説明

回転電機及び回転電機巻線の形成方法

【課題】本発明は、絶縁物の損傷や平角導体の損傷を防止し得る回転電機巻線を備えた回転電機を提供することにある。
【解決手段】本発明は、平角導体2を長手方向に180°捻って形成した捻り部3と、この捻り部3の両側を同方向に折り曲げて形成したコ字状の巻線端部4とを備えた複数の回転電機巻線(1)とを有し、これら回転電機巻線(1)の前記コ字状の両脚部5A,5Bを上部及び下部に収納して固定する複数の巻線溝9を有する回転電機鉄心(8)と、前記巻線溝9から突出した前記回転電機巻線(1)の隣接するコ字状の脚部5A,5Bを接合するようにしたのである。
このように、巻線端部4を長手方向に180°捻ることにより、平角導体2が大きく変形を強いられることはなくなり、その結果、被覆された絶縁物の損傷や平角導体自身の割れ及び亀裂の発生を防止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電機,電動機,発電電動機等の回転電機及び回転電機巻線の形成方法に係り、特に、平角導体を用いた回転電機巻線を有する回転電機及び回転電機巻線の成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の回転電機巻線、例えば固定子巻線は、固定子鉄心から張り出した隣接する巻線端部が干渉しないように、特許文献1に開示のように、平角導体を幅方向に略180°U字状に折り曲げてから亀甲型に展開して形成している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−298756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術によれば、巻線端部の平角導体が幅方向に略180°U字状に、云い代えればヘアピン状に折り曲げられることで、平角導体が大きく変形を強いられ、被覆された絶縁物が損傷されると共に、巻線端部は可能な限り小さい曲率で曲げることが要求されるので、平角導体自身に割れや亀裂が発生する問題があり、これが回転電機巻線の品質を低下させることになる。
【0005】
本発明の目的は、絶縁物の損傷や平角導体の損傷を防止し得る回転電機巻線を備えた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、平角導体を長手方向に180°捻って形成した捻り部と、この捻り部の両側を同方向に折り曲げて形成したコ字状の巻線端部とを備えた複数の回転電機巻線とを有し、これら回転電機巻線の前記コ字状の両脚部を上部及び下部に収納して固定する複数の巻線溝を有する回転電機鉄心と、この回転電機鉄心の巻線溝から突出した前記回転電機巻線のコ字状の隣接する脚を接合するようにしたのである。
【発明の効果】
【0007】
隣接する回転電機巻線の巻線端部が干渉しないように、巻線端部を長手方向に180°捻ることにより、平角導体を幅方向に180°折り曲げる場合に較べ、平角導体が大きく変形を強いられることはなくなり、その結果、被覆された絶縁物の損傷や平角導体自身の割れ及び亀裂の発生を防止し得る回転電機巻線を備えた回転電機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の回転電機巻線の形成方法を図1〜図7に示す固定子巻線に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すように、固定子巻線1は、長方形断面を有する平角導体2を長手方向に180°捻って形成した捻り部3と、この捻り部3の両側を同方向に折り曲げて形成したコ字状の巻線端部4と、コ字状の両脚部5A,5Bと、両脚部5A,5Bの端部6A,6Bとを有している。
【0010】
このような固定子巻線1を形成するには、まず、第1の工程として、図2に示すような直線状の平角導体2の所定の間隔Lを隔てた位置を、把持機構7A,7Bで把持し、一方の把持機構7Aを固定した状態で他方の把持機構7Bを矢印A方向に180°回転させて捻り、図3に示すように、把持機構7A,7Bで挟まれた平角導体2に、長手方向に180°捻って形成した捻り部3を形成する。次の工程として、捻り部3を中心にその両側を把持機構7A,7Bによって矢印B1,B2方向に90°折り曲げて、図4に示すように、両脚部5A,5Bを有するコ字状の巻線端部4を形成する。その後の工程として、両脚部5A,5Bが夫々収納される巻線溝の傾斜角の合わせて両脚部5A,5Bを傾斜させるために、前記把持機構7A,7Bを矢印C1,C2方向に回動させて、各脚部5A,5Bを全長に亘って傾斜させる。同時の工程あるいは別工程で、例えば、脚部5Aが巻線溝の上部に位置し、脚部5Bが巻線溝の下部(底部)に位置するように、前記把持機構7A,7Bを矢印D1,D2方向に移動させて、両脚部5A,5Bを巻線溝の深さ方向に変位させる。このように、形成された固定子巻線1を側面から見ると、図5に示すようになる。
【0011】
