説明

固体触媒物質をブレンドし、管状構造物に装填する方法

【課題】ブレンドされた固体物質の組成均一性、並びに量および配置の一貫性を最大化する方法で、固体物質をブレンドし、シェルアンドチューブ型反応器の管のような容器に装填する方法を提供する。
【解決手段】(A)管内に配置し、シェルアンドチューブ型反応器における望まれる領域を形成するための固体物質の異なるバッチを形成するのに必要とされる、固体物質の種類および量をリストアップする充填スケジュールを特定する。(B)異なるバッチの少なくとも1つを製造するために組み合わせ秤量装置100を使用する。(C)固体物質のバッチの少なくとも1つを複数の容器内にためることを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレンドされた固体物質の組成均一性、並びに量および配置の一貫性を最大化する方法で、固体物質をブレンドし、シェルアンドチューブ型反応器の管のような容器に装填する方法に関する。この固体物質は1種以上の固体触媒物質、1種以上の固体不活性物質またはこれらのブレンドを含む。
【背景技術】
【0002】
固体触媒物質は広範囲の化学物質製造プロセスに使用され、かつ1以上の反応区域を有する反応器を形成するためにプロセス容器内に、典型的に、装填され、注ぎ込まれ、配置されまたは他の方法で置かれる。反応区域においては、好適な反応条件下で反応物質は触媒物質と接触させられて、所望の生成物を生じさせる。最初に、新しい反応器には、制御された所定の方法で、未使用の新たな触媒物質、不活性固体物質、およびこれらの混合物が装填され、望まれる反応および生成物に必要な反応区域を組織し形成する。
【0003】
反応物質および操作条件に応じて変動する操作期間の後、反応器内の触媒物質の触媒活性は、反応器の操作がもはや経済的に効果的でなくまたは実現可能でない点まで下がる。この点において、「使い尽くされた」触媒および他の固体物質の1種以上は反応器から除去されなければならず、そして触媒および他の固体物質の新たな未使用の「充填物」が、反応器内に装填され、注ぎ込まれおよび配置されて、1以上の反応区域を再形成しなければならない。
【0004】
例えば、シェルアンドチューブ型熱交換器が、特定の化学反応プロセスを行うための反応区域を収容するプロセス容器として一般的に使用される。このようなシェルアンドチューブ型反応器は、酸化反応を行うために商業的規模で操作される場合には、一般的に互いに平行でかつシェルによってまとめて取り囲まれている非常に多数(例えば、3,000〜30,000)の伸長中空管を典型的に有する。各管の内径は一般的に0.75〜2.0インチ、約10から60フィート以上の長さである。それぞれの管は、管を通る反応物質および他のプロセス流体の通行のための入口および出口と(すなわち、反応容器の「管側」を通って)流体連絡している。必要な場合には、操作中に管およびその内容物を加熱または冷却するために、流体が反応器のシェル側を通って循環させられることができる。シェルアンドチューブ型反応器は、望まれる反応、全体的なプロセス、および反応器が配置される環境に応じて、垂直配向(すなわち、管が垂直に向けられており、反応流体が管を通って上方または下方に流れる)または水平配向(すなわち、管が水平に向けられており、反応流体が管側を通って水平に流れる)であることができる。
【0005】
当該技術分野において様々な化学反応プロセス配置も知られており、2種以上の触媒含有シェルアンドチューブ型熱交換器を直列で、場合によっては、中間供給物添加点および/または中間熱交換器を伴って含むことができる。このような直列のまたは「タンデム」反応システムの例は、例えば、米国特許第6,639,106B1号および第7,038,079号に記載されている。あるいは、単一の反応器シェル(SRS型)反応器を含むプロセス配置が利用されうる。SRS反応器は当該技術分野において周知であり、米国特許第6,384,274B1号および第4,256,783号に記載されている。SRS型反応器と直列の単一の反応器を含むプロセス配置も、本発明の意図から逸脱することなく使用されうる。
【0006】
触媒反応を行うために使用される場合、このようなシェルアンドチューブ型反応器のそれぞれは典型的には、管と管とで、同じ順番、パターンまたは組成で配置され、それにより、反応器の1以上の反応区域を集合的に形成する1種以上の固体触媒物質を含む。1種以上の固体触媒物質は典型的には、互いに、1種以上の固体不活性物質と、またはその双方と混合されて、触媒活性の異なる固体混合物を形成するだけでなく、所望の固体物質のより均一な混合物を得る。さらに、何ら活性触媒物質を含まない1種以上の固体不活性物質の混合物は、反応器管の少なくとも一部分を満たし、1種以上の触媒物質を収容する活性反応区域の上流に、下流に、または間に不活性区域を形成するように使用されることができる。
【0007】
本明細書において論じられる場合、用語、反応「区域」および反応「段階」は化学反応が起こる反応容器内の領域を意味するために一般的に使用され、一方、「不活性区域」は化学反応が促進されないまたは触媒されない領域である。より具体的には、用語、反応「段階」は、特定の所望の化学反応が行われ、触媒されまたは他の方法で促進される領域を説明するために使用される。一方、用語、反応「区域」は、物理的および操作特性、これに限定されないが、例えば、触媒活性、反応温度、滞留時間などのせいで、反応の条件が異なる領域を説明するために使用される。当業者に一般的に知られておりかつそのうちのいくつかが、本明細書において後にさらに詳述されるこれらの特性のそれぞれを変動させるために複数の技術が存在する。様々な目的のために、例えば、これに限定されないが、クエンチング、予備加熱、制御された冷却、反応速度の操作などのために、1以上の不活性区域が形成されうることも当該技術分野において周知である。さらに、不活性区域は、反応区域の上流、下流、または間に配置されることができ、そして当該技術分野の実施者によって望まれる場合には、不活性区域は互いに隣接して存在することができる。
【0008】
上記用語法に従って、具体的な反応段階は1以上の反応区域を含むことができる。例えば、エタンを脱水素化してエチレンを形成するような1つのみの化学反応メカニズムを伴う反応プロセスは、エタン供給物質がエチレン生成物に直接変換される単一反応段階で起こると称される。この反応は、多くの場合、クロムベースのまたはニッケル−アルミナベースの触媒のような好適な触媒物質の存在下で行われる。単一の反応段階は、例えば、単一の触媒物質(例えば、同じ組成、形状、サイズ、希釈など)を収容し、その体積全体にわたって同じ反応条件下(例えば、同じ温度もしくは圧力、または同程度の触媒密度など)で操作される、単一の反応区域を含むことができる。このような場合には、反応段階および反応区域は共存しており、これら用語は正当に同義語として使用されうる。
【0009】
あるいは、エタン脱水素化プロセスの反応段階は1より多い反応区域を含むことができ、これら反応区域のそれぞれにおいてはエタンは脱水素化されるが、これら反応区域は別の点で異なっている。例えば、第1の反応区域は100%クロムベースの触媒で満たされていることができ、一方、第2の反応区域は100%ニッケル−アルミナベース触媒を、またはさらにはクロムベースの触媒とニッケル−アルミナベースの触媒との混合物を含むことができる。あるいは、第2の反応区域は、第1の反応区域と同じクロムベースの触媒を含むことができ、そのかわりに、異なる反応温度で維持されることにより異なることができ、またはさらなる反応物質供給で供給される点で異なることができる。よって、エチレンへのエタンの変換のための脱水素化プロセスは、典型的には、多くの点で異なることができるが、全ての反応区域で同じ化学反応メカニズムが起こる、1以上の反応区域を含むことができる単一の反応段階を有するものとして説明される。
【0010】
別の例として、アクリル酸へのプロピレンの変換のための二段階触媒反応プロセスは、プロピレンがアクロレインに変換される第1の反応段階と第1の段階からのアクロレインがさらにアクリル酸に変換される第2の反応段階とを含む。典型的には、各反応段階は、そこでの所望の反応を触媒するのに好適な触媒物質、例えば、第1の反応段階におけるアクロレインへのプロピレンの変換のためのモリブデン−ビスマス−鉄ベースの触媒、および第2の反応段階における第1の段階のアクロレインのアクリル酸への変換のためのモリブデン−バナジウムベースの触媒などを収容する。さらに、ここで明確にされるべきように、第1および第2の反応段階のそれぞれは、各段階において、触媒物質の種類、組成または強度、反応温度などの点で互いに異なる1以上の異なる反応区域を含むことができる。さらに、第1の反応段階に存在する触媒組成物が「R1」触媒と称され、第2の反応段階において使用される触媒組成物が同様に「R2」触媒と称されうる種類の省略用語法が使用されうる。このような用語法は、本明細書において後に使用される。
【0011】
使い尽くされた触媒の効果的な除去のための方法および装置が知られている。反応器の管および固体物質自体への損傷を最小限にする除去方法および装置の改良は開発され続けている。例えば、米国特許第4,568,029号、第4,701,101号、第5,222,533号、第5,228,484号、第6,182,716号および第6,723,171号に記載される装置および方法を参照。固体触媒および他の物質をシェルアンドチューブ型反応器の管から取り外し除去するための近年開発された方法および装置が、欧州特許出願公開第1967260号に記載されており、これは移動可能なキャリア上に回転可能に取り付けられた1以上の中空ランスの使用を伴う。このキャリアは垂直に動かされる一方で、そのランスは軸回転させられる。キャリアの下方への垂直移動はランスの遠位末端を、垂直配向シェルアンドチューブ型反応器の対応する管の開口部に挿入させる。各中空ランスは、それが管にさらに挿入される場合に、ランスの回転中に固体物質に衝撃を与えこれを取り外すように形作られた硬質先端遠位末端を有する。取り外された固体物質の除去のために、各中空ランスに真空源が連結される。
【0012】
同様に、固体触媒物質および不活性物質をシェルアンドチューブ型反応器内に装填させるための様々な方法および装置が知られており、その全ては同じ一般的な工程を伴いそして問題に取り組む傾向がある。例えば、重要な予備工程は、不活性物質を伴うかまたは伴わない、シェルアンドチューブ型反応器における反応区域を形成するのに量的におよび質的に好適な1種以上の固体触媒組成物の合理的に均一な混合物の製造である。固体混合物がより均一になると、反応器の各管内においてその混合物から形成される反応区域がより一貫したものになるであろう。各管内で形成される反応区域がより一貫したものになると、反応器の各反応区域全体の反応条件がより均一になるであろうし、それにより、均一な品質の生成物を製造するのに効果的かつ予想可能な反応プロセスを確実にする。完全なまたは統計学的均一性は達成される必要がないことに留意されるべきである。管と管との変動が合理的な程度まで最小限にされる限りは、その反応器の反応区域の全体的な効率の良さが達成されるであろうし、かつその反応器の経済的な運転が可能になるであろう。もちろん、管と管とで、反応区域全体にわたる固体物質が完全な均一に近くなると、その反応区域で起こる反応がより効率良く、かつより予想可能になる。
【0013】
