説明

回転電機

【課題】ロータの内側から外側に速やかにオイルを排出することが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】同軸に配置された巻線ロータ11及び磁石ロータ12を備え、磁石ロータ12は、ロータコア17と、ロータコア17の軸線方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレート18とを備えた回転電機1において、エンドプレート18には、凹部20と、軸線方向の側面19bがロータコア17から離れた位置に設けられるとともに径方向の側面19aが凹部20の径方向の側面20aよりも径方向外側に位置し、かつ凹部20との間に仕切り面21が設けられて凹部20と区分された凸部19とが周方向に交互に設けられ、凸部19の内側に形成されたオイル溜まり22には、凸部19の径方向の側面19aを貫通する第1オイル通路23と、第1オイル通路23よりも径方向内側に設けられた第2オイル通路24とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ロータと、第1ロータの外周に第1ロータに対して相対回転可能に設けられた第2ロータと、第2ロータの外周に設けられたステータと、を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
第1ロータと、第1ロータの外周に同軸に設けられた第2ロータと、第2ロータの外周に第1ロータ及び第2ロータと同軸に設けられたステータとを備えた回転電機が知られている。このような回転電機において、第2ロータの外周面にオイル供給口を設け、第2ロータの永久磁石の冷却に用いたオイルをそのオイル供給口から遠心力により噴出させてステータに供給し、ステータ巻線のコイルエンド部を冷却する回転電機が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−062061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転電機では、第1ロータと一体回転する入力軸からオイルを供給している。そのため、第1ロータの回転数が第2ロータの回転数よりも大きくなる場合には入力軸からのオイルの供給量に対して第2ロータのオイル供給口から排出されるオイルの量が少なくなる可能性がある。この場合、第1ロータと第2ロータとの間や第1ロータの周囲にオイルが溜まり、攪拌損失が増大する。
【0005】
そこで、本発明は、ロータの内側から外側に速やかにオイルを排出することが可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の回転電機は、軸線回りに回転可能に設けられた第1ロータと、前記第1ロータの外周に前記第1ロータと同軸に配置されるとともに前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられた第2ロータと、前記第2ロータの外周に前記第1ロータ及び前記第2ロータと同軸に設けられたステータと、を備え、前記第2ロータは、環状のロータコアと、前記ロータコアの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートと、を備えた回転電機において、前記エンドプレートには、軸線方向の側面が前記ロータコアと接するとともに径方向の側面が前記ロータコアの外周面よりも径方向内側に位置する凹部と、軸線方向の側面が前記ロータコアから軸線方向に離れた位置に設けられるとともに径方向の側面が前記凹部の径方向の側面よりも径方向外側に位置し、かつ前記凹部との間に仕切り面が設けられて前記凹部と区分された凸部と、が周方向に交互に設けられ、前記凸部の内側には、前記ロータコア、前記凸部の軸線方向の側面、前記凸部の径方向の側面、及び前記仕切り面によってオイル溜まり部が形成され、前記オイル溜まり部を形成する仕切り面のうち前記第2ロータが所定方向に回転した場合に回転方向後方に位置する仕切り面には、前記エンドプレートを貫通するオイル通路が設けられている(請求項1)。
【0007】
本発明の第1の回転電機では、オイル溜まり部を形成する仕切り面のうち回転方向後方に位置する仕切り面にオイル通路が設けられている。そのため、第2ロータが所定方向に回転している場合に遠心力及び慣性を利用してオイル溜まり部のオイルをそのオイル通路から排出することができる。そのため、第2ロータの内側から外側にオイルを速やかに排出できる。これにより第1ロータと第2ロータとの間や第1ロータの周囲にオイルが溜まることを抑制できるので、攪拌損失を低減できる。
【0008】