上記のようにして形成された固定子巻線1は、次の工程で、図6に示すように、把持機構7A,7B(図示せず)で把持したまま、固定子鉄心8が設置された位置まで搬送され、固定子鉄心8に設けた複数の巻線溝9のうち、所定の巻線溝内に端部6A,6Bから矢印E方向に所定量挿入して初期挿入動作を終了した後、把持機構7A,7B(図示せず)を開放する。
【0012】
上記一連の捻り動作、折り曲げ動作、回動動作、変位動作、搬送動作さらに初期挿入動作は、把持機構7A,7B一種によって行ってもよいが、生産性を上げるには、各動作専用の把持機構を用意して夫々専用の動作を行わせるようにすればよい。
【0013】
次に、更に次の工程で、挿入把持機構10によって、巻線端部4を把持して矢印E方向に移動させて両脚5A,5Bを巻線溝9内に規定量挿入した後、挿入動作を停止させて、挿入機構10を開放し、図示しない楔により両脚5A,5Bが挿入された巻線溝9の開口部を塞いで固定する。
【0014】
以上の一連の動作を繰り返して行うことで、固定子鉄心8の全ての巻線溝9に固定子巻線1を装着することができる。
【0015】
その後工程では、巻線溝9の反対側に張り出した両脚部5A,5Bの端部6A,6Bを、隣接する固定子巻線の端部に接続するために、図7に示すように、張り出した両脚部5A,5Bの一部を接続すべき方向に折り曲げて折り曲げ部5C,5Dを形成し、隣接する両脚部5A,5Bの端部6A,6Bを例えば抵抗溶接や蝋付け、更にはコネクタ等の周知の連結手段により接続する。
【0016】
図8は、上記のように形成された固定子巻線1が固定子鉄心8に装着された固定子11と、その内周側に微小隙間を介して回転自在に支持された回転子12とを備えた回転電機を示す。
【0017】
以上説明したように本実施の形態によれば、固定子巻線1の巻線端部には、曲率半径が小さい折り曲げ分が存在しないので、被覆された絶縁物の損傷や平角導体自身の割れ及び亀裂の発生を防止することができる。
【0018】
ところで、回転電機巻線として固定子巻線を一例に説明したが、固定子巻線に限らず、回転子巻線にも適用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による回転電機巻線の一実施の形態である固定子巻線を示す斜視図。
【図2】固定子巻線の形成方法の一工程を示す斜視図。
【図3】固定子巻線の形成方法の次の工程を示す斜視図。
【図4】固定子巻線の形成方法のさらに次の工程を示す斜視図。
【図5】固定子巻線の固定子鉄心への挿入前を示す側面図。
【図6】固定子巻線の固定子鉄心への挿入直前を示す斜視図。
【図7】固定子巻線の固定子鉄心の反挿入側示す斜視図。
【図8】固定子巻線が固定子鉄心に装着された回転電機を示す断面図。
【符号の説明】
【0020】
1…固定子巻線、2…平角導体、3…捻り部、4…巻線端部、5A,5B…脚部、6A,6B…端部、7A,7B…把持機構、8…固定子鉄心、9…巻線溝、10…挿入把持機構、11…固定子、12…回転子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導体を長手方向に180°捻って形成した捻り部と、この捻り部の両側を同方向に折り曲げて形成したコ字状の巻線端部とを備えた複数の回転電機巻線とを有し、これら回転電機巻線の前記コ字状の両脚部を上部及び下部に収納して固定する複数の巻線溝を有する回転電機鉄心とを備え、この回転電機鉄心の巻線溝から突出した隣接する脚部の端部を接続したことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記回転電機鉄心は固定子鉄心であり、前記回転電機巻線は固定子巻線であることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
平角導体を長手方向に180°捻って捻り部を形成し、この捻り部の両側を同方向に折り曲げてコ字状の巻線端部を形成したことを特徴とする巻線の形成方法。
【請求項4】
平角導体を長手方向に180°捻って捻り部を形成し、この捻り部の両側を同方向に折り曲げてコ字状の巻線端部を形成し、この巻線端部の反対側となる前記コ字状の脚部の端部を隣接する平角導体のコ字状の脚部の端部と接続したことを特徴とする巻線の形成方法。
【請求項5】
直線状の平角導体を長手方向に180°捻って捻り部を形成する工程と、前記捻り部の両側を同方向に折り曲げてコ字状の巻線端部を形成する工程と、前記コ字状の巻線端部の両脚を収納される巻線溝の傾斜角度に合わせて傾斜させる工程とを有する巻線の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−48488(P2008−48488A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219649(P2006−219649)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】