説明

回転炉床炉の水封トラフ装置及び該水封トラフ装置内に堆積する落下物の除去方法

【課題】回転炉床炉の水封トラフ装置において、回転炉床に設置したスクレーパーを用いることなく、水封トラフ内の落下物を回収できる、回転炉床炉の水封トラフ装置及び水封トラフ装置内に堆積する落下物の除去方法を提供すること。
【解決手段】天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉において、側壁と回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために設置される水封トラフ装置であって、水封トラフ装置が、内部に水を保持する水封トラフ1と、水封トラフ1から排出される水を貯留する給水タンク3と、給水タンク3内の水を水封トラフ1に供給する循環ポンプ2とを備えることにより水封トラフ1内の水を回流させることを特徴とする回転炉床炉の水封トラフ装置を用いる。給水タンク3が、仕切り板を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の溶融還元等に用いる回転炉床炉に設置される、炉内ガス漏洩防止及び炉内からの落下物を回収するための水封トラフ装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物、例えば粉状の鉄鉱石を粉状の石炭やコークスなどの炭材とを混合して塊成化し、これを回転炉床炉に装入して高温に加熱することで鉄鉱石中の酸化鉄を還元して金属鉄を得る技術が知られている。このような金属酸化物等の還元、溶融還元に用いられる回転炉床炉は、回転炉床を有し、その下部に多数の車輪が取り付けられ、円形に設置された軌道上を一定速度で回転するように構成されている。回転炉床は天井と側壁とで覆われており、炉内ガス漏洩防止のために、通常、回転炉床と側壁との間には水封トラフが設けられている。水封トラフ(シールトラフ)は、水を満たした金属製の円形樋であり側壁の下端が水封トラフの水に浸漬されるとともに、回転炉床の外周部から下方に向けてシールプレートを設け、このシールプレートの下端がシールトラフ内の水に浸漬されるように構成され、これにより炉内と炉外とを隔離して、炉内の金属酸化物等の還元、溶融還元を行なうことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−180137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転炉床炉の水封トラフは、炉内ガス漏洩防止の他に、炉内からの落下物回収のためにも用いられる。例えば、回転炉床に複数個のスクレーパー(掻き取り板)を設置して、炉床の回転と共に移動させることで水封トラフの水底を掻き取り、水封トラフ内の落下物を回収することができる。
【0005】
しかし、炉床と共に回転しながら落下物を回収するスクレーパーを用いる方法では、回転炉床炉の操業が進行するにしたがって、水封トラフ内のスクレーパーが通過する部分以外に落下物が堆積し、最終的には水封トラフ内の水が堆積物の増加によりあふれてしまうという問題がある。
【0006】
また、スクレーパーを用いる方法では、スクレーパーに何らかの原因で引っ掛かりが生じた場合、回転炉床の運転を止めてしまうことになり、操業上のロスとなり、さらには炉床の変形等、重大なトラブルの発生を招きかねないという問題もある。
【0007】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、回転炉床炉の水封トラフ装置において、回転炉床に設置したスクレーパーを用いることなく、水封トラフ内の落下物を回収できる、回転炉床炉の水封トラフ装置及び水封トラフ装置内に堆積する落下物の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉において、前記側壁と前記回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために設置される水封トラフ装置であって、
該水封トラフ装置が、内部に水を保持する水封トラフと、該水封トラフから排出される水を貯留する給水タンクと、該給水タンク内の水を前記水封トラフに供給する循環ポンプとを備えることにより前記水封トラフ内の水を回流させることを特徴とする回転炉床炉の水封トラフ装置。
(2)前記給水タンクが、仕切り板を有することを特徴とする(1)に記載の回転炉床炉の水封トラフ装置。
(3)天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉において、前記側壁と前記回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために内部に水を保持する水封トラフを有する水封トラフ装置が設置され、
該水封トラフ内の水を回流させることで、前記回転炉床炉内から前記水封トラフ内への落下物を移動させて、該落下物を前記水封トラフ内から除去することを特徴とする水封トラフ装置内に堆積する落下物の除去方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スクレーパーを用いる水封トラフのように、スクレーパー通過部分以外に炉内からの落下物が堆積してしまうことなく、水封トラフ内全体の堆積物を回収することができる。
【0010】
これにより、スクレーパーの引っ掛かり発生による回転炉床の停止、すなわち回転炉床炉の操業停止の発生を防止して、炉床変形等の重大なトラブルの発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の回転炉床炉の水封トラフ装置の一実施形態であり、上面から見た模式図。
【図2】本発明の回転炉床炉の水封トラフ装置の一実施形態であり、横方向から見た模式図。
