説明

回転角検出装置

【課題】組立時にアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を調整可能でかつ安価な回転角検出装置を提供する。
【解決手段】ケース1及びカバー2の組み合わせよりなるハウジングと、当該ハウジング内に収納される抵抗基板3、コードホイール4、摺動子回転板5、摺動子7、回路基板9、信号検出素子11及びコードホイール4の回転を所定の減速比で摺動子回転板5に伝達する歯車6とをもって回転角検出装置を構成する。ケース1、カバー2及びコードホイール4の対向する位置には円形状のピン挿通孔28,36,55を開設し、摺動子回転板5には円弧形状のピン挿通孔59を開設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の舵角センサなどに適用される回転角検出装置に係り、特に、1回転以内の回転角を検出してデジタルコード信号を出力するデジタル方式のインクリメンタル形回転検出部と、1回転を超える回転数を検出してアナログ電圧信号を出力するアナログ方式のアブソリュート形回転検出部とを備えた回転角検出装置におけるニュートラル位置(絶対角が0度の位置)の調整手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のステアリングシャフトと車体との間に回転角検出装置を備え、回転角検出装置にて検出されたステアリングホイールの操舵角度、操舵速度及び操舵方向等に基づいてサスペンションの減衰力制御やオートマチックトランスミッションのシフトポジション制御それに四輪操舵車における後輪の操舵制御などを行う技術が知られている。この種の制御には、1回転以上の回転角の検出が必要であることから、絶対角を検出可能な回転角検出装置が用いられる。
【0003】
絶対角を検出可能な回転角検出装置としては、1回転以内の回転角を検出するインクリメンタル形回転検出部と1回転を超える回転数を検出するアブソリュート形回転検出部との組合せからなり、インクリメンタル形回転検出部を構成するロータ部材の回転を所要の減速比を有する歯車機構を介してアブソリュート形回転検出部を構成する回転リングに伝達するものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
なお、特許文献1に記載の回転角検出装置は、インクリメンタル形回転検出部及びアブソリュート形回転検出部が共にデジタル方式の回転検出部をもって構成されているが、かかる構成に代えて、デジタル方式のインクリメンタル形回転検出部とアナログ方式のアブソリュート形回転検出部との組合せからなるものも従来より知られている。アナログ方式のアブソリュート形回転検出部としては、抵抗パターンを有する抵抗基板と、抵抗パターンに摺接される摺動子とからなるものが用いられる。
【0005】
自動車の制御に利用されるこの種の回転角検出装置は、自動車への組み込み時においてステアリングシャフトのニュートラル位置と回転角検出装置の絶対角0度の位置とを厳密に合致させる必要があるので、自動車への組み込みを容易なものにするため、出荷時に、前記ロータ部材や回転リングなどの回転部に対して信号検出部を絶対角0度の位置に設定し、かつ、前記回転部及び信号検出部をその位置に固定しておくことが求められる。
【0006】
回転部に対して信号検出部を絶対角0度の位置に固定する手段としては、回転角検出装置を構成するハウジング及び回転部の所定位置、即ち、信号検出部に対して回転部を絶対角0度の位置に調整した状態で互いに対向する位置にそれぞれ同径のピン挿入孔を開設し、回転角検出装置の組立が完了した後に、これらの各ピン挿入孔に固定ピンを貫通するという方法がとられている。
【0007】
自動車の組立時には、各ピン挿入孔に固定ピンが貫通された状態でステアリングシャフト等に対する回転角検出装置の組立を行い、組立完了後に固定ピンを引き抜いて、ステアリングシャフトの回転を可能にする。これにより、自動車の組立時にステアリングシャフトのニュートラル位置と回転角検出装置の絶対角0度の位置とを調整する必要がないので、自動車の組立を容易なものにすることができる。
【0008】
ところで、アナログ方式のアブソリュート形回転検出部を備えた自動車用の回転角検出装置には、例えば2.5±0.05Vという厳しい範囲内に絶対角0度におけるアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を設定することが求められる。
