説明

固体撮像装置の駆動方法

【課題】信号出力の飽和ばらつきを低減する固体撮像装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】垂直転送ゲートへM相(Mは3以上の自然数)のミドルレベルとローレベルの2値の垂直転送パルスを印加することにより、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において、水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数をN(Nは1以上の自然数)、M相の垂直転送パルスのうち、同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数をI(Iは1以上の自然数)としたとき、受光素子から読み出した信号電荷や垂直CCDが発生する不要電荷を、全て水平転送部に転送し、信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、受光素子に蓄積された信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、M相の垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上で駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置の駆動方法に関し、特に、マトリクス状に配列された複数の光電変換部に蓄積された信号電荷を読み出して、二次元の画像信号を得るように構成されたCCD固体撮像装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像機器が一般に普及している。これらの撮像機器には、2次元状に複数個配列された受光素子の出力信号を、複数の垂直CCD及び水平CCDを用いて順に出力する固体撮像素子を用いたものがある。
例えば、図11に示すように、固体撮像装置は、画素部97を有し、当該画素部97には、マトリクス状に配列された複数のホトダイオードと、当該ホトダイオードに蓄積された信号電荷を読み出し垂直方向に転送する垂直CCDゲートを有する垂直CCD92と、を含み構成されている。また、固体撮像装置には、垂直CCDから信号電荷を受け水平方向に転送する水平CCD93と、水平CCD93からの信号電荷を受け出力信号に変換するアンプ94と、出力信号の信号処理を行う信号処理部95と、画素部97の垂直CCDと水平CCD93に垂直転送パルス及び水平転送パルスを供給する駆動制御部96とから構成される。例えば、垂直CCDゲートは、1つのホトダイオード当たり2本の8本周期で構成される。
【0003】
図12は、従来の固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図を示した図であり、モニタモードにおける転送パルスタイミングを示す。
図12に示すように、水平転送パルスφH1、φH2の停止期間に垂直転送パルスφV1〜8によって、信号電荷が垂直CCDで垂直転送され、垂直転送が終了した後、水平転送パルスφH1、φH2によって、水平CCD93にある信号電荷が水平CCD93を水平転送され出力信号となる。図中の破線で囲んだ期間Hではホトダイオードから垂直CCDへ信号電荷を読み出している。
【0004】
ホトダイオードから垂直CCDへの読み出しの詳細タイミングチャートを図13に示している。
図13に示すように、垂直CCDはゲートにミドル(M)レベルの電圧を印加するとポテンシャルが低くなり信号電荷を蓄積でき、ロー(L)レベルではポテンシャルが高いピンニング状態になり信号電荷は蓄積できない。
【0005】
(i) まず、t=t0の時点はミドル(M)レベルの電圧を供給しているφV1〜φV3、φV5〜φV7の垂直CCDゲートV1〜V3、V5〜V7の垂直CCDがポテンシャルが低く、信号電荷をそれぞれ3つのゲートで蓄積できる状態にある。
(ii) t=t0〜t1までの期間は、2、3ゲートで蓄積できる状態で垂直方向に転送を行っている。
【0006】
(iii) t=t1時点で、φV5がハイ(H)レベルとなりミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなりホトダイオードの信号電荷が垂直CCDに読み出されV5、V6に信号電荷を蓄積できる。
(iv) 同様にt=t2時点で、φV3がハイ(H)レベルとなりミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなり、ホトダイオードの信号電荷が垂直CCDに読み出されV3、V4に信号電荷を蓄積できる。
【0007】
(v) さらに、t=t3時点で、φV1がハイ(H)レベルとなりミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなり、ホトダイオードの信号電荷が垂直CCDに読み出されV1、V2に信号電荷を蓄積できるが、t=t1で読み出された信号電荷が垂直転送されV1、V2ゲートに蓄積している状態でt=t3で読み出されるため、V5とV1ゲートで読み出した信号電荷が垂直CCDで信号加算する。
【0008】
(vi) 同様にt=t4では、V3とV7ゲートで読み出した信号電荷が垂直CCDで信号加算する。
すなわち、図13の読み出しタイミングチャートでは、垂直CCD上で垂直方向に2つのホトダイオードの信号電荷加算を行っている。なお、垂直CCD転送は垂直CCDゲートが8本周期であるが実質4相のパルスで転送動作を行っている。ホトダイオード、垂直CCDの詳細なポテンシャルについて図14を用い説明する。
【0009】