いくつかある要因の中で、具体的な反応、原料、プロセス装置、望まれる生成物および操作条件に応じて、これに限定されないが、組成、サイズ、色、形状、純度、触媒活性、表面積、温度耐性、および機械的一体性をはじめとする具体的な特性を有する1種以上の触媒が選択される。固体触媒物質は複数の個々のバッチ製造プロセスから得られることができ、よって、それらは実質的に同じ特性を有しているが、その特性の1以上がバッチ間で許容可能な範囲内で変動しうる。よって、固体触媒物質を互いに、およびさらには上述のような他の非触媒固体とブレンドし、特性の所望の組み合わせを有し、かつ所望の程度でのそれぞれの特性を有する固体物質のより均一な混合物を製造することが多くの場合有利である。このようなブレンド形成操作がこのような固体物質の混合物を効率よくかつ一貫して製造することが最も有利である。
【0014】
固体物質の合理的に均一なブレンド形成を達成するために様々な装置が開発されてきた。米国特許第4,285,602号は顆粒状熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンペレット)のような顆粒状物質の重力フローブレンド形成システムを記載する。米国特許第4,285,602号に示されるこのシステムはこのシステムからダストを除くためのダスト収集装置および出口ポート膜も含む。米国特許第4,907,892号および第4,978,227号は、物質を同伴するための加圧された気体状流体を用いてプラスチックペレットのような固体粒子状物質をブレンドし、主容器からの抜き出し速度と未使用フィードとを等しくすることができるように高さまたは重量で物質の量を測定する装置および方法の開示を提供する。米国特許第4,569,597号は、粉体または他の顆粒状物質のような固体を効率的かつ均一にブレンドする装置を記載する。この装置は、内部バッフルを有し、軸の周りに回転させられる。米国特許第4,553,849号は、複数の導管および場合によってはバッフルを使用して、ポリマーペレットのような固体粒子状物質をブレンドするための方法および装置を提供する。
【0015】
食品、洗剤粉体、医薬および金属部品のような他の固体物質のブレンド形成は、組み合わせ秤量方法および装置を使用して特に良好に達成されてきた。しかし、成分の均一性を達成することはこのような技術の着目点ではなかったので、このような技術から予想されてこなかったことに留意されたい。一般に、組み合わせ秤量方法は、全重量または数が所望の値に最も近い物品の組み合わせを選択することを伴い、かつ多くの場合、センサーおよびフィードバックループプログラミングと共にコンピューターアルゴリズムを使用して達成される。例えば、米国特許第4,661,917号、第4,858,708号、第5,050,064号、第5,962,816号、並びに日本国、京都の株式会社イシダおよびイリノイ州シカゴのトライアングルパッケージマシナリーカンパニー(Triangle Package Machinery Company)から商業的に入手可能な装置および方法を参照。このような組み合わせ秤量方法および装置は、多くの場合、固体物質を装置を通して動かすための振動手段を有する。組み合わせ秤量方法によって製造されたブレンドは、それぞれの種類の成分についてのその組成の一貫性について知られているが、各ブレンド全体の均一性については必ずしも知られていない。例えば、シリアルフレークとレーズンとのそれぞれの「ブレンド」は、バッチ間で、同じパーセンテージの各成分のを含むことが合理的に予想されうるが、各ブレンドされたバッチにおいて、シリアルフレークとレーズンとが互いに均一に混合されていることは必ずしも保証されていない。
【0016】
装填操作を始める前の固体物質の様々な混合物の量の正確かつ一貫した測定は、反応器の管への固体物質の一貫した逐次的な装填を容易にし、管内での固体物質の均一な配置を達成する。場合によっては、固体物質の混合物は、箱(bin)または袋のような一時的保持容器またはコンテナに装填される。これは、このような目的に適合した装置を用いて、一貫した、所定の、逐次的な順序で、後の反応器の管への物質の装填の工程を単純にしかつ速める。実際に、プラスチックペレット、粉体および食品をはじめとする固体物質をブレンドするための多くの上述の装置および方法は、所定のスケジュールに従って反応器管を満たすのに使用するための、それぞれが同じ量を有する、別々に包装されたまたは袋詰めされた固体物質の均一な混合物の複数のバッチ、すなわち「充填物」を製造するための既知の装置および方法と関連づけられる。
【0017】
固体物質の均一な混合物が管内に装填され、注ぎ込まれ、配置され、または他の方法で置かれて、プロセス容器の1以上の反応区域を形成する。本明細書においてすでに上述したように、この反応区域は、これに限定されないが、触媒活性、反応温度、滞留時間などをはじめとする1以上の特徴の点で互いに異なる。
【0018】
固体物質のそれぞれの混合物は管のそれぞれに同様に配置されるべきであり、すなわち、その混合物は互いに合理的に均一であるべきであり、かつそれぞれの管において、他の管に対して同じ体積および位置の領域を占めるべきである。明らかに、固体触媒物質および/または不活性物質の混合物が使用されて反応区域を形成する場合には、各反応区域全体での一貫しかつ予測可能な触媒活性および流体フローを確実にするために、固体物質の混合物ができるだけ一様かつ均一であることが必須である。言い換えれば、反応区域の適切な配置は、触媒および/または不活性物質の様々な混合物が管のそれぞれに、他の管に対して同じ量で、一貫して、所定の逐次的な順番で、一貫した密度および充填割合を有して提供され、配置されることを必要とする。さらに、反応区域を収容する各管または他の構成物が、実質的に同じ量および配置で、固体物質で満たされて、既知の体積および形状の反応区域および不活性区域の形成、並びに、それにより一貫した触媒活性および流体フローを確実にすることことが重要である。
【0019】
当業者に理解されるように、最適な反応器性能を達成するために、固体物質の一様かつ均一な混合物を有することを必要とするだけでなく、これらの混合物を反応器の各管に、管と管とで同じ順序および高さで一貫して均一に配置することにより管と管とで同じ配置を維持し、管と管との変動を最小限にすることも必要である。管と管との変動性に影響する鍵となる可変因子は、測定され制御されうる触媒装填速度である。触媒装填速度を制御する方法を開発するために、より多くの労力および探索が費やされてきた。
【0020】
もちろん、触媒および不活性物質のような固体物質を反応器管に手作業で、例えば、漏斗を通して触媒を注ぐことにより装填させることが可能であるが、当該技術分野において一般的に「触媒装填装置」と称される、機械化された装填装置を利用することが好ましい。触媒装填装置は管と管との変動を最小限にし、多くの場合、手作業の装填方法を超える装填速度の実質的な増大も提供するであろうし、このことは、反応器の管の全てに装填し、詰めるのに必要な時間を短くする。好適な触媒装填装置の例には、米国特許第5,626,455号に記載されている、固体触媒送達のための単一の管状部材を有する単一管装填装置、および米国特許第4,701,101号に開示されている、反応器に対応して位置あわせされた複数の管に固体触媒を送達するための複数の管状部材を有する複数管装填装置が挙げられる。米国特許第4,402,643号、第6,132,157号および第6,170,670号に記載されるもののような、振動部分、傾斜台、トレイなどを有する複数管触媒装填装置が特に有用であるが、その理由は、同時に複数の管に装填させるその能力だけでなく、その装填装置の振動周波数を変えることにより触媒装填速度が容易に調節されうるからでもある。
【0021】
触媒装填速度の周知の測定項目は、触媒の「落下速度」または「落下時間」である。落下速度は、装填される触媒の秒/リットルの単位で一般的に測定される。当該技術分野において周知であるように、最適な触媒装填速度は、以下の拮抗する目的:(a)反応器停止時間を最小にするようにできるだけ素早い装填、および(b)管内の触媒の均一分布を確実にするのに充分ゆっくりとした装填:のバランスを最も良くとるものである。粒子状固体が管内に非常に素早く装填される場合には、その粒子は衝突し、そしてその意図される蓄積点より上方の位置で、管内でつかえることとなる(一般的に、「ブリッジング」と称される)場合がある。
【0022】
反応器管内での粒子状固体のブリッジングは典型的には、当該「ブリッジ」より下の方の対応する空隙を伴い、結果的に、意図されるよりも少ない触媒が管内に装填されおよび/または予想される区域長さより長くなることとなる。管のこのような不均一な充填は結果的に、制御されていない、管長さに沿って変動しうる充填密度をもたらすであろうし、これは回避されるべきである。充填密度における制御されない変動は結果的にホットスポット、管と管との性能面での有意な変動、および一般的により低い生成物収率を生じさせうる。与えられた管における実際の区域長さ対目標区域長さの測定(一般的に、「アウトエージ(outage)測定」と称される)を通じて、不均一充填は一般的に検出されることができ;一般的には、区域長さ対目標長さにおける約5〜10%増大を超える増大が不均一充填の指標である。
【0023】
固体物質での管の不均一充填を検出するための他の一般的な方法は、その管を通る既知の参照ガスフローの圧力低下(dP)を測定することである。米国特許第6,694,802号は、複数の触媒収容管を通るdPを同時に測定するために使用される装置の例を開示する。本質的に同じ原理で機能する多くの他の装置が知られている。管と管とでの充填密度が許容可能な制限内であることを確実にするために、dPの測定は装填プロセスにおける任意の点で行われることができる。例えば、SRS型の反応器の装填において、反応器内に第1の反応段階の配置を完了した後にdPをチェックすることが一般的である。典型的には、所定の管が、測定される平均圧力低下値よりも約20%高いかまたは低い場合に、dP測定の変動は過剰であると見なされる。典型的には、与えられた管の圧力低下は、測定される平均圧力低下値よりも15%を超えて、例えば10%を超えて、より高いかまたはより低いべきではない。
【0024】
さらに、管のdP測定が使用される場合には、全ての場合において、全ての管の圧力低下を測定する必要がないことが当業者によって認識される。むしろ、品質制御目的には、管のランダムサンプリングで多くの場合充分であろう。管のランダムサンプリングが使用される場合には、管の25%以下がdP測定を受け、例えば、10%以下、または5%以下、またはさらには管の1%以下がdP測定を受ける。
【0025】
ある場合には、予想されるより大きい圧力低下が、触媒ブリッジングからではなく、触媒微粒子の蓄積、ダストおよび/または所定の管内のテイリングから生じる場合がある。この状況は多くの場合、ある体積の加圧された乾燥ガス(例えば、100〜120psig空気または窒素など)を管の一方の末端に吹き込み、管内に充填された固体物質を通し、管の反対側の末端から出し、それにより、フローを制限している可能性のある望まれない粒子を外に出すことにより矯正されうる。固体物質の装填中にこのようなダストおよび微粒子が管の中にはいることを避けるように、真空フード、スクリーニングトレイなど(例えば、米国特許第6,132,157号、第6,170,670号および米国特許出願公開第2006/0243342号を参照)のようなダスト除去手段を含む振動型触媒装填装置を利用することにより、触媒微粒子蓄積の程度は多くの場合最小化されることができる。本発明の方法に従って、任意のダスト除去手段が、組み合わせ秤量システム内で使用されて、固体物質の具体的な混合物中に含まれるダストをさらに少なくしても良い。