本発明の第2の回転電機は、軸線回りに回転可能に設けられた第1ロータと、前記第1ロータの外周に前記第1ロータと同軸に配置されるとともに前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられた第2ロータと、前記第2ロータの外周に前記第1ロータ及び前記第2ロータと同軸に設けられたステータと、を備え、前記第2ロータは、環状のロータコアと、前記ロータコアの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートと、を備えた回転電機において、前記エンドプレートには、軸線方向の側面が前記ロータコアと接するとともに径方向の側面が前記ロータコアの外周面よりも径方向内側に位置する凹部と、軸線方向の側面が前記ロータコアから軸線方向に離れた位置に設けられるとともに径方向の側面が前記凹部の径方向の側面よりも径方向外側に位置し、かつ前記凹部との間に仕切り面が設けられて前記凹部と区分された凸部と、が周方向に交互に設けられ、前記凸部の内側には、前記ロータコア、前記凸部の軸線方向の側面、前記凸部の径方向の側面、及び前記仕切り面によってオイル溜まり部が形成され、前記オイル溜まり部には、前記凸部の径方向の側面を貫通する第1オイル通路と、前記第1オイル通路よりも径方向内側に設けられて前記エンドプレートを貫通する第2オイル通路と、が設けられている(請求項2)。
【0009】
本発明の第2の回転電機によれば、オイル溜まり部のオイルを第1オイル通路及び第2オイル通路を介して排出することができる。そのため、第2ロータの内側から外側にオイルを速やかに排出できる。従って、攪拌損失を低減できる。また、この第2の回転電機では、第2オイル通路を第1オイル通路よりも径方向内側に設けたので、第1オイル通路の流路断面積を適切に設定することにより、オイル溜まり部にオイルを溜めつつそのオイルの油面がロータコアの内周面に達することを抑制できる。この場合、ロータコアを冷却しつつ攪拌損失を低減できる。
【0010】
本発明の第2の回転電機の一形態において、前記第2オイル通路は、前記オイル溜まり部を形成する仕切り面のうち前記第2ロータが所定方向に回転した場合に回転方向後方に位置する仕切り面に設けられていてもよい(請求項3)。この形態によれば、第2ロータの回転時に遠心力及び慣性を利用してオイル溜まり部のオイルを第2オイル通路から速やかに排出できる。そのため、第1ロータと第2ロータとの間や第1ロータの周囲にオイルが溜まることを抑制できる。
【0011】
本発明の第2の回転電機の一形態において、前記第2オイル通路は、前記凸部の軸線方向の側面に設けられていてもよい(請求項4)。この場合、オイルを第2ロータの軸線方向の側方に排出することができる。
【0012】
本発明の第2の回転電機の一形態においては、前記第2オイル通路の流路断面積が前記第1オイル通路の流路断面積よりも大きくてもよい(請求項5)。このように各オイル通路の流路断面積を設定することにより、第2オイル通路から速やかにオイルを排出できる。そのため、オイル溜まり部にオイルを溜めつつそのオイルの油面がロータコアの内周面に達することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、本発明の回転電機によれば、オイル溜まり部のオイルをオイル通路から速やかに排出することができる。そのため、第2ロータの内側から外側にオイルを速やかに排出できる。従って、第1ロータと第2ロータとの間や第1ロータの周囲にオイルが溜まることを抑制できるので、攪拌損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の形態に係る回転電機を示す図。
【図2】図1のII−II線における回転電機の断面を示す図。
【図3】本発明の第2の形態に係る回転電機を示す図。
【図4】図3のIV−IV線における回転電機の断面を示す図。
【図5】本発明の第3の形態に係る回転電機を示す図。
【図6】図5のVI−VI線における回転電機の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の形態)
図1及び図2を参照して本発明の第1の形態に係る回転電機を説明する。図1及び図2は、いずれも回転電機としての複合モータ1の断面を示している。図1は図2のI−I線における断面を示し、図2は図1のII−II線における断面を示している。なお、図2では一部の図示を便宜上省略した。この複合モータ1は、車両に搭載され、走行用動力源である内燃機関と変速機との間の動力伝達経路中に組み込まれる。
【0016】
図1に示すように複合モータ1は、入力軸10と、第1ロータとしての巻線ロータ11と、第2ロータとしての磁石ロータ12と、ステータ13と、出力軸14とを備えている。巻線ロータ11、磁石ロータ12、及びステータ13は、ケース15内に収容されている。入力軸10は、不図示の内燃機関のクランク軸と連結されている。出力軸14は不図示の変速機の入力軸と連結されている。この図に示すように磁石ロータ12は、軸線Axの回りに回転可能なように一対のベアリングB1、B1を介してケース15に支持されている。入力軸10は、軸線Axの回りに回転可能なように一対のベアリングB2、B2を介して磁石ロータ12に支持されている。そのため、入力軸10と磁石ロータ12とは相対回転可能に設けられている。入力軸10は、内燃機関によって図2の矢印R方向に回転駆動される。