図14では、基板電位がその基板の抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合によって均衡した電位になることでホトダイオードのポテンシャルや基板ポテンシャルが上下し変化することや周辺の垂直CCDのポテンシャルの影響を受けることにより余剰になった信号電荷が基板に排出され、ホトダイオードの飽和特性が変化することを示している。図14(a)では模式的にホトダイオード、および垂直CCDから構成される画素部97おいて、基板が画素部中央部を中心に画素部周辺部との間に抵抗成分が存在し、画素部97が垂直CCDゲートと容量結合していることを示している。また、画素部97周辺部のホトダイオード91は、画素部97を含むウェル周辺でウェル電位を固定している箇所と距離が近いことから基板電圧供給源との距離が近く抵抗成分が少ないため基板電圧が直接的に印加されるが、画素部中央部のホトダイオードは、基板電圧供給源との距離があるため抵抗成分が増し、垂直CCDゲートとの間には容量結合成分が存在するため、画素部97中央部では画素部97周辺部より大きい抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合により基板電位が画素部97周辺部より垂直転送パルスの影響を受けやすいと考えられる。
【0010】
そして、ポテンシャル図では図14(b)のように示すことができると考える。即ち、画素部周辺部は、破線で示すポテンシャルになり、飽和特性が小さくなり画素部中央部では、実線で示すポテンシャルとなり、垂直転送パルスの影響を受けポテンシャルの変動が起こりやすいと考えられる。
また、周辺の垂直CCDのポテンシャルの影響について図13のタイミングチャートの垂直転送パルスで考えるとt=t0の時点では、V1〜V3、V5〜V7の各ゲートがミドル(M)レベル、他の2つのゲートはロー(L)レベル、t=t1、t2、t3、t4時点では4つのゲートがミドル(M)レベル、4つのゲートがロー(L)レベルである。ミドル(M)レベルのゲートが少ないt=t1、t2、t3、t4時は垂直CCDのポテンシャルが高くホトダイオードのポテンシャルも高くなりホトダイオードの信号電荷の飽和量は低くなり、ポテンシャル図の破線のポテンシャルになり、余剰の信号電荷が基板に排出されると考えられる。
【0011】
t=t0時では、ミドル(M)レベルのゲートが多く垂直CCDのポテンシャルがより低くなることからホトダイオードのポテンシャルが実線のように低くなるため、ホトダイオードの信号電荷の飽和量は高くなることから、t=t0からt=t1の期間に余剰の信号電荷の基板排出が行われるが、垂直転送による垂直CCDのポテンシャル変化毎に段階的な基板排出による信号電荷減少になると考えられるので最初の読み出しを行うt=t1時点の信号電荷量が高く、以降t2、t3、t4時点に読み出された信号電荷量が順に低くなり、信号出力の飽和ばらつきの要因になると考えられる。
【0012】
一方、特許文献1には、信号加算に対して信号電荷飽和量に応じた基板バイアスを設定し、信号電荷の飽和量を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−307961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の特許文献1のように基板バイアスによって、信号加算に応じた信号電荷飽和量に制御する場合、1ホトダイオードの当たりの信号電荷飽和量を小さくすることになる。また、近年の受光素子の微細化により、画素部の中央部と周辺部の違いやホトダイオード周辺の垂直CCDのポテンシャル状態が与えるホトダイオードのポテンシャルへの影響が増加していると考えられる。
【0015】
以上のことから、ホトダイオードの信号電荷飽和量を小さくする上記従来のCCD固体撮像装置のモニタモードの駆動では、顕著に垂直CCDのポテンシャルによるホトダイオードの信号電荷量低下の割合が近年の受光素子の微細化に伴い増加し信号出力の飽和のばらつきが増加していくと考えられる。
本発明は、かかる課題を鑑み、信号出力の飽和ばらつきを低減する固体撮像装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明に係る固体撮像装置の駆動方法は、2次元状に複数個配列され光電変換した信号電荷を蓄積する受光素子と、受光素子に蓄積された信号電荷を読み出し垂直方向に転送する垂直転送ゲートを有する垂直転送部と、垂直転送部から信号電荷を受け水平方向に転送する水平転送部と、水平転送部からの信号電荷を受け出力信号に変換する出力部とを備えた固体撮像装置を駆動する方法であって、垂直転送ゲートへM相(Mは3以上の自然数)のミドルレベルとローレベルの2値の垂直転送パルスを印加することにより、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数をN(Nは1以上の自然数)、前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数をI(Iは1以上の自然数)としたとき、受光素子から読み出した信号電荷や垂直転送部(垂直CCD)が発生する不要電荷を、全て水平転送部に転送し信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、受光素子に蓄積された信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、M相の垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上で駆動することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る固体撮像装置の駆動方法は、上記において、受光素子から読み出した信号電荷や垂直転送部(垂直CCD)が発生する不要電荷を、全て水平転送部に