説明

固定化緩衝剤を用いるガスの分離

【課題】本発明の目的は、層状構造および膜に関する技術の改善である。
【解決手段】ガスから二酸化炭素を分離する方法であって、二酸化炭素を含むガスをヒドロキシルイオンまたは水と反応させて、炭素含有イオンを生成するステップと、プロトンおよびヒドロキシルイオンのうち少なくとも一方のイオン電流密度を、前記炭素含有イオンのイオン電流密度に対して減少させるために十分なpH緩衝基を含む半透膜を通して前記炭素含有イオンを輸送するステップであって、前記pH緩衝基が前記膜内で隔離されているステップと、前記膜を通しての輸送後に前記炭素含有イオンを反応させて二酸化炭素を提供するステップとを含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にpH緩衝基、ガス分離、特に、ガスの混合物からあるガスを分離する際のpH緩衝基の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
層状構造および膜のための様々な技法が提案されている。たとえば、ウィニック,J.,マーシャル,R.、およびシューベルト,F.、「An Electrochemical Device for Carbon Dioxide Concentration.I.Syetem Design and Performance」、Ind.Eng.Chem.、Process Des.Develop.、Vol.13、No.1、1974、pp.59−62には、二酸化炭素濃度についての電気化学的電池の使用が記載されている。これらの、また類似の方法では、電気化学または「分極膜」を使用する。これらの膜は、COが高pHで可溶性炭酸塩および重炭酸塩に変換され、低pHで再び遊離するという原則に基づいて作用する。COは優先的には塩基性側に吸収され、酸性側で放出される。
【0003】
特許文献1には、着脱可能な流体不透過性の電気絶縁バリアによって互いに分離されているストリップゲルおよびスラブゲルを備える二次元電気泳動装置が記載されている。固定化基と固体またはゲルマトリックスとを含有するストリップを使用することができ、たとえば、乾燥した固定化pH勾配ゲルのストリップについて記載されている。様々な正または負に帯電した基について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5773645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、層状構造および膜に関する技術の改善である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、システム、電気化学的電池、構造、物品および方法を含めた様々な例示的実施形態を提供する。一般に、これらの諸実施形態は、pH緩衝基を含む層状構造または膜を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電気化学的電池内などにおける、pH緩衝基を含む層状構造または膜の概略図である。
【図2】図1にあるような層状構造または膜内の固定化緩衝基を示す概略図である。
【図3】図1にあるような層状構造または膜内の半透膜間で隔離されている緩衝基を示す概略図である。
【図4】分子およびイオンが図1のように流れることができるシステムの概略ブロック図である。
【図5】図4にあるようなシステムにおけるガスの流路を示す概略図である。
【図6】図5にあるような電気化学的電池の、図5の線5−5に沿った断面図である。
【図7】図4および図5にあるようなシステムを製造するためのプロセスを示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
層状構造および膜には、多くの技術的な、また産業上の用途がある。一例は、二酸化炭素についてなど、ガス分離である。二酸化炭素分離のいくつかの例としては、宇宙船や潜水艇などの閉鎖環境における生命維持、天然ガスのスイートニング、および発電所の煙道排気からの二酸化炭素の分離が挙げられる。また、環境からCOを除去することは、燃料を製造するためにも、また大気中のCOの蓄積を改善するためにも、大気中の温室効果ガスの増加量の問題があるため、重要な用途である。
【0009】
一般に、これらおよび類似の用途に使用する現在のガス分離器は、非常に非効率的で、膜または層状構造を用いたこのような分離に必要とされる理論的最小エネルギーの約10〜100倍が消費される。ウィニックらに記載されているような膜または層状構造を用いる公知の方法は、相対的に非効率的である。というのは、アノードおよびカソードでそれぞれ生成されるHおよびOHの再結合は、時間が経つとpH勾配を低下させる傾向にあるからである。この勾配を維持するためには追加のエネルギーが必要となる。
【0010】
以下に説明する例示的な実施形態は、膜および層状構造に関する上記問題に対処し、二酸化炭素分離に適用可能である。二酸化炭素は、気候変動の加速に関与する温暖化ガスの主成分である。大気から直接COを効率的に抽出するための方法により、依然としてカーボンニュートラルなまま燃料としての使用に適している炭化水素へのCOの費用対効果の高い隔離または変換が可能となる。隔離されていない緩衝基を用いてガスを分離することは困難であることがわかっており、進行に必要な効率を提供しないことがある。
【0011】
