説明

回転電機

【課題】固定子コイルを軸方向に均一に冷却することにより、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊の発生を抑える。
【解決手段】全閉内冷型両吸込通風型の回転電機において、軸流ファン8から送風される冷却媒体9が両側の固定子鉄心押え板5Aと固定子フレーム2との間の空隙19を通過するのを制限するように、両側の固定子鉄心押え板5Aを固定子フレーム2まで拡大すると共に冷却媒体冷却器12を両側の固定子鉄心押え板5Aで保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子コイルを均一に冷却することのできる回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
直流機、同期機または誘導機などの回転電機は、構造面では回転子と固定子によって構成されており、機能面では電磁誘導原理を利用して、電気エネルギーと機械エネルギー(回転エネルギー)の相互変換を行うものである。
【0003】
回転電機を運転すると、鉄損、銅損、漂遊負荷損、摩擦損や風損などの損失が発生し、この損失の大部分は熱エネルギーに変換されて機器の温度上昇を招く。回転電機内部には電気絶縁物により対地絶縁および層間絶縁されたコイルが巻装されており、この電気絶縁物が劣化すると、焼損や短絡事故の発生の可能性が高くなるので回転電機における温度上昇は重要なポイントである。従って規格でも許容最高温度・温度上昇限度が規定されている。なお、この許容最高温度・温度上昇限度は絶縁物の構成材料によって決まる絶縁階級によって異なる。一般にいわゆる7℃の法則と言われるように、各種絶縁材料の使用温度が7〜10℃上昇するごとにその寿命は半減すると言われている。
【0004】
そのため回転電機では内部に冷却ファンを設け、この冷却ファンによって強制通風して冷却する方法が採用され、開放型のように回転電機の外部から空気を取り入れ、この空気を回転電機内部に循環させて冷却後の空気を回転電機外部に排出する方式、全閉外扇形のように内部の空気と外部の空気を遮断し、回転電機のフレームをファン等により機械的に強制通風して外部から冷却する方式、あるいは冷却媒体を冷却器もしくは熱交換器によって冷却する内冷形など種々方式が実用化されている。
【0005】
この場合、効果的に冷却するために珪素鋼板を積層して回転子および固定子を製作する際に、積層方向に一定の間隔毎にダクトピースを介在させて通風ダクトを設けて鉄心および鉄心内のコイルを冷却する構造としている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかし、これらの従来の冷却方式は回転子および固定子に冷却媒体をファンによって通風し熱を取り去ることで冷却することに終始して、より効率的に冷却することまでは着目していない。
【0007】
以下、従来から使用されている同期発電機の冷却構造の一例を図9に基づいて説明する。図9は非特許文献1に掲載された従来の全閉内冷型両吸込通風型同期発電機を簡略化した構成図であり、軸中心から上部の断面を示している。図10は図9のX−X断面矢視図であり、軸中心から下部も図示している。
【0008】
図9の左右はほぼ対称であるから、説明を簡単にするために図示右側部分を代表して説明する。
1は固定子であり、四角い箱形をした固定子フレーム2と、この固定子フレーム2内に収容され、軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体9が通過する複数の通風ダクト11を形成した固定子鉄心3と、この固定子鉄心3の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットに装着した固定子コイル4とから構成されている。
【0009】
固定子鉄心3の両端は、固定子鉄心押え板5によって挟持され、この固定子鉄心押え板5は図示しないスタッドによって一体的に締結されている。この固定子鉄心押え板5は、固定子鉄心3の内径の中心(後述する回転子6の回転中心)を含む水平切断面よりも上部が固定子鉄心3の外径部よりも大きい外径の半円弧部として形成され、下部が三角形状に外側に張出した固定脚部5Lとして形成しており、この三角形状の固定脚部5Lによってベース(土台)フレーム20上に固定されている。すなわち、固定子1は、三角形状の固定脚部5Lによってベースフレーム20上に固定されている。20Sはベースフレーム20の側面板である。
【0010】
固定子鉄心3の内径側空間部には、空隙を介して突極型の回転子6が配置され、その回転子6の両端部は軸受7により回転自在に軸支されている。そして、この回転子6の端部と軸受7との間に軸流ファン8を設けている。17は軸流ファン8の外周部に近接するように固定子フレーム2に固定された仕切板である。
【0011】