転送し、信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、受光素子に蓄積された信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数前記N以下でM相の垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上で駆動することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る固体撮像装置の駆動方法は、上記において、受光素子から読み出した信号電荷や垂直転送部(垂直CCD)が発生する不要電荷を、全て水平転送部に転送し、信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、受光素子に蓄積された信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、前記M相の垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数IをNで駆動することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る固体撮像装置の駆動方法は、上記において、受光素子から読み出した信号電荷や垂直転送部(垂直CCD)が発生する不要電荷を、全て水平転送部に転送し、信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、受光素子に蓄積された信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数前記N以下でM相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上(M−1)以下で駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、垂直転送期間を終了し信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、余剰電荷の基板排出でホトダイオードの信号電荷飽和量を低下させ、読み出し期間のホトダイオードの信号電荷飽和量を増加することで、読み出し期間での余剰電荷の基板排出による信号電荷量減少を抑制でき信号出力の飽和ばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成を模式的に示す模式ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の模式図であり、(b)は、ポテンシャル図である。
【図5】変形例1に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図6】変形例2に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図9】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の模式図であり、(b)は、ポテンシャル図である。
【図10】変形例3に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図11】従来の固体撮像装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図12】従来の固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図である。
【図13】従来の固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの詳細図である。
【図14】(a)は、従来の固体撮像装置の模式図であり、(b)は、ポテンシャル図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のより具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成図である。
図1に示すように、固体撮像装置においては、マトリクス状に複数のホトダイオード1が形成されている。そして、ホトダイオード1の各列間には、各々がY軸方向に延伸された垂直CCD2が設けられている。垂直CCD2は、ホトダイオード1に蓄積された信号電荷を読み出し垂直方向に転送する垂直CCDゲートを有する。垂直CCD2の各Y軸方向下端部分には、X軸方向に延伸された水平CCD3が設けられている。水平CCD3は、垂直CCD2から信号電荷を受け水平方向に転送する。
【0023】
水平CCD3のX軸方向左端部分には、アンプ4が設けられ、アンプ4には、信号処理部5が接続されている。アンプ4は、水平CCD3からの信号電荷を受け出力信号に変換する。また、信号処理部5は、出力信号の信号処理を行う。
固体撮像装置には、上記の他に、垂直CCD2と水平CCD3に垂直転送パルス及び水平転送パルスを供給する駆動制御部6が設けられている。ここで、垂直CCDゲートは、1つのホトダイオード当たり2本の8本周期で構成される。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態にかかる固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図を示した図であり、モニタモードにおける転送パルスタイミングを示す。
図2に示すように、水平転送パルスφH1、φH2の停止期間に、垂直転送パルスφV1〜8によって、信号電荷が垂直CCD2で垂直転送され、垂直転送が終了した後、水平転送パルスφH1、φH2によって、水平CCD3にある信号電荷が水平CCD3を水平転送され出力信号となる。
【0025】
