説明

回転電機システム

【課題】ロータコイルに回転電機の外部から磁極部の回転位置に見合って制御された励磁電流を供給することにより回転電機のトルク向上を図れる回転電機システムを提供する。
【解決手段】回転電機システム10は、回転シャフト24に固定されたモータロータ18と、複数のティース部に集中巻によりそれぞれ巻装された複数のステータコイルを有するモータステータ16とを含む回転電機12と、回転シャフト24に固定されて2次コイルが巻装されたトランスロータ22と、1次コイルに電源から供給される電力を電磁結合による非接触給電にて2次コイルに供給するトランスステータ20とを含む回転トランス14とを備える。そして、2次コイルから複数のロータコイルに励磁電流として印加するにあたり、励磁電流がロータコイルに流れることにより励磁される磁極部の位置がモータロータの周方向にずれるように調整する励磁電流調整手段20、22等が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機システムに係り、特に、モータロータの複数の磁極部に界磁コイルがそれぞれ巻装されている回転電機を含む回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2011−41433号公報(特許文献1)には、回転電機駆動システムが開示されている。この回転電機駆動システムでは、回転電機のステータは、集中巻きで巻装された複数相のステータ巻線を有し、ステータ巻線に交流電流が流れることで高調波成分を含む周波数の回転磁界を生成する。ロータは、周方向複数個所に配置されたロータ巻線と、各ロータ巻線に流れる電流を整流するダイオードとを有する。各ロータ巻線に流れる電流により生成される周方向複数個所の磁極部の磁気特性を交互に異ならせる。また、回転電機駆動システムは、回転電機の相間電圧または相間電圧に対応する値が閾値未満または以下である場合で、かつ、予め設定されたパルス重畳要求条件成立時のみにステータ巻線を流れるステータ電流にパルス電流を重畳させる切り換え部を備える。そして、この切り換え部により、回転数の低い領域でステータ巻線を流れるステータ電流に高調波成分であるパルス電流を重畳させることができるので、回転数が低くても回転磁界の基本波(正弦波)電流以外による磁場変動を生じさせ、ロータ巻線のロータ誘導電流を増加させてトルクを向上させることができることが記載されている。
【0003】
また、特開2000−58355号公報(特許文献2)には、回転体への電力供給用変圧器が開示されている。この電力供給用変圧器では、変圧器に内鉄形の鉄心を用い、2次コイルが回転体の回転の軸を中心とし、鉄心の枠の中を通って環状に巻かれている。鉄心には1次コイルが巻かれ、また、2次コイルを上記回転体から支持するプレートと2次コイルのリード線が通過する間隙が設けられている。そして、鉄心及び1次コイルを固定側に置き、2次コイルを回転体と一体で回転させ、電磁結合により回転体の回路に電力を供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−41433号公報
【特許文献2】特開2000−58355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるような複数の磁極部にロータ巻線を巻装してなるロータを備えた回転電機において、ロータ巻線に回転電機の外部から電力供給してロータ磁極部を磁化することにより、トルク特性をさらに向上させることが考えられる。この場合、特許文献2に記載されるような回転型非接触給電方式の変圧器を用いて上記ロータ巻線に給電することも可能である。
【0006】
しかしながら、上記変圧器の2次コイルに生じた誘起電力を上記ロータ巻線にそのまま供給しても、ステータにより形成される回転磁界に適応してロータ磁極部が磁化されなければ、トルクを効果的に向上させることはできない。
【0007】
本発明の目的は、ロータの複数の磁極部にそれぞれ巻装されたロータコイルに回転電機の外部から磁極部の回転位置に見合って制御された励磁電流を供給することにより回転電機のトルク向上を図れる回転電機システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機システムは、回転可能に支持された回転シャフトと、回転シャフトに固定され、周方向に間隔をおいて設けられた複数の磁極部において整流素子が直列接続されてそれぞれ巻装されている複数のロータコイルを有するモータロータと、モータロータに隙間を介して対向配置され、周方向に間隔をおいて設けられる複数のティース部に集中巻によりそれぞれ巻装された複数のステータコイルを有するモータステータとを含み、前記ステータコイルに通電することによって形成される回転磁界により前記モータロータが回転する回転電機と、
前記回転シャフトに固定され、前記複数のロータコイルが並列接続される2次コイルが巻装されたトランスロータと、トランスロータに隙間を介して対向配置され、巻装されている1次コイルに電源から供給される電力を電磁結合による非接触給電にて前記2次コイルに供給するトランスステータとを含む回転トランスと、を備え、
前記2次コイルに誘起される電力を前記複数のロータコイルに励磁電流として印加するにあたり、励磁電流が前記ロータコイルに流れることにより励磁される磁極部の位置が前記モータロータの周方向にずれるように調整する励磁電流調整手段が設けられているものである。
【0009】
本発明に係る回転電機システムにおいて、前記励磁電流調整手段は、前記モータロータの磁極部と同数で同じ周方向位置の突極を有する前記トランスロータと、前記モータステータのティース部と同数で同じ周方向位置のティース部を有する前記トランスステータと、前記モータロータにおいて各磁極部のロータコイルに流れる励磁電流の流れ方向が周方向で交互に反対となる向きで直列接続されている前記整流素子とにより構成されてもよい。
【0010】
