説明

固体撮像素子

【課題】画像の色再現特性がよく、薄膜のカラーフィルタを有する固体撮像素子を提供する。
【解決手段】光電変換部とマイクロレンズの間に、フィルタ層を備えた固体撮像素子であって、
前記フィルタ層は、該フィルタ層より前記光電変換部側に曲率の中心を有する凸型形状を備え、該曲率の中心からの角度が一定となるように1次元または2次元の周期で配列された格子を有する構成とする。
その際、前記曲率の中心と前記マイクロレンズの焦点位置とが一致しており、また、前記マイクロレンズと前記光電変換部の間に、入射光に対して凸型形状の絶縁膜を有し、該絶縁膜上に前記フィルタ層が形成されている構成とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関し、特に、凸型形状で周期的に配列された格子を有するフィルタ層を備えた固体撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS素子などを2次元状に複数配列した固体撮像素子が、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラなどで用いられている。
これらの固体撮像素子では多画素化が進み、それに伴い、画素サイズが縮小されてきている。
ここで、このような画素サイズが縮小された従来例の固体撮像素子の概略構成を、図10を用いて説明する。
図10において、901はマイクロレンズ、902は平面形状のカラーフィルタ層、903は層間絶縁膜、904は配線層、905は光電変換部906を含む半導体基板である。カラーフィルタ層902は、通常、アクリル系樹脂に色別の顔料又は染料を混入することにより製造されることが知られている。
画素サイズが縮小されると、半導体基板905上に形成されている配線層904やカラーフィルタ層902の割合が大きくなり、マイクロレンズ901から光電変換部906までの距離と画素サイズのアスペクト比が大きくなる。このため、画素の開口部に対する集光率が悪化する。
従来より、画素サイズが縮小されても集光率を悪化させないために、そのアスペクト比を小さくすることが行われている。
例えば、配線層904の材料をアルミニウムから銅に変更することで、配線層を薄膜化する手法などが用いられる。
【0003】
また、カラーフィルタ層902を薄膜化する技術として、特許文献1では、吸収材料の膜厚を制御して、色分離を行うカラーフィルタ層が提案されている。
また、特許文献2では、サブ波長格子を用いた薄膜カラーフィルタが提案されている。
このサブ波長格子を用いたカラーフィルタでは、つぎのような共鳴現象が用いられる。
すなわち、サブ波長格子カラーフィルタに入射した光のうち、格子の形状・周期に対応した特定の波長の光が、格子内部を伝播し、多重反射して共鳴を起こす。
この共鳴により特定の波長を選択的に反射させ、原理的には反射率100%、透過率0%の特性が得られる。
サブ波長格子を用いたカラーフィルタは、このような共鳴現象を用いてカラーフィルタを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−175430号公報
【特許文献2】特開2007−41555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来例のものにおいては、つぎのような課題を有している。
すなわち、特許文献1に記載のカラーフィルタ層は、同一の材料の材料分散特性を利用して色分離を行っており、色分離特性が不十分である。このため、画像の色再現特性に良好なものが得られない。
また、サブ波長格子カラーフィルタは、光の入射角に応じて透過スペクトルが変化すると
いう課題を有している。
図10に示すように、固体撮像素子のカラーフィルタ層902にサブ波長格子カラーフィルタを用いれば、マイクロレンズ901によって屈折された光線は、カラーフィルタ層902に様々な角度を持って入射する。
このため、光の入射光に応じて透過スペクトルが変化するサブ波長格子カラーフィルタは、色分離特性が不十分となる。その結果、画像の色再現特性に良好なものが得られない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、画像の色再現特性がよく、薄膜のカラーフィルタを有する固体撮像素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のように構成した固体撮像素子を提供するものである。