図中の破線で囲み示す期間Aではホトダイオード1から垂直CCD2へ信号電荷を読み出している。ホトダイオード1から垂直CCD2への読み出しの詳細タイミングチャートを図3に示している。なお、垂直CCD2は、ゲートにミドル(M)レベルの電圧を印加するとポテンシャルが低くなり信号電荷を蓄積でき、ロー(L)レベルではポテンシャルが高いピンニング状態になり信号電荷は蓄積できない。
【0026】
(i) まず、図3に示すように、t=t0の時点はミドル(M)レベルの電圧を供給しているφV1〜φV3、φV5〜φV7の垂直CCDゲートV1〜V3、V5〜V7の垂直CCD2がポテンシャルが低く、信号電荷を3つのゲートで蓄積できる状態にある(丸印B〜B)。
(ii) 次に、t=tに、V2、V3、V6、V7ゲートが同時にロー(L)レベルに変化する(丸印B〜B10)。ミドル(M)レベルのゲートがV1、V5の2ゲートだけになり、かつ、前述のように、V2、V3、V6、V7が同時にロー(L)レベルに変化する。ホトダイオード1、垂直CCD2の詳細なポテンシャルについては、後述する。
【0027】
(iii) t=t1時点で、φV5がハイ(H)レベルとなり(丸印B11)、ミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなりホトダイオード1の信号電荷が垂直CCD2に読み出されV5、V6に信号電荷を蓄積できる。
(iv) 同様にt=t2時点で、φV3がハイ(H)レベルとなりミドル(M)レベルのポテンシャルより(丸印B12)、さらに低くなり、ホトダイオード1の信号電荷が垂直CCD2に読み出されV3、V4に信号電荷を蓄積できる。
【0028】
(v) さらに、t=t3時点で、φV1がハイ(H)レベルとなり(丸印B13)、ミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなり、ホトダイオード1の信号電荷が垂直CCD2に読み出されV1、V2に信号電荷を蓄積できるが、t=t1で読み出された信号電荷が垂直転送されV1、V2ゲートに蓄積している状態でt=t3で読み出されるため、V5とV1ゲートで読み出した信号電荷が垂直CCD2で信号加算する。
【0029】
(vi) 同様にt=t4では、φV7がハイ(H)レベルとなり(丸印B14)、ミドル(M)レベルのポテンシャルよりさらに低くなり、V3とV7ゲートで読み出した信号電荷が垂直CCD2で信号加算する。
次に、ホトダイオード1、垂直CCD2の詳細なポテンシャルについて、図4を用い説明する。
【0030】
図4では、基板電位がその基板の抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合によって均衡した電位になることでホトダイオード1のポテンシャルや基板ポテンシャルが上下し変化することや周辺の垂直CCD2のポテンシャルの影響を受けることにより余剰になった信号電荷が基板に排出され、ホトダイオード1の飽和特性が変化することをポテンシャル図、固体撮像装置の模式図で示している。図4(a)では、模式的にホトダイオード1、垂直CCD2を形成する画素部7おいて、基板が画素部中央部を中心に画素部周辺部との間に抵抗成分が存在し、画素部7が垂直CCDゲートと容量結合していることを示している。
【0031】
また、画素部周辺部のホトダイオード1は、画素部7を含むウェル周辺でウェル電位を固定している箇所と距離が近いことから基板電圧供給源との距離が近く抵抗成分が少ないため基板電圧が直接的に印加されるが、画素部中央部のホトダイオード1は、基板電圧供給源との距離があるため抵抗成分が増し、垂直CCDゲートとの間には容量結合成分が存在するため、画素部中央部では画素部周辺部より大きい抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合により基板電位が画素部周辺部より垂直転送パルスの影響を受けやすいと考えられる。
【0032】
そして、ポテンシャル図では図4(b)のように示すことができると考える。図4(b)に示すように、画素部周辺部は、破線のポテンシャルになり、飽和特性が小さくなり画素部中央部では、画素部周辺部との間の抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合で実線のポテンシャルとなり、そして垂直転送パルスの影響を受けポテンシャルの変動が起こりやすいと考えられる。
【0033】
また、t=tにおいて画素部の中央部、周辺部それぞれのホトダイオード1のポテンシャルは垂直CCDゲートとの容量結合により急峻に変化し図の一点鎖線、2点鎖線のように高くなり余剰電荷が基板に排出されると考えられる。
t=t0の時点では、V1〜V3、V5〜V7の各ゲートがミドル(M)レベル、他の2つのゲートはロー(L)レベルであり、ホトダイオード1のポテンシャルは低く、t=t時点では、2つのゲート(V1、V4)がミドル(M)レベル、6つのゲート(V2〜V4、V6〜V8)がロー(L)レベルでうち2つのゲート(V2、V3、V6、V7)が急峻にロー(L)レベルに変化するためホトダイオード1のポテンシャルが急峻に高くなり、図の一点鎖線、2点鎖線のように余剰電荷が基板に排出されると考えられる。
【0034】
以降、t=t1からt=t4の期間は、t=t時点よりは、ミドル(M)レベルの垂直CCDゲートが増えるため、ホトダイオード1のポテンシャルが低く、飽和特性が高い状態で信号電荷読み出しが行われる。
本実施形態に係る固体撮像装置の駆動方法では、信号電荷がt=tで一旦減少してから飽和特性が高い状態で垂直転送と信号電荷読み出しを行うため、信号電荷の基板排出が抑制でき、画素部中央部と周辺部との飽和特性差が小さくなり、また、t=t1、t2、t3、t4で読み出す信号電荷の飽和特性差も小さくでき、画素部7の飽和特性ばらつきを抑制できると考えられる。
