説明

回転電機

【課題】軸受の軌道輪と転動体との接触部の面圧上昇を可及的に抑制可能とし、寿命の短命化を防止することの可能な回転電機を提供する。
【解決手段】枠体に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、回転軸に取付けられており、回転軸と一体的に回転する回転子と、枠体に、回転子と対向して取付けられた固定子とを備えている。さらに、軸受に対し、回転軸の軸方向にスライド自在とした支持部材を介して回転軸の軸方向に圧力を付与する予圧装置を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、モータや発電機などの回転電機は、回転軸を転がり軸受で支持している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
かかる回転電機に用いられる転がり軸受の一般的な構造としては、内輪および外輪からなる軌道輪と、玉やころなどからなる転動体と、転動体を、内輪と外輪との間で一定間隔で保持する保持器とを備えている。そして、内輪と外輪との間には、ラジアル内部すきまやアキシアル内部すきまが形成されている。
【0004】
かかる軸受を備えた回転電機において、回転軸の振れ精度向上や振動、あるいは騒音低減を図ることを目的として、軸受の内部すきまを減少させるための予圧ばねを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−112215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、回転電機における軸受による予圧は、通常、予圧を付与した状態で軸受を固着する定位置予圧を採用しているため、回転軸が熱膨張によって僅かでも伸長すると、予圧が急激に高まり、例えば、軸受の軌道輪と転動体との接触部の面圧上昇により寿命を短くするおそれがあった。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、軸受の軌道輪と転動体との接触部の面圧上昇を可及的に抑制可能とした回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る回転電機は、枠体に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、当該回転軸に取付けられて当該回転軸と一体的に回転する回転子と、前記枠体に、前記回転子と対向して取付けられた固定子とを備えている。さらに、前記軸受に対し、前記回転軸の軸方向にスライド自在とした支持部材を介して前記回転軸の軸方向に圧力を付与する予圧装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、回転軸が熱膨張などによって伸長したとしても、予圧を一定に保持して軸受の軌道輪と転動体との接触部の面圧上昇を可及的に抑制し、寿命の短命化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係る回転電機としてのモータの断面視による模式的説明図である。
【図2】図2は、図1のI−I線における断面図である。
【図3】図3は、要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する回転電機の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態における例示で本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は実施形態に係る回転電機としてのモータの断面視による模式的説明図、図2は同図1のI−I線における断面図、図3は要部の説明図である。図示するように、モータ1は、枠体10と、この枠体10内に設けられた回転軸11と、回転子12と、固定子13とを備えている。
【0013】
すなわち、モータ1は、回転軸11が略円筒状の枠体10に、第1、第2の軸受21,22を介して回転自在に支持されるとともに、この回転軸11には永久磁石を備えた回転子12が取付けられ、回転軸11と回転子12とが一体的に回転可能に構成されている。また、枠体10には、回転子12と対向して固定子13が取付けられており、この固定子13には、固定子コイル14が樹脂モールドされて取付けられている。
【0014】
本実施形態における第1の軸受21は、回転子12に対して枠体10の一端側に設けられ、第2の軸受22は、回転子12に対して枠体10の他端側に設けられている。
【0015】
