説明

回転機の制御装置、及び回転機の制御システム

【課題】インバータを操作することでモータジェネレータの実際のトルクを要求トルクTdに制御するに際し、高い電圧利用率が要求される領域においてその制御性が低下すること。
【解決手段】位相設定部34では、要求トルクTdと推定トルクTeとの差に基づき、インバータの出力電圧ベクトルの位相δを設定する。ノルム設定部36では、モータジェネレータの電気角速度ωと要求トルクTdとに基づき、インバータの出力電圧ベクトルのノルムVnを設定する。操作信号生成部38では、インバータの入力電圧(電源電圧VDC)及びノルムVnに基づき算出される電圧利用率に応じた操作信号波形を検索し、この検索された操作信号波形を有する信号の出力タイミングを位相δに基づき設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の正極及び負極のそれぞれを回転機の端子に電気的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の実際のトルクを要求トルクに制御する回転機の制御装置、及び回転機の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、3相電動機の各相に流れる電流を指令値にフィードバック制御すべく、各相に印加すべき電圧の指令値(指令電圧)を算出し、算出される指令電圧とキャリアとの大小に基づきインバータのスイッチング素子を操作するPWM制御を行うものも実用化されている。これにより、3相電動機の各相に印加される電圧を指令電圧とすることができ、ひいては各相に流れる電流を所望に制御することができる。
【0003】
ただし、3相電動機の高回転速度領域においては、指令電圧が上昇し、その振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となることで、インバータの実際の出力電圧を指令電圧とすることができなくなる。ここで、3相電動機の高回転速度領域においては、インバータのスイッチング素子のオン・オフ周期と3相電動機の電気角の回転周期とを略一致させるいわゆる矩形波制御を行うことも実用化されている。ただし、矩形波制御の電圧利用率は、上記PWM制御における指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」の値となる時点での電圧利用率と比較して不連続的に大きいものとなっている。
【0004】
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となる場合、電流フィードバック制御のためのdq軸上での指令電圧に基づき算出される位相と、ROMに格納されたパルスパターンとに基づき、インバータを操作することも提案されている。これにより、電圧利用率を、矩形波制御の電圧利用率へと上昇させていくことができる。
【特許文献1】特開9−47100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、指令電圧がインバータの入力電圧を超えてある程度上昇すると、上記電流フィードバック制御の制御性が低下することが発明者らによって見出されている。これは、電流フィードバック制御のための操作量であるdq軸上の指令電圧が、電動機の制御性を高く維持するうえでは必ずしも適切なものとならなくなることを意味する。このため、上記従来技術のように、電流フィードバック制御によって定まる位相を用いたのでは、PWM制御から矩形波制御へと移行させる際に電動機の制御性を高く維持することが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電力変換回路を操作することで回転機の実際のトルクを要求トルクに制御するに際し、高い電圧利用率が要求される領域においても回転機の制御性を高く維持することのできる回転機の制御装置及び回転機の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、直流電源の正極及び負極のそれぞれを回転機の端子に電気的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の実際のトルクを要求トルクに制御する回転機の制御装置において、前記回転機に対する要求トルク及び前記回転機の回転速度に基づき、回転2相座標系における前記電力変換回路の出力電圧ベクトルのノルムを設定するノルム設定手段と、前記要求トルクと実際のトルクとの差に基づき、回転2相座標系における前記電力変換回路の出力電圧の位相を設定する位相設定手段と、前記設定されるノルム及び位相に基づき前記スイッチング素子の操作信号を前記電力変換回路に出力する操作信号出力手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、ベクトルのノルムを、要求トルクと回転速度とに基づき、自由に設計することができる。このため、例えば電流フィードバック制御を行う場合と比較して、操作信号波形の設計の自由度も向上し、ひいては回転機の制御性を高く維持することができる。更に、上記発明では、上記ベクトルのノルムが、要求トルクへの制御のためのフィードフォワード操作量として機能する一方、上記位相が、要求トルクへの制御のためのフィードバック操作量として機能する。このため、フィードフォワード操作量の設計に際して前提とした制御対象と実際の制御対象との間にずれがある場合であっても、このずれに起因したフィードフォワード制御の制御性の低下を、上記位相を操作することによるフィードバック制御によって補償することができる。
【0010】
なお、ベクトルのノルムとは、ベクトルの各成分の2乗の和の平方根、すなわち長さのことである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記操作信号は、電気角の1周期において、前記直流電源の正極及び負極のそれぞれに前記回転機が電気的に接続される各期間を同一とするものであることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、直流電源の正極及び負極のそれぞれに回転機が接続される各期間が互いに同一であるため、電気角の1周期で回転機に印加される電圧を均衡のとれたものとすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記操作信号は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有する信号であることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、電気角の1周期において回転機に印加される電圧を、正弦波形状の電圧に近似させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記直流電源の電圧を取得する取得手段を更に備え、前記操作信号出力手段は、前記直流電源の電圧に対する前記ノルムの相対的な大きさに基づき前記操作信号を設定することを特徴とする。
【0016】
電力変換回路の出力電圧ベクトルのノルムを設定されるノルムとするための電力変換回路の操作信号は、電力変換回路の入力電圧に依存する。上記発明では、この点に鑑み、入力電圧としての直流電源の電圧に対するノルムの相対的な大きさに基づき操作信号を設定することで、操作信号を適切に設定することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記操作信号出力手段は、前記相対的な大きさのそれぞれに応じた電気角の1周期分の操作信号波形を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段の記憶する操作信号波形のうちの該当するものを用いて前記操作信号を前記電力変換回路に出力することを特徴とする。
【0018】