【0035】
なお、垂直CCD転送はゲートが8本周期であるが実質4相のパルスで転送動作を行っている。
[変形例1]
上記第1の実施形態では、4相パルスの垂直転送が完了し、垂直CCDゲート3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態から、一旦、t=t時点で2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化させ、1つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから、再度、3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻して信号電荷の読み出しを行っているが、図5に示すような変形例1に係る固体撮像装置の駆動方法を採用することも可能である。
【0036】
図5のタイミングチャートのように、t=t後、再度、3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態ではなく、2つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻してもよい(丸印C、Cが相違点)。このような駆動方法を採用する場合には、モニタモードでは常時光が入射しているため光量が多い場合、t=t時点で余剰電荷の基板排出を行っても信号電荷読み出しまでの期間で、再び信号電荷が増えるので、少ないゲート数で信号電荷を蓄積できる状態にすることで、信号電荷読み出し前のホトダイオード1のポテンシャルを高くすることにより余剰電荷を基板に排出でき、画素部中央部と周辺部との飽和特性差がを抑制できると考えられる。
【0037】
[変形例2]
また、上記第1の実施形態では、4相パルスの垂直転送が完了し、垂直CCDゲートにおける3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態から、一旦、t=t時点で2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化させ、1つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから、再度、3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻して信号電荷の読み出しを行っているが、図6に示すような変形例2に係る固体撮像装置の駆動方法を採用することも可能である。
【0038】
図6のタイミングチャートのように、t=t時点で、V1〜V3、v5〜V7の6つのゲートを同時にロー(L)レベルに変化させ信号電荷を蓄積できない状態にしてもよい(丸印D、Dが相違点)。このように、同時にロー(L)レベルにするゲート数が多いほうが、t=t時点での余剰電荷の基板排出がより多くなり、画素部の飽和特性ばらつきをより抑制できると考えられる。
【0039】
しかし、画素部の暗電流が多いため、信号電荷が少ない場合の撮像画質に課題があり、暗電流の信号電荷の垂直転送が必要な場合などは、上記第1の実施形態のt=t時点のように、最低1つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にして暗電流の垂直転送を行うほうが好ましい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の駆動方法について、図7から図9を用い説明する。
【0040】
本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の構成は、基本的に、上記第1の実施形態と同様である。本実施形態では、上記第1の実施形態に対し、異なる駆動方法を採用する駆動制御部26が構成上の相違点である。なお、本実施形態に係る駆動方法においても、垂直転送ゲートは、1ホトダイオード当たり2本の8本周期で構成されるが、垂直CCD2の転送は、φV1〜φ8の8相のパルスで転送される。
【0041】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置における垂直転送パルスタイミングの全体図を示した図であり、スチルモードにおける1フィールドの転送パルスタイミングを示す。スチルモードでは、全ホトダイオードの信号電荷を読み出し信号毎に出力信号に変換するのだが一定周期で信号電荷を読み出し、複数のフィールドに分けて信号出力とすることが一般的である。
【0042】
図7に示すように、本発明の第2の実施形態にかかる固体撮像装置の場合は、4つのホトダイオード毎に信号電荷を読み出し、4フィールドの信号出力で1枚の画像が構成される。図7は、φV3の垂直CCDゲートV3で信号電荷を読み出すフィールドのタイミングチャートを示している。
水平転送パルスφH1、φH2の停止期間に垂直転送パルスφV1〜8によって、信号電荷が垂直CCD2で垂直転送され、垂直転送が終了した後、水平転送パルスφH1、φH2によって、水平CCD3にある信号電荷が水平CCD3を水平転送され出力信号となる。
【0043】
図中の破線で囲み示す期間Eでは、ホトダイオード1から垂直CCD2へ、V3のゲートの信号電荷を読み出している。ホトダイオード1から垂直CCD2への読み出しの詳細タイミングチャートを、図8に示している。
垂直CCD2は、ゲートにミドルレベルの電圧を印加するとポテンシャルが低くなり信号電荷を蓄積でき、ローレベルではポテンシャルが高いピンニング状態になり信号電荷は蓄積できない。
【0044】