図1は、たとえば、電気化学的電池内に存在することがあるアノード12およびカソード14を示す。カソード14を有する電池の側面は、電池のより塩基性の側面として(すなわち、より高いpHで)構成され、一方アノード12を有する側面は、電池のより酸性の側面またはより塩基性の低い側面として(すなわち、より低いpHで)構成される。CO(矢印17による)もO(矢印18による)も共に含有する空気などのガスが、カソード14で導入される。
【0012】
は、電池の塩基性側面で、カソード導体からの電子と反応してOHを形成する。溶解したCOがOHと反応して、An−によって表される炭素含有イオンを形成する。Aは、当業者にとって公知の任意の成分で、nは単に炭素含有イオンのイオン化状態を示す。CO分離では、Aは典型的には炭酸イオンまたは重炭酸イオンとなり、COが他の種と反応して他の炭素含有イオンを生成することができる。水素ガス(矢印19による)をアノード12で電池に供給し、アノード12で水素ガスは2Hおよび2eに分割される。炭素含有イオンAn−は電池を横切ってアノード12のpHがより低い側へ進み、アノード12側でHと反応して再びCOを形成する。新たに形成されたCO(矢印21による)はアノード12で遊離する。
【0013】
これらのカソード反応およびアノード反応は、異なるpHレベルにおけるCOおよびCO関連炭素含有種の差分溶解度を利用し、電極電位とは関係なく作用する。pH緩衝基なしでは、HおよびOHは電池を横切って拡散する傾向にある。この膜は、炭素含有イオンのイオン電流密度に対してHおよびOHのイオン電流密度を選択的に減少させるために十分なpH緩衝基を含む。用語「十分なpH緩衝基」は、電池内のpH緩衝基の選択、量および構成を網羅するものとする。電池を横切って輸送されるイオンにより、アノードとカソードとの間の回路が完成する。様々な種の相対イオン電流密度を各電極で測定して、それぞれの相対電流密度を決定することができる。したがって、pH緩衝基は、炭素含有イオンの輸送を可能にしながら、または促進しながら、電池を横切るHおよびOHの拡散を低減すると考えられている。このことは、たとえば以下で説明するように、以下ファラデー効率を測定することによって確認することができる。
【0014】
図1に示すアノード12とカソード14との間の領域にpH緩衝基を固定化する、閉じ込める、または隔離することによって、アノード12とカソード14との間のpHプロファイルを変更し制御することができる。簡単な例としては、緩衝基の適切な勾配を固定化することによって、pH勾配を線形にすることができるが、本発明はこれに限定されない。この勾配を、複数の勾配として、たとえば、アノード12とカソード14との間の様々な異なる領域に構成することもでき、連続していても、不連続であっても、または非線形であってもよい。固定化された、またはそうでなければ閉じ込められたpH緩衝基を有する領域は、アノード12とカソード14との間の空間のすべてまたは一部のみを占めることができる。pH緩衝基は、それぞれpH、化学組成、濃度、イオン化準位などが他とは異なる複数の層内に固定化する、閉じ込めるまたは隔離することができる。このようにして、pHプロファイルを電池全体にわたって操作することができる。
【0015】
図1は、これらの反応のための燃料として水素ガスを示しているが、アノードで消費された際にプロトンを生成する任意の水素含有分子を使用することができる。このような材料の例としては、メタノールおよび他のアルコール類、金属水素化物、ならびにメタンまたは他の単純炭化水素化合物が挙げられる。
【0016】
図1はまた、二酸化炭素を分離するシステムも示している。このシステムを使用して他のガスを分離することもでき、たとえば、SO、NO、NHなど、水溶液中で加水分解する他のガスを、本明細書中に記載されているシステムによって分離することができる。
【0017】
アノードとカソードとの間のpHプロファイルの調節を助けるために、pH緩衝基は、ポリマー、粒子、他のマトリックスなどの支持体に固定することによって、ゲル内に閉じ込めることによって、または緩衝基を含有する分子に対して不透過性の半透膜により隔離することによって、固定化する、閉じ込める、または隔離することができる。使用することができる典型的な緩衝官能基としては、リン酸塩、酢酸塩、アミン基、カルボン酸基が、それぞれの共役酸および共役塩基と共に挙げられる。
【0018】
図2は、カソードとアノードとの間の膜中の固定化緩衝基の一例を示す。図2は、固定化によって特定の領域または層15内に緩衝基が隔離され、実質的には緩衝基を含まない領域によってアノード12およびカソード14から領域または層15が分離されている一実施形態を示す。この領域は図2では緩衝基を含まないものとして示してあるが、この領域は、以下で説明するように、アノード12からカソード14へのイオンの移動度に実質的には影響を及ぼさない緩衝基を含むことができる。図2において、緩衝基は、アノードに隣接するpHがより低い領域とカソードに隣接するpHがより高い領域との間の領域を占める図示するような多孔質マトリックスである支持体16によって固定化されている。このマトリックスは、たとえば、任意選択で繊維または他の固体支持体によって支持されている、これらの基を閉じ込めるポリマーゲルでよい。別の例として、このマトリックスは、互いに織られたまたは束縛された固体繊維または粒子であってもよく、緩衝基はその表面に束縛される。
【0019】