【0017】
図1に示すように巻線ロータ11は、内周に空間が形成されるように筒状に構成されている。巻線ロータ11の内径は、入力軸10の外径よりも大きい。巻線ロータ11は、入力軸10と同軸になるように入力軸10の外周に配置されている。入力軸10と巻線ロータ11とは連結部材16によって一体回転するように連結されている。このように巻線ロータ11と入力軸10とが連結されることにより、巻線ロータ11が軸線Axの回りに回転可能に設けられる。また、これにより巻線ロータ11と磁石ロータ12とが相互に相対回転可能になる。巻線ロータ11は複数のコイル11aを備えている。これら複数のコイル11aに所定の順番で電流を流すことにより、周方向に回転する回転磁界が発生する。
【0018】
入力軸10の中心には、軸線方向に延びるオイル供給通路10aが設けられている。また、入力軸10には、オイル供給通路10aから径方向外側に延びて外周面に開口する複数のオイル供給孔10bが設けられている。各オイル供給孔10bは、巻線ロータ11のコイル11aのコイルエンドの径方向内側に位置するように設けられている。
【0019】
ステータ13は円筒状をしている。ステータ13の内径は巻線ロータ11の外径及び磁石ロータ12の外径よりも大きい。ステータ13は、巻線ロータ11の径方向外側に巻線ロータ11と同軸になるように設けられている。ステータ13は、ケース15に回転不能に固定されている。ステータ13は複数のコイル13aを備えている。これら複数のコイル13aに所定の順番で電流を流すことにより、周方向に回転する回転磁界が発生する。
【0020】
磁石ロータ12は、巻線ロータ11と同様に内周に空間が形成されるように構成されている。磁石ロータ12は、巻線ロータ11の外周かつステータ13の内周に巻線ロータ11及びステータ13と同軸になるように設けられている。また、磁石ロータ12は、巻線ロータ11との間及びステータ13との間にそれぞれ所定の隙間が生じるように設けられている。そのため、巻線ロータ11、磁石ロータ12、及びステータ13は、軸線方向から見た場合に内側から巻線ロータ11、磁石ロータ12、ステータ13の順番で同心円状になるように配置されている。
【0021】
磁石ロータ12は、不図示の永久磁石を備えた環状のロータコア17と、ロータコア17の両端部にそれぞれ取り付けられたエンドプレート18とを備えている。エンドプレート18は、円筒状の小径部18aと、小径部18aの一端から径方向外側に延びるフランジ部18bと、フランジ部18bから小径部18aとは反対の方向、かつ軸線方向に延びる大径部18cとを備えている。大径部18cは小径部18aよりも径方向の大きさが大きい。この図に示すように磁石ロータ12は、小径部18aがベアリングB1を介してケース15に支持されている。
【0022】
図2に示すように大径部18cには、凸部19と凹部20とが周方向に交互に設けられている。図1に示すように凸部19の径方向の側面19aは、径方向の位置がロータコア17の外周とほぼ同じになるように設けられている。また、凸部19の軸線方向の側面19bは、ロータコア17から軸線方向に離れた位置に設けられている。一方、凹部20の径方向の側面20aは、径方向の位置がロータコア17の内周面とほぼ同じになるように設けられている。また、凹部20の軸線方向の側面20bはロータコア17と接するように設けられている。図2に示すように凸部19と凹部20との間には、これらを互いに区分する仕切り面21が設けられている。これにより凸部19の内側に、ロータコア17、径方向の側面19a、軸線方向の側面19b、及び一対の仕切り面21にてオイル溜まり22が形成される。このオイル溜まり22が本発明のオイル溜まり部に対応する。
【0023】
凸部19の径方向の側面19a及び凹部20の径方向の側面20aには、それぞれ径方向に貫通する第1オイル通路23が設けられている。図1に示すように第1オイル通路23は、ステータ13のコイル13aのコイルエンドの径方向内側に位置するように設けられている。また、図2に示すようにオイル溜まり22を形成する一対の仕切り面21のうち入力軸10の回転方向後方に位置する仕切り面21には、第2オイル通路24が設けられている。この図に示すように第2オイル通路24は、磁石ロータ12の外面の開口部が磁石ロータ12の内面の開口部よりも径方向外側に位置するように仕切り面21を斜めに貫通している。磁石ロータ12を軸線方向に見た場合における第2オイル通路24と凸部19の中心との間の角度θは、磁石ロータ12が矢印R方向に回転した場合に第2オイル通路24から排出されたオイルが回転方向後方に位置する凸部19に当たらないように設定されている。第2オイル通路24は、磁石ロータ12の内面の開口部がロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に位置するように設けられている。図1に示すように第2オイル通路24は、磁石ロータ12を径方向から見た場合に第1オイル通路23と径方向に並ぶように設けられている。また、第2オイル通路24は、流路断面積が第1オイル通路23の流路断面積より大きくなるように形成されている。
