説明

固体撮像装置およびその製造方法並びに電子機器

【課題】製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】カメラモジュール1は、センサホルダ5における透明基板4の支持部に、硬化型接着剤10が塗布されており、硬化型接着剤10は、支持部11における透明基板4の搭載部に塗布された硬化型接着剤が硬化した硬化領域Cと、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤10が硬化していない非硬化領域Sとを有する。センサホルダ5は、レンズバレル8と焦点調整機構9を備える光学構造体6を、保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程の増加を伴うことなく、製造時および使用時に発生したゴミを吸着するゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置およびその製造方法並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に使用される撮像用のカメラモジュール(固体撮像装置)は、固体撮像素子(CCD(charge-coupled device)またはCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)センサーIC(integrated circuits))、赤外線フィルタ,および端子を有する配線基板と、レンズと、レンズ保持具とが一体となったモジュールである。昨今では、カメラモジュールの小型化に対応するため、固体撮像素子の製造プロセスの微細化が進んでいる。カメラモジュールの小型化が進むと、光路上に存在する微小なゴミ(例えば、25μm以上)によって、画像不良が起こる。画像不良は、そのゴミの影が、黒色の点やシミとして撮像画面に写し出されるために起こる。
【0003】
このような画像不良の原因となるゴミは、例えば、カメラモジュールの構成部品の入荷時に元々付着していたもの,製造工程中の発塵によって生じたものなどである。ここで、入荷時に付着していたゴミは、微小な樹脂片であることが多い。一方、製造工程中の発塵によって生じたゴミは、金属であることが多い。この金属は、カメラモジュールの製造装置が磨耗して生じたものである。
【0004】
このようにして生じたゴミが、光路上に付着していれば、カメラモジュールの製造工程に含まれる出荷検査時に、そのゴミを除去することができる。しかし、光路以外の部分に一時的に付着したゴミは、出荷検査時には検出できないため、良品として出荷されてしまう。このため、出荷後のカメラモジュールの搬送などの過程で、振動や衝撃が加えられると、光路以外の部分に付着したゴミが、光路上に移動して付着してしまう。その結果、出荷先(ユーザ元;例えば、カメラ付携帯電話の販売者)で、画像不良が生じてしまう。
従来は、このような画像不良の対策の1つとして、カメラモジュールの構成部品の納品時に、その部品に既に付着しているゴミのスクリーニングが行われる。そして、ゴミの付着程度によっては、エアブローを用いたゴミの吹き飛ばし、超音波を用いた水洗浄,またはHFE(Hydrofluoroether;ハイドロフルオロエーテル)洗浄が行われる。
一方、製造工程中の発塵によって、カメラモジュールの構成部品に付着するゴミを防ぐために、製造ラインのクリーン度を高める試みがなされている。例えば、外界と遮断されたクリーンルーム内での製造が行われている。
【0005】
しかし、この場合、設備投資,維持管理,および製造工程メンテナンス(装置クリーニングや磨耗する部品の交換)などが必要になってしまう。すなわち、クリーンルームの設置,空気循環の為の設備(エアカーテン,空気循環,ろ過設備,洗浄設備)などへの投資、および、それらの設備の維持管理に、膨大な費用がかかる。しかも、前述のように、クリーンルーム内でのカメラモジュールの組立て時に、ゴミの混入を防いだとしても、昨今ではカメラモジュールの使用時にも、その内部での発塵の可能性がある。このため、ゴミを除去するには、製造工程のクリーン度を確保するだけでは、充分ではなくなった。
【0006】
そこで、特許文献1には、このようなゴミ対策として、グリースにゴミを吸着させる方法が提案されている。図8は、特許文献1に記載の固体撮像装置100の一部を示す断面図である。図8のように、固体撮像装置100では、光学構造体内の壁面などにゴミDを吸着するグリース101が塗布されることにより、製造工程時および使用時のゴミDによる画像不良を防止している。固体撮像装置100では、グリース101が光路を避けて塗布されているので、光路上へのゴミDの付着による画像不良を軽減することが可能となる。
【特許文献1】特開2008−85511号公報(2008年3月19日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、固体撮像装置の製造工程中に、ゴミ付着による画像不良を防止するために、グリースを塗布する工程が別途必要になる。このため、製造工程が必然的に増加するという問題がある。
