説明

固形化粧料

【課題】固形化粧料の表面に液滴の発生を抑制でき、安定性に優れた固形化粧料を提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(E):(A)25℃で液状の油剤、(B)25℃で固体状または半固体状の油剤、(C)界面活性剤、(D)水及び/又は水溶性溶剤、(E)両性化合物を含み、さらに(F)植物抽出物とG)粉体を含みうる、安定性の良好な固形化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア化粧料は一般的には顔や体の肌全体という広い面積に塗布する目的のものが多く、化粧料としては伸びがいいものが好まれる。そのため、化粧料としては乳液やクリーム状のものが多いのが現状である。しかし、最近では体のある部分の悩み対応として、部分用の化粧料も求められてきており、局所的な部分に集中してスキンケアするためのものとして特許文献1に開示されたようなスティック状の固形化粧料がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-169360号公報
【特許文献2】特開2002-53420号公報
【特許文献3】特開2001-72529号公報
【特許文献4】特開2000-86445号公報
【特許文献5】特開平10-279433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固形化粧料において、使用感を調整する観点から水又は水溶性溶剤を添加することがある。また、固形化粧料に特定の機能、たとえば美白効果を付与するために、抽出溶媒として水又は水溶性溶剤を含む植物エキスを添加することが検討されている。
しかし、固形化粧料に水又は水溶性溶剤を添加した場合、所定の時間が経つと固形化粧料表面に液滴が発生することがわかった。ワックスと油剤を基剤とした固形化粧料に水又は水溶性溶剤が混合すると特に高温での安定性が悪く、固形化粧料の表面に液滴が発生する現象(以下、発汗現象)が生じる。そのために固形化粧料の美観や使用感が損なわれることや、美白効果などが低減してしまうこともわかった。
【0005】
特許文献2〜4は、固形化粧料中の油剤の発汗を防止する技術であるが、水又は水溶性溶剤を含む固形化粧料の発汗を防止するものではない。
これに対し特許文献5は、水又は水溶性溶剤を含む固形化粧料の発汗を防止する技術であり、固形化粧料の吸湿性が高まると外気中の水分が化粧料中に取り込まれて、その取り込まれた水分によって化粧料中のオイルが外へ追い出されるという考え方に基づいたものである。この文献では、化粧料に疎水化粉体を配合することで、水相中の保湿剤が外気と接触する機会を低減させ、吸湿を抑制し、オイルの発汗を抑える。しかし、この方法では、十分に発汗を抑制することは困難であった。
以上のように、従来は、水又は水溶性溶剤を含む固形化粧料において、発汗現象が発生してしまうという課題に対する検討が十分になされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
次の成分(A)〜(E):
(A)25℃で液状の油剤
(B)25℃で固体状または半固体状の油剤
(C)界面活性剤
(D)水及び/又は水溶性溶剤
(E)両性化合物
を含む固形化粧料が提供される。
【0007】
この発明によれば、水又は水溶性溶剤を含む固形化粧料において、固形化粧料の表面に生じる発汗現象の発生を抑制でき、所望の固形化粧料の美観や使用感を維持することができる固形化粧料が提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固形化粧料の表面に生じる発汗現象の発生を抑制でき、固形化粧料の美観や使用感が変化せず、安定性に優れた固形化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(成分(A))
成分(A)は、25℃で液状の油剤である。ここで、液状油とは、25℃における粘度が10000mPa・s以下であることをいう。具体的には、B型粘度計、ローターNo.4,12rpm,1分で測定することができる。このような油剤(A)としては、化粧料に配合できるものであればどのようなものでもよいが、例えば、流動パラフィン・軽質イソパラフィン・流動イソパラフィン・スクワラン・スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油、ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、脂肪酸エステル・多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油、ジメチルポリシロキサン・ジメチルシクロポリシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン・高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油、フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油などが挙げられる。
