説明

固体撮像素子検査方法

【課題】固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷及び異物の存する箇所を低コストで、且つ、簡単に判定することのできる固体撮像素子検査方法を提供する。
【解決手段】固体撮像素子検査装置1は、被検体であるCCDイメージセンサ5に光を照射する面光源11と、面光源11からの光を遮るようにCCDイメージセンサ5と面光源11との間に設けられたマスクプレート12と、CCDイメージセンサ5に接続され、CCDイメージセンサ5から出力される撮像信号を画像データへ変換する信号処理部13と、画像データを出力するモニタ16とから構成される。マスクプレート12は、2箇所にピンホール14a、14bが形成されており、光が通過できるようになっている。面光源11からの光はマスクプレート12によって2つのスリット光となり、その2つのスリット光がCCDイメージセンサ5を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷又は異物を検出する固体撮像素子検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCCDイメージセンサといった固体撮像素子は、広く普及しているが、より良い画質を得るため、さらなる高性能化が要求されている。高性能な固体撮像素子を開発及び製造するにあたっては、その特性や品質を調べるための検査が重要である。従来は、固体撮像素子に内蔵されたチップに対して単一方向から光を照射して、出力される画像データを基に固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷又は異物を検出していた。また、チップを保護する透明なリッドに損傷又は異物が存すれば固体撮像素子の性能の低下につながるため、パッケージング後に再度検査を行っていた。
【0003】
そこで、固体撮像素子の受光特性に影響を与えるチップに存する損傷及び異物の検出ができ、併せて、リッドに存する損傷及び異物について表裏面を区別して検出できる検査装置などが提案されている。複数の角度から順次照射するために複数の点光源を有する検査装置や(例えば、特許文献1参照)、照射角度を可変とした検査装置用の照明装置である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらによれば、異なる角度から固体撮像素子を照射するので、リッドに損傷又は異物が存すれば照射角度毎にチップに映る影の位置は異なり、出力される画像データも異なる。よって、チップに損傷又は異物が存するときは、異なる角度から固体撮像素子を照射しても出力される画像データに変化はないことから、チップ側とリッド側とのどちらに存する損傷又は異物であるのか判別できる。また、リッドに存する損傷又は異物が表面と裏面とのどちらへのものであるかは、出力される画像データに映る2つの影の距離によって判別できる。損傷又は異物からチップまでの距離が遠い程2つの影の距離は大きくなるので、画像データに映る2つの影の距離が所定量より大きければリッドの表面に存する損傷又は異物であると判別され、逆に所定量より小さければリッドの裏面に存する損傷又は異物であると判別される。
【特許文献1】特開平5−30540号公報
【特許文献2】特開2000−295639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の検査装置では、複数の点光源を設けた上で、順次照射するよう制御しなければならなかった。また、特許文献2の検査装置用の照明装置を用いた場合では、照射角度変化機構を設けた上で、照明装置を移動させて照射角度を変化させなければならなかった。そこで、構造的に簡易化することによって、低コストで、且つ、簡単に検査できることが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷及び異物の存する箇所を低コストで、且つ、簡単に判定することのできる固体撮像素子検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の固体撮像素子検査方法は、透明なカバープレートによって受光部が保護された固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷及び異物を検出する固体撮像素子検査方法であって、光源からの光をマスクプレートに形成された2箇所のピンホールを通過させて2方向からカバープレートを介して受光部に照射して、得られる画像中の影がピンホールの配置方向に2つに分離しているときにはカバープレートに存する損傷又は異物と判定し、影が分離していないときには受光部に存する損傷又は異物と判定することを特徴とする。
【0008】