この場合、前記電源は直流電源であり、前記直流電源から回転トランスの1次コイルに直流電流が供給されることによって前記回転トランスの2次コイルには前記モータロータの回転速度に同期した交流電流が誘起され、この交流電流がモータロータのロータコイルに励磁電流として流れるとき前記整流素子によって整流されることにより周方向で1つおき毎のロータコイルが励磁されてもよい。
【0011】
また、この場合、前記トランスロータに巻装された2次コイルは、前記トランスロータの突極の軸方向中間位置に形成された溝部に入り込んだ状態で巻かれており、前記トランスステータに巻装された1次コイルは、前記トランスステータのティース部の軸方向中間位置に形成された溝部に入り込んだ状態でかつ前記2次コイルに対向する位置で巻かれていてもよい。
【0012】
さらに、この場合、前記直流電源は、前記モータロータの回転数領域に応じて出力電圧値を変更可能なものであってもよい。
【0013】
また、本発明に係る回転電機システムにおいて、前記励磁電流調整手段は、円柱状の外周面を有する非突極型の前記トランスロータと、円筒状の内周面を有する非突極型の前記トランスステータと、前記モータロータにおいて各磁極部のロータコイルに流れる励磁電流の流れ方向が同じとなる向きで直列接続されている前記整流素子と、前記各ロータコイルに対してそれぞれ並列接続された抵抗およびコンデンサとにより構成され、
前記電源は交流電源であり、前記交流電源から回転トランスの1次コイルに交流電流が供給されることによって前記回転トランスの2次コイルには同周期の交流電流が誘起され、この交流電流がモータロータのロータコイルに励磁電流として流れるとき前記抵抗および前記コンデンサの作用によって電流位相がずらされることにより、励磁される磁極部の位置が前記回転磁界に応じて周方向へ順次に変わるものであってもよい。
【0014】
この場合、前記交流電源は、前記モータロータの回転速度に応じて交流電流の出力周波数を変更可能であり、前記モータロータの回転速度に応じて前記励磁磁極部の位置が変わるように前記電流位相のずれ量が調整されてもよい。
【0015】
また、この場合、前記トランスロータに巻装された2次コイルは、前記トランスロータの外周面の軸方向中間位置で周方向へ延びて形成された溝部に入り込んだ状態で巻かれており、前記トランスステータに巻装された1次コイルは、前記トランスステータの内周面の軸方向中間位置で周方向に延びて形成された溝部に入り込んだ状態でかつ前記2次コイルに対向する位置に巻かれていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る回転電機システムによれば、回転トランスの2次コイルから励磁電流がロータコイルに流れることにより励磁される磁極部の位置がモータロータの周方向にずれるように調整する励磁電流調整手段を設けたことで、モータロータの磁極部の回転位置に見合って制御された励磁電流をロータコイルに供給することができ、回転電機のトルクを効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施形態の回転電機システムを示す斜視図である。
【図2】図1における回転電機を軸方向から見た平面図である。
【図3】図1における回転トランスの軸方向に沿った断面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】第1実施形態における回転トランスとロータコイルとの電気的接続関係を示す回路図である。
【図6】回転トランスの1次コイル電流、2次コイル電流、ならびに、第1および第2ロータコイル電流を、トランスロータ磁束の変化と共に示す波形図である。
【図7】第2実施形態の回転電機システムにおける回転電機を軸方向から見た平面図である。
【図8】第2実施形態の回転電機システムにおける回転トランスの軸方向に沿った断面図である。
【図9】第2実施形態におけるロータコイルと回転トランスとの接続関係を示す回路図である。
【図10】第2実施形態における回転トランスの1次コイル電流、2次コイル電流、ならびに、第1ないし第3ロータコイル電流を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の回転電機システム10を示す斜視図である。回転電機システム10は、互いに同軸状に配置された回転電機12および回転トランス14を備える。回転電機12は、モータステータ16とモータロータ18とを含む。また、回転トランス14は、トランスステータ20とトランスロータ22とを含む。モータロータ18およびトランスロータ22は、共通または同一の回転シャフト24上に所定間隔をおいて固定されている。
【0020】
回転シャフト24は、その両端側において図示しない複数の軸受部材によって回転可能に支持されている。これらの軸受部材は、例えば、回転電機システム10を収容するケースに取り付けられている。これにより、モータロータ18とトランスロータ22とは、一緒に回転するよう構成されている。以下においては、まず、回転電機12について説明し、その後に回転トランス14について説明する。
【0021】
図2は、回転電機システム10の回転電機12を軸方向から見た平面図である。図2において回転シャフト24だけが断面で示されている。図2に示すように、回転電機12は、上記のように回転可能に支持された回転シャフト24と、回転シャフト24に固定されたモータロータ18と、モータロータ18の外側に隙間G1を介して対向配置されたモータステータ16とから構成される。モータステータ16は、図示しないケース内に圧入、ボルト締め等によって固定されている。
【0022】
本実施形態では、モータステータ16とモータロータ18とが回転シャフト24と直交する径方向において対向配置されたラジアル型の回転電機の例を示している。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、ステータとロータとが回転シャフトに平行な軸方向に対向するアキシャル型の回転電機が用いられてもよい。
【0023】
