説明

固体撮像装置

【課題】マイクロレンズをアレイ状に整列使用した固体撮像装置において、該マイクロレンズを除く部分の平坦性を厳しく制御するための繁雑な工程による平坦化層を特別に必要とせずに、均一な特性を有する固体撮像装置を提供する。
【解決手段】受光部の各画素別の光電変換素子に対応して配置されるマイクロレンズで集光する固体撮像装置において、封止パッケージ用のキャップガラスの光電変換素子側内面にマイクロレンズを配置する。特にリニアセンサーに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDやCMOSからなる光電変換素子を形成した固体撮像素子を有する固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置は画像の記録、通信、放送の内容の拡大に伴って広く用いられるようになっている。撮像装置として種々の形式のものが提案されているが、小型、軽量で高性能のものが安定して製造されるようになってきている固体撮像素子を用いた撮像装置が、普及してきている。
【0003】
固体撮像素子は、撮影対象物からの光学像を受け、入射した光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する。光電変換素子の種類はCCD(電荷結合素子)タイプとCMOS(相補型金属酸化物半導体)タイプとに大別される。また、光電変換素子の配列形態から、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)と、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)との2種類に大別される。
いずれのセンサにおいても光電変換素子の数(画素数)が多いほど撮影された画像は精密になる。また、光電変換素子に入射する光の経路に、特定の波長の光を透過する各種のカラーフィルタを設けることで対象物の色情報を得ることを可能としたカラーセンサーも普及している。カラーフィルタの色としては、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の3色からなる3原色系、あるいは、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)からなる補色系が一般的である。
【0004】
固体撮像素子に要求される性能で重要な課題の一つに、入射する光への感度を向上させることが挙げられる。撮影した画像の情報量を多くするためには受光部となる光電変換素子を微細化して高集積化する必要がある。しかし、光電変換素子を微細化した場合、各光電変換素子の面積が小さくなり、光を取り込む面積が小さくなるため、光電変換素子に取り込める光の量が少なくなる。また、カラーフィルタを設けた固体撮像素子では、カラーフィルタを光が通過する際に波長の分離、カラーフィルタによる光の吸収が生じるため、光電変換素子に入射する光量が低下する。そのため、固体撮像素子として光への感度の低下が生じるものである。
【0005】
このような、固体撮像素子の感度の低下を防止するための手段として、光電変換素子(受光部)に効率良く光を取り込むために、対象物から入射される光を集光して光電変換素子(受光部)に導くマイクロレンズを形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
マイクロレンズで光を集光して光電変換素子(受光部)に導くことで、受光部の見かけ上の開口率(面積)を大きくすることが可能になり、固体撮像素子の感度を向上させることが可能になる。
【0006】
光電変換素子は入射した光を電気信号に変換するが、光が所定の光電変換素子に入射せず、異なった光電変換素子(例えば、隣接した光電変換素子)に入射した場合、得られる画像にノイズが生じる。特に、カラーフィルタを配設したカラーセンサの場合、カラーフィルタを通過した光が異なった光電変換素子に入射すると、得られる画像に混色の問題が生じる。このような、誤入射は、斜め方向から光電変換素子に入射する光に発生しやすい。そのため、斜め入射する光が、所望する光電変換素子とは異なった光電変換素子に入射するのを防止するため、遮光壁を固体撮像素子の側端部や個々のカラーフィルタ間に設ける技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
光電変換素子を形成した固体撮像素子に、ゴミなどの異物が付着すると、異物が光を遮るため撮影した画像に黒点などのノイズが発生することになる。そのため、固体撮像素子への異物の付着を防止した封止型(パッケージ型)の固体撮像装置とすることが行われている。図2に、封止型(パッケージ型)固体撮像装置の一例の断面図を模式的に示す。
【0008】