【0026】
所定の管について、過剰な圧力低下または予想されるより長い区域長さのような有意なブリッジングの指標が示される場合には、このブリッジを除去するのに充分な固体物質(触媒、不活性物質など)を除去し、次いでこれら除去された固体を同じ組成で未使用の固体物質と交換することが必要である。ブリッジングの回避は結局のところは、このような時間消費する矯正措置の使用に明らかに好ましい。よって、最低値よりも遅い落下速度はブリッジングも回避するであろうから、最低落下速度(秒/リットル)の知識は触媒装填中のブリッジングの回避の鍵である。
【0027】
ブリッジングの発生なしに使用されうる最も速い許容可能な落下速度は多くの要因、最も注目すべきは、装填される管の内径に対する触媒粒子のサイズ、触媒粒子の形状および粒子と粒子との不均一性に依存する。許容可能な落下速度に影響しうる他の要因には、個々の触媒粒子の密度、触媒粒子の表面仕上げ(または粗さ)、その粒子のもろさ、その粒子が凝集するまたは自己接着する傾向、並びに、その粒子が水分を吸収するまたは膨潤する傾向が挙げられる。同様の懸念事項は、反応器管に装填されうる固体触媒、不活性物質およびこれらのブレンドをはじめとする固体物質の全ての混合物に適用することは、もちろん、当業者に明らかであろう。
【0028】
最低落下速度に影響する多くの可変事項を考えると、様々な落下速度が当該技術分野において開示されてきたことは驚くべきことではない。例えば、米国特許出願公開第2006/0245992号は、様々な粒子状固体形状およびサイズが様々な最低落下時間を必要とすることを説明する。特に、内径25mmの管内に装填された直径8ミリメートルのセラミックボールは30秒/リットル以上の落下速度を必要とするが、直径8mmの触媒リングはそのセラミックボールの2倍の落下時間、すなわち、60秒/リットル以上の落下時間を必要とすることが報告されている。同様に、米国特許第5,626,455号においては、直径8mm(5/16インチ)×長さ9.5mm(3/8インチ)の銀触媒粒子が、内径3/4”から2”(19mm〜51mm)のエチレンオキシド反応器管内に、90秒/リットルの典型的な落下時間で装填されるうることが開示されている。
【0029】
この広範囲の落下速度を考えると、具体的な触媒装填状況についての粒子状固体の最小落下速度は、本発明に従って本明細書において後により詳しく記載されるであろう様に、典型的には、実験的に、ケースバイケースで、単純な試行錯誤実験によって決定される。本発明の方法によって製造されるもののような触媒ブレンドが装填される場合に、この実験の使用は特に好ましい、というのは、これらのブレンドの落下速度は、例えば、希釈された触媒充填における様々な形状の粒子の混合物間で起こりえるもののような、与えられた複合体粒子間相互作用を、他の手段によって予測するのが最も困難であろうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第6,639,106号明細書
【特許文献2】米国特許第7,038,079号明細書
【特許文献3】米国特許第6,384,274号明細書
【特許文献4】米国特許第4,256,783号明細書
【特許文献5】米国特許第4,568,029号明細書
【特許文献6】米国特許第4,701,101号明細書
【特許文献7】米国特許第5,222,533号明細書
【特許文献8】米国特許第5,228,484号明細書
【特許文献9】米国特許第6,182,716号明細書
【特許文献10】米国特許第6,723,171号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1967260号明細書
【特許文献12】米国特許第4,285,602号明細書
【特許文献13】米国特許第4,907,892号明細書
【特許文献14】米国特許第4,978,227号明細書
【特許文献15】米国特許第4,569,597号明細書
【特許文献16】米国特許第4,553,849号明細書
【特許文献17】米国特許第4,661,917号明細書
【特許文献18】米国特許第4,858,708号明細書
【特許文献19】米国特許第5,050,064号明細書
【特許文献20】米国特許第5,962,816号明細書
【特許文献21】米国特許第5,626,455号明細書
【特許文献22】米国特許第4,701,101号明細書
【特許文献23】米国特許第4,402,643号明細書
【特許文献24】米国特許第6,132,157号明細書
【特許文献25】米国特許第6,170,670号明細書
【特許文献26】米国特許第6,694,802号明細書
【特許文献27】米国特許第6,132,157号明細書
【特許文献28】米国特許第6,170,670号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2006/0243342号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2006/0245992号明細書
【特許文献31】米国特許第5,626,455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、組み合わせ秤量装置を使用して、それぞれが所定の量で少なくとも1種の固体触媒物質または固体不活性物質を含む、混合された固体物質の区別できる別個のバッチまたは充填物をブレンドし製造することにより、上記問題および要求に対処する。この混合された固体物質のバッチはまとめられ、後で管状反応器の管内に装填され、所望の化学反応を行うための様々な所望の反応区域を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は固体物質をブレンドし、シェルアンドチューブ型反応器の管に装填する方法を提供する。本方法は、管内に配置し、シェルアンドチューブ型反応器における望まれる領域を形成するための、固体物質の異なるバッチを形成するのに必要とされる固体物質の種類および量をリストアップする充填スケジュールを特定することを伴う。バッチのそれぞれは、固体触媒物質、固体不活性物質およびこれらのブレンドからなる群から選択される1種以上の物質を含む。本方法は、次いで、異なるバッチを製造するために組み合わせ秤量装置を使用することを必要とし、固体物質のそれぞれのバッチのためにブレンドされる固体触媒物質および固体不活性物質の種類および量は充填スケジュールに基づいて選択される。固体物質のバッチのそれぞれは複数の容器内にためられて、それぞれの容器は同じ量および割合の1種以上の固体物質を収容し、その量は充填スケジュールに基づいて決定される。前記複数の容器のそれぞれが、シェルアンドチューブ型反応器の管の数およびサイズによって決定される容器の総数を構成する。
【0033】
具体的な実施形態においては、本方法は、充填スケジュールによって指示された所定の順序に従って、それぞれの容器から、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管に固体物質のバッチを装填して、反応器内に望まれる領域を一貫して均一に形成する。
様々な実施形態が可能である。例えば、組み合わせ秤量装置は、固体物質がその装置を通って移動させられ互いにブレンドされる速度を変えるための調節可能な振動手段を含むことができる。組み合わせ秤量装置は、固体物質からのダストを集め除去し、それによりシェルアンドチューブ型反応器の管内のダストの望まれない蓄積を妨げるためのダスト収集手段を含むことができる。
容器は袋であることができ、組み合わせ秤量装置と共に袋詰め装置が使用されることができ、固体物質のバッチのそれぞれを複数の容器内にためる工程を達成することができる。
固体物質のバッチを前記容器のそれぞれから、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管に装填する工程は、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管と位置あわせされた1以上の管状部材を有する固体装填装置を用いて達成される。
【0034】
本発明の方法は、対応する不飽和カルボン酸を形成するためのアルケンの2段階酸化のための反応器を装填するためにさらに適用されうる。このような実施形態においては、対応する不飽和カルボン酸を形成するアルケンの2段階酸化を行うのに必要な物質の種類および量のリストを提供する充填スケジュールが選択され、望まれる領域は、アルケンが不飽和アルデヒドに変換される第1の反応段階および不飽和アルデヒドが対応する不飽和カルボン酸にさらに変換される第2の反応段階を含む。さらに、混合金属酸化物を含み、かつ不飽和アルデヒドへのアルケンの変換を触媒することができる少なくとも1種の触媒を第1の反応段階が含むことができ、混合金属酸化物を含み、かつ不飽和カルボン酸への不飽和アルデヒドの変換を触媒することができる少なくとも1種の触媒を第2の反応段階が含むことができる。第1のおよび第2の反応段階のいずれかまたは両方は1つまたは複数の反応区域を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の方法を用いて、2段階、3区域触媒充填スケジュールが作り出されているシェルアンドチューブ型反応器の単一の管の立断面概略図である。
【図2A】図2Aは、本発明の方法を用いて、2段階、4区域触媒充填スケジュールが作り出されているシェルアンドチューブ型反応器の単一の管の立断面概略図である。
【図2B】図2Bは、図1および2Aの管内の固体物質を保持するために使用される触媒クリップの上面図である。
【図3】図3は、本発明の方法に従って使用される、ダスト収集装置および袋詰め装置オプションを備えた組み合わせ秤量装置システムの説明概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書において後に論じられる実施形態から、および添付の図面を参照して、本発明のさらなる完全な理解が得られるであろう。図面中の同様の参照番号は同様の特徴を示す。
【0037】
本発明の方法は、ブレンドされた固体物質の組成均一性並びに量および配置の一貫性を最大化する方法で、固体物質をブレンドし、容器内、例えば、シェルアンドチューブ型反応器の管内に装填するのに好適である。固体物質は、1種以上の固体触媒物質、1種以上の固体不活性物質またはこれらのブレンドを含む。
【0038】
より具体的には、本発明は固体物質をブレンドし、シェルアンドチューブ型反応器の管に装填する方法を提供する。本方法は、管内に配置し、シェルアンドチューブ型反応器における望まれる領域を形成するための、固体物質の異なるバッチを形成するのに必要とされる固体物質の種類および量をリストアップする充填スケジュールを特定することを伴う。バッチのそれぞれは、固体触媒物質、固体不活性物質およびこれらのブレンドからなる群から選択される1種以上の物質を含む。1種以上の固体触媒物質および1種以上の不活性物質が存在することができる。どのような種類の製品が望まれ、およびどのような出発物質が使用されるか(このことは、ひいては、反応プロセスによってどのような化学反応が行われるかを決定づける)に基づいて望まれる領域が決定される。どのプロセス、製品および出発物質が使用されるかに関連するこのような選択および決定の全ては、典型的に、プロセス設計段階における早期に日常的にこのような判断を行う当業者のような産業界における実施者に対して周知かつ理解される。