上記発明では、上記相対的な大きさに応じた最適な操作信号波形を予め適合しておくことが可能となる。このため、上記発明では、制御装置の演算負荷を低減しつつも、操作信号波形を適切に設定することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記位相設定手段は、前記要求トルクに対して前記実際のトルクが不足する場合、前記位相を進角させ、前記要求トルクに対して前記実際のトルクが過剰となる場合、前記位相を遅角させるものであり、前記ノルム設定手段は、前記回転機のトルクを前記ノルム及び位相によって表現したモデル式の位相による偏微分が正となるとの条件を満たすように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、位相設定手段の設定する位相によって、トルクフィードバック制御が成立するようにノルムを設定することができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、d軸電流をゼロ以下とするように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、操作信号出力手段による操作信号波形の設定の自由度を確保しつつも、トルクフィードバック制御によって強め界磁制御がなされること回避することができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、q軸電流の符号が前記要求トルクの符号に一致するように前記ノルムを設定することを特徴とする。
【0024】
上記発明では、操作信号出力手段による操作信号波形の設定の自由度を確保しつつも、ノルム設定手段の設定によって通常の電流フィードバック制御と同様の条件を満たすようにノルムを設定することができる。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、最小の電流で最大のトルクを生成するように前記ノルムを設定することを特徴とする。
【0026】
上記発明では、操作信号出力手段による操作信号波形の設定の自由度を確保しつつも、ノルム設定手段の設定によって最大トルク制御を実現することができる。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、前記電力変換回路の出力電圧のうちの前記回転機の誘起電圧によって相殺される電圧成分を除いた部分に応じて生じる電流によって最大のトルクを生成するように前記ノルムを設定することを特徴とする。
【0028】
出力電圧から誘起電圧によって相殺される部分を除いた部分に応じて生じる電流によってトルクが最大となるとの条件を課した場合、位相とノルムとに1対1の対応関係があることが発明者らによって見出されている。上記発明では、この点に着目することで、要求トルクを実現するうえでのノルムを極力低減させつつも、位相に応じてノルムを適切に設定することができる。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、d軸電流をゼロとするように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする。
【0030】
上記発明では、ノルム設定手段の設定によって弱め界磁制御及び強め界磁制御の双方を回避した制御を実現することができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項8〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記ノルム設定手段は、要求トルクを入力として且つ前記ノルムを回転速度で除算した値である速度規格化ノルムを出力とする写像を利用して前記ノルムを設定することを特徴とする。
【0032】
上記発明では、写像を利用することで、要求トルク及び回転速度に基づきノルムを簡易に設定することができる。なお、ここで、写像とは、モデルから解析的に導出された関数のみならず、マップ等をも含む。ここで、マップ等は、当該制御装置外で予め数値計算等によって算出、作成されるものである。
【0033】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記操作信号出力手段は、前記電力変換回路の電圧利用率が所定以上となる場合に前記操作信号を出力するものであることを特徴とする。
【0034】
電圧利用率が小さい場合には、従来のPWM制御等によって回転機の制御性を維持することが可能である。上記発明では、この点に鑑み、電圧利用率が所定以上である場合に限って上記操作信号出力手段の出力する操作信号にて電力変換回路を操作することで、操作信号出力手段等の設計工数を極力低減することができる。
【0035】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記回転機を実際に流れる電流を前記要求トルクに応じた電流の指令値にフィードバック制御する電流フィードバック制御手段を更に備え、前記電圧利用率が低い領域では、前記電流フィードバック制御によって前記電力変換回路を操作することを特徴とする。
【0036】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記電流フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御のための操作量として前記回転機の電圧の指令値を算出する手段を備え、前記ノルム設定手段は、前記操作信号出力手段による前記電力変換回路の操作への切り替えに際し、前記電流フィードバック制御手段の算出する電圧の指令値に基づき前記ノルムの初期値を設定することを特徴とする。
【0037】
上記発明では、操作信号出力手段による電力変換回路の操作への切り替えに際し、上記電圧の指令値に基づきノルムの初期値を設定することで、切り替えの前後でノルムの連続性を維持することができる。
【0038】
なお、前記位相設定手段は、前記操作信号出力手段による前記電力変換回路の操作への切り替えに際し、前記電流フィードバック制御手段の算出する電圧の指令値に基づき前記位相を設定することが望ましい。
【0039】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記ノルム設定手段は、前記ノルムの初期値とは独立に前記回転機の回転速度及び前記要求トルクに基づき前記ノルムを算出するノルム算出手段と、当該ノルム設定手段の設定するノルムを前記初期値から前記ノルム算出手段の算出するノルムへと徐々に変化させる変化手段とを備えることを特徴とする。
【0040】
操作信号出力手段による電力変換回路の操作への切り替えに際し、上記電圧の指令値に基づきノルムの初期値を設定したとしても、その直後にノルム算出手段の算出するノルムが初期値との間に連続性を有しない値であるなら、ノルムの連続性を保つことができなくなるおそれがある。この点、上記発明では、変化手段を備えることで、操作信号出力手段による電力変換回路の操作への切り替えに起因したノルムの急変を好適に回避することができる。
【0041】
請求項17記載の発明は、請求項14〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記電流フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御のための操作量として前記回転機の電圧の指令値を算出する手段を備え、前記操作信号出力手段による前記電力変換回路の操作から前記電流フィードバック制御手段による前記電力変換回路の操作へと切り替えるに際し、前記電流フィードバック制御手段による前記回転機に対する電圧の指令値の初期値を、前記ノルム設定手段の設定するノルム及び前記位相設定手段の設定する位相に基づき設定することを特徴とする。
【0042】
上記発明では、電流フィードバック制御手段による電力変換回路の操作への切り替えに際し、上記ノルム及び上記位相に基づき上記電圧の指令値の初期値を設定することで、電力変換回路の出力電圧の連続性を維持することができる。
【0043】
請求項18記載の発明は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の発明において、前記操作信号出力手段によって操作信号が前記電力変換回路に出力されている状況下、前記回転機の回転速度の変化量が第1の規定量以下であって且つ前記要求トルクの変化量が第2の規定量以下であるにもかかわらず、前記回転機を流れる電流が閾値以上となる場合、前記電力変換回路の出力電圧ベクトルのノルムを制限する制限手段を更に備えることを特徴とする。
【0044】
