説明

固体燃料の製造方法及び装置

【課題】 処理量や水分量などの入口性状の変動が大きい下水汚泥などの有機廃棄物から、均一な性状の炭化物を安定的かつ効率良く得ることが可能な固体燃料の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】 有機廃棄物を、ロータリーキルン1の入口ゾーン21で、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度TS3より高い温度TS1にて加熱し、有機廃棄物中の水分を蒸発させ、その下流側の中間ゾーン22で中間的なキルンシェル温度TS2にて加熱し、有機廃棄物の熱分解を進行させ、その下流側の出口ゾーン23で、所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度TS3を維持し、有機廃棄物の熱分解を終結させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥などの有機廃棄物を加熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥は減容化、資源化を目的として焼却処理されていたが、焼却灰から得られる建設資材の需要や、埋め立て処理する用地の確保にも限界がある。一方、下水汚泥の組成は大部分が有機物であることから、加熱分解して得られた熱分解ガスを燃料ガスとして利用することや、炭化して固体燃料として利用することが検討されている。
【0003】
有機物質を加熱分解して燃料化する場合は、間接加熱式の熱分解炉、例えば外熱式ロータリーキルンに導入し、加熱ガスを混入させずに低酸素下で加熱分解して熱分解ガスや炭化物を回収する。ガス化を目的とする場合には、加熱温度(キルンシェル温度)を極力高く設定し、有機物質を効率的にガス化させる。一方、固体燃料化を目的とする場合には、ガス化する場合より低い温度で熱分解させて、炭化物に可燃分を残留させる必要がある。
【0004】
しかし、キルンシェル温度を低下させると、伝熱効率が低下するため、大きな伝熱面積が必要となり、キルンが長大化するうえ、処理に長時間を要することになり、非効率的である。したがって、処理物を効率良く加熱分解するためには、ある程度高温で加熱分解することが有利であるが、ロータリーキルンの回転数及び長さに依存した処理物の滞留時間は一定であるため、処理物の供給量や水分量の変動に伴い、炭化物の最終的な仕上がり温度が変化し、炭化物の性状が不均一となる問題がある。
【0005】
すなわち、図1に示されるように、処理量や水分量が減少した場合には、処理物の熱分解が早く開始し、炭化物の仕上がり温度Taが高くなるため、処理物が過度に炭化され残留する可燃分が少なくなってしまう。逆に、処理物の処理量や水分量が増大した場合には、熱分解の開始時期が遅れ、温度上昇の継続中(Tb)にキルン炉から排出されてしまうため、炭化が完了せず、燃料としての利用に適さなくなる。したがって、供給量や水分量などの入口性状の変動が大きい下水汚泥などの有機廃棄物から、均一な性状の固体燃料を安定的かつ効率良く得ることは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平9−210333号公報
【特許文献2】特開2000−283404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、処理量や水分量などの入口性状の変動が大きい下水汚泥などの有機廃棄物から、均一な性状の炭化物を安定的かつ効率良く得ることが可能な固体燃料の製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明者らは、下水汚泥の炭化特性を評価検証すべく、次のような試験を行なった。
【0009】
先ず、図2は、実験用の高温加熱炉を使用し、炉内温度をそれぞれ400℃、500℃の一定温度に保持して、汚泥サンプルを炭化した各場合における重量変化と温度変化を示すグラフである。いずれも、常温から100℃に達した後、熱分解の開始と共に再び温度が上昇し始めるまでの間に、水分の蒸発により重量が大きく減少し、その後、熱分解の進行と共に更に重量が減少するが、汚泥サンプルが炉内温度に到達した後には重量変化が無く、その温度に維持されている間は炭化が進行しないことが分かる。なお、図3は、上記実験によって得られた炭化物の可燃分残留率を示すグラフであり、炭化温度が高温になると、可燃分残留率の減少が顕著であることが検証された。
【0010】