固定子フレーム2は、固定子鉄心3の上部背面と対向した天上部に開口部13を設けるとともに、前記軸受7および軸流ファン8間の空間と対向した天上部にも開口部14を設けている。12は冷却媒体冷却器(熱交換器)であり、冷媒取入れ口を開口部13に対向配置し、冷媒出口を反対側すなわち上部に配置している。
【0012】
さらに、冷却媒体冷却器12および固定子フレーム2の開口部13、14を底のない箱状の風導ケース16で一体的に覆うことにより、冷却媒体冷却器12の図示上部および左右に通風路15を形成している。
【0013】
このように構成された従来の全閉内冷型両吸込通風型同期発電機では、回転子6の端部に設けられた軸流ファン8によって吸気口18より吸い込まれた冷却媒体9の一部は、回転子6の界磁極相互間に形成された軸方向通風部10の軸方向の中心部に向かって流れて行き、まず回転子6を冷却したあと、回転子6の遠心ファン効果により固定子鉄心3の通風ダクト11を通って固定子鉄心3および固定子コイル4に発生した熱量を奪い去り冷却する。そして、通風ダクト11から排出された冷却媒体9は、固定子フレーム2の上部に設置された冷却媒体冷却器12によって冷却する。
この構造では図10の軸方向断面図で示すように、固定子フレーム2の内側壁面と固定子鉄心押え板5の外周部との間に大きな隙間19が形成されている。
【0014】
軸流ファン8によって吸い込まれた冷却媒体9のうち、大部分は回転子6の軸方向通風部10から固定子鉄心3の通風ダクト11に送風され回転子6および固定子1を冷却して高温になった後、固定子フレーム2の開口部13を経て冷却媒体冷却器12に送られて冷却されるが、残りは回転子6の軸方向通風部10を通らずに固定子コイルエンド4Eおよび固定子鉄心3の側部を冷却して高温になった後、隙間19を抜け、固定子フレーム2の開口部13を経て冷却媒体冷却器12に送られて冷却される。冷却媒体冷却器12で冷却された冷却媒体9は、通風路15から左右の開口部14を通って再び固定子フレーム2の吸気口18に至る。
【0015】
ところで、軸方向通風部10から通風ダクト11を通る冷却媒体9によって冷却される固定子コイル4の中心部の温度と、固定子フレーム2と固定子鉄心押え板5の間の隙間19を通る冷却媒体9によって冷却される固定子コイルエンド4Eの温度とは等しいことが理想的ではあるが、隙間19の開口面積が大きいと、ここを抜ける冷却媒体9の風量が多くなって、固定子コイル4の中央部よりも固定子コイルエンド4Eを強く冷却することとなる。このため、固定子コイルエンド4Eの温度は固定子コイル4の中央部の温度よりもかなり低くなって、固定子コイル4の中心部と両コイルエンド部との温度分布にアンバランスが生じる。この結果、固定子コイル4の軸方向位置に対する熱膨張量が不均一になり、固定子コイル4の絶縁物にストレスが生じたり、さらには亀裂や絶縁破壊が発生するおそれがある。
【0016】
また固定子コイル4中央部の最高温度箇所を適正温度に冷却するためには、軸流ファン8の容量を固定子コイル4の温度を規定温度以下に冷却するのに十分な容量とすればよいが、その場合には通風量が多くなり、中央部以外の固定子コイル4では必要以上の通風量となって風損が大きく、軸流ファン8の容量も大きくなって、回転電機の総合効率にも影響を及ぼすことになる。
【0017】
この課題を解決するため、特許文献1で示すように、別途冷却器を設けて軸方向中央部のみ冷却を促進している例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−17070号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】電気学会編、「電気工学ハンドブック」、昭和53年4月発行、13編同期機 第2章タービン発電機、第689頁、図4(通風系統説明図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法を図9の構造に採用した場合、固定子鉄心3の外側の通風ダクト構造が複雑になり、また、複数の冷却器が必要となる欠点がある。
【0021】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、固定子コイルを軸方向に均一に冷却できるようにすることにより、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生するおそれのない回転電機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、請求項1に係る回転電機の発明は、軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体が通過する複数の通風ダクトを形成した固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットと、前記スロットに装着した固定子巻線とからなる固定子と、前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けられベースフレームに前記固定子を固定する固定子鉄心押え板と、前記固定子の内径側に空隙を介して回転自在にベースフレームに軸支される回転子と、前記回転子の両軸端に設けられ冷却媒体を前記固定子および回転子に送風する軸流ファンと、前記軸流ファンの送風によって前記固定子および回転子を冷却した冷却媒体を冷却する冷却媒体冷却器と、前記冷却媒体冷却器で冷却された冷却媒体を前記軸流ファンの吸い込み側に誘導する固定子フレームとからなる回転電機において、前記軸流ファンから送風される冷却媒体が前記固定子鉄心押え板と固定子フレームとの間の空隙を通過するのを制限するように前記両側の固定子鉄心押え板を前記固定子フレームまで拡大すると共に前記冷却媒体冷却器を前記両側の固定子鉄心押え板で保持することを特徴とする。
【0023】
また、請求項2に係る回転電機の発明は、請求項1記載の回転電機において、前記固定子鉄心押え板の固定子鉄心の外径部よりも外側部分に前記軸流ファンから送風される冷却媒体の一部が通過する複数の通風穴を設けたことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項3に係る回転電機の発明は、軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体が通過する複数の通風ダクトを形成した固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットと、前記スロットに装着した固定子巻線とからなる固定子と、前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けられベースフレームに前記固定子を固定する固定子鉄心押え板と、前記固定子の内径側に空隙を介して回転自在にベースフレームに軸支される回転子と、前記回転子の両軸端に設けられ冷却媒体を前記固定子および回転子に送風する軸流ファンと、前記軸流ファンの送風によって前記固定子および回転子を冷却した冷却媒体を冷却する冷却媒体冷却器と、前記冷却媒体冷却器で冷却された冷却媒体を前記軸流ファンの吸い込み側に誘導する固定子フレームとからなる回転電機において、前記軸流ファンから送風される冷却媒体が前記固定子鉄心押え板と固定子フレームとの空隙を通過するのを制限する防風板を前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けたことを特徴とする。
【0025】
さらにまた、請求項4に係る回転電機の発明は、請求項3記載の回転電機において、前記防風板に前記軸流ファンから送風される冷却媒体の一部が通過する複数の通風穴を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、固定子コイルを軸方向に均一に冷却することができるので、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生するおそれのない回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転電機の構成図。
【図2】図1に示す回転電機のII−II断面矢視図。
【図3】本発明の第2実施形態の回転電機の構成図。
【図4】図3に示す回転電機のIV−IV断面矢視図。
【図5】本発明の第3実施形態の回転電機の構成図。
【図6】図5に示す回転電機のVI−VI断面矢視図。
【図7】本発明の第4実施形態の回転電機の構成図。
【図8】図7に示す回転電機のVIII−VIII断面矢視図。
【図9】従来の回転電機の構成図。
【図10】図9の回転電機のX−X断面矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図を通して共通する部品あるいは部位には同一符号を付与する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る回転電機の構成図であり、回転電機の例として全閉内冷型両吸込通風型同期発電機を採り上げ、軸中心から上部の断面を示す。図2は図1のII−II断面矢視図であり、軸中心から下部も含む。
【0030】
[構成]
図1および図2において、1は固定子であり、四角い箱形をした固定子フレーム2と、この固定子フレーム2内に収容され、軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体9が通過する複数の通風ダクト11を形成した固定子鉄心3と、この固定子鉄心3の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットに装着した固定子コイル4とから構成されている。固定子鉄心3の両端は、後述する固定子鉄心押え板5Aによって挟持され、さらに固定子鉄心押え板5Aは図示しないスタッドによって一体的に締結されている。