本発明の固体撮像素子は、光電変換部とマイクロレンズの間に、フィルタ層を備えた固体撮像素子であって、
前記フィルタ層は、該フィルタ層より前記光電変換部側に曲率中心を有する凸型形状を備え、該曲率中心からの角度が一定となるように1次元または2次元の周期で配列された格子を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像の色再現特性がよく、薄膜のカラーフィルタを有する固体撮像素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における固体撮像素子の構成を説明する断面図。
【図2】本発明の実施例1におけるカラーフィルタの構成を説明する図。
【図3】図3(a)は本発明の実施例1における固体撮像素子を説明する断面図であり、図3(b)はカラーフィルタを形成する格子における屈折率および消衰係数とによるシリコンの材料分散特性を示す図。
【図4】図4(a)は本発明の実施例1における固体撮像素子を説明する断面図であり、図4(b)はカラーフィルタの透過スペクトルを示す図。
【図5】本発明の実施例1におけるカラーフィルタの透過スペクトルを示す図。
【図6】図6(a)は本発明の実施例2における固体撮像素子を説明する断面図であり、図6(b)はカラーフィルタの構成を説明する図。
【図7】図7(a)は本発明の実施例2における固体撮像素子を説明する断面図であり、図7(b)はカラーフィルタの透過スペクトルを示す図。
【図8】本発明の実施例2におけるカラーフィルタの透過スペクトルを示す図。
【図9】本発明の実施例3における固体撮像素子の構成を説明する断面図。
【図10】従来例における固体撮像素子の構成を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
図1を用いて、本発明を適用した実施例1に係る固体撮像素について説明する。
本実施例の固体撮像素子100は、光電変換部とマイクロレンズの間に、フィルタ層を備える。
具体的には、図1に示されるように、マイクロレンズ110、平坦化層111、凸型形状
の絶縁膜112、層間絶縁膜113、配線層または遮光膜114、光電変換部116を含む半導体基板115の順に設けられた構造を備える。
また、上記フィルタ層を構成するカラーフィルタ101が、上記配線層よりも光の入射側に配された上記凸型形状の絶縁膜112上に形成されている。
そして、入射光120は、マイクロレンズ110によって屈折され、カラーフィルタ101を透過し、光電変換部116の表面に結像するように構成されている。
このとき、画素中心の入射光121は、カラーフィルタ101の中央を垂直に入射する。一方、画素周囲の入射光122は、カラーフィルタ101の周囲に斜めから入射する。
【0012】
つぎに、図2を用いて、本実施例に係るカラーフィルタ101の説明をする。
図2(a)はカラーフィルタ101を含む固体撮像素子の断面図、図2(b)はカラーフィルタ101を拡大した傾斜図である。
カラーフィルタ101は、該カラーフィルタより光電変換部側に曲率の中心を有する凸型形状を備え、絶縁膜102と格子103とで形成される。
また、格子103は、カラーフィルタ101の曲率中心105から一定の周期角γで二次元正方格子状に配列される。
また、格子の幅は曲率中心105から格子幅角δとなるように形成される。
【0013】
カラーフィルタの曲率半径をrとしたとき、カラーフィルタ101の格子周期Λ、格子幅wは、式(1)、式(2)で表される。

Λ=r・γ ・・・(1)
w=r・δ ・・・(2)

本実施例では、格子103を凸型形状に配列したことで、入射光122とカラーフィルタ101入射位置での面法線のなす角が、カラーフィルタが平面形状の場合に比べ、小さくなる。よって、入射光120がカラーフィルタ101に入射する角度の範囲を小さくできるため、入射光120の色分離特性がよくなり、画像の色再現特性がよくなる。
また、本発明のカラーフィルタは共鳴現象を利用しているため、カラーフィルタの膜厚を薄く作製できる。
【0014】
以下に、数値実施例を用いて説明する。
図3(a)を用いて本実施例に係る固体撮像素子の説明をする。同図に示すように、固体撮像素子の画素サイズは6.0μm、マイクロレンズ110から光電変換部116の表面までの距離は8.0μmである。
マイクロレンズ110、平坦化層111、凸型形状の絶縁膜112、層間絶縁膜113、絶縁膜102の屈折率をそれぞれn1、n2、n3、n4、n5とし、固体撮像素子の中心での膜厚をそれぞれd1、d2、d3、d4、d5とする。これらは、BPSG膜、酸化シリコンなどの絶縁膜を用いる。