また、第1、第2の軸受21,22は、いずれも転がり軸受であって、図3に示すように、内輪23および外輪24からなる軌道輪と、内輪23と外輪24との間で、転動体である金属ボール25を一定間隔で保持する保持器26とを備えている。
【0016】
こうして、固定子コイル14に通電されると、回転子12の永久磁石に駆動トルクが発生し、その駆動トルクにより、回転軸11が回転子12と共に高速回転する。
【0017】
ところで、本実施形態における枠体10の一端側とは、図1における左側であり、枠体10の他端側とは、図1における右側であって、回転軸11の出力側である。
【0018】
本実施形態における係るモータ1では、枠体10の一端に検出器4が設けられ、枠体10の他端には減速機6が設けられている。
【0019】
検出器4は、回転部となる角度検出用マグネット板41と、磁気センサ42とを備えた磁気式の構成としている。なお、図1に示すように、枠体10の一端には、検出器4を保護する検出器カバー7が取り付けられている。
【0020】
すなわち、回転軸11の一端に、当該回転軸11と垂直な一方向に磁化された円板状の角度検出用マグネット板41を取付け、後述するブレーキカバー56の一側端面にホール素子を用いた磁気センサ42を設けている。磁気センサ42は、角度検出用マグネット板41の外周側に所定間隔をあけて位置するように配設される。
【0021】
また、減速機6は、例えば、サーキュラスプライン、フレックススプライン、およびウェーブジェネレータを備えた波動歯車装置、いわゆるハーモニック減速機とすることができる。また、減速機6は、回転軸11に対して、軸方向へのずれを吸収可能なカップリング構造(図示せず)を備えている。
【0022】
さらに、本実施形態に係るモータ1は、ブレーキ機構5を備えている。ブレーキ機構5は、図1に示すように、枠体10の一端側に設けたブレーキカバー56内に収納したブレーキディスク53と、このブレーキディスク53を挟持して摩擦力により回転を制動する固定プレート51と可動プレート52とを備えている。
【0023】
ブレーキディスク53は、回転軸11と一体的に回転可能であり、回転軸11に嵌着したハブ50に連接している。
【0024】
また、ブレーキ機構5は、可動プレート52を固定プレート51側に押圧する図示しないプレート押圧バネと、軸方向に移動可能に取付けられた可動プレート52を吸引してブレーキディスク53から離接させるコイル54とを備えている。コイル54は電磁石となるもので、前述のプレート押圧バネと共にブレーキヨーク55に埋設されている。
【0025】
ブレーキヨーク55は、所定の厚みを有し、中央に回転軸挿通孔55aを有する円板体からなり、外周縁を枠体10の一端側に連接するとともに、回転軸挿通孔55aの内周面で第1の軸受22を介して回転軸11を回転自在に支持している。
【0026】
そして、コイル54に通電されていないときはプレート押圧バネによって可動プレート52をブレーキディスク53側に付勢し、ブレーキディスク53を固定プレート51との間で挟持する。一方、コイル54に通電されると、軸方向に移動可能に取付けられた磁性板からなる可動プレート52を吸引してブレーキディスク53から離接させ、ブレーキ力を解除する。
【0027】
上述してきた構成において、本実施形態に係るモータ1は、回転軸11の軸方向に圧力を付与する予圧装置3を備えている。
【0028】
すなわち、回転軸11の出力側となる枠体10の他端側に予圧装置3を設け、回転軸11の軸方向にスライド自在とした第1の支持部材31を介して第2の軸受22に圧力を付与可能としている。
【0029】
第2の軸受22の内輪23は、回転軸11に固着されており、外輪24は、後述する第2の支持部材32に接着されている。なお、内輪23を回転軸11に固着する場合は、例えば焼嵌めなどの方式を適用することができ、外輪24を第2の支持部材32に接着する場合は、例えば接着剤などを用いることができる。
【0030】
予圧装置3は、枠体10に固着された第1の支持部材31と、この第1の支持部材31に対してスライド自在に設けられた第2の支持部材32と、第1の支持部材31と第2の支持部材32との間に介設した付勢部材としてのバネワッシャ33とを備えている。
【0031】
より具体的に説明すると、予圧装置3の第1の支持部材31は、略短筒状に形成されて枠体10に固着されている。そして、図1および図3に示すように、回転軸11の出力側の端部には、回転軸11側に、すなわち、内側方向に延在する延在部311が形成されている。
【0032】
また、予圧装置3の第2の支持部材32は、第1の支持部材31の内周面に当接するように配設された環状体からなり、内周面に第2の軸受22の外輪24を接着して連接するとともに、第1の支持部材31に対してはスライド自在に設けられている。