一方、図4は、外熱式ロータリーキルンを使用し、キルンシェル温度を500℃に保持した状態で、含水率が一定(25%)の乾燥汚泥の処理量を、定格に対して−70%から+80%までの範囲で変動させ、各場合における炭化物の可燃分残留率を測定した試験結果を示すグラフである。この結果は、−70%から+80%までの大きな負荷変動に対して、炭化物の可燃分残留率の変化は±14%と極めて少ないことを示している。また、同じ装置を使用し、乾燥汚泥の処理量を一定にした状態で、含水率を定格に対して±20%の範囲で変動させる試験も行なったが、この場合にも炭化物の可燃分残留率の変化が殆ど無いことが確認された。
【0011】
以上のような試験結果に基づき、本発明者らが鋭意検討した結果、キルン出口に所定の温度ゾーンを設けておけば、そのゾーン内で処理物が所定温度に到達した後は排出されるまで炭化は進行しないので、処理量、水分量等の性状変動があっても均一な炭化度、熱量を有する炭化物が安定的に得られるという知見を得て本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造方法において、前記ロータリーキルンの入口ゾーンで、前記有機廃棄物を、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度より高い温度にて加熱し、前記有機廃棄物中の水分を蒸発させて熱分解を開始させ、前記ロータリーキルンの出口ゾーンで、前記所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度を維持し、前記有機廃棄物の熱分解を終結させることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造方法において、前記ロータリーキルンの入口ゾーンで、前記有機廃棄物を、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度より高い温度にて加熱し、前記有機廃棄物中の水分を蒸発させ、前記入口ゾーン下流側の中間ゾーンで、前記入口ゾーンのキルンシェル温度と、前記所望する可燃分残留率に対応した加熱温度との中間的なキルンシェル温度にて加熱し、前記有機廃棄物の熱分解を進行させ、前記中間ゾーン下流側の出口ゾーンで、前記所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度を維持し、前記有機廃棄物の熱分解を終結させることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造装置において、前記ロータリーキルンは、長手方向にキルンシェル温度が異なる複数のゾーンを有し、前記複数のゾーンのうち前記ロータリーキルンの出口側に位置した出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した温度域に維持し、かつ、前記出口ゾーンより上流側に位置したゾーンのキルンシェル温度を、前記所望する可燃分残留率に対応した温度より高い温度域に維持する温度制御手段を備えた。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記複数のゾーンは、前記ロータリーキルンの周囲に加熱ガスを流通させる外筒の内部を隔壁で区画することによって画成され、前記ロータリーキルンは、1系統の加熱ガスを前記各ゾーンに所定の流量比で配分するための加熱ガス分配手段と、前記1系統の加熱ガスの全流量を調節する加熱ガス量調節手段とをさらに備え、前記温度制御手段は、前記出口ゾーンのキルンシェル温度の計測値に基づいて前記加熱ガス量調節手段を制御し、前記出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した一定の温度域に維持するように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる固体燃料の製造方法によれば、ロータリーキルンの入口ゾーンで、有機廃棄物を、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度より高い温度で加熱することにより、有機廃棄物中の水分を短時間で効率良く蒸発させ、速やかに熱分解を開始させることができ、全体的な処理時間の短縮とロータリーキルンの小型化に寄与する。さらに、ロータリーキルンの出口ゾーンで、所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度が維持された状態で、有機廃棄物の熱分解を終結させることにより、有機廃棄物の処理量や水分量などの負荷変動に起因して、出口ゾーン内での熱分解の終結時期は前後するものの、その後、キルンから排出されるまで炭化は進行しないので、均一な炭化度、熱量を有する炭化物が安定的に得られる。したがって、処理量や水分量などの入口性状の変動が大きい下水汚泥などの有機廃棄物から、均一な性状の炭化物を安定的かつ効率良く得ることが可能となる。