【0009】
しかしながら、アナログ方式のアブソリュート形回転検出部の出力電圧値は、ハウジング及び回転部に開設された各ピン挿入孔に固定ピンを貫通したときの抵抗パターンに対する摺動子の接触位置によって決まり、その電圧値は抵抗パターンの形成誤差やハウジングに対する抵抗基板の組立誤差などによって変動するので、抵抗パターンの形成精度やハウジングに対する抵抗基板の組立精度を上げる工夫をしても、前記の如く厳しい範囲内に出力電圧値を収めることが困難である。このため、従来においては、組立後にアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を検査し、適正と判定されたもののみを出荷するという方法が採られている。
【特許文献1】特開平10−227631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来の回転角検出装置には、組立時においてアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を調整するための手段が備えられておらず、良品のみを選別して出荷しているので、製品歩留まりが低下し、回転角検出装置がコスト高になるという不都合がある。
【0011】
なお、回転角検出装置内に可変抵抗器などの出力電圧調整手段を組み込めば製品歩留まりを改善することができるが、部品点数が増加し、かつ組立作業が複雑化するので、十分なコスト低減効果を得ることができない。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、組立時にアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を調整可能でかつ安価な回転角検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の課題を解決するため、回転角検出装置を、回転体を回転可能に保持する開口を有するケース及びカバーをスナップ結合することにより形成されるハウジングと、前記カバーの内面に固着され、前記回転体を挿通する開口を有する抵抗基板と、前記回転体を挿通する開口を有し、前記抵抗基板と対向に配置されて前記カバーに回転可能に保持される摺動子回転板と、該摺動子回転板に刻設された第1ギアと、前記摺動子回転板に固着され、前記抵抗基板に摺接される摺動子と、前記摺動子回転板を回転可能に保持し、かつ前記カバー及びケースに回転可能に保持されるコードパターン列を有するコードホイールと、該コードホイールに刻設された第2ギアと、前記ケースに固着される回路基板と、該回路基板に電気的に接続され、前記コードパターン列から信号を検出する複数の信号検出素子と、前記ケースに軸支され、前記摺動子回転板に刻設された第1ギアに噛み合わされる第3ギア及び前記コードホイールに刻設された第2ギアに噛み合わされる第4ギアを有し、前記コードホイールの回転を減速して前記摺動子回転板に伝達する歯車とを備え、前記ケース及び前記カバー並びに前記コードホイールの対向する位置には前記コードホイールを絶対角0度の位置に固定する固定ピンを挿入するための円形状のピン挿通孔を開設すると共に、前記摺動子回転板の前記ピン挿通孔と対向する位置には前記固定ピンが挿入された状態で前記摺動子回転板を所定角度範囲内で回転できる前記摺動子回転板の周方向に長い円弧形状のピン挿通孔を開設するという構成にした。
【0014】
摺動子回転板を周方向に回転すると、抵抗基板に対する摺動子の相対位置が変化し、抵抗基板と摺動子とによって構成されるアナログ方式のアブソリュート形回転検出部の出力電圧値が変化するので、ケース及びカバーに開設された円形状のピン挿通孔とコードホイールに開設された円形状のピン挿通孔とを互いに対向に配置した後、ケースとカバーとを一体化する前に、アブソリュート形回転検出部の出力電圧値を測定し、出力電圧値が絶対角0度に応じた所定値からずれている場合には、円弧形状のピン挿通孔の長さの範囲内で摺動子回転板を回転してアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を所定値に合致させ、次いでケースとカバーとをスナップ結合により一体化させ、しかる後に円形状の各ピン挿通孔と円弧形状のピン挿通孔とに固定ピンを貫通することにより、出荷時の状態を固定することができるので、回転角検出装置の良品を容易かつ高歩留まりで製造することができる。
【0015】