【図3】回転炉床炉に水封トラフが設置された状態を示す縦断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、上記のような天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉の水封トラフにおいて、水封トラフ内の水を強制的に流動させて、回流させることで、スクレーパーを用いることなく、水封トラフ内の落下物の回収を可能とした。水封トラフ内の水を回流させることで、水封トラフ内の落下物を移動させて、落下物を水封トラフ内から排出させて、除去することができる。
【0013】
水封トラフ内の水を流動させるためには、例えば、流水プールの原理を応用することができる。流水プールの構造は、水の流れを起こすためにジェット水流を用いており、そのためにプールの水を一旦取り入れ、これをプールの噴出口から勢いよく噴出させて一方向の水の流れを作っている。
【0014】
上記の流水プールの原理を用いて水の流れを作るために、回転炉床炉の側壁と回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために設置される水封トラフ装置であって、水封トラフ装置が、内部に水を保持する水封トラフと、該水封トラフから排出される水を貯留する給水タンクと、該給水タンク内の水を前記水封トラフに供給する循環ポンプとを備えることにより水封トラフ内の水が回流する水封トラフ装置を用いることができる。以下、図面を用いて本発明を説明する。
【0015】
図1は、本発明の回転炉床炉の水封トラフ装置の一実施形態であり、上面から見た模式図である。水封トラフ装置は、水封トラフ1、循環ポンプ2、給水タンク3、とこれらを接続する循環水配管4とから構成されている。
【0016】
図2も、本発明の回転炉床炉の水封トラフ装置の一実施形態であり、横方向から見た模式図である。水封トラフ1内の炉内からの落下物は、水封トラフ1から流水により排出されて給水タンク3に流入するが、循環ポンプ2により再び水封トラフ1に流入しないように、給水タンク3の内部には仕切り板5が設置されている。
【0017】
図3は、回転炉床炉に水封トラフが設置された状態を示す縦断面の模式図である。水封トラフ1は、回転炉床炉の天井7に連続した側壁8と回転炉床9の外周部の下部に設置され、回転炉床炉の側壁8の炉内側下端部から下方に向けて設置されたシールプレート10の下端部と、回転炉床9の外周部から下方に向けて設置されたシールプレート10の下端部とが、水封トラフ1内の水に浸漬されていることで、炉内6の炉内ガスの漏洩が防止される。
【0018】
図3のように設置された、図1、2に示す水封トラフ装置を用いて、水封トラフ1内の水(水封水)を循環ポンプ2により強制的に流動させる。これにより、炉内6からの落下物を水封トラフ1内全体(周方向、半径方向)にわたり回収できるようになる。水封トラフ1から排出される落下物が混じった水封水は、給水タンク3内で回収される。給水タンク3内に仕切り板5を設置すれば、落下物は仕切り板5の手前で沈殿し、上澄み水だけが再び循環ポンプ2により水封トラフ1へと戻される。仕切り板5の替わりに、網状などのフィルターを設置することで、落下物を回収することもできる。後段ほど網目が細かくなるフィルターであればさらに良い。
【0019】
本発明の水封トラフ装置は、スクレーパーを用いる方式ではないので、従来のスクレーパーを用いた場合の、水封トラフ1内の堆積物、特に炉内耐火物の破片などによりスクレーパーが引っ掛かりを生じ回転炉床9が過負荷で停止するという問題や、水封トラフ1内の堆積物が全部掻き取れないなどの問題は発生しない。本発明によれば、水封トラフ1内の水封水自体を回流させており、回転炉床9を機械的に停止させることは無く、また水封水全体が流動することにより水封トラフ1全体にわたり落下物を回収することができる。
【実施例1】
【0020】
図1、2に示す水封トラフ装置を、図3に示すように回転炉床炉に設置して、粉鉄鉱石に粉状のコークスと石灰粉を混合して塊成化し、これを回転炉床上に装入して1400℃に加熱することで鉄鉱石中の酸化鉄を還元して金属鉄である粒鉄を製造する試験を行った。回転炉床炉としては、炉中心直径7m、炉幅1mのものを用いた。
【0021】
回転炉床炉の操業中に鉱石粉、石灰粉等の回転炉床炉の操業により発生するダスト類が水封トラフ1内に落下して、水封水の水底に沈殿した。ポンプにより水封水を強制的に流動させることで落下物を水封トラフ1から給水タンク3内に回収することができた。給水タンク3内にたまった落下物は、適宜回収した。
【符号の説明】
【0022】
1 水封トラフ
2 循環ポンプ
3 給水タンク
4 循環水配管
5 仕切り板
6 炉内
7 天井
8 側壁
9 回転炉床
10 シールプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉において、前記側壁と前記回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために設置される水封トラフ装置であって、
該水封トラフ装置が、内部に水を保持する水封トラフと、該水封トラフから排出される水を貯留する給水タンクと、該給水タンク内の水を前記水封トラフに供給する循環ポンプとを備えることにより前記水封トラフ内の水を回流させることを特徴とする回転炉床炉の水封トラフ装置。
【請求項2】
前記給水タンクが、仕切り板を有することを特徴とする請求項1に記載の回転炉床炉の水封トラフ装置。
【請求項3】
天井と該天井に連続した側壁とで覆われた回転炉床を有する回転炉床炉において、前記側壁と前記回転炉床との間からの炉内ガス漏洩を防止するために内部に水を保持する水封トラフを有する水封トラフ装置が設置され、
該水封トラフ内の水を回流させることで、前記回転炉床炉内から前記水封トラフ内への落下物を移動させて、該落下物を前記水封トラフ内から除去することを特徴とする水封トラフ装置内に堆積する落下物の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−78000(P2012−78000A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223378(P2010−223378)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】