モータステータ16は、ステータコア26と、ステータコア26に配設された複数相(より具体的には例えばu相、v相、w相の3相)のステータコイル28u,28v,28wとを含む。ステータコア26には、径方向内側へ(モータロータ18へ向けて)突出する複数のティース部30が回転シャフト24まわりの周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース部30間にスロット31が形成されている。
【0024】
すなわち、ステータコア26には、複数のスロット31が周方向に互いに間隔をおいて形成されている。各相のステータコイル28u,28v,28wは、スロット31を通ってティース部30に短節集中巻で巻装されている。このように、ティース部30にステータコイル28u,28v,28wが巻装されることで磁極が構成される。そして、複数相のステータコイル28u,28v,28wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に並べられたティース部30が磁化し、周方向に回転する回転磁界をモータステータ16に生成することができる。
【0025】
ティース部30に形成された回転磁界は、その先端面からモータロータ18に作用する。図2に示す例では、3相(u相、v相、w相)のステータコイル28u,28v,28wがそれぞれ巻装された3つのティース部30により1つの極対が構成され、4極3相のステータコイル28u,28v,28wが12個のティース部30に巻装され、モータステータ16の極対数が4極対とされている。
【0026】
モータロータ18は、ロータコア32と、ロータコア32に配設された複数のロータコイル34n,34sとを含む。ロータコア32には、径方向外側へ(モータステータ16へ向けて)突出した複数の突極36が周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各突極36がモータステータ16と対向している。モータロータ18においては、この突極36により、モータステータ16(ティース部30)からの磁束が通る場合の磁気抵抗が回転方向に応じて変化し、突極36の位置で磁気抵抗が低くなり、突極36間の位置で磁気抵抗が高くなる。そして、周方向においてロータコイル34nとロータコイル34sが交互に並ぶように、ロータコイル34n,34sがこれらの突極36に巻装されている。本実施形態における回転電機12のモータロータ18では、突極36にロータコイル34n,34sが巻装されて複数の磁極部が構成されており、より具体的には周方向に等間隔で8つの磁極部が設けられている。
【0027】
ここでは、各ロータコイル34n,34sの巻回中心軸が径方向と一致している。磁気抵抗の高い突極36間の磁路をd軸磁路とし、磁気抵抗の低い突極36の部分の磁路をq軸磁路とすると、各ロータコイル34n,34sは、磁気抵抗の低いq軸磁路に配置されている。
【0028】
各ロータコイル34nにはダイオード(整流素子)38nが直列接続され、各ロータコイル34sにはダイオード(整流素子)38sが直列接続されている。各ロータコイル34nにダイオード38nが直列接続されていることで、各ロータコイル34nに流れる電流の方向がダイオード38nにより一方向に整流される。同様に、各ロータコイル34sにはダイオード38sが直列接続されていることで、各ロータコイル34sに流れる電流の方向がダイオード38sにより一方向に整流される。ここでは、周方向において隣り合うように配置されたロータコイル34nとロータコイル34sとで流れる電流の向き(ダイオード38n,38sによる整流方向)、すなわち順方向が互いに反対になるように、ダイオード38n,38sが互いに逆向きでロータコイル34n,34sに接続されている。
【0029】
上記のようにダイオード38nが直列接続されたロータコイル34nと、ダイオード38sが直列接続されたロータコイル34sとは、回転トランス14の2次コイル44に対してそれぞれ並列接続されている(図5参照)。その詳細については後述する。
【0030】
ロータコイル34nにダイオード38nの整流方向に応じた励磁電流が流れると、ロータコイル34nが巻装された突極36が磁化することで、この突極36が磁極の固定された電磁石として機能する。同様に、ロータコイル34sにダイオード38sの整流方向に応じた励磁電流が流れると、ロータコイル34sが巻装された突極36が磁化することで、この突極36は磁極特性が一定の電磁石として機能する。
【0031】
周方向に隣り合うロータコイル34nとロータコイル34sとで励磁電流の流れ方向が互いに逆方向であるため、周方向に隣り合う突極36同士で磁化方向が互いに逆方向となり、異なる磁極の電磁石が形成され、周方向において突極36の磁極が交互する。ここでは、ロータコイル34nが巻装された突極36にN極が形成され、ロータコイル34sが巻装された突極36にS極が形成されるように、ダイオード38n,38sによるロータコイル34n,34sの励磁電流の整流方向をそれぞれ設定する。これによって、周方向においてN極とS極が交互に並ぶように、各突極36が磁化されるようになっている。
【0032】
図2においてロータコイル34n,34sの、モータロータ18の径方向に関する外側に示した破線矢印の向きは、突極36の磁化方向を表している。そして、周方向に隣り合う2つの突極36(N極及びS極)により、1つの極対が構成される。図2に示す例では、8極の突極36が形成されており、モータロータ18の極対数が4極対である。したがって、図2に示す例では、モータステータ16の極対数及びモータロータ18の極対数がいずれも4極対で、モータステータ16の極対数及びモータロータ18の極対数が等しい。ただし、モータステータ16の極対数及びモータロータ18の極対数は、いずれも4極対以外であってもよい。このように、各ロータコイル34n,34sに流れる電流により生成される、モータロータ18の周方向複数個所の磁極部である突極36の磁気特性は、モータロータ18の周方向に交互に異なっている。
【0033】
次に、図3,4を参照して本実施形態における回転トランス14について説明する。図3は、図1における回転トランス14の軸方向に沿った断面図であり、図4は図3におけるA−A断面図である。
【0034】
回転トランス14は、回転電機12と共通の回転シャフト24上に固定されたトランスロータ22と、トランスロータ22の径方向外側に所定の隙間G2を介して対向配置された筒状のトランスステータ20とを備える。
【0035】
回転トランス14は、回転電機12に比べて小径に形成されている。これにより、回転電機システム10の径方向への大型化を抑制できる。
【0036】
また、回転トランス14は、回転電機12に対して軸方向に近接して配設されるのが好ましい。これにより、回転電機システム10の軸方向寸法を小型化することができる。ただし、回転トランス14と回転電機12との間には、後述するように回転トランス14の2次コイルと回転電機12のロータコイル34n,34sとを電気的に接続する導電性バスバの接続作業を容易に行えるとともに相互間で電磁ノイズによる影響を与えない程度の間隔を確保しておくのが望ましい。
【0037】
トランスロータ22は、例えば、環状に打ち抜き加工された電磁鋼板を軸方向に多数枚積層してカシメ等で連結することにより略円筒状に形成される。トランスロータ22は、その外周に径方向外側へ向かって突出する複数の突極40を有している。突極40は、トランスロータ22の軸方向全長にわたって延びている。
【0038】
これらの突極40は、上記回転電機12のモータロータ18の突極36と同数とされている。すなわち、図4に示す例では8つの突極40が周方向に等間隔で設けられている。また、トランスロータ22は、突極40の周方向位置がモータロータ18の突極36と同じ周方向位置となるようにして回転シャフト24に固定されている。
【0039】
トランスロータ22の突極40の軸方向中間位置には、径方向内側へ矩形状に凹んだ溝部42が形成されている。そして、トランスロータ22には、各突極40の溝部42内に入り込んだ状態で2次コイル44が巻装されている。2次コイル44は、コイル導線が溝部42の軸方向全幅にわたって巻かれることにより略円筒状をなしている。このように2次コイル44を溝部42内に収容して巻装することで、2次コイル44の軸方向位置のずれを防止できる。ここで、図4では2次コイル44の径方向外側にトランスロータ22の突極40の先端が少し突出している例を示すが、図3に示すように2次コイル44の外周面と突極40の先端とが略面一となっていてもよい。
【0040】
トランスステータ20は、例えば、環状に打ち抜き加工された電磁鋼板を軸方向に多数枚積層してカシメ等で連結することにより略円筒状に形成される。トランスステータ20は、その内周に径方向内側へ向かって突出する複数のティース部46を有している。ティース部46は、トランスステータ20の軸方向全長にわたって延びている。
【0041】
これらのティース部46は、上記回転電機12のモータステータ16のティース部30と同数とされている。すなわち、図4に示す例では、12個のティース部46が周方向に等間隔で設けられている。また。トランスステータ20は、ティース部46の周方向位置がモータステータ16のティース部30と同じ周方向位置となるようにして図示しないケースに固定されている。
【0042】
トランスステータ20のティース部46の軸方向中間位置には、径方向外側へ矩形状に凹んだ溝部48が形成されている。トランスステータ20には、各ティース部46の溝部48内に入り込んだ状態で1次コイル50が巻装されている。1次コイル50は、コイル導線が溝部48の軸方向全幅にわたって巻かれることによって略円筒状をなしている。このように1次コイル50を溝部48内に収容して巻装することで、1次コイル50の軸方向位置のずれを防止できる。また、1次コイル50は、トランスロータ22に巻装された2次コイル44に径方向に隙間を介して対向する位置に巻装されている。ここで、図4では1次コイル50の径方向内側にトランスステータ20のティース部46の先端が少し突出している例を示すが、図3に示すように1次コイル50の内周面とティース部46の先端とが略面一となっていてもよい。
【0043】
図5は、回転トランス14と回転電機12のロータコイル34n,34sとの接続関係を示す回路図である。図5に示すように、回転トランス14の1次コイル50には、スイッチ52を介して直流電源54が接続されている。スイッチ52のオンオフ制御は、回転電機12の駆動を制御する制御部(図示せず)からの信号に基づいて行われる。
【0044】
回転トランス14の2次コイル44の両端には、導電線バスバ56,58が接続されている。導電性バスバ56,58は、回転トランス14と回転電機12との間を軸方向に延びて回転電機12のモータロータ18に渡っている。なお、図1および図3においては、導電線バスバ56,58の図示が省略されている。
【0045】
回転電機12のロータ18に渡った導電性バスバ56,58はそれぞれ略C字状に延びており、それらの間には互いに直列接続されたロータコイル34nおよびダイオード38nと、互いに直接接続されたロータコイル34sおよびダイオード38sとが、交互に並列接続されている。
【0046】
なお、本実施形態では、モータロータ18の突極36と同数で同じ周方向位置の突極を有するトランスロータ22と、モータステータ16のティース部30と同数で同じ周方向位置のティース部46を有するトランスステータ20と、モータロータ18において各突極36に巻装されたロータコイル34n,34sに流れる励磁電流の流れ方向が周方向で交互に反対となる向きで直列接続されているダイオード38n,38sとによって励磁電流調整手段が構成される。
【0047】
続いて、図6も合わせて参照して、上記のような構成からなる回転電機システム10の動作について説明する。図6は、回転トランス14の1次コイル電流I(50)および2次コイル電流I(44)、ならびに、第1ロータコイル電流I(34s)および第2ロータコイル電流I(34n)を、トランスロータ磁束F(22)の変化と共に示す波形図である。
【0048】