【0039】
本発明に従った方法は、異なるバッチを生じさせるために組み合わせ秤量装置を使用し、固体物質のそれぞれのバッチのためにブレンドされる固体触媒物質および固体不活性物質の種類および量は充填スケジュールに基づいて選択される。固体物質のバッチのそれぞれは複数の容器内にためられて、各容器は同じ量および割合の1種以上の固体物質を収容し、その量は充填スケジュールに基づいて決定される。当該複数の容器のそれぞれは、シェルアンドチューブ型反応器の管の数およびサイズによって決定される容器の総数を構成する。最終的に、本方法は、充填スケジュールによって指示された所定の順序に従って、各容器から、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管へ、固体物質のバッチを装填するのを命じ、反応器内の望まれる領域を一貫して均一に形成する。
【0040】
本発明の方法は具体的な反応プロセスに使用するのに限定されず、むしろ、本発明の方法は多くの反応システムにおける何らかの既知の固体粒子状触媒および/または固体不活性物質と共に使用されうる。本発明の方法が適用可能である触媒およびその関連する酸化生成プロセスの従来例には、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:
(1)必須成分として銀を含み、気相でエチレンを酸化することによるエチレンオキシドの製造に有用な触媒(例えば、特開昭63−116743号、特開昭62−4444号、特開平5−329368号、特開平10−510212号および特開平5−84440号);
(2)必須成分としてモリブデン、ビスマスおよび鉄を含み、プロピレン、イソブチレン、tert−ブタノールおよび/またはメチルtert−ブチルエーテルを気相で酸化することによる(メタ)アクロレインおよび(メタ)アクリル酸の製造に有用な触媒(例えば、特開昭50−13308号、特開平1−56634号、特公昭56−52013号、特公昭56−23969号および特開昭59−76541号);
(3)必須成分としてモリブデンおよびバナジウムを含み、アクロレインを気相で酸化することによるアクリル酸の製造に有用な触媒(例えば、特公昭49−11371号、特開昭52−85091号、特開平6−279030および特開平
−299797号);
(4)必須成分としてモリブデンおよびリンを含み、メタクロレインを気相で酸化することによるメタクリル酸の製造に有用な触媒(例えば、特公昭60−33539号、特公平3−26101号および特開昭59−12758号);
(5)必須成分としてバナジウムおよびチタンを含み、o−キシレンおよび/またはナフタレンを気相で酸化することによる無水フタル酸の製造に有用な触媒(例えば、特公平7−29056号および特公昭58−15176号);
(6)必須成分としてモリブデンを含み、ベンゼンを気相で酸化することによる無水マレイン酸の製造に有用な触媒(例えば、特開昭62−78号);
(7)必須成分としてリンおよびバナジウムを含み、n−ブタンを気相で酸化することによる無水マレイン酸の製造に有用な触媒(例えば、特開平10−167711号、特開平7−51573号、特開平5−115783号および特開昭50−35088号);
(8)必須成分としてモリブデンを含み、プロパンを気相で酸化することによるプロピレン、アクロレインおよび/またはアクリル酸の製造に有用な触媒(例えば、特開平9−316023号、特開平10−57813号および特開平10−120617号);
(9)必須成分としてバナジウムを含み、デュレンを気相で酸化することによる無水ピロメリット酸の製造に有用な触媒;
(10)固定床シェルアンドチューブ型反応器に充填することにより、気相触媒酸化反応に使用される他の固体粒子状触媒。
【0041】
本発明に関連して使用するのに好適な触媒は、気相触媒酸化反応に使用される上記固体粒子状触媒(1)〜(10)に特に限定されず、他の反応に、例えば、限定されないが、アンモ酸化反応、水素化反応および脱水素化反応などに使用される他の固体粒子状触媒も本発明に従って好適でもある。
例えば、第VIII族貴金属、第IA族および/または第IIA族成分を必須成分として含み、アルケンへのアルカンの酸化的脱水素化(ODH)(米国特許第4,788,371号参照)、例えば、プロピレンへのプロパンの変換などに有用な触媒(米国特許出願公開第2008/0177117号参照)。
金およびパラジウムを必須成分として含み、エチレン、酸素および酢酸の気相での反応による酢酸ビニルモノマー(VAM)の製造に有用な触媒(例えば、米国特許第5808136号、第5859287号および第6013834号参照)。
【0042】
より一般的には、例えば、限定されないが、商業的規模のシェルアンドチューブ型触媒反応システムは、典型的に、その管内に粒子状固体触媒および不活性物質を使用する。ブレンドされた触媒混合物の使用は改良された反応器生産性および収率のための機会を提供するが、実際には、大スケールの商業的反応システムに関するこのような利点を実現するのに充分な均一性の混合物を達成するのは非常に困難であった。当該技術分野において従来から理解されているように、完全な均一性が達成される必要はないが、実質的な均一性は必要とされる。
【0043】
固体の信頼できるブレンド形成は、概して、非常に困難であり、そして、物質を混合する既知の方法は、望まれる均一な混合物を製造するのとはほど遠い傾向がある。粒子状固体を均一にブレンドすることは特に困難であり、粉体の固体をブレンドすることはさらにより困難である。
【0044】
用語「ブレンド」および「混合物」は本明細書においては交換可能に使用され、1種より多い固体物質、例えば、組成、活性、形状、サイズなどが異なる2種以上の触媒、または少なくとも1種の触媒と少なくとも1種の不活性物質、または組成、形状、サイズなどが異なる2種以上の不活性物質などを含む、ある量の固体物質を意味することに留意されたい。本発明に従って、固体物質の様々なブレンドおよび混合物を生じさせるための組み合わせ秤量装置(combinatorial weighing machine)の使用は、同時に、それぞれの種類の固体物質の望まれる量の組み合わせと、固体物質が一緒にされた後での、その後の固体の機械的混合または攪拌なしでの固体物質の充分な混合とを同時に達成することが理解されるべきである。
【0045】
触媒物質を反応器に装填するための当該技術分野において知られているバルク触媒装填装置(loader)は、固体触媒および/または不活性固体の混合物を信頼できるようにブレンドすることができず、反応器の管内の充分に均一な反応区域を達成することができない。
【0046】
触媒および/または不活性物質をあらかじめブレンドすることは、潜在的により良い解決策であるが、今までは、攪拌、タンブリングおよび振動のような機械的混合手段に依拠しなければならず、これらは粒子状固体の真に均一な混合物を達成するには不充分であり;さらには、このような機械的混合手段は、多くの場合脆くおよび/または砕けやすい触媒および不活性物質を損傷させ/バラバラにし/砕く傾向があり、触媒微粒子/ダストを触媒充填物に導入し、そして反応システム内の圧力低下を大きくすることが知られていた。
【0047】
プラスチック袋のような容器内にあらかじめ包装された触媒は商業的な供給者から購入されうる。先に示したように、このようにあらかじめ包装されている触媒は、触媒のより容易な取り扱いおよび反応器管への触媒物質のより効率的な装填を可能にする。このような市販のあらかじめ包装された充填物の典型的な重量変動率は約±5%、または名目2000グラムの充填重量あたり約±120グラムである。これは重量変動率の望ましくなく高い水準であり、結果的に、反応区域長さ、反応区域活性の望ましくない不均一性、および最終的に低減された反応器性能についての、管と管とで高い変動率をもたらすであろう。さらに、このようなあらかじめ包装された充填物を準備するための手作業でのプロセスは時間がかかり、1つの袋あたり1〜10分を必要とする。反応器に装填するために触媒の何万もの袋が必要とされる場合には、これは、触媒購入価格の有意なコスト要因でありうる。さらなる手入れ、繰り返しの重量測定および多くの調節工程(充填中の容器に/容器から、触媒の一部分を追加/除去する)を用いて、重量変動率を±2%、または2000グラムの充填重量あたり±40グラムまで低減することが可能であるが;これは、依然として、管と管との有意な変動率を表し、それぞれの袋を準備するのに必要な時間は実質的に長くなり、このことは結果的に、もちろん、購入者に渡される触媒のコストをより高くする。
【0048】
本発明の方法に従って、組み合わせ秤量および袋詰め装置システムを使用することにより、手作業の袋詰め方法よりも実質的により低い重量変動率、例えば、各袋に望まれる総重量に基づいて±1%を超えない重量変動率を達成することが可能である。実施例1に詳述されるように、±3グラム以内の重量変動率、または約±0.2%にすぎない重量変動率を有する2000グラムの触媒充填物が本発明の方法に従って製造される。さらに、本発明の方法は、35袋/分以上の速度でこの仕事を行うことができる。よって、本発明の方法は、酸化反応器に装填するのに好適かつ準備ができている触媒の袋を得るための極度にコスト効果的な手段を提供する。すなわち、本方法は、本発明の方法を利用することにより、あらかじめ袋詰めされた触媒よりも低コストなバルクでの触媒物質の購入を可能にし、充填物あたり極度に低い重量変動率の触媒の数千の袋が素早くかつコスト効果的に製造されうる。
【0049】
よって、出願人は、食品包装産業において典型的に使用されるもののような、組み合わせ秤量装置の使用が、このような非常に望ましい実質的に均一な粒子状固体ブレンドを製造するために成功裏に使用されうることを見いだした。さらに、本出願人は、このようなブレンドが素早く効率的に製造されることができ、かつ触媒取り扱いプロセスに組み込まれて、既知の触媒装填装置と共に使用するのに好適なあらかじめ測定された袋詰めされた触媒充填物を生じさせうることを見いだした。
【0050】
従来存在しており使用されていた混合技術は、触媒または不活性物質を損傷することもなく固体物質および不活性物質を充分に均一にブレンドすることを達成していなかった。さらに、重量基準なので、組み合わせ秤量装置を用いたブレンド形成の方法は、触媒凝集、粒子間表面摩擦、または水分捕捉による粒子膨潤から生じる誤差に対する許容性が実質的に低い。この方法の全体的な結果は、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、酢酸ビニルモノマーなどのような商業規模反応システムのための最適化された充填スケジュールにおいて使用される無限の数の粒子状触媒ブレンドを生じさせるのがここでは可能であるということである。
【0051】