なかでも、塗布時のすべりなどの使用感の観点から、エステル油が、特にオリーブ油、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールが好ましい。
成分(A)は、以上の油剤1種で構成されていてもよく、また、以上の油剤を2種以上含むものであってもよい。
成分(A)の含有量は合計で全組成中に塗布時のすべりなどの使用感の観点から3質量%以上、べたつき防止の観点から50質量%以下であることが好ましい。特に10〜47質量%、更に30〜40質量%であることが好ましい。
【0010】
(成分(B))
成分(B)は、25℃で固体状または半固体状の油剤である。ここで、25℃で固体状または半固体状とは、25℃における粘度が10000mPa・sより大きいものを言う。
25℃で固体状の油剤は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60〜110℃の融点を有するもので、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、合成ワックス等を用いることができる。具体的には、コメヌカロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ゲイロウ、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。
また、25℃で半固体状の油剤としてはイソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカダミアナッツ油脂肪酸コレステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のコレステロール類、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等のフィトステロール類、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、ロジン酸ジペンタエリトリット等のジペンタエリトリット脂肪酸エステル類、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド等のトリグリセライド類、硬化油等の部分的に水素添加されたトリグリセライド類、ラノリン、ラノステロール類、ワセリン等があげられる。
成分(B)は、以上のような油剤1種または2種以上で構成されていればよいが、なかでも、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリオレフィンワックスが好ましい。これら成分(B)を用いることで、保形性を有する固形状として組成物を得ることができる。
成分(B)は1種以上を用いることができる。成分(B)の含有量は保形性の観点から、合計で全組成中に5質量%以上であることが好ましい。また、適度なかたさでなめらかさなどの良好な使用感を提供するという観点から、全組成中に50質量%以下含有することが好ましい。
なかでも、成分(B)の含有量は合計で5〜50質量%、特に8〜30質量%、更に10〜25質量%が好ましい。
【0011】
また、成分(B)/成分(A)で示される質量比は0.1〜2、特に0.15〜1.8、更に0.18〜1.6の比率であることが好ましい。成分(B)/成分(A)を0.1以上とすることで、十分な保形性を得ることができ、また、成分(B)/成分(A)を2以下とすることで、適度なかたさで良好な使用感が得られる。
【0012】
(成分(C))
成分(C)は、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、製剤中の成分(D)の分散性の観点から、特に非イオン界面活性剤が好ましく、更にHLB値が5.5〜11.5の非イオン界面活性剤が発汗を抑制する上で特に好ましい。
かかる非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウリン酸エステル,ソルビタンモノパルミチン酸エステル,ソルビタンモノステアリン酸エステル,ソルビタンセスキステアリン酸エステル,ソルビタンモノオレイン酸エステル,ソルビタンモノイソステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタントリステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(6E.O.)ソルビタンモノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタントリオレイン酸エステル,ポリオキシエチレン(6E.O.)ソルビタンモノオレイン酸エステル等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(6E.O.)ソルビトールテトラオレイン酸エステル等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリルモノイソステアリン酸エステル等のグリセリル脂肪酸エステル類、ポリグリセリルモノステアリン酸エステル,ポリグリセリルモノオレイン酸エステル等のポリグリセリル脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール(5E.O.)グリセリルモノオレイン酸エステル,ポリエチレングリコール(5E.O.)