回転電機12は、図示しないインバータから例えば三相交流電圧が印加されることによって駆動される。このような3相交流電圧をモータステータ16のステータコイル28u,28v,28wに印加して3相交流電流を流すことで、ティース部30に形成された回転磁界がモータロータ18に作用するのに応じて、モータロータ18の磁気抵抗が小さくなるように、突極36がティース部30の回転磁界に吸引される。これによって、モータロータ18にトルク(リラクタンストルク)が作用して、モータロータ18がモータステータ16で形成される回転磁界に同期して回転駆動される。
【0049】
このようにモータロータ18が回転駆動されると、回転シャフト24を共通にするトランスロータ22も同様に回転する。このとき、スイッチ52(図5参照)は制御部からの信号を受けてオンされて、回転トランス14の1次コイル50には直流電源54から直流電圧が印加されている。これにより、図6中の最上段に示すように1次コイル50には直流の1次コイル電流I(50)が流れて、1次コイル50の周囲に磁場が形成される。そして、この磁場による磁束がトランスステータ20のティース部46からトランスロータ22側へ流れる。
【0050】
この磁場内で突極40を有するトランスロータ22が回転すると、トランスステータ20のティース部46に対する突極40の位置が変化することによってトランスロータ22の突極40における磁束F(22)の流れ方が変わり、これに伴って2次コイル44に誘起される電流I(44)も変化することになる。
【0051】
すなわち、図6中の上から2段目および3段目に示すように、突極40がティース部46に正対する位置に近づく過程である時間期間t1では、ティース部46から突極40へ流れ込む磁束が増えるが、これを妨げる方向に突極40が磁化されるように2次コイル44に例えば負のパルス電流が流れる。一方、突極40がティース部46との正対位置から離れる過程である次に時間期間t2では、ティース部46から突極40へ流れ込む磁束が減るが、これを妨げる方向に突極40が磁化されるように2次コイル44に例えば正のパルス電流が流れる。
【0052】
このような時間期間t1およびt2を1周期t3として、トランスロータ22の磁束変化が繰り返し起きることで、2次コイル44には正負のパルス電流が交互する交流電流が流れる。すなわち、本実施形態の回転トランス14では、1次コイル50に供給される直流電流が、2次コイル44に対して電磁結合による非接触給電にて交流電流として供給されることになる。
【0053】
上記のように2次コイル44に供給された交流電流は、導電線バスバ56,58を介してモータロータ18の各ロータコイル34n,34sに励磁電流として供給される。このとき、各ロータコイル34n,34sに流れる励磁電流は、各ダイオード38n,38sにより整流されることで一方向となる。そして、各ダイオード38n,38sで整流された励磁電流が各ロータコイル34n,34sに流れるのに応じて各突極36が磁化することで、磁極がN極かS極のいずれか一方に固定された電磁石が各突極36に生じる。前述のように、ダイオード38n,38sによるロータコイル34n,34sの電流の整流方向が互いに逆方向であるため、各突極36に生じる磁石は、周方向においてN極とS極が交互に配置されたものとなる。
【0054】
本実施形態の例では、図6中の下側2段に示すように、2次コイル電流I(44)が負のパルス電流となる時間期間t1では、ダイオード38sにて整流されたパルス状の第1ロータコイル電流I(34s)がロータコイル34sに流れて、ロータコイル34sが巻装されている突極36がS極に励磁される。このとき、ロータコイル34nには励磁電流が流れないため、ロータコイル34nが巻装された突極36は励磁されない。したがって、モータロータ18においては周方向に1つおき毎の突極36が励磁されることになる。
【0055】
そして、次の時間期間t2では、ダイオード38nにて整流されたパルス状の第2ロータコイル電流I(34n)がロータコイル34nに流れて、ロータコイル34nが巻装されている突極36がN極に励磁される。このとき、ロータコイル34sには励磁電流が流れないため、ロータコイル34nが巻装された突極36は励磁されない。したがって、モータロータ18においては周方向に1つおき毎の突極36が励磁されることになるが、これに先立つ時間期間t1から見れば励磁される突極36の位置がモータロータ18の周方向、すなわち、回転磁界の方向(上流側とも下流側ともいえる)にずれたことになる。
【0056】
このように各突極36が一定の極性に順次に磁化されることでティース部30の回転磁界と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このティース部30の回転磁界と突極36の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によって、モータロータ18にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、モータロータ18がモータステータ16で形成される回転磁界に同期して回転駆動するときのトルクを向上させることができる。
【0057】
上述したように本実施形態の回転電機システム10では、回転電機12と同様の突極40およびティース部46を設けた回転トランス14と、モータロータ18において各突極36のロータコイル34n,34sに流れる励磁電流の流れ方向が周方向で交互に反対となる向きで直列接続されているダイオード38n,38sとにより、励磁される突極36の位置を適切なタイミングで周方向にずらすことができるので、ロータ回転速度(または回転数)にかかわらず回転電機12のトルクを効果的に向上させることができる。
【0058】
ここで「適切なタイミング」とは、モータロータ18の突極36の回転位置に見合って制御されたタイミングの意味であり、より具体的には、例えば、突極36の外周側先端面が2つのティース部30間に対向する位置から1つのティース部30に少なくとも部分的に正対する位置へと移動しようとするタイミング、或いは、突極36の外周側先端面が1つのティース部30に少なくとも部分的に正対する位置から2つのティース部30間に対向する位置へと移動しようとするタイミングをいう。このことは後述する第2実施形態の回転電機システムについても同じである。