なお、画像中の影が分離している場合において、2つの影の距離によってカバープレートに存する損傷又は異物が表裏面のどちら側にあるかを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固体撮像素子検査方法によれば、光源からの光をマスクプレートに形成された2箇所のピンホールを通過させて2方向からカバープレートを介して受光部に照射して、得られる画像中の影がピンホールの配置方向に2つに分離しているときにはカバープレートに存する損傷又は異物と判定し、影が分離していないときには受光部に存する損傷又は異物と判定することより、構造的に複雑な装置を用いることなく、固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷及び異物の存する箇所を低コストで、且つ、簡単に判定することができるので、固体撮像素子の生産性の向上が図れる。
【0010】
また、画像中の影が分離している場合において、2つの影の距離によってカバープレートに存する損傷又は異物が表裏面のどちら側にあるかを判定するので、表面側に損傷又は異物が存すると判定された場合には、カバープレートの取り替え又は異物の除去によって不良を解消することができ、固体撮像素子の歩留まりの向上に寄与することとなる。また、カバープレートの屈折率の関係により目視による外観検査での検出が困難である裏面側に存する損傷又は異物が容易に検出することができ、不良品の検出率の向上に寄与することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
固体撮像素子検査装置1は、図1、図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、被検体であるCCDイメージセンサ(固体撮像素子)5に光を照射する面光源(光源)11と、面光源11からの光を遮るようにCCDイメージセンサ5と面光源11との間に設けられたマスクプレート12と、CCDイメージセンサ5に接続され、CCDイメージセンサ5から出力される撮像信号を画像データへ変換する信号処理部13と、画像データを出力するモニタ(出力手段)16とから構成されている。CCDイメージセンサ5は、外枠を形成する筐体6と、その筐体6内部に設けられたチップ7と、筐体6の上面に形成された開口部6aを塞ぐ封止ガラス(カバープレート)8とから構成されており、封止ガラス8を透過する光がチップ(受光部)7を照射することで撮像信号を出力する。
【0012】
マスクプレート12は、図4に示すように、2箇所にピンホール14a、14bが形成されており、光が通過できるようになっている。面光源11からの光はマスクプレート12によって2つのスリット光15a、15bとなり、その2つのスリット光15a、15bがCCDイメージセンサ5を照射する。
【0013】
信号処理部13は、CCDイメージセンサ5から出力された撮像信号に対して、ノイズの除去や増幅を施し、その後、アナログ信号からデジタル信号へ変換して画像データを生成する。生成された画像データはモニタ16に表示される。このモニタ16に表示される画像データによってCCDイメージセンサ5の受光特性に影響を与える損傷及び異物を判定することができる。
【0014】
以下に、CCDイメージセンサ5に存する損傷及び異物の箇所の判定方法について説明する。チップ7に異物9aが存するときは、図2に示すように、2つのピンホール14a、14bを通過するスリット光15a、15bはチップ7面における当該異物9aの存する箇所を照射せず、モニタ16には影10aとなって表示される(図5(a))。なお、異物9aの代わりに損傷が存する場合も同様である。
【0015】
一方、封止ガラス8の下面に異物9bが存するときは、図3(a)に示すように、2つのピンホール14a、14bを通過するスリット光15a、15bの当該異物9bの存する箇所への照射角度が互いに異なることから、チップ7にはピンホール14a、14bの配置方向に2つの影10b、10cができ、モニタ16に表示される(図5(b))。なお、異物9bの代わりに損傷が存する場合も同様である。
【0016】
また、封止ガラス8の下面に異物9bが存するとき(図3(a))と同様、封止ガラス8の上面に異物9cが存するときは、図3(b)に示すように、2つのピンホール14a、14bを通過するスリット光15a、15bの当該異物9cの存する箇所への照射角度が互いに異なることから、チップ7にはピンホール14a、14bの配置方向に2つの影10d、10eができ、モニタ16に表示される(図5(c))。なお、異物9cの代わりに損傷が存する場合も同様である。これにより、モニタ16に表示される画像を見て、影が1つのときにはチップ7に存する損傷又は異物と判定することができ、影がピンホール14a、14bの配置方向に2つに分離しているときには封止ガラス8に存する損傷又は異物と判定することができる。つまり、CCDイメージセンサ5に損傷又は異物が存する場合、その損傷又は異物の存する箇所がチップ7側であるか封止ガラス8側であるかを判定することができる。