図2の固体撮像装置12では、シリコン(Si)基板に複数の光電変換素子1が形成された固体撮像素子4が、電気配線部5を有する配線基板10上に載置されている。固体撮像素子4と電気配線部5とは電気的接続が行われ(図示せず)、固体撮像素子4からの電気信号が電気配線部5に伝えられる。
【0009】
固体撮像素子4の周囲の配線基板10には樹脂などからなる封止部6が形成され、封止部6と配線基板10とで空間部を形成している。固体撮像装置12に入射する光が光電変換素子1に達するよう、空間部は固体撮像素子4の上方で開放された空間となっている。固体撮像素子4の上方には、光を透過する透明なキャップガラス3が設けられ、キャップガラス3、封止部6、配線基板10とで封止空間を形成し、封止空間内に固体撮像素子4が載置されている。これにより、固体撮像素子4に異物が付着するのを防止している。
【0010】
また、固体撮像素子4には、特定の波長の光を透過するための所定色のカラーフィルタ7が、各光電変換素子1に対応して複数配設している。さらに、上述したように斜め入射光を遮蔽するために、固体撮像素子4の側端部及び個々のカラーフィルタ7間に遮光壁8が設けられている。カラーフィルタの形成には、着色された感光性樹脂を塗布し、塗布膜へのパターン露光、現像を行い、残存した塗膜をカラーフィルタとするフォトリソ法が広く用いられている。カラーフィルタ形成時に色の異なる樹脂を積層して遮光壁8とする技術も提案されている。
【0011】
固体撮像素子4には、入射光を集光して光電変換素子1に導くためのマイクロレンズ2が、個々の光電変換素子1に対応して形成されている。マイクロレンズを形成するにあたり、マイクロレンズを形成する下地面に凹凸があると、マイクロレンズを所望する形状に形成することが困難になる。そのため、カラーフィルタ7上に平坦化層9を設け、平坦とした面にマイクロレンズ2を形成している。図2の例においては、平坦化層9は、カラーフィルタ7上だけでなく、遮光壁8も含めて凹凸の平坦化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−207461号公報
【特許文献2】特開2005−353799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
個々のカラーフィルタの高さ(厚み)は均一とは限らず、所望する分光特性を得るため色毎に高さ(厚み)を異ならせたり、カラーフィルタの形成時に高さ(厚み)がバラツクことがあり、また、カラーフィルタ上に遮光壁を設ける場合もあり、カラーフィルタの表面の平坦性は大きく損なわれているといえる。上述したように、カラーフィルタ7上に形成する平坦化層9は、マイクロレンズを形成する下地面の平坦化を行うために設けられるが、カラーフィルタ表面の平坦性が大きく損なわれている場合、平坦化層9表面に平坦性を持たせるためには、平坦化層9の厚みを厚くする必要がある。
【0014】
平坦化層9の形成にあたっては、透明な樹脂を塗布する技術を用いることが多い。透明
な樹脂の塗布で平坦化層9を形成する際、1回の塗布で平坦化層9を形成する場合もあるが、透明樹脂の粘度が低い場合は複数回に分けて透明樹脂を塗布し、透明樹脂を積層した平坦化層9とすることが行われる。
【0015】
マイクロレンズ2の形状、高さは、マイクロレンズ下面から光電変換素子(受光部)までの距離によって、予め設定されている。そのため、マイクロレンズ2の形状、高さが設定された後、固体撮像装置を複数個製造する際に、固体撮像装置毎に平坦化層9の厚みがバラツクことは、マイクロレンズによる集光性にバラツキが生じ、個々の固体撮像装置の性能にバラツキをもたらすことになる。
【0016】
そのため、平坦化層の形成工程は厳しく制御しなければならず、固体撮像装置の製造工程上の負担は大きい。また、透明樹脂を積層して平坦化層を形成する場合、その分だけ工程が増えるため、製造工程が繁雑になり製造工程の負担はより大きくなるといえる。平坦化層の形成工程を厳しく制御するためには各種の制御装置、駆動装置を必要とするため設備費が掛かり、また、工程数が増えるため、固体撮像装置の製造コストを上げる結果にもなりかねない。
【0017】
また、マイクロレンズ2と光電変換素子1(受光部)との距離が短いほうが、マイクロレンズで集光され光電変換素子(受光部)に入射する光の量が増えることになる(所謂、光の取り込み角度が増大することになる)。しかし、平坦化層9表面に平坦性を持たせるために平坦化層9の厚みを厚くすると、その分だけマイクロレンズ2と光電変換素子1(受光部)との距離が長くなり、マイクロレンズで集光され光電変換素子(受光部)に入射する光の量が減ることになる。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたもので、その課題とするところは、平坦化層の形成という繁雑な製造工程を不要にし、マイクロレンズによる集光性にバラツキがない均一な特性を有し、また、集光性能を向上させた固体撮像装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