操作信号出力手段による電力変換回路の操作がなされるトルクフィードバック制御時においては、電流のフィードバック制御がなされていない。ここで、例えば回転機の回転速度が急低下する場合等においては、回転機を流れる電流が過度に増大するおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、制限手段を備えることで、回転機を過度の電流が流れる場合にこれに迅速に対処することができる。
【0045】
請求項19記載の発明は、請求項1〜18のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、前記電力変換回路とを備えることを特徴とする回転機の制御システムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0047】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。
【0048】
モータジェネレータ10は、インバータIV及び昇圧コンバータCVを介して高圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、高圧バッテリ12の電圧(例えば「288V」)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧するものである。一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
【0049】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度θ(電気角)を検出する回転角度センサ15を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16,17,18を備えている。更に、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ19を備えている。
【0050】
上記各種センサの検出値は、インターフェース13を介して低圧システムを構成する制御装置14に取り込まれる。制御装置14では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVやコンバータCVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作する信号が、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnである。また、昇圧コンバータCVの2つのスイッチング素子を操作する信号が、操作信号gup,gcnである。
【0051】
図2に、上記インバータIVの操作信号の生成に関する処理のブロック図を示す。
【0052】
図示されるように、本実施形態では、電流フィードバック制御部20及びトルクフィードバック制御部30を備えている。以下では、「電流フィードバック制御部20の処理」、「トルクフィードバック制御部30の処理」、「電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理」、「トルクフィードバック制御部30の設計」の順に説明する。
<電流フィードバック制御部20の処理>
モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwは、2相変換部40において、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換される。一方、指令電流設定部22は、要求トルクTdに基づき、回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流idc及びq軸上の指令電流iqcを設定する。ここでは、例えば最大トルク制御を実現するように指令電流idc,iqcを設定すればよい。フィードバック制御部24は、d軸上の実電流idを指令電流idcにフィードバック制御するための操作量としてのd軸上の電圧を算出する。一方、フィードバック制御部25は、q軸上の実電流iqを指令電流iqcにフィードバック制御するための操作量としてのq軸上の電圧を算出する。詳しくは、フィードバック制御部24,25では、比例積分制御を用いて上記算出を行う。
【0053】
一方、非干渉制御部26では、実電流id,iq及び電気角速度ωに基づき、上記フィードバック制御部24,25の出力をフィードフォワード補正するための項を算出する。これにより、フィードバック制御部24の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、d軸上の指令電圧vdcとなる。また、フィードバック制御部25の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、q軸上の指令電圧vqcとなる。
【0054】
3相変換部28では、回転2相座標系の指令電圧vdc、vqcを、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcに変換する。PWM信号生成部29では、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcと、電源電圧VDCとに基づき、PWM処理によって、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。これは、例えば、指令電圧vuc,vvc,vwcのそれぞれを電源電圧VDCにて規格化したものと三角波形状のキャリアとの大小比較に基づき行えばよい。
<トルクフィードバック制御部30の処理>
トルク推定器42では、回転2相座標系の実電流id,iqに基づき、モータジェネレータ10のトルクの推定値である推定トルクTeを算出する。一方、偏差算出部32では、推定トルクTeに対する要求トルクTdの差を算出する。位相設定部34は、偏差算出部32の出力の比例積分演算に基づき、インバータIVの出力電圧の回転2相座標系での位相δを設定する。ここでは、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に位相δを進角させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰となる場合に、位相δを遅角させるようにする。
【0055】
ノルム設定部36では、モータジェネレータ10の電気角速度ωと、要求トルクTdとに基づき、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルのノルムVnを設定する。ここで、ベクトルのノルムは、ベクトルの各成分の2乗の和の平方根によって定義される。詳しくは、ノルム設定部36は、要求トルクTd及び電気角速度ωに基づき、ノルムVn1を算出するノルム算出部36aを備えている。更に、ノルム設定部36は、PI制御部36bを備えている。PI制御部36bでは、その出力であるノルムVn2と上記ノルム算出部36aの出力するノルムVn1との差の比例積分演算によって上記ノルムVn2を算出する。セレクタ36cでは、PI制御部36bの出力するノルムVn2とノルム算出部36aの出力するノルムVn1との差が規定値より大きい場合、PI制御部36bの出力をノルム設定部36の設定するノルムVnとして採用する。一方、PI制御部36bの出力するノルムVn2とノルム算出部36aの出力するノルムVn1との差が規定値以下となる場合、ノルム算出部36aの出力をノルム設定部36の設定するノルムVnとして採用する。
【0056】
一方、操作信号生成部38では、上記位相設定部34の設定する位相δと、ノルム設定部36の設定するノルムVnと、電源電圧VDCと、回転角度θとに基づき、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。詳しくは、操作信号生成部38は、電圧利用率毎に、電気角の1回転周期分の操作信号波形をマップデータとして記憶している。ここで、記憶されている操作信号波形はいずれも、図2に例示されるように、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態とされる期間と低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態とされる期間とが半々となる波形となっている。これは、インバータIVの出力電圧を電気角の1回転周期で均衡の取れたものとするための設定である。更に、操作信号波形はいずれも、図2中にそのうちの1つの波形を例示するように、電気角の1回転周期の中央(180°)に対して対称性を有するものとなっている。詳しくは、中央に対して等距離にある一対のタイミングの論理値が逆となるものとなっている。ここで、論理「H」が、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpのオン状態に対応し、論理「L」が低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnのオン状態に対応する。これは、インバータIVの出力電圧を正弦波形状の電圧に極力近似させるための設定である。