グリセリルモノステアリン酸エステル,ポリエチレングリコール(10E.O.)グリセリルモノステアリン酸エステル等のポリオキエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(6E.O.)モノラウリン酸エステル,ポリオキシエチレン(2E.O.)モノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(4E.O.)モノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(10E.O.)モノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(2E.O.)モノオレイン酸エステル,ポリオキシエチレン(6E.O.)モノオレイン酸エステル,ポリオキシエチレン(10E.O.)モノオレイン酸エステル,ジエチレングリコールステアリン酸エステル,ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル,ポリエチレングリコールジオレイン酸エステル,ポリエチレングリコールジイソステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(4.2E.O.)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(9E.O.)ラウリルエーテル,ポリオキシエチレン(2E.O.)セチルエーテル,ポリオキシエチレン(5.5E.O.)セチルエーテル,ポリオキシエチレン(7E.O.)セチルエーテル,ポリオキシエチレン(2E.O.)オレイルエーテル,ポリオキシエチレン(7E.O.)オレイルエーテル,ポリオキシエチレン(10E.O.)ベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン(3E.O.)ヒマシ油,ポリオキシエチレン(10E.O.)ヒマシ油,ポリオキシエチレン(20E.O.)ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油類、ポリオキシエチレン(10E.O.)硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレン(20E.O.)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類などが挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。
成分(C)の固形化粧料全量における配合量としては、合計で0.1〜10質量%、特に1.0〜7.0質量%、更に2.5〜5.0質量%程度が適当である。
0.1質量%以上とすることで化粧料の発汗を含む安定性が良好であるという効果があり、10質量%以下とすることでべたつきを低減するという効果がある。
【0013】
(成分(D))
本発明に配合される成分(D)は、水及び/又は水溶性溶剤である。水溶性溶剤としては、水に可溶な溶剤であれば何れでもよく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプリピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類があげられる。
なかでも、みずみずしさやしっとり感を付与するという観点から、水、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコールのいずれかであることが好ましい。
成分(D)としては、以上のようなものを1種以上使用することができる。
なお、水溶性溶剤は、固形化粧料に含まれる植物エキス由来の植物抽出物の抽出溶剤であってもよく、また、植物エキスとは別に添加されるものであってもよい。
成分(D)の含有量は、固形化粧料全体に対し、合計で0.01質量%以上、15質量%以下、なかでも、0.1〜10質量%、さらには、0.4〜7質量%以下であることが好ましい。
0.01質量%以上とすることで、しっとり感、さっぱり感を得ることができるという効果があり、15質量%以下とすることで確実に発汗防止できるという効果がある。
【0014】
(成分(E))
本発明の固形化粧料は、成分(E)として、両性化合物を含む。
両性化合物としては、酸性基と塩基性基とを有する化合物や、ベタインがあげられ、たとえば、アミノ酸、タウリン、スルファニル酸およびそれらの誘導体があげられる。
なかでも、発汗抑制を含む安定性および使用感の観点から、アミノ酸およびアミノ酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。具体的にはプロリン、グリシン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、トリメチルグリシンが挙げられる。特に発汗抑制と保湿効果の観点からトリメチルグリシンが好ましい。
成分(E)としては、上述した両性化合物のなかから、1種以上を選択して使用することができる。
成分(E)の含有量は、固形化粧料全体に対し、0.001質量%以上、1.0質量%以下であることが好ましい。0.001質量%以上とすることで、発汗を抑制する効果を確実に発揮することができ、1.0質量%以下とすることで使用時のざらつき感が少ないという効果がある。