【0033】
図1および図3に示すように、第1の支持部材31の延在部311には、当該延在部311の端面からの厚みがそれぞれ異なる第1の段差面31aと第2の段差面31bとによって段差部312が形成されている。
【0034】
そして、第1の段差面31aと第2の支持部材32の外側面321との間に、第1の支持部材31に対して第2の支持部材32のスライドを許容する間隙Lが形成されている。すなわち、第2の支持部材32は、間隙Lの範囲でスライドすることができる。
【0035】
また、第1の段差面31aまでよりも厚みの薄い第2の段差面31bと、第2の支持部材32の外側面321との間に形成された空間内に、付勢部材としてのバネワッシャ33を介設している。
【0036】
すなわち、第1の支持部材31の延在部311と第2の支持部材32の外側面321との間に介設されたバネワッシャ33により、第2の支持部材32を介して第2の軸受22に対して軸方向に圧力を付与することができる。すなわち、第2の軸受22には、第2の支持部材32を介して、回転軸11の軸方向に定圧予圧を付与することが可能となっている。
【0037】
したがって、例えば、回転軸11が熱膨張によって伸長しても、第2の軸受22は追従することが可能となるため、従来の回転電機における軸受への定位置予圧のように、軸受面圧が過度に大きくなってしまうことを防止することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る予圧装置3は、第2の支持部材32が回転軸11回りに回動することを禁止する回り止め機構300を備えている。
【0039】
本実施形態に係る回り止め機構300は、図示するように、第2の支持部材32に突設した突起部325と、第1の支持部材31に設けられ、突起部325を遊嵌する溝部315とから構成されている。
【0040】
図3に示すように、溝部315には、第1の段差面31aと第2の支持部材32の外側面321との間に形成された間隙Lと同寸法の間隙Lが形成されている。したがって、第2の支持部材32は、回転軸11に対して周回りの回転は禁止される一方、軸方向へのスライドは許容されることになる。
【0041】
このように、回り止め機構300を設けたことにより、第2の支持部材32の回転軸11回りへの回転に関するクリープ現象が防止され、焼き付きなどを効果的に抑制することができる。なお、回り止め機構300の突起部325は、第1の支持部材31と一体的に形成されたものでもよいし、例えば別体のピンなどを第1の支持部材31に突設したものであってもよい。
【0042】
以上、説明してきたように、本実施形態に係るモータ1は、第2の軸受22に対し、回転軸11の軸方向にスライド自在とした第2の支持部材32を介して回転軸11の軸方向に圧力を付与する予圧装置3を備えている。
【0043】
したがって、回転軸11が熱膨張などによって伸長したとしても、第2の支持部材32を介して、予圧を一定に保持する定圧予圧を行うことになり、第2の軸受22における軌道輪と転動体である金属ボール25との接触部の面圧上昇を可及的に抑制し、面圧による疲れ寿命の短命化を防止することが可能となる。
【0044】
なお、予圧装置3は、第2の軸受22に代えて第1の軸受21に作用させるように配設しても構わないし、第1の軸受21と第2の軸受22とにそれぞれ対応させて配設してもよい。
【0045】
しかし、本実施形態においては、枠体10の一端に検出器4を設けた構成としている。検出器4が設けられる側では、回転軸11の膨張による伸長は望ましくない。そのため、予圧装置3を、検出器4とは反対側をなす枠体10の他端側に設けられた第2の軸受22に定圧予圧を付与できるように配設している。
【0046】
また、本実施形態におけるモータ1は、枠体10の他端に減速機6を設けている。減速機6を備えたモータ1では、減速機6からの振動による影響が第1の軸受21よりも第2の軸受22への方が大きいと考えられる。
【0047】
したがって、減速機6の側に配設された第2の軸受22は、当該減速機6からの振動などと相俟って負荷が大きくなり、例えば、磨耗の進行がより早まることも考えられる。その点からも、本実施形態のモータ1のように、予圧装置3は、減速機6側の第2の軸受22に対して定圧予圧を付与できるように配設されることが望ましい。
【0048】
しかも、予圧装置3には、回り止め機構300が設けられているため、第2の軸受22の軌道輪と金属ボール25との接触部の面圧上昇をより効果的に抑制することが可能となる。
【0049】