【0017】
ここで、封止ガラス8に損傷又は異物が存すると判定された場合において、その損傷又は異物が表裏面のどちら側であるかの判定方法について説明する。図3(a)及び図3(b)に示すように、封止ガラス8の厚さをd1とし、封止ガラス8とチップ7との間隔をd2とする。また、封止ガラス8の下面に存する異物9bへ照射する2つのスリット光15a、15bの成す角度をθ1とし、封止ガラス8の上面に存する異物9cへ照射する2つのスリット光15a、15bの成す角度をθ2とする。
【0018】
封止ガラス8に付着した異物によって発生する2つの影の距離は、封止ガラス8の下面に異物9bが存する場合をX1とし(図5(b)参照)、封止ガラス8の上面に異物9cが存する場合をX2とする(図5(c)参照)。スリット光15a、15bを作り出すマスクプレート12がCCDイメージセンサ5から十分に離れているときは、角度θ1及びθ2は
θ=θ1≒θ2
と近似され、2つに分離した影の距離X1及びX2は
X1≒d2・sinθ
X2≒X1+d1・sinθ
と近似的に表される。なお、封止ガラス8の屈折率nは計算の簡略化のためn≒1として考えた。つまり、マスクプレート12をCCDイメージセンサ5から十分に離して検査すれば、2つに分離した影の距離は、封止ガラス8の下面に損傷又は異物9bが存するときは一定値X1となり、封止ガラス8の上面に損傷又は異物9cが存するときは一定値X2(>X1)となる。これにより、封止ガラス8に損傷又は異物が存する場合、モニタ16に表示される2つの影の距離を測ることによって、その損傷又は異物が表裏面のどちら側にあるかを判定することができる。
【0019】
このようにして、モニタ16に表示される影の個数及び距離によって、CCDイメージセンサ5の受光特性に影響を与える損傷及び異物の存する箇所を判定することができる。
【0020】
また、上記実施形態において、CCDイメージセンサ5を構成する筐体6の上面に形成された開口部6aが、封止ガラス8によって塞がれている場合を例に説明したが、これに限るものではなく、光を透過できる部材であれば良く、例えば透明性の合成樹脂でできた部材で塞がれていても良い。
【0021】
また、上記実施形態において、画像データがモニタ16に表示される場合を例に説明したが、これに限るものではなく、画像データはプリント用紙に印刷されるのでも良い。
【0022】
さらに、上記実施形態において、モニタ16に表示される画像データを見て、作業者が損傷及び異物の存する箇所を判定する場合を例に説明したが、これに限るものではなく、判定装置を設け、それによって自動的に判定されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の固体撮像素子検査方法によって検査されるCCDイメージセンサ及びその検査に用いる固体撮像素子検査装置の前方からの断面図である。
【図2】固体撮像素子検査方法を説明するCCDイメージセンサ及び固体撮像素子検査装置の前方からの断面図である。
【図3】固体撮像素子検査方法を説明するCCDイメージセンサ及び固体撮像素子検査装置の前方からの断面図である。
【図4】ピンホールが形成されたマスクプレートの上面図である。
【図5】モニタに表示された画像データの図である。
【符号の説明】
【0024】
5 CCDイメージセンサ
6 筐体
6a 開口部
7 チップ
8 封止ガラス
9a、9b、9c 異物
10a、10b、10c、10d、10e 影
11 面光源
12 マスクプレート
13 信号処理部
14a、14b ピンホール
15a、15b スリット光
16 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なカバープレートによって受光部が保護された固体撮像素子の受光特性に影響を与える損傷及び異物を検出する固体撮像素子検査方法において、
光源からの光をマスクプレートに形成された2箇所のピンホールを通過させて2方向から前記カバープレートを介して前記受光部に照射して、得られる画像中の影が前記ピンホールの配置方向に2つに分離しているときには前記カバープレートに存する損傷又は異物と判定し、前記影が分離していないときには前記受光部に存する損傷又は異物と判定することを特徴とする固体撮像素子検査方法。
【請求項2】
前記画像中の影が分離している場合において、前記2つの影の距離によって前記カバープレートに存する損傷又は異物が表裏面のどちら側にあるかを判定することを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−194888(P2007−194888A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10853(P2006−10853)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】