本実施形態および他の諸実施形態における緩衝基は、所望のpHをもたらす1つの種または種の混合物でよい。図2は2つの種、AおよびBを示し、AHがAおよびHと共に平衡状態にあり、BOHがBおよびOHと共に平衡状態にある。AおよびBは、酸性基および塩基性基を総称的に示すものとし、特定のタイプの基を示すものではない。他の平衡を伴う酸性基および塩基性基を使用することもできる。たとえば、マトリックスによって固定化される塩基性基は、平衡反応NH + OH → −NH + HOに従って−NHと平衡状態にある、水溶液中の−NHでもよい。
【0020】
緩衝基を、半透膜によって領域内に隔離することもできる。各半透膜は、その半透膜を横切る大きい分子の移動を防止することによって簡単に作用することができる。たとえば、膜は、緩衝基をその上に有するポリマーに対して、そのポリマーの分子量に基づき不透過性であってよい。このような膜によって、高分子量ポリマーが阻止される。
【0021】
図3は、半透膜20間の特定の領域または層内に緩衝基が隔離される一実施形態における膜の別の例を示す。緩衝基AおよびBは、半透膜20を通って移動することができないオリゴマー、ポリマーまたは他の粒子(22で表される)に束縛、またはそうでなければ結合している。これらオリゴマー、ポリマーまたは粒子は固定化されることはない。この実施形態においては、アノード12とアノード側の膜20との間、およびカソード14とカソード側の膜20との間に領域または層が存在し、これらの領域は、実質的にはpH緩衝基を含まない。上述のとおり、アノード12とカソード14との間のイオン移動度に実質的に影響を及ぼすことがない限り、これらの領域内にpH緩衝基を含むことが望ましいことがある。
【0022】
各半透バリアは、適切な孔径または分子量カットオフ値を選択することによってなど、オリゴマーまたはポリマー緩衝体がその半透膜を通って移動することができないことを確実にするように選択する。たとえば、この半透膜は、選択されたオリゴマーまたはポリマー緩衝体の動きが分子量カットオフ値により阻止される透析膜でよい。
【0023】
膜20間の隔離された緩衝基を有する領域は、2つの側面を有する。COを分離するように実施すると、OからOHへのカソード反応が起こり、炭素含有イオンが形成されアノードに向かって移動し始める領域が、一方の側面に隣接する。HからH+へのアノード反応が起こり、カソード領域から移動する炭素含有イオンが反応してCOを形成する領域が、他方の側面に隣接する。上述のとおり、これらの領域は通常共に、実質的にはpH緩衝基を含まない、または少なくとも、アノード12とカソード14との間のイオン移動度に有意に影響を及ぼすpH緩衝基を含まない。
【0024】
図2および図3における構造の実用性を例示するために、図2および図3にあるような膜が、緩衝領域におけるpHを所望の値、たとえば、pH=5とpH=9との間の規定値に維持するために十分な濃度の固定化緩衝基および適切なpKを備える例を考える。この例においては、図1に示すアノードおよびカソード反応が起こっている。カソードでは、Oとの反応がOHを生成しているが、OHがCOの存在下で反応して、OHが生成されている速度と同じ速度またはOHが生成されている速度に近い速度で炭素含有イオンを形成することが望ましい。したがって、アノード近くのpHがより低い領域へのOHの拡散または電界により推進される移動を最小限に抑えることが望ましい。アノードでは、Hとの反応がHを生成しているが、Hが炭素含有イオンと反応して、Hが生成されている速度と同じ速度またはHが生成されている速度に近い速度でCOを形成することが望ましい。したがって、カソード近くのpHがより高い領域へのHの拡散または電界により推進される移動を最小限に抑えることが望ましい。アノードへのOHおよび/またはカソードへのHの移動は望ましくない。というのは、この移動はアノードにおけるpHを上昇させ、カソードにおけるpHを低下させ、COを輸送することなく化学エネルギーを費やし、その結果システム全体の効率が低下してしまうからである。OHイオンがHと会合すると、COを輸送する代わりに水を形成する傾向にある。加えて、二酸化炭素輸送対イオン電流の比率を最大にするために、炭素含有アニオンの大部分がアノードとカソードとの間のある時点で一価であることが望ましい。この比率を最大にすることによって、単位電流当たりに分離されるCOの量が最大となるためエネルギー効率が高まる。
【0025】
約5〜9の範囲にあるpH中間領域が緩衝されると、これら所望の属性の実現に役立つ。たとえば、pH=7で、かつ約100μMを上回る炭素含有イオン濃度で緩衝されている図2にあるような中間領域を考える。pH=7では、HおよびOHの濃度が10−7Mであり、これら2種のイオンの濃度が炭素含有イオンの濃度と比較して低いため、HおよびOHの電界により推進される移動が少なくなる。十分な厚さの固定化緩衝領域では、HおよびOHの濃度勾配により推進される拡散もまた少ない。なぜなら、これらのイオンの濃度、したがって勾配が、緩衝領域内部の大部分において低くなるからである。溶液中の炭酸イオンに対する重炭酸イオンの比率はpHの関数であり、約pH=9を下回ると高いため、緩衝領域が、アノードとカソードとの間に[HCO]/[CO2−]が大きい場所を生じることになる。したがって、重炭酸イオン(HCO)の移動速度が炭酸イオン(CO2−)に対して大きくなる。したがって、この例示的な緩衝領域もまた、炭素含有イオンの価数に望ましい効果を及ぼす。
【0026】
カソードにおける高pH領域およびアノードにおける低pH領域を有すると、それぞれCOの捕獲および遊離の加速にも役立つ。カソードにおける高pH領域が高いOH濃度を示唆しており、この高pH領域により、反応CO + OH → HCOに従うCOの重炭酸イオンへの変換が加速されることになる。同様に、アノードにおける低pH領域により、やはり反応HCO + H → CO + HOに従う重炭酸イオンのCOへの変換が加速されることになる。カソードにおけるOの反応およびアノードにおけるHの反応により、それぞれカソードにおけるpHの上昇およびアノードにおけるpHの低下がもたらされる。