ところで、本実施形態においては、検出器4を磁気式として説明したが、磁気式に限るものではなく、例えば、光学式であってもよい。その場合、回転軸11に回転部として設けられたスリットを有する回転ディスクと、この回転ディスクを挟むように対向状態に配置された発光素子と受光素子とを備えた構成とすることができる(図示せず)。
【0050】
かかる光学式の検出器4であれば、回転軸11の膨張により伸長することは磁気式よりも望ましいことではない。したがって、検出器4とは反対側をなす第2の軸受22に定圧予圧を付与できるように予圧装置3を配設した本実施形態の構成は、より有効となる。
【0051】
また、予圧装置3の付勢部材としては、コンパクト化をも考慮し、バネワッシャ33を用いている。これにより、モータ1として軸方向へ長くなってしまうことを抑制することができるが、付勢部材としてはバネワッシャ33に限定されるものではない。
【0052】
さらに、予圧装置3の回り止め機構300としては、必ずしも、第2の支持部材32に突設した突起部325と、第1の支持部材31に設けられた溝部315とからなる構成に限定されるものでもない。
【0053】
例えば、付勢部材をコイルバネ、板バネなどから構成し、その一端を第1の支持部材31に固着し、他端を第2の支持部材32に固着することにより、第2の支持部材32の回転軸11回りの回転を規制することもできる。
【0054】
なお、上述してきた実施形態では、回転電機を、減速機一体型で、ブレーキ付のモータ1として説明したが、必ずしもそのような構成のモータ1である必要はない。また、モータ1に限らず、回転電機としては発電機であっても構わない。
【0055】
上述した実施形態のさらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 モータ(回転電機)
3 予圧装置
4 検出器
5 ブレーキ機構
6 減速機
10 枠体
11 回転軸
12 回転子
13 固定子
21 第1の軸受
22 第2の軸受
31 第1の支持部材
32 第2の支持部材
33 バネワッシャ(付勢部材)
300 回り止め機構
311 延在部
315 溝部
325 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に軸受を介して回転自在に支持された回転軸と、
当該回転軸に取付けられて当該回転軸と一体的に回転する回転子と、
前記枠体に、前記回転子と対向して取付けられた固定子と、
前記軸受に対し、前記回転軸の軸方向にスライド自在とした支持部材を介して前記回転軸の軸方向に圧力を付与する予圧装置と、
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記回転軸の回転を検出する検出器を備えるとともに、前記回転軸を支持する前記軸受を、前記回転子に対して前記枠体の一端側に設けた第1の軸受と、前記回転子に対して前記枠体の他端側に設けた第2の軸受とから構成し、
前記検出器を前記枠体の一端に設ける一方、前記回転軸の出力側をなす前記枠体の他端側に前記予圧装置を設けて前記第2の軸受に圧力を付与可能とした
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記予圧装置は、
前記支持部材が前記回転軸回りに回動することを禁止する回り止め機構を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記予圧装置は、
前記枠体に固着され、前記回転軸側に延在する延在部を有する第1の支持部材と、
前記軸受の外輪を連接するとともに、前記第1の支持部材に対してスライド自在に設けられた第2の支持部材と、
前記第1の支持部材の前記延在部と前記第2の支持部材の外側面との間に介設され、前記第2の支持部材を介して前記軸受を予圧する付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記回り止め機構は、
前記第2の支持部材に突設した突起部と、
前記第1の支持部材に設けられ、前記突起部を遊嵌する溝部と、
を具備することを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記回転軸の出力側に減速機を設けた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−70510(P2013−70510A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207218(P2011−207218)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】