本発明の方法に従って使用されうる組み合わせ秤量装置の例としては、日本国、京都の株式会社イシダ;日本国、明石の大和製衡株式会社;米国、コネティカット州、スタンフォードスプリングスの、パッケージマシナリーカンパニー(Package Machinery Co.);米国、イリノイ州シカゴのトライアングルパッケージマシナリー;および、ドイツ国、ブッツバックのハッシアレダトロン(Hassia−Redatron)が挙げられる。組み合わせ秤量システムを湿度制御環境下に組み込み、触媒粒子による水分吸収の可能性を最小にすることが有利である、というのは、このことは、漸増する重量増加およびシステムはかりにおける重量の決定に悪影響をもたらす場合があるからである。
【0052】
本発明の方法は、本明細書において以下に、組み合わせ秤量装置が成功裏に使用されて、異なるサイズ、形状、および粒子密度の触媒および不活性物質を信頼性高くかつ一貫してブレンドして、実質的に均一な混合物を達成する詳細な例において、さらに詳述される。
【実施例】
【0053】
実施例1(ロットブレンド例)
日本国の日本化薬株式会社から市販されている、YX−38.52DU(R1タイプ)酸化触媒の10ロットがこの実施例において使用された。触媒の各ロットは約230kgの触媒ペレットを含んでおり、それ自体の独自に番号が付けられたドラム缶に収容されていた。約80グラムのサンプルが各ドラム缶(ロット)から取り出され、プロピレン変換率を決定するために実験室規模の反応システムにおいて独立して試験された。比較目的のために、全てのサンプルは一定の条件で、同じ反応温度、圧力、空間速度、流れの時間(time−on−stream)、プロピレン濃度、およびプロピレン:空気:流れ供給比率で試験された。結果は以下の通りであった:
【0054】
【表1】

【0055】
商業的規模の反応システムにおいてより均一な触媒性能を達成するために、これら10ロットは、本発明の方法に従って組み合わせ秤量システムを用いて一緒にブレンドされて、図1に示される例示的な商業的規模の反応器の第1の反応段階(11)において使用するための2,180kgの均一な「R1Z1」触媒混合物(100%触媒ペレット)を生じさせた。この均一なR1Z1触媒混合物は97.755%のブレンドされたプロピレン変換率を有していた。この操作の目的は、2040.6g/充填物の目標重量を有する触媒混合物の完全な充填物を生じさせ、そしてこのように製造された各充填物を密封ポリエチレン袋内に配置することであった。この実施例において、システム設定を調節することによりブレンディングが増大させられ、1回のはかりサイクルにつき半分の充填物(1020.3グラム)を生じさせ、1袋につき2回のはかりサイクルを使用した。
【0056】
この実施例において使用された組み合わせ秤量システムは、図3に概略的に示される。それは、モデルSB62PR垂直形成/充填/密封(f/f/s)袋詰め装置(120)と組み合わせた、オプションのダスト収集装置を備えるセレクタコム(Selectacom)モデルA918H1RNインライン秤量装置(100)であり;両方の機械は、米国、イリノイ州、シカゴのトライアングルパッケージマシナリーカンパニーから入手可能であり、乾燥シリアルのような固体食品を包装するために構成され適合されたものに類似する。組み立てられた場合に、左の供給トレイン(train)(104、105、106)および右の供給トレイン(101、102、103)は物質を連続的に秤量装置(100)の頂部に供給し;触媒ペレットが秤量装置を通って下方に垂直に移動し、袋詰め装置の底から触媒混合物の袋詰めされた充填物(150a、150b、150c)として出るように、秤量装置(100)は袋詰め装置(120)の上に位置する。全体的なシステムは、単一の一般的なコンピューター制御装置モジュール(110)を使用して構成される。この実施例においては、コンピューター制御装置(110)は「単一生成物」モードでの操作を可能にする様に調節される。
【0057】
ドラム缶内の触媒を、組み合わせ秤量システムのベースでの、2つの大きな供給ホッパー(101、104)に(5つのドラム缶分をそれぞれのホッパーに)移すための任意のドラム放出ユニット(示されていない)がこの実施例において利用された。明確化の目的のために、ホッパー(101)内に配置された物質はこの実施例においては「触媒R」と称され、ホッパー(104)内に配置された物質は「触媒L」と称される。
【0058】
システムの開始の際に、左の供給トレインおよび右の供給トレインは、2つの触媒流れの使用速度でのペースを維持するのに充分な速度で独立して操作された。この場合には、コンベア(102、105)は連続的に触媒ペレットをそれぞれの大きな供給ホッパーから、このシステムの頂部の2つの小さなホッパー(103、106)に移した。存在する何らかのダストは、任意の統合された吸引システム(示されていない)を介して、このホッパーおよびコンベアから連続的に除去された。小さなホッパー(103、106)は触媒ペレットを9つの振動型供給装置(vibrating feeders)(121、122、123、124、125、126、127、128、129)に移し、それぞれは、制御装置(110)を介して独立に調節されて、特定の振幅で機能する。この実施例においては、具体的な振幅設定は次の通りであった:
【0059】
【表2】

【0060】
これらの振動型供給装置は触媒ペレットをその振幅設定に応じた速度で蓄積装置(107a、107b、107c、107d、107e、107f、107g、107h、107i)に送達し、より大きな振幅値は、単位時間あたりより多量の触媒ペレットを蓄積装置に送達し、より小さな振幅値設定は、単位時間あたりより少ない量の触媒ペレットを蓄積装置に送達し;この具体的な場合において、左側の供給装置(121、122、123、124)は触媒Lのペレットを4つの蓄積装置(107a、107b、107c、107d)に移し、右側の供給装置(125、126、127、128、129)は触媒Rのペレットを残りの5つの蓄積装置(107e、107f、107g、107h、107i)に移した。振動型供給装置は単一の同じ振幅設定ではなく、振幅設定の範囲で設定されたので、重量変動率は故意に各蓄積装置に組み込まれてブレンド形成を増大させ;このシステムを用いた実験を通じて、本出願人は、平均設定に対して、個々の振幅設定における約5および10%の変動率だけが良好な結果を提供するのに充分であったことを決定した。4つの左側の供給装置(121、122、123、124)の平均振幅は、それぞれの側の供給装置の異なる数を補償するために、5つの右側の供給装置(125、126、127、128、129)の平均振幅よりも大きいべきであることに留意されるべきである。
【0061】
満たされた後で、それぞれの蓄積装置は、次いで、同時にその内容物を、その直下の9つのはかりのうちの1つに移し、結果的に、触媒L(108a、108b、108c、108d)を収容する4つのはかりおよび触媒Rを収容する5つのはかり(108e、108f、108g、108h、108i)を生じさせた。それぞれのはかり中のペレットの重量を決定した後、これらはかりは物質を18つのホルダー(109a、109b、109c、109d、109e、109f、109g、109h、109i、109j、109k、109l、109m、109n、109o、109p、109q、109r)のうちの9つに落とし;これらの工程は2回繰り返されて、残りの9つのホルダーを満たした。
【0062】
次いで、コンピューター制御装置(110)は、一緒にされるときに1020.3グラムの目標重量に最も近い適合を達成する18個の個々の重量の最適のサブセットを選択した。これら選択されたホルダーは、次いで、同時に開いて、触媒の充填物の半分を作り出すのに充分なペレットを排出ポート(115)に放出し、選択されたホルダーから排出ポートへのペレットの放出は1回の秤量サイクルの終わりを意味する。
【0063】
次いで、さらなる触媒ペレットが蓄積装置およびはかりを通って動かされ、空になったホルダーを再び満たし、重量最適化および放出工程が繰り返され、別の1回の秤量サイクルの終わりを示す。上述のように、このシステムはこの実施例において、1回の秤量サイクルにつき半分の充填物(1020.3グラム)の触媒混合物を放出し、そして、触媒混合物の1袋につき2回の秤量サイクルを使用して、それにより、2040.6グラムの目標充填重量を有する触媒混合物の袋を生じさせる。秤量装置(100)の下で、垂直f/f/s袋詰め装置(120)は供給ロール(示されていない)から連続的にポリエチレン膜を引き込み、それを直径9インチ(22.9cm)の円筒に形作り、その円筒を垂直に接着して管を形成し、次いで、底部端で管を水平に接着して、排出ポート(115)の下に袋を形成する。制御装置(110)は長さ12インチ(30.5cm)で、望まれる充填体積を保持するのに充分な袋を生じさせるようにプログラムされた。形成された袋は、次いで、触媒の上記単一ブレンド充填物(130)で満たされ、頂部は水平に密封されて、触媒の完成した袋は切り離され(残りの端部が次の袋の底部になる)および完成した袋はコンベアベルト(140)上で袋詰め装置を出た。それぞれの連続した完成した袋(150a、150b、150c)は目視で検査されて、手作業で貯蔵ドラム缶(示されていない)に入れられた。このシステムは、このやり方の操作を、1050を超える袋詰めされた触媒充填物を、約35袋/分の速度で、大きな供給ホッパー(101、104)が空になるまで続けた。この操作が進行したら、約3.5分の時間間隔で、8つの完成した袋がコンベアベルトから取り出され、品質制御サンプルとして供される。各サンプル袋の内容物は個々に風袋容器に注ぎ込まれて、秤量された。
【0064】
【表3】

【0065】
表1Bは、サンプルの測定された重量を、目標重量と比較し;本発明の方法は、無視できる重量の変動率で、再現可能に触媒充填物を提供することがこのデータから明らかである。
【0066】
この実施例は、単一工程でのロットのブレンド形成を示すが、もちろん、この同じプロセスを用いて、第1のブレンドが個々の袋ではなくバルク容器にためられ、次いで、供給ホッパーに戻されて、引き続いてさらなる物質とブレンドされるマルチパスブレンドを作り出すことが可能である。
【0067】
実施例2(希釈例の均一性例)
本発明の方法に従って、実施例の商業規模の反応器の第2の反応段階において使用するために、均一な「R2Z1」触媒混合物(75重量%触媒ペレット/25重量%希釈剤)が製造された。このR2Z1触媒混合物は、図1に示されるように、第2の反応段階(21)の上流区域に配置されるものである。
実施例1に記載され、図3に示される同じ組み合わせ秤量システムがここでも使用される。この実施例における具体的な触媒は、T−202.52XS3(R2タイプ)であり、および希釈剤はIB−1000直径5mm不活性球体であり、双方とも日本化薬株式会社から市販されている。
触媒混合物の主成分である触媒は、組み合わせ秤量システムのベースにある右側の大きな供給ホッパー(101)に配置され、触媒混合物の少ない方の成分である希釈剤は左側の大きな供給ホッパー(104)に配置された。このはかりのコンピューター制御装置(110)が調節されて、「2生成物」モードでの操作を可能にし、希釈剤の目標パーセンテージは25%にセットされた。さらに、システム設定は調節されて、1回の秤量サイクルにつき全充填物(566.5グラム目標重量)を生じさせ、および1袋につき1回の秤量サイクルを使用した。
【0068】