【0059】
また、回転電機システム10においては、外部の直流電源54から供給される直流電力を、回転トランス14を介して回転体側、すなわちトランスロータ22およびモータロータ18へ非接触給電して、ロータコイル34n,34sを励磁するための励磁電流として用いる構成としたので、ロータコイル34n,34sへの給電をメンテナンス不要の簡易な構成で行うことができる。
【0060】
なお、上記回転電機システム10において、直流電源54として出力電圧可変型の電源を用いて、モータロータ18の回転数に応じて回転トランス14の1次コイル50に供給する直流電圧値を変更してもよい。例えば、ロータコイル34n,34s自体で発生する誘導電流が比較的小さくなる低回転数領域では、回転トランス14からロータコイル34n,34sへ供給する励磁電流を大きくしてトルク増加を図るべく、比較的大きな直流電圧を回転トランス14の1次コイル50に印加してもよい。
【0061】
<第2実施形態>
次に、図1、3、図7〜10を参照して、第2実施形態の回転電機システム11について説明する。図7は、回転電機システム11における回転電機12を軸方向から見た平面図である。図8は、回転電機システム11における回転トランス14の軸方向に沿った断面図である。図9は、本実施形態におけるロータコイル34と回転トランス14との接続関係を示す回路図である。図10は、本実施形態における回転トランス14の1次コイル電流I(50)、2次コイル電流I(44)、ならびに、第1ないし第3ロータコイル電流I(34-1),I(34-2),I(34-3)を示す波形図である。また、図1および図3は、本実施形態の回転電機システム11でも同様である。
【0062】
以下においては、上記第1実施形態の回転電機システム10と相違する点について主として説明することとし、第1実施形態と同一または類似の構成要素には同一または類似の参照符号を付して重複する説明を援用により省略する。
【0063】
本実施形態の回転電機システム11における回転電機12は、図7に示すように、モータロータ18の各突極36に巻装されたロータコイル34にそれぞれ直列接続されているダイオード38が同じ方向を向いて接続されている。すなわち、回転トランス14から導電性バスバ56,58を介して励磁電流が各コイルに供給されるとき、各ロータコイル34において励磁電流の流れ方向が全ての突極36について同じとなる向きにしてある。また、図9に示すように、各ロータコイル34には、互いに直列接続された抵抗R1,R2,R3,…,R8およびコンデンサC1,C2,C3,…,C8が、それぞれ並列に接続されている。これらの抵抗R1−R8の各抵抗値、コンデンサC1−C8の各容量は、各ロータコイル34に流れる励磁電流の電流位相がモータステータ16の回転磁界に合わせて(例えば進角側へ)所定の位相差でずれるように予め設定されている。これら以外の回転電機12の構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0064】
本実施形態の回転トランス14は、図8に示すように、非突極型のトランスステータ20と、非突極型のトランスロータ22とを備える。トランスロータ22は、突極が形成されていない円柱状の外周面を有している。トランスロータの外周面の軸方向中間位置には、断面矩形状に凹んだ溝部42が周方向に延びて形成されている。そして、その溝部42内に2次コイル44が入り込んだ状態で巻装されている。
【0065】
トランスステータ20は、円筒形状をなしており、ティース部が形成されていない内周面を有している。トランスステータ20の内周面の軸方向中間位置には、断面矩形状に凹んだ溝部48が周方向に延びて形成されている。そして、その溝部48内に1次コイル50が入り込んだ状態でかつ2次コイル44と対向する位置で巻装されている。
【0066】
また、トランスロータの1次コイル50には、スイッチ52を介して交流電源55が接続されている。この交流電源55は、出力する交流電流の周波数をモータロータ18の回転速度に応じて変更可能なものであってもよい。そのようにすれば、回転電機12のロータ回転速度(または回転数)が変動したときにも、常に適切なタイミングで励磁される突極36の位置を周方向にずらすことができ、安定したトルク向上を実現できる。
【0067】
また、交流電源55として出力電圧可変型の交流電源を用いて、モータロータ18の回転数に応じて回転トランス14の1次コイル50に供給する交流電圧の振幅または実効値を変更してもよい。例えば、ロータコイル34自体で発生する誘導電流が比較的小さくなる低回転数領域では、回転トランス14からロータコイル34へ供給する励磁電流を大きくしてトルク増加を図るべく、実効値が比較的大きな交流電圧を回転トランス14の1次コイル50に印加してもよい。
【0068】
なお、これら以外の回転トランス14の構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0069】
また、本実施形態では、円柱状の外周面を有する非突極型のトランスロータ22と、円筒状の内周面を有する非突極型のトランスステータ20と、モータロータ18において各突極36のロータコイル34に流れる励磁電流の流れ方向が同じとなる向きで直列接続されているダイオード38と、各ロータコイル34に対してそれぞれ並列接続された抵抗R1−R8およびコンデンサC1−C8とによって、励磁電流調整手段が構成される。
【0070】
続いて、図10を参照して、上記構成からなる回転電機システム11の動作について説明する。
【0071】
回転電機12は、図示しないインバータから例えば三相交流電圧が印加されることによって駆動される。このような3相交流電圧をモータステータ16のステータコイル28u,28v,28wに印加して3相交流電流を流すことで、ティース部30に形成された回転磁界がモータロータ18に作用するのに応じて、モータロータ18の磁気抵抗が小さくなるように、突極36がティース部30の回転磁界に吸引される。これによって、モータロータ18にトルク(リラクタンストルク)が作用して、モータロータ18がモータステータ16で形成される回転磁界に同期して回転駆動される。