また、本発明は、前記構成の回転角検出装置において、前記コードパターン列として、前記コードホイールにスリット列を形成すると共に、前記信号検出素子として発光素子と受光素子との組合せからなるフォトインタラプタを用いるという構成にした。
【0016】
このように、スリットが形成されたコードホイールとフォトインタラプタとをもってインクリメンタル形回転検出部を構成すると、非接触で信号の検出を行うことができ、かつ、反射板をもってコードパターン列を形成する場合のようにコードホイールへのごみ等の付着による反射率の劣化によって信号検出精度が劣化するということがないので、高精度かつ高信頼性の信号検出を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明は、前記構成の回転角検出装置において、前記抵抗基板と前記回路基板とを電気的に接続するための接続ピンを前記抵抗基板に備えると共に、前記回路基板と外部コネクタとを電気的に接続するためのコネクタピンを前記回路基板に備えるという構成にした。
【0018】
このように、抵抗基板と回路基板とを電気的に接続するための接続ピンを抵抗基板に備えると、回転角検出装置の組立時に接続ピンの先端部を回路基板に差し込むだけで抵抗基板と回路基板との接続を完了することができるので、回転角検出装置の組立を容易化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転角検出装置は、ケース及びカバーの対向する位置に円形状のピン挿通孔を開設すると共に、摺動子回転板の円形状のピン挿通孔と対向する位置に摺動子回転板の周方向に長い円弧形状のピン挿通孔を開設したので、組立時においてアブソリュート形回転検出部の出力電圧値の微調整を行うことができ、良品を安価、容易かつ高歩留まりで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る回転角検出装置の実施形態例を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は実施形態例に係る回転角検出装置の分解斜視図、図2は実施形態例に係るケースの内面側から見た平面図、図3は実施形態例に係るカバーの外面側から見た平面図である。
【0021】
図1に示すように、本例の回転角検出装置は、ケース1と、カバー2と、カバー2の内面に固着される抵抗基板3と、ケース1及びカバー2を組み合わせることにより構成されるハウジング内に回転可能に収納されるコードホイール4及び摺動子回転板5と、コードホイール4の回転を減速して摺動子回転板5に伝達する歯車6と、摺動子回転板5に固着される摺動子7と、摺動子回転板5をカバー2の内面に回転可能に保持する回転板ホルダ8と、ケース1の内面に固着される回路基板9と、回路基板9に取り付けられる信号検出素子受け10と、信号検出素子受け10内に所定の配列で収納され、端子部が回路基板9と電気的に接続された複数個(本例の場合には、6個)の信号検出素子11と、一端が回路基板9に電気的に接続された外部コネクタ接続用のコネクタピン12と、カバー2に付設されたピンホルダ13と、当該ピンホルダ13を通して先端部がハウジング内に挿入される固定ピン14とから主に構成されている。
【0022】
ケース1は、円環状のリング部21とリング部21の一部より径方向に張り出された矩形部22とを有し、リング部21の中心に中央開口23が開設された天板24と、天板24の内周縁より起立されたリング状のコードホイール保持部25と、天板24の外周縁より起立された外壁26とをもって容器状に形成されている。リング部21の内面にはボス27が突設され、その中心部には、図2に示すように、固定ピン14を挿入するための円形状のピン挿通孔28が開設されている。また、矩形部22の先端部には、図示しない外部コネクタを挿入するための外部コネクタ接続部29が、天板24と直交する方向に形成されている。さらに、外壁26には、カバー2をスナップ結合するための複数個の係止孔30が開設されている。
【0023】
カバー2は、ケース1と同様の外観を有し、中央開口31を有する天板32と、天板32の内周縁より起立されたリング状の回転体保持部33と、天板32の外周縁より起立された外壁34とをもって容器状に形成されている。天板32の外面の所要位置、即ち、ケース1とカバー2とを組み合わせたときにケース1に開設されたピン挿通孔28と対向する位置にはピンホルダ13の収納部35が形成され、その中心部には、図3に示すように、固定ピン15を挿入するための円形状のピン挿通孔36が開設されている。また、外壁34の外面には、ケース1の外壁26に開設された係止孔30にスナップ結合される複数個の係止爪37が突設されている。