【0057】
操作信号生成部38では、電源電圧VDCとノルムVnとに基づき、電圧利用率を算出し、これに応じて、該当する操作信号波形を選択する。ここで、上記電圧利用率の上限は、矩形波制御時の電圧利用率である「0.78」とされている。このため、電圧利用率が最大値「0.78」となる場合には、操作信号波形として、矩形波制御時の波形である電気角の1回転周期に高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態とされる期間と低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態とされる期間とが1回ずつ生じる波形(1パルス波形)が選択される。
【0058】
こうして操作信号波形が選択されると、操作信号生成部38では、この波形の出力タイミングを上記位相設定部34の設定する位相δに基づき設定することで、操作信号を生成する。
<電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理>
本実施形態では、切替制御部46によって、電流フィードバック制御部20による制御を行うか、トルクフィードバック制御部30による制御を行うかを切り替える。図3に、切替制御部46の行う処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0059】
この一連の処理では、まずステップS10において、電流フィードバック制御部20による操作信号がセレクタ44によって選択され、インバータIVが電流フィードバック制御部20の出力する操作信号によって操作されているときであるか否かを判断する。そして、ステップS10において肯定判断される場合、ステップS12において電源電圧VDCを取得し、ステップS14において、指令電圧vuc,vvc,vwcを取得することで、ステップS16において変調率を算出する。
【0060】
続くステップS18においては、変調率が所定値α以上であるか否かを判断する。この処理は、トルクフィードバック制御部30による制御に切り替えるタイミングであるか否かを判断するものである。ここで、所定値αは、「1」よりも大きい値に設定されている。ここで、変調率が「1」を超える場合には、指令電圧vuc,vvc,vwcの振幅が電源電圧VDCの「1/2」を超えるため、インバータIVの出力電圧を指令電圧vuc,vvc,vwcとすることができない。このため、インバータIVの出力電圧の制御性が低下すると想定される状況下、トルクフィードバック制御部30による制御に切り替える。ここで、所定値αは、「1」よりもある程度大きい値としてもよい。例えば、変調率が「1」を上回るいわゆる過変調制御領域における周知技術を用いることで変調率「1.15」程度までPWM制御の制御性を維持することができる場合には、これを超えることで、トルクフィードバック制御部30への制御に切り替えるようにしてもよい。
【0061】
上記ステップS18において所定値α以上であると判断される場合、ステップS20において、トルクフィードバック制御部30による制御に切り替える。ここで、位相設定部34の設定する位相δの初期値δ0は、切り替え直前(現在)の電流フィードバック制御部20の回転2相座標系の指令電圧vdc、vqcに基づき、「δ0=arctan(−vdc/vqc)」と設定される。一方、PI制御部36bの算出するノルムVn2の初期値は、上記指令電圧vdc、vqcのそれぞれの2乗の和の平方根とされる。詳しくは、この初期値は、PI制御部36bの積分要素の初期値とされる。これにより、先の図2に示したノルム設定部36では、与えられた初期値を当初設定するノルムVnとした後、設定するノルムVnを、ノルム算出部36aの算出するノルムVn1へと徐々に変化させていく。このため、上記切り替え時において、電流フィードバック制御部20の設定する指令電圧vdc,vqcのノルムと、ノルム算出部36aの算出するノルムとの間にずれが生じている場合であっても、ノルムの急変を回避することができる。
【0062】
一方、先の図3に示した上記ステップS10において、否定判断される場合には、トルクフィードバック制御部30の出力する操作信号によってインバータIVが操作されていると判断し、ステップS22に移行する。ステップS22では、電源電圧VDCを取得し、ステップS24では、ノルム設定部36の設定するノルムVnを取得することで、ステップS26において、ノルムVnが、電源電圧VDCに係数K及び「3/8」の平方根を乗算した値以下であるか否かを判断する。この処理は、電流フィードバック制御部20による制御に切り替えるタイミングを判断するものである。ここで、電源電圧VDCに「3/8」の平方根を乗算した値は、電流フィードバック制御部20による制御を行った場合に変調率が「1」となる値である。係数Kは、電流フィードバック制御部20による制御に切り替えた時点での変調率を、「1」に対して微少にずらすためのものである。この係数は、電流フィードバック制御部20による制御とトルクフィードバック制御部30による制御との間の切り替えのハンチングを回避することを1つの目的として設定される。
【0063】
上記ステップS26において肯定判断される場合、ステップS28において、電流フィードバック制御部20による制御に切り替える。ここでは、電流フィードバック制御部20の指令電圧vdc、vqcの初期値が、トルクフィードバック制御部30によるインバータIVの出力電圧ベクトルとなるように設定する。換言すれば、指令電圧vdc、vqcの初期値を、ベクトル(−Vn・sinδ、Vn・cosδ)とする。詳しくは、フィードバック制御部24,25のそれぞれの積分項の初期値を、ベクトル(−Vn・sinδ、Vn・cosδ)の成分のそれぞれから非干渉制御部26の出力を減算した値とする。
【0064】
なお、上記ステップS20、S28の処理が完了する場合や、ステップS18、S26において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
<トルクフィードバック制御部30の設計>
先の図2に示したように、トルクフィードバック制御部30では、要求トルクTdび電気角速度ωに基づき、ノルムVnを設定した。これにより、要求トルクTdが与えられた場合に、比較的自由にノルムVnを設定することができる。このため、例えばノルムVnを極力小さくすることで、電圧利用率を抑制することができる。そしてこの場合には、操作信号生成部38の生成する操作信号波形として、よりパルス数の多い波形を選択することなどができ、ひいてはインバータIVの出力電圧を正弦波形状の電圧により近づけることができる。このため、インバータIVの出力電圧の高調波歪を低減することができ、ひいては高調波電流を抑制することが可能となる。
【0065】
以下、本実施形態にかかるノルム算出部36aによるノルムVn1の設定について説明する。図4に、本実施形態において、モータジェネレータ10の力行時にノルムVn1に課せられる基本的な制約を示す。図示されるように、本実施形態では、ノルムVn1を、境界線BL1〜BL4によって囲われる領域内とするとの制約が課せられている。ここで、境界線BL4は、電圧利用率が「0.78」であること示すものである。これは、矩形波制御の電圧利用率が実現可能な電圧利用率の最大値であることに対応している。以下では、境界線BL1〜BL3のそれぞれに対応する条件の導出に先立って、モータジェネレータ10のトルクTと電流ベクトル(id,iq)とを、ノルムVn1、位相δ及び電気角速度ωによって表現する式を導出する。
【0066】
モータジェネレータ10のトルクTは、電機子巻線鎖交磁束数Φ、q軸インダクタンスLq,d軸インダクタンスLd、抵抗R、及び極対数Pを用いて、下記の式(c1)にて表現される。
【0067】
【数1】