このシステムを開始させる際に、コンベア(102、105)は連続的に触媒ペレットおよび希釈剤を大きなホッパーから、このシステムの頂部の2つの小さなホッパー(103、106)に移した。左の供給トレイン(104、105、106)および右の供給トレイン(101、102、103)は、2つの流れの使用速度でのペースを維持するのに充分な速度で独立して操作された。存在する何らかのダストは、任意の統合された吸引システム(示されていない)を介して、このホッパーおよびコンベアから連続的に除去された。
小さなホッパー(103および106)は触媒ペレットを9つの振動型供給装置(121、122、123、124、125、126、127、128、129)に移し、それぞれは、制御装置(110)を介して独立に調節されて、特定の振幅で機能する。この実施例においては、具体的な振幅設定は次の通りであった:
【0069】
【表4】

【0070】
これらの振動型供給装置は触媒ペレットをその振幅設定に応じた速度で蓄積装置(107a、107b、107c、107d、107e、107f、107g、107h、107i)に送達し;この具体的な場合において、左側の供給装置(121、122、123、124)は希釈剤のペレットを4つの蓄積装置(107a、107b、107c、107d)に移し、右側の供給装置(125、126、127、128、129)は触媒のペレットを残りの5つの蓄積装置(107e、107f、107g、107h、107i)に移した。振動型供給装置は単一の同じ振幅設定ではなく、振幅設定の範囲で設定されたので、重量変動率は故意に各蓄積装置に組み込まれて、選択するための制御装置についてのより広い範囲の重量選択を提供し、それにより、重量正確性を向上させる。このシステムを用いた実験を通じて、本出願人は、5つの右側の供給装置内の単一の振動装置の振幅を平均値の1.5〜2倍の値に設定することが特に良好な重量正確性を提供することを決定した。
【0071】
次いで、蓄積装置は、同時にその内容物を、その直下の9つのはかり(108a、108b、108c、108d、108e、108f、108g、108h、108i)に移し、結果的に、希釈剤(108a、108b、108c、108d)を収容する4つのはかりおよび触媒を収容する5つのはかり(108e、108f、108g、108h、108i)を生じさせた。それぞれのはかり中の粒子状物質の重量を決定した後、これらはかりはその物質を18個のホルダー(109a、109b、109c、109d、109e、109f、109g、109h、109i、109j、109k、109l、109m、109n、109o、109p、109q、109r)のうちの9つに落とし;これらの工程は繰り返されて、2回目に残りの9つのホルダーを満たした。
【0072】
次いで、コンピューター制御装置(110)は、一緒にされる場合に、566.5グラムの目標重量に最も近い適合を達成する18個の個々の重量の最適のサブセットを選択し、一方で、424.875グラムの触媒および141.625グラムの希釈剤の必要とされる重量比に最も近い適合を同時に提供し;これら選択されたホルダーは、次いで、同時に開いて、触媒のブレンドされた1つの充填物を作り出すのに充分な粒子状固体を排出ポート(115)に放出した。次いで、さらなる粒子状物質が蓄積装置およびはかりを通って動かされ、空になったホルダーを再びみたし、重量最適化および放出サイクルが繰り返された。上述のように、このシステムはこの実施例において、1回の秤量サイクルにつき全充填物(566.5グラム)の触媒混合物を放出させ、そして、触媒混合物の1袋につきちょうど1回の秤量サイクルを使用するように構築された。秤量装置(100)の下で、垂直f/f/s袋詰め装置(120)は供給ロール(示されていない)から連続的にポリエチレン膜を引き込み、それを直径9インチ(22.9cm)の円筒に形作り、その円筒を垂直に接着して管を形成し、次いで、底部端で管を水平に接着して、排出ポート(115)の下に袋を形成する。制御装置(110)は長さ8.5インチ(21.6cm)で、望まれる充填体積を保持するのに充分な袋を生じさせるようにプログラムされた。先の実施例におけるように袋詰め装置は機能して、R2Z1触媒混合物の完全な1つの充填物を収容する完成した袋をコンベアベルト上に排出した。それぞれの完成した袋は目視で検査されて、手作業で貯蔵ドラム缶(示されていない)に入れられた。組み合わせ秤量システムの長期間の連続した操作を可能にするのに必要とされる場合には、追加の触媒および希釈剤はそれぞれの大きな供給ホッパーに添加された。このシステムは、このやり方の操作を、25袋/分の速度で、26,750を超えるR2Z1触媒充填物が生産されるまで続けた。
【0073】
この操作が進行したら、通常の時間間隔で、15個のサンプル袋がランダムにコンベアベルトから抜き取られた。
各サンプル(未開封の袋)はまず秤量されて、全重量を決定した。その袋は次いで開けられて、その内容物が外に出され、希釈剤と触媒が手作業で分けられた。空の袋が秤量され、実際の充填物重量が計算された;計算された充填物重量は、次いで、566.5グラムの目標充填物重量と比較された(充填物重量誤差)。最終的に、触媒と希釈剤とは個々に秤量されて、ブレンドの正確性を決定した(実際の触媒重量%およびブレンド誤差)。
【0074】
【表5】

【0075】
表2におけるデータは、目標充填物重量と比較した場合にサンプル充填物の測定された重量が±0.11%の範囲内であることを示す。表2は、75%触媒混合物目標値と比較した場合の、実際の触媒混合物についてのブレンド誤差が約0.5%を超えないことも示す。よって、本発明の方法が(a)無視できる重量変動率の触媒充填物を提供し、および(b)無視できる組成変動率の触媒混合物を生じさせることがこのデータから明らかである。
【0076】
実施例3(落下試験例)
先に示されたように、具体的な触媒装填状況での最低の粒子状固体落下速度は、ケースバイケースで、簡単な実験を使用して、実験的に決定されるのがよい。この簡単な繰り返し方法は「落下試験」と称され、この開示の利点を有する当業者によって行われうる。
この実施例の具体的な場合においては、米国特許第6,132,157号に記載されている種類の10本管振動型触媒装填装置(テキサス州、ディアパークのキャットテック(Cat Tech)から市販されている)が使用されて、物質(不活性物質または触媒混合物)の試験充填物を、10本の可能な反応器管の設定された数に装填した。この実施例において使用される触媒装填装置は、商業的スケールの反応器に触媒を充填するために日常的に使用されるセットのなかのいくつかの同じ装填装置の1つである。この装填装置は、連続番号が付けられた10本の平行レーンを有する水平振動型トレイを含む。これらのレーンは、装填操作中に10本の隣接する反応器管と位置あわせされる。この実施例の目的のために、触媒装填装置のレーンは1〜10の順番に番号が付けられ、レーン1および10はトレイの端に位置する最も外側のレーンであり、レーン5および6はトレイの中央に位置する最も内側のレーンである。これらの実験は、装填される反応器と同じデザインおよび管サイズ(内径25mm)を有する商業的規模の酸化反応器の頂部チューブシートの上に、装填装置を配置することにより行われた。各試験トライアルにおける物質(触媒、不活性物質および/またはこれらの混合物)の落下速度は、装填装置の振動周波数を、装填装置の作りつけデジタル制御装置を使用する具体的に番号が付けられた設定に調節することにより制御された。この方法において、使用の際の具体的な触媒装填装置の正確な設定は決定され記録されることができる。本明細書において使用される場合、用語「落下時間」とは、触媒装填装置のトレイから、所定の反応器管に最初の粒子が落ちて始まり、触媒装填装置のトレイから同じ反応器管に最後の粒子が落ちるときに終わる、経過時間をいう。
【0077】
意図される量の物質および充填密度が得られたことを確認するために、試験におけるそれぞれの工程の後で、「アウトエージ(outage)」、すなわち、管内に蓄積された物質の最上高さが手作業で測定される。
この実施例においては、R2Z1触媒ブレンドの8つの同じ0.48リットルの充填物(実施例2に上述されるように製造された)が、4つの連続した試験落下に使用された。それぞれの試験落下の目標区域の長さは1000mmであった。目標と比較した平均反応区域の長さの変動率は3%未満であることが望まれる。さらに、個々の管の反応区域の長さの値は、平均の反応区域の長さの値から0.5%を超えて変動しないことが望まれる。これらの落下試験からのデータは以下の表3にまとめられる。
【0078】
試験落下A
触媒を装填する先の実験に基づいて、40の触媒装填装置振動設定が試験のための好適な出発点であろうことが最初に推測された。最初のR2Z1触媒充填物は装填装置のレーン1を通って56秒の全時間で移され、これは118秒/リットルの落下時間に等しい。得られた区域の長さは968mmであると決定され;1000mmの目標長さと比較して、これは、平均区域長さの変動値−3.2%を表した。
【0079】
落下試験B
平均区域長さの変動値の低減のために、制御装置設定は47に調節され、これは触媒充填物をより素早く移した。より具体的には、第2のR2Z1触媒充填物は、この装填装置のレーン3を通して、制御装置設定47で、39秒の全時間で移され、これは、81秒/リットルの落下速度に等しい。得られた区域の長さは984mmであると決定され;1000mmの目標長さと比較して、これは、低減された平均区域長さの変動値−1.6%を表した。
【0080】
落下試験C
平均区域長さの変動値をさらに低減する試みにおいて、次に、制御装置設定は48に調節され、これにより、触媒混合物をもうすこしだけより素早く移した。この試験においては、第3および第4のR2Z1触媒充填物が、装填装置のレーン4および5をそれぞれ通って、36秒の全時間で同時に移され、これは、75秒/リットルの落下速度に等しい。得られた平均区域の長さは981mmであると決定され;1000mmの目標長さと比較して、これは、平均区域長さの変動値−1.9%を表した。この場合には、2つの長さ測定値が存在していたので、平均の区域長さ値に対して、個々の管の区域長さの変動値を評価することも可能であった。この場合には、個々の変動値はわずか0.16%であって、これは0.5%を超えない充分に望まれる範囲内であった。
【0081】
落下試験D
最終の試験落下が行われて、この時間は、4つのR2Z1触媒充填物を使用した。触媒装填装置制御装置設定は48の設定に維持された。4つの試験の充填物のそれぞれは、触媒装填装置のレーン6、7、9および10を通してそれぞれ、37秒の時間で移され、これは77秒/リットルの落下速度に等しい。得られた平均区域の長さは975mmであると決定され;1000mmの目標長さと比較して、これは、平均区域長さの変動値−2.5%を表した。平均の区域長さに対して、個々の管の変動値は−0.37%を超えず、これは充分に(0.5%を超えない)望まれる範囲内であった。
【0082】
【表6】

【0083】
この単純な反復の試験方法の結果として、商業的なシェルアンドチューブ型反応器の25mm管への触媒ブレンドR2Z1の均一な装填に77秒/リットルの落下速度が好適であったことが決定された。48の触媒装填装置制御装置設定においてこの落下速度が得られたことも決定された。
さらに、この実施例からの個々のデータは、触媒がトレイをわたって一連の隣接する管に運ばれる複数管振動型触媒装填装置は、そのトレイのレーンをわたる落下速度での変動も経験する場合があり、トレイの外側のレーンはトレイの中央に最も近いレーンとは異なる速度で触媒を落下させる傾向があることを示す。