【0024】
ケース1とカバー2とは、カバー2に形成された係止爪37をケース1に形成された係止孔30にスナップ係合することにより一体化され、例えば自動車の車体などのステータ部に設定される。
【0025】
抵抗基板3は、中央開口41を有する輪状部42と、当該輪状部42の一部からその径方向に張り出された矩形部43及び位置決め突起44と、矩形部43に取り付けられた金属製の接続端子45とから構成されている。輪状部42及び矩形部43の摺動子回転板5と対向する面には、所要の抵抗パターンと回路パターンとが形成されており、接続端子45は、矩形部43に形成された回路パターンと電気的に接続されている。この抵抗基板3は、図示しない両面粘着テープを介してカバー2の内面に固着される。カバー2と抵抗基板3との位置決めは、抵抗基板3に形成された位置決め突起44をカバー2の内面に形成された図示しない係合凹部内に嵌合することにより行う。
【0026】
コードホイール4は、ステアリングシャフトなどの回転体に固設する筒状ホルダの内壁をなす中央開口51を有するホイール部52と、ホイール部52の外周部に開設された多数の信号検出用透孔53aの配列からなるコードパターン列53と、中央開口51と同心に形成された第2ギア54とから構成されており、ホイール部52の第2ギア54の形成部よりも外周部分には、固定ピン15を挿入するための円形状のピン挿通孔55が開設されている。なお、コードホイール4におけるピン挿通孔55の開設位置は、ピン挿通孔28,36,55に固定ピン15を一連に貫通したとき、信号検出素子11に対するコードホイー4の回転方向位置が絶対角0度になる位置に調整される。このコードホイール4は、ケース1に形成されたコードホイール保持部25に回転可能に保持され、使用時には中央開口51に貫通されたステアリングシャフトなどの回転体に固着されて、当該回転体と共に回転する。
【0027】
摺動子回転板5は、回転体を回転可能に挿通する中央開口56を有するリング状に形成されており、その外周面には第1ギア57が形成され、抵抗基板3と対向する面には摺動子取付部58が形成されている。この摺動子回転板5には、前記円形状の各ピン挿通孔28,36,55と回転軸方向のほぼ同じ位置に、周方向に長い円弧形状のピン挿通孔59が開設されている。なお、摺動子回転板5における摺動子7の取付位置及びピン挿通孔59の開設位置は、抵抗基板3と摺動子7とによって構成されるアブソリュート形回転検出部の出力電圧値が所定の値又はそれに近似した値となるように抵抗基板3に対して摺動子7を設定したときに、図3に示すように、前記円弧形状のピン挿通孔59の中心又はその近傍が前記円形状の各ピン挿通孔28,36,55の中心と合致するように設定される。この摺動子回転板5は、カバー2に形成された回転板保持部33に回転可能に保持される。
【0028】
歯車6は、摺動子回転板5の外側部に沿って形成された第1ギア57と噛み合わされる小径の第3ギア6aと、これと同心でコードホイール4のホイール部52に形成された第2ギア54と噛み合わされる大径の第4ギア6bとを有する二段歯車になっており、その中心部にはセンター孔6cが開設されている。この歯車6は、カバー2の内面に突設された歯車保持軸(図示省略)をセンター孔6cに挿入することによって、カバー2の内面に回転可能に保持される。
【0029】
前記摺動子回転板5に形成された第1ギア57、前記歯車6に形成された第2ギア6a及び第3ギア6b、それにコードホイール4に形成された第4ギア54の歯数は、コードホイール4の回転が所定の減速比で摺動子回転板5に伝達されるように設計される。
【0030】
摺動子7は、例えばリン青銅などの弾性と導電性に優れた金属材料をもって形成されており、摺動子回転板5の摺動子取付部58に熱がしめなどによって固着される。
【0031】
回転板ホルダ8は、外径が摺動子回転板5の外径よりも大きく、内径が摺動子回転板5の外径よりも小さい馬蹄形の金属板をもって形成されており、カバー2の内面に抵抗基板3及び摺動子回転板5を組み込んだ後に、カバー2の内面に熱がしめなどによって固着される。
【0032】
回路基板9は、ケース1の矩形部22内に収納される矩形部9aと、ケース1のリング部21内に収納される円弧状部9bとから構成されており、その表面には信号検出素子11を接続するための端子部及びコネクタピン12を接続するための端子部を含む所要の回路パターンが形成されていて、所定の位置に所定のチップ部品9cが実装されている。