【0027】
pH緩衝基を実質的に含まない代わりに、膜の1つの層が、カソードに隣接する固定化緩衝基を含むことができ、たとえば、図2または図3における「pHがより高い」領域内の、高いpHで緩衝する固定化緩衝基を使用して、カソードにおける高いpHの維持を助けることができる。同様に、比較的pHが低い固定化緩衝基を有する、膜の1つの層を使用して、アノードにおける比較的低いpHの維持を助けることができる。この実施形態は、各電極における反応を促進するpHを維持するために望ましいことがある。電極に隣接する固定化pH緩衝基は、電極間のイオンの移動度に実質的な影響を及ぼすべきではなく、イオン電流密度にも実質的には影響を及ぼすべきではない。したがって、電極に隣接する固定化pH緩衝基は、中間のゾーンまたは層内の緩衝基とは異なるはずである。
【0028】
図2および図3に示す実施形態は3つの層を図示しているが、中間の層はアノード12とカソード14との間のイオン移動度に影響を及ぼす固定化pH緩衝基を含む。反応条件が電極の一方において類似のpHからpH緩衝基を含む層にあるpHまで好適であることを可能にする適切な触媒を選択した場合、その層は電極に隣接する単層として存在することができる。言い換えると、この実施形態では層が2つだけ、固定化された(または隔離された)pH緩衝基を含み、電極の一方に隣接している第1の層と、他方の電極に隣接する、イオン移動度に実質的に影響を及ぼすpH緩衝基を含まない第2の層とがもたらされる。
【0029】
図4は、システム25、上述のような膜を有する1つ以上の電気化学的電池を備えることができる例示的な一実施形態を示し、このシステム25において、緩衝基構成部品35が、アノードとカソードとの間のpHプロファイルを所望のやり方で調節し制御するように働く。システム25は、カソード構成部品28に供給口38および出口64を備え、アノード構成部品32に供給口41および出口66を備える。動作中、二酸化炭素および酸素を含むガス(空気または化石燃料を燃料とする発電所からの煙道ガスなど)が、供給口38からカソード構成部品28に導入され、一方水素を含有するガスが、供給口41からアノード構成部品32に導入される。二酸化炭素量が削減されたガスが、出口64を通ってカソード構成部品28から放出される。炭素含有イオンが、カソード構成部品28近くのカソード領域から経路57に沿ってpH緩衝構成部品35を通り、pH緩衝基構成部品35から経路59に沿ってアノード構成部品32近くのアノード領域へと移動する。炭素含有イオンは、アノード構成部品32で反応して二酸化炭素を形成し、この二酸化炭素が、ガス状または液体に溶解した状態で、出口66を通ってシステム25から出る。典型的な一実施形態においては、システム25は、システムへの負荷を制御するために、またカソード構成部品28とアノード構成部品32との間に形成される電界を制御するために電源および制御部68も備える。
【0030】
図5は、システム75、図4におけるシステム25の例示的な一実施形態を示す。この実施形態においては、二酸化炭素を含有する空気が管78を通って流れる。図5は空気の入口ガスを示しているが、工業プロセスからの排気など、二酸化炭素および酸素を含有する他のガスを使用することもできる。一方、水素を含有するガスが、管79を通ってシステム75へと流れる。各ガス流は、それぞれの流量調整器80または81を通り、ガス流の相対湿度を制御するそれぞれの加湿器84または85を通って流れる。イオン性液体を使用するなど一部の用途においては、加湿は必要ないかもしれない。そこから、加湿されたガス流が、それぞれの管86および87を通って並行して電気化学的電池77へと流れ、電気化学的電池77において二酸化炭素が空気から分離される。2つの出口88および89がシステム75には示してある。二酸化炭素が削減された空気は、一方の出口88を通って流れ、二酸化炭素とプロセス中に消費されない過剰な水素とが、他方の出口89を通って流れ出る。電気化学的電池77によって生成される電力を制御する回路92を形成するために、可変負荷33が電気化学的電池77に取り付けられている。動作中、回路92に対する負荷33は、Hが電気化学的電池77内に電気回路を生成することが許される範囲を調節する。可変負荷33は、何らかの有用な機能を果たす負荷でよいが、蓄電池であっても、または電解槽77から充電されるもしくは電力を供給される他のエネルギー蓄積もしくは変換装置であってもよい。
【0031】
図6は、図5における電池77の例示的な一実施形態の断面を示す。電池77は外枠42内に示してある。pH緩衝基を含む膜48が、外枠42内の定位置にクランプまたはそうでなければ固定されており、管86および88が膜48の一方の面に接続され、管87および89が他方の面に接続されている。管86、87、88、89は図4に示してある。この膜のマトリックスは、樹脂、多孔質セルロース、膨張ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維、焼結粒子、ゲル、ポリマー類または他の透過性材料でよい。
【0032】