【0072】
このようにモータロータ18が回転駆動されると、回転シャフト24を共通にするトランスロータ22も同様に回転する。このとき、スイッチ52(図5参照)は制御部からの信号を受けてオンされて、回転トランス14の1次コイル50には交流電源55から交流電圧が印加されている。これにより、図10中の最上段に示すように1次コイル50には交流の1次コイル電流I(50)が流れて、1次コイル50の周囲に変動磁場が形成される。そして、この変動磁場による磁束が電磁結合されているトランスロータ22の2次コイル44に鎖交することによって、図10中の上から2段目に示すように、2次コイル44において1次コイル電流I(50)と同位相かつ同周期の2次コイル電流I(44)が誘起される。すなわち、本実施形態の回転トランス14では、1次コイル50に供給される交流電流が、2次コイル44に対して電磁結合による非接触給電にて交流電流として供給されることになる。
【0073】
上記のように2次コイル44に供給された交流電流は、導電線バスバ56,58を介してモータロータ18の各ロータコイル34に励磁電流として供給される。このとき、各ロータコイル34に流れる励磁電流は、各ダイオード38により整流されることで一方向のみとなる。すなわち、図10に示す例では、抵抗およびダイオードの並列接続がなければ、2次コイル電流I(44)が正のパルス電流となる時間期間t4だけに各ロータコイル34に励磁電流が流れ、2次コイル電流I(44)が負のパルス電流となる時間期間t5では各ロータコイル34に励磁電流が流れなくなっている。
【0074】
ただし、本実施形態では、各ロータコイル34には、それぞれ、互いに直列接続された抵抗R1−R8およびコンデンサC1−C8が並列に接続されている。そのため、抵抗およびコンデンサの作用によって、各ロータコイル34に流れる励磁電流の電流位相が進角側へ所定の位相差でずれることになる。その様子が図10中の上から第3ないし5段目に第1ロータコイル電流I(34-1)、第2ロータコイル電流I(34-2)、および第3ロータコイル電流I(34-3)として示されている。
【0075】
この例では、2次コイル44に近い方から順に第1〜第8ロータコイル34と称することとすると、第1ロータコイル34と第5ロータコイル34には、抵抗R1,R5およびコンデンサC1,C5の作用を小さくする(又は抵抗およびコンデンサを省略する)ことより上記時間期間t4において交流電流I(22)とほぼ同位相の正のパルス電流である第1ロータコイル電流I(34-1)が流れるが、第2および第6ロータコイル34には例えば電気角60°だけ進角側へずれた電流位相の正のパルス電流である第2ロータコイル電流I(34-2)が流れる。また、第3および第7ロータコイル34には更に電気角60°だけ進角側へずれた電流位相の正のパルス電流である第3ロータコイル電流I(34-3)が流れる。またさらに、図示していないが、2次コイル電流I(44)が負のパルス電流となる時間期間t5では第4および第8ロータコイル34に更に電気角60°だけ進角側へずれた電流位相の第4ロータコイル電流が流れることになる。
【0076】
このように、本実施形態では、モータロータ18において径方向に対向する2つの突極36が同時に励磁される状態が2次コイル電流I(44)の1周期t6の1/4に相当する時間間隔で順次に周方向へずれるようにしている。このようにして各突極36がN極またはS極の一定極性に順次に磁化されることでティース部30の回転磁界と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このティース部30の回転磁界と突極36の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によって、モータロータ18にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、モータロータ18がモータステータ16で形成される回転磁界に同期して回転駆動するときのトルクを向上させることができる。
【0077】
上述したように本実施形態の回転電機システム11では、回転トランス14の2次コイルに誘起される交流電流を各ロータコイルに励磁電流として印加するにあたり、各ロータコイルに並列接続した抵抗およびコンデンサの作用によって電流位相が進角側へ所定の位相差でずれるようにしたことにより、励磁される突極36の位置を所定のロータ回転速度において適切なタイミングで周方向にずらすことができ、その結果、回転電機12のトルクを効果的に向上させることができる。
【0078】
また、回転電機システム11においては、外部の交流電源55から供給される交流電力を、回転トランス14を介して回転体側、すなわちトランスロータ22およびモータロータ18へ非接触給電して、ロータコイル34を励磁する励磁電流として用いる構成としたので、ロータコイル34への給電をメンテナンス不要の簡易な構成で行うことができる。
【0079】
なお、本発明に係る回転電機システムは、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変形や改良が可能である。
【0080】
例えば、上記においてはモータロータ18に複数の突極36を設けてこれらの突極36の周囲にロータコイル34、34n、34sを巻装するものと説明したが、非突極型のモータロータの外周近傍位置に略円弧状のスリットを径方向に並べて複数形成し、磁気抵抗が小さくなるd軸磁路方向位置にロータコイルを巻装することにより、磁気的突極を周方向に間隔をおいて複数形成してもよい。
【0081】