【0033】
信号検出素子受け10は、複数個の信号検出素子11を所定の配列で個別に収納するための小区画を有するホルダ10aと、当該ホルダ10aの開口部に被着され、ホルダ10aからの信号検出素子11の脱落を防止するストッパ10bとから構成されており、ホルダ10aは回路基板9に固着される。
【0034】
信号検出素子11としては、発光素子11aと受光素子11bとを対向に組み合わせて一体化したフォトインタラプタが用いられており、各発光素子11a及び各受光素子11bの端子部は、回路基板9に電気的に接続されている。これら信号検出素子11を構成する各発光素子11a及び各受光素子11bは、コードホイール4に形成されたコードパターン列53の内面側及び外面側に対向に配置される。
【0035】
コネクタピン12は、所定本数の外部コネクタ接続用のピンを樹脂モールドにより所定の配列で一体化したものであって、一端が回路基板9に電気的に接続され、他端がケース1に形成された外部コネクタ接続部29内に配置される。
【0036】
ピンホルダ13は、ハウジングからの固定ピンの脱落を防止するためのものであって、ゴム状弾性を有する物質をもって所定の形状に形成されており、カバー2の外面に形成された筒状のピンホルダ収納部35内に設定される。
【0037】
固定ピン14は、コイルスプリング状の把持部14aと、ケース1、カバー2、コードホイール4及び摺動子回転板5のそれぞれに開設された各ピン挿通孔28,36,55,59を貫通し、信号検出素子11に対するコードホイール4の回転方向位置及び抵抗基板3に対する摺動子7の回転方向位置を絶対角0度の位置に固定する貫通部14bとからなる。この固定ピン14は、自動車等への回転角検出装置の組み込みが完了するまでは回転角検出装置に装着され、自動車等への回転角検出装置の組み込みが完了した後に取り外される。
【0038】
本例の回転角検出装置は、ステアリングシャフトなどの回転体に対して、回転角検出装置の絶対角0度の位置と回転体のニュートラル位置とが厳密に合致された状態で取り付けられる。そして、回転体が回転されると、それに連結されたコードホイール4が回転体と一体に回転され、その1回転以内の回転量及び回転方向が信号検出素子11によって検出される。また、コードホイール4の回転が歯車6を介して摺動子回転板5に所定の減速比で伝達され、抵抗基板3に対する摺動子7の相対位置が変化するので、抵抗基板3と摺動子7とから構成されるアブソリュート形回転検出部の出力電圧値が変化し、この出力電圧値から1回転以上の回転体の回転が検出される。したがって、1回転以上の有限の回転数内における回転体の回転量及び回転方向を厳密に検出することができる。
【0039】
本例の回転角検出装置は、その組立時において、円形状のピン挿通孔28,36,55の中心がコードホイール4を絶対角0度の位置に固定できるように互いに合致させてケース1とカバー2とコードホイール4とが組み立てられる。また、これらの各円形状のピン挿通孔28,36,55の中心と摺動子回転板5に開設された円弧形状のピン挿通孔59の中心とが合致するようにカバー2に対して摺動子回転板5が組み立てられる。抵抗基板3に形成される抵抗パターン及び摺動子回転板5に対する摺動子7の設定位置は、この状態で所要の電圧値を出力するように設計されているが、回転角検出装置のケース1とカバー2とを一体化する前にアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を測定し、出力電圧値が各部品の製造誤差や組立誤差のために絶対角0度に応じた所定値からずれている場合には、コードホイール4を回転し、歯車6を介して摺動子回転板5を回転することにより、アブソリュート形回転検出部の出力電圧値を所定値に合致させることができる。そして、アブソリュート形回転検出部の出力電圧値が所定値に調整された状態でケース1とカバー2とをスナップ結合させて一体化し、各ピン挿通孔28,36,55,59に固定ピン14の貫通部14bを貫通し、ケース1及びカバー2に対してコードホイール4を直接固定すると共に、コードホイール4及び歯車6を介して摺動子回転板5及び歯車6をケース1及びカバー2に固定する。これにより、各回転部が絶対角0度の位置に調整された回転角検出装置が組み立てられる。
【0040】