複数の光電変換素子が形成された固体撮像素子が載置され、入射する光が前記光電変換素子に入射するよう固体撮像素子の上方に開放された空間部と、前記空間部の上方に設けられ入射光を透過するキャップガラスとを有する固体撮像装置において、前記キャップガラスの光電変換素子側の面に、光電変換素子に対応したマイクロレンズを配置したことを特徴とする固体撮像装置としたものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の固体撮像素子がリニアセンサーであることを特徴とする固体撮像装置としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の固体撮像装置によれば、入射光を光電変換素子(受像部)に集光し見かけ上の開口率を向上させるためのマイクロレンズを、表面平坦なキャップガラスに配置したことで、平坦化層を不要にしている。そのため、個々の固体撮像装置を製造する際に、表面平坦で均一な厚みとした平坦化層を得るための繁雑な工程が不要になり、製造工程を短縮できる。また、マイクロレンズを支持する平面が平坦性の良いキャップガラスであって、マイクロレンズと光電変換素子(受像部)との距離を不均一にする要因の一つとなる平坦化層の平坦性の悪さに影響されないため、個々の固体撮像装置でマイクロレンズと光電変換素子(受像部)との距離を均一に形成しやすい。そのため、製造コストが低く性能の均一な固体撮像装置を容易に得ることが可能になる。
【0021】
また、平坦化層を形成しない分、マイクロレンズと光電変換素子(受像部)との距離を
短く出来るため、光の取り込み角度が大きくなりマイクロレンズによる光電変換素子(受像部)への集光性を向上させることが可能になり、感度の良い固体撮像装置を得ることが可能になる。
【0022】
さらに、キャップガラスと光電変換素子(受像部)との距離を統一(規格化)する、または、キャップガラスの封止部6の高さを随時変更することで、同一形状のマイクロレンズを形成したキャップガラスを、他の品種の個体撮像装置に適用することも可能になり、製造コストの低い固体撮像装置を得ることが可能になる。その場合、製造工程における膜厚の管理は、カラーフィルタの膜厚管理を優先的に行えば良いことになる。
【0023】
なお、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)では、斜め入射光による混色などのノイズを防止するため、カラーフィルタ上に遮光壁を形成することが多いため、カラーフィルタ表面の凹凸は大きくなる。そのため、固体撮像素子がリニアセンサーである固体撮像装置に本発明を適用することは特に有効といえる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の固体撮像装置の一例を模式的に示す断面説明図。
【図2】従来の固体撮像装置の一例を模式的に示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態の一例を、図面に従って説明する。
【0026】
図1は、本発明の固体撮像装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す固体撮像素子4は、Si(シリコン)からなる基板に、CCDまたはCMOS構造の光電変換素子1(受光部)を1列に配置したリニアセンサーとした。固体撮像素子4は、電気配線部5を有する配線基板10上に載置されている。固体撮像素子4と電気配線部5とは電気的接続が行われており(図示せず)、光電変換素子1で得られた電気信号が電気配線部5に伝えられる。電気配線部5は、外部機器との電気的接続を行うための端子部に連なる。
【0027】
次いで、各光電変換素子1の上方に、入射光の色分離を行うために、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の3色からなる3原色系のカラーフィルタ7を所定の色配列にて形成している。各カラーフィルタ7は、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の着色感光性樹脂を各々用い、パターン露光、現像を行い残存した着色感光性樹脂膜をカラーフィルタとするフォトリソ法で形成した。また、斜め入射光を遮蔽するために、固体撮像素子4の側端部及び個々のカラーフィルタ7間に遮光壁8を設けている。カラーフィルタ7間の遮光壁8は、カラーフィルタの形成時に、色の異なる樹脂を残存して積層させて形成した。また、固体撮像素子4の側端部の遮光壁8は、カラーフィルタの形成時に各色の着色樹脂を残存、積層して形成した。
【0028】