このときの本実施例における各屈折率と各膜厚を表1に示す。
また、マイクロレンズ110、凸型形状の絶縁膜112、カラーフィルタ101の曲率半径r1、r2、r5を、それぞれ表2に示す。
また、格子103は膜厚100nmのシリコン(Si)で形成され、その屈折率および消衰係数は、それぞれ図3(b)に示す値を用いた。

【0015】
本実施例では、周期角γ、格子幅角δ、格子厚dをそれぞれ0.0533rad、0.0409rad、100nmとし、緑色フィルタを実現する。
このとき、カラーフィルタの曲率半径を5.62μmとしたため、カラーフィルタの格子周期Λ、格子幅wは、上記した式(1)(2)より、それぞれ300nm、230nmとなる。
尚、本実施例では緑色フィルタに関して説明するが、格子パラメータや材料を変更することで、赤色フィルタ・青色フィルタや補色フィルタなどを実現できる。
【0016】
本実施例では、図4(a)に示すように、カラーフィルタ101の曲率中心105をマイクロレンズ110の焦点位置130と一致させるように形成した。
このため、入射光線の向きとカラーフィルタ101入射位置での面法線の向きが一致し、入射光120はカラーフィルタ101を垂直に入射する。
このときの透過スペクトルを図4(b)に示す。
波長555nm(緑色)で90%以上、450nm(青色)、650nm(赤色)付近で20%以下の透過特性が得られる。
このため、緑色カラーフィルタとして色分離ができる。但し、マイクロレンズ110の焦点位置130とは、入射光がマイクロレンズ110によって屈折され、カラーフィルタ101に入射する光線の延長線の交点のことである。
【0017】
ここで、本実施例のカラーフィルタ101を、上記した従来例のように平面形状とした場合について考える。
このとき、マイクロレンズ110によって屈折された入射光は、斜めからカラーフィルタに入射する。
光線追跡の結果、例えば、画素中心から2.5μm離れたマイクロレンズ110位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に17.6度の角度で、1.73μm離れた位置
に入射する。
また、画素中心から1.5μm離れた位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に10.6度の角度で、1.04μm離れた位置に入射する。
また、画素中心から0.5μm離れた位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に3.53度の角度で、0.346μm離れた位置に入射する。
【0018】
図2(b)のカラーフィルタが、入射角が6度、12度、18度で入射した場合の透過スペクトルを図5(a)、(b)、(c)に示す。
入射角が大きくなるに従い、緑色550nm付近の透過率は低下し、青色450nm、赤色650nm付近の透過率は増加する。
光電変換部116に透過する光は、入射角が0度から18度程度の光線を含んでいるため、光電変換部116に到達した光は十分に色分離ができず、画像の色再現特性が悪化する。
【0019】
以上のように、本実施例のカラーフィルタ101では格子103が凸型形状に配列されており、カラーフィルタが平面形状の場合に比べて、カラーフィルタ101に入射する角度の範囲を小さくできる。
そのため、色分離特性がよくなり、画像の色再現特性を向上させることができ、また、膜厚を100nmとすることができ、同時にカラーフィルタの薄膜化を図ることができる。尚、本実施例では格子を2次元状に配列したが、必ずしもその必要はなく、一次元格子状に配列してもよい。
1次元格子状に配列すると、偏光の違いからカラーフィルタは異方性を示す。
このため、偏光を利用したフィルタ層として利用する場合には1次元格子状に配列してもよい。
但し、一般的な固体撮像素子では、入射光の偏光依存性がなく受光する必要があるため、本実施例では偏光依存性の小さい2次元格子状に配列した。
さらに、2次元三角格子状に配列すると、カラーフィルタの対称性が高くなり、偏光依存性が小さくなる。
【0020】
また、本実施例では、カラーフィルタ101の曲率中心105をマイクロレンズ110の焦点位置130と一致させるように形成したが、必ずしも一致させる必要はなく、曲率中心105がカラーフィルタ101より光電変換部116側にあればよい。
このとき、入射光122の向きとカラーフィルタ101入射位置での面法線のなす角が、カラーフィルタが平面形状の場合に比べ、小さくなる。