【0008】
このような製造工程の増加は、生産能力、製造原価および品質管理等のあらゆる面におよび、生産効率の低下を招く。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置およびその製造方法、並びに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固体撮像装置は、上記の課題を解決するために、被写体像を形成する光学構造体、被写体像を電気信号に変換する固体撮像素子、光学構造体を保持するとともに固体撮像素子を内部に収容するセンサホルダ、および、光学構造体と固体撮像素子との間に配置され、上記センサホルダによって支持された透明基板を備え、
上記透明基板によって光学構造体と固体撮像素子とが配置される空間が仕切られている固体撮像装置において、
センサホルダにおける透明基板の支持部に、硬化型接着剤が塗布されており、
上記硬化型接着剤は、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤が硬化した硬化領域と、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤が硬化していない非硬化領域とを有することを特徴としている。
【0011】
上記の発明によれば、センサホルダにおける透明基板の支持部に、硬化型接着剤が塗布されている。また、この硬化型接着剤は、硬化型接着剤が硬化した硬化領域と、硬化していない非硬化領域とを有している。
【0012】
硬化領域は、支持部上の透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤が硬化した領域である。硬化領域では、硬化型接着剤が硬化することによって、支持部上に、透明基板が接着される。つまり、硬化領域の硬化型接着剤は、透明基板の接着部として機能する。
【0013】
一方、非硬化領域は、支持部上の透明基板の搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤が硬化していない領域である。このため、非硬化領域の硬化型接着剤は、粘性を有する。これにより、製造時または使用時にゴミが発生したとしても、発生したゴミを非硬化領域に吸着させることができる。つまり、非硬化領域の硬化型接着剤は、ゴミ吸着部として機能する。
【0014】
このように、上記の発明によれば、硬化型接着剤が、透明基板の接着剤としてだけでなく、ゴミ吸着部としても利用される。このため、透明基板の接着部とゴミ吸着部とを同時に形成できる。つまり、ゴミ吸着部を形成する工程を別途設ける必要がない。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置を提供できる。
【0015】
本発明における固体撮像装置では、上記硬化型接着剤は、光硬化型接着剤であることが好ましい。
【0016】
上記の発明によれば、硬化型接着剤が光硬化型接着剤であるため、光照射によって、光硬化型接着剤を硬化させることができる。従って、硬化作業を簡便に行うことができる。
【0017】
本発明における固体撮像装置では、上記光硬化型接着剤は、紫外線硬化型接着剤であることが好ましい。
【0018】
上記の発明によれば、光硬化型接着剤が、紫外線硬化型接着剤であるため、硬化時間を短縮することができる。従って、硬化領域と非硬化領域とを短時間で形成することができる。
【0019】
本発明における固体撮像装置では、上記光学構造体が、撮像用のレンズと、レンズを保持するレンズバレルと、レンズバレルを光軸方向に移動させることによりレンズの焦点を調整する焦点調整機構とを備えることが好ましい。
【0020】
上記の発明によれば、光学構造体が、レンズの焦点を調整する焦点調整機構を備えている。ここで、焦点調整機構とは、例えば、オートフォーカス、ズームまたはマクロ等の光学的機構である。このような焦点調整機構が動作すると、ゴミが発生しやすい。
【0021】
上記の発明によれば、焦点調整機構の動作によってゴミが発生したとしても、発生したゴミを非硬化領域に吸着させることができる。従って、ゴミによる画像不良を防止することができる。
【0022】
本発明における固体撮像装置では、上記非硬化領域が、レンズバレルと焦点調整機構との接触部の下部に形成されていることが好ましい。
【0023】
レンズバレルと焦点調整機構との接触部は、焦点調整機構の動作時に、特にゴミが発生しやすい。上記の発明によれば、このようにゴミが発生しやすい場所の下部(真下)に、非硬化領域が形成されている。これにより、レンズバレルと焦点調整機構との接触部から落下したゴミを、落下直後に吸着することができる。従って、非硬化領域に効果的にゴミを吸着することができる。
【0024】
本発明の固体撮像装置の製造方法は、上記の課題を解決するために、被写体像を形成する光学構造体、被写体像を電気信号に変換する固体撮像素子、光学構造体を保持するとともに固体撮像素子を内部に収容するセンサホルダ、および、光学構造体と固体撮像素子との間に配置され、上記センサホルダによって支持された透明基板を備え、