【0031】
固定子鉄心3の内径側空間部には、空隙を介して突極型の回転子6が配置され、その両端部は軸受7により回転自在に軸支されている。そして、この回転子6の端部と軸受7との間に軸流ファン8を設けている。17は軸流ファン8の外周部に近接するように固定子フレーム2に固定された仕切板である。
【0032】
固定子フレーム2は、両側の固定子鉄心押え板5A相互間に位置する固定子鉄心3の上部背面と対向した天上部に開口部13を設けるとともに、仕切板17の外側で前記軸受7および軸流ファン8間の空間と対向した天上部にも開口部14を設けている。12は冷却媒体冷却器(熱交換器)であり、冷媒取入れ口を開口部13に対向配置し、冷媒出口を反対側すなわち上部に配置している。
【0033】
そして、冷却媒体冷却器12と、固定子フレーム2に設けた開口部13、14とを底のない箱状の風導ケース16で一体的に覆うことによって冷却媒体冷却器12の上部空間部およびその左右の空間部に通風路15を形成している。
【0034】
以上の構成は、固定子鉄心押え板を除いて、図9に示す従来例とほぼ同様であるが、本実施形態ではその固定子鉄心押え板5Aの形状および冷却媒体9の送風経路が一部異なっている。
【0035】
すなわち、本実施形態で採用した固定子鉄心押え板5Aは、図9に示したような上半部が円弧状で下半分が三角形状に張り出した形状の固定子鉄心押え板5とは形状が異なり、固定子フレーム2の内側壁面と固定子鉄心押え板5の外周部との間の隙間19を閉塞あるいは制限するために、固定子鉄心押え板5Aの外周部である上部の縁部および左右の縁部が、固定子フレーム2の上部内壁部および左右の内壁部に対して気密あるいは気密に近い状態で当接している。そして、下部の縁部の両端部はベースフレーム20に載置固定され、中間部はベースフレーム20の側面板20S対して気密あるいは気密に近い状態で当接するように形成されている。
【0036】
さらに、冷却媒体冷却器12は、冷媒取入れ口が固定子フレーム2の開口部13に対向するように両側に配置された固定子鉄心押え板5A上に載置されて固定されている。
【0037】
[作用効果]
次に本実施形態の作用効果について説明する。
軸流ファン8によって吸気口18より吸い込まれた冷却媒体9の大部分は、回転子6の界磁極相互間に形成された軸方向通風部10を流れて回転子6を冷却した後、さらに回転子6の自己通風遠心ファン効果により、固定子鉄心3の通風ダクト11内を流れて固定子コイル4を冷却した後、固定子鉄心3背面と固定子フレーム2間の空間部に吐出される。その後、冷却媒体9は固定子フレーム2の上部に設置された冷却媒体冷却器12によって冷却されたのち、風導ケース16内の通風路15から開口部14を通って再び固定子フレーム2内の吸気口18に戻る。
【0038】
この全閉内冷型両吸込通風型同期発電機の構造では、図2の軸方向断面図で示すように、固定子フレーム2の内側壁面と固定子鉄心押え板5Aの外周部とは、気密あるいは気密に近い状態で当接しており、従来存在していた隙間19を塞いでいるため、軸流ファン8によって吸い込まれた冷却媒体9のほとんどが軸方向通風部10に送られる。このため、固定子コイル4の中央部を冷却する冷却媒体9の風量が増え、その分固定子コイル4の中央部の温度が低くなる。
【0039】
一方、符号9−1で示すように、軸方向通風部10の手前で分流した冷却媒体9の一部は、固定子鉄心3、固定子鉄心押え板5Aおよび仕切板17で囲まれた空間部に流れて固定子コイルエンド4Eを冷却するため、従来のように固定子コイルエンド4Eの過冷却は行なわれず、逆に温度は上がる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、固定子コイル4の中央部の温度が低くなり、逆に固定子コイルエンド4Eの温度が上がる結果、固定子コイル4の軸方向の温度分布は均一化される。
【0041】
固定子コイル4の軸方向温度分布の均一化が図れることによって、従来機種よりも冷却風量を減らしても固定子コイル4の温度を規定値以下にすることができるため、軸流ファン8を従来機種よりも小さくすることができる。軸流ファンが小さくなることにより、ファン圧力(=通風抵抗)が小さくなり、通風量も必要最低通風量となる。通風抵抗が小さくなることより、効率が高くなる。
【0042】