【0024】
図1及び図2に示すようにエンドプレート18は、複数の締結用ボルト25でロータコア17に固定されている。締結用ボルト25は、各凹部20に配置され、軸線方向にロータコア17を貫いてエンドプレート18をロータコア17に固定している。図1において右側に配置されているエンドプレート18の小径部18aには、出力軸14が一体回転するように連結されている。
【0025】
この複合モータ1では、巻線ロータ11及びステータ13の両方にコイルが設けられ、これらの両方で回転磁界を発生させることができる。そして、発生させた回転磁界で磁石ロータ12を回転させることができる。すなわち、複合モータ1は、巻線ロータ11及び磁石ロータ12で構成される第1モータ・ジェネレータと、ステータ13及び磁石ロータ12で構成される第2モータ・ジェネレータとを備えている。そして、複合モータ1は、これら2つのモータ・ジェネレータを適宜に利用して内燃機関の動力を変速機に伝達する。例えば、入力軸10が内燃機関によって回転駆動された場合は、巻線ロータ11のコイル11aで電気が発生して磁力が発生する。そのため、巻線ロータ11の回転に伴って磁石ロータ12も回転する。この際、磁石ロータ12は巻線ロータ11と同様に図2の矢印R方向に回転する。そして、これにより出力軸14から変速機に回転が伝達される。また、複合モータ1では、この際にコイル11aで発生した電気をインバータ等を介してステータ13のコイル13aに供給し、コイル13aで回転磁界を発生させることができる。そして、これにより磁石ロータ12を回転駆動することができる。このように複合モータ1では、巻線ロータ11で発生した磁力及び電力の両方を利用して磁石ロータ12を駆動することができる。この場合、磁石ロータ12の駆動トルクを増幅させることができる。そのため、複合モータ1は周知のトルクコンバータと同様に機能する。
【0026】
次に複合モータ1におけるオイルの流れについて説明する。図1に示すようにオイルは、不図示のオイルポンプからまず入力軸10のオイル供給通路10aに供給される。オイル供給通路10aのオイルは、この図に矢印F1で示したように遠心力によってオイル供給孔10bから磁石ロータ12の内部に供給される。この際、オイルは巻線ロータ11のコイル11aに掛かりこのコイル11aを冷却する。その後、オイルはオイル溜まり22に送られる。オイル溜まり22のオイルは、一部が第1オイル通路23を通ってステータ13のコイル13aに供給される。これによりこのコイル13aが冷却される。残りのオイルは、オイル溜まり22に溜まって磁石ロータ12のロータコア17を冷却する。オイル溜まり22のオイルの油面が第2オイル通路24に達すると、図2に矢印F2で示したように第2オイル通路24からオイル溜まり22のオイルが排出される。このオイルもステータ13のコイル13aに掛かりコイル13aを冷却する。なお、第1オイル通路23又は第2オイル通路24からケース15内に排出されたオイルは回収され、オイルポンプにて再度オイル供給通路10aに供給される。
【0027】
以上に説明したように複合モータ1によれば、オイル供給孔10bから供給されたオイルで巻線ロータ11のコイル11aを冷却できる。また、オイル溜まり22に溜めたオイルでロータコア17を冷却できる。そして、第1オイル通路23及び第2オイル通路24から排出されたオイルでステータ13のコイル13aを冷却できる。
【0028】
また、この複合モータ1では、オイル溜まり22のオイルを第1オイル通路23及び第2オイル通路24の両方から排出することができる。そのため、オイル溜まり22のオイルを速やかに排出できる。第2オイル通路24は、オイル溜まり22を形成する仕切り面21のうち入力軸10の回転方向後方に位置する仕切り面21に設けられている。そのため、磁石ロータ12が入力軸10の回転に伴って矢印R方向に回転している場合に第2オイル通路24から遠心力及び慣性を利用してオイルを排出することができる。また、第2オイル通路24の流路断面積は第1オイル通路23の流路断面積よりも大きい。従って、第2オイル通路24からオイルを速やかに排出することができる。第2オイル通路24の内面の開口部はロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に位置しているため、オイル溜まり22にオイルを溜めつつそのオイルの油面がロータコア17の内周面に達することを抑制できる。これにより巻線ロータ11と磁石ロータ12との間にオイルが溜まることを抑制できるので、攪拌抵抗を低減できる。