図8に示すように、まず、t=t0の時点は、ミドル(M)レベルの電圧を供給しているφV1〜φV4のゲートV1〜V4の垂直CCD2がポテンシャルが低く、信号電荷を4つのゲートで蓄積できる状態にある(丸印F〜F)。次にt=tの時点で、V1、V2の各ゲートが同時にロー(L)レベルに変化する(丸印F、F)。ミドル(M)レベルのゲートがV3、V4の2つのゲートだけになり、且つ、V1、V2の各ゲートが同時にロー(L)レベルに変化する。
【0045】
ホトダイオード1、垂直CCD2の詳細なポテンシャルについて図9を用い説明する。
図9では、基板電位がその基板の抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合によって均衡した電位になることでホトダイオード1のポテンシャルや基板ポテンシャルが上下し変化することや、周辺の垂直CCD2のポテンシャルの影響を受けることにより余剰になった信号電荷が基板に排出され、ホトダイオード1の飽和特性が変化することをポテンシャル図、固体撮像装置の模式図で示している。
【0046】
図9(a)では模式的にホトダイオード1、垂直CCD2を形成する画素部7おいて、基板が画素部中央部を中心に画素部周辺部との間に抵抗成分が存在し、画素部7が垂直CCDゲートと容量結合していることを示している。また、画素部周辺部のホトダイオード1は、画素部7を含むウェル周辺でウェル電位を固定している箇所と距離が近いことから、基板電圧供給源との距離が近く抵抗成分が少ないため、基板電圧が直接的に印加されるが、画素部中央部のホトダイオード1は、基板電圧供給源との距離があるため抵抗成分が増し、垂直CCDゲートとの間には容量結合成分が存在するため、画素部中央部では画素部周辺部より大きい抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合により基板電位が画素部周辺部より垂直転送パルスの影響を受けやすいと考えられる。
【0047】
そして、ポテンシャル図では図9(b)のように示すことができると考える。図9(b)に示すように、画素部周辺部は、破線のポテンシャルになり、飽和特性が小さくなり画素部中央部では、画素部周辺部との間の抵抗成分と垂直CCDゲートとの容量結合で実線のポテンシャルとなり、そして垂直転送パルスの影響を受けポテンシャルの変動が起こりやすいと考えられる。
【0048】
また、t=tの時点において、画素部の中央部、周辺部それぞれのホトダイオード1のポテンシャルは、垂直CCDゲートとの容量結合により急峻に変化し、図の一点鎖線、2点鎖線のように高くなり、余剰電荷が基板に排出されると考えられる。
t=t0の時点では、V1〜V4の各ゲートがミドル(M)レベル、他の4つのゲートはロー(L)レベルであり、ホトダイオード1のポテンシャルは低く、t=tの時点では、2つのゲートがミドル(M)レベル、ゲートがロー(L)レベルでうち、2つのゲートが急峻にロー(L)レベルに変化するため(図8の丸印F、F)、ホトダイオード1のポテンシャルが急峻に高くなり、図の一点鎖線、2点鎖線のように余剰電荷が基板に排出されると考えられる。
【0049】
以降、t=tからt=t1の期間は、t=tの時点よりは、ホトダイオード1のポテンシャルが低く、飽和特性が高い状態で信号電荷読み出しが行われる。信号電荷がt=tで、一旦、減少してから飽和特性が高い状態で垂直転送と信号電荷読み出しを行うため、信号電荷の基板排出が抑制でき、画素部中央部と周辺部との飽和特性差が小さくなり、また、他フィールドにおいても同様なタイミングで信号電荷を読み出すことでフィールド間の信号出力の飽和ばらつきを抑制できると考えられる。
【0050】
[変形例3]
上記第2の実施形態では、8相パルスの垂直転送が完了し、垂直CCDゲート4ゲートで信号電荷を蓄積できる状態から、一旦、t=tの時点で2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化させ(図8の丸印F、F)、2つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから、再度、4つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻して(図8の丸印F、F)、信号電荷の読み出しを行っているが、図10示すような変形例3に係る固体撮像装置の駆動方法を採用することも可能である。
【0051】
図10に示すタイミングチャートのように、t=tの時点より前に、垂直CCDゲートの3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから(丸印G〜G)、一旦、t=tの時点で、2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化させ(丸印G、G)、1つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから(丸印G)、再度、3つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻してもよく(丸印G、G)、t=tの時点より前に、少ないゲート数で信号電荷を蓄積できる状態にすることで、ホトダイオード1のポテンシャルが高くなり、余剰電荷が基板に排出されてから、t=tの時点の2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化による余剰電荷基板排出が行われることから、余剰電荷の合計の基板排出量が多くなり、画素部中央部と周辺部との飽和特性差がさらに小さくなり、また、他フィールドにおいても同様なタイミングで信号電荷を読み出すことでフィールド間の信号出力の飽和ばらつきを抑制できると考えられる。
【0052】