従って、固定子フレーム2の内側壁面に対して気密あるいは気密に近い状態に両側の固定子鉄心押え板5Aを当接させることにより、固定子コイルを軸方向に均一に冷却して、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生する恐れのない回転電機を提供することができる。さらに、固定子鉄心3の両側の固定子鉄心押え板5Aによって冷却媒体冷却器12を直接固定するようにしたので、固定子フレーム2を従来機種よりも軽量化することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態に係る回転電機の構成図であり、回転電機の例として第1実施形態同様、全閉内冷型両吸込通風型同期発電機を採り上げ、軸中心から上部の断面を示す。図4は図3のIV−IV断面矢視図であり、軸中心から下部も図示している。
【0044】
[構成]
図3および図4において、図1または図2と同一部品又は同一部位については、対応する符号を付与して重複する説明は適宜省略する。
本実施形態が図1および図2で示した第1実施形態と相違する点は、固定子鉄心押え板5Bの形状および機能にある。
【0045】
本実施形態の固定子鉄心押え板5Bは、固定子鉄心3の外径部よりも外側に位置する部分に通風穴21を設け、固定子鉄心押え板5Bと仕切板17とで形成した空間部と、固定子鉄心3の背面の空間部とを通風穴21により連通させるようにしたことにある。その他の構成は図1および図2と同じなので説明は省略する。
【0046】
[作用効果]
次に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の奏する作用効果に加えて、軸方向通風部10の手前で分流した冷却媒体9−2が第1実施形態の冷却媒体9−1のように固定子鉄心3、固定子鉄心押え板5Bおよび仕切板17で囲まれた空間部を還流せずに通風穴21から固定子鉄心3の背面の空間部に流れるため、第1実施形態の場合よりも固定子コイルエンド4Eの冷却を行うことができ、固定子コイルエンド4Eにおける発熱量の大きい機種に対し有効である。
【0047】
従って、本実施形態は、第1実施形態と同様に固定子コイル4を均一に冷却し、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生するおそれのない回転電機を提供することができる。
【0048】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係る回転電機の構成図であり、回転電機の例として第1実施形態同様、全閉内冷型両吸込通風型同期発電機を採り上げ、軸中心から上部の断面を示す。図6は図5のVI−VI断面矢視図であり、軸中心から下部も図示している。
【0049】
[構成]
図5および図6において、図1ないし図4と同一部品又は同一部位については、対応する符号を付与して重複する説明は適宜省略する。
本実施形態が、図1ないし図4で示した第1実施形態や第2実施形態と相違する点は、固定子鉄心押え板5を図9および図10で示したものと同じ形状とし、固定子フレーム2の内側壁面と固定子鉄心押え板5の外周部との間の隙間19と同じ形状の防風板22を新たに用意し、この防風板22で隙間19を閉塞するようにしたことにある。その他の構成は図9および図10と同じなので説明は省略する。
【0050】
[作用効果]
次に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態は、図9および図10で採用した固定子鉄心押え板5をそのまま採用し、さらに固定子フレーム2と固定子鉄心押え板5の間に新たに設けた防風板22で隙間19を閉塞するようにしたので冷却媒体9の挙動は、第1実施形態とほぼ同じである。
【0051】
従って、本実施形態は、第1実施形態と同様に固定子コイル4を均一に冷却し、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生するおそれのない回転電機が提供できることに加え、防風板22を固定子フレーム2と固定子鉄心押え板5の間に設けることにより、従来機種の回転電機に対して容易に実施することができるという特徴を備えている。
【0052】
[第4実施形態]
図7は、本発明の第4実施形態に係る回転電機の構成図であり、回転電機の例として第1実施形態同様、全閉内冷型両吸込通風型同期発電機を採り上げ、軸中心から上部の断面を示す。図8は図7のVIII−VIII断面矢視図であり、軸中心から下部も図示している。
【0053】
[構成]
図7および図8において、図5または図6と同一部品又は同一部位については、対応する符号を付与して重複する説明は適宜省略する。
本実施形態が図5および図6で示した第3実施形態と相違する点は、防風板22に通風穴23を設け、防風板22と仕切板17とで形成した空間部と、固定子鉄心3の背面の空間部とを通風穴23により連通させるようにしたことにある。その他の構成は図5および図6と同じなので説明は省略する。
【0054】
[作用効果]