また、上記においてはモータロータ18に永久磁石を用いない磁石レスの回転電機12を含む回転電機システム10,11について説明したが、ロータコイルと共に永久磁石を磁極部または磁極部間に組み込んだモータロータを備えた回転電機を含む回転電機システムとしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10,11 回転電機システム、12 回転電機、14 回転トランス、16 モータステータ、18 モータロータ、20 トランスステータ、22 トランスロータ、24 回転シャフト、26 ステータコア、28u,28v,28w ステータコイル、30 ティース部、31 スロット、32 ロータコア、34,34n,34s ロータコイル、36 突極、38,38n,38s ダイオード、40 突極、42,48 溝部、44 2次コイル、46 ティース部、50 1次コイル、52 スイッチ、54 直流電源、55 交流電源、56,58 導電線バスバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された回転シャフトと、回転シャフトに固定され、周方向に間隔をおいて設けられた複数の磁極部において整流素子が直列接続されてそれぞれ巻装されている複数のロータコイルを有するモータロータと、モータロータに隙間を介して対向配置され、周方向に間隔をおいて設けられる複数のティース部に集中巻によりそれぞれ巻装された複数のステータコイルを有するモータステータとを含み、前記ステータコイルに通電することによって形成される回転磁界により前記モータロータが回転する回転電機と、
前記回転シャフトに固定され、前記複数のロータコイルが並列接続される2次コイルが巻装されたトランスロータと、トランスロータに隙間を介して対向配置され、巻装されている1次コイルに電源から供給される電力を電磁結合による非接触給電にて前記2次コイルに供給するトランスステータとを含む回転トランスと、を備え、
前記2次コイルに誘起される電力を前記複数のロータコイルに励磁電流として印加するにあたり、励磁電流が前記ロータコイルに流れることにより励磁される磁極部の位置が前記モータロータの周方向にずれるように調整する励磁電流調整手段が設けられている、
回転電機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機システムにおいて、
前記励磁電流調整手段は、前記モータロータの磁極部と同数で同じ周方向位置の突極を有する前記トランスロータと、前記モータステータのティース部と同数で同じ周方向位置のティース部を有する前記トランスステータと、前記モータロータにおいて各磁極部のロータコイルに流れる励磁電流の流れ方向が周方向で交互に反対となる向きで直列接続されている前記整流素子とにより構成される、回転電機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機システムにおいて、
前記電源は直流電源であり、前記直流電源から回転トランスの1次コイルに直流電流が供給されることによって前記回転トランスの2次コイルには前記モータロータの回転速度に同期した交流電流が誘起され、この交流電流がモータロータのロータコイルに励磁電流として流れるとき前記整流素子によって整流されることにより周方向で1つおき毎のロータコイルが励磁される、回転電機システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の回転電機システムにおいて、
前記トランスロータに巻装された2次コイルは、前記トランスロータの突極の軸方向中間位置に形成された溝部に入り込んだ状態で巻かれており、前記トランスステータに巻装された1次コイルは、前記トランスステータのティース部の軸方向中間位置に形成された溝部に入り込んだ状態でかつ前記2次コイルに対向する位置で巻かれている、回転電機システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の回転電機システムにおいて、
前記直流電源は、前記モータロータの回転数に応じて出力電圧値を変更可能である、回転電機システム。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機システムにおいて、
前記励磁電流調整手段は、円柱状の外周面を有する非突極型の前記トランスロータと、円筒状の内周面を有する非突極型の前記トランスステータと、前記モータロータにおいて各磁極部のロータコイルに流れる励磁電流の流れ方向が同じとなる向きで直列接続されている前記整流素子と、前記各ロータコイルに対してそれぞれ並列接続された抵抗およびコンデンサとにより構成され、
前記電源は交流電源であり、前記交流電源から回転トランスの1次コイルに交流電流が供給されることによって前記回転トランスの2次コイルには同周期の交流電流が誘起され、この交流電流がモータロータのロータコイルに励磁電流として流れるとき前記抵抗および前記コンデンサの作用によって電流位相がずらされることにより、励磁される磁極部の位置が前記回転磁界に応じて周方向へ順次に変わる、回転電機システム。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機システムにおいて、
前記交流電源は、前記モータロータの回転速度に応じて交流電流の出力周波数を変更可能であり、前記モータロータの回転速度に応じて前記励磁磁極部の位置が変わるように前記電流位相のずれ量が調整される、回転電機システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の回転電機システムにおいて、
前記トランスロータに巻装された2次コイルは、前記トランスロータの外周面の軸方向中間位置で周方向へ延びて形成された溝部に入り込んだ状態で巻かれており、前記トランスステータに巻装された1次コイルは、前記トランスステータの内周面の軸方向中間位置で周方向に延びて形成された溝部に入り込んだ状態でかつ前記2次コイルに対向する位置に巻かれている、回転電機システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−21749(P2013−21749A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150662(P2011−150662)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】