なかでも、発汗防止の観点から、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが好ましい。
【0015】
ここで、成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比は0.05以上、3.0以下であることが好ましい。なかでも、成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比は0.1以上であることが好ましく、さらには、0.2以上であることが特に好ましい。
また、成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比は2.0以下であることが好ましく、さらには、1.5以下であることが特に好ましい。
成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比を0.05以上とすることで、みずみずしさやしっとり感を付与できる。
一方、成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比を3.0以下とすることで、成分(A)および成分(B)で構成されるカードハウス構造中における成分(D)の安定性が向上し、発汗を確実に抑制できる。
【0016】
(成分(F))
本発明の固形化粧料は、成分(F)として、植物抽出物を含むものであってもよい。
このように、植物抽出物を含むものとすることで、特定の機能、たとえば、美白機能を有する固形化粧料とすることができる。
植物抽出物は、例えば、カミツレ、茶、丁子、営実、地楡、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、桑白皮、厚朴、インチンコウ、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、コンフリー、ローズマリー、キキョウ、シラカバ、ロート等の植物抽出物、サルカンドラ グラブラ、サラカ ディベス、クドラニア プベセンス、タキソディウム ディスティチュム、ルビジア オクトバリス、ドイチャンタス トンキネンシス、アルコルネア トレビオイデス、ベルケミア ポリフィラ、グロチディオン プベルム、ササフラス ツムの植物の抽出物、ジャスミン、ローズ、ベチバー、ローレルの植物の抽出物、Thuja属植物、Rubes属植物、Vaccinium属植物、Actinidia属植物およびPerilla属植物の植物の種子を抽出して得られる植物抽出物、アカネ科フタバムグラ属植物であるビャッカジャゼッソウ(白花蛇舌草;学名:Hedyotis diffusa (Willd.)Roxb.)の抽出物、ゲンチアナ属植物の花部の抽出物、カンラン科コンミホラ属ミルラノキまたはカンナ科カウトレア属カウトレアスピカタの抽出物、シクンシ科 、シソ科 、ユキノシタ科 、ウルシ科 、ビワモドキ科 、カンラン科 、シナノキ科 、ミソハギ科 、マメ科 、クワ科 、アリノトウグサ科 、ヤシ科 、ブナ科 、パンヤ科 、フジウツギ科 、ツツジ科 、モクセイ科 、トウダイグサ科 、ユリ科の抽出物、アオギリ科;ヒメコラノキ、コラノキ、コラ・アノメラ、コラ・ウエルティキラタ、オオバナカカオノキ、カカオノキ、マウンテンカカオノキ、テオブロマ・ペンタゴナ、テオブロマ・ミクロカルパ、マリアエ、アオギリ、モチノキ科;セイヨウヒイラギ、ヒイラギモチ、アマミヒイラギモチ、イレクス・グアユサ、イレクス・ウォミトリア、オシロイバナ科;ネエア・テイフェラ、ツバキ科チャノキ、チャノキ葉の醗酵物、アカネ科;アラビアコーヒーノキ及びムクロジ科;ガラナの抽出物、ハマメリス、甜茶、サンザシ、オオヨモギ、クリ、ドクダミ、エンメイソウの各抽出物、セイヨウイラクサ、オトギリソウ、セージ、コガネバナ、カラトウキ、エキネシア、セイヨウニワトコ、タイム、ツキヌキヒヨドリ、カンゾウ、セイロンニッケイ、シソの抽出物、ハマメリス、甜茶、サンザシ、オオヨモギ、クリ、ドクダミ、エンメイソウの抽出物、ラン科カトレア属、ブラッソカトレア属、ブラッソレリオカトレア属、レリオカトレア属、レリオカトニア属、カトレイオプシス属、カトレイトニア属、レリア植物の抽出物があげられ、植物抽出物としては、1種類以上を使用することができる。
これらの植物抽出物は、乾燥残分として0.00013〜0.25質量%含有することが出来る。
【0017】
(成分(G))
本発明の固形化粧料は、成分(G)として粉体を含んでいてもよい。
成分(G)の粉体としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えばジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン、又はこれらのホモもしくはコポリマー、球状樹脂粉末(例えば球状ナイロン等)、微粒子酸化亜鉛、ポリメチルシルセスキオキサン、シリカ、マイカ、ジアルキルフォスフェイト、セリサイト、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。