また、電圧方程式は、以下の式(c2)となる。
【0068】
【数2】

上記の式(c2)から、下記の式(c3)を得る。
【0069】
【数3】

上記の式(c3)を上記の式(c1)に代入することで、下記の式(c4)を得る。
【0070】
【数4】

ここで、図4に示す境界線BL1に対応する条件である「トルクTの位相δによる偏微分が正となるとの条件」は、上記の式(c4)に基づき、下記の式(c5a)及び(c5b)によって表現される。この条件は、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に、位相δを進角させることによってその不足を低減させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰である場合に、位相δを遅角させることによってその過剰分を低減させることを可能とするための条件である。
【0071】
【数5】

なお、本実施形態では、位相δは、力行時には、「0≦δ<π/2」、回生時には、「π/2<δ≦3π/2」となるように制御設計をするとの前提を設けているため、位相δが「3π/2」以上となる条件を削除した。また、境界線BL2に対応する条件である「d軸電流がゼロ以下であるとの条件」は、下記の式(c6)等よって表現される。
【0072】
【数6】

また、境界線BL3に対応する条件である「q軸電流が力行時においてはゼロ以上である旨の条件」は、下記の式(c7)によって表現される。
【0073】
【数7】

なお、回生時においては、q軸電流がゼロ以下であるとの条件を課す。
【0074】
本実施形態では、先の図4に例示するような許容領域内において、ノルムVn1を設定する。このノルムVn1は、位相δと電気角速度ωを設定しても一義的には定まらない。このため、ノルムVn1の設定に際してはある程度の自由度があることとなるため、ノルムVn1を自由に設計することができる。ここで、インバータIVの出力電圧の高調波歪を抑制する観点からは、ノルムVn1を極力低減することが望ましい。ノルムVn1を最小とするためには、トルクTのノルムVn1による偏微分係数がゼロとなるとの条件を課すことが要求される。ただし、この場合、上記モデルを用いる場合には、位相δとノルムVn1との間に1対1の対応関係を持たせることができないことが発明者らによって見出されている。
【0075】
そこで、本実施形態では、最小の電流で最大のトルクを実現する最大トルク制御を行うことができるようにノルムVn1を設定する。これによっても、要求トルクTdを実現するうえでノルムVn1を極力低減することができる。
【0076】
図5に、本実施形態にかかるノルム算出部36aの詳細を示す。
【0077】
図示されるように、本実施形態では、最大トルク制御を実行すべく下記の式(c8)にて表現される条件を課す。ここで、最大トルク制御とは、最小の電流で最大のトルクを実現する制御であり、ここでいう最大トルクとは、力行制御時には正の最大トルク、回生制御時には、負であって絶対値が最大のトルクを意味する。
【0078】
【数8】

この式は、例えば「埋込磁石同期モータの設計と制御:武田洋次ら オーム社」の23ページに記載されている。上記の式(c8)から、上記の式(c3)によって電流ベクトル(id,iq)を消去することで、ノルムVn1を、電気角速度ωと位相δとの関数とすることができる。特に、トルクフィードバック制御を行う領域は電気角速度ωが大きい領域のため、抵抗Rを無視することで、以下の式(c9)とすることができる。
【0079】
【数9】

上記の式(c9)では、ノルムVn1が、位相δ及び電気角速度ωの関数とされている。以下では、これに基づき、ノルムVn1を、要求トルクTdと電気角速度ωとによって表現することを考える。上記の式(c4)において、抵抗Rが小さいとする近似を行うことで、下記の式(c10)を得る。
【0080】
【数10】

上記の式(c10)における関数fは、位相δを独立変数として、電気角速度ωによって規格化されたノルムVn1(速度規格化ノルム)を従属変数とするものである。ここで、ノルムVn1が、電気角速度ωに依存しない関数fと電気角速度ωとの積として定義できるのは、上記の式(c9)を根拠としている。すなわち、抵抗Rが無視できるとの近似を前提としている。上記の式(c10)によれば、位相δを独立変数として且つトルクTを従属変数とする関数gを定義することができる。このため、関数gの逆関数を用いることで、上記関数fの独立変数を位相δからトルクTに変換することができる。これにより、トルクTを独立変数として且つ速度規格化ノルム(Vn1/ω)を従属変数とする関数hを定義することができる。
【0081】
図6(a)に上記関数hを示す。なお、この関数hは、必ずしも解析的に求める必要はない。ちなみに、図6(a)に示すグラフは、図6(b)示すように、位相δと速度規格化ノルムとの関係を示す関数f、及び位相δと速度規格化ノルムとの関係を示す関数gを数値計算によって算出することで算出されたものである。これにより、要求トルクTdとノルムVn1との関係を、ノルムVn1が先の図4に示した領域内となるようにして、予めマップ化しておくことが可能となる。そしてこれにより、要求トルクTdと電気角速度ωが与えられた際に、最小の電流にてモータジェネレータ10を駆動することができる。
【0082】
なお、本明細書において、「マップ」とは、離散的な入力値のそれぞれに対して出力値が1つ定義された写像のことである。
【0083】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0084】
(1)電気角速度ω及び要求トルクTdに基づき、インバータIVの出力電圧ベクトルのノルムVnを設定するノルム設定部36と、要求トルクTdと推定トルクTeとの差に基づきインバータIVの出力電圧の位相δを設定する位相設定部34と、ノルムVn及び位相δを満たす操作信号を生成する操作信号生成部38とを備えた。これにより、ノルムVnを、要求トルクTd及び電気角速度ωに応じて自由に設計することができる。このため、操作信号波形の設計の自由度も向上し、ひいてはモータジェネレータ10の制御性を高く維持することができる。更に、ノルムVn1の設計に際して前提とした制御対象と実際の制御対象との間にずれが生じることに起因してトルク制御のためのフィードフォワード操作量として機能するノルムVn1に誤差が生じた場合であっても、位相δをフィードバック操作量として、この誤差を補償することができる。
【0085】
(2)操作信号生成部38の生成する操作信号波形を、電気角の1周期において、インバータIVの入力端子の正極及び負極のそれぞれにモータジェネレータ10が電気的に接続される各期間を同一とするものとした。これにより、電気角の1周期でモータジェネレータ10に印加される電圧を均衡のとれたものとすることができる。
【0086】
(3)操作信号波形を、電気角の1周期の中央に対して対称性を有するものとした。これにより、電気角の1周期においてモータジェネレータ10に印加される電圧を、正弦波形状の電圧に近似させることができる。
【0087】
(4)操作信号生成部38において、電源電圧VDCに対するノルムVnの相対的な大きさ(電圧利用率)に基づき操作信号波形を設定した。これにより、電源電圧VDCが変動する場合であれ、操作信号を適切に設定することができる。
【0088】
(5)電源電圧VDCに対するノルムVnの相対的な大きさ(電圧利用率)毎に、電気角の1周期分の操作信号波形を記憶した。これにより、制御装置14の演算負荷を低減しつつも、操作信号波形を適切に設定することができる。
【0089】
(6)要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に位相δを進角させて且つ要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰となる場合に位相δを遅角させる一方、トルクTをノルムVn1及び位相δによって表現したモデル式の位相δによる偏微分が正となるとの条件を満たすようにノルムVn1を設定した。これにより、位相設定部34の設定する位相δによって、トルクフィードバック制御が成立するようにノルムVn1を設定することができる。
【0090】
(7)ノルム算出部36aによって、d軸電流をゼロ以下とするようにノルムVn1を設定した。これにより、トルクフィードバック制御によって強め界磁制御がなされること回避することができる。
【0091】
(8)ノルム算出部36aによって、q軸電流の符号が要求トルクTdの符号に一致するようにノルムVn1を設定した。これにより、通常の電流フィードバック制御と同様の条件を満たすようにノルムVn1を設定することができる。
【0092】
(9)最小の電流で最大のトルクを生成するようにノルムVn1を設定した。これにより、最大トルク制御を実現することができる。
【0093】
(10)要求トルクTdを入力として且つノルムVn1を電気角速度ωで除算した値である速度規格化ノルム「Vn1/ω」を出力とするマップを利用してノルムVn1を設定した。これにより、ノルムVn1を簡易に設定することができる。
【0094】
(11)インバータIVの電圧利用率(変調率)が所定以上となる場合にトルクフィードバック制御を実行した。これにより、従来の電流フィードバック制御部20の処理によってモータジェネレータ10の制御性を維持することが可能である間は、これに頼ることで、操作信号生成部38等の設計工数を極力低減することができる。
【0095】
(12)トルクフィードバック制御部30への切り替えに際し、電流フィードバック制御部20の算出する指令電圧vdc、vqcに基づきノルムVn2の初期値を設定した。これにより、切り替えの前後でノルムの連続性を維持することができる。
【0096】
(13)PI制御部36b及びセレクタ36cを備えることで、ノルム設定部36の設定するノルムVnを、電流フィードバック制御部20の指令電圧vdc、vqcに基づく初期値からノルム算出部36aの算出するノルムへと徐々に変化させた。これのより、上記切り替えに起因したノルムの急変を好適に回避することができる。
【0097】
(14)トルクフィードバック制御部30による制御から電流フィードバック制御部20による制御へと切り替えるに際し、電流フィードバック制御部20による指令電圧vdc、vqcの初期値を、ノルム設定部36の設定するノルムVn及び位相設定部34の設定する位相δに基づき設定した。これにより、切り替え時においてもインバータIVの出力電圧の連続性を維持することができる。
【0098】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0099】
図7に、本実施形態にかかるノルム算出部36aを示す。図示されるように、本実施形態では、インバータIVの出力電圧からモータジェネレータ10の誘起電圧によって相殺される部分を削除した電圧ベクトルのノルムV2とその位相δ2とを定義し、トルクTをこれらノルムV2及び位相δ2によって表現する。そして、位相δ2によるトルクTの偏微分係数がゼロとなるように、ノルムVn1を設定する。
【0100】
ここで、トルクTは、ノルムV2及び位相δ2によって下記の式(c11)にて表現することができる。
【0101】
【数11】