【0084】
実施例4(触媒装填例)
商業的規模の単一反応器シェル(SRS型)酸化反応器が、プロピレンからアクリル酸を製造するために使用される。この実施例の具体的なSRS酸化反応器は25,000を超える同じ管を含む。図1は、この反応器からの、1インチ(25.4mm)の直径および26フィート(7925mm)の長さを有する1つの管を表す。
当該技術分野において周知であるように、SRS型反応器内では、第1の反応段階でプロピレンはアクロレインに変換され、次いで、第2の反応段階でアクロレインがアクリル酸に変換される。この具体的な場合において、実施例の反応器は「上向流」配置で操作され、すなわち、操作においては、反応物質は各管の底から導入され、垂直に上方に流れ;生成物は頂部で各反応器管を出る。概して、このような反応器配置においては、第1の反応段階(R1)は、各管において、底部チューブシート(1)と中間チューブシート(15)との間にあり;第2の反応段階(R2)は、各管において、中間チューブシート(15)と頂部チューブシート(31)との間にある。
パイロットプラント反応システムにおいて行われる最適化検討に基づいて、この実施例の反応器において使用するために、3つの反応区域触媒充填スケジュールが開発された(図1を参照)。この3つの触媒区域充填スケジュールは、第1の反応段階(R1)についての単一の触媒区域、および第2の反応段階(R2)のための異なる活性の2つの触媒区域と、第1および第2の反応段階(R1、R2)の間に位置する固体不活性物質を含む中間区域とを含む。
【0085】
この具体的な実施例の場合においては、2つの独立して制御されるニトラート冷却塩の流れが反応器のシェルを通って循環されて、反応段階のそれぞれに冷却を提供する。R1塩循環においては、冷却塩は、底部チューブシート(1)より上の点で、反応器シェルのより低い部分に入り、その管の周りを流れて、中間チューブシート(15)より下の点で、反応器シェルの中央部分を出て;R2塩循環においては、冷却塩は、中間チューブシート(15)より上の点で、反応器シェルの中央部分に入り、その管の周りを流れて、頂部チューブシート(31)より下の点で、反応器シェルの上部部分を出る。このような配置は、並流冷却塩循環と称される。
温度および反応速度のようなプロセス条件における変動に対するアクリル酸収率の感受性を考慮すると、この反応器内の25,000を超える管のそれぞれの内容物が実質的に、触媒の量、活性および配置について類似していることが必要であることが当業者に明らかであろう。
【0086】
図1に示される管内のそれぞれの区域のための、あらかじめブレンドされた粒子状固体物質の充填物は本発明の方法に従って製造され、実施例1および2に記載されるように取り扱いの容易さのために袋に入れられる。
それぞれの管は以下の方法で装填されて、図1に示される充填スケジュールを達成する。
空の管で始まる予備加熱区域がまず組まれる。図2bにおいて示され、ドイツ国のデゲンドロファーウェルフトウンドアイゼンバウGmbH(Deggendorfer Werft und Eisenbau GmbH)から市販されている種類の触媒クリップ(2)が、各管内の所定の位置に触媒を保持するために、各管の底に最初に配置される。
【0087】
米国特許第6,132,157号に記載される種類の複数管振動型触媒装填装置(テキサス州、ディアパークのキャットテックから市販されている)が利用されて、物質(不活性物質または触媒混合物)の充填物を、一度で、10本の反応器管のそれぞれに同時に装填する。この例は、単一の触媒装填装置の操作に焦点を当てているが、複数の触媒装填装置が同時に使用される場合には、大型反応器内の管に装填する仕事はより素早く行われうることは当業者に明らかであろう。同時に操作されうる装填装置の最適の数は反応器のサイズおよび装填装置自体の物理的寸法と共に変動しうるが、触媒導入中に5〜10台の触媒装填装置が同時に操作されるのが一般的である。各工程における固体物質(触媒混合物または不活性物質)の落下速度は、装填装置の振動周波数を、落下試験において明らかにされた先に決定された目標値に調節することにより制御される。各工程の後で、意図される量の物質および充填密度が得られたことを確認するために、「アウトエージ」すなわち、管内に蓄積された物質の最上高さが測定される。管と管との均一性を確実にするために、管のランダムサンプリングにおける圧力低下(dP)の測定も行われうる。装填において、これらの測定値のいずれかが、感知できるほどの誤差を示す場合には、物質の不適合な充填が除かれ、未使用の充填物が装填されてこの誤差を正すことができる。
【0088】
上記触媒装填装置が使用されて、クリップ(2)の頂部上に、不活性物質(オハイオ州、アクロンのノートンケミカルプロセスプロダクツコーポレーション(Norton Chemical Process Products Corp.)から入手可能な、直径6.4mmのデンストン(Denstone)57登録商標触媒床担体)の218グラムの層を配置して、予備加熱区域(3)を形成する。
所定の場所に予備加熱区域(3)を備えて、第1の反応段階の成分(R1)が次いで装填される。約2040グラムの「R1Z1」触媒混合物の充填物が、65秒/リットルの落下速度で各管内に配置されて、第1の反応段階内に単一の触媒区域(11)を形成し;この触媒区域は、予備加熱区域(3)のすぐ上の3520mmの管長さを占める。この具体的な実施例において、R1Z1触媒混合物は、100重量%のYX−38.52DU触媒(日本化薬株式会社により製造)を含み;R1Z1充填物の製造は実施例1に前述した。
次いで、振動型触媒装填装置を使用して、「IS」不活性物質の272グラムの充填物が、167秒/リットルの落下速度で管に添加され;この不活性物質は、単一の触媒区域(11)のすぐ上の管長さ500mmを占める。この具体的な実施例においては、このIS不活性物質は直径7.5mm、長さ6mmのステンレス鋼ラシヒリングを含む。
【0089】
次いで、第2の反応段階(R2)が装填される。この場合も、振動型触媒装填装置を使用し、2つの触媒区域(21および22)が逐次的に各管に装填され、第2の反応段階を形成する。約566グラムの「R2Z1」触媒混合物の袋詰めされた充填物が触媒装填装置内に配置され、77秒/リットルの落下速度で管に移されて、第2の反応段階内に触媒区域(21)を形成し;この触媒区域は不活性物質(16)のすぐ上の1000mmの管長さを占める。約1281グラムの「R2Z2」触媒混合物の袋詰めされた充填物が、次いで、触媒装填装置内に配置され、69秒/リットルの落下速度で管に移されて、第2の反応段階内に触媒区域(22)を形成し;この触媒区域は触媒区域(21)のすぐ上の2240mmの管長さを占める。この具体的な実施例においては、R2Z1触媒混合物は日本化薬株式会社により製造されたT202.52XS3触媒75重量%と、日本化薬から入手可能な1B−1000(5.2mm直径の球体)希釈剤25重量%との均一なブレンドを含み;R2Z1充填物の製造は、実施例2に上述された。R2Z2触媒混合物は、日本化薬株式会社によって製造されたT202.52XS3触媒100重量%を含み、R1Z1触媒の充填物を製造するのに使用されるのと本質的に同じ方法で製造された。
【0090】
最後に、約179グラムの不活性物質(32)が触媒区域(22)の頂部上に手作業で(望まれる場合には、上記振動型触媒装填装置が使用されうる)装填され;この不活性物質は「出口冷却区域」を形成し、一般的に触媒区域(22)のすぐ上で270mmの管長さを占める。この具体的な実施形態においては、不活性物質(32)は、(オハイオ州、アクロンのノートンケミカルプロセスプロダクツコーポレーション(Norton Chemical Process Products Corp.)から入手可能な、直径6.4mmのデンストン(Denstone)57登録商標触媒床担体)を含む。
管のランダムサンプリングにおけるdPの最終測定は管と管との均一性を確実にするために行われる。不活性物質(32)の量は、管のdPの最終的な調節をもたらすように、必要に応じて、増減されうる。
【0091】
再充填された反応器は、次いで、以下の操作条件下でアクリル酸を製造する商業的な操作に置かれ、それにより、アクリル酸が長期間優れた収率で安定に製造されたことが示された:
反応器へのプロピレン供給速度=29,000 lb/hr;
供給物中7.3%のプロピレン;
供給物中O対プロピレン比1.83;
供給物中9.7%の水;
19.4psigの反応器入口圧力;
327.4℃のR1塩温度;
287.3℃のR2塩温度。
【0092】
825時間の操業時間(TOS)において、この酸化反応器の性能は、96.7%の全プロピレン変換率で、86.2%の全アクリル酸収率であった。アクロレイン収率は1.2%であった。このデータから、本発明の方法に従って製造された触媒充填物の使用は、優れた収率および高生産性でアクリル酸を製造することが認められうる。
【0093】
実施例5(素早いブレンド形成および袋詰め操作)
パイロットプラント試験に基づいて、プロピレンからのアクリル酸の製造のための別のSRS型商業的反応器における使用のための、4つの区域の触媒充填スケジュール(図2a参照)が開発された。上述のように、プロピレンは第1の反応段階でアクロレインに変換され、次いで、第2の反応段階でアクロレインがアクリル酸に変換される。この実施例の4区域充填スケジュールは、第1の反応段階について異なる活性の2つの触媒区域、並びに第2の反応段階について異なる活性の2つの触媒区域を含んでいた。日本国の日本触媒から入手可能なACF4およびACS6触媒がこの実施例の反応器において使用された。
【0094】
この具体的な場合においては、実施例の反応器は25,000を超える管を含んでおり、「下向流」配置で操作された。すなわち、操作においては、反応物質は各管の頂部から導入され、垂直に下方に流れ;生成物は底からそれぞれの反応器管を出る。一般的には、このような反応器配置に置いては、第1の反応段階(R1)は、各管において、頂部チューブシート(201)と中間チューブシート(215)との間にあり;第2の反応段階(R2)は、各管において、中間チューブシート(215)と底部チューブシート(231)との間にある。
この具体的な実施例の場合においては、2つの独立して制御されるニトラート冷却塩の流れが反応器のシェルを通って循環されて、反応段階のそれぞれに冷却を提供する。R2塩循環においては、冷却塩は、底部チューブシート(231)より上の点で、反応器シェルのより低い部分に入り、その管の周りを流れて、中間チューブシート(215)より下の点で、反応器シェルの中央部分を出て;R1塩循環においては、冷却塩は、中間チューブシート(215)より上の点で、反応器シェルの中央部分に入り、その管の周りを流れて、頂部チューブシート(201)より下の点で、反応器シェルの上部部分を出る。このような配置は、向流冷却塩循環と称される。
【0095】