これらの粉体は、粉体として本来表面が親水性であるものや、疎水性であるもの、粉体表面の一部または全部を親水化処理、又は疎水化処理したものを使用でき、これらの中で本来表面が親水性であるもの又は親水化処理粉体は、発汗を防止する上で優れるので好ましい。親水化処理は、例えば、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマー、シリカ、アルミナ等の無機化合物、界面活性剤等の親水化処理剤を用いて行うことができ、通常の方法に従って処理することができる。また、粉体に対する親水化処理剤の処理量は、0.05〜20質量%、特に2〜10質量%であるのが好ましい。
粉体の形状は特に制限されず、板状、球状、不定形等のいずれでも良いが、球状粉体を用いるのが、塗布時の感触の点から好ましい。粉体の平均粒径は0.2〜100μm、特に1〜50μmが好ましい。
成分(G)は1種以上を用いることができ、全組成中に1〜50質量%、特に6〜40質量%、更に10〜30質量%配合するのが、良好な使用感を得るために好ましい。
【0018】
以上のような本発明の固形化粧料は、以下のような製造方法により得ることができる。
まず、成分(A)中に、必要に応じて成分(G)を分散させる(混合物1)。次に、あらかじめ成分(B)を加熱して溶融させ、この溶融した成分(B)中に、成分(A)および成分(G)の混合物1を添加する(混合物2)。このようにして得られた混合物2のなかに、成分(C)、成分(D)、成分(E)の混合液3を滴下し、混合物4を得る。
次に、所定の温度で金型に混合物4を流し込み、冷却して、固形化粧料を得る。
【0019】
以上のような本発明の固形化粧料の特徴は、保存状態又は使用時における固形化粧料の発汗を防止でき、配合組成比が変化せず、使用感が安定するとともに、美白などのスキンケア成分を含む場合には、美白などのスキンケア効果の安定性に優れていることである。
一般に、固形化粧料は、成分(B)が板状のワックス結晶を形成し、その結晶がかみ合わさって出来た構造体の隙間に、成分(A)を保持するカードハウス構造を形成している。このようなカードハウス構造内に成分(D)を保持させるためには、成分(C)の界面活性剤を配合し、成分(D)の分散性を向上させればよいが、更に成分(E)の両性化合物を含有することで、水や水溶性溶剤をしっかり保持させることが出来ると考えられる。両性化合物は、カチオン、アニオン基を有することで、水和しやすく、水等を保持する効果が高いと考えられる。その結果、安定性が飛躍的に向上し、経時でのいわゆる発汗を防止できると考えられる。
特に、成分(E)として、アミノ酸あるいはアミノ酸誘導体、特にトリメチルグリシンを含む場合には、保水力の高い固体保湿剤としてより確実に発汗を防止できると考える。
発汗が防止できることによって、経時での配合組成が変化せず、いつまでも使用感や美観が変化せず、美白などのスキンケア成分を含む場合には、美白などのスキンケア効果が変化することなく使い続けることができる。
なお、本発明において、カードハウス構造とは、トランプのカードが重なり合った様な構造を有するものをいう。これらの構造は、走査電子顕微鏡により、確認できる。
【0020】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0021】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜18)
表1に示す配合の固形化粧料を作製した。表1中の各成分の単位は質量%である。
はじめに、成分(G)であるメチルシロキサン網状重合体を、成分(A)であるジカプリン酸ネオペンチルグリコール、オリーブ油中に添加した(混合物1)。次に、あらかじめ80℃の湯浴で成分(B)であるポリオレフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックスを1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール とともに、溶融させ、この溶融した成分(B)中に混合物1を撹拌混合した(混合物2)。
次に、あらかじめ成分(C)であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=6.5)およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=10.5)、成分(D)であるキキョウ根エキス(水48.75質量%, 1,3-BG48.75質量%)、(必要に応じて精製水、1,3−ブチレングリコール、エタノール)、成分(E)であるトリメチルグリシンを室温で撹拌しておき(混合液3)、この混合液3を、混合物2に対してゆっくり滴下し、混合物4を得た。
混合物4を脱気後、80℃で金型に流し込み、4℃の冷却槽に4分間放置し、冷却後、金型から固形化粧料を取り出した。
なお、表1では、成分(D)として、キキョウ根エキスを表示しているが、キキョウ根エキス中の水および1、3−BG(1、3−ブチレングリコール)が成分(D)に該当する。
【0022】
(比較例1〜6)
表1に示す配合の固形化粧料を作製した。
比較例1〜6では、成分(E)であるトリメチルグリシンを使用しなかった。
製造方法は、上述した実施例と同じである。
【0023】
【表1】

【0024】
次に、得られた固形化粧料の評価を行った。