【0017】
さらに、入口ゾーン下流側に中間ゾーンを設定し、該中間ゾーンにおいて、入口ゾーンと出口ゾーンの中間的なキルンシェル温度にて有機廃棄物を加熱し、中間的な加熱温度で熱分解を進行させるようにすれば、有機廃棄物の処理量や水分量が少ない場合に出口ゾーン到達前に熱分解が過度に進行するのを抑制でき、有機廃棄物の処理量や水分量などの負荷変動に対する安定性を一層向上できる。また、入口ゾーンのキルンシェル温度を、より高温に設定できるので、全体的な処理時間の短縮とロータリーキルンの小型化にも寄与できる。
【0018】
また、本発明は、有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造装置において、前記ロータリーキルンが、長手方向にキルンシェル温度が異なる複数のゾーンを有し、前記複数のゾーンのうち前記ロータリーキルンの出口側に位置した出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した温度域に維持し、かつ、前記出口ゾーンより上流側に位置したゾーンのキルンシェル温度を、前記所望する可燃分残留率に対応した温度より高い温度域に維持する温度制御手段を備えたので、処理量や水分量などの入口性状の変動が大きい下水汚泥などの有機廃棄物から、均一な性状の炭化物を安定的に得ることができるとともに、処理時間の短縮とロータリーキルンの小型化が可能となる。
【0019】
さらに、前記複数のゾーンが、前記ロータリーキルンの周囲に加熱ガスを流通させる外筒の内部を隔壁で区画することによって画成され、前記ロータリーキルンが、1系統の加熱ガスを前記各ゾーンに所定の流量比で配分するための加熱ガス分配手段と、前記1系統の加熱ガスの全流量を調節する加熱ガス量調節手段とを備え、前記温度制御手段が、前記出口ゾーンのキルンシェル温度の計測値に基づいて前記加熱ガス量調節手段を制御し、前記出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した一定の温度域に維持するように構成されている態様においては、予め各ゾーンの加熱ガス流量比を設定しておけば、1系統の加熱ガス流量を増減して出口ゾーンの温度を一定の温度域に維持する制御により、全てのゾーンのキルンシェル温度を管理でき、装置の構成および制御系を簡素化でき、低コストで安定的な制御を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図5は、本発明に係わる固体燃料の製造方法における、外熱式のロータリーキルンの各ゾーンにおける加熱温度TSと、処理物(炭化物)の温度Tとの関係を示している。図示例は、ロータリーキルンの長手方向(処理物移送方向)にキルンシェル温度TSが異なる3つのゾーン(TS1、TS2、TS3)を有する場合を示している。
【0021】
既に述べた通り、処理物がキルンシェル温度に対応した所定温度に到達した後は、排出されるまで炭化は進行しないことが確認されている。すなわち、最終的な炭化物に残留させる可燃分の残留率は、出口ゾーンにおける炭化温度Tcに支配される。したがって、キルンの内部での輻射、対流を含めた伝熱特性を考慮して、所望する炭化物の炭化温度Tcに対応した出口ゾーンのキルンシェル温度TS3を設定し、該キルンシェル温度TS3が一定となるように制御することで、均一な炭化度、熱量を有する炭化物が得られる。
【0022】
例えば、図4の試験結果から、出口ゾーンのキルンシェル温度TS3を500℃付近の温度域(450〜550℃)に保持すれば、可燃分残留率が20%程度の炭化物を得ることができ、その場合、図3の試験結果から、出口ゾーンでは400〜450℃の炭化温度Tcで、炭化が終結するものと考えられる。そこで、例えば、ロータリーキルン出口ゾーンのキルンシェル温度TS3の500℃に対して、中間ゾーンのキルンシェル温度TS2を600℃付近の温度域(550〜650℃)、入口ゾーンのキルンシェル温度TS1を700℃付近の温度域(650〜750℃)に設定し、処理物を入口ゾーンから中間ゾーン、出口ゾーンへと移送しながら加熱する。その場合、次のようなプロセスで炭化が進行することになる。
【0023】