白金粒子または当業者にとって公知の他の材料で形成されている触媒層47が、膜48の両側に位置している。これら触媒層は、システム内のHおよびOHの量を増大させることによって、システムの効率を高める。この触媒は、燃料反応H → 2H + 2eの速度を増加させ、1/2O + HO + 2e → 2OHにおいて酸素の還元を高める。この反応の速度を増加させることが知られている、またはこの反応の速度を増加させるために見出された任意の材料を、この触媒として使用することができる。触媒層47は、塗装、エアブラッシング(air brushing)、印刷、または当業者に公知の類似のやり方によって塗布することができる。
【0033】
ガス拡散層45が、膜48および触媒層47の両側に位置する。これらガス拡散層により、ガスがそれらガス拡散層の細孔を通って多孔質導電層46(以下で説明する)のそれぞれから膜48へと拡散することが可能となる。ガス拡散層は、カーボン紙や炭素布などの多孔質導電性材料で形成することができ、ガス拡散層における過剰な水蓄積の阻止を助けるために、ガス拡散層にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーを注入することができる。
【0034】
多孔質導体材料層46は、ガス拡散層45の両側に取り付けられている。これら多孔質導体は、金網や類似の材料など、電気を通しガスフローおよびガス拡散を可能にする材料で形成することができる。あるいは、この導体は、ガス拡散層へのガスの輸送のために流路がその中に作られている、ステンレス鋼のような金属片などの導電性材料片であってもよい。動作中、多孔質導体46は、電極として働き、それら電極にかかる電圧差は、アノードおよびカソードにおける電気化学反応により生じる。
【0035】
燃料電池において一般に使用されているような、機械加工ガスチャネルが「流れ場」として作用する金属板を、多孔質導体材料の代わりに使用することもできる。たとえば、機械加工溝の一端が入口で他端が出口となるステンレス鋼の平板を使用することができる。溝付き表面をガス拡散層に対向させて設置し、それによりガス拡散層にわたってガスが通り過ぎるチャネルが画定される。これを、燃料電池の技術分野では一般に「流れ場」と称する。
【0036】
反応が触媒層47で進行するにつれて、触媒層47のガス拡散層45および膜48との界面が電極と同様に振る舞い、一方がカソードのように、他方がアノードのように振る舞う。したがって、動作中、ガス拡散層45と膜48との界面にある触媒層47間の膜48全体にわたって電界が形成される。
【0037】
図7は、本明細書中に記載されているようなシステムを製造することができる例示的なステップを示す。ボックス98の作業時には、pH緩衝基を有する1つ以上の層と、イオン移動度に影響を及ぼすpH緩衝基を実質的には含まない1つ以上の層とを含めた層を調製する。この膜はイオン透過性で、ゲルを含むことができる。緩衝基は、共有結合によって、もしくはゲルによって膜に固定化されていても、または緩衝基は、膜に対して透過性ではないオリゴマー、ポリマーまたは他の粒子に束縛されていてもよい。一実施形態においては、ゲルは、織布など追加のマトリックス支持体の有無にかかわらず架橋ポリマーゲルでよい。
【0038】
pH緩衝基の固定化は、様々なやり方で実施することができる。たとえば、緩衝基は、ポリマー、ポリマーゲル、マトリックス、または一例としてのイオン交換膜を含めた透過膜もしくは半透膜などの支持体に固定することによって固定化することができる。緩衝基は、膜もしくは他のマトリックス上で単純に支持されている、または膜もしくは他のマトリックスに固定化することができるイオン性液体と共に使用することもできる。別の選択肢は、緩衝基を含有する調合物を用いて膜をキャストすることである。たとえば、膜は、緩衝基としてのImmobiline II(商標)モノマーを伴う、アクリルアミドモノマーからのポリアクリルアミドゲルのキャストであってもよい。より安価なゲルを、より安価なモノマーを用いたビニル重合、縮合重合、または重合プロセスおよび重合化学の当業者には公知である他の任意の重合を含めた他の重合技法を用いてキャストすることもできる。さらに別の代替形態は、緩衝基を含むモノマー溶液をマトリックスに浸透させ、マトリックス内で緩衝ゲルを硬化させることである。たとえば、アクリルアミドおよびImmobiline(商標)モノマーのモノマー溶液、架橋剤、触媒および開始剤は、セルロース、ナイロンまたは焼結ガラスマトリックスに浸透することができ、その後モノマーを硬化して固定化ポリマーゲルを形成することができる。類似のポリアクリルアミドゲルおよびそれらポリアクリルアミドの合成方法は、たとえば、タンパク質およびDNAの電気泳動の研究のためにポリアクリルアミドゲルを作製する当業者には公知である。
【0039】
ボックス100の作業時には、固定化pH緩衝基を含む層と、イオン移動度に影響を及ぼすpH緩衝基を実質的には含まない層とを組み立てることによって、層状構造を作製する。一般に、固定化pH緩衝基を含む層は、このような基を実質的には含まない層の間の中間層となる。
【0040】
ボックス102の作業時には、膜を水溶液、たとえば、重炭酸セシウムまたは炭酸セシウムの溶液に浸して、電気化学的電池における使用向けに調製する。ボックス104にある作業時には、この複合膜の両側に、触媒、ガス拡散層および多孔質導体層を取り付ける。ボックス106の作業時には、システムを電気的に接続し、容器の中に装着し、密封する。最後に、ボックス108の作業時には、負荷および出口構成部品を接続する。このシステムを必要に応じて試験し調整することができる。
【0041】