評価方法は以下の通りである。
【0025】
1.保存安定性(発汗防止効果)
各固形化粧料を50℃の恒温室(湿度20%以下)に1ヶ月保存し、取り出した際の変化を肉眼で判定した。
1:悪い
2:やや悪い
3:普通
4:やや良い
5:良い
【0026】
2.使用感(しっとり)
50℃の恒温室(湿度20%以下)に1ヶ月保存した各固形化粧料を室温に1日放置した後、専門パネラー10名により、頬に塗布してもらい使用感についての官能評価を行った。しっとり感が非常に高い場合を10点、非常に低い場合を1点とする10段階評価を行い、平均点を求め、小数点以下を四捨五入した。
【0027】
3.使用感(みずみずしさ)
50℃の恒温室(湿度20%以下)に1ヶ月保存した各固形化粧料を室温に1日放置した後、使用感を専門パネラー10名により、頬に塗布してもらい官能評価を行った。みずみずしさ感が非常に高い場合を10点、非常に低い場合を1点とする10段階評価を行い、平均点を求め、小数点以下を四捨五入した。
【0028】
4.使用感(なめらかさ)
50℃の恒温室(湿度20%以下)に1ヶ月保存した各固形化粧料を室温に1日放置した後、使用感を専門パネラー10名により、頬に塗布してもらい官能評価を行った。なめらかさが非常に高い場合を5点、非常に低い場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求め、小数点以下を四捨五入した。
【0029】
5.使用感(べたつきのなさ)
各固形化粧料を50℃の恒温室(湿度20%以下)に1ヶ月保存したものを室温に1日放置した後、使用感を専門パネラー10名により、頬に塗布してもらい官能評価を行った。べたつきのなさが非常に高い場合を5点、非常に低い場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求め、小数点以下を四捨五入した。
【0030】
実施例1〜18はいずれも成分(E)を含むものであり、発汗防止効果があることが確認された。また、使用感や美観も安定していた。
一方、比較例1〜6は成分(E)を含まないため、液滴が固形化粧料表面に発生し、発汗してしまった。
実施例1〜18の結果を参照すると実施例1〜17では、成分(D)/(成分(C)+成分(E))が0.05以上であり、実施例18に比べてみずみずしさやしっとり感があることがわかる。
また、実施例1〜18の結果を参照すると、成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される比率が1.5以下の場合に、発汗防止効果が4以上となることがわかる。
さらに、実施例1〜18はいずれも成分(B)/成分(A)が0.1以上〜2.0以下であり、保形性がよく、また、使いやすい適度な硬さであった。
【0031】
(処方例1〜3)
はじめに、成分(G)である酸化チタン・酸化ケイ素混合物、マイカを、成分(A)(ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、オリーブ油中に添加した(混合物1)。次に、あらかじめ80℃の湯浴で成分(B)であるポリオレフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックスを1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール とともに、溶融させ、この溶融した成分(B)中に混合物1を撹拌混合した(混合物2)。
次に、あらかじめ成分(C)であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=6.5)およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=10.5)、成分(D)となるカミツレ抽出液(1,3-BG 99.0質量%)、水溶性ショウキョウエキス(水67.69質量%, 1,3-BG29.01質量%)、ホウセンカエキス(水55.25質量%、エタノール43.65質量%)のいずれか、成分(E)となるセリン、塩酸リジン、トリメチルグリシンのいずれかを室温で撹拌しておき(混合液3)、この混合液3を、混合物2に対してゆっくり滴下し、混合物4を得た。
混合物4を脱気後、80℃で金型に混合物4を流し込み、4℃の冷却槽に4分間放置し、冷却後、金型から固形化粧料を取り出した。
【0032】
(処方例1)(しみ改善化粧料)
以下のしみ改善固形化粧料は、発汗抑制され、保存後の使用感や美観も安定したものであり、しみ改善効果が維持されていた。
(成分) (質量%)
(D)カミツレ抽出液*1 0.5
(E)セリン*2 0.01
(C)ニッコールHCO−10*3 1.0
(C)ニッコールHCO−20*4 2.5
(A)エステモール N−01*5 29.21
(A)クロピュア OL*6 10.0
(B)PERFORMALENE 700EP*7 4.0
(B)セレシン #810K*8 10.0
(B)マルチワックス W−445 S*9 13.0
HE−ISP(U)*10 0.2
(G)NPT30K3TA*11 19.58
(G)マイカ KY−181*12 10.0
【0033】
(処方例2)(しわ改善化粧料)
以下のしわ改善固形化粧料は、発汗抑制され、保存後の使用感や美観も安定したものであり、しわ改善効果が維持されていた。