先ず、キルンシェル温度TS1が700℃付近の最も高温の温度域に設定されている入口ゾーンに処理物が投入されると、固体燃料化する場合の一般的な加熱温度よりも高い温度下で処理物の水分が効率良く蒸発する。処理物の温度Tが100℃を維持し水分の蒸発が継続している状態で、処理物はキルンシェル温度TS2が600℃付近に設定されている中間ゾーンに移送され、水分の蒸発が完了すると処理物の温度Tが再び上昇し、処理物の熱分解が開始される。中間ゾーンのキルンシェル温度TS2は、入口ゾーンより低く設定されているが、処理物の熱分解が進行してキルン内部の負荷が減少するため、充分な加熱量となる。
【0024】
そして、処理物の熱分解が進行している状態で出口ゾーンに移送され、キルンシェル温度TS3が500℃付近の温度域に維持されている出口ゾーンを移動する間に、その加熱温度に応じた炭化度で熱分解が終結し、その炭化度を維持した状態でキルンから排出される。このようにして得られた炭化物は、所望する可燃分残留率を有し、燃料としての利用価値の高いものとなる。また、高温に設定されている入口ゾーンTS1で効率良く水分蒸発がなされたことにより、キルン全体が500℃付近の温度域に維持される場合に比べて処理時間を格段に短縮でき、かつ、キルン全長を短縮して小型化することが可能となる。
【0025】
さらに、処理物の水分量や処理量が増加し、図5にTbで示されるように、中間ゾーンTS2の終盤で熱分解が開始した場合にも、出口ゾーンの終端までに所定の炭化温度Tcに到達すれば、炭化物の品質は同様に維持される。一方、処理物の水分量や処理量が減少し、図5にTaで示されるように、中間ゾーンTS2から出口ゾーンTS3に移行する地点で所定の炭化温度Tcに到達してしまった場合にも、それ以後は炭化が進行しないので、炭化物の品質は同様に維持される。すなわち、処理物の水分量や処理量などの変動に対して、出口ゾーンTS3が負荷吸収ゾーンとして機能し、均一な性状の炭化物を安定的に得ることが可能となる。なお、上記の各設定温度は例であり、所望する可燃分の残留率や、処理を行なう有機系廃棄物の処理量や水分量などに応じて適宜設定され、かつ、制御を行なう際の温度域も負荷変動や制御の安定性を考慮して適宜設定可能である。
【0026】
次に、上記製造プロセスを実施する固体燃料の製造装置とその運転方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図6は、本発明に係わる固体燃料の製造装置を示しており、図において、固体燃料製造装置は、外熱式のロータリーキルン1を含み、このロータリーキルン1は、内筒11(キルンシェル)と、その周囲に加熱ガスを流通させる外筒12(マッフル)とを備えている。
【0028】
内筒11は、水平に対して僅かに傾斜した軸回りに回転自在に支持されるとともに、内壁部に、周方向に対して傾斜して配列された複数のフィン(またはスパイラル、図示せず)を備え、図示しない駆動源により所定の回転数で駆動回転されることにより、入口側から投入された処理物を加熱しながら出口側に所定の速度で移送可能である。内筒11の入口部には、処理物を投入するためのスクリューコンベア10が設けられ、内筒11の出口部にはシュート13が設けられている。
【0029】
外筒12の内壁部には、内部空間をキルン長手方向に3つのゾーンに区画する2箇所の隔壁14、15が周設され、外筒12の内部に入口ゾーン21、中間ゾーン22、出口ゾーン23の3つのゾーンが画成されている。これらの各ゾーン21、22、23は、周方向の一側、例えば、内筒11の側方において、キルン長手方向に延在する隔壁(図示せず)によって仕切られ、その仕切られた部分の下側に加熱ガスの導入部21a、22a、23aが設けられ、上側に加熱ガスの送出部21b、22b、23bが設けられており、各ゾーン21、22、23の導入部から送出部に至る独立した加熱ガス流路を形成している。
【0030】
上記各ゾーン21、22、23の導入部21a、22a、23aは、1系統の加熱ガス供給管20を介して加熱ガス燃焼炉2に連通している。具体的には、各導入部に沿ってキルン長手方向に延在する導入チャンバー(図示せず)が外筒12の側部に一体に設けられており、この導入チャンバーに加熱ガス供給管20が連結されている。
【0031】
上記各ゾーン21、22、23の送出部21b、22b、23bは、それぞれダンパ31、32、33を介して加熱ガス送出管24に連通され、該加熱ガス送出管24は図示しない熱交換器を経て、送風量を制御可能なファン4(加熱ガス量調節手段)に接続している。具体的には、上記各送出部21b、22b、23bに沿ってキルン長手方向に延在する送出チャンバー(図示せず)が設けられ、この送出チャンバーに加熱ガス送出管24が連結されており、前記各ダンパ31、32、33は、前記送出チャンバー内に開口する前記各送出部21b、22b、23bの開口に設けられている。
【0032】