必要に応じて、または望ましい場合には、動き回る様々なガスの温度および圧力の制御が可能となるように、システムを容易に設計することができる。ガス分析器を使用して様々な出口ガスを試験することにより、システムが要望通りに作動しているかどうかを決定することができる。これらの出口ガスは、所望の任意の用途において使用することができる。これらの出口ガスを別の場所にポンプで送る、または反応もしくは他の身近な用途において使用することができる。
【実施例1】
【0042】
中間の層がpH緩衝基を有するゲル溶液で、外側の層がpH緩衝基を含まない3層膜を調製した。
【0043】
中間の層は以下のように調製した。
PlusOne ReadySol(40%のT、3%のC、GE Healthcare)5.6mlと、
脱イオン水9.30mlと、
Immobiline II pK=3.6(GE Healthcare)0.53mlと、
Immobiline II pK=9.3(GE Healthcare)0.57mlと、
PlusOne TEMED(GE Healthcare)5μLと、
過硫酸アンモニウム開始剤溶液75μLと、を混合する。
【0044】
ReadySolは、アクリルアミドモノマーおよび架橋剤を含有する溶液である。Immobiline II試薬は、緩衝基を有するモノマーである。
【0045】
2つの5”×5”ガラス片を、それらガラス片を疎水性とし、完成した層の容易な離型を可能にするために、PlusOne Repel−Silane ESを用いて作製した。これらガラス片の一方の上に、5”×5”ナイロンメッシュ(198×198、厚さ50ミクロン)を設置した。開始剤を添加した直後、このナイロンメッシュ上に溶液を均等に滴下し、メッシュを完全に濡らし満たすことで、気泡が回避された。ナイロンメッシュおよびゲル溶液の上に第2のガラス板を設置し、それにより気泡のトラッピング(trapping)がいずれも回避された。これらの片を互いにクランプし、室温で2時間を超える時間硬化させた。同様にして対照を調製したが、Immobiline II試薬は省略した。
【0046】
外側の層は、以下のように調製した。重炭酸セシウム0.21gを、イオン性液体(1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウムジアシナミド)1.5ml+水0.5mlに混合した。この溶液を、Whatman #3ろ紙(直径9.3cmにまで切断、厚さ=370ミクロン)上に均等に滴下することで、ろ紙を完全に濡らした。このろ紙を、支持体マトリックスとして使用した。外側の層が中間の層を取り囲む膜を組み立てた。
【0047】
この膜を備える電気化学的電池を、以下のように組み立てた。PTFEを5%装填したカーボン紙を、ガス拡散層(GDL)に使用した。PTFE溶液中に懸濁している白金粒子を、2つのGDLそれぞれが有する面の一方に塗装し、その後乾燥させた。次いで、GDLのPt粒子でコーティングされた面を、イオン交換膜に対向させて設置してスタックを形成し、このスタックをその後電池内に設置した。上述のような導電性金属板をGDLに対して押し付け、電池を密封した。
【0048】
この電池を、以下のガス流量、アノードにおけるH=70立方センチメートル毎分(sccm)、カソードにおけるN=1184sccm、カソードにおけるO=315sccm、カソードにおけるCO=0.6sccmで動作させた。BK Precision 8500 300W Programmable DC Electronic Loadを用いて電池全体に負荷をかけた。
【0049】
中間の層の中に固定化緩衝基を有する3層膜について、結果は表1のとおりである。
【表1】

【0050】
中間の層の中にImmobiline IIを有していない3層膜を用いた対照実験について、結果は表2のとおりである。
【表2】

【0051】
ファラデー効率は下記式に従って算出される。
【数1】

ここで、項0.07175=(分/60秒)*F*P/RTは無次元効率を得るための正確な単位の項、Fはファラデー定数(96485C/モル)、Pは標準圧力(0.101325J/cm)、Rはガス定数(8.314J/モル/K)、Tは標準温度(273.15K)である。
【0052】
Immobiline IIを含む膜を用いて実現した効率は、対照よりも約1.33倍高く、緩衝基の使用により効率が向上する。しかしながら、触媒、固定化緩衝基のpK、層の厚さ、水素および酸素の触媒作用、および他のプロセスパラメータを最適化することによって、はるかに高い効率(70%を超える)を実現することができると考えられている。
【0053】
ファラデー効率は、ある種が所与の電荷で電気分解されるエネルギー効率である。ファラデー効率が高いことは、プロセスは反応を完了させるためにより低いエネルギーしか必要とせず、それによりプロセスがより実行可能となることを示唆している。この場合、ファラデー効率は、システムを流れる電流に対するCO捕獲率の割合の指標である。ファラデー効率100%とは、システムを通過する電子ごとにCO分子が正確に1つ捕獲されることを意味する(水素分子1つが2つの電子を作る)。
【0054】
本明細書中で使用する用語「マトリックス」は、ポリマー、樹脂、多孔質固体、またはpH緩衝基を支持することができるように構造化された他の材料を指す。たとえば、緩衝基をマトリックスに、またはマトリックス内で結合させることができる。
【0055】