図4(b)、図5の結果からも分かるように、入射光と面法線のなす角が小さくなるほど、垂直入射と斜入射の透過スペクトルの変化が小さい。
このため、カラーフィルタに入射する入射角を小さくすることで、入射光120がカラーフィルタ101に入射する角度の範囲を小さくできるため、入射光120の色分離特性がよくなり、画像の色再現特性がよくなる。
【0021】
本実施例では、図5(a)に示す入射角6度の場合、透過スペクトル形状は、555nm(緑色)付近で90%程度、450nm(青色)、650nm(赤色)付近で20%程度の透過特性が得られ、緑色カラーフィルタとして色分離できる。
このため、入射角を6度程度までに抑えることで、色分離特性のよいカラーフィルタを提供できる。
ただし、カラーフィルタへの入射角の限界値は、カラーフィルタの設計パラメータや形状などによって変化するため、適宜設計に応じて決定する。
尚、本実施例ではカラーフィルタ101を凸型形状の絶縁膜112の上に形成したが、必ずしも凸型形状の絶縁膜の上に形成する必要はなく、平坦や凹型形状の絶縁膜の上部に、格子103の厚みを変化させ凸型形状のカラーフィルタを形成してもよい。
但し、凸型形状の絶縁膜の凸型形状の作製は、後述するエッチングやリフロー処理を行い、容易に作製できる。
このため、凸型形状の絶縁膜上に、下地の形状を引き継ぎながらカラーフィルタを作製することで、カラーフィルタの凸型形状を容易に作製できる。このため、カラーフィルタ101は凸型形状の絶縁膜の上に形成する方が望ましい。
【0022】
また、本実施例では配線層114の上方にカラーフィルタ101を形成したが、必ずしも配線層114の上方に形成する必要はなく、配線層間に形成してもよい。
配線層間にカラーフィルタを形成しても、同様に色再現特性を向上することができる。
しかしながら、カラーフィルタ101とマイクロレンズ110との間の距離が長くなり、カラーフィルタの曲率半径を小さくしなければ色分離が不十分となり、色再現特性の向上効果が小さくなる。曲率半径の小さな凸型形状を作製するのは困難であるため、カラーフィルタは配線層の上方に形成した方が望ましい。
また、本実施例では、絶縁膜102と格子103の材料にそれぞれBPSG膜、シリコンを用いたが、絶縁膜102と格子103は屈折率の異なる材料を用いればよい。
例えば、絶縁膜102の材料に、BPSG膜、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタニウム、酸化アルミニウムなどの絶縁膜を用いればよい。
また、格子103の材料にシリコン、アモルファスシリコン、ポリシリコンなどの半導体膜やアルミニウム、銅、タングステンなどの金属膜を用いればよい。このような材料を用いると、後述する成膜方法によって容易に作製できるため望ましい。
【0023】
サブ波長格子の共鳴スペクトルは、絶縁膜102と格子103の屈折率、膜厚、フィリングファクター、周期などを適切に設定することにより制御できる。カラーフィルタに求められる性能は、光利用効率を高くするために不感帯を小さくすることと、色分離するために各カラーフィルタの透過スペクトルが異なる構成とすることである。
このため、共鳴を用いたサブ波長格子カラーフィルタを用いれば、共鳴スペクトルの半値全幅を大きくする方がよい。
特に、格子と格子を覆う層の屈折率差の絶対値を1.5以上にすると共鳴スペクトルの半値全幅を大きくしやすいため、屈折率差は1.5以上であることが望ましい。
例えば、本実施例における波長650nm付近に生じる共鳴モードの場合、格子103と絶縁膜102の屈折率差が2.3程度であり、共鳴スペクトルの半値全幅が50nm程度となる。
同モードを、有効屈折率一定の条件で、屈折率差1.5とした場合、半値全幅が30nm程度となる。
尚、本実施例では、格子103の屈折率が絶縁膜102の屈折率より高いドットアレイ構成としたが、絶縁膜102と格子103は屈折率の異なる材料であればよいので、絶縁膜102の屈折率が格子103の屈折率より高いホールアレイ構成としてもよい。
【0024】
[実施例2]
図6(a)を用いて、本発明を適用した実施例2における固体撮像素について説明する。
図6(a)において、200は本実施例における固体撮像素子、201はカラーフィルタ、210は薄膜絶縁膜である。
実施例1と異なる点は、カラーフィルタ201の設計パラメータを変更した点と、凸型形状の絶縁膜112を窒化シリコンで形成してその上部にBPSG膜等の絶縁膜で薄膜絶縁膜210を形成した点である。
凸型形状の絶縁膜112は、周囲より高屈折材料で形成されるため、層内レンズとして働く。