【0029】
(第2の形態)
図3及び図4を参照して本発明の第2の形態に係る回転電機について説明する。なお、この形態において第1の形態と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図3は、図4のIII−III線における複合モータ1の断面を示し。図4は図3のIV−IV線における複合モータ1の断面を示している。
【0030】
図3に示すようにこの形態では第2オイル通路24がオイル溜まり22を形成する軸線方向の側面19bに設けられている点が第1の形態と異なる。第2オイル通路24は、その側面19bを軸線方向に貫通するように設けられている。第2オイル通路24は、ロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に位置するように設けられている。この形態においても第2オイル通路24は、流路断面積が第1オイル通路23の流路断面積より大きくなるように設けられている。この形態では、オイル溜まり22のオイルの油面が第2オイル通路24のレベルに達すると図3に矢印F3で示したように第2オイル通路24を介してオイルが排出される。
【0031】
この形態によれば、オイル溜まり22のオイルを第1オイル通路23及び第2オイル通路24の両方から排出できる。そのため、オイル溜まり22のオイルを速やかに排出できる。第2オイル通路24はロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に設けられているため、オイル溜まり22にオイルを溜めつつそのオイルの油面がロータコア17の内周面に達することを抑制できる。また、第2オイル通路24の流路断面積は第1オイル通路23の流路断面積よりも大きい。そのため、第2オイル通路24から速やかにオイルが排出される。従って、巻線ロータ11と磁石ロータ12との間にオイルが溜まることを抑制できる。これにより攪拌抵抗を低減できる。また、オイル溜まり22のオイルにてロータコア17を冷却できる。
【0032】
(第3の形態)
図5及び図6を参照して本発明の第3の形態に係る回転電機について説明する。なお、この形態において上述した各形態と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図5は、図6のV−V線における複合モータ1の断面を示し。図6は図5のVI−VI線における複合モータ1の断面を示している。
【0033】
図5及び図6から明らかなようにこの形態では、オイル溜まり22に設けられているオイル通路30が1つであることが他の形態と異なる。オイル通路30は、第1の形態の第2オイル通路24と同様にオイル溜まり22を形成する一対の仕切り面21のうち入力軸10の回転方向後方に位置する仕切り面21に設けられている。オイル通路30は、磁石ロータ12の外面の開口部が磁石ロータ12の内面の開口部よりも径方向外側に位置するように仕切り面21を斜めに貫通している。磁石ロータ12を軸線方向に見た場合におけるオイル通路30と凸部19の中心との間の角度θは、オイル通路30から排出されたオイルが回転方向後方に位置する凸部19に当たらないように設定される。オイル通路30は、磁石ロータ12の内面の開口部がロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に位置するように設けられている。図5に示すようにオイル通路30は、複合モータ1を径方向から見た場合にステータ13のコイル13aのコイルエンドの径方向内側に位置するように設けられている。
【0034】
この形態によれば、磁石ロータ12が入力軸10の回転に伴って矢印R方向に回転している場合に、オイル通路30から遠心力及び慣性を利用してオイルを排出することができる。そのため、オイルを速やかに排出できる。また、オイル通路30の内面の開口部はロータコア17の内周面よりも若干径方向外側に位置しているため、オイル溜まり22にオイルを溜めつつそのオイルの油面がロータコア17の内周面に達することを抑制できる。そのため、ロータコア17を冷却しつつ攪拌抵抗を低減できる。
【0035】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、各凸部に設けられる第2オイル通路の数は1つに限定されない。例えば、凸部の軸線方向の側面及び仕切り面にそれぞれ第2オイル通路が設けられていてもよい。第2オイル通路やオイル通路が設けられる径方向の位置は、ロータコアの内周面よりも若干径方向外側の位置に限定されない。巻線ロータと磁石ロータとの間にオイルが溜まらないようにオイルを排出可能であれば、第2オイル通路又はオイル通路が設けられる径方向の位置は適宜に変更してよい。第1オイル通路の流路断面積と第2オイル通路の流路断面積とは同じであってもよい。