用語「ゲル」とは、その中で固定化されたかなりの割合の水または他の溶媒を含む繊維状材料および/または架橋材料(通常ポリマー)を指す。ゲルをマトリックスとして使用することができ、すなわち、pH緩衝基または他の材料をゲルに、またはゲル内で結合させることができる。ゲルマトリックスを別のマトリックス、たとえば、固体材料または多孔質固体製のメッシュによって支持することもできる。
【0056】
本明細書中で使用する「緩衝基」または「pH緩衝基」は、ある範囲内でpHをもたらすまたは維持する化学官能基を指す。たとえば、酸性のpH緩衝基は、領域を比較的低いpH(たとえば7未満)で維持する傾向にあるが、塩基性のpH緩衝基は、領域を比較的高いpH(たとえば7を超える)で維持する傾向にある。基によって生じるまたは維持されるpH範囲は、基の特性だけでなく、その濃度、他の種の濃度、周囲の流体の化学的構造、および他の環境パラメータにも依存する。
【0057】
pH緩衝基を「固定化する」とは、そのpH緩衝基の周りの可動イオンおよび分子に対して緩衝基を定位置に保持する、すなわち、イオンおよび分子が動くようにpH緩衝基が動くことを防止することを意味する。緩衝基を固定化することは、マトリックス、ゲルまたは類似の構造体などに緩衝基を接着させるもしくは固定することによって、またはゲルなどの構造体の比較的小さい領域内に緩衝基を閉じ込めることによって実現することができる。pH緩衝基を「隔離する」とは、pH緩衝基をある領域内で固定化することによって、またはpH緩衝基がこの領域から出て移動しないように半透膜を用いることによってなど、緩衝基を領域内に保持することを意味する。このような膜は、基が他のpH緩衝基と相互作用することを防ぐことも、またはpH緩衝基を含まない層または領域に入らないようにすることもできる。
【0058】
本明細書中で使用する「層」は、何らかの形でパターニングされているかどうかにかかわらず、ある厚さの材料である。特定種の材料が層の任意の部分に存在する場合には、層がこの特定種の材料を「含む」。特定種の材料が層全体を通して支配的である場合には、層がこの特定種の材料「からなる」。層は均質であっても、その組成または特性が異なっていてもよい。層は2つ以上の層または層の一部をその中に備えることができ、これらの層または層の一部は「サブ層(sub−layer)」と称されることもある。
【0059】
本明細書中の「層状構造」は、複数の層を備える構造を指す。
【0060】
用語「膜」は、ガス、液体、エアロゾルなどの流体に対して透過性を示す構造を指す。膜は「半透性」であってもよく、これは、膜が一部の物質に対しては透過性を示すが、他の物質に対しては不透過性を示すことを意味する。膜は1つ以上のマトリックス層を含むことができ、その中に他の半透膜を含むことができる。
【0061】
用語「カソード構成部品」および「アノード構成部品」はそれぞれ、電極として作用し、そこから正電流または負電流が流れる構造または材料を指す。「カソード構成部品」は、還元が起こる領域を含むことができ、一方「アノード構成部品」は、酸化が起こる領域を含むことができる。「カソード領域」、「カソードにおける」、「カソード近く」などの語句は、カソード近くの液体およびガス領域を指す。「アノード」を参照する語句は、アノード近くの液体およびガス領域に関する同様の意味を有する。
【0062】
用語「電気化学的電池」は、その中で起こっている化学反応による電子の放出および受容によって電流を生じる容器を指す。
【0063】
「炭素含有イオン」は単純に、炭素元素を含有するイオンを指す。それらイオンはアニオンであってもカチオンであってもよく、炭素原子またはイオン中の別の原子でイオン化が起きる。
【0064】
「移動」または「輸送」は、流動(flux)、たとえば、濃度勾配により推進される拡散もしくはイオン電流によって推進される拡散、または他のタイプの流動を指す。
【0065】
本明細書中で説明した実施形態によって分離することができるガスはCOだけではないことが当業者には理解されよう。CO以外のガスが液体に溶解し、電気化学反応の生成物と反応してイオンを形成し、電気化学的電池の中を通って移動し、対向電極で電気化学反応の生成物と反応して溶解ガス分子を形成し、液体から脱離して気相となるシステムも可能である。このようなシステムとしては、溶解したガスがカソードにおけるOHとの反応によって加水分解してイオンを形成し、このイオンが電気化学的電池のカソード側からアノード側へと移動し、このイオンがアノード側でHと反応して溶解中性ガス分子に変わり、この中性ガス分子が電池のアノード側で離脱して気相となるシステムが挙げられる。電流に対する溶解ガス輸送の効率を向上させるために上記システムのいずれかに本明細書中で説明した実施形態を適用することは、本明細書中で説明した本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0066】
12 アノード、14 カソード、15 領域または層、16 支持体、20 半透膜、 25 システム、28 カソード構成部品、32 アノード構成部品、33 可変負荷、 35 緩衝基構成部品、38 供給口、41 供給口、42 外枠、45 ガス拡散層、 46 多孔質導体層、47 触媒層、48 膜、57 経路、59 経路、64 出口、 66 出口、75 システム、77 電気化学的電池、78 管、79 管、80 流量調整器、81 流量調整器、84 加湿器、85 加湿器、86 管、87 管、92 回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード構成部品およびアノード構成部品と、
前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間の領域にある層状構造とを備えるシステムであって、