摺動子回転板5には、その周方向に長い円弧形状のピン挿通孔59が開設されているので、組立時にその長さの範囲内で摺動子回転板5を回転させることによってアブソリュート形回転検出部の出力電圧値を所定値に調整し、しかる後に固定ピン14の挿入が可能である。したがって、本例の回転角検出装置は、組立後における回転角検出装置の出力調整を特別な出力電圧調整手段を備えることなく行うことができ、良品を安価かつ高歩留まりで製造することができる。
【0041】
また、本例の回転角検出装置は、信号検出用の透孔53aが開設されたコードホイール4とフォトインタラプタ11とをもってインクリメンタル形回転検出部を構成したので、非接触で信号の検出を行うことができ、かつ、反射板をもってコードパターン列を形成する場合のようにコードホイールの劣化によって信号検出精度が劣化するということがないので、高精度かつ高信頼性の信号検出を行うことができる。
【0042】
さらに、本例の回転角検出装置は、抵抗基板3に接続端子45を備え、当該接続端子45を介して抵抗基板3と回路基板9とを電気的に接続するので、回転角検出装置の組立時に接続端子45の先端部を回路基板9に差し込むだけで抵抗基板3と回路基板9との接続を完了することができ、回転角検出装置の組立を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態例に係る回転角検出装置の分解斜視図である。
【図2】実施形態例に係るケースの内面側から見た平面図である。
【図3】実施形態例に係るカバーの外面側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ケース
2 カバー
3 抵抗基板
4 コードホイール
5 摺動子回転板
6 歯車
7 摺動子
8 回転板ホルダ
9 回路基板
10 信号検出素子受け
11 信号検出素子
12 コネクタピン
13 ピンホルダ
14 固定ピン
28,36,55 円形状のピン挿通孔
59 円弧形状のピン挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を回転可能に保持する開口を有するケース及びカバーをスナップ結合することにより形成されるハウジングと、前記カバーの内面に固着され、前記回転体を挿通する開口を有する抵抗基板と、前記回転体を挿通する開口を有し、前記抵抗基板と対向に配置されて前記カバーに回転可能に保持される摺動子回転板と、該摺動子回転板に刻設された第1ギアと、前記摺動子回転板に固着され、前記抵抗基板に摺接される摺動子と、前記摺動子回転板を回転可能に保持し、かつ前記カバー及びケースに回転可能に保持されるコードパターン列を有するコードホイールと、該コードホイールに刻設された第2ギアと、前記ケースに固着される回路基板と、該回路基板に電気的に接続され、前記コードパターン列から信号を検出する複数の信号検出素子と、前記ケースに軸支され、前記摺動子回転板に刻設された第1ギアに噛み合わされる第3ギア及び前記コードホイールに刻設された第2ギアに噛み合わされる第4ギアを有し、前記コードホイールの回転を減速して前記摺動子回転板に伝達する歯車とを備え、
前記ケース及び前記カバー並びに前記コードホイールの対向する位置には前記コードホイールを絶対角0度の位置に固定する固定ピンを挿入するための円形状のピン挿通孔を開設すると共に、前記摺動子回転板の前記ピン挿通孔と対向する位置には前記固定ピンが挿入された状態で前記摺動子回転板を所定角度範囲内で回転できる前記摺動子回転板の周方向に長い円弧形状のピン挿通孔を開設したことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記コードパターン列として、前記コードホイールにスリット列を形成すると共に、前記信号検出素子として発光素子と受光素子との組合せからなるフォトインタラプタを用いたことことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記抵抗基板と前記回路基板とを電気的に接続するための接続端子を前記抵抗基板に備えると共に、前記回路基板と外部コネクタとを電気的に接続するためのコネクタピンを前記回路基板に備えたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−17663(P2006−17663A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198080(P2004−198080)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】