上記の式(c11)において、位相δ2によるトルクTの偏微分係数がゼロとなるとの条件の下、ノルムV2及び位相δ2を、位相δ及びノルム算出部36の算出するノルムVn1にて消去することで、ノルムVn1を位相δ及び電気角速度ωにて表現することができる。特に、抵抗Rをゼロとする近似では、下記の式(c12)が成立する。
【0102】
【数12】

上記の式(c12)においても、速度規格化ノルム「Vn1/ω」は、位相δの関数fとして表現できる。これにより、先の第1の実施形態の要領で、速度規格化ノルムをトルクTの関数hとして定義することができる。本実施形態でも、関数hを数値計算によって算出することで、マップ化しておく。図7には、マップ化された関数hを示している。
【0103】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(8)、(10)〜(14)の効果に加えて、更に、以下の効果が得られるようになる。
【0104】
(15)インバータIVの出力電圧のうちのモータジェネレータ10の誘起電圧によって相殺される電圧成分を除いた部分に応じて生じる電流によって最大のトルクを生成するようにノルムVn1を設定した。これにより、トルクに寄与する電圧を最小にするノルムVn1を選択することができる。このため、上記の式(c2)に示した電圧方程式に鑑みれば、電流ベクトルid,iqを極力低減することもできると考えられる。
【0105】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0106】
図8に、本実施形態にかかる力行制御時のノルム算出部36aの処理を示す。図示されるように、本実施形態では、d軸電流がゼロとなるようにノルムVn1を設定する。これは、上記の式(c3)に基づき、d軸の電流idを、ノルムVn1及び電気角速度ωにて表記したものがゼロであるとして、ノルムVn1を、電気角速度ω及び位相δの関数にて表現することで実現することができる。そして、先の第1の実施形態の要領で、位相δをトルクTにて変換することで、トルクTを独立変数として且つ速度規格化ノルム「Vn1/ω」を従属変数とする関数を求めることができる。特に、抵抗Rを無視する近似では、トルクTを独立変数として且つ速度規格化ノルム「Vn1/ω」を従属変数とする関数hを下記の式(c13)にて定義することができる。
【0107】
【数13】