上記透明基板によって光学構造体と固体撮像素子とが配置される空間が仕切られている固体撮像装置の製造方法において、
センサホルダにおける透明基板の支持部に、硬化型接着剤を塗布する塗布工程と、
上記硬化型接着剤を硬化する硬化工程とを有し、
上記硬化工程は、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤を硬化する一方、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤を硬化しないことを特徴としている。
【0025】
上記の発明によれば、硬化工程において、硬化型接着剤を選択的に硬化することによって、硬化型接着剤が硬化された硬化領域と、硬化型接着剤が硬化されていない非硬化領域とが形成される。
【0026】
すなわち、硬化工程では、センサホルダにおける透明基板の支持部上に塗布された硬化型接着剤のうち、支持部上の透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤が選択的に硬化される。これにより、硬化型接着剤の硬化領域が形成され、支持部上に透明基板が接着される。つまり、透明基板の接着部となる硬化領域が形成される。
【0027】
一方、硬化工程では、支持部上の透明基板の搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤は硬化されない。これにより、硬化型接着剤の非硬化領域が形成される。このため、製造時または使用時にゴミが発生したとしても、発生したゴミを非硬化領域に吸着させることができる。つまり、ゴミ吸着部となる非硬化領域が形成される。
【0028】
このように、上記の発明によれば、硬化工程によって、透明基板の接着部(硬化領域)とゴミ吸着部(非硬化領域)とが同時に形成される。このため、ゴミ吸着部を形成する工程を別途設ける必要がない。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置を製造することができる。
【0029】
本発明の電子機器は、上記の課題を解決するために、前記いずれかの固体撮像装置を備えている。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の固体撮像装置は、硬化型接着剤が、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤が硬化した硬化領域と、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤が硬化していない非硬化領域とを有する構成である。
【0031】
また、本発明の固体撮像装置の製造方法は、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤を硬化する一方、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤を硬化しない硬化工程を有する方法である。
【0032】
それゆえ、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できる固体撮像装置およびその製造方法、並びに電子機器を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の一形態について図1〜図8に基づいて説明する。
【0034】
(1)本実施の形態の固体撮像装置
本実施形態の固体撮像装置は、硬化型接着剤の硬化領域で透明基板を接着すると共に、硬化型接着剤の非硬化領域でゴミを吸着させることによって、透明基板の接着とゴミの吸着とを、同一の硬化型接着剤で実現することを特徴とする。
【0035】
本実施の形態の固体撮像装置は、カメラ付き携帯電話,ディジタルスチルカメラ,セキュリティカメラなどの撮影可能な電子機器に好適である。本実施形態では、カメラ付き携帯電話機に適用されるオートフォーカス機構付きカメラモジュール(固体撮像装置)について説明する。
【0036】
図2は、本実施形態のカメラモジュールの断面図である。図2のように、カメラモジュール1は、配線基板2、固体撮像素子3、透明基板4、センサホルダ5、および光学構造体6を備え、これらが一体となった構成である。具体的には、配線基板2上に、固体撮像素子3および透明基板4を保持したセンサホルダ5が実装されており、センサホルダ5上に光学構造体6が積層されている。
【0037】
配線基板2は、固体撮像素子3の電気信号を取り出すものである。配線基板2は、固体撮像素子3と電気的に接続するために、図示しないパターニングされた配線を有している。配線基板2の中央部には、固体撮像素子3が搭載されている。配線基板2と固体撮像素子3とは、ボンディングワイヤによって、電気的に接続されており、互いに電気信号の送受が可能となっている。配線基板2は、例えば、プリント基板,またはセラミック基板などである。
【0038】