固体撮像素子4の周囲の配線基板10には樹脂などからなる封止部6を形成している。封止部6と配線基板10とで空間部を形成している。固体撮像装置12に入射する光が光電変換素子1に達するよう、空間部は固体撮像素子4の上方で開放された空間としている。次いで、封止部6を介し、固体撮像素子4の上方に光を透過する透明なキャップガラス3を設けている。封止部6とキャップガラス3との貼り合わせにシール剤を用いる場合、シール剤は、封止部6側に設けても、キャップガラス3側に設けても、あるいは、封止部6側とキャップガラス3側の両方に設けても構わない。キャップガラス3、封止部6、配線基板10とで封止空間を形成し、封止空間内に固体撮像素子4を載置している。
【0029】
本発明では、カラーフィルタ上に平坦化層を介してマイクロレンズを設けず、図1に示すようにキャップガラス3の固体撮像素子4側の面に、各固体撮像素子4に対応させてマイクロレンズ2を形成している。マイクロレンズの形成は、フォトリソグラフィ法でガラス上に形成した樹脂パターンを加熱し、溶けた樹脂の表面張力によりレンズ形状とする熱リフロー法を用いて構わない。または、熱リフロー法でガラス上に形成した樹脂からなるレンズ母型をマスクにしてガラスにドライエッチングを行うドライエッチング法により、ガラス表面をレンズ状に形成しても構わず、形成方法は適宜選択することができる。
【0030】
キャップガラスの表面は平坦であり、また仮に平坦でないとしても、マイクロレンズの形成前にガラス表面を研磨する、あるいは、湾曲したガラスを加圧することで平坦とすることは容易であるので、形状精度の良いマイクロレンズを形成するのは容易になる。
【0031】
本発明では、マイクロレンズを形成したキャップガラス3を、各マイクロレンズと各光電変換素子とが対応するよう貼り合わせる必要があり、貼り合わせの位置精度が要求される。しかし、リニアセンサーの場合、画素の配列ピッチ(光電変換素子の配列ピッチ)は25μm〜75μm程度であるので、貼り合わせは容易といえる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形を行っても構わない。例えば、本実施例では、配線基板10と封止部6とで、固体撮像素子4を載置する空間を形成した。しかし、セラミックやプラスチックなどからなる凹部を有するパッケージ内に固体撮像素子4を載置して固体撮像装置としても構わない。この場合、パッケージの凹部が本願で言う空間部に相当する。すなわち、セラミックなどからなるパッケージの凹部の底部に固体撮像素子4を載置し、凹部の開口部をマイクロレンズを形成したキャップガラス3にて、マイクロレンズが固体撮像素子4側に向くように封止しても構わない。
【0033】
また、封止部6の高さ、または、パッケージの凹部の深さは、光電変換素子1とマイクロレンズ2とのギャップ調整を兼ねるため、入射光が光電変換素子1に集光するよう適宜設定して構わない。さらに、封止部の材質は、所定の高さにての形成が容易で、かつ、形成後の高さの変動が少ないものを、適宜選択して構わない。また、カラーフィルタは、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)からなる補色系であっても構わず、固体撮像素子は、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)としても構わない。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・光電変換素子
2・・・・マイクロレンズ
3・・・・キャップガラス
4・・・・固体撮像素子
5・・・・電気配線部
6・・・・封止部
7・・・・カラーフィルタ
8・・・・遮光壁
9・・・・平坦化層
10・・・配線基板
12・・・固体撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子が形成された固体撮像素子が載置され、入射する光が前記光電変換素子に入射するよう固体撮像素子の上方に開放された空間部と、前記空間部の上方に設けられ入射光を透過するキャップガラスとを有する固体撮像装置において、前記キャップガラスの光電変換素子側の面に、光電変換素子に対応したマイクロレンズを配置したことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の固体撮像素子がリニアセンサーであることを特徴とする固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−77839(P2013−77839A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3246(P2013−3246)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2008−5553(P2008−5553)の分割
【原出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】