上記(c13)は、簡易な式であるため、マップ等を用いることなく、この関数を制御装置14に記憶しておくことで、ノルムVn1を簡易に算出することができる。
【0108】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(8)、(10)〜(14)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0109】
(16)d軸電流をゼロとするようにノルムVn1を設定した。これにより、弱め界磁制御及び強め界磁制御の双方を回避した制御を実現することができる。特に、この場合、ノルムVn1は、上記の式(c13)となるため、ノルムVn1の算出が容易となる。このため、制御装置14を集積回路ICにて構成する場合、回路規模を低減することができる。
【0110】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0111】
上記第3の実施形態では、上記の式(c13)を利用することでノルムVn1を算出した。しかし、q軸インダクタンスLqは、モータジェネレータ10を流れる電流に応じて大きく変化する。そこで本実施形態では、q軸インダクタンスLqを、モータジェネレータ10を流れる電流に応じて可変設定する。
【0112】
図9に、本実施形態にかかるノルム算出部36aの処理手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0113】
この一連の処理では、まずステップS30において、dq軸上の実電流id,iqを取得する。続くステップS32では、電流ベクトルノルムInを算出する。そして、ステップS34では、電流ベクトルノルムInと、q軸インダクタンスLqとの関係を定めたマップを用いて、q軸インダクタンスLqをマップ演算する。このマップは、電流ベクトルノルムInが大きいほどq軸インダクタンスLqの値として小さい値を出力するものである。こうしてq軸インダクタンスLqが算出されると、ステップS36において、電流ベクトルノルムInに基づき算出されたq軸インダクタンスLqを用いて電圧ベクトルのノルムVn1を算出する。
【0114】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(8)、(10)〜(14)の効果や、先の第3の実施形態の上記(16)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0115】
(17)モータジェネレータ10を流れる電流に基づき算出されるq軸インダクタンスLqに基づき、電圧ベクトルのノルムVn1を算出した。このため、上記の式(c13)を用いた場合であっても、ノルムVn1を高精度に算出することができる。
【0116】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0117】
上記第1の実施形態では、トルクフィードバック制御部30による制御がなされる場合には、電流値が監視されない。こうした状況下、モータジェネレータ10の回転速度が急激に低下する場合等にあっては、モータジェネレータ10の誘起電圧が急激に低下する。そしてこの場合、ノルム設定部36が電気角速度ωの急低下を反映したノルムVnを設定するようになるまでのタイムラグによって、電流iu,iv,iwが急激に増加するおそれがある。
【0118】
そこで、本実施形態では、トルクフィードバック制御部30による制御がなされている場合であっても、モータジェネレータ10を流れる電流を監視し、過度の電流が流れる場合に電流を制限する制御を行う。
【0119】
図10に、本実施形態にかかる電流制限処理の手順を示す。この処理は、制御装置14によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0120】
この一連の処理では、まずステップS40において、要求トルクTdの変化量ΔTdが規定量γ以下であって且つ、現在検出されている電気角速度ωの変化量Δωが規定量ε以下であるか否かを判断する。この処理は、モータジェネレータ10を流れる電流が大きく変化しない状況であるか否かを判断するためのものである。すなわち、要求トルクTdの変化量ΔTdが小さい場合には、トルクの変化に起因する電流の変化は小さいと考えられる。また、電気角速度ωの変化量Δωが小さい場合には、誘起電圧の変化が小さいため、これに起因する電流の変化も小さいと考えられる。このため、ステップS30において肯定判断される場合には、モータジェネレータ10を流れる電流が大きく変化しない状況と考えられる。
【0121】
ステップS40において肯定判断される場合、ステップS42において、モータジェネレータ10を流れる電流iu,iv,iwの絶対値の最大値が閾値η以上であるか否かを判断する。この処理は、電気角速度ωの急低下によってモータジェネレータ10に流れる電流が急増する状況であるか否かを判断するものである。すなわち、ステップS40において肯定判断される場合には、本来、モータジェネレータ10に流れる電流が急増することはないにもかかわらず、これが閾値η以上となったということは、実際の電気角速度が検出されている速度から外れて大きく低下していると考えられる。なお、閾値ηは、モータジェネレータ10の電流の許容最大値よりも所定のマージン分だけ小さい値に設定する。
【0122】
上記ステップS42において閾値η以上であると判断される場合、ステップS44において、ノルム設定部36の設定するノルムVnを制限する。ここでは、例えばノルム算出部36aの出力し得る最小のノルムVn1とすればよい。また、これに代えて、ノルム設定部36の設定するノルムVnにかかわらず、操作信号生成部38において、電圧利用率の最小値に応じた操作信号波形を用いて操作信号を生成するようにしてもよい。更に、予めフェールセーフ用のノルムVn又は操作信号波形を用意しておき、これを用いるようにしてもよい。
【0123】
なお、ステップS44の処理が完了する場合や、ステップS40,42において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0124】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(14)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0125】
(18)トルクフィードバック制御部30による制御がなされている状況下、電気角速度ωの変化量Δωが規定量ε以下であって且つ要求トルクTdの変化量ΔTdが規定量γ以下であるにもかかわらず、モータジェネレータ10を流れる電流の絶対値が閾値η以上となる場合、インバータIVの出力電圧ベクトルのノルムを制限した。これにより、電気角速度ωの急低下が検出される以前に誘起電圧の急低下に起因して過度の電流が流れる状況下、これに迅速に対処することができる。
【0126】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0127】
・上記第1の実施形態に対する第5の実施形態の変更点によって、第2〜第4の実施形態を変更してもよい。
【0128】
・上記第4の実施形態において、実電流id,iqに基づき電流ベクトルノルムInを算出する代わりに、指令電流idc,iqcに基づき算出してもよい。また、相電流iu,iv,iwの振幅値に基づき、q軸のインダクタLqを算出してもよい。
【0129】
・ノルム設定部36の設定するノルムを、電流フィードバック制御部20の指令電圧vdc,vqcに基づく初期値からノルム算出部36aの算出するノルムへと徐々に変化させる変化手段としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、電流フィードバック制御部20の指令電圧vdc,vqcに基づく値を初期値として、これとノルム算出部36aの出力との加重平均処理をしたものをノルム設定部36の出力としてもよい。
【0130】
・操作信号生成部38としては、電圧利用率毎に、操作信号波形を定めたデータを予め記憶しておき、都度の電圧利用率に応じて該当するデータを利用するものに限らない。例えば、電圧ベクトルのノルムに基づきPWM処理等によって操作信号を都度算出するものであってもよい。
【0131】
・操作信号生成部38において、インバータIVの入力電圧が一定とみなせるなら、電圧利用率に代えて、ノルム設定部36の出力するノルムのみを、操作信号波形を検索するパラメータとしてもよい。
【0132】
・上記各実施形態では、操作信号生成部38の生成する操作信号波形を、電気角の1周期の中央に対して対称性を有する信号としたが、これに限らない。位相δとノルムVnとに基づき操作信号波形を設定するなら、例えば電流フィードバック制御部20の処理等による設定によっては困難な操作信号波形を自由に設計することができる。
【0133】
・位相設定部34による実際のトルク(推定トルクTe)の要求トルクTdへのフィードバック制御の操作量としての位相δの設定手法としては、これらの差の比例積分制御によって位相δを設定するものに限らない。例えば、要求トルクTdと推定トルクTeとの差の比例積分微分制御によって位相δを設定してもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、電流フィードバック制御部20において、非干渉制御部26を用いたが、これを用いなくても、フィードバック制御部24,25の出力を用いることで指令電圧vdc、vqcを算出することはできる。
【0135】
・フィードバック制御部24,25としては、比例積分制御を行うものに限らず、例えば比例積分微分制御等を行うものであってもよい。
【0136】