前記各送出部21b、22b、23bの開口(加熱ガス分配手段)は、上記各ゾーン21、22、23に所定の流量比で加熱ガスが分配されるように、予め所定の開口度(有効流路断面積)に設定されている。すなわち、最も高温の入口ゾーン21に最も多量の加熱ガスが配分され、次いで、中間ゾーン22、出口ゾーン23の順に加熱ガス量が配分されるように開口度が設定され、その状態で各ダンパ31、32、33の開度を調整することにより、各ゾーン21、22、23の温度差を自在に設定可能である。
【0033】
外筒12の周壁部には、上記各ゾーン21、22、23における内筒11の外表面温度、すなわち、キルンシェル温度TS1、TS2、TS3を測定するための非接触式の温度計51、52、53が設けてあり、これらは、インジケータ(I)、レコーダ(R)、アラーム(A)の各機能を備え、さらに、出口ゾーン23に位置した温度計53(温度センサ)は、計測値に基づく制御信号をファン4に出力するコントローラ(C)の機能を備えている。非接触式の温度計としては放射温度計を利用できる。
【0034】
以上のように構成された固体燃料の製造装置は、ロータリーキルン1の出口ゾーン23のキルンシェル温度TS3が、所望する可燃分残留率に対応した温度域に維持されるように、温度計53の計測値に基づいてファン4の送風量を制御すれば、それに応じて各ゾーン21、22、23に加熱ガス量が傾斜配分され、各ゾーン21、22、23の温度差が維持される。この際、仮に加熱ガス量の変化と伝熱特性とがリニアな関係でなく、出口ゾーン23以外の入口ゾーン21および中間ゾーン22で、キルンシェル温度TS1、TS2が多少変動したとしても、それが炭化物の可燃分残留率などの最終的な品質に影響を与えないことは既に述べた通りである。
【0035】
次に、上記実施形態の製造装置における固体燃料の製造プロセスについて述べる。
【0036】
ロータリーキルン1の上流側には乾燥機3が配設されており、下水汚泥70は脱水された状態で乾燥機3に投入される。この乾燥機3において高温の雰囲気中で攪拌乾燥され所定の水分量に調整された乾燥汚泥71は、スクリューコンベア10によってロータリーキルン1の内筒11に導入される。ロータリーキルン1の入口ゾーン21は、所望する可燃分残留率に対応した加熱温度(TS3)より高いキルンシェル温度TS1に維持されており、この入口ゾーン21で乾燥汚泥中の水分を蒸発させる。
【0037】
次いで、入口ゾーン21の下流側の中間ゾーン22で中間的なキルンシェル温度TS2にて加熱し、乾燥汚泥の熱分解を進行させて炭化する。続いて、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度TS3に維持されている出口ゾーン23において熱分解を終結させ、所定の炭化度の炭化物72としてシュート13から排出され、この後、図示しない冷却コンベアで常温域まで冷却され、さらに加湿されることで、固体燃料が得られる。
【0038】
一方、熱分解によって発生した熱分解ガス73は、シュート13から乾燥ガス燃焼炉6に導入され、補助燃料61や加熱ガス送出管24にて熱交換された燃焼用空気と共に燃焼される。乾燥ガス燃焼炉6で発生した燃焼ガス62の一部は加熱ガス燃焼炉2に送られ、加熱ガス燃焼炉2にて補助燃料63と共に燃焼され、先述したロータリーキルン1の加熱に利用される。
【0039】
上記実施形態では、ロータリーキルン1の長手方向に沿ってキルンシェル温度の異なる3つのゾーン21,22、23を有する場合を示したが、中間ゾーン22を省略して、ロータリーキルン1の長手方向に沿って入口ゾーン21と出口ゾーン23の2つのゾーンのみを設けることもできる。その場合は、入口ゾーン21の温度を多少低めに設定するか、または、入口ゾーン21の長さを出口ゾーン23より短くして、処理量が少ない場合の過加熱を回避するようにしても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、加熱ガス分配手段として、送出部21b、22b、23bの開口度(固定)と、各ダンパ31、32、33の開度調節(可動)とを、併用する場合を示したが、送出部21b、22b、23bの開口度を均一にして、各ダンパ31、32、33の開度調節のみで加熱ガス量を傾斜配分することも可能である。またこれとは逆に、各ダンパ31、32、33を省略して、各送出部21b、22b、23bの開口のみで加熱ガス量を傾斜配分することも可能である。何れも制御できる温度範囲は狭くなるが、得られる固体燃料の炭化度、可燃分残留率等の品質に影響はない。
【0041】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の炭化炉における負荷変動時の加熱温度と炭化物温度との関係を示す図である。