固体撮像素子3は、光学構造体6が形成する被写体像を電気信号に変換するものである。つまり、光学構造体6から入射された入射光を光電変換するセンサーデバイスである。固体撮像素子3の表面(上面)には、複数の画素がマトリクス状に配置された受光面(図示せず)が形成されている。そして、受光面に結像された光学像を電気信号に変換して、アナログの画像信号として出力する。固体撮像素子3は、例えば、CCD(charge-coupled device)イメージセンサ、CMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサ、VMISイメージセンサ(Threshold Voltage Modulation Image Sensor)である。
【0039】
なお、配線基板2上には、図示しない、光軸を調整するためのDSP(digital signal processor),プログラムに従って各種演算処理を行うCPU,そのプログラムを格納するROM,各処理過程のデータ等を格納するRAMなどの電子部品も備えている。これらによって、カメラモジュール1全体が制御される。
【0040】
光学構造体6は、被写体像を形成する撮影光学系である。つまり、光学構造体6は、被写体からの光を、固体撮像素子3に結像するための光学系である。本実施形態では、光学構造体6は、撮像用のレンズ7と、中央にレンズ7を保持するレンズバレル(鏡筒)8と、レンズバレル8を光軸方向に移動させることによりレンズ7の焦点を調整するオートフォーカスユニット(焦点調整機構)とから構成される。レンズ7の光軸は、レンズバレル8の中心軸と一致している。
【0041】
なお、本実施形態では、レンズ7は透光性を有するガラスまたは樹脂から構成され、レンズバレル8は、樹脂または金属から構成される。また、オートフォーカスユニット9は、図2のように、レンズ7がレンズバレル8に格納された時に、レンズ7およびレンズバレル8の移動範囲を制限する。
【0042】
センサホルダ5は、固体撮像素子3を内部に収容すると共に、光学構造体6を保持する。センサホルダ5は、例えば、樹脂製の筒状部材であり、下部に固体撮像素子3を収容する空間Aと、上部に光学構造体6を保持する空間Bを有する。センサホルダ5は、内側面から光軸に対して垂直に延設された支持部11を有している。支持部11は、透明基板4を支持する。
【0043】
透明基板4は、固体撮像素子3と光学構造体6との間に配置され、センサホルダ5の支持部11に接着されている。透明基板4は、少なくとも固体撮像素子3の受光面を覆うようになっている。また、透明基板4によって、光学構造体6と固体撮像素子3とが分離される。つまり、カメラモジュール1内には、配線基板2,センサホルダ5,および透明基板4によって形成される空間Aと、光学構造体6,センサホルダ5,および透明基板4によって形成される空間Bとが、透明基板4によって仕切られる。これにより、固体撮像素子3は、空間A内に封止される。透明基板4は、例えば、透光性を有するガラスや樹脂から構成されている。なお、透明基板4上(レンズ7との対向面)には、赤外線カットフィルタ等の光学フィルタが形成されていてもよい。
【0044】
このようなカメラモジュール1による撮像は、レンズ7および透明基板4を透過した入射光を、固体撮像素子3が取り込むことによって行われる。
【0045】
本実施形態のカメラモジュール1は、オートフォーカスユニット9を備えたオートフォーカス機能付きのカメラモジュールである。さらに、カメラモジュール1は、マクロ機能も備えており、図示しないレバーの操作によって、レンズバレル8が光軸方向に移動(昇降)するようになっている。これにより、通常撮影モードと、接写モード(マクロモード)との切替えが可能となる。
【0046】
オートフォーカス機能が実行されると、自動的に適切な焦点距離となるように、レンズバレル8が移動する。なお、焦点距離とは、固体撮像素子3の受光面から、レンズ7の中心までの距離を示す。
【0047】
一方、マクロ機能が実行されると、予め規定された通常撮影モード用の焦点距離、または、接写モード用の焦点距離となるようにレンズバレル8が移動する。具体的には、上述の図2は、通常撮影モードのカメラモジュール1を示している。図3は、接写モード時のカメラモジュール1を示す断面図である。図2の通常撮影モードを、図3の接写モード(マクロモード)に切替えると、図2のレンズバレル8が上昇し、図3のレンズバレル8の位置に遷移する。これにより、接写モードの焦点距離に切り替わる。このように、図2〜図3の状態が繰り返されることによって、各モードの焦点距離に切替えられる。
【0048】
ここで、モードの切替え時、例えば、図2〜図3の状態への移行時には、図3のように、レンズバレル8とオートフォーカスユニット9との摩擦部分Fが生じる。このため、カメラモジュール1の使用とともに、摩擦部分Fから発塵しゴミDが発生してしまう。オートフォーカス機能の実行時にも、同様に、摩擦部分FからゴミDが発生する。
【0049】
しかも、カメラモジュール1では、摩擦部分Fから生じるゴミDに加えて、元々カメラモジュール1内に付着したゴミDもある。すなわち、製造工程中に、カメラモジュール1内に混入し、出荷検査時に検出されなかったゴミDもある。このため、カメラモジュール1に振動や衝撃が加わると、そのゴミDが、カメラモジュール1内を移動してしまう。