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態は、第3実施形態の奏する作用効果に加えて、軸方向通風部10の手前で分流した冷却媒体9−2が第3実施形態の冷却媒体9−1のように空間部を還流せずに通風穴23から固定子鉄心3の背面の空間部に流れるため、第3実施形態の場合よりも固定子コイルエンド4Eの冷却を行うことができる。従って、固定子コイルエンド4Eにおける発熱量の大きい機種に対し有効である。
【0055】
従って、本実施形態は、第1乃至第3実施形態と同様に固定子コイル4を均一に冷却し、固定子コイルの絶縁物にストレスを生じさせず、亀裂や絶縁破壊が発生するおそれのない回転電機を提供することができる。
【0056】
[変形例]
なお、上記の実施形態では突極型同期機を例に挙げて説明したが、本発明の回転電機は突極型同期機に限られることはなく、固定子と回転子とから構成され、ファンを具備した回転電機であれば、機種、容量、型式の如何にかかわらず適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…固定子、2…固定子フレーム、3…固定子鉄心、4…固定子コイル、4E…固定子コイルエンド、5、5A、5B…固定子鉄心押え板、6…回転子、7…軸受、8…軸流ファン、9、9−1、9−2…冷却媒体、10…軸方向通風部、11…通風ダクト、12…冷却媒体冷却器(熱交換器)、13…開口部、14…開口部、15…通風路、16…風導ケース、17…仕切板、18…吸気口、19…隙間、20…ベースフレーム、21…通風穴、22…防風板、23…通風穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体が通過する複数の通風ダクトを形成した固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットと、
前記スロットに装着した固定子巻線とからなる固定子と、
前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けられベースフレームに前記固定子を固定する固定子鉄心押え板と、
前記固定子の内径側に空隙を介して回転自在にベースフレームに軸支される回転子と、
前記回転子の両軸端に設けられ冷却媒体を前記固定子および回転子に送風する軸流ファンと、
前記軸流ファンの送風によって前記固定子および回転子を冷却した冷却媒体を冷却する冷却媒体冷却器と、
前記冷却媒体冷却器で冷却された冷却媒体を前記軸流ファンの吸い込み側に誘導する固定子フレームとからなる回転電機において、
前記軸流ファンから送風される冷却媒体が前記固定子鉄心押え板と固定子フレームとの間の空隙を通過するのを制限するように前記両側の固定子鉄心押え板を前記固定子フレームまで拡大すると共に前記冷却媒体冷却器を前記両側の固定子鉄心押え板で保持することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記固定子鉄心押え板の固定子鉄心の外径部よりも外側部分に前記軸流ファンから送風される冷却媒体の一部が通過する複数の通風穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
軸方向に珪素鋼板をドーナツ状に積層すると共に径方向に冷却媒体が通過する複数の通風ダクトを形成した固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の内径部の近傍に軸方向に形成したスロットと、
前記スロットに装着した固定子巻線とからなる固定子と、
前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けられベースフレームに前記固定子を固定する固定子鉄心押え板と、
前記固定子の内径側に空隙を介して回転自在にベースフレームに軸支される回転子と、
前記回転子の両軸端に設けられ冷却媒体を前記固定子および回転子に送風する軸流ファンと、
前記軸流ファンの送風によって前記固定子および回転子を冷却した冷却媒体を冷却する冷却媒体冷却器と、
前記冷却媒体冷却器で冷却された冷却媒体を前記軸流ファンの吸い込み側に誘導する固定子フレームとからなる回転電機において、
前記軸流ファンから送風される冷却媒体が前記固定子鉄心押え板と固定子フレームとの空隙を通過するのを制限する防風板を前記固定子鉄心の軸方向両端部に設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
前記防風板に前記軸流ファンから送風される冷却媒体の一部が通過する複数の通風穴を設けたことを特徴とする請求項3記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−90412(P2013−90412A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227963(P2011−227963)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】