・上記各実施形態では、トルクフィードバック制御へと移行する前には、PWM制御を行ったが、電流フィードバック制御としては、これに限らず、例えば瞬時電流値制御であってもよい。
【0137】
・突極機としては、IPMSMに限らない。例えば、同期リラクタンスモータ(SynRM)であってもよい。
【0138】
・回転機としては、突極機に限らず、非突極機であってもよい。この際、位相δ及びノルムVn1によってトルクを表現したモデルについて、ノルムVn1によるトルクTの偏微分係数がゼロとなる条件を満たすノルムVn1と、位相δとが1対1に対応する関係を有するなら、この条件を満たすノルムVn1に基づき操作信号を生成してもよい。
【0139】
・回転機としては、ハイブリッド車に搭載されるものに限らず、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。更に、回転機としては、車両の駆動系を構成するものにも限らない。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるインバータの操作信号の生成に関する処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかる電流フィードバック制御とトルクフィードバック制御との切り替え処理の手順を示す流れ図。
【図4】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図5】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図6】同実施形態にかかるトルクと速度規格化ノルムとの関係を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図8】第3の実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図9】第4の実施形態にかかるノルム算出部の処理手順を示す流れ図。
【図10】第5の実施形態にかかる電圧制限処理の手順を示す流れ図。
【符号の説明】
【0141】
10…モータジェネレータ、12…高圧バッテリ、14…制御装置(電力変換回路の制御装置の一実施形態)、20…電流フィードバック制御部、30…トルクフィードバック制御部、34…位相設定部、36…ノルム設定部、38…操作信号生成部、IV…インバータ、CV…コンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極及び負極のそれぞれを回転機の端子に電気的に接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の実際のトルクを要求トルクに制御する回転機の制御装置において、
前記回転機に対する要求トルク及び前記回転機の回転速度に基づき、回転2相座標系における前記電力変換回路の出力電圧ベクトルのノルムを設定するノルム設定手段と、
前記要求トルクと実際のトルクとの差に基づき、回転2相座標系における前記電力変換回路の出力電圧の位相を設定する位相設定手段と、
前記設定されるノルム及び位相に基づき前記スイッチング素子の操作信号を前記電力変換回路に出力する操作信号出力手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記操作信号は、電気角の1周期において、前記直流電源の正極及び負極のそれぞれに前記回転機が電気的に接続される各期間を同一とするものであることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記操作信号は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有する信号であることを特徴とする請求項1又は2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記直流電源の電圧を取得する取得手段を更に備え、
前記操作信号出力手段は、前記直流電源の電圧に対する前記ノルムの相対的な大きさに基づき前記操作信号を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記操作信号出力手段は、前記相対的な大きさのそれぞれに応じた電気角の1周期分の操作信号波形を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段の記憶する操作信号波形のうちの該当するものを用いて前記操作信号を前記電力変換回路に出力することを特徴とする請求項4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記位相設定手段は、前記要求トルクに対して前記実際のトルクが不足する場合、前記位相を進角させ、前記要求トルクに対して前記実際のトルクが過剰となる場合、前記位相を遅角させるものであり、
前記ノルム設定手段は、前記回転機のトルクを前記ノルム及び位相によって表現したモデル式の位相による偏微分が正となるとの条件を満たすように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記ノルム設定手段は、d軸電流をゼロ以下とするように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記ノルム設定手段は、q軸電流の符号が前記要求トルクの符号に一致するように前記ノルムを設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記ノルム設定手段は、最小の電流で最大のトルクを生成するように前記ノルムを設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記ノルム設定手段は、前記電力変換回路の出力電圧のうちの前記回転機の誘起電圧によって相殺される電圧成分を除いた部分に応じて生じる電流によって最大のトルクを生成するように前記ノルムを設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記ノルム設定手段は、d軸電流をゼロとするように前記ノルムを設定するものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記ノルム設定手段は、要求トルクを入力として且つ前記ノルムを回転速度で除算した値である速度規格化ノルムを出力とする写像を利用して前記ノルムを設定することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記操作信号出力手段は、前記電力変換回路の電圧利用率が所定以上となる場合に前記操作信号を出力するものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
前記回転機を実際に流れる電流を前記要求トルクに応じた電流の指令値にフィードバック制御する電流フィードバック制御手段を更に備え、
前記電圧利用率が低い領域では、前記電流フィードバック制御によって前記電力変換回路を操作することを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項15】
前記電流フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御のための操作量として前記回転機の電圧の指令値を算出する手段を備え、
前記ノルム設定手段は、前記操作信号出力手段による前記電力変換回路の操作への切り替えに際し、前記電流フィードバック制御手段の算出する電圧の指令値に基づき前記ノルムの初期値を設定することを特徴とする請求項14記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
前記ノルム設定手段は、前記ノルムの初期値とは独立に前記回転機の回転速度及び前記要求トルクに基づき前記ノルムを算出するノルム算出手段と、当該ノルム設定手段の設定するノルムを前記初期値から前記ノルム算出手段の算出するノルムへと徐々に変化させる変化手段とを備えることを特徴とする請求項15記載の回転機の制御装置。
【請求項17】
前記電流フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御のための操作量として前記回転機の電圧の指令値を算出する手段を備え、
前記操作信号出力手段による前記電力変換回路の操作から前記電流フィードバック制御手段による前記電力変換回路の操作へと切り替えるに際し、前記電流フィードバック制御手段による前記回転機に対する電圧の指令値の初期値を、前記ノルム設定手段の設定するノルム及び前記位相設定手段の設定する位相に基づき設定することを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項18】
前記操作信号出力手段によって操作信号が前記電力変換回路に出力されている状況下、前記回転機の回転速度の変化量が第1の規定量以下であって且つ前記要求トルクの変化量が第2の規定量以下であるにもかかわらず、前記回転機を流れる電流が閾値以上となる場合、前記電力変換回路の出力電圧ベクトルのノルムを制限する制限手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、
前記電力変換回路とを備えることを特徴とする回転機の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−232531(P2009−232531A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72917(P2008−72917)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】