【0050】
このように、カメラモジュール1には、使用中に摩擦部分Fから生じるゴミD(使用時のゴミD)と、製造工程中に混入したゴミD(製造時のゴミD)とが生じる可能性がある。このようなゴミDが光路中に付着すると、付着したゴミDの影が、黒色の点やシミとして撮像画面に写し出されてしまう。つまり、光路中に付着したゴミDは、画像不良の原因となる。
【0051】
そこで、本実施形態のカメラモジュール1では、このようなゴミDを、硬化型接着剤に付着させるようになっている。図4は、図2のカメラモジュール1のセンサホルダ5の周辺部の断面図である。図5は、図4のセンサホルダ5の支持部11周辺を拡大した断面図である。
【0052】
図4のように、センサホルダ5の支持部11には、硬化型接着剤10が塗布されている。この硬化型接着剤10により、支持部11上に、透明基板4が接着される。
【0053】
図5のように、硬化型接着剤10は、硬化型接着剤10が硬化した硬化領域Cと、硬化していない非硬化領域Sとを有している。硬化領域Cは、支持部11上の透明基板4の搭載部に塗布された硬化型接着剤10が硬化した領域である。一方、非硬化領域Sは、搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤10が硬化していない領域である。つまり、カメラモジュール1では、透明基板4との接触部の硬化型接着剤10が硬化されている一方、透明基板4との非接触部の硬化型接着剤10は硬化されていない。
【0054】
ここで、硬化型接着剤10は、液状または半固形状の物質が特定の条件下で硬化することによって、接着剤となるものである。例えば、硬化型接着剤10は、光照射により硬化する光硬化型接着剤、および、熱により硬化する熱硬化型接着剤の他、湿度または触媒の作用によって硬化する接着剤などが挙げられる。光硬化型接着剤は、例えば、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型接着剤、可視光照射によって硬化する可視光硬化型接着剤、赤外線照射によって硬化する赤外線硬化型接着剤、電子線照射によって硬化する電子線硬化型接着剤などが挙げられる。硬化型接着剤10は、光硬化型接着剤であることが好ましく、紫外線硬化型接着剤であることがより好ましい。
【0055】
後述のように、硬化型接着剤10が光硬化型接着剤であると、光照射によって、光硬化型接着剤を硬化させることができる。従って、硬化作業を簡便に行うことができる。一方、硬化型接着剤10が、紫外線硬化型接着剤であると、硬化時間を短縮することができる。従って、硬化領域と非硬化領域とを短時間で形成することができる。
【0056】
硬化領域Cの硬化型接着剤10は硬化していないため、支持部11上に、透明基板4が接着される。つまり、硬化領域Cの硬化型接着剤10は、透明基板4の接着部として機能する。
【0057】
一方、非硬化領域Sの硬化型接着剤10は硬化していないため、粘性を有する。このため、非硬化領域Sに、ゴミDを付着させることが可能となる。具体的には、図6は、非硬化領域SによりゴミDを吸着したカメラモジュール1の断面図である。上述のように、オートフォーカス機能またはマクロ機能を実行すると、レンズバレル8とオートフォーカスユニット9とが接触する。このため、摩擦部分FにゴミDが発生する。しかし、非硬化領域Sの硬化型接着剤10は粘性を有している。これにより、ゴミDが発生したとしても、発生したゴミDを非硬化領域Sに吸着させることができる。このように、非硬化領域Sの硬化型接着剤10は、ゴミ吸着部として機能する。
【0058】
しかも、本実施形態のカメラモジュール1では、非硬化領域Sが、特にゴミDが発生しやすいレンズバレル8とオートフォーカスユニット9との接触部の下部(真下)に、形成されている。これにより、レンズバレル8とオートフォーカスユニット9との接触部から落下したゴミDを、落下直後に吸着することができる。従って、非硬化領域Sに効果的にゴミを吸着することができる。
【0059】
このように、カメラモジュール1では、硬化型接着剤10が、透明基板4の接着剤として利用されるだけでなく(硬化領域C)、ゴミ吸着部としても利用される(非硬化領域S)。このため、後述のように、透明基板4の接着部とゴミ吸着部とを同時に形成できる。つまり、ゴミ吸着部を形成する工程を別途設ける必要がない。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できるカメラモジュール1を提供できる。
【0060】
なお、特許文献1では、グリースをゴミ吸着部として利用していたため、透明基板を接着する工程に加えて、グリースを塗布する工程が別途必要であった。また、グリースの性質上、温度変化により構造粘性が変化する。そのため、温度上昇に伴いグリース垂れを起こし、光路上に離散することで画像不良の原因となることがある。この対策としてグリースの流入を防ぐための堰を形成する等の提案されているが、依然としてグリース垂れの可能性は解消されていない。
【0061】