【0036】
本発明の回転電機は、車両以外の種々の装置に組み込んで使用してよい。また、装置に組み込まずに単独で使用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 複合モータ(回転電機)
11 巻線ロータ(第1ロータ)
12 磁石ロータ(第2ロータ)
17 ロータコア
18 エンドプレート
19 凸部
19a 凸部の径方向の側面
19b 凸部の軸線方向の側面
20 凹部
20a 凹部の径方向の側面
20b 凹部の軸線方向の側面
21 仕切り面
22 オイル溜まり(オイル溜まり部)
23 第1オイル通路
24 第2オイル通路
30 オイル通路
Ax 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能に設けられた第1ロータと、前記第1ロータの外周に前記第1ロータと同軸に配置されるとともに前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられた第2ロータと、前記第2ロータの外周に前記第1ロータ及び前記第2ロータと同軸に設けられたステータと、を備え、
前記第2ロータは、環状のロータコアと、前記ロータコアの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートと、を備えた回転電機において、
前記エンドプレートには、軸線方向の側面が前記ロータコアと接するとともに径方向の側面が前記ロータコアの外周面よりも径方向内側に位置する凹部と、軸線方向の側面が前記ロータコアから軸線方向に離れた位置に設けられるとともに径方向の側面が前記凹部の径方向の側面よりも径方向外側に位置し、かつ前記凹部との間に仕切り面が設けられて前記凹部と区分された凸部と、が周方向に交互に設けられ、
前記凸部の内側には、前記ロータコア、前記凸部の軸線方向の側面、前記凸部の径方向の側面、及び前記仕切り面によってオイル溜まり部が形成され、
前記オイル溜まり部を形成する仕切り面のうち前記第2ロータが所定方向に回転した場合に回転方向後方に位置する仕切り面には、前記エンドプレートを貫通するオイル通路が設けられている回転電機。
【請求項2】
軸線回りに回転可能に設けられた第1ロータと、前記第1ロータの外周に前記第1ロータと同軸に配置されるとともに前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられた第2ロータと、前記第2ロータの外周に前記第1ロータ及び前記第2ロータと同軸に設けられたステータと、を備え、
前記第2ロータは、環状のロータコアと、前記ロータコアの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられたエンドプレートと、を備えた回転電機において、
前記エンドプレートには、軸線方向の側面が前記ロータコアと接するとともに径方向の側面が前記ロータコアの外周面よりも径方向内側に位置する凹部と、軸線方向の側面が前記ロータコアから軸線方向に離れた位置に設けられるとともに径方向の側面が前記凹部の径方向の側面よりも径方向外側に位置し、かつ前記凹部との間に仕切り面が設けられて前記凹部と区分された凸部と、が周方向に交互に設けられ、
前記凸部の内側には、前記ロータコア、前記凸部の軸線方向の側面、前記凸部の径方向の側面、及び前記仕切り面によってオイル溜まり部が形成され、
前記オイル溜まり部には、前記凸部の径方向の側面を貫通する第1オイル通路と、前記第1オイル通路よりも径方向内側に設けられて前記エンドプレートを貫通する第2オイル通路と、が設けられている回転電機。
【請求項3】
前記第2オイル通路は、前記オイル溜まり部を形成する仕切り面のうち前記第2ロータが所定方向に回転した場合に回転方向後方に位置する仕切り面に設けられている請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第2オイル通路は、前記凸部の軸線方向の側面に設けられている請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2オイル通路の流路断面積が前記第1オイル通路の流路断面積よりも大きい請求項2〜4のいずれか一項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90482(P2013−90482A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229809(P2011−229809)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】