各管は図2aにまとめられるおよび本明細書に記載される充填スケジュールに従って装填される。図2bに示され、ドイツ国のデゲンドロファーウェルフトウンドアイゼンバウGmbH(Deggendorfer Werft und Eisenbau GmbH)から市販されている種類の触媒クリップ(232)が、各管内の所定の場所に触媒を保持するために、各管の底に最初に配置される。232グラムの3/8”直径の球形セラミックボールの層が、次いで、クリップ(232)の頂部上に配置され、冷却区域(233)を形成する。次いで、1395グラムのR2Z2触媒混合物(222)が冷却区域(233)の頂部上に配置される。R2Z2触媒混合物(222)の頂部上に、次いで、616グラムのR2Z1触媒混合物(221)の層が配置される。次は、635グラムの1/4”×1/4”×0.03”壁厚ステンレス鋼ラシヒリングの層が配置され、この具体的な充填スケジュールのために段階間区域(216)を形成する。段階間区域(216)上に、986グラムのR1Z2触媒混合物(212)の層が配置される。最終的に447グラムのR1Z1触媒混合物(211)の層がR1Z2触媒(212)の頂部上に配置され、管の充填を完了する。
【0096】
この具体的な反応器における25,000を超える管のそれぞれに触媒を装填することに関連する停止時間を最小にするために、米国特許第6,132,157号に記載されている種類の複数管振動型触媒装填装置(テキサス州、ディアパークのキャットテック(Cat Tech)から市販されている)が使用されて、物質(触媒混合物または不活性物質)の充填物を、一度に、10本の反応器管のそれぞれに、同時に装填する。触媒装填装置の操作を容易にするために、触媒、ラシヒリングおよびセラミックボールの個々の充填物は本発明の方法を使用して前もって調製され、そして、取り扱いの容易さのために個々に密封された袋に入れて置かれている。表4は、本発明の方法に従った組み合わせ秤量システムの使用に関連する活性をまとめる。
【0097】
【表7】

【0098】
これら156,000を超える袋を製造するための全時間はちょうど115.5時間であって、これはホッパー充填、システム制御装置プログラミング、および充填物間のシステムの清掃に消費された時間を含んでいて、結果的に、25袋/分を超える、このシステムのための全体的な平均操作速度をもたらした。ランダムサンプリングは全ての充填物重量が目標重量の±3グラム以内であって、これは各袋の望まれる合計重量に基づいた変動率で±1重量%を超えないことに等しかったことを示した。このことは、商業的スケールの反応系に必要とされる量および組成の充分な均一性を有する実質的な数の触媒充填物が、本発明の方法を使用して、素早くかつ効率的に製造されうることを示す。
【0099】
実施例6a
本発明の方法は、ACF7触媒(NSCLから入手可能)60重量%およびYX−129触媒(日本化薬株式会社から入手可能)40重量%を含む(これら双方とも、プロピレン酸化反応器の第1の反応段階における使用に好適な触媒である)「ハイブリッド」触媒ブレンドを製造するために使用されうる。このような「ハイブリッド」触媒ブレンドは、図1に示されたおよび本明細書において上述された3反応区域充填スケジュールに従って、反応器の第1の反応段階に装填し、単一の触媒区域(11)を形成するのに好適であろう。このようなハイブリッド触媒ブレンドは、商業的に入手可能ではないが、本発明の方法に従って組み合わせ秤量システムを用いて製造されうる。このハイブリッド触媒ブレンドは、酸化反応器の第1の反応区域における、プロピレンからのアクリル酸の商業規模の生産に有用であろう、なぜなら、それは、別の市販の触媒におけるモリブデン昇華のような望ましくない特徴を最小にしつつ、市販の触媒の1種の触媒耐用寿命および選択性のような望ましい特徴を最大化するであろうからである。約40〜75重量%のACF7触媒の範囲の類似のブレンドも、図1に示される3反応区域充填スケジュールの第1の反応段階において、有利に使用されうることが想定される。
【0100】
実施例6b
本発明の方法は、YX−38触媒(日本化薬株式会社から入手可能)50重量%およびACF4触媒(NSCLから入手可能)50重量%を含む(これら双方とも、プロピレン酸化反応器の第1の反応段階における使用に好適な触媒である)「ハイブリッド」触媒ブレンドを製造するために使用されうる。このような「ハイブリッド」触媒ブレンドは、図1に示された3反応区域充填スケジュールに従って、単一の触媒区域(11)を装填するのに好適であろう。このようなハイブリッド触媒ブレンドは、商業的に入手可能ではないが、本発明の方法に従って組み合わせ秤量システムを用いて製造されうる。このハイブリッド触媒ブレンドは、プロピレンからのアクリル酸の商業規模の生産に有用であろう、なぜなら、それは、別の市販の触媒におけるモリブデン昇華のような望ましくない特徴を最小にしつつ、市販の触媒の1種の触媒耐用寿命および選択性のような望ましい特徴を最大化するであろうからである。約30〜70重量%のYX−38触媒の範囲の類似のブレンドも、図1に示される3反応区域充填スケジュールの第1の反応段階において、有利に使用されうることが想定される。
【符号の説明】
【0101】
1、231 底部チューブシート
2、232 触媒クリップ
3 予備加熱区域
11 第1の反応段階
15、215 中間チューブシート
21、22 第2の反応段階内の触媒区域
31、201 頂部チューブシート
32 不活性物質
100 秤量装置
101、104 ホッパー
102、105 コンベア
103、106 小さなホッパー
101、102、103 右の供給トレイン
104、105、106 左の供給トレイン
107 蓄積装置
108 スケール
109 ホルダー
110 コンピューター制御モジュール
115 排出ポート
120 袋詰め装置
130 触媒
121、121、123、124、125、126、127、128、129 振動型供給装置
140 コンベアベルト
150a、150b、150c 袋詰めされた充填物
211 R1Z1触媒混合物
212 R1Z2触媒混合物
216 段階間区域
221 R2Z1触媒混合物
222 R2Z2触媒混合物
233 冷却区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルアンドチューブ型反応器の管内に配置される固体物質をブレンドする方法であって;
(A)管内に配置し、シェルアンドチューブ型反応器における望まれる領域を形成するための固体物質の異なるバッチを形成するのに必要とされる、固体物質の種類および量をリストアップする充填スケジュールを特定すること;ここで、前記バッチのそれぞれは、固体触媒物質、固体不活性物質およびこれらのブレンドからなる群から選択される1種以上の物質を含む;
(B)異なるバッチの少なくとも1つを製造するために組み合わせ秤量装置を使用すること;ここで、固体物質のそれぞれのバッチのためにブレンドされる固体触媒物質および固体不活性物質の種類および量は、前記充填スケジュールに基づいて選択される;
(C)固体物質のバッチの少なくとも1つを複数の容器内にためること;ここで、前記複数の容器のそれぞれは同じ量および割合の1種以上の固体物質を収容し、前記量は前記充填スケジュールに基づいて決定され、前記複数のそれぞれが容器の総数を構成し、前記総数は、シェルアンドチューブ型反応器の管の数およびサイズによって決定される;
を含む、方法。
【請求項2】
充填スケジュールによって指示された所定の順序に従って、前記物質の前記バッチをそれぞれの前記容器からシェルアンドチューブ型反応器の対応する管に装填して、反応器内に一貫して均一な前記望まれる領域を形成すること;
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体物質がその装置を通って移動させられ互いにブレンドされる速度を変えるための調節可能な振動手段を、組み合わせ秤量装置が含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体物質からのダストを集め除去し、それによりシェルアンドチューブ型反応器の管内のダストの望まれない蓄積を妨げるためのダスト収集手段を、組み合わせ秤量装置が含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
容器は袋であり、かつ組み合わせ秤量装置と共に袋詰め装置が使用されて、固体物質のバッチのそれぞれを複数の容器内にためる工程を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
固体物質のバッチを前記容器のそれぞれから、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管に装填する工程が、シェルアンドチューブ型反応器の対応する管と位置あわせされた1以上の管状部材を有する固体装填装置を用いて達成される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
充填スケジュールが、対応する不飽和カルボン酸を形成するアルケンの2段階酸化を行うのに必要な物質の種類および量のリストを提供し、望まれる領域が、アルケンが不飽和アルデヒドに変換される第1の反応段階、および不飽和アルデヒドが対応する不飽和カルボン酸にさらに変換される第2の反応段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
混合金属酸化物を含み、かつ不飽和アルデヒドへのアルケンの変換を触媒することができる少なくとも1種の触媒を第1の反応段階が含み;混合金属酸化物を含み、かつ不飽和カルボン酸への不飽和アルデヒドの変換を触媒することができる少なくとも1種の触媒を第2の反応段階が含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の反応段階が複数の反応区域を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の反応段階が複数の反応区域を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
充填スケジュールが、エチレン、酸素および酢酸を含む反応物質から、酢酸ビニルモノマーを製造するのに必要とされる物質の種類および量のリストを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
各袋内の固体物質の前記量が、袋と袋とで、各袋の全重量に基づいて±1重量%を超えずに変動する、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
固体物質のバッチが30秒/リットル以下の落下速度で、シェルアンドチューブ型反応器の管内に装填される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
固体物質の前記バッチの少なくとも1つが、同じ必須成分を有するが異なる触媒活性を有する2種以上の固体触媒物質のブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
固体物質の前記バッチの少なくとも1つが、少なくとも1種の固体不活性物質と少なくとも1種の固体触媒物質とのブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
固体触媒物質の前記同じ必須成分がモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−121048(P2011−121048A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−249572(P2010−249572)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】