(成分) (質量%)
(D)水溶性ショウキョウエキス*13 0.5
(E)リジン*14 0.01
(C)ニッコールHCO−10*3 1.0
(C)ニッコールHCO−20*4 2.5
(A)エステモール N−01*5 29.21
(A)クロピュア OL*6 10.0
(B)PERFORMALENE 700EP*7 4.0
(B)セレシン #810K*8 10.0
(B)マルチワックス W−445 S*9 13.0
HE−ISP(U)*10 0.2
(G)NPT30K3TA*11 19.58
(G)マイカ KY−181*12 10.0
【0034】
(処方例3)(毛穴改善化粧料)
以下の毛穴改善固形化粧料は、発汗抑制され、保存後の使用感や美観も安定したものであり、毛穴改善効果が維持されていた。
(成分) (質量%)
(D)ホウセンカエキスTCP*15 0.5
(E)アミノコート*16 0.01
(C)ニッコールHCO−10*3 1.0
(C)ニッコールHCO−20*4 2.5
(A)エステモール N−01*5 29.21
(A)クロピュア OL*6 10.0
(B)PERFORMALENE 700EP*7 4.0
(B)セレシン #810K*8 10.0
(B)マルチワックス W−445 S*9 13.0
HE−ISP(U)*10 0.2
(G)NPT30K3TA*11 19.58
(G)マイカ KY−181*12 10.0
【0035】
*1 植物抽出物 1.0質量%、1,3−BG 99.0質量% (香栄興業株式会社)
*2 (味の素株式会社)
*3 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=6.5) (日本サーファクタント工業株式会社)
*4 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=10.5) (日本サーファクタント工業株式会社)
*5 ジカプリン酸ネオペンチルグリコール (日清オイリオグループ株式会社 )
*6 オリブ油 (クローダジャパン株式会社)
*7 ポリオレフィンワックス (NEW PHASE TECHNOLOGIES )
*8 セレシン (日興リカ株式会社)
*9 マイクロクリスタリンワックス (SONNEBORN, INC. )
*10 1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール (花王株式会社)
*11 酸化チタン・酸化ケイ素混合物 (日本板硝子株式会社)平均粒径11μm
*12 マイカ (株式会社 山口雲母工業所) 平均粒径15μm
*13 植物抽出物 3・3質量%、水 67.69質量%、 1,3−BG 29.01質量% (香栄興業株式会社)
*14 (味の素株式会社)
*15 植物抽出物 1.10質量%、 水 55.25質量%、 エタノール 43.65質量% (有限会社ティー・シー・ファルマ)
*16 トリメチルグリシン (旭化成ケミカルズ株式会社)
【0036】
処方例1〜3で得られた固形化粧料はいずれも時間が経っても発汗せず、使用感、美観や美白などのスキンケア効果の安定性に優れたものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)25℃で液状の油剤
(B)25℃で固体状または半固体状の油剤
(C)界面活性剤
(D)水及び/又は水溶性溶剤
(E)両性化合物
を含む固形化粧料
【請求項2】
成分(D)の水及び/又は水溶性溶剤が、水、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上である請求項1の固形化粧料。
【請求項3】
成分(E)がアミノ酸およびアミノ酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物である請求項1または2に記載の固形化粧料。
【請求項4】
成分(E)がトリメチルグリシンである請求項3に記載の固形化粧料。
【請求項5】
成分(D)/(成分(C)+成分(E))で示される質量比が0.05以上、3.0以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項6】
成分(B)/成分(A)で示される質量比が0.1以上、2以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項7】
成分(C)は、HLB値が5.5以上、11.5以下である非イオン界面活性剤である請求項1乃至6のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項8】
(F)植物抽出物を含む請求項1乃至7のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項9】
(G)粉体を含む請求項8に記載の固形化粧料。







【公開番号】特開2011−116703(P2011−116703A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275859(P2009−275859)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】