一方、本実施形態のカメラモジュール1では、硬化型接着剤10は、グリースに比べると、垂れを起こす可能性が極めて低い。このため、光路上に硬化型接着剤10が離散することによる画像不良の発生を抑制できる効果を奏する。なお、非硬化領域Sの硬化型接着剤の粘度調整は、硬化型接着剤10に硬化条件、および、成分を変更することにより調整できる。
【0062】
なお、本実施形態では、オートフォーカスおよびマクロ機能を備えたカメラモジュール1について説明した。しかし、本発明は、オートフォーカス機能等の焦点調整機能を備えていないカメラモジュールにも適用できる。この場合も、製造時または使用時のゴミDを非硬化領域Sに吸着させ、画像不良を防止できる。
【0063】
(2)本実施の形態固体撮像装置の製造方法
次に、本実施形態のカメラモジュール1の製造方法の一例について説明する。
【0064】
本実施の形態の固体撮像装置の製造方法は、硬化型接着剤を選択的に硬化させることより、製造工程の増加を伴うことなく、透明基板の接着工程おいて、透明基板の固定およびゴミ吸着部の生成を、同時に実現することを特徴とする。
【0065】
図1は、本実施の形態のカメラモジュール1の概要を示す断面図である。図1のように、カメラモジュール1は、例えば、別々に製造された、固体撮像素子3を有する配線基板2と、光学構造体6および透明基板4を保持したセンサホルダ5とを組み合わせることにより製造することができる。
【0066】
前述のように、カメラモジュール1の特徴は、硬化型接着剤10の硬化領域Cを透明基板4の接着部とする一方、非硬化領域Sをゴミ吸着部とすることである。硬化型接着剤10により透明基板4の固定する硬化領域Cおよび非硬化領域Sの生成以外の製造については、公知の方法(例えば、特開2002−062462号公報)によって製造できるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
以下では主に、硬化型接着剤10により透明基板4を固定する硬化領域Cおよび非硬化領域Sの形成方法について説明する。硬化領域Cおよび非硬化領域Sの形成するには、センサホルダ5における透明基板4の支持部11に、硬化型接着剤10を塗布する塗布工程と、硬化型接着剤10を硬化する硬化工程とを行う。
【0068】
具体的には、まず、センサホルダ5の支持部11に硬化型接着剤10を塗布する(塗布工程)。硬化型接着剤10の塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えばスプレー塗布、ティッピング塗布またはフローコート塗布等で行うことができる。
【0069】
塗布位置は、透明基板4の搭載部およびその周辺部を含めば特に限定されるものではない。ただし、透明基板4の周辺部を非硬化領域S(ゴミ粘着部)とするため、硬化型接着剤10は、透明基板4より大径に塗布する必要がある。
【0070】
次に、支持部11に塗布した硬化型接着剤10を硬化する(硬化工程)。図7は、本実施の形態のカメラモジュール1の製造方法における硬化工程を示す断面図である。図7のように、支持部11に硬化型接着剤10の塗布した後、支持部11に透明基板4をセットする。そして、透明基板4と接する硬化型接着剤10(図7の破線内の領域)を選択的に硬化する。つまり、透明基板4の接着部のみに、硬化型接着剤10が硬化する条件を与える。
【0071】
硬化型接着剤10の硬化条件は、硬化型接着剤10の種類によって異なる。例えば、硬化型接着剤10として紫外線硬化型接着剤を用いた場合、硬化させる領域のみに紫外線が照射されるように、他の領域をマスクする。これにより、紫外線が照射された透明基板4と接する硬化型接着剤10のみを硬化させることができ、硬化領域Cが形成される。一方、紫外線が照射されていない透明基板4の周辺部の硬化型接着剤10は、硬化されず、非硬化領域Sが形成される。従って、硬化工程では、硬化領域Cと非硬化領域Sとを同時に形成することができる。なお、レーザなどのように指向性の高い状態で、硬化させる領域のみに紫外線を照射する場合には、マスクは不要である。
【0072】
このように、硬化工程では、透明基板4の接着部となる硬化領域Cと、ゴミ吸着部となる非硬化領域Sとが同時に形成される。このため、ゴミ吸着部を形成する工程を別途設ける必要がない。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成できるカメラモジュール1を製造することができる。それゆえ、ゴミ付着による画像不良を防止する有用な機構を備えたカメラモジュール1を容易に製造することができる。
【0073】
また、硬化型接着剤10として光硬化型接着剤を用いると、光照射により硬化型接着剤10を硬化することができる。このため、硬化工程を簡便に行うことができる。また、硬化型接着剤10として紫外線硬化型接着剤を用いると、硬化工程を簡便に行うことができると共に、硬化時間を短縮することができる。従って、硬化工程を短時間で行うことができる。
【0074】