但し、マイクロレンズ110、凸型形状の絶縁膜112は、入射光120が光電変換部116の表面に結像するように設計する。
本実施例における各屈折率と各膜厚を表3に、各曲率半径を表4に示す。
但し、薄膜絶縁膜210の屈折率、膜厚、曲率半径をそれぞれn6、d6、r6とした。また、格子103は膜厚100nmのSiで形成され、屈折率および消衰係数はそれぞれ本実施例1と同様に図3(b)に示す値を用いた。

【0025】
つぎに、図6(b)を用いて、本実施例に係るカラーフィルタ201について説明する。
カラーフィルタ201は、絶縁膜102中に格子103を二次元三角格子状に配列させた構成である。2次元三角格子状に配列することで、カラーフィルタの対称性が高くなり、偏光依存性が小さくなる。
本実施例では、周期角γ、格子幅角δ、格子厚dをそれぞれ0.0569rad、0.0231rad、100nmとして、マジェンタ補色フィルタを実現する。
また、カラーフィルタの曲率半径を5.62μmとしたため、カラーフィルタの格子周期Λ、格子幅wは、上記した式(1)(2)より、それぞれ320nm、130nmとなる。
【0026】
本実施例では、図7(a)に示すように、カラーフィルタ201の曲率中心105をマイクロレンズ110の焦点位置130と一致させた。
このため、入射光線の向きとカラーフィルタ101入射位置での面法線の向きが一致し、入射光120はカラーフィルタ101を垂直に入射する。
このとき、図7(b)に示すように、波長550nm(緑色)付近で10%以下、450nm(青色)付近で60%以上、650nm(赤色)付近で90%以上の透過特性が得られる。
このため、マジェンタ補色フィルタとして色分離ができる。
【0027】
ここで、本発明のカラーフィルタ201を上記した従来例のように平面形状とした場合
について考える。
このとき、マイクロレンズ110によって屈折された入射光は、斜めからカラーフィルタに入射する。
光線追跡の結果、例えば、画素中心から2.5μm離れたマイクロレンズ110位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に13.6度の角度で、1.91μm離れた位置に入射する。
また、画素中心から1.5μm離れた位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に8.17度の角度で、1.14μm離れた位置に入射する。
また、画素中心から0.5μm離れた位置に入射する光線は、カラーフィルタの中心軸に2.72度の角度で、0.381μm離れた位置に入射する。
【0028】
図6(b)のカラーフィルタが、入射角が5度、10度、15度で入射した場合の透過スペクトルを、図8(a)、(b)、(c)に示す。
入射角が大きくなるに従い、緑色550nm付近の透過率は増加し、赤色650nm付近に新たに透過率の谷が生じる。光電変換部116に透過する光は、入射角が0度から15度程度の光線を含んでいるため、光電変換部116に到達した光は十分に色分離ができず、画像の色再現特性が悪化する。
【0029】
以上で説明したように、本実施例のカラーフィルタ201により、色分離特性がよくなったことで、画像の色再現特性が向上する。また、膜厚が100nmであり、同時にカラーフィルタを薄膜化できる。
尚、本実施例では、凸型形状の絶縁膜112を層内レンズとして、カラーフィルタ101より光電変換部側に形成したが、必ずしもその必要ない。
カラーフィルタの上方に層内レンズを配した構成であっても、同様に色再現特性を向上することができる。
しかしながら、入射光は層内レンズによりカラーフィルタへの入射角がさらに大きくなって入射するため、カラーフィルタの曲率半径を小さくしなければ色分離が十分できず、色再現特性の向上効果が小さくなる。
曲率半径の小さなカラーフィルタの作製は困難であるため、層内レンズはカラーフィルタより光電変換部側に形成した方が望ましい。
また、層内レンズを用いることで、マイクロレンズの屈折力を小さくできる。このため、カラーフィルタへの入射角を低下することができるため望ましい。
【0030】
また、本実施例では、凸型形状の絶縁膜112を層内レンズとして形成したが、必ずしも、凸型形状の絶縁膜を層内レンズとして形成する必要はない。
但し、後述するように、凸型形状の作製プロセスは、膜の作製プロセスより工程数が多い。
よって、凸型形状を作製するプロセスを削減するため、カラーフィルタの下地層である凸型形状の絶縁膜を層内レンズとして集光機能をもたせることで、新たに層内レンズを作製するプロセスを削減することができる。
