は回転マグネット37のN極の真下に位置するため、GMRセンサ41を横切る磁束は殆ど検出されず、よって、GMRセンサ41から信号は出力されない。
【0044】
図6は、回転操作部材36を時計回り/反時計回りにそれぞれ回転させたときのGMRセンサ41の出力を示す図である。図6(a)は、回転操作部材36を時計回りに回転させたときにGMRセンサ41から出力される信号を示しており、図6(b)は、回転操作部材36を反時計回りに回転させたときにGMRセンサ41から出力される信号を示している。
【0045】
回転操作部材36を時計回りに回転させると、図6(a)に示されるように、GMRセンサ41は最初に第2の信号を出力する。デジタルカメラ10の制御部は、GMRセンサ41が第2の信号を出力した後、いずれの信号も出力しなくなり、続いて第1の信号を出力したときに、回転操作部材36が時計回りに1周期回転したと判断する。このとき、デジタルカメラ10の制御部は、何周期回転したかをカウントすることにより、回転操作部材36の回転量を求める。
【0046】
回転操作部材36を反時計回りに回転させた場合、図4(e)及び図5(e)の状態から図4(d)及び図5(d)の状態へ遷移し、続いて図4(c)及び図5(c)の状態、図4(b)及び図5(b)の状態を経て、図4(a)及び図5(a)の状態へ遷移する。
【0047】
したがって、回転操作部材36を反時計回りに回転させた場合、図6(b)に示されるように、GMRセンサ41は、最初に時計回りの磁束を検出して、第1の信号を出力する。その後、GMRセンサ41は、GMRセンサ41を横切る磁束を殆ど検出せず、よって、信号を出力しない期間を経た後、反時計回りの磁束を検出して第2の信号を出力する。したがって、デジタルカメラ10の制御部は、GMRセンサ41が第1の信号を出力した後、いずれの信号も出力しなくなり、続いて第2の信号を出力したときに、回転操作部材36が反時計回りに1周期回転したと判断する。
【0048】
このように、回転操作部材36が停止位置にあるときにはGMRセンサは信号を出力していないため、回転操作部材36を回転させた際にGMRセンサ41から第1の信号と第2の信号のどちらが先に出力されるかを検出することで、回転操作部材36の回転方向を検出することができる。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態によれば、回転操作部材36を回転させた際にクリック感を発生させることができると共に、1個の検出素子(GMRセンサ41)によって回転操作部材36の回転量及び回転方向を検出することができる。これにより、快適な操作性を実現しつつ、部品点数を減らした簡素な構造を有する回転操作ユニット(ジョグダイアル25)を実現することができ、ひいては、デジタルカメラ10の装置コストを低く抑えることが可能になる。
【0050】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、水平方向の磁束を検出するGMRセンサ41を用いたが、これに代えて、垂直方向の磁束を検出するセンサを用いてもよく、その場合には、垂直方向の磁束を検出できるような向きにセンサを実装すればよい。
【0052】
また、上記実施形態では、回転マグネット37のN極と固定マグネット35のS極との間に吸引力が作用する構成とすると共に、回転マグネット37の静止時に回転マグネット37のN極と対向する位置にGMRセンサ41を配置した。しかし、これに限られず、回転マグネット37のN極と固定マグネット35のS極との間に吸引力が作用する構成とすると共に、回転マグネット37の静止時に回転マグネット37のS極と対向する位置にGMRセンサ41を配置した構成としてもよい。
【0053】
この場合、図4及び図5を参照して説明した形態と同様に、回転マグネット37の静止状態から回転操作部材36を時計回りに1/4周期回転させると、GMRセンサ41は最初に時計回りの磁束を検出し、第1の信号を出力する。よって、図6(b)の信号が回転操作部材36を時計回りに回転させたときにGMRセンサ41から出力される信号となり、同様に、図6(a)の信号が回転操作部材36を半時計回りに回転させたときにGMRセンサ41から出力される信号となる。
【0054】
このように、回転操作部材36の回転方向と回転量を検出するための、回転マグネット37の磁極と対向する固定マグネット35の磁極の選択、静止した回転マグネット37の磁極に対するGMRセンサ41の設置位置の選択は、任意である。
【符号の説明】
【0055】
35 クリック発生用マグネット
36 回転操作部材
37 回転マグネット
41 GMRセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されることにより回転する回転操作部材と、
リング状の形状を有し、円周方向にS極とN極とが交互に一定のピッチで着磁され、前記回転操作部材と一体となって回転する第1のマグネット部材と、
前記第1のマグネット部材に着磁された磁極と対向するように配置され、前記第1のマグネット部材において互いに隣接するS極とN極との間に生じる磁束の向きを検出し、検出した磁束の向きに応じて異なる信号を出力する磁束検出手段と、
前記第1のマグネット部材に着磁されたS極とN極のうち一方の磁極との間で吸引力が発生するように着磁されて前記第1のマグネット部材の磁極と対向するように配置され、前記回転操作部材の回転が停止された際に前記吸引力によって前記第1のマグネット部材に着磁されたS極とN極のうち一方の磁極と前記磁束検出手段とが対向するように前記第1のマグネット部材を回転させる第2のマグネット部材と、
前記回転操作部材が操作されるときに、前記磁束検出手段から出力される信号に基づいて、前記回転操作部材の回転方向と回転量とを検出する回転検出手段と、を備えることを特徴とする回転操作ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の回転操作ユニットを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73726(P2013−73726A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210603(P2011−210603)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】