また、塗布工程では、非硬化領域Sが、レンズバレル8とオートフォーカスユニット9との接触部の下部(真下)に形成されるように、硬化型接着剤10を塗布することが好ましい。これにより、特にゴミの発生しやす接触部から落下したゴミを、落下直後に吸着することができる。従って、非硬化領域Sに効果的にゴミを吸着することができる。なお、この接触部の下部に非硬化領域Sを形成しなくても、カメラモジュール1の使用時に発生したゴミ、または、使用中に移動したゴミを非硬化領域Sに吸着することができる。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のカメラモジュールは、透明基板の接着部となる硬化領域と、ゴミ吸着部となる非硬化領域とを有している。各領域は、透明基板をレンズホルダに接着する際に、同時に形成することができる。従って、製造工程の増加を伴うことなく、ゴミ吸着部を形成することができる。それゆえ、品質向上および歩留まり向上により原価低減を推進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のカメラモジュールの断面図である。
【図2】本発明のカメラモジュールの通常撮影モード時を示す断面図である。
【図3】本発明のカメラモジュールの接写モード時を示す断面図である。
【図4】図2のカメラモジュールにおけるセンサホルダの周辺部を示す断面図である。
【図5】図4のセンサホルダの支持部周辺を拡大した断面図である。
【図6】本発明のカメラモジュールにおいて非硬化領域によるゴミの吸着状態を示す断面図である。
【図7】本発明のカメラモジュールの製造方法における硬化工程を示す断面図である。
【図8】特許文献1に記載の固体撮像装置の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 カメラモジュール(固体撮像装置)
2 配線基板
3 固体撮像素子
4 透明基板
5 センサホルダ
6 光学構造体
7 レンズ
8 レンズバレル
9 オートフォーカスユニット(焦点調整機構)
10 硬化型接着剤
11 支持部
A 空間
B 空間
C 硬化領域
D ゴミ
F 摩擦部分(接触部)
L 光路
S 非硬化領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を形成する光学構造体、被写体像を電気信号に変換する固体撮像素子、光学構造体を保持するとともに固体撮像素子を内部に収容するセンサホルダ、および、光学構造体と固体撮像素子との間に配置され、上記センサホルダによって支持された透明基板を備え、
上記透明基板によって光学構造体と固体撮像素子とが配置される空間が仕切られている固体撮像装置において、
センサホルダにおける透明基板の支持部に、硬化型接着剤が塗布されており、
上記硬化型接着剤が、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤が硬化した硬化領域と、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤が硬化していない非硬化領域とを有することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
上記硬化型接着剤は、光硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
上記光硬化型接着剤は、紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
上記光学構造体が、撮像用のレンズと、レンズを保持するレンズバレルと、レンズバレルを光軸方向に移動させることによりレンズの焦点を調整する焦点調整機構とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
上記非硬化領域が、レンズバレルと焦点調整機構との接触部の下部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
被写体像を形成する光学構造体、被写体像を電気信号に変換する固体撮像素子、光学構造体を保持するとともに固体撮像素子を内部に収容するセンサホルダ、および、光学構造体と固体撮像素子との間に配置され、上記センサホルダによって支持された透明基板を備え、
上記透明基板によって光学構造体と固体撮像素子とが配置される空間が仕切られている固体撮像装置の製造方法において、
センサホルダにおける透明基板の支持部に、硬化型接着剤を塗布する塗布工程と、
上記硬化型接着剤を硬化する硬化工程とを有し、
上記硬化工程は、上記支持部における透明基板の搭載部に塗布された硬化型接着剤を硬化する一方、上記搭載部の周辺部に塗布された硬化型接着剤を硬化しないことを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体撮像装置を備えた電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−41213(P2010−41213A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199839(P2008−199839)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】