このため、凸型形状の絶縁膜112を層内レンズとして形成した方が望ましい。
【0031】
[実施例3]
図9は、本発明の固体撮像素子の製造プロセスを説明する図である。
【0032】
熱酸化によりシリコン基板115の表面にシリコン酸化膜を形成する(不図示)。
続いて、シリコン基板115中に光電変換部116を形成するために、フォトレジストにより所定位置にレジストマスクを形成し、不純物のイオン打ち込みを行う。その後、レジストマスクをアッシング等により除去する(図9(a))。
さらに、光電変換部116にて発生した電荷を転送するためのゲート電極を形成するため
に、ポリシリコン膜を形成する。
その後、フォトリソ工程を用いてポリシリコンを所定パターンにエッチングしてゲート電極を形成する(不図示)。
【0033】
その後、シリコン基板115、およびゲート電極上に例えばSiO2系の層間絶縁膜を形成する。
さらに、電気的な接続のため、コンタクトホールなどの接続孔を層間絶縁膜に形成して、他の金属配線層に電気的に接続させる。
同様に、第一配線層、第二配線層および第三配線層をそれぞれ形成し、これら配線層114を層間絶縁膜113で覆う(図9(b))。
続いて、凸型形状の絶縁膜112を形成するための絶縁膜131を成膜し、フォトリソ工程によりレジスト膜132を図9(c)に示すように形成する。その後、レジスト膜132をマスクとして等方性エッチングし、リフロー処理を行い凸型形状の絶縁膜112を形成する(図9(d))。
さらに、必要に応じて絶縁膜を成膜する(不図示)。
続いて、CVD法等によりSi膜などの格子103の材料を成膜する。フォトリソ工程によって、レジスト膜を形成し、レジスト膜をマスクとしてエッチングする。
その後、絶縁膜を成膜後、CMP法等により平坦化を行う(図9(e))。
さらに、公知のレジストリフロー法にてマイクロレンズ110を形成する(図9(f))。
【符号の説明】
【0034】
100:固体撮像素子
101:カラーフィルタ
102:絶縁膜
103:格子
105:曲率中心
110:マイクロレンズ
111:平坦化層
112:凸型形状の絶縁膜
113:層間絶縁膜
114:配線層または遮光膜
115:半導体基板
116:光電変換部
120、121、122:入射光
130:マイクロレンズの焦点位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部とマイクロレンズの間に、フィルタ層を備えた固体撮像素子であって、
前記フィルタ層は、該フィルタ層より前記光電変換部側に曲率中心を有する凸型形状を備え、該曲率中心からの角度が一定となるように1次元または2次元の周期で配列された格子を有していることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記曲率中心と前記マイクロレンズの焦点位置とが一致していることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記マイクロレンズと前記光電変換部の間に、入射光に対して凸型形状の絶縁膜を有し、該絶縁膜上に前記フィルタ層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記フィルタ層より前記光電変換部側に、層内レンズが形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記層内レンズが、前記絶縁膜によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記格子は、2次元三角格子状に配列されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記固体撮像素子は配線層を有し、該配線層よりも光の入射側に前記フィルタ層が配されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記フィルタ層は、前記格子と該格子を覆う層で形成され、
前記格子と該格子を覆う層の屈折率差の絶対値が、1.5以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−245466(P2010−245466A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95476(P2009−95476)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】