前記カソード構成部品、前記アノード構成部品および前記層状構造が、前記カソード構成部品における酸素および二酸化炭素ならびに前記アノード構成部品におけるプロトンを提供することができる水素含有分子とにより、前記カソード構成部品において反応が起こり、それにより炭素含有イオンが生成され、前記炭素含有イオンが前記カソード構成部品から前記アノード構成部品へと輸送され、前記アノード構成部品において反応が起こり、それにより二酸化炭素が生成されるよう構成され、
前記層状構造が、前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間に3つ以上の層を順に備え、
前記層が、前記カソード構成部品および前記アノード構成部品に隣接して、それぞれカソード側層およびアノード側層を備え、
前記カソード側層と前記アノード側層との間に、それぞれpH緩衝基を含む1つ以上の緩衝基層を備え、
前記pH緩衝基が、前記アノード側層およびカソード側層へと進まないように前記pH緩衝基層内で隔離され、前記緩衝基層が、前記アノード構成部品と前記カソード構成部品との間のプロトンおよび前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間のヒドロキシルイオンのうちの少なくとも一方のイオン電流密度を、前記炭素含有イオンのイオン電流密度に対して減少させるために十分なpH緩衝基を含み、前記pH緩衝基が、前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間の前記炭素含有イオンの輸送を可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項2】
ガスから二酸化炭素を分離する方法であって、
二酸化炭素を含むガスをヒドロキシルイオンまたは水と反応させて、炭素含有イオンを生成するステップと、
プロトンおよびヒドロキシルイオンのうち少なくとも一方のイオン電流密度を、前記炭素含有イオンのイオン電流密度に対して減少させるために十分なpH緩衝基を含む半透膜を通して前記炭素含有イオンを輸送するステップであって、前記pH緩衝基が前記膜内で隔離されているステップと、
前記膜を通しての輸送後に前記炭素含有イオンを反応させて二酸化炭素を提供するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
カソード構成部品およびアノード構成部品と、
前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間の領域にある膜構成部品と、
前記カソード構成部品における酸素および二酸化炭素ならびに前記アノード構成部品におけるプロトンを提供することができる水素含有分子により、前記カソード構成部品において反応が起こり、それにより炭素含有イオンが生成され、前記炭素含有イオンが前記カソード構成部品から前記アノード構成部品へと輸送され、前記アノード構成部品において反応が起こり、それにより二酸化炭素が生成されるような構成で、前記カソード構成部品、前記アノード構成部品および前記膜構成部品を接続する接続構成部品とを備える電気化学的電池であって、
前記膜構成部品が、前記カソード構成部品と前記アノード構成部品との間に3つ以上の層を順に備え、
前記層が、前記カソード構成部品および前記アノード構成部品に隣接して、それぞれカソード側層およびアノード側層を備え、
前記カソード側層と前記アノード側層との間に、それぞれpH緩衝基を含む1つ以上の緩衝基層を備え、
前記pH緩衝基が、前記アノード側層およびカソード側層へと進まないように前記pH緩衝基層内で隔離されていることを特徴とする電気化学的電池。
【請求項4】
略平行で、互いに離れて配置されている第1および第2の表面と、
前記第1の表面から前記第2の表面へと層状構造を通って輸送されるイオンが順番に通過することができるように、前記第1および第2の表面間に前記第1および第2の表面とほぼ平行に延在する層と、
一組の前記層のそれぞれの中に、前記層内で隔離されているそれぞれの隔離pH緩衝基とを備える半透性の層状構造を備える製品であって、前記組における第1の層が、
それぞれのpH緩衝基を含む前記順番における隣接層であって、前記第1の層の前記それぞれの隔離pH緩衝基と隣接層のそれぞれのpH緩衝基とは異なる隣接層、および
pH緩衝基を実質的には含まない前記順番における隣接層のうちの少なくとも一方を有し、
前記層状構造がさらに、
前記第1の層の前記それぞれの隔離pH緩衝基の固定化されている部分であって、固定化されている部分における前記基が、マトリックスと結合させることによって前記第1の層内で固定化されている部分、
前記第1の層の前記それぞれの隔離pH緩衝基の閉じ込められている部分であって、閉じ込められている部分における前記基が、ゲルによって前記第1の層内に閉じ込められている部分、および
前記第1の層の境界にある半透膜であって、前記第1の層内で前記第1の層の前記それぞれの隔離pH緩衝基の少なくとも一部を隔離する半透膜のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−21141(P2010−21141A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157432(P2009−157432)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】