【図2】汚泥サンプル炭化実験における重量変化と温度変化を示すグラフである。
【図3】汚泥サンプル炭化実験における可燃分残留率を示すグラフである。
【図4】乾燥汚泥の処理量の変動と可燃分残留率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明実施形態の固体燃料製造方法における負荷変動時の加熱温度と炭化物温度との関係を示す図である。
【図6】本発明実施形態の固体燃料製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ロータリーキルン
2 加熱ガス燃焼炉
3 乾燥機
4 ファン(加熱ガス量調節手段)
5 温度制御手段
6 乾燥ガス燃焼炉
10 スクリューコンベア
11 内筒(キルンシェル)
12 外筒(マッフル)
13 シュート
20 加熱ガス供給管
21 入口ゾーン
21a、22a、23a 導入部
21b、22b、23b 送出部(加熱ガス分配手段)
22 中間ゾーン
23 出口ゾーン
24 加熱ガス送出管
31、32、33 ダンパ(加熱ガス分配手段)
51、52、53 温度計
61、63 補助燃料
62 燃焼ガス
70 下水汚泥
71 乾燥汚泥
72 炭化物
73 熱分解ガス
T、Ta、Tb、Tc 炭化温度
TS、TS1、TS2、TS3 キルンシェル温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造方法において、前記ロータリーキルンの入口ゾーンで、前記有機廃棄物を、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度より高い温度にて加熱し、前記有機廃棄物中の水分を蒸発させて熱分解を開始させ、前記ロータリーキルンの出口ゾーンで、前記所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度を維持し、前記有機廃棄物の熱分解を終結させることを特徴とする固体燃料の製造方法。
【請求項2】
有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造方法において、前記ロータリーキルンの入口ゾーンで、前記有機廃棄物を、所望する可燃分残留率に対応したキルンシェル温度より高い温度にて加熱し、前記有機廃棄物中の水分を蒸発させ、前記入口ゾーン下流側の中間ゾーンで、前記入口ゾーンのキルンシェル温度と、前記所望する可燃分残留率に対応した加熱温度との中間的なキルンシェル温度にて加熱し、前記有機廃棄物の熱分解を進行させ、前記中間ゾーン下流側の出口ゾーンで、前記所望する可燃分残留率に対応した温度域にキルンシェル温度を維持し、前記有機廃棄物の熱分解を終結させることを特徴とする固体燃料の製造方法。
【請求項3】
有機廃棄物を外熱式ロータリーキルンで熱分解して炭化物を得る固体燃料の製造装置において、前記ロータリーキルンは、長手方向にキルンシェル温度が異なる複数のゾーンを有し、前記複数のゾーンのうち前記ロータリーキルンの出口側に位置した出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した温度域に維持し、かつ、前記出口ゾーンより上流側に位置したゾーンのキルンシェル温度を、前記所望する可燃分残留率に対応した温度より高い温度域に維持する温度制御手段を備えたことを特徴とする固体燃料の製造装置。
【請求項4】
前記複数のゾーンは、前記ロータリーキルンの周囲に加熱ガスを流通させる外筒の内部を隔壁で区画することによって画成され、前記ロータリーキルンは、1系統の加熱ガスを前記各ゾーンに所定の流量比で配分するための加熱ガス分配手段と、前記1系統の加熱ガスの全流量を調節する加熱ガス量調節手段とをさらに備え、前記温度制御手段は、前記出口ゾーンのキルンシェル温度の計測値に基づいて前記加熱ガス量調節手段を制御し、前記出口ゾーンのキルンシェル温度を、所望する可燃分残留率に対応した一定の温度域に維持するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の固体燃料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−184531(P2008−184531A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19063(P2007−19063)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】