また、上記第2の実施形態では、8相パルスの垂直転送が完了し、垂直CCDゲート4ゲートで信号電荷を蓄積できる状態から、一旦、t=tの時点で2つのゲートをミドル(M)レベルからロー(L)レベルに同時に変化させ、2つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態にしてから、再度、4つのゲートで信号電荷を蓄積できる状態に戻して信号電荷の読み出しを行っているが、t=tの時点で、4つのゲートを同時にロー(L)レベルに変化させ、信号電荷を蓄積できない状態にしてもよく、同時にロー(L)レベルにするゲート数が多いほうが、t=tの時点での余剰電荷の基板排出がより多くなり画素部の飽和特性ばらつきをより抑制できると考えられる。
【0053】
しかし、画素部の暗電流が多いため信号電荷が少ない場合の撮像画質に課題があり暗電流の信号電荷の垂直転送が必要な場合などは、第1の実施形態のt=tl時点のように最低1ゲートで信号電荷を蓄積できる状態にして暗電流の垂直転送を行うほうが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、一体型ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等に適用できる固体撮像装置であって、垂直CCDの信号電荷転送によるホトダイオードの信号電荷減少を抑制し、信号出力の飽和ばらつきを抑制することができる固体撮像装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ホトダイオード
2 垂直CCD
3 水平CCD
4 出力アンプ
5 信号処理部
6 駆動制御部
7 画素部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に複数個配列され光電変換した信号電荷を蓄積する受光素子と、
前記受光素子に蓄積された信号電荷を読み出し垂直方向に転送する垂直転送ゲートを有する垂直転送部と、
前記垂直転送部から信号電荷を受け水平方向に転送する水平転送部と、
前記水平転送部からの信号電荷を受け出力信号に変換する出力部とを備えた固体撮像装置の駆動方法であって、
前記垂直転送ゲートへM相(Mは3以上の自然数)のミドルレベルとローレベルの2値の垂直転送パルスを印加することにより、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において、
水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数をN(Nは1以上の自然数)、前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数をI(Iは1以上の自然数)としたとき、
前記受光素子から読み出した前記信号電荷や垂直転送部が発生する不要電荷を、全て前記水平転送部に転送し、前記信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度前記受光素子に蓄積された前記信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上で駆動する
ことを特徴とする固体撮像装置の駆動方法。
【請求項2】
前記受光素子から読み出した前記信号電荷や垂直転送部が発生する不要電荷を、全て前記水平転送部に転送し前記信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、前記受光素子に蓄積された前記信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数であるN以下で前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上で駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項3】
前記受光素子から読み出した前記信号電荷や垂直転送部が発生する不要電荷を、全て前記水平転送部に転送し前記信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、前記受光素子に蓄積された前記信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数IをNで駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項4】
前記受光素子から読み出した前記信号電荷や垂直転送部が発生する不要電荷を、全て前記水平転送部に転送し、前記信号電荷の垂直転送を行う期間が終了し、再度、前記受光素子に蓄積された前記信号電荷の読み出しを開始するまでの期間、水平転送停止中に行う通常の垂直転送において水平転送を行う期間に信号電荷を蓄積するゲートの最小数であるN以下で前記M相の前記垂直転送パルスのうち同時にミドルレベルからローレベルに変化させるパルスの最大数Iを2以上(M−1)以下で駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項5】
同一フィールド期間内で複数回異なるタイミングで前記受光素子に蓄積された信号電荷を読み出す
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の固体撮像装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかの駆動方法を採用する固体撮像装置を備える
ことを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−17069(P2013